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特許7522621焦点調整方法、焦点調整治具、ダイボンディング装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】焦点調整方法、焦点調整治具、ダイボンディング装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240718BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20240718BHJP
   G02B 7/36 20210101ALI20240718BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20240718BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240718BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H04N5/222
G02B7/36
G02B7/28 H
G03B13/36
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020157970
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051472
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小橋 英晴
(72)【発明者】
【氏名】保坂 浩二
(72)【発明者】
【氏名】中島 宜久
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-308960(JP,A)
【文献】特開2001-203234(JP,A)
【文献】特開2003-152031(JP,A)
【文献】特開2020-004812(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082558(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H04N 5/222
G02B 7/36
G02B 7/28
G03B 13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象物が撮像装置の焦点に位置するように、ステージの上に載置される前記撮像対象物と前記撮像対象物の上方に位置する前記撮像装置との間の距離を調整するための焦点調整方法であって、
模様面を有する第一治具と、鏡面を有する第二治具とを前記ステージに配置し、前記模様面からの得られる模様画像に加えて、前記鏡面に反射した前記模様面の虚像から得られる模様画像の2つの模様画像から明暗差グラフを作成し、当該明暗差グラフから最適な焦点位置を算出する焦点調整方法。
【請求項2】
請求項1の焦点調整方法に用いられる焦点調整治具であって、
前記第一治具は、前記ステージの上面とのなす角度が第一所定角度に設けられ、
前記第二治具は、前記模様面とのなす角度が90度であり、前記ステージの上面とのなす角度が第二所定角度に設けられ
記鏡面が前記撮像装置により撮像されるよう構成される焦点調整治具。
【請求項3】
請求項の焦点調整治具において、
前記第一所定角度は45度であり、前記第二所定角度は45度である焦点調整治具。
【請求項4】
請求項の焦点調整治具において、
前記第一所定角度は45度未満であり、前記第二所定角度は45度超である焦点調整治具。
【請求項5】
請求項の焦点調整治具において、
前記第一所定角度は45度超であり、前記第二所定角度は45度未満である焦点調整治具。
【請求項6】
請求項の焦点調整治具において、
前記模様面の下端と前記鏡面の下端とは接している焦点調整治具。
【請求項7】
請求項の焦点調整治具において、
前記模様面の下端と前記鏡面の下端とは離れている焦点調整治具。
【請求項8】
請求項の焦点調整治具において、
前記模様面の下端と前記鏡面の下端とは前記ステージの上面に接している焦点調整治具。
【請求項9】
請求項の焦点調整治具において、
前記模様面の下端と前記鏡面の下端とは前記ステージの上面から離れている焦点調整治具。
【請求項10】
請求項の焦点調整治具において、
前記模様面および前記鏡面は前記ステージの上面に垂直な線を軸に回転可能である焦点調整治具。
【請求項11】
請求項の焦点調整治具において、
前記第二治具を複数備え、
前記複数の第二治具の鏡面の下端と前記模様面の下端との距離はそれぞれ異なる焦点調整治具。
【請求項12】
請求項の焦点調整治具において、
第一方向に沿って配置された前記第一治具および前記第二治具を複数組備え、
前記第一方向とは異なる第二方向に沿って前記第一治具と前記第二治具とをそれぞれ交互に配置する焦点調整治具。
【請求項13】
請求項の焦点調整治具において、
前記鏡面を移動する駆動部により前記鏡面の下端と前記模様面の下端との距離が可変である焦点調整治具。
【請求項14】
請求項の焦点調整治具を用いて撮像装置の焦点位置を調整するダイボンディング装置であって、
通常動作時に前記撮像対象物が載置され、調整時に前記焦点調整治具が載置される前記ステージと、
前記ステージの上方に配設される前記撮像装置と、
調整時に前記撮像装置により前記焦点調整治具を撮像して前記撮像装置の焦点位置を測定するよう構成される制御部と、
を備えるダイボンディング装置。
【請求項15】
請求項14のダイボンディング装置において、
前記制御部は、撮像された画像から模様のエッジ部分のコントラストを判断し、焦点を合わせたい位置からどの程度ずれているか算出するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項16】
請求項15のダイボンディング装置において、
前記制御部は、前記撮像された画像の画素値に基づいて明暗値と位置の関係を算出し、前記明暗値と前記位置に基づいて明暗差が最大である焦点位置を算出し、前記算出した焦点位置に基づいて前記撮像装置の前記焦点を合わせたい位置を算出するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項17】
請求項15のダイボンディング装置において、
前記制御部は、前記撮像された画像の画素値に基づいて明暗値と位置の関係を算出し、前記明暗値と前記位置に基づいて明暗差が最大である位置および当該位置の前後の位置における明暗差から統計的な近似計算を用いて焦点位置を算出し、前記算出した焦点位置に基づいて前記撮像装置の前記焦点を合わせたい位置を算出するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項18】
