(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】高分子化合物、組成物、インク、及び光電変換素子
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20240718BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240718BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20240718BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240718BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20240718BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20240718BHJP
【FI】
C08G61/12
C08L65/00
C09D11/00
H01L27/146 E
H10K30/60
H10K39/32
(21)【出願番号】P 2020023203
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴史
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-036357(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0056729(KR,A)
【文献】特表2017-509750(JP,A)
【文献】特表2016-524010(JP,A)
【文献】特開2011-249757(JP,A)
【文献】特開2011-246687(JP,A)
【文献】特開2012-107187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00- 61/12
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
H01L 27/00- 27/15
H10K 30/00- 39/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位とを
繰り返し単位として含む、高分子化合物。
【化1】
(式中、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子を表し、
Zは、窒素原子、又は、-C(R
a)=で表される基を表し、
R
1、R
2、R
3、及びR
aは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
-C(=O)-R
bで表される基、又は
-SO
2-R
cで表される基を表し、
R
b及びR
cは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)
【請求項2】
式(1)で表される構成単位と、式(2)で表される構成単位とが、直接結合した単位を含む、請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
構成単位が、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位のみからなる、請求項1又は2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
Zが、窒素原子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
X
1及びX
2が、それぞれ硫黄原子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
R
1、R
2、及びR
3が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の高分子化合物と、n型半導体材料とを含む、組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の高分子化合物と、n型半導体材料と、溶媒とを含む、インク。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む、光電変換素子。
【請求項10】
光検出素子である、請求項9に記載の光電変換素子。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の光電変換素子を含む、イメージセンサ。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の光電変換素子を含む、生体認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物、組成物、インク、及び光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、例えば、省エネルギー、二酸化炭素の排出量の低減の観点から極めて有用なデバイスであり、注目されている。
【0003】
光電変換素子に用いられる電子供与性化合物として、例えば、下記の高分子化合物が知られている(特許文献1:ポリマー1、非特許文献1)。
【0004】
【0005】
前記ポリマー1において、R1は2-エチルヘキシルを表す。R2は3,7-ジメチルオクチルを表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Macromolecules,2013,46(9),3384-3390
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、赤外線を検出する、イメージセンサ、生体認証装置などの装置の需要が伸びている。これらの装置に用いられる光電変換素子は、各装置の種類に応じて、波長1000nm以上の所定の波長範囲の光を効率よく電気信号に変換できることが求められる。
【0009】
しかし、汎用される、シリコンなどの無機半導体を利用した光電変換素子は、波長1000nm以上の光に対する外部量子効率(EQE)が通常数%以下である。特殊な無機半導体を利用した光電変換素子のなかには、波長1000nm以上の光に対するEQEが、比較的高い素子もあるが、製造コストが大きい。
一方、有機高分子化合物を利用した光電変換素子は、一般に無機半導体を利用した光電変換素子と比較して、製造コストが小さい。しかし、特許文献1及び非特許文献1に記載された前記の有機高分子化合物を用いた光電変換素子は、波長1000nm以上の光に対するEQEが非常に小さかった。
【0010】
したがって、光電変換素子に利用した場合に、波長1000nm以上の所定の波長範囲において高いEQEを実現できる、高分子化合物が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、特定の構成単位を含む高分子化合物により、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0012】
[1] 式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位とを含む、高分子化合物。
【化2】
(式中、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子を表し、
Zは、窒素原子、又は、-C(R
a)=で表される基を表し、
R
1、R
2、R
3、及びR
aは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
-C(=O)-R
bで表される基、又は
-SO
2-R
cで表される基を表し、
R
b及びR
cは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)
[2] 式(1)で表される構成単位と、式(2)で表される構成単位とが、直接結合した単位を含む、[1]に記載の高分子化合物。
[3] 構成単位が、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位のみからなる、[1]又は[2]に記載の高分子化合物。
[4] Zが、窒素原子である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の高分子化合物。
[5] X
1及びX
2が、それぞれ硫黄原子である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の高分子化合物。
[6] R
1、R
2、及びR
3が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の高分子化合物。
[7] [1]~[6]のいずれか一項に記載の高分子化合物と、n型半導体材料とを含む、組成物。
[8] [1]~[6]のいずれか一項に記載の高分子化合物と、n型半導体材料と、溶媒とを含む、インク。
[9] [1]~[6]のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む、光電変換素子。
[10] 光検出素子である、[9]に記載の光電変換素子。
[11] [9]又は[10]に記載の光電変換素子を含む、イメージセンサ。
[12] [9]又は[10]に記載の光電変換素子を含む、生体認証装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光電変換素子に利用した場合に、波長1000nm以上の所定の波長範囲において高いEQEを実現できる、高分子化合物;該高分子化合物を含む組成物;該高分子化合物を含むインク;該高分子化合物を含む光電変換素子;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、光電変換素子の構成例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、イメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[用語の説明]
以下、本明細書における用語について説明する。
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×103以上1×108以下である重合体を意味する。なお、高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
【0016】
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在している、原料モノマーに由来する残基を意味する。
【0017】
「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0018】
「ハロゲン原子」の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0019】
「置換基を有していてもよい」態様には、化合物又は基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、及び1個以上の水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様が含まれる。
【0020】
置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、及びニトロ基が挙げられる。
【0021】
「アルキル基」は、直鎖状でもあっても分岐状であってもよい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。
【0022】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル墓、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、3,7,11-トリメチルドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、イコシル基が挙げられる。
【0023】
置換基を有するアルキル基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアルキル基(例、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、4,4,4,-トリフルオロブチル基、-CH2-(CF2)2-CF3で表される基、-(CF2)2-CH2-CF3で表される基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基)、1個以上の水素原子が塩素原子により置換されたアルキル基(例、トリクロロメチル基、4,4,4-トリクロロブチル基)、アルキルオキシ基により置換されたアルキル基、アリール基により置換されたアルキル基が挙げられる。
【0024】
