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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】畝直播機構
(51)【国際特許分類】
   A01C 5/06 20060101AFI20240718BHJP
   A01C 7/08 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A01C5/06 J
A01C5/06 B
A01C7/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020159742
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053117
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-06-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構農業技術革新工学研究センター、クラスター委託事業「二毛作体系に適した水稲乾田直播技術の開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】深見 公一郎
(72)【発明者】
【氏名】三池 啓治
(72)【発明者】
【氏名】本部 朗利
(72)【発明者】
【氏名】川口 康崇
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁康
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110009(JP,A)
【文献】実開昭60-062213(JP,U)
【文献】特開平06-253615(JP,A)
【文献】実公昭45-010808(JP,Y1)
【文献】実開昭56-018019(JP,U)
【文献】特開2013-176360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 5/06
A01C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら進行方向に移動して畝に播種溝を成形する作溝ディスクと、
前記作溝ディスクにおける前記進行方向に関して後方に配置され、種子が内部を落下する種子ホースの少なくとも下端部を覆い、自身の内部を通過する種子を前記播種溝に排出可能な種子ホースガイドと、
前記作溝ディスクの側方に先端部が近接し、前記播種溝の成形時には、前記作溝ディスクによって成形された前記播種溝内に埋まる位置に設けられる第1スクレーパと、
を備え
前記種子ホースガイドの底面は下方に向けて開放しており、
前記種子ホースガイドの底面に設けられ、前記種子ホースガイドに対する土の進入を阻止する阻止部を更に備え、
前記阻止部は、前記種子ホースガイドの底面を塞ぐ阻止面と、鉛直方向に対して傾斜し、前記種子ホース内を落下した前記種子を、前記種子ホースガイドの背面に形成された種子排出箇所に誘導する誘導面と、を備え、
前記誘導面が、前記種子ホースの鉛直方向下側に配置されている、
畝直播機構。
【請求項2】
前記種子ホースガイドの種子排出箇所と異なる箇所で軸支され、前記種子排出箇所を開閉させるシャッターを更に備える、
請求項に記載の畝直播機構。
【請求項3】
前記第1スクレーパの前記先端部と異なる端部は、前記種子ホースガイドに固定されている、
請求項1または2に記載の畝直播機構。
【請求項4】
前記作溝ディスクと同軸に設けられ、前記作溝ディスクの側方に延出して前記作溝ディスクの作溝深さを決定付ける円柱状のドラム部と、
前記ドラム部に対して径方向から近接し、前記ドラム部の湾曲面に対する土の付着を防止する第2スクレーパと、を更に備える、
請求項1からのうちいずれか1項に記載の畝直播機構。
【請求項5】
回転しながら進行方向に移動して畝に播種溝を成形する作溝ディスクと、
前記作溝ディスクにおける前記進行方向に関して後方に配置され、種子が内部を落下する種子ホースの少なくとも下端部を覆い、自身の内部を通過する種子を前記播種溝に排出可能な種子ホースガイドと、