請求項14のダイボンディング装置において、
前記制御部は、前記測定した焦点位置に基づいて前記撮像装置の高さを調整するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項19】
請求項14のダイボンディング装置において、
前記撮像対象物は基板に塗布されたペースト状接着剤であるダイボンディング装置。
【請求項20】
請求項19のダイボンディング装置において、
前記制御部は前記撮像装置により前記ペースト状接着剤の外観検査を行うよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項21】
請求項14のダイボンディング装置において、
前記撮像対象物は基板または既にボンディングされたダイの上にボンディングされたダイであるダイボンディング装置。
【請求項22】
請求項14のダイボンディング装置に基板を搬入する工程と、
ダイをピックアップする工程と、
ピックアップしたダイを前記基板または既にボンディングされたダイの上にボンディングする工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は焦点調整治具に関し、例えば、認識カメラの焦点調整を行うダイボンダに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一部に半導体チップ(以下、単にダイという。)を配線基板やリードフレーム等(以下、単に基板という。)に載置してパッケージを組み立てる工程があり、パッケージを組み立てる工程の一部に、半導体ウェハ(以下、単にウェハという。)からダイを分割する工程(ダイシング工程)と、分割したダイを基板の上に載置するボンディング工程とがある。ボンディング工程に使用される半導体製造装置がダイボンダ等のダイボンディング装置である。
【0003】
例えば、ダイを基板の表面にボンディングするダイボンダにおいては、ボンディングヘッドの先端に取り付けられたコレットと呼ばれる吸着ノズルを用いてダイをウェハから吸着してピックアップし、ボンドステージに固定された基板上の所定の位置に載置し、押付力を付与すると共に、接合材を加熱することによりボンディングを行うという動作(作業)が繰り返して行われる。
【0004】
また、ダイボンダでは、例えば、ボンディングヘッドの近傍には撮像装置が取り付けられ、この撮像装置で、ダイがボンディングされる基板の位置を確認して位置決めが行われ、またボンディングされたダイが所定位置にボンディングされているかが確認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-175888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した位置決め精度または検査精度を向上するためには、撮像装置の焦点調整精度の向上が必要である。
【0007】
本開示の課題は、撮像装置の焦点調整精度を向上することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、焦点調整治具は、撮像対象物が撮像装置の焦点に位置するように、ステージの上に載置される撮像対象物と撮像対象物の上方に位置する撮像装置との間の距離を調整するためのものであり、かつ、ステージの上に載置されるものである。焦点調整治具は、ステージの上面とのなす角度が第一所定角度に設けられ、模様が設けられた模様面を有する第一治具と、模様面とのなす角度が90度であり、ステージの上面とのなす角度が第二所定角度に設けられ、鏡が設けられた鏡面を有する第二治具と、を備える。焦点調整治具の鏡面が撮像装置により撮像されるよう構成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、撮像装置の焦点調整精度を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は焦点調整を行うための目盛治具を示す斜視図である。
図2図2図1に示す模様面の模様を撮像した際の画像および明度の一例を示す図である。
図3図3図1(a)に示す目盛治具により焦点の合う位置の測定方法を説明する図である。
図4図4は一般的な装置の光学系の構成を説明する図である。
図5図5図1(a)に示す目盛治具による焦点の合う位置の測定方法の問題点を説明する図である。
図6図6は実施形態における焦点調整治具を示す図である。
図7図7図6に示す焦点調整治具の作用を説明する模式図である。
図8図8は第一変形例における焦点調整治具を示す側面図である。
図9図9は第二変形例における焦点調整治具を示す側面図である。
図10図10は第三変形例における焦点調整治具を示す側面図である。
図11図11は第四変形例における焦点調整治具を示す側面図である。
図12図12は第五変形例における焦点調整治具を示す図である。
図13図13は第六変形例における焦点調整治具を示す図である。
図14図14は第七変形例における装置の側面図である。
図15図15は第八変形例における焦点調整治具を示す図である。
図16図16は実施例におけるダイボンダの概略を示す上面図である。
図17図17図16において矢印A方向から見たときに、ピックアップヘッド及びボンディングヘッドの動作を説明する図である。
図18図18図16に示すダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
図19図19図16に示すダイボンダの制御系の概略構成を示すブロック図である。
図20図20図16に示すダイボンダを用いた半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態、変形例および実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【0012】
まず、本開示者らが検討した技術について図1図5を用いて説明する。
【0013】
レンズを取り付けた撮像装置によりステージの上に載置されたワークを撮像する光学系の焦点調整を行う方法について図1を用いて説明する。図1は焦点調整を行うための目盛治具を示す斜視図である。図1(a)は光軸に対して傾斜を持つ模様面を有する目盛治具を示す図である。図1(b)は光軸に対し垂直に設置した模様面を有する目盛治具を示す図である。
【0014】