「シクロアルキル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30である。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0025】
置換基を有するシクロアルキル基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたシクロアルキル基、アルキル基により置換されたシクロアルキル基、アルキルオキシ基により置換されたシクロアルキル基が挙げられる。
【0026】
「アルケニル基」は、直鎖状でもあってもよく、分岐状であってもよい。アルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30である。
【0027】
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基が挙げられる。
【0028】
置換基を有するアルケニル基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアルケニル基、C1~C12アルキルオキシ基により置換されたアルケニル基が挙げられる。「C1~C12アルキル」は、その炭素原子数が1~12であることを示す。さらに、「Cm~Cnアルキル」は、その炭素原子数がm~nであることを示す。以下も同様である。
【0029】
「シクロアルケニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルケニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30である。
【0030】
シクロアルケニル基の具体例としては、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基が挙げられる。
【0031】
置換基を有するシクロアルケニル基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたシクロアルケニル基、C1~C12アルキル基により置換されたシクロアルケニル基、C1~C12アルキルオキシ基により置換されたシクロアルケニル基が挙げられる。
【0032】
「アルキニル基」は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキニル基は、置換基を有していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30である。
【0033】
アルキニル基の具体例としては、1-エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-メチル-1-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、7-オクチニル基が挙げられる。
【0034】
置換基を有するアルキニル基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアルキニル基、C1~C12アルキルオキシ基により置換されたアルキニル基が挙げられる。
【0035】
「シクロアルキニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30である。
シクロアルキニル基の具体例としては、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクチニル基が挙げられる。
【0036】
置換基を有するシクロアルキニル基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたシクロアルキニル基、C1~C12アルキル基により置換されたシクロアルキニル基、C1~C12アルキルオキシ基により置換されたシクロアルキニル基が挙げられる。
【0037】
「アルキルオキシ基」は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。アルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。
【0038】
アルキルオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、3,7,11-トリメチルドデシルオキシ基が挙げられる。
【0039】
置換基を有するアルキルオキシ基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアルキルオキシ基(例、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基)、アルキルオキシ基により置換されたアルキルオキシ基(例、メトキシメチルオキシ基、2-メトキシエチルオキシ基)が挙げられる。
【0040】
「シクロアルキルオキシ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30である。
【0041】
シクロアルキルオキシ基の具体例としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基が挙げられる。
【0042】
置換基を有するシクロアルキル基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたシクロアルキルオキシ基、及びC1~C12アルキル基により置換されたシクロアルキルオキシ基が挙げられる。
【0043】
「アルキルチオ基」は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。
【0044】
アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、ドデシルチオ基が挙げられる。
【0045】
置換基を有するアルキルチオ基の例としては、トリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0046】
「シクロアルキルチオ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30である。
【0047】
シクロアルキルチオ基の具体例としては、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基が挙げられる。
【0048】
置換基を有するシクロアルキルチオ基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたシクロアルキルチオ基、C1~C12アルキル基により置換されたシクロアルキルチオ基が挙げられる。
【0049】
「アリール基」は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。したがって、アリール基は置換基を有していてもよい。
【0050】
アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60である。
アリール基の具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基が挙げられる。
【0051】
置換基を有するアリール基の例としては、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアリール基(例、ペンタフルオロフェニル基)、1個以上の水素原子が塩素原子により置換されたアリール基(例、3,4,5-トリクロロフェニル)、C1~C12アルキルオキシフェニル基、C1~C12アルキルフェニル基、C1~C12アルキルスルホニルフェニル基、シアノフェニル基が挙げられる。
【0052】
「アリールオキシ基」は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60である。
【0053】
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントリルオキシ基、9-アントリルオキシ基、及び1-ピレニルオキシ基が挙げられる。
【0054】
置換基を有するアリールオキシ基の例としては、C1~C12アルキルオキシフェノキシ基、C1~C12アルキルフェノキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
【0055】
「アリールチオ基」は、置換基を有していてもよい。アリールチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60である。
【0056】
アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基が挙げられる。
【0057】
置換基を有するアリールチオ基の具体例としては、C1~C12アルキルオキシフェニルチオ基、C1~C12アルキルフェニルチオ基、及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0058】
「1価の複素環基」は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。したがって、1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。
【0059】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは4~20である。
【0060】
1価の複素環基を構成するための複素環式化合物の例としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、プラゾリジン、フラザン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、チオピラン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、モルホリン、トリアジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、クロマン、イソクロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、キノリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、キナゾリジン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、キサンテン、フェナントリジン、アクリジン、β-カルボリン、ペリミジン、フェナントロリン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジンが挙げられる。
【0061】
1価の複素環基の具体例としては、チエニル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基が挙げられる。
【0062】
置換基を有する1価の複素環基の例としては、1個以上の水素原子がC1~C12アルキル基により置換された1価の複素環基、1個以上の水素原子がC1~C12アルキルオキシ基により置換された1価の複素環基が挙げられる。
【0063】
「置換アミノ基」とは、置換基を有するアミノ基を意味する。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、アリール基、1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。
置換アミノ基の例としては、ジアルキルアミノ基(例、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基)、ジアリールアミノ基(例、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基)が挙げられる。
【0064】
「アシル基」は、置換基を有していてもよい。アシル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは2~18である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0065】
「イミン残基」とは、イミンから、炭素原子-窒素原子二重結合を構成する炭素原子又は窒素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。「イミン化合物」とは、分子内に、炭素原子-窒素原子二重結合を有する有機化合物を意味する。イミン化合物の例としては、アルジミン、ケチミン、及びアルジミン中の炭素原子-窒素原子二重結合を構成する窒素原子に結合している水素原子が、アルキル基などで置換された化合物が挙げられる。
【0066】
イミン残基の炭素原子数は、通常2~20であり、好ましくは2~18である。イミン残基の例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0067】
【0068】
