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特許7522835自動分析装置、および自動分析装置における試薬登録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】自動分析装置、および自動分析装置における試薬登録方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
G01N35/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022536124
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2021007128
(87)【国際公開番号】W WO2022014082
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020121462
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恵
(72)【発明者】
【氏名】七字 優
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534827(JP,A)
【文献】特開2008-309777(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059231(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/173464(WO,A1)
【文献】特開2011-027658(JP,A)
【文献】特開2013-134145(JP,A)
【文献】特表2018-506712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00,35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分析する自動分析装置であって、
1種類の試薬を収容した試薬容器が複数集まった試薬容器セットを複数設置可能な試薬保持機構と、
前記試薬容器セットに添付されている情報媒体に記録されている第一試薬情報を読み取る情報媒体読取機構と、
前記試薬保持機構に設置された際に前記試薬容器セットの設置向きを特定するためのそれぞれ別々の第二試薬情報を少なくとも2以上の異なる手法により実測する情報取得部と、を備え、
前記情報媒体読取機構により読み取られた前記第一試薬情報と、前記情報取得部により実測された前記第二試薬情報とから、前記試薬容器セットの設置向きを判別する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
2以上の前記第二試薬情報の実測手法のうち、いずれの手法を用いるかの情報を記憶する記憶部を更に備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記試薬容器セットの前記試薬容器から試薬を分注する試薬ノズルを備えた試薬分注機構を更に備え、
前記第二試薬情報は、前記試薬分注機構により実測される
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記第二試薬情報のうち一つを、前記試薬分注機構に備えられた液面センサにより実測される試薬液面高さとする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項3に記載の自動分析装置において、
それぞれ別々の前記第二試薬情報のうちの一つを、前記試薬の吸引時に前記試薬分注機構に備えられた圧力センサにより実測される圧力波形データとする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記試薬に光を照射する光源と、
前記光源から照射され、前記試薬を通過した光の光学特性を測定する分光光度計と、を更に備え、
それぞれ別々の前記第二試薬情報のうちの一つを、前記分光光度計により実測される吸光度とする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の自動分析装置において、
前記第二試薬情報を、同一試薬容器セットに充填された試薬間の吸光度の相対比較と装置内に保存されている吸光度情報と実測された吸光度との乖離を評価する絶対比較とのうち少なくともいずれかとする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記第二試薬情報の実測手法を、試薬液面高さの検知、前記試薬の吸引時の圧力波形データ、及び前記試薬の吸光度としたときに、最も優先される手法を前記試薬液面高さの検知とし、次いで前記圧力波形データとする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
検体を分析する自動分析装置における試薬登録方法であって、
1種類の試薬を収容した試薬容器が複数集まった試薬容器セットを試薬保持機構内に設置する設置工程と、