前記作溝ディスクの側方に先端部が近接し、前記播種溝の成形時には、前記作溝ディスクによって成形された前記播種溝内に埋まる位置に設けられる第1スクレーパと、を備え、
前記種子ホースガイドの底面は下方に向けて開放しており、
前記種子ホースガイドの底面に設けられ、前記種子ホースガイドに対する土の進入を阻止する阻止部を更に備え、
前記阻止部は、前記種子ホースガイドの底面を塞ぐ阻止面と、鉛直方向に対して傾斜し、前記種子ホース内を落下した前記種子を、前記種子ホースガイドの背面に形成された種子排出箇所に誘導する誘導面と、を備え、
前記誘導面が、前記種子ホースの鉛直方向下側に配置され、
前記種子ホースガイドの種子排出箇所と異なる箇所で軸支され、前記種子排出箇所を開閉させるシャッターを更に備える、
畝直播機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝直播機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畝立てとともに播種を行う畝立て直播機がある(例えば、非特許文献1参照)。この畝立て直播機は、例えば、トラクタの後方に装着され、土壌反転ディスクと、畝成形部と、畝直播機構とを備える。土壌反転ディスクは、トラクタが走行した後のタイヤ跡を均す。畝成形部は、ソロバン玉状の回転・駆動する部材であり、表面が硬い台形断面状の播種畝を成形する。畝直播機構は、作溝ディスクと、スクレーパと、種子ホースガイドと、鎮圧輪とを備えている。畝直播機構は、畝成形部が成形した畝の天面に種子を直播する。畝立て直播機では、播種畝を成形する際に圃場の漏水防止を図り、畝の天面に播種することで、生育初期の降雨・滞水による湿害とジャンボタニシなどの害虫による食害の回避を図っている。
【0003】
畝直播機構に類似する畝に種子を直播する装置として、播種装置がある(例えば、特許文献1参照)。この播種装置は、畝成形体と、排水溝成形体と、播種溝成形体と、種子導出管とを備え、畝を成形するとともに、成形した畝の天面に種子を直播する。播種装置は、さらに、押込みローラを備え、押込みローラによって直播した種子を畝に成型した播種溝に押し込んでいく。
【0004】
この播種装置では、成形した種子導出管と播種溝の間にある程度の距離があるため、播種溝から種子がこぼれて播種精度が低下するリスクがあった。そこで、従来の畝直播機構を改良した畝直播機構がある(例えば、非特許文献2参照)。この畝直播機構は、作溝ディスクと、種子ホースを覆う種子ホースガイドとを備えており、作溝ディスクで成形した播種溝に、種子ホースガイドに覆われた種子ホースから供給される種子を畝の天面に直播する。さらに、作溝ディスクと種子ホースガイドの隙間ができるだけ小さくされている。このため、播種溝から種子がこぼれることが少なく播種精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-276814号公報
【文献】特開2013-176360号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】深見,「暖地二毛作体系に対応した乾田直播技術」,農作業研究,54(4),201-208,2019.
【文献】深見ら「畝立て乾田直播機の開発・改良と市販化への取組」,農作業研究,54(別1),63-64,2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来の畝直播機構では、作溝ディスクと種子ホースガイドの隙間ができるだけ小さくされていることから、作溝ディスクによって播種溝を成形する際に、畝の土や麦わらなどの作物残渣(以下「作物残渣等」という)が作溝ディスクと種子ホースガイドの間に詰まってしまう問題がある。この問題に対して、例えば、播種機に設けられる当て板部材を搭載することが考えられる(例えば、特許文献2参照)。しかし、当て板部材は、大型であるとともに構造が複雑であるため、畝直播機構に搭載するのは現実的ではない。