「アミド基」は、アミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常1~20であり、好ましくは1~18である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0069】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、通常4~20である。酸イミド基の具体例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0070】
【0071】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’-O-(C=O)-で表される基を意味する。ここで、R’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又は1価の複素環基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
【0072】
置換オキシカルボニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは2~48である。
【0073】
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7-ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、及びピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0074】
「アルキルスルホニル基」は、直鎖状でもあってもよく、分岐状であってもよい。アルキルスルホニル基は、置換基を有していてもよい。アルキルスルホニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。アルキルスルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、及びドデシルスルホニル基が挙げられる。
【0075】
[1.高分子化合物]
本発明の一実施形態に係る高分子化合物は、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位とを含む。式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位は、2価の基である。以下、本発明の一実施形態に係る高分子化合物を、高分子化合物Pともいう。
【0076】
【0077】
式中の各記号は、下記の意味を表す。下記の各記号の意味及び例示は、互いに自由に組み合わせることができる。
【0078】
X1及びX2は、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子を表す。好ましくは、X1及びX2は、それぞれ硫黄原子である。
【0079】
Zは、窒素原子、又は、-C(Ra)=で表される基を表し、好ましくは窒素原子である。
【0080】
R1、R2、R3、及びRaは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、-C(=O)-Rbで表される基、又は-SO2-Rcで表される基を表す。
【0081】
Rb及びRcは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
【0082】
R1、R2、R3、及びRaにより表されるハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。
【0083】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいアルキル基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20のアルキル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~15のアルキル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~12のアルキル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~10のアルキル基である。ここで、アルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0084】
R1、R2、R3、及びRaにより表されるアルキル基が有していてもよい置換基は、好ましくは、ハロゲン原子であり、より好ましくはフッ素原子及び/又は塩素原子である。
【0085】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいシクロアルキル基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数3~10のシクロアルキル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数5~6のシクロアルキル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、シクロヘキシル基である。ここで、シクロアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0086】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいアルケニル基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数2~10のアルケニル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数2~6のアルケニル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、2-プロペニル基又は5-ヘキセニル基である。ここで、アルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0087】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいシクロアルケニル基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数3~10のシクロアルケニル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数6~7のシクロアルケニル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、シクロヘキセニル基又はシクロヘプテニル基である。ここで、シクロアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0088】
R1、R2、R3、及びRaにより表されるシクロアルケニル基が有していてもよい置換基は、好ましくはC1~C12アルキル基である。
【0089】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいアルキニル基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数2~10のアルキニル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数5~6のアルキニル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、5-ヘキシニル基又は3-メチル-1-ブチニル基である。ここで、アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0090】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいシクロアルキニル基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数6~10のシクロアルキニル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数7~8のシクロアルキニル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、シクロヘプチニル基又はシクロオクチニル基である。ここで、シクロアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0091】
R1、R2、R3、及びRaにより表されるシクロアルキニル基が有していてもよい置換基は、好ましくはC1~C12アルキル基である。
【0092】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいアルキルオキシ基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~8のアルキルオキシ基であり、更に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、3-メチルブチルオキシ、又は2-エチルヘキシルオキシ基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。ここで、アルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0093】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいアルキルチオ基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~6のアルキルチオ基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~3のアルキルチオ基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、メチルチオ基又はプロピルチオ基である。ここで、アルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0094】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいアリール基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数6~15のアリール基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、フェニル基又はナフチル基である。ここで、アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0095】
R1、R2、R3、及びRaにより表されるアリール基が有していてもよい置換基は、好ましくは、ハロゲン原子(例、塩素原子、フッ素原子)、C1~C12アルキル基(例、メチル基、トリフルオロメチル基、tert-ブチル基、オクチル基、ドデシル基)、C1~C12アルキルオキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、オクチルオキシ基)、C1~C12アルキルスルホニル基(例、ドデシルスルホニル基)、及び/又はシアノ基である。
【0096】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいアリールオキシ基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数6~15のアリールオキシ基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、フェニルオキシ基又はアントラセニルオキシ基である。ここで、アリールオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0097】
R1、R2、R3、及びRaにより表されるアリールオキシ基が有していてもよい置換基は、好ましくは、C1~C12アルキル基であり、より好ましくはC1~C6アルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。
【0098】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよいアリールチオ基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数6~10のアリールチオ基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいフェニルチオ基である。ここで、アリールチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0099】