前記試薬容器セットに添付されている情報媒体に記録されている第一試薬情報を読み取る情報媒体読取工程と、
前記試薬保持機構に設置された際に前記試薬容器セットの設置向きを特定するためのそれぞれ別々の第二試薬情報を少なくとも2以上の異なる手法により実測する情報取得工程と、
前記情報媒体読取工程において読み取られた前記第一試薬情報と、前記情報取得工程において実測された前記第二試薬情報とから、前記試薬容器セットの設置向きを判別する判別工程と、を有する
ことを特徴とする自動分析装置における試薬登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの多成分を含む検体中の目的成分の濃度又は活性値を測定する自動分析装置、および自動分析装置における試薬登録方法に係り、複数種類の試薬を充填した容器を複数個同時に架設して使用する自動分析装置、および自動分析装置における試薬登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬容器が収容する複数種類の試薬の筐体内での配置に関する情報を記録する記録媒体を備え、記録媒体に記録された情報を読取る情報読取手段と、情報読取手段により読取られた情報に基づき、試薬分注手段が試薬容器のいずれの試薬を分注するかを制御する試薬分注制御手段を備えた、ことが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-43137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液や尿などの生体検体の分析を行う自動分析装置においては、これらの検体と反応させるために使用する試薬は試薬容器に充填され、円形のテーブル(以下、試薬ディスクという)の円周上に設置される。試薬ディスクを回転させることでノズルの移動動作の最小化と試薬容器へのランダムアクセスを可能にする。こうした動作により処理能力を最大限に発揮できるように設計することが主流となっている。
【0005】
自動分析装置には、あらかじめ登録された試薬情報とその試薬を使用して測定する分析項目、及び試薬が設置されている試薬ディスクのポジション番号が記憶されており、測定を行う時は使用する試薬を収容する試薬容器を試薬吸引位置に位置付けるように試薬ディスクを回転させ、対象となる試薬容器上に試薬吸引ノズルを移動させて試薬の吸引を行う。
【0006】
ここで、試薬容器には1つの容器に1種類の試薬が入っているタイプ(試薬容器)と、複数の試薬を添加して測定する分析項目に対応するために、複数の試薬容器を組み合わせて1つの容器とする試薬容器セットと呼ばれるタイプがある(以下、これらを総称して試薬ボトルという)。
【0007】
このような試薬ボトルの設置方法としては、ユーザーが試薬ボトルを試薬ディスク上に直接設置する方法と、ユーザーが規定位置に設置した試薬ボトルを装置が試薬ディスク上に引き込む方法がある。
【0008】
ここで、ユーザーが試薬容器設置時の向きを間違えると、装置が試薬種別を誤認する、もしくはシステムにより試薬容器の登録不可となるため、誤ったデータの出力やユーザー作業の煩雑さにつながる。また、どちらの場合においても、通常はユーザーが試薬ボトルの向きを確認して設置するとなると、煩雑な作業となり、人為的なミスの発生につながる。
【0009】
特に、上述した試薬カセットのタイプの試薬ボトルでは同一ボトル内の試薬種別(第一試薬、第二試薬など)を特定する必要があることから向きを正しく設置する要求がより高い。
【0010】
しかし、試薬ボトルでは、その形状を小さくするために左右対称に形成されている場合が多く、判別がつきにくい、との問題がある。また、向きを間違えて設置すると測定結果の異常につながり、検査のやり直しを招くことから、正しい向きに設置するか、設置向きを特定して吸引すべき試薬がいずれの位置に存在しているかを特定する必要がある。
【0011】
このようなユーザーの作業負荷を軽減するために、例えば特許文献1では、試薬ボトルの向きに応じて分注の順序を変更するように制御することにより、設置の際に試薬ボトルの向きを考慮せずに分析することが可能な自動分析装置について説明している。
【0012】
ここで、自動分析装置に使用する試薬ボトルには、有効期限やロット情報を含むバーコードなどの情報媒体を備えているのが主流である。特許文献1に記載の方法では、情報媒体に加えて、試薬ボトルの向きを判別するための情報識別用の白黒ラベル等の媒体および装置側にそれを読み取る機構を備えることを前提として、装置が試薬ボトルの向き及びその他の情報から適切な設置向きを判別する機能を実現している。これにより設置時にユーザーが試薬ボトルの向きを気にすることなく作業可能となっている。
【0013】
しかしながら、試薬ボトルの向きを判別するための識別媒体及び装置側の読み取り機構にキズや汚れなどのトラブルがあった場合、特許文献1に記載の技術においては、前者は当該試薬ボトルの登録不可、後者はすべての試薬ボトルの登録不可となってしまう。特に、試薬保存機構内は試薬飛び散りのリスクがあり、汚れが付着しやすい環境であることから、汚れのリスクが高い箇所となっている。
【0014】