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、小型で簡素な構成で作溝ディスクと種子ホースガイドの隙間に作物残渣等が進入することを防止できる畝直播機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した畝直播機構は、回転しながら進行方向に移動して畝に播種溝を成形する作溝ディスクと、前記作溝ディスクにおける前記進行方向に関して後方に配置され、種子が内部を落下する種子ホースの少なくとも下端部を覆い、自身の内部を通過する種子を前記播種溝に排出可能な種子ホースガイドと、前記作溝ディスクの側方に先端部が近接し、前記播種溝の成形時には、前記作溝ディスクによって成形された前記播種溝内に埋まる位置に設けられる第1スクレーパと、を備える。
【0010】
この畝直播機構は、作溝ディスクの側方に先端部が近接し、前記播種溝の成形時には、前記作溝ディスクによって成形された前記播種溝内に埋まる位置に設けられる第1スクレーパを備える。このため、小型で簡素な構成で作溝ディスクと種子ホースガイドの隙間に作物残渣等が進入することを防止できる。
【0011】
また、前記種子ホースガイドの底面は下方に向けて開放しており、前記種子ホースガイドの底面に設けられ、前記種子ホースガイドに対する土の進入を阻止する阻止部を更に備えてもよい。
【0012】
この態様では、種子ホースガイドに対する土の進入を阻止する阻止部を備えるので、種子ホースガイドに対する土の進入も阻止することができる。
【0013】
また、前記阻止部は、前記種子ホースガイドの底面を塞ぐ阻止面と、鉛直方向に対して傾斜し、前記種子ホース内を落下した前記種子を前記種子ホースガイドの種子排出箇所に誘導する誘導面と、を備え、前記誘導面が、前記種子ホースの鉛直方向下側に配置されてもよい。
【0014】
この態様では、種子ホースを落下した種子が種子排出箇所に誘導されるので、播種溝における狙いとなる播種深の位置に種子を精度よく誘導することができる。
【0015】
また、前記種子ホースガイドの種子排出箇所と異なる箇所で軸支され、前記種子排出箇所を開閉させるシャッターを更に備えてもよい。
【0016】
この態様では、種子排出箇所を開閉させるシャッターを備えるので、種子排出箇所からの種子ホースガイドに対する土の進入を阻止することができる。
【0017】
また、前記第1スクレーパの前記先端部と異なる端部は、前記種子ホースガイドに固定されていてもよい。
【0018】
この態様では、第1スクレーパを作溝ディスクの側方に先端部が近接する位置に配置させた状態で固定しやすくすることができる。
【0019】
また、前記作溝ディスクと同軸に設けられ、前記作溝ディスクの側方に延出して前記作溝ディスクの作溝深さを決定付ける円柱状のドラム部と、前記ドラム部に対して径方向から近接し、前記ドラム部の湾曲面に対する土の付着を防止する第2スクレーパと、を更に備えてもよい。
【0020】
この態様では、ドラム部に対して径方向から近接し、ドラム部の湾曲面に対する土の付着を防止する第2スクレーパが設けられるので、作溝ディスクが成形する溝の深さを安定させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る畝直播機構によれば、小型で簡素な構成で作溝ディスクと種子ホースガイドの隙間に作物残渣等が進入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の畝直播機構を備える畝立て直播機の斜視図である。
図2】畝直播機構10の平面図である。
図3】畝直播機構10の側面図である。
図4】畝直播機構10の背面図である。
図5】畝直播機構10の要部を前下方から見た斜視図である。
図6】作溝ディスク11の接線L1と作溝ディスク11と重なる部分の第1スクレーパ13が延在する方向に沿った直線L2のなす角度を説明する図。
図7】畝直播機構10で種子を直播する状態の側面図である。
図8】畝直播機構10で種子を直播する状態の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る畝直播機構の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、実施形態の畝直播機構を備える畝立て直播機の斜視図である。図2は、実施形態の畝直播機構の平面図である。図3は、実施形態の畝直播機構の側面図である。図4は、実施形態の畝直播機構の背面図である。以下の説明においては、図2及び図3に示すトラクタMの進行方向(畝直播機構10の進行方向)Pを前(前方)とし、トラクタMを後方から見た右側と左側をそれぞれ左(左方)及び右(右方)と定義する。