R1、R2、R3、及びRaにより表されるアリールチオ基が有していてもよい置換基は、好ましくは、C1~C12アルキル基であり、より好ましくはC1~C6アルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。
る。
【0100】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよい1価の複素環基は、好ましくは、置換基を有していてもよい、5員又は6員である、1価の複素環基である。5員である1価の複素環基の例としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、及びピロリジニル基が挙げられる。6員である1価の複素環基の例としては、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、及びテトラヒドロピラニル基が挙げられる。
【0101】
R1、R2、R3、及びRaにより表される置換基を有していてもよい1価の複素環基は、より好ましくは、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、又はピラジル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0102】
R1、R2、R3、及びRaにより表される1価の複素環基が有していてもよい置換基は、好ましくは、C1~C12アルキル基(例、メチル基、トリフルオロメチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基)である。
【0103】
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~15のアルキル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~12のアルキル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~10のアルキル基であり、更に好ましくは、R1及びR2は、同時に、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~10のアルキル基である。
【0104】
R3は、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~15のアルキル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~12のアルキル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~10のアルキル基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~8のアルキル基である。
【0105】
ここで、アルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0106】
Raは、好ましくは、水素原子である。
【0107】
Rbは、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアルキルオキシ基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~12のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~12のアルキルオキシ基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~12のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~6のアルキルオキシ基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、2-メチルプロピル基、オクチル基、ドデシル基、又はエトキシ基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。ここで、アルキル基及びアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0108】
Rcは、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~12のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい、炭素原子数6~10のアリール基であり、更に好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~8のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい、炭素原子数6~15のアリール基であり、更に好ましくは、メチル基、オクチル基、2-メチルプロピル基、又はフェニル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。ここで、アルキル基及びアリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0109】
式(1)で表される構成単位の具体例としては、下記式(1-1)~(1-24)で表される構成単位が挙げられる。
【0110】
【0111】
【0112】
式(1)で表される構成単位としては、式(1-2)~式(1-11)で表される構成単位が好ましく、式(1-2)~式(1-8)で表される構成単位がより好ましく、式(1-5)で表される構成単位が更に好ましい。
【0113】
式(2)で表される構成単位の具体例としては、式(2-1)~式(2-42)で表される構成単位が挙げられる。
【0114】
【0115】
【0116】
式(2)で表される構成単位としては、式(2-1)~式(2-30)で表される構成単位が好ましく、式(2-2)~式(2-7)で表される構成単位がより好ましく、式(2-3)で表される構成単位が更に好ましい。
【0117】
高分子化合物Pは、好ましくは、式(1)で表される構成単位と、式(2)で表される構成単位とが、直接結合した単位を含む。以下、かかる単位を、単位(I-II)ともいう。
【0118】
単位(I-II)は、式(1)で表される構成単位と、式(2)で表される構成単位とが、他の構成単位を介さずに直接結合により結合している単位である。
単位(I-II)の例としては、下記式(I-II-1)~式(I-II-4)で表される単位が挙げられる。
【0119】
【0120】
式(I-II-1)~式(I-II-4)において、X1、X2、Z、R1、R2、及びR3は、前記と同じ意味を表す。
【0121】
高分子化合物Pは、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位以外の、任意の構成単位を含みうる。好ましい態様では、高分子化合物Pは、構成単位が、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位のみからなる。
【0122】
高分子化合物Pの重量平均分子量は、好ましくは1×103以上、より好ましくは3×103、更に好ましくは1×104以上であり、好ましくは1×108以下、より好ましくは1×107以下、更に好ましくは1×106以下である。ここで、高分子化合物Pの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、移動相としてテトラヒドロフランを用いて、ポリスチレンの標準試料を用いて算出した重量平均分子量を意味する。
【0123】
[2.高分子化合物の製造方法]
高分子化合物Pの製造方法としては、特に制限されるものではないが、高分子化合物Pの合成の容易さからは、Suzukiカップリング反応やStilleカップリング反応などを用いる方法が好ましい。
【0124】
Suzukiカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式(100):
Q100-E1-Q200 (100)
〔式中、E1は、式(1)で表される2価の基を表す。Q100及びQ200は、同一又は相異なり、ボロン酸残基(-B(OH)2)又はホウ酸エステル残基を表す。〕
で表される1種類以上の化合物と、式(200):
T1-E2-T2 (200)
〔式中、E2は、式(2)で表される2価の基を表す。T1及びT2は、同一又は相異なり、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。〕
で表される1種類以上の化合物とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。E1として好ましくは、前述の式(1-1)~式(1-24)で表される基が挙げられる。E2として好ましくは、前述の式(2-1)~式(2-42)で表される基が挙げられる。
【0125】
この場合、反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計に対して、過剰であることが好ましい。反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計を1モルとすると、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が0.6~0.99モルであることが好ましく、0.7~0.95モルであることが更に好ましい。
【0126】
ホウ酸エステル残基の例としては、下記式で表される基が挙げられる。
【0127】
【0128】
式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0129】
式(200)における、T1及びT2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物Pの合成の容易さからは、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることが更に好ましい。
【0130】
式(200)における、T1及びT2で表されるアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基が例示される。アリールアルキルスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基が例示される。
【0131】
具体的には、Suzukiカップリング反応を行う方法としては、任意の溶媒中において、触媒としてパラジウム触媒を用い、塩基の存在下で反応させる方法等が挙げられる。
【0132】
Suzukiカップリング反応に使用するパラジウム触媒としては、例えば、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒等が挙げられ、具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム等が挙げられるが、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
パラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル~0.5モル、好ましくは0.0003モル~0.1モルである。
【0133】
Suzukiカップリング反応に使用するパラジウム触媒としてパラジウムアセテート類を用いる場合は、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(o-メトキシフェニル)ホスフィン等のリン化合物を配位子として添加することができる。この場合、配位子の添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル~100モルであり、好ましくは0.9モル~20モル、更に好ましくは1モル~10モルである。
【0134】
Suzukiカップリング反応に使用する塩基としては、無機塩基、有機塩基、無機塩等が挙げられる。無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム等が挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化セシウム等が挙げられる。
塩基の添加量は、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.5モル~100モル、好ましくは0.9モル~20モル、更に好ましくは1モル~10モルである。
【0135】
Suzukiカップリング反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が例示される。高分子化合物Pの溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。また、塩基は、水溶液として加え、2相系で反応させてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、無機塩の溶解性の観点から、通常、水溶液として加えて反応させる。