その場合、代替方法としてユーザーが操作画面上でボトル情報を手入力することにより、試薬ボトルの登録を可能にできるが、非常に煩雑な操作となり、かえって作業時間の延長や人為的ミスの誘発につながる。
【0015】
また、従来装置から備えている試薬情報識別子とは別に、試薬ボトルの設置向き情報を識別する媒体や装置側の読み取り機構を増やすことを前提とした場合、これらの機構の増設に伴うコストの上昇や、故障、識別時のトラブル発生などのリスクが増加することを示している。
【0016】
本発明では、上記課題に鑑み、特別な機構を追加することなく、試薬ボトルの設置向きを識別することが可能な自動分析装置、および自動分析装置における試薬登録方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検体を分析する自動分析装置であって、1種類の試薬を収容した試薬容器が複数集まった試薬容器セットを複数設置可能な試薬保持機構と、前記試薬容器セットに添付されている情報媒体に記録されている第一試薬情報を読み取る情報媒体読取機構と、前記試薬保持機構に設置された際に前記試薬容器セットの設置向きを特定するための第二試薬情報を少なくとも2以上の異なる手法により実測可能な情報取得部と、を備え、前記情報媒体読取機構により読み取られた前記第一試薬情報と、前記情報取得部により実測された前記第二試薬情報とから、前記試薬容器セットの設置向きを判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特別な機構を追加することなく、試薬ボトルの設置向きを識別することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態に係る自動分析装置の概略図。
図2】本実施の形態に係る自動分析装置での試薬ディスクの概略図。
図3】本実施の形態に係る自動分析装置での試薬ボトルの概略図。
図4】本実施の形態に係る自動分析装置での試薬ボトルのうち、第一試薬収容部と第二試薬収容部とが同一形状の試薬ボトルの断面の概略図。
図5】本実施の形態に係る自動分析装置での試薬ボトルのうち、第一試薬収容部と第二試薬収容部とが異なる形状の試薬ボトルの断面の概略図。
図6】本実施の形態に係る自動分析装置での試薬ボトルの向き判定に関する制御ブロック図。
図7】本実施の形態に係る自動分析装置での分析パラメータと試薬ボトル紐づけの概念図。
図8】本実施の形態に係る自動分析装置での試薬ボトル登録のフローチャート。
図9】本実施の形態に係る自動分析装置での試薬ボトル設置向き情報取得のフローチャート。
図10】本実施の形態に係る自動分析装置での液面高さ判定のフローチャート。
図11】本実施の形態に係る自動分析装置での試薬下降高さの概念図。
図12】本実施の形態に係る自動分析装置での試薬下降高さの概念図。
図13】本実施の形態に係る自動分析装置での液性判定のフローチャート。
図14】本実施の形態に係る自動分析装置での吸光度判定のフローチャート。
図15】本実施の形態に係る自動分析装置での吸光度判定の詳細。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の自動分析装置、および自動分析装置における試薬登録方法の実施例について図1乃至図15を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0021】
<装置の基本構成>
最初に、自動分析装置の全体構成について図1乃至図5を用いて説明する。図1は本発明を適用した自動分析装置の一実施例を示す装置上面から見た概略図、図2は自動分析装置の試薬ディスクの概略図、図3は本実施の形態に係る自動分析装置での試薬ボトルの概略図、図4および図5は試薬ボトルの断面の概略図である。
【0022】
図1に示した検体を分析する自動分析装置200は、反応ディスク1、検体搬送機構8、検体分注機構9、試薬ディスク3、試薬分注機構11,13、洗浄機構15、光源16a、分光光度計16b、攪拌機構17,18、洗浄槽19,20,21,22,23、操作ユニット24等を備えている。
【0023】
反応ディスク1には反応容器2が円状に並んでおり、37度に温度管理された熱伝導性の媒体(熱媒体)、例えば水で満たされた反応槽5(以下、恒温槽とも言う)に浸かっている。恒温水が反応槽5内を循環することにより、反応容器2の温度は常に37度前後に保たれている。
【0024】
反応ディスク1の近くには、検体容器6を載せたラック7を移動する検体搬送機構8が設置されている。
【0025】
反応ディスク1と検体搬送機構8の間には、回転及び上下動可能な検体分注機構9が設置されており、検体ノズル10を備えている。
【0026】
<試薬ディスク3の基本構成>
図2に示すように、試薬ディスク3の中には、1種類の試薬を収容した試薬容器4A,4Bが複数集まった試薬ボトル4(図3参照)が円の内周及び外周に設置可能である。
【0027】
この試薬ディスク3には、情報媒体読取機構27,28、開口部(図示省略)等が設けられている。
【0028】