本開示者らは、図1に示すように、撮像装置101によりステージ103の上に載置した目盛治具201を撮像し、その撮像画像から判断して焦点調整を行うことを検討した。目盛治具201は、図1(a)に示すように光軸OAに対して傾斜している平面に模様が設けられた模様面201aや、図1(b)に示すように光軸に対し垂直に設置した平面に模様が設けられた模様面201aを有する。各模様面201aにはエッジのはっきりした縞模様、市松模様、格子模様などの光軸に対して垂直な面に平行な直線を有する模様が印刷されている。図1(a)に示す目盛治具201の模様面201aの下端まで模様が印刷されている。また、図1(b)に示す目盛治具201はブロックゲージやシムゲージなどにより模様面201aの高さが調整される。
【0015】
ここで、図1(a)に示す目盛治具201は、正面に位置する矩形状の模様面201aの他に、矩形状の底面と、底面に垂直な矩形状の裏面と、二つの三角形状の側面と、で構成される五面体のブロック形状をしている。図1(b)に示す目盛治具201は、上面に位置する矩形状の模様面201aの他に、矩形状の底面と、底面に垂直な四つの矩形状の側面と、で構成される六面体の板形状をしている。
【0016】
図示していない制御部は、撮像装置101により模様面201aを撮像し、撮像された画像から印字された模様のエッジ部分のコントラスト(明暗差)を判断し、合わせたい位置からどの程度ずれているか算出する。制御部は、算出したずれ量をLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置に表示する。その後、作業者は、表示されたずれ量に基づいて、撮像装置101の設置位置、または、撮像対象物が載置されるステージ103の設置位置、または、レンズ102と撮像装置101の撮像面(受光デバイス面)との位置関係の調整などを行ってずれを解消する。作業者は、この作業を複数回繰り返すことで焦点が最も合う位置に調整する。ここで、Hfは焦点が合う高さである。
【0017】
次に、焦点が合う位置の測定方法の詳細について図2および図3を用いて説明する。図2図1に示す模様面の模様を撮像した際の画像および明度の一例を示す図である。図2(a)は焦点が合っているときの図であり、図2(b)は焦点が合っていないときの図である。図3図1(a)に示す目盛治具により焦点の合う位置の測定方法を説明する図である。図3(a)は図1(a)に示す目盛治具における模様面の取得画像であり、図3(b)は図3(a)に示す模様画像の明暗差グラフである。
【0018】
制御装置は、目盛治具201の模様面201aを撮像した画像の画素値から模様のエッジ部分のコントラストを算出する。図2(a)に示すように、焦点が合っているときのエッジは明暗の差がはっきり表れる。しかし、図2(b)に示すように、焦点が合っていないときのエッジは明暗の差が滑らかになる。また、明度(明暗値)の最大/最小も、図2(a)に示すように、焦点が合っているときは大きくなり、図2(b)に示すように、焦点が合っていないときは小さくなる。これは周期的な模様に対してエッジ部分のにじみが周期より大きくなると発生する。
【0019】
図3(a)に示す撮像画像は中央付近の明暗差が明瞭であり、両端に向かうほど明暗差が不明瞭になっている。この撮像画像の画素値である明暗値(BV)をプロットすると図3(b)に示す明暗差グラフが得られる。
【0020】
図3(b)に示す濃淡グラフは焦点が最も合う位置Pfに近づくにしたがい落差が大きくなり、遠ざかるにしたがって小さくなる。図3(b)に示す明暗差グラフのように焦点の最も合う位置に対し、遠方側(図の左側)および近傍側(図の右側)のグラフを取得できれば、ピーク位置をはっきり認識できるので、被写界深度(Depth of field:DOF)および焦点が最も合う位置Pfを正確に見つけることができる。ここで、焦点が最も合う位置Pfの模様面201aの左端からの距離をxfとする。
【0021】
しかし、図1(a)に示す目盛治具201には、以下の問題点がある。この問題点について図4および図5を用いて説明する。図4は一般的な装置の光学系の構成を説明する図である。図4(a)はステージの上に部材を配置した図であり、図4(b)は図4(a)に示すステージの上に目盛治具を配置した図である。図5図1(a)に示す目盛治具による焦点の合う位置の測定方法の問題点を説明する図である。図5(a)は図4(b)に示す目盛治具の模様面の取得画像であり、図5(b)は図5(a)から取得した模様画像の明暗差グラフである。
【0022】
図4(a)に示すように、装置のベース301に取付部材302により撮像装置101を取り付ける際に、ステージ103に撮像対象物としての部材Mの厚さを加算した高さに焦点が合うように調整しなければならない。例えば、ダイボンディング装置には、ボンディングステージ、アライメントステージ、ピックアップドーム、プリフォームステージなどのステージ103を備えている。ステージ103ではアタッチメントする部材Mの厚さ(To)分を加味した位置Poに焦点を合わせる。ダイボンディング装置における部材Mは、例えば、配線基板、リードフレーム、配線基板またはリードフレームの上に載置されたダイ、ウェハ貼付けテープ(ダイシングテープ)が貼付されたダイなどである。部材Mの厚さ(To)は数十μm~数mm程度と極めて薄い。すなわち、焦点を合わせる高さはステージ103の上面近傍の高さになる。
【0023】
また、ダイボンディング装置では、上述したステージ103はアタッチメントの圧力に耐えうる構造になっており、固定式が多い。撮像装置101も基本的には高さ方向は固定されることが多い。撮像装置101およびステージ103が固定式の場合または可動式であっても、基板搬送面に合わせるため、ステージ103側での光学系の焦点との微調整ができない場合、撮像装置101に取り付けられたレンズ102の焦点位置はステージ103が含まれる各ユニット(ボンディングユニット、アライメントユニット等)の取り付ける際に調整する必要がある。撮像装置101の取り付けは、設計値に合わせて行う。しかし、撮像装置101に取り付けられたレンズ102の焦点調整および確認作業は各ユニットに取り付けた後に、撮像装置101により撮像した画像を実際に確認する必要がある。
【0024】
焦点の合う位置を確認する方法として、その一例を説明する。まず、図4(b)に示すように、ステージ103の上に目盛治具201を設置する。ここで、模様面201aが撮像装置101の視野VF内に入っていればよく、模様面201aの中心または部材Mの高さに位置する模様面201aの位置を光軸に位置するようにする必要はない。そして、制御装置は、撮像装置101により目盛治具201の模様面201aを撮像して、図3(a)に示すような、画像を取得する。そして、制御装置は、図3(b)に示すような、取得した画像の画素値から画像中の矢印線に沿って明暗値をグラフにしたものを取得する。図3(b)に示す濃淡グラフは、模様の明暗差は中央をピークに増減しており、この明暗差が最も大きくなっている位置が焦点の合う位置と言える。この位置はグラフから判断する必要があるため、焦点の合う位置の前後高さに模様面201aの模様を配置する必要がある。