なお、塩基を水溶液として加え、2相系で反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を加えてもよい。
【0136】
Suzukiカップリング反応を行う温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50~160℃程度であり、高分子化合物Pの高分子量化の観点から、60~120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間~200時間程度である。1時間~30時間程度が効率的で好ましい。
【0137】
Suzukiカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下、Pd(0)触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、重合容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、この重合容器に、式(100)で表される化合物、式(200)で表される化合物、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を仕込み、さらに、重合容器を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、トルエンを加えた後、この溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基、例えば、炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0138】
Stilleカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式(300):
Q300-E3-Q400 (300)
〔式中、E3は、式(1)で表される2価の基を表す。Q300及びQ400は、同一又は相異なり、有機スズ残基を表す。〕
で表される1種類以上の化合物と、下記式(400):
T3-E4-T4 (400)
〔式中、E4は、式(2)で表される2価の基を表す。T3及びT4は、同一又は相異なり、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。〕
で表される1種類以上の化合物とを、パラジウム触媒の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。E3として好ましくは、前述の式(1-1)~式(1-24)で表される基が挙げられる。E4として好ましくは、前述の式(2-1)~式(2-42)で表される基が挙げられる。
【0139】
有機スズ残基としては、例えば、-SnR100
3で表される基等が挙げられる。ここでR100は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル墓、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、イコシル基などが挙げられる。シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。アリール基の例としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。有機スズ残基として好ましくは-SnMe3、-SnEt3、-SnBu3、-SnPh3であり、更に好ましくは-SnMe3、-SnEt3、-SnBu3である。上記好ましい例において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基を表す。
【0140】
式(400)における、T3及びT4で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物Pの合成の容易さからは、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましい。
【0141】
式(400)における、T3及びT4で表されるアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基が例示される。
【0142】
具体的には、触媒として、例えば、パラジウム触媒下で任意の溶媒中で反応する方法が挙げられる。
Stilleカップリング反応に使用するパラジウム触媒としては、例えば、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒が挙げられる。具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが挙げられ、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
Stilleカップリング反応に使用するパラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(400)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル~0.5モル、好ましくは0.0003モル~0.2モルである。
【0143】
Stilleカップリング反応において、必要に応じて配位子や助触媒を用いることもできる。配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(o-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-フリル)ホスフィン等のリン化合物やトリフェニルアルシン、トリフェノキシアルシン等の砒素化合物が挙げられる。助触媒の例としてはヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、2-テノイル酸銅(I)などが挙げられる。
配位子又は助触媒を用いる場合、配位子又は助触媒の添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル~100モルであり、好ましくは0.9モル~20モル、更に好ましくは1モル~10モルである。
【0144】
Stilleカップリング反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。高分子化合物Pの溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。
【0145】
Stilleカップリング反応を行う温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50~160℃程度であり、高分子化合物Pの高分子量化の観点から、60~120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。
前記反応を行う時間(反応時間)は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間~200時間程度である。1時間~30時間程度が効率的で好ましい。
【0146】
Stilleカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下、Pd触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、重合容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、この重合容器に、式(300)で表される化合物、式(400)で表される化合物、パラジウム触媒を仕込み、さらに、重合容器を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、トルエンを加えた後、必要に応じて配位子や助触媒を加え、その後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で6~8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0147】
式(200)、式(300)で表される化合物は、例えば、国際公開第2011/052709号に記載の方法により製造することができる。
式(400)で表される化合物は、例えば、米国特許出願公開第2013/0137848号明細書に記載の方法により製造することができる。
式(100)で表される化合物は、例えば、米国特許出願公開第2013/0137848号明細書に記載の方法及び国際公開第2011/052709号に記載の方法により製造することができる。
【0148】
[3.高分子化合物を含む組成物]
本実施形態の組成物は、前記高分子化合物Pと、n型半導体材料とを含む。本実施形態の組成物に含まれる高分子化合物Pの例、及び好ましい例については、前記[1.高分子化合物]において説明したとおりである。
【0149】
組成物に含まれうるn型半導体材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0150】
低分子化合物であるn型半導体材料(電子受容性化合物)の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、C60フラーレン等のフラーレン及びその誘導体、並びに、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体が挙げられる。
【0151】
高分子化合物であるn型半導体材料(電子受容性化合物)の例としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0152】
n型半導体材料としては、フラーレン及びフラーレン誘導体から選ばれる1種以上が好ましく、フラーレン誘導体であることがより好ましい。
【0153】
フラーレンの例としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、及びC84フラーレンが挙げられる。フラーレン誘導体の例としては、これらのフラーレンの誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を意味する。
【0154】
フラーレン誘導体の例としては、下記式(N-1)~式(N-4)で表される化合物が挙げられる。
【0155】
【0156】
式(N-1)~式(N-4)中、
RXは、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、又はエステル構造を有する基を表す。複数あるRXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
RYは、アルキル基、又はアリール基を表す。複数あるRYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0157】
RXで表される1価の複素環基の例としては、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、及びイソキノリル基が挙げられる。
【0158】
RXで表されるエステル構造を有する基の例としては、式(E1)で表される基が挙げられる。
【0159】
【0160】
(式中、u1は、1~6の整数を表し、u2は、0~6の整数を表し、RZは、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表す。)
【0161】
C60フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0162】
【0163】
C70フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0164】
【0165】
フラーレン誘導体の具体例としては、[6,6]-フェニル-C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]-フェニル-C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6]-フェニル-C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、及び[6,6]-チエニル-C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0166】
組成物における、高分子化合物Pの、n型半導体材料に対する重量比率(高分子化合物P/n型半導体材料)は、特に限定されないが、好ましくは1/100以上、より好ましくは10/100以上、更に好ましくは20/100以上、更に好ましくは40/100以上であり、好ましくは100/1以下、より好ましくは100/10以下、更に好ましくは100/20以下、更に好ましくは100/40以下である。
【0167】
組成物は、高分子化合物P及びn型半導体材料の他に、本発明の目的及び効果を損なわない限度において、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、紫外線からの安定性を増すための光安定剤といった任意の成分が含まれていてもよい。