情報媒体読取機構27,28は、試薬ボトル4に添付されたRFID等の情報媒体29(図3参照)に記録されている第一試薬情報が読み取れるようになっている。本実施形態では、情報媒体29をRFID、情報媒体読取機構27,28をRFIDリーダーとするが、必要な情報を読み取れるシステムであれば、媒体および読取の手法は問わない。例えば、情報媒体29はバーコードや情報の読み書きをする機能を備えたIC等を用いることができる。
【0029】
開口部は、試薬を分注するために試薬ディスク3のカバー上に配置されている。この開口部は例えば4ヶ所あり、試薬ディスク3内の外周及び内周に配置された試薬ボトル4の開口部26に位置的に対応している。
【0030】
試薬ディスク3では、試薬の吸引は、測定に必要な試薬ボトル4が試薬ディスク3開口部の下に配置されるように試薬ディスク3を回転させる。試薬ディスク3開口部と試薬ボトル4の開口部26が重なった位置で試薬の吸引を行う。
【0031】
<試薬ボトル4の基本構成>
図3に示すように、試薬ボトル4は複数の試薬容器4A,4Bの複合、もしくは試薬ボトル4内部を仕切りで仕切る形で構成される。試薬ボトル4には、図3に示すように上面に情報媒体29、例えばRFIDラベルが添付されている。
【0032】
図4あるいは図5に示すように、試薬ボトル4は、1つのボトルの中に複数種類の試薬を充填することが可能である。ここでは検体を反応させるための試薬として、第一試薬および第二試薬が充填されている場合について説明する。
【0033】
試薬ボトル4の組み合わせに関し、図4に示すように同一形状を組み合わせても良いし、図5に示すように異なる形状を組み合わせてもよい。例えば、第一試薬と第二試薬が同じ充填量だったとしても、充填する試薬ボトル4の形状を分けることによって、試薬液高さに差を作ることができ、後述する試薬液高さ判定による試薬ボトル4設置向き判定を実施することが可能になる。
【0034】
試薬ボトル4に充填される試薬量は予め規定されており、製造段階で定められた量が充填されて販売される。
【0035】
図1に戻り、反応ディスク1と試薬ディスク3の間には、回転及び上下動可能な試薬分注機構11,13が設置されており、試薬ボトル4の試薬容器4A,4Bから試薬を分注する試薬ノズル12,14を備えている。
【0036】
この試薬分注機構11,13には、試薬ボトル4の試薬容器4A,4B内の試薬の液面を検知するための液面センサ11a,13a(図6参照)や、試薬吸引時の試薬ノズル12,14内の圧力を検出することで試薬の吸引、吐出が正常に行われているか否かを検出するための圧力センサ11b,13b(図6参照)が設けられている。
【0037】
液面センサ11a,13aは、例えば試薬ノズル12,14の静電容量の変化を検知して、液面の有無を判別する構成が挙げられるが、試薬ボトル4内の液高さを検知できるものであれば形態は問わない。
【0038】
反応ディスク1の周囲には、洗浄機構15、試薬に光を照射する光源16aおよび光源16aから照射され、試薬を通過した光の光学特性を測定する分光光度計16b、攪拌機構17,18、が配置されている。検体分注機構9、試薬分注機構11,13、攪拌機構17,18の動作範囲上に洗浄槽19,20,21,22,23がそれぞれ設置されている。
【0039】
検体分注機構9、試薬分注機構11,13、および洗浄機構15には、それぞれ専用のポンプ(図示省略)が接続されている。
【0040】
操作ユニット24は、自動分析装置200全体の情報を統括する役割を担う部分であり、全体制御部24-1、記憶部24-2、表示部24-3、入力部24-4を有している。この操作ユニット24は、汎用のコンピュータを用いて実現されてもよく、コンピュータ上で実行されるプログラムの機能として実現されてもよい。
【0041】
操作ユニット24における全体制御部24-1は、分析ユニット100に対して有線或いは無線のネットワーク回線によって接続され、自動分析装置200全体の動作を制御する部分である。
【0042】
全体制御部24-1の処理は、プログラムコードとしてメモリなどの記録部に格納し、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが各プログラムコードを実行することによって実現されてもよい。なお、全体制御部24-1は、専用の回路基板などのハードウェアによって構成されていてもよい。
【0043】
表示部24-3は、測定する検体に対して測定する測定項目をオーダーする操作画面、測定した結果を確認する画面、等の様々な画面が表示される部分であり、液晶ディスプレイ等で構成される。なお、液晶ディスプレイである必要はなく、プリンタなどに置き換えてもよいし、ディスプレイとプリンタ等とで構成することが、更には後述の入力部24-4を兼ねたタッチパネルタイプのディスプレイとすることができる。
【0044】
入力部24-4は、表示部24-3に表示された操作画面に基づいて各種パラメータや設定、測定結果、測定の依頼情報、分析開始や停止の指示等を入力するための部分であり、キーボードやマウスなどで構成される。
【0045】
記憶部24-2は、自動分析装置を構成する各機器の動作に必要なタイムチャートや動作パラメータ、生体検体を特定するための各種情報、測定結果等を記憶する部分であり、フラッシュメモリ等