【0025】
しかし、ダイボンディング装置などで目盛治具201をステージ103に載置して使用しようとしたとき、上述したように、ステージ103の上面の高さは固定されていることが多い。この場合、図4(b)に示す目盛治具201の模様面201aの模様の画像を撮像しても図5(a)に示すような画像しか取得できない。すなわち、取得画像は図の左側の明暗差が明瞭で、右側に行くにつれて不明瞭である画像である。図5(a)に示す取得した画像に基づいてコントラストを測定しても、図5(b)に示すような濃淡グラフの波形の片側半分しか取得できないことがほとんどである。すなわち、図5(b)に示すように、焦点の最も合う位置Pfから撮像装置101に近い側は測定できるが、撮像装置101から遠い側(白抜き矢印で示す側)は測定できない。このような片側のみでの測定では、図5(b)における明暗差グラフの最も落差が大きい場所Pmが最も焦点の合う位置Pfと断言できない問題がある。
【0026】
すなわち、ステージ103の上面近傍の焦点を合わせる位置Poに明暗差のピークがあるかを判断することは難しく、取り付けた撮像装置101の焦点が最も調整された位置にあるかを判断することが難しい。また、明暗差のピークがステージ103の上面より遠方側(下方側)にある場合は、現状の位置関係がどの程度ずれているかの測定もできない。ここで、目盛治具201の模様が設けられている範囲が測定可能の高さの範囲(Ha)である。
【0027】
この問題は、図1(b)に示す目盛治具201をステージ103に設置し、ブロックゲージなどで高さを調整しながら測定を繰り返し、模様面201aの画像を取得して模様画像のコントラストのグラフを順次得ていき、その明暗差のピークから焦点位置を求める方法でも同様である。
【0028】
次に、上述した問題点を解決する実施形態における焦点調整治具について図6および図7を用いて説明する。図6は実施形態における焦点調整治具を示す図であり、図6(a)は側面図であり、図6(b)は上面図である。図7図6に示す焦点調整治具の作用を説明する模式図である。
【0029】
実施形態における焦点調整治具200は、図5に示す明暗差グラフの反対側も取得し、明暗差グラフを焦点の合う前後領域において取得するよう構成される。すなわち、焦点調整治具200は、第一治具としての目盛治具201および第二治具としての鏡治具202で構成される。
【0030】
図6(a)に示す目盛治具201は図4(b)に示す目盛治具201と同様の構成である。模様面201aは下端から上端まで模様を有しているが、模様面201aの上部は模様がなくてもよい。
【0031】
鏡治具202は、図6(a)に示すように、側面視において三角形状であり、図6(b)に示すように、上面視において矩形状である。鏡治具202は、矩形状の鏡面202aの他に、矩形状の底面と、底面に垂直な矩形状の裏面と、二つの三角形状の側面と、で構成される三角柱状の五面体のブロック形状をしている。鏡面202aは、図6(a)に示すように光軸OAに対して傾斜している平面であり、光を反射する鏡が設けられている。鏡面202aは下端から上端まで鏡を有しているが、鏡面202aの上部は鏡がなくてもよく、模様面201aの模様がある高さまで模様があればよい。
【0032】
目盛治具201の模様面201aはステージ103の上面に対して第一角度(θ1)をなす平面である。ここで、0度<θ1<90度である。鏡治具202の鏡面202aはステージ103の上面に対して第二角度(θ2)をなす平面である。ここで、0度<θ2<90度である。模様面201aと鏡面202aは直交している。ここで、ステージ103の上面は水平面と平行であるのが好ましい。目盛治具201の模様面201aの向かい側に鏡治具202の鏡面202aが位置するように、目盛治具201および鏡治具202がステージ103の上に設置される。ここで、模様面201aの下端と鏡面202aの下端は接触している。一例として、θ1=θ2=45度である場合について、以下説明する。
【0033】
鏡面202aおよび模様面201aの高さをHaとすると、図7に示すように、模様面201aが鏡面202aに反射された虚像により、模様面201aがHa分だけ下方に伸びる。これにより、鏡面202aに反射した目盛治具201の模様(虚像)を撮像することで、撮像装置101から見てステージ103の上面より遠方側の模様画像、すなわち、明暗差グラフを取得できる。模様面201aを直接撮像した模様画像から濃淡グラフLS1が得られると共に、模様面201aを鏡面202aにより反射して撮像した模様画像から濃淡グラフLS2が得られる。ここで、濃淡グラフLS1および明暗差グラフLS2を合わせたものが図3(b)に示す濃淡グラフに相当する。
【0034】
焦点調整治具200を用いた撮像装置101の焦点調整方法について説明する。ここで、撮像装置101およびステージ103を有する装置は制御部300を備える。
【0035】
まず、図6(a)に示すように、ステージ103の上に目盛治具201および鏡治具202を設置する。ここで、模様面201aおよび鏡面202aが撮像装置101の視野VF内に入っていればよく、模様面201aと鏡面202aの接続部分を光軸に位置するようにする必要はない。また、模様面201aと鏡面202aの全体が撮像装置101の視野VF内に入っている必要はなく、模様面201aと鏡面202aの上部は撮像装置101の視野VF内に入っていなくてもよい。
【0036】
次に、制御部300は撮像装置101により目盛治具201の模様面201aおよび鏡面202aを撮像して、図3(a)に示すような、中央付近の明暗が明瞭な画像を取得する。
【0037】
次に、制御部300は、撮像された画像から印字された模様のエッジ部分のコントラストを判断し、焦点位置を測定する。
【0038】
より、詳細に説明すると、制御部300は、例えば、図3(b)に示すような、取得した画像の画素値から画像中の矢印線に沿って明暗値をグラフにしたものを取得する。すなわち、模様面201aにおける位置(x)と明暗値(BV)との関係を取得する。
【0039】
そして、図3(b)に示す濃淡グラフにおいては、上述したように、模様の明暗差は中央をピークに増減しており、制御部300は、この明暗差が最も大きくなっている位置を焦点の最も合う位置Pfとして判断する。