【0168】
組成物は、高分子化合物P及びn型半導体材料に加えて、溶媒を含む、インクの態様としうる。本明細書において、インクとは、着色していてもよく、着色していなくともよく、塗布法に用いられる液状の組成物を意味する。インクにおいて、高分子化合物P及びn型半導体材料、並びに任意成分は、全部が溶媒に溶解していなくてもよく、インクは、これら成分の分散液の形態であってもよい。インクについては、更に後述する。
【0169】
[4.光電変換素子]
高分子化合物Pは、1000nm以上の波長域に、吸収を有しうる。したがって、活性層に高分子化合物Pを含む光電変換素子は、1000nm以上の波長域における光を、電気信号に変換しうる。以下、高分子化合物Pを含む光電変換素子について詳細に説明する。
【0170】
高分子化合物Pを含む光電変換素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に、高分子化合物Pを含む1層以上の活性層を有する。
高分子化合物Pを含む光電変換素子の好ましい形態としては、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、p型半導体材料とn型半導体材料とを含む組成物から形成される活性層を有する。高分子化合物Pは、p型の有機半導体材料として用いることが好ましい。したがって、本実施形態に係る光電変換素子は、好ましくは、高分子化合物Pと、n型半導体材料とを含む活性層を有する。p型半導体材料(電子供与性化合物)、n型半導体材料(電子受容性化合物)は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0171】
ここで、本実施形態の光電変換素子が取り得る構成例について説明する。
図1は、本実施形態の光電変換素子の構成を模式的に示す図である。
【0172】
図1に示されるように、光電変換素子10は、支持基板11に設けられている。光電変換素子10は、支持基板11に接するように設けられている第一の電極12と、第一の電極12に接するように設けられている電子輸送層13と、電子輸送層13に接するように設けられている活性層14と、活性層14に接するように設けられている正孔輸送層15と、正孔輸送層15に接するように設けられている第二の電極16とを備えている。この構成例では、第二の電極16に接するように封止部材17が更に設けられている。第一の電極12では、外部回路に電子が送出される。第二の電極16では、外部回路から電子が流入する。
以下、本実施形態の光電変換素子に含まれうる構成要素について具体的に説明する。
【0173】
(基板)
光電変換素子は、通常、基板(支持基板)上に形成される。また、更に基板(封止基板)により封止される場合もある。基板には、通常、一対の電極のうちの一方が形成される。基板の材料は、特に有機化合物を含む層を形成する際に化学的に変化しない材料であれば特に限定されない。
【0174】
基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板が用いられる場合には、不透明な基板側に設けられる電極とは反対側の電極(換言すると、不透明な基板から遠い側の電極)が透明又は半透明の電極とされることが好ましい。
【0175】
(電極)
光電変換素子は、一対の電極である第一の電極及び第二の電極を含んでいる。一対の電極のうち、少なくとも一方の電極は、光を入射させるために、透明又は半透明の電極とすることが好ましい。
【0176】
透明又は半透明の電極の材料の例としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、NESA等の導電性材料、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明又は半透明である電極の材料としては、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。また、電極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体などの有機化合物が材料として用いられる透明導電膜を用いてもよい。透明又は半透明の電極は、第一の電極であっても第二の電極であってもよい。
【0177】
一対の電極のうちの一方の電極が透明又は半透明であれば、他方の電極は光透過性の低い電極であってもよい。光透過性の低い電極の材料の例としては、金属、及び導電性高分子が挙げられる。光透過性の低い電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びこれらのうちの2種以上の合金、又は、これらのうちの1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、及びカルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
【0178】
(活性層)
活性層は、高分子化合物Pを含み、好ましくは更にn型半導体材料を含む。活性層は、高分子化合物Pを、1種単独で含んでいてもよく、2種以上の任意の組み合わせで含んでいてもよい。
活性層が含みうる高分子化合物Pの例及び好ましい例は、[1.高分子化合物]において説明した例及び好ましい例と同様である。
活性層が含みうるn型半導体材料の例及び好ましい例は、[3.高分子化合物を含む組成物]において説明した例及び好ましい例と同様である。
【0179】
(中間層)
図1に示されるとおり、本実施形態の光電変換素子は、光電変換効率などの特性を向上させるための構成要素として、例えば、電荷輸送層(電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層)などの中間層(バッファー層)を備えていることが好ましい。
【0180】
また、中間層に用いられる材料の例としては、カルシウムなどの金属、酸化モリブデン、酸化亜鉛などの無機酸化物半導体、及びPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(4-スチレンスルホネート))との混合物(PEDOT:PSS)が挙げられる。
【0181】
中間層は、従来公知の任意好適な形成方法により形成することができる。中間層は、真空蒸着法や塗布法などにより形成することができる。
【0182】
図1に示されるように、光電変換素子は、第一の電極と活性層との間に、中間層として、電子輸送層を備えることが好ましい。電子輸送層は、活性層から第一の電極へと電子を輸送する機能を有する。
【0183】
第一の電極に接して設けられる電子輸送層を、特に電子注入層という場合がある。第一の電極に接して設けられる電子輸送層(電子注入層)は、活性層で発生した電子の第一の電極への注入を促進する機能を有する。
【0184】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料の例としては、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)、フルオレン構造を含む高分子化合物、カルシウムなどの金属、金属酸化物が挙げられる。
【0185】
フルオレン構造を含む高分子化合物の例としては、ポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-オルト-2,7-(9,9’-ジオクチルフルオレン)](PFN)及びPFN-P2が挙げられる。
【0186】
金属酸化物の例としては、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化ニオブが挙げられる。金属酸化物としては、亜鉛を含む金属酸化物が好ましく、中でも酸化亜鉛が好ましい。
【0187】
その他の電子輸送性材料の例としては、ポリ(4-ビニルフェノール)、ペリレンジイミドが挙げられる。
【0188】
図1に示されるように、本実施形態の光電変換素子は、第二の電極と活性層との間に、中間層として正孔輸送層を備えていることが好ましい。正孔輸送層は、活性層から第二の電極へと正孔を輸送する機能を有する。正孔輸送層は、第二の電極に接していてもよい。正孔輸送層は活性層に接していてもよい。
【0189】
第二の電極に接して設けられる正孔輸送層を、特に正孔注入層という場合がある。第二の電極に接して設けられる正孔輸送層(正孔注入層)は、第二の電極への正孔の注入を促進する機能を有する。正孔輸送層(正孔注入層)は、活性層に接していてもよい。
【0190】
正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む。正孔輸送性材料の例としては、ポリチオフェン及びその誘導体、芳香族アミン化合物、芳香族アミン残基を有する構成単位を含む高分子化合物、CuSCN、CuI、NiO、酸化タングステン(WO3)及び酸化モリブデン(MoO3)が挙げられる。
【0191】
本実施形態に係る光電変換素子は、中間層が電子輸送層及び正孔輸送層であって、基板(支持基板)、第一の電極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、第二の電極がこの順に互いに接するように積層された構成を有することが好ましい。
【0192】
(封止部材)
本実施形態の光電変換素子は、封止部材を更に含み、かかる封止部材により封止された封止体とすることが好ましい。
封止部材は任意好適な従来公知の部材を用いることができる。封止部材の例としては、基板(封止基板)であるガラス基板とUV硬化性樹脂などの封止材(接着剤)との組み合わせが挙げられる。
【0193】
封止部材は、1層以上の層構造である封止層であってもよい。封止層を構成する層の例としては、ガスバリア層、ガスバリア性フィルムが挙げられる。
【0194】
封止層は、水分を遮断する性質(水蒸気バリア性)又は酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料により形成することが好ましい。封止層の材料として好適な材料の例としては、三フッ化ポリエチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの有機材料、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボンなどの無機材料などが挙げられる。
【0195】
封止部材は、通常、光電変換素子が適用される、例えば下記適用例のデバイスに組み込まれる際において実施される加熱処理に耐え得る材料により構成される。
【0196】
[5.光電変換素子の製造方法]
本実施形態の光電変換素子の製造方法は、特に限定されない。本実施形態の光電変換素子は、構成要素を形成するにあたり選択された材料に好適な形成方法を組み合わせることにより製造することができる。
【0197】
以下、本発明の実施形態として、基板(支持基板)、第一の電極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、第二の電極がこの順に互いに接する構成を有する光電変換素子の製造方法について説明する。
【0198】
(基板を用意する工程)
本工程では、例えば第一の電極が設けられた支持基板を用意する。また、既に説明した電極の材料により形成された導電性の薄膜が設けられた基板を市場より入手し、必要に応じて、導電性の薄膜をパターニングして第一の電極を形成することにより、第一の電極が設けられた支持基板を用意することができる。
【0199】
本実施形態に係る光電変換素子の製造方法において、支持基板上に第一の電極を形成する場合の第一の電極の形成方法は特に限定されない。第一の電極は、既に説明した材料を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、塗布法などの従来公知の任意好適な方法によって、第一の電極を形成すべき構成上に形成することができる。
【0200】
(電子輸送層の形成工程)
光電変換素子の製造方法は、活性層と第一の電極との間に設けられる電子輸送層(電子注入層)を形成する工程を含んでいてもよい。
【0201】
電子輸送層の形成方法は特に限定されない。電子輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、従来公知の任意好適な塗布法によって電子輸送層を形成することが好ましい。電子輸送層は、例えば、既に説明した電子輸送層の材料と溶媒とを含む塗布液を用いる塗布法、真空蒸着法などにより形成することができる。
【0202】
(活性層の形成工程)
本実施形態の光電変換素子の製造方法においては、電子輸送層上に活性層が形成される。主要な構成要素である活性層は、任意好適な従来公知の形成工程により形成することができる。本実施形態において、活性層は、インク(塗布液)を用いる塗布法により製造することが好ましい。
【0203】
以下、本発明の光電変換素子の主たる構成要素である活性層の形成工程が含む工程(i)及び工程(ii)、並びに活性層の形成工程に用いられうるインクについて説明する。