【0024】
図1に示すように、畝立て直播機1は、トラクタMにけん引されて走行する。畝立て直播機1は、複数、実施形態では7個の畝直播機構10を備える。7個の畝直播機構10は、左右方向に等間隔で並べられている。畝直播機構10は、互いに同一の構造をなしている。畝立て直播機1は、畝直播機構10のほか、畝成形部40と、図示しない土壌反転ディスクと、を備える。畝立て直播機1は、さらに、複数、実施形態では8個の畝成形部40を備える。8個の畝成形部40は、7個の畝直播機構10の前側で左右方向に等間隔で並べられており、7個の畝直播機構10は、いずれも前後方向に見て2個の畝成形部40に挟まれて配置されている。
【0025】
土壌反転ディスクはトラクタMにおける車輪Wの後方であり、畝成形部40の前方に配置されている。土壌反転ディスクは、トラクタMが走行することで土の表面に付く車輪Wのタイヤ跡を均す。畝立て直播機1は、タイヤ跡の具合に応じて、土を補充しながら土壌反転ディスクによって土を反転させながら圃場を均していく。
【0026】
畝成形部40は、土壌反転ディスクによって反転され均された土から畝Rを成形する。8個の畝成形部40は、7本の畝Rを成形する。畝直播機構10は、畝成形部40によって成形された畝Rの天面に種子を直播する。畝直播機構10は、種子を直播した後、畝Rの天面を転圧して、種子に土を被せていく。
【0027】
図5は、畝直播機構10の要部を前下方から見た斜視図である。図2図5に示すように、畝直播機構10は、例えば、作溝ディスク11と、種子ホースガイド12と、第1スクレーパ13と、阻止部14と、シャッター15と、鎮圧輪16と、ドラム部17と、ホルダ18と、第2スクレーパ19と、アタッチメント21と、を備える。図1に示すように、畝直播機構10の上方には、ホッパ31及び落下速度調整部32が設けられている。落下速度調整部32の下端には、種子ホースHが接続されている。
【0028】
作溝ディスク11は、例えば、フレームFに取り付けられたフロントステーTに回転可能に支持される。作溝ディスク11は、周面が刃となった円盤状をなしている。畝直播機構10がトラクタMによって圃場をけん引されると、作溝ディスク11は、圃場との間の摩擦力で回転する。作溝ディスク11は、回転しながら進行方向Pに移動し、前方に位置する畝Rの土を切り開いて畝Rの天面に播種溝Gを成形する。作溝ディスク11は、例えばステンレスで構成されている。作溝ディスク11は、ステンレス以外の素材で構成されていてもよい。
【0029】
種子ホースガイド12は、作溝ディスク11における進行方向Pに関して後方に配置され、種子が内部を落下する種子ホースHの少なくとも下端部を覆い、自身の内部を通過する種子を播種溝に排出可能である。種子ホースガイド12と作溝ディスク11との間の隙間は狭く、例えば2mm程度である。
【0030】
種子ホースガイド12は、例えば、2枚の平板、例えば鉄板が変形され、溶接等で接合された保護部12Aと、保護部12Aに溶接等で接合された円筒部12Bとを備える。保護部12Aにおける2枚の平板は、互いに接合された後に、前面が閉鎖され、底面及び背面が開放されるように変形されている。このため、種子ホースガイド12は、保護部12Aの上方から円筒部12Bが突出し、底面が下方に向けて開放し、背面が後方に向けて開放している。種子ホースガイド12は、円筒部12Bを有することなく、保護部12Aからなるものでもよい。この場合、種子ホースHの下端部は、保護部12Aに相当する部分に覆われていればよい。
【0031】
種子ホースガイド12の前端部は、例えば、互いに溶接されて閉塞されているとともに、ホルダ18の背面に溶接によって固定されている。円筒部12Bには、種子ホースHが挿入され、種子ホースガイド12は、少なくとも種子ホースHの下端部を覆う。種子ホースHを落下した種子は、種子ホースガイド12内に導入され、種子ホースガイド12から圃場に排出される。
【0032】