【0040】
そして、制御部300は、焦点の最も合う位置Pfの模様面201aの左端からの距離(xf)を算出する。そして、制御部300は、図7に示すように、xfから焦点が合う高さであるHfを算出する。図7に示す例では、Hfは焦点調整治具200の下面、すなわち、ステージ103の上面よりの低い位置にある。
【0041】
なお、明暗差のピーク位置は単純にコントラストの最大位置から求めるだけでなく、前後のコントラストから統計的な近似計算を用いるのが好ましい。これにより、焦点位置がより正確に算出できる。焦点位置の前後データを取得できることから、近似計算の精度が向上する。
【0042】
次に、制御部300は、測定した焦点位置が合わせたい位置からどの程度ずれているか算出する。
【0043】
制御部300は、算出したずれ量をLCD等の表示装置に表示する。その後、作業者は、表示されたずれ量に基づいて、撮像装置101の設置位置、または、被写体が載置されるステージ103の設置位置、または、レンズ102と撮像装置101の撮像面(受光デバイス面)との位置関係の調整などを行ってずれを解消する。作業者は、この作業を複数回繰り返すことで焦点が最も合う位置に調整する。撮像装置101が取付部材302を介してベース301に取り付けられているが、作業者は、例えば、取付部材302のベース301における取り付け位置を変更する。
【0044】
焦点調整治具200を用いれば、撮像装置101およびステージ103を設置後に焦点位置のずれ量を正確に測ることができる。これにより、撮像装置101の焦点調整精度の向上および調整作業の効率化がはかれる。また、焦点調整精度改善により、検査感度および位置決め精度を向上させることができる。また、調整作業の効率化により、装置製造の工数を低減することができる。
【0045】
<変形例>
以下、実施形態の代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施形態の一部、および、変形例の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0046】
(第一変形例)
第一変形例における焦点調整治具について図8を用いて説明する。図8は第一変形例における焦点調整治具を示す側面図である。
【0047】
第一変形例における焦点調整治具200では、鏡治具202の鏡面202aおよび目盛治具201の模様面201aはステージ103の上面に対して45度でなく、互いが直交している。ここで、模様面201aの下端と鏡面202aの下端は接触している。模様面201aのステージ103の上面に対する角度をθ1、鏡面202aの角度をθ2とする。第一変形例における焦点調整治具200では、図8に示すように、θ1をθ2よりも小さくする、すなわち、0度<θ1<45度(45度<θ2<90度)とすると、高さ方向の模様のピッチが小さくなるので、高精細に測定できる。目盛治具201の模様面201aおよび鏡治具202の鏡面202aの角度を45度以外も選択できる角度調整機構を持つことで焦点を求めるための明暗差グラフの測定波形の測定精度を高精細化できる。
【0048】
(第二変形例)
第二変形例における焦点調整治具について図9を用いて説明する。図9は第二変形例における焦点調整治具を示す側面図である。
【0049】
第二変形例における焦点調整治具200では、図9に示すように、θ1をθ2よりも大きくする、すなわち、45度<θ1<90度(0度<θ2<45度)とすると、模様の高さが高くなり、測定高さのレンジを大きくすることができる。
【0050】
(第三変形例)
第三変形例における焦点調整治具について図10を用いて説明する。図10は第三変形例における焦点調整治具を示す側面図である。
【0051】
実施形態では、焦点調整治具200はステージ103の上に直接載置され、模様面201aの下端と鏡面202aの下端は接触すると共に、ステージ103の上面に接触している。このため、目盛治具201の模様面201aと鏡治具202の鏡面202aの接続面は、鏡面と実体目盛の光量が異なるため、模様の連続性を確保しにくい。
【0052】
第三変形例における焦点調整治具200は、目盛治具201および鏡治具202の下に同じ高さのスペーサ203を設置し、模様面201aと鏡面202aの接続面を焦点面から上方に遠ざけている。模様面201aの下端と鏡面202aの下端はステージ103の上面から離れて接触していない。これにより、焦点面付近の模様の連続性が確保でき測定精度の劣化を抑制することができる。また、鏡治具202の鏡面202aのみを撮像装置101の視野内に入れて反射率が同じ鏡面202aのみを撮像して焦点位置を測定することが可能になる。なお、模様面201aの下端と鏡面202aの下端は離れていてもよい。
【0053】
(第四変形例)
第四変形例における焦点調整治具について図11を用いて説明する。図11は第四変形例における焦点調整治具を示す側面図である。
【0054】
第四変形例における焦点調整治具200は、目盛治具201の模様面201aと鏡治具202の鏡面202aの接続面の中心を通り、ステージ103の上面に垂直な線を回転軸とする回転機構204を目盛治具201および鏡治具202の下に設ける。模様面201aの下端と鏡面202aの下端はステージ103の上面から離れて接触していない。これにより、目盛治具201および鏡治具202を回転機構204により回転させて撮像装置101およびレンズ102の光学系の鉛直性も評価できる。目盛治具201および鏡治具202を回転させて焦点位置の明暗差グラフの前後波形の形状に違いがあれば光軸が鉛直になっていないことがわかる。
【0055】
(第五変形例)
第五変形例における焦点調整治具について図12を用いて説明する。図12は第五変形例における焦点調整治具を示す図であり、図12(a)は上面図であり、図12(b)は側面図である。
【0056】
第五変形例における焦点調整治具200は目盛治具201と複数の鏡治具202と、スペーサ203とで構成される。複数の鏡治具202は、例えば、第一鏡治具202_1、第二鏡治具202_2、第三鏡治具202_3および第四鏡治具202_4を有する。
目盛治具201の模様面201aの向かい側に第一鏡治具202_1、第二鏡治具202_2、第三鏡治具202_3および第四鏡治具202_4のそれぞれの鏡面202aが位置するように、目盛治具201および複数の鏡治具202がステージ103の上に設置される。
【0057】
目盛治具201は幅方向(Y軸方向)が広くなっているが、その他の構成は実施形態における目盛治具201と同様の構成である。第一鏡治具202_1、第二鏡治具202_2、第三鏡治具202_3および第四鏡治具202_4は実施形態における鏡治具202と同様の構成である。