【0204】
工程(i)
インクを塗布対象に塗布する方法としては、任意好適な塗布法を用いることができる。塗布法としては、スロットダイコート法、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、又はキャピラリーコート法が好ましく、スロットダイコート法、スリットコート法、スピンコート法、キャピラリーコート法、又はバーコート法がより好ましく、スロットダイコート法、スリットコート法、又はスピンコート法が更に好ましい。
【0205】
(インク)
活性層形成用のインクは、溶液であってもよく、分散液、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)などの分散液であってもよい。以下、活性層形成用のインクについて説明する。なお、バルクヘテロジャンクション型活性層の形成用のインクを例にとって説明する。よって、活性層形成用のインクは、p型半導体材料としての高分子化合物Pとn型半導体材料とを含み、更には少なくとも1種又は2種以上の溶媒を含む。
【0206】
活性層形成用のインクは、高分子化合物P及びn型半導体材料それぞれを1種のみ含んでいてもよく、2種以上を任意の割合の組み合わせで含んでいてもよい。
【0207】
インクが含みうる溶媒の例としては、芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒、及びエステル溶媒、これらの混合溶媒が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン(例、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)、トリメチルベンゼン(例、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン(プソイドクメン))、ブチルベンゼン(例、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン)、メチルナフタレン(例、1-メチルナフタレン)、テトラリン及びインダンが挙げられる。
【0208】
ケトン溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノンが挙げられる。
【0209】
エステル溶媒の例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、及び安息香酸ベンジルが挙げられる。
【0210】
(任意の成分)
インクには、高分子化合物P及びn型半導体材料の他に、本発明の目的及び効果を損なわない限度において、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するための増感剤、紫外線からの安定性を増すための光安定剤といった任意の成分が含まれていてもよい。
【0211】
(濃度)
インクにおける、高分子化合物P及びn型半導体材料の合計の濃度は、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上10重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以上5重量%以下であることが更に好ましく、0.1重量%以上5重量%以下であることが特に好ましい。インク中、高分子化合物P及びn型半導体材料は溶解していても分散していてもよい。高分子化合物P及びn型半導体材料は、少なくとも一部が溶解していることが好ましく、全部が溶解していることがより好ましい。
【0212】
(インクの調製)
インクは、公知の方法により調製することができる。例えば、溶媒にn型半導体材料及び高分子化合物Pを添加する方法、溶媒に高分子化合物Pを添加し、別の溶媒にn型半導体材料を添加してから、各材料が添加された各溶媒を混合する方法などにより、調製することができる。
【0213】
溶媒、高分子化合物P、及びp型半導体材料を、溶媒の沸点以下の温度まで加温して混合してもよい。
【0214】
溶媒と高分子化合物P及びp型半導体材料とを混合した後、得られた混合物をフィルターを用いてろ過し、得られたろ液をインクとして用いてもよい。フィルターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂で形成されたフィルターを用いることができる。
【0215】
活性層形成用のインクは、光電変換素子及びその製造方法に応じて選択された塗布対象に塗布される。活性層形成用のインクは、光電変換素子の製造工程において、光電変換素子が有する機能層であって、活性層が存在し得る機能層に塗布されうる。よって、活性層形成用のインクの塗布対象は、製造される光電変換素子の層構成及び層形成の順序によって異なる。例えば、光電変換素子が、基板、第一の電極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、第二の電極が積層された層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合、活性層形成用のインクの塗布対象は、電子輸送層となる。また、例えば、光電変換素子が、基板、第二の電極、正孔輸送層、活性層、電子輸送層、第一の電極が積層された層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合、活性層形成用のインクの塗布対象は、正孔輸送層となる。
【0216】
工程(ii)
インクの塗膜から、溶媒を除去する方法、すなわち塗膜から溶媒を除去して固化する方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でホットプレートを用いて直接的に加熱する方法、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などの乾燥法が挙げられる。
【0217】
本実施形態の光電変換素子の製造方法は、複数の活性層を含む光電変換素子を製造する方法であってもよく、工程(i)及び工程(ii)が複数回繰り返される方法であってもよい。
【0218】
(正孔輸送層の形成工程)
本実施形態の光電変換素子の製造方法は、活性層上に設けられた正孔輸送層(正孔注入層)を形成する工程を含んでいる。
【0219】
正孔輸送層の形成方法は特に限定されない。正孔輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、従来公知の任意好適な真空蒸着法によって正孔輸送層を形成することが好ましい。
【0220】
(第二の電極の形成工程)
第二の電極の形成方法は特に限定されない。第二の電極は、例えば、上記例示の電極の材料を、塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法など従来公知の任意好適な方法によって、正孔輸送層上に形成することができる。以上の工程により、本実施形態の光電変換素子が製造される。
【0221】
(封止体の形成工程)
封止体の形成にあたり、本実施形態では、従来公知の任意好適な封止材(接着剤)及び基板(封止基板)を用いる。具体的には、製造された光電変換素子の周辺を囲むように、支持基板上に、例えばUV硬化性樹脂などの封止材を塗布した後、封止材により隙間なく貼り合わせた後、UV光の照射などの選択された封止材に好適な方法を用いて支持基板と封止基板との間隙に光電変換素子を封止することにより、光電変換素子の封止体を得ることができる。
【0222】
(光電変換素子の適用例)
本実施形態に係る光電変換素子は、光検出素子として、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、入退室管理システム、デジタルカメラ、及び医療機器などの種々の電子装置が備える検出部(センサ)に適用することができる。
特に、本実施形態に係る光電変換素子は、イメージセンサ及び生体認証装置に適用されうる。
【0223】
本実施形態の光電変換素子は、上記例示の電子装置が備える、例えば、X線撮像装置及びCMOSイメージセンサなどの固体撮像装置用のイメージ検出部(例えば、X線センサなどのイメージセンサ)、指紋検出部、顔検出部、静脈検出部及び虹彩検出部などの生体の一部分の所定の特徴を検出する検出部(例えば、近赤外線センサ)、パルスオキシメータなどの光学バイオセンサの検出部などに好適に適用することができる。
【0224】
以下、本実施形態に係る光電変換素子が好適に適用され得る検出部のうち、固体撮像装置用のイメージ検出部、生体認証装置(例えば指紋認証装置など)のための指紋検出部の構成例について、図面を参照して説明する。
【0225】
(イメージ検出部)
図2は、固体撮像装置用のイメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0226】
イメージ検出部1は、CMOSトランジスタ基板20と、CMOSトランジスタ基板20を覆うように設けられている層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられている、本発明の実施形態に係る光電変換素子10と、層間絶縁膜30を貫通するように設けられており、CMOSトランジスタ基板20と光電変換素子10とを電気的に接続する層間配線部32と、光電変換素子10を覆うように設けられている封止層40と、封止層40上に設けられているカラーフィルター50とを備えている。
【0227】
CMOSトランジスタ基板20は、従来公知の任意好適な構成を設計に応じた態様で備えている。
【0228】
CMOSトランジスタ基板20は、基板の厚さ内に形成されたトランジスタ、コンデンサなどを含み、種々の機能を実現するためのCMOSトランジスタ回路(MOSトランジスタ回路)などの機能素子を備えている。
【0229】
機能素子としては、例えば、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジスタ、選択トランジスタが挙げられる。
【0230】
このような機能素子、配線などにより、CMOSトランジスタ基板20には、信号読み出し回路などが作り込まれている。
【0231】
層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン、絶縁性樹脂などの従来公知の任意好適な絶縁性材料により構成することができる。層間配線部32は、例えば、銅、タングステンなどの従来公知の任意好適な導電性材料(配線材料)により構成することができる。層間配線部32は、例えば、配線層の形成と同時に形成されるホール内配線であっても、配線層とは別途形成される埋込みプラグであってもよい。
【0232】
封止層40は、光電変換素子10を機能的に劣化させるおそれのある酸素、水などの有害物質の浸透を防止又は抑制できることを条件として、従来公知の任意好適な材料により構成することができる。封止層40は、既に説明した封止部材17と同様の構成とすることができる。
【0233】
カラーフィルター50としては、従来公知の任意好適な材料により構成され、かつイメージ検出部1の設計に対応した例えば原色カラーフィルターを用いることができる。また、カラーフィルター50としては、原色カラーフィルターと比較して、厚さを薄くすることができる補色カラーフィルターを用いることもできる。補色カラーフィルターとしては、例えば(イエロー、シアン、マゼンタ)の3種類、(イエロー、シアン、透明)の3種類、(イエロー、透明、マゼンタ)の3種類、及び(透明、シアン、マゼンタ)の3種類が組み合わされたカラーフィルターを用いることができる。これらは、カラー画像データを生成できることを条件として、光電変換素子10及びCMOSトランジスタ基板20の設計に対応した任意好適な配置とすることができる。
【0234】
カラーフィルター50を介して光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像対象に対応する電気信号として出力される。
【0235】
次いで、光電変換素子10から出力された受光信号は、層間配線部32を介して、CMOSトランジスタ基板20に入力され、CMOSトランジスタ基板20に作り込まれた信号読み出し回路により読み出され、図示しないさらなる任意好適な従来公知の機能部によって信号処理されることにより、撮像対象に基づく画像情報が生成される。
【0236】
(指紋検出部)
図3は、表示装置に一体的に構成される指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0237】
携帯情報端末の表示装置2は、本発明の実施形態に係る光電変換素子10を主たる構成要素として含む指紋検出部100と、当該指紋検出部100上に設けられ、所定の画像を表示する表示パネル部200とを備えている。
【0238】
この構成例では、表示パネル部200の表示領域200aと略一致する領域に指紋検出部100が設けられている。換言すると、指紋検出部100の上方に、表示パネル部200が一体的に積層されている。
【0239】