第1スクレーパ13は、前後に延びる平板状をなしている。第1スクレーパ13の先端部13Fは、作溝ディスク11の側面に近接し、播種溝Gの成形時には、作溝ディスク11によって成形された播種溝G内に埋まる位置に設けられている。作溝ディスク11の側面に近接した位置とは、例えば、作溝ディスク11からの距離が1cm以内の位置であり、作溝ディスク11の側面に接触する位置を含む。第1スクレーパ13は、作溝ディスク11の側面に近接した位置に配置されることにより、作溝ディスク11と種子ホースガイド12の隙間に対する作物残渣等の進入を防止する。
【0033】
第1スクレーパ13は、例えば鉄などの金属で構成されている。第1スクレーパ13は、鉄以外の金属、例えば銅やステンレスで構成されていてよいし、鉄以外の素材、例えばFRPなどの樹脂で構成されていてもよい。第1スクレーパ13は、弾性を有していてもよく、例えば、先端が作溝ディスク11の回転を阻害することなく作溝ディスク11の側面に軽く触れる程度に付勢される弾性力を有していてもよい。
【0034】
第1スクレーパ13の先端部と異なる端部(後端部)13Rは、例えば、種子ホースガイド12の一側面、実施形態では左側面に例えば溶接によって固定されている。第1スクレーパ13は、ボルト止めなど、他の態様で種子ホースガイド12に固定されていてもよい。第1スクレーパ13は、種子ホースガイド12以外の部材、例えば、ホルダ18に溶接などで固定されていてもよい。第1スクレーパ13は、種子ホースガイド12の一側面のみに設けられているが、種子ホースガイド12の両側面にそれぞれ設けられていてもよい。
【0035】
図6は、作溝ディスク11の接線L1と作溝ディスク11と重なる部分の第1スクレーパ13が延在する方向に沿った直線L2のなす角度を説明する図である。畝直播機構10を側面視した場合における作溝ディスク11と第1スクレーパ13が重なる位置における作溝ディスク11の接線L1と作溝ディスク11と重なる部分の第1スクレーパ13が延在する方向に沿った直線L2がなす角度(以下、「第1スクレーパ角度」という)θは、90°以下の範囲の角度で20°程度の浅い角度とされている。このように、第1スクレーパ角度θは、作溝ディスク11の回転に伴って移動する作物残渣等を後方に流しやすくする浅い角度とされている。
【0036】
阻止部14は、前記種子ホースガイド12の底面に設けられ、種子ホースガイド12に対する土の進入を阻止する。阻止部14は、直角三角柱の形状をなしており、直角三角柱の高さ方向が種子ホースガイド12における2枚の平板が並べられた方向(左右方向)に向いて配置されている。直角三角柱における直角三角形となる側面の直角をなす辺は、前後方向及び鉛直方向にそれぞれ向いて配置される。阻止部14は、直角三角柱以外の形状でもよい。
【0037】
阻止部14は、側面のほか、底面と前面と傾斜面を備える。阻止部14の底面は、鉛直方向に延びる直線に直交する面である。阻止部14の前面は、前後方向に延びる直線に直交する面である。阻止部14の傾斜面は、前方から後方に行くにしたがって低くなるように鉛直方向に対して傾斜する面である。阻止部14の底面は、種子ホースガイド12の底面を塞ぐ。阻止部14の底面は、阻止面の一例である。
【0038】
種子ホースガイド12の背面には、種子ホースガイド12から種子が排出される種子排出箇所となる排出口Eが形成されている。阻止部14は、種子ホースガイド12の円筒部12Bに覆われた種子ホースHの鉛直方向下側に配置される。阻止部14の傾斜面の下端部は、排出口Eに近接している。阻止部14の傾斜面は、種子ホースH内を落下して種子ホースガイド12内に導入された種子を排出口Eに誘導する。傾斜面は、誘導面の一例である。
【0039】
種子ホースHの内部を落下し、種子ホースガイド12内に導入された種子は、例えば、阻止部14の傾斜面に当たって、傾斜面をバウンドしながら斜めに落下し、排出口Eに誘導される。阻止部14の傾斜面は、種子の落下方向に対して角度が小さいほどバウンドが軽減され、種子ホースガイド12内の種子は、種子ホースガイド12の下端部から排出されることになるので、種子の播種深を一定に安定させることができる。このため、阻止部14は、傾斜面の角度を調整して種子のバウンドが小さくなる構成にするのが好適である。阻止部14は、鉄などの金属製やプラスチックなどの樹脂製などでもよい。実施形態において、傾斜面は平面であるが、平面以外でもよく、例えば、湾曲面でもよいし、傾斜面に突起や凹みが設けられていてもよい。