【0058】
第一鏡治具202_1、第二鏡治具202_2、第三鏡治具202_3および第四鏡治具202_4のそれぞれのX軸方向の長さは目盛治具201の長さと同じである。目盛治具201のY軸方向の長さ(幅)は、第一鏡治具202_1、第二鏡治具202_2、第三鏡治具202_3および第四鏡治具202_4の幅の合計と同じである。
【0059】
第一鏡治具202_1の鏡面202aの下端は目盛治具201の模様面201aの下端と接している。第二鏡治具202_2の鏡面202aの下端は目盛治具201の模様面201aの下端から第一鏡治具202_1のX軸方向の長さ分離れている。第三鏡治具202_3の鏡面202aの下端は目盛治具201の模様面201aの下端から第一鏡治具202_1および第二鏡治具202_2のX軸方向の長さを合計した長さ分離れている。第四鏡治具202_4の鏡面202aの下端は目盛治具201の模様面201aの下端から第一鏡治具202_1、第二鏡治具202_2および第三鏡治具202_3のX軸方向の長さを合計した長さ分離れている。
【0060】
目盛治具201の模様面201aが第一鏡治具202_1の鏡面202aに反射され、模様面201aがHa分だけ下方に伸びる。模様面201aが第二鏡治具202_2の鏡面202aに反射され、模様面201aが2×Ha分だけ下方に伸びる。模様面201aが第三鏡治具202_3の鏡面202aに反射され、模様面201aが3×Ha分だけ下方に伸びる。模様面201aが第四鏡治具202_4の鏡面202aに反射され、模様面201aが4×Ha分だけ下方に伸びる。これにより、第一鏡治具202_1、第二鏡治具202_2および第三鏡治具202_3の鏡面202aに反射した目盛治具201の模様を撮像することで、撮像装置101から見てステージ103の上面より遠方側の狭い範囲(Ha)から広い範囲(4×Ha)の模様画像、すなわち、明暗差グラフを取得できる。これにより、目盛治具201のサイズをより小さく、すなわち、薄型に(高さを低く)して、広範囲の焦点合わせが可能となる。
【0061】
(第六変形例)
第六変形例における焦点調整治具について図13を用いて説明する。図13は第六変形例における焦点調整治具を示す図であり、図13(a)は上面図であり、図13(b)は側面図である。
【0062】
第五変形例における焦点調整治具は複数の鏡治具202を有しているが、第六変形例における焦点調整治具200は、複数の鏡治具202に代えて、移動可能な鏡治具202を有する。
【0063】
焦点調整治具200は目盛治具201と鏡治具202と駆動部205とで構成される。目盛治具201は実施形態における目盛治具201と同様の構成である。鏡治具202は実施形態における鏡治具202と同様の構成である。鏡治具202は、駆動部205によりX軸方向に沿って、鏡面202aの下端が目盛治具201の模様面201aの下端と接している位置と所定距離離れた位置との間を移動する。目盛治具201の模様面201aの向かい側に鏡治具202の鏡面202aが位置するように、目盛治具201および鏡治具202がステージ103の上に設置される。これにより鏡治具202の鏡面202aに反射した目盛治具201の模様を撮像することで、第五変形例と同様に、撮像装置101から見てステージ103の上面より遠方側の狭い範囲から広い範囲の模様画像、すなわち、濃淡グラフを取得できる。
【0064】
(第七変形例)
第七変形例における装置について図14を用いて説明する。図14は第七変形例における装置の側面図である。
【0065】
実施形態では、撮像装置101は固定配設されてZ軸方向に移動できないが、第七変形例における装置では、駆動部303により撮像装置101はZ軸方向に移動可能である。これにより、制御部300によりずれ量を測定した後は、駆動部303により撮像装置101の設置位置の調整を行ってずれを解消する。これを複数回繰り返すことで画像の焦点が最も合う位置に調整する。
【0066】
例えば、積層ボンディング段数(1段目ボンド~n段目ボンド等)に応じた焦点位置(中心値)と撮像装置101の位置との関係を調整時に取得しておく。通常動作時において積層ボンディング段数に基づいた撮像装置101に位置を設定することにより、積層ボンディング段数に応じて焦点の合う位置に撮像装置101を移動することが可能である。
【0067】
焦点調整治具200は実施形態における焦点調整治具に限らず、変形例における焦点調整治具を使用することができる。第六変形例における焦点調整治具は焦点が合う位置の測定範囲が制御部300で変更することが可能であり、第六変形例における焦点調整治具を第七変形例における装置に組み込むことにより、焦点調整の自動化が可能となる。
【0068】
(第八変形例)
第八変形例における装置について図15を用いて説明する。図15は第八変形例における装置を示す図であり、図15(a)は上面図であり、図15(b)は側面図である。
【0069】
第八変形例における焦点調整治具200は複数の目盛治具201と複数の鏡治具202とで構成される。複数の目盛治具201は、例えば、第一目盛治具201_1および第二目盛治具201_2を有する。複数の鏡治具202は、例えば、第一鏡治具202_1および第二鏡治具202_2を有する。第一目盛治具201_1の向かい側に第一鏡治具202_1、第一目盛治具201_1の横に第二鏡治具202_2、その向かい側に第二目盛治具201_2が交互にステージ103の上に設置される。
【0070】
この状態で、第一鏡治具202_1、第二鏡治具202_2に反射した第一目盛治具201_1、第二目盛治具201_2の模様を撮像した場合、光学系またはステージ103の上面に傾きがなければ焦点の合う位置の測定値は同じ位置に計測される。しかし、傾きがある場合、その傾きに応じて計測位置に違いが表れることになる。第一鏡治具202_1において計測された焦点の合う位置と第二鏡治具202_2において計測された焦点の合う位置とのX軸方向の間隔に基づいてステージ103のX軸方向の傾きを計算することができる。
【0071】
またさらに、ステージ103の幅(Y軸方向の長さ)に応じて複数の目盛治具201と鏡治具202の組合せを交互に横に配置するようにしてもよい。間隔をあけて横に配置された鏡治具202の焦点測定位置に違いがあれば、ステージ130のY軸方向の傾きがあることが確認され、その傾きは間隔をあけ配置された鏡治具202の焦点位置と、その鏡治具202の配置間隔から、ステージ103のY軸方向の傾きを計算することができる。したがって、この複数の目盛治具201と鏡治具202が交互に配置された焦点調整治具200では、ステージ130のX軸方向とY軸方向の両方の傾きを計測することが可能となる。