表示領域200aのうちの一部の領域においてのみ指紋検出を行う場合には、当該一部の領域のみに対応させて指紋検出部100を設ければよい。
【0240】
指紋検出部100は、本発明の実施形態に係る光電変換素子10を本質的な機能を奏する機能部として含む。指紋検出部100は、図示されていない保護フィルム(protection film)、支持基板、封止基板、封止部材、バリアフィルム、バンドパスフィルター、赤外線カットフィルムなどの任意好適な従来公知の部材を所望の特性が得られるような設計に対応した態様で備え得る。指紋検出部100には、既に説明したイメージ検出部の構成を採用することもできる。
【0241】
光電変換素子10は、表示領域200a内において、任意の態様で含まれ得る。例えば、複数の光電変換素子10が、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0242】
光電変換素子10は、既に説明したとおり、支持基板11に設けられており、支持基板11には、例えばマトリクス状に電極(陽極又は陰極)が設けられている。
【0243】
光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像された指紋に対応する電気信号として出力される。
【0244】
表示パネル部200は、この構成例では、タッチセンサーパネルを含む有機エレクトロルミネッセンス表示パネル(有機EL表示パネル)として構成されている。表示パネル部200は、例えば有機EL表示パネルの代わりに、バックライトなどの光源を含む液晶表示パネルなどの任意好適な従来公知の構成を有する表示パネルにより構成されていてもよい。
【0245】
表示パネル部200は、既に説明した指紋検出部100上に設けられている。表示パネル部200は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)220を本質的な機能を奏する機能部として含む。表示パネル部200は、さらに任意好適な従来公知のガラス基板といった基板(支持基板210又は封止基板240)、封止部材、バリアフィルム、円偏光板などの偏光板、タッチセンサーパネル230などの任意好適な従来公知の部材を所望の特性に対応した態様で備え得る。
【0246】
以上説明した構成例において、有機EL素子220は、表示領域200aにおける画素の光源として用いられるとともに、指紋検出部100における指紋の撮像のための光源としても用いられる。
【0247】
ここで、指紋検出部100の動作について簡単に説明する。
指紋認証の実行時には、表示パネル部200の有機EL素子220から放射される光を用いて指紋検出部100が指紋を検出する。具体的には、有機EL素子220から放射された光は、有機EL素子220と指紋検出部100の光電変換素子10との間に存在する構成要素を透過して、表示領域200a内である表示パネル部200の表面に接するように載置された手指の指先の皮膚(指表面)によって反射される。指表面によって反射された光のうちの少なくとも一部は、間に存在する構成要素を透過して光電変換素子10によって受光され、光電変換素子10の受光量に応じた電気信号に変換される。そして、変換された電気信号から、指表面の指紋についての画像情報が構成される。
【0248】
表示装置2を備える携帯情報端末は、従来公知の任意好適なステップにより、得られた画像情報と、予め記録されていた指紋認証用の指紋データとを比較して、指紋認証を行う。
【実施例】
【0249】
以下、本発明を更に詳細に説明するために実施例を示す。本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0250】
[評価方法]
(数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定)
化合物の数平均分子量及び重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(島津製作所製、商品名:LC-10Avp)によりポリスチレン換算の値として求めた。測定条件は下記のとおりである。
試料:測定する化合物を、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解して試料を調製した。
注入量:30μL
移動相:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
カラム:TSKgel SuperHM-H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本とを直列に繋げたカラムを用いた。
検出器:示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID-10A)を用いた。
【0251】
[実施例及び比較例で用いた高分子化合物の合成]
実施例及び比較例において、下記構造式を有する高分子化合物P-1~P-3を用いた。
【0252】
【0253】
各高分子化合物は、下記に従い合成した。
【0254】
(高分子化合物P-1の合成)
【0255】
【0256】
化合物1を用意した。化合物1は、国際公開第2011/052709号実施例53に記載の方法により製造できる。化合物2を、米国特許出願公開第2013/137848号明細書に記載された方法で合成した。
【0257】
内部の気体を窒素で置換した200mLフラスコに、化合物1を500mg(0.475mmol)、化合物2を198mg(0.425mmol)、トルエンを32mL入れて均一溶液とした。得られたトルエン溶液をアルゴンガスで30分間バブリングした。その後、トルエン溶液にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを6.52mg(0.007mmol)、トリス(2-トリル)ホスフィン13.0mg(0.043mmol)を加え、100℃で6時間攪拌した。その後、反応液にフェニルブロミドを500mg加え、更に5時間攪拌した。
【0258】
その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール300mLに注いだ。析出したポリマーをろ過して回収し、得られたポリマーを、円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、アセトン及びヘキサンでそれぞれ5時間抽出した。円筒ろ紙内に残ったポリマーを、トルエン100mLに溶解させ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2.0gと水40mLとを加え、8時間還流下で攪拌を行った。
【0259】
水層を除去後、有機層を水50mLで2回洗浄し、次いで、3wt%の酢酸水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、次いで、5%フッ化カリウム水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをo-ジクロロベンゼン50mLに再度溶解し、アルミナ/シリカゲルカラムを通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーをろ過後、乾燥し、高分子化合物P-1を160mg得た。GPCで測定した高分子化合物P-1の分子量(ポリスチレン換算)は、Mnが10,600、Mwが25,100であった。
【0260】
(高分子化合物P-2の合成)
高分子化合物P-2を、国際公開第2011/052709号段落[0381](実施例54)に記載の方法に従い合成した。
【0261】
(高分子化合物P-3の合成)
高分子化合物P-3を、国際公開第2011/052709号段落[0401](実施例64)に記載の方法に従い合成した。
【0262】
[実施例1]
(溶媒を含むインクの製造、光電変換素子の製造、これらの評価)
(1)光電変換素子及びその封止体の製造
スパッタリング法により50nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板を用意した。ガラス基板の表面を、オゾンUV処理した。
【0263】
次にバッファー層として、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)(Sigma-Aldrich社製「ポリエチレンイミン80%エトキシ化溶液(37重量%水溶液)」、製品番号:306185)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、PEIE層を作製した。
【0264】
次に、p型半導体材料として高分子化合物P-1を1重量部と、n型半導体材料としてフラーレン誘導体であるC60-PCBM(フェニル61-酪酸メチルエステル:フロンティアカーボン社製、製品名:nanom spectra E100、以下C60-PCBMは同一製品を使用)を2重量部と、溶媒であるテトラヒドロナフタレンとを混合し、混合物を60℃で8時間加熱攪拌して、高分子化合物P-1、C60-PCBM及びテトラヒドロナフタレンを含む、インクを製造した。インクの重量に対して、高分子化合物P-1の重量とC60-PCBMの重量との合計は4.5重量%であった。
【0265】
該インクをスピンコートによりPEIE層上に塗布し、高分子化合物P-1を含む活性層を作製した。活性層の厚みは約200nmであった。
【0266】
その後、活性層上に真空蒸着機により酸化モリブデンを厚み15nmで蒸着し、次いで銀を厚み60nmで蒸着し、光電変換素子を作製した。
【0267】
製造された光電変換素子の周辺を囲むように、支持基板であるガラス基板上に封止材であるUV硬化性封止剤を塗布し、封止基板であるガラス基板を貼り合わせた。次いで、UV光を照射することで、光電変換素子を支持基板と封止基板との間隙に封止した。これにより、光電変換素子の封止体を得た。支持基板と封止基板との間隙に封止された光電変換素子を、その厚み方向から見たときの平面的な形状は2mm×2mmの正方形であった。
【0268】
(2)光電変換素子の評価
製造された光電変換素子の封止体に対し、-2Vの逆バイアス電圧を印加し、この印加電圧における外部量子効率(EQE)をソーラーシミュレーター(CEP-2000、分光計器社製)を用いて測定して評価した。具体的には、光電変換素子の封止体に、-2Vの逆バイアス電圧を印加した状態で、300nmから1200nmの波長範囲において20nmごとに一定の光子数(1.0×1016)の光を照射したときに発生する電流の電流値を測定し、公知の手法により波長300nmから1200nmにおけるEQEのスペクトルを求めた。波長1000nm及び波長1100nmにおけるEQE値(%)を算出したところ、それぞれ20%、13%であった。波長1000nmおよび波長1100nmの光を光電変換することができるため、当該波長の光を検出する用途のセンサーに有用である。
【0269】
[比較例1]
高分子化合物P-1の代わりに高分子化合物P-2を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして光電変換素子及びその封止体を製造し、評価を行った。波長1100nmにおけるEQE値(%)を算出したところ0%であった。
【0270】
[比較例2]
高分子化合物P-1の代わりに高分子化合物P-3を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして光電変換素子及びその封止体を製造し、評価を行った。波長1100nmにおけるEQE値(%)を算出したところ0%であった。
【0271】
[結果]
実施例及び比較例の評価結果を下表に示す。
【0272】
【0273】
[考察]
式(1)で表される構成単位を有するが、式(2)で表される構成単位を有さない、高分子化合物P-2又はP-3を用いた光電変換素子は、波長1000nm及び波長1100nmでのEQE値がそれぞれ0%であり、1000nm以上の波長の光を光電変換しない。
また、特許文献1(特開2015-172131号公報)の
図5に記載されたEQEスペクトル図によれば、ポリマー1を用いた有機太陽電池は、波長1000nm以上の範囲において、EQEが0%に近いことが分かる。ここで、ポリマー1は、式(1)で表される構成単位を有さない。
したがって、高分子化合物が、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位のいずれか一方を有さない場合、波長1000nm以上において高いEQEを実現できないことが分かる。
【符号の説明】
【0274】
1 イメージ検出部
2 表示装置
10 光電変換素子
11、210 支持基板
12 第一の電極
13 電子輸送層
14 活性層
15 正孔輸送層
16 第二の電極
17 封止部材
20 CMOSトランジスタ基板
30 層間絶縁膜
32 層間配線部
40 封止層
50 カラーフィルター
100 指紋検出部
200 表示パネル部
200a 表示領域
220 有機EL素子
230 タッチセンサーパネル
240 封止基板