【0040】
種子ホースガイド12の背面における排出口Eには、シャッター15が設けられている。シャッター15は、種子ホースガイド12の排出口Eと異なる箇所、例えば排出口Eの上端部で軸支され、排出口Eを開閉させる。シャッター15は、排出口Eの上端部以外の箇所、例えば排出口Eの側端部で軸支され、観音開きするようにしてもよい。シャッター15は、例えばプラスチック製であり、種子ホースガイド12と比較した単位体積当たりの重量は軽量である。シャッター15は、プラスチック以外の素材、例えば鉄やアルミニウムなどの金属でもよい。
【0041】
シャッター15の下端辺は、阻止部14の底面よりもわずかに高い位置とされている。シャッター15の下端辺には、下方に突出する突起部15Uが設けられている。突起部15Uが設けられていることにより、トラクタMによって畝直播機構10が移動させられると、突起部15Uが地面に引っかかり、シャッター15が開放する構造となっている。
【0042】
鎮圧輪16は、種子ホースガイド12の後方に配置される。鎮圧輪16は、フレームFの後端部に回転可能に取り付けられている。鎮圧輪16は、作溝ディスク11が成形した播種溝Gに対して、種子ホースガイド12から排出される種子が直播された後に、畝Rの天面を鎮圧する。鎮圧輪16が畝Rの天面を鎮圧することにより、種子が直播された播種溝Gに土が被せられ、畝Rが締め固められる。
【0043】
ドラム部17は、作溝ディスク11の左右両側方において、作溝ディスク11と同軸に設けられている。ドラム部17は、作溝ディスク11の側方に延出して作溝ディスク11の作溝深さを決定付ける円柱状の部材である。ドラム部17は、作溝ディスク11と共通の回転軸周りに回転する。ドラム部17の径は、作溝ディスク11の径と比較して、作溝ディスクの作溝深さとなる分短くされている。畝直播機構10によって種子を直播する際に、ドラム部17は、畝Rの天面上を走行する。このため、作溝ディスク11の作溝深さは、作溝ディスク11の径とドラム部17の径の差に基づいて変動する。ドラム部17は、作溝ディスクの作溝深さを決定付ける深度決定付けドラムとして機能する。
【0044】
ホルダ18は、作溝ディスク11及びドラム部17の回転軸の後方に配置されている。ホルダ18は、前方が開口するコ字形状をなす。ホルダ18の開口部分にドラム部17の後方部分が挟み込まれている。ホルダ18の下側には、第2スクレーパ19が配置されている。ホルダ18は、ボルト止めによって第2スクレーパ19を保持している。
【0045】
第2スクレーパ19は、作溝ディスク11の左側方及び右側方それぞれに配置された左第2スクレーパ19A及び右第2スクレーパ19Bを備える。左第2スクレーパ19A及び右第2スクレーパ19Bは、いずれも板状の部材であり、ドラム部17の後方に配置されている。左第2スクレーパ19Aの前側辺は、ドラム部17の湾曲面に近接し、右側辺は作溝ディスク11の左側面に近接する。右第2スクレーパ19Bの前側辺は、ドラム部17の湾曲面に近接し、左側辺は作溝ディスク11の右側面に近接する。
【0046】
第2スクレーパ19は、ドラム部17に対して径方向から近接し、ドラム部17の湾曲面(円柱側面)に対する土の付着を防止する。さらに、第2スクレーパ19は、作溝ディスク11に対して側方から近接し、作溝ディスク11の側面に対する土の付着を防止する。第2スクレーパ19は、ドラム部17に対して径方向から近接するが、作溝ディスク11に対しては近接しないものでもよいし、作溝ディスク11に対して側方から近接するが、ドラム部17に対して近接しないものでもよい。
【0047】
アタッチメント21は、フレームFの先端に取り付けられている。アタッチメント21は、図示しないトラクタMのアタッチメント受と直接的または間接的に接続されている。アタッチメント21がトラクタMのアタッチメント受と接続されることにより、トラクタMによって畝直播機構10をけん引可能となる。
【0048】