【実施例
【0072】
図16は実施例におけるダイボンダの概略を示す上面図である。図17図16において矢印A方向から見たときに、ピックアップヘッド及びボンディングヘッドの動作を説明する図である。
【0073】
ダイボンダ10は、大別して、基板Sに実装するダイDを供給するダイ供給部1と、ピックアップ部2、中間ステージ部3と、ボンディング部4と、搬送部5、基板供給部6と、基板搬出部7と、各部の動作を監視し制御する制御部8と、を有する。Y軸方向がダイボンダ10の前後方向であり、X軸方向が左右方向である。ダイ供給部1がダイボンダ10の手前側に配置され、ボンディング部4が奥側に配置される。ここで、基板Sには最終1パッケージとなる、一つ又は複数の製品エリア(以下、パッケージエリアPという。)がプリントされている。
【0074】
まず、ダイ供給部1は基板SのパッケージエリアPに実装するダイDを供給する。ダイ供給部1は、ウェハ11を保持するウェハ保持台12と、ウェハ11からダイDを剥離する点線で示す剥離ユニット13と、を有する。ダイ供給部1は図示しない駆動手段によってXY軸方向に移動し、ピックアップするダイDを剥離ユニット13の位置に移動させる。剥離ユニット13は実施形態におけるステージ103に対応する。
【0075】
ピックアップ部2は、ダイDをピックアップするピックアップヘッド21と、ピックアップヘッド21をY軸方向に移動させるピックアップヘッドのY駆動部23と、ウェハ認識カメラ24と、コレット22を昇降、回転及びX軸方向移動させる図示しない各駆動部と、を有する。ピックアップヘッド21は、剥離されたダイDを先端に吸着保持するコレット22(図17も参照)を有し、ダイ供給部1からダイDをピックアップし、中間ステージ31に載置する。ピックアップヘッド21は、コレット22を昇降、回転及びX軸方向移動させる図示しない各駆動部を有する。ウェハ認識カメラ24は実施形態における撮像装置101に対応し、実施形態または変形例に示す方法により焦点が合うように取り付けられている。撮像対象物は剥離ユニット13の上に載置されるダイシングテープ16に貼付されたダイDである。
【0076】
中間ステージ部3は、ダイDを一時的に載置する中間ステージ31と、中間ステージ31上のダイDを認識する為のステージ認識カメラ32を有する。中間ステージ31は実施形態におけるステージ103に対応する。ステージ認識カメラ32は実施形態における撮像装置101に対応し、実施形態または変形例に示す方法により焦点が合うように取り付けられている。
【0077】
ボンディング部4は、中間ステージ31からダイDをピックアップし、ボンディングステージBS上に搬送されてくる基板SのパッケージエリアP上にボンディングし、又は既に基板SのパッケージエリアPの上にボンディングされたダイの上に積層する形でボンディングする。ボンディング部4は、ピックアップヘッド21と同様にダイDを先端に吸着保持するコレット42(図17も参照)を備えるボンディングヘッド41と、ボンディングヘッド41をY軸方向に移動させるY駆動部43と、基板SのパッケージエリアPの位置認識マーク(図示せず)を撮像し、ボンディング位置を認識する基板認識カメラ44と、を有する。ボンディングステージBSは実施形態におけるステージ103に対応する。基板認識カメラ44は実施形態における撮像装置101に対応し、実施形態または変形例に示す方法により焦点が合うように取り付けられている。このような構成によって、ボンディングヘッド41は、ステージ認識カメラ32の撮像データに基づいてピックアップ位置・姿勢を補正し、中間ステージ31からダイDをピックアップし、基板認識カメラ44の撮像データに基づいて基板にダイDをボンディングする。
【0078】
搬送部5は、基板Sを掴み搬送する基板搬送爪51と、基板Sが移動する搬送レーン52と、を有する。基板Sは、搬送レーン52に設けられた基板搬送爪51の図示しないナットを搬送レーン52に沿って設けられた図示しないボールネジで駆動することによって移動する。このような構成によって、基板Sは、基板供給部6から搬送レーン52に沿ってボンディング位置まで移動し、ボンディング後、基板搬出部7まで移動して、基板搬出部7に基板Sを渡す。
【0079】
次に、ダイ供給部1の構成について図18を用いて説明する。図18図16のダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
【0080】
ダイ供給部1は、水平方向(XY軸方向)に移動するウェハ保持台12と、上下方向に移動する剥離ユニット13と、を備える。ウェハ保持台12は、ウェハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウェハリング14に保持され複数のダイDが接着されたダイシングテープ16を水平に位置決めする支持リング17と、を有する。剥離ユニット13は支持リング17の内側に配置される。
【0081】
ダイ供給部1は、ダイDの突き上げ時に、ウェハリング14を保持しているエキスパンドリング15を下降させる。その結果、ウェハリング14に保持されているダイシングテープ16が引き伸ばされダイDの間隔が広がり、剥離ユニット13によりダイシングテープ16からダイDを剥離し、ダイDのピックアップ性を向上させている。なお、ダイを基板に接着する接着剤は、液状からフィルム状となり、ウェハ11とダイシングテープ16との間にダイアタッチフィルム(DAF)18と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けている。ダイアタッチフィルム18を有するウェハ11では、ダイシングは、ウェハ11とダイアタッチフィルム18に対して行なわれる。従って、剥離工程では、ウェハ11とダイアタッチフィルム18をダイシングテープ16から剥離する。
【0082】
ダイボンダ10の制御系について図19を用いて説明する。図19図16に示すダイボンダの制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0083】