ホッパ31は、例えば、種子ホースガイド12の鉛直方向上方に配置される。ホッパ31には、種子が多数収容されており、ホッパ31は、収容している種子を落下口から落下させることにより、畝Rに直播する種子を順次供給する。落下速度調整部32は、ホッパ31の落下口に配置されている。落下速度調整部32は、ホッパ31から落下する種子の落下速度を調整する。ここでの種子の落下速度とは、単位時間当たりにおける落下する種子の量(数または重量)である。落下速度は、例えば、作業員の入力に基づいて定められてもよいし、育成する作物の数と圃場の面積などに基づいて算出するなど、適宜の要素に基づいて算出して定められてもよい。
【0049】
続いて、トラクタMで畝立て直播機1をけん引し、畝直播機構10によって種子を直播する際の畝直播機構10の動作について説明する。図7は、畝直播機構10で種子Sを直播する状態の側面図、図8は、その背面図である。畝直播機構10によって畝Rに種子Sを直播する際には、トラクタMは、畝立て直播機1をけん引する。畝立て直播機1の畝成形部40は、圃場に畝Rを成形する。畝直播機構10は、成形された畝Rの天面に種子Sを直播する。
【0050】
種子Sを直播するにあたり、畝直播機構10は、トラクタMにけん引されることにより、畝成形部40が成形した畝Rの天面に作溝ディスク11によって播種溝Gを作溝する。播種溝Gを作溝する際、作溝ディスク11は、トラクタMによるけん引力と畝Rと摩擦力によって自転し、作溝ディスク11の自転によって播種溝Gが安定的に作溝される。
【0051】
種子Sを直播する際、畝直播機構10は、ホッパ31内の種子Sを、落下速度調整部32によって落下量(落下速度)を調整しながら、種子ホースH内を落下させる。種子ホースH内を落下した種子Sは、種子ホースガイド12内に導入される。圃場に対する種子Sの播種量は、主に落下速度調整部32によって決定される。種子ホースガイド12内に導入された種子Sは、種子ホースガイド12内で阻止部14の傾斜面に衝突する。
【0052】
傾斜面に衝突した種子Sは、傾斜面によって衝撃を吸収されて速度を落とす。種子Sは、そのまま傾斜面に沿って落下して種子ホースガイド12の排出口Eまで案内される。排出口Eまで案内された種子Sは、そのまま排出口Eから排出され播種溝Gに直播される。直播される種子Sは、排出口Eから排出される前に阻止部14の傾斜面によって排出口Eまで案内される。このため、種子Sを排出口から排出する際の高さ位置を安定させることができるので、播種深を安定させることができる。
【0053】
作溝ディスク11によって畝Rの土を切り開く際、作溝ディスク11の側面に土が付着したり、作溝ディスク11の回転に伴って圃場に散乱する麦わらなどの作物残渣が巻き込まれたりすることがある。第1スクレーパ13は、このような作溝ディスク11の回転に伴って移動する作物残渣等を後方に流し、作溝ディスク11と種子ホースガイド12の間に対する作物残渣等の進入を防止している。
【0054】
作溝ディスク11によって播種溝Gを作溝するにあたり、第1スクレーパ角度θは浅く、作溝ディスク11の回転に伴って移動する作物残渣等を後方に流しやすい角度とされている。このため、作溝ディスク11の回転に伴って作溝ディスク11と種子ホースガイド12の間に移動しようとする作物残渣等は、作溝ディスク11と種子ホースガイド12の間に到達する前の段階で、第1スクレーパ13によって後方に移動させられる。したがって、作溝ディスク11と種子ホースガイド12の間における作物残渣等の詰まりが防止される。第1スクレーパ角度θは、90°以下の範囲で10°以下、15°以下、30°以下などの浅い角度としてもよい。
【0055】
さらに、種子ホースガイド12の底面は開放しており、背面には排出口Eが形成されているが、種子ホースガイド12の底面は阻止部14によって塞がれており、排出口Eはシャッター15によって閉鎖されている。このため、種子ホースガイド12の底面や排出口Eを通じた種子ホースガイド12の内部、特に種子ホースガイド12における種子ホースHから種子Sが導入される領域への畝Rの土の進入が防止される。
【0056】
シャッター15によって排出口Eが閉鎖されたままでは、排出口Eからの種子Sの排出ができなくなるが、シャッター15には、突起部15Uが設けられていることにより、畝直播機構10が前進すると、突起部15Uが畝Rに引っかかってシャッター15が開放する。シャッター15が開放した状態で畝直播機構10が停止すると、突起部15Uの引っ掛かりが外れて、シャッター15が閉鎖する。このようにシャッター15が開放と閉鎖を繰り返すことにより、排出口Eから種子Sを排出しながら、種子ホースガイド12内への土の進入が防止される。
【0057】
畝直播機構10の前進に伴い、作溝ディスク11の側面に土などが付着するとともに、作溝ディスク11と同軸のドラム部17の湾曲面にも土などが付着する。ドラム部17の湾曲面に土が付着すると、作溝ディスク11によって作溝される播種溝Gの深さが安定せず、種子Sの播種深が安定しない原因となり得る。第2スクレーパ19は、ドラム部17に対して径方向から近接し、ドラム部17の湾曲面に対する土の付着を防止することで、播種溝Gの深さを安定させ、種子Sの播種深を安定させる。
【0058】
第2スクレーパ19は、ドラム部17の湾曲面に近接するとともに、作溝ディスク11に対して側方から近接し、作溝ディスク11の側面に対する土の付着を防止する。このため、第2スクレーパ19によっても作溝ディスク11に対する土の不着が防止され、その分作溝ディスク11と種子ホースガイド12の間に対する作物残渣等の進入が防止される。第2スクレーパ19は、ドラム部17の湾曲面及び作溝ディスク11の側面に近接する位置に配置され、ドラム部17の湾曲面及び作溝ディスク11の側面に対する土の付着を防止する。このため、部品点数の削減に寄与する。
【0059】
実施形態の畝直播機構10は、作溝ディスク11の側方に先端部が近接し、播種溝Gの成形時には、作溝ディスク11によって成形された播種溝G内に埋まる位置に設けられる第1スクレーパを備える。このため、作溝ディスクと種子ホースガイドの隙間に作物残渣等が進入することを防止できる。さらには、当て板部材などの大掛かりな装置を必要とせず、簡素な構成とすることができる。
【0060】
上記の実施形態において、種子ホースガイド12は、2枚の板を溶接して底面及び側面が開放されているが、他の態様で種子ホースガイド12が設けられていてもよい。例えば、種子ホースガイドは、箱状の筐体であって、底面または背面に種子Sを排出するための排出口が形成されていてもよい。
【0061】
上記の実施形態において、畝立て直播機1が備える複数の畝直播機構10は、いずれも同一の形態をなしているが、圃場等の性質に応じて異なる形態をなしていてもよい。例えば、トラクタMのタイヤ跡に形成される畝Rに種子Sを直播する畝直播機構10における第1スクレーパ13は、タイヤ跡の補充される土の性質に応じて、他の畝直播機構10における第1スクレーパ13と異なるものを用いてもよい。例えば、タイヤ跡に補充される土が圃場の土よりも軟弱である場合には、タイヤ跡に成型される畝Rに種子Sを直播する畝直播機構10では、他の畝直播機構10の第1スクレーパよりも作物残渣等の進入防止能力が高い第1スクレーパを備えるものとしてもよい。
【0062】
上記の実施形態では、第1スクレーパ13及び阻止部14を設けているが、第1スクレーパ13を設けることなく阻止部14を設けるようにしてもよい。特に、播種の対象となる圃場が、藁がないまたは少量の圃場である場合には、第1スクレーパ13のない阻止部14のみの構成で作溝ディスク11と種子ホースガイド12の間、及び種子ホースガイド12に対する土詰まりを抑制することができる。また、上記実施形態では、第1スクレーパ13は種子ホースガイド12に例えば溶接によって固定されているが、第1スクレーパ13は、着脱自在であるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…直播機
10…畝直播機構
11…作溝ディスク
12…種子ホースガイド
13…第1スクレーパ
14…阻止部
15…シャッター
15U…突起部
16…鎮圧輪
17…ドラム部
18…ホルダ
19…第2スクレーパ
21…アタッチメント
31…ホッパ
32…落下速度調整部
40…畝成形部
E…排出口
G…播種溝
H…種子ホース
M…トラクタ
R…畝
S…種子
W…車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8