図19に示すように、制御系80は制御部8と駆動部86と信号部87と光学系88と、を備える。制御部8は、大別して、主としてCPU(Central Processor Unit)で構成される制御・演算装置81と、記憶装置82と、入出力装置83と、バスライン84と、電源部85と、を有する。記憶装置82は、処理プログラムなどを記憶しているRAMで構成されている主記憶装置82aと、制御に必要な制御データや画像データ等を記憶しているHDDで構成されている補助記憶装置82bと、を有する。入出力装置83は、装置状態や情報等を表示するモニタ83aと、オペレータの指示を入力するタッチパネル83bと、モニタを操作するマウス83cと、光学系88からの画像データを取り込む画像取込装置83dと、を有する。また、入出力装置83は、ダイ供給部1のXYテーブル(図示せず)やボンディングヘッドテーブルのZY駆動軸等の駆動部86を制御するモータ制御装置83eと、種々のセンサ信号や照明装置などのスイッチ等の信号部87から信号を取り込み又は制御するI/O信号制御装置83fと、を有する。光学系88には、図16に示すウェハ認識カメラ24、ステージ認識カメラ32、基板認識カメラ44が含まれる。制御・演算装置81はバスライン84を介して必要なデータを取込み、演算し、ボンディングヘッド41等の制御や、モニタ83a等に情報を送る。
【0084】
制御部8は画像取込装置83dを介して光学系88で撮像した画像データを記憶装置82に保存する。保存した画像データに基づいてプログラムしたソフトウェアにより、制御・演算装置81を用いてダイDおよび基板Sの位置決め、ペースト状接着剤の塗布パターンの検査並びにダイDおよび基板Sの表面検査を行う。制御・演算装置81が算出したダイDおよび基板Sの位置に基づいてソフトウェアによりモータ制御装置83eを介して駆動部86を動かす。このプロセスによりウェハ11上のダイDの位置決めを行い、ダイ供給部1およびダイボンディング部4の駆動部で動作させダイDを基板S上にボンディングする。光学系88で使用する認識カメラはグレースケール、カラーカメラ等であり、光強度を数値化する。
【0085】
次に、実施例におけるダイボンダを用いた半導体装置の製造方法について図20を用いて説明する。図20図16に示すダイボンダを用いた半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0086】
(ウェハ・基板搬入工程:ステップS51)
ウェハ11から分割されたダイDが貼付されたダイシングテープ16を保持したウェハリング14をウェハカセット(不図示)に格納し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8はウェハリング14が充填されたウェハカセットからウェハリング14をダイ供給部1に供給する。また、基板Sを準備し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8は基板供給部6で基板Sを基板搬送爪51に取り付ける。
【0087】
(ピックアップ工程:ステップS52)
制御部8は、ウェハ保持台12により所望するダイDをウェハリング14からピックアップできるようにウェハリング14を移動し、ウェハ認識カメラ24により撮像したデータに基づいて位置決めおよび表面検査を行う。制御部8は位置決めされたダイDを剥離ユニット13によりダイシングテープ16から剥離する。
【0088】
制御部8は剥離されたダイDをピックアップヘッド21によりウェハ11からピックアップする。このようにして、ダイシングテープ16から剥離されたダイDは、ピックアップヘッド21のコレット22に吸着、保持されて次工程(ステップS53)に搬送される。そして、ダイDを次工程に搬送したコレット22がダイ供給部1に戻ってくると、上記した手順に従って、次のダイDがダイシングテープ16から剥離され、以後同様の手順に従ってダイシングテープ16から1個ずつダイDが剥離される。
【0089】
(ボンディング工程:ステップS53)
制御部8はウェハ11からピックアップヘッド21によりピックアップしたダイDを中間ステージ31に載置し、ボンディングヘッド41で中間ステージ31から再度ダイDをピックアップし、位置決めされた基板Sにボンディングする。制御部8は基板認識カメラ44により撮像した画像データに基づいてダイDが所望の位置にボンディングされたかどうか等の検査を行う。
【0090】
(基板搬出工程:ステップS54)
制御部8は基板搬出部7で基板搬送爪51からダイDがボンディングされた基板Sを取り出す。ダイボンダ10から基板Sを搬出する。
【0091】
上述したように、ダイDは、ダイアタッチフィルム18を介して基板S上に実装され、ダイボンダから搬出される。その後、ワイヤボンディング工程でAuワイヤを介して基板Sの電極と電気的に接続される。続いて、ダイDが実装された基板Sがダイボンダに搬入されて基板S上に実装されたダイDの上にダイアタッチフィルム18を介して第2のダイDが積層され、ダイボンダから搬出された後、ワイヤボンディング工程でAuワイヤを介して基板Sの電極と電気的に接続される。第2のダイDは、前述した方法でダイシングテープ16から剥離された後、ペレット付け工程に搬送されてダイDの上に積層される。上記工程が所定回数繰り返された後、基板Sをモールド工程に搬送し、複数個のダイDとAuワイヤとをモールド樹脂(図示せず)で封止することによって、積層パッケージが完成する。
【0092】
以上、本開示者らによってなされた発明を実施形態、変形例および実施例に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態、変形例および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0093】
例えば、実施例では、ウェハ11とダイシングテープ16との間に貼り付けるダイアタッチフィルム(DAF)と呼ばれるフィルム状の接着材料を用いる例を説明したが、プリフォーム部で基板にペースト状接着剤を塗布するようにしてもよい。この場合、ペーストを塗布する位置や塗布状況を確認するプリフォーム部に設けられる認識カメラの焦点調整を実施形態における焦点調整治具を用いて行う。
【0094】
また、実施例では、ダイ供給部1とボンディング部4との間に中間ステージ部3を設け、ピックアップヘッド21でダイ供給部1からピックアップしたダイDを中間ステージ31に載置し、ボンディングヘッド41で中間ステージ31から再度ダイDをピックアップし、搬送されてきた基板Sにボンディングする例を説明したが、ボンディングヘッド41でダイ供給部1からピックアップしたダイDを基板Sにボンディングするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
101・・・撮像装置
103・・・ステージ
201・・・目盛治具(第一治具)
201a・・・模様面
202・・・鏡治具(第二治具)
202a・・・鏡面
200・・・焦点調整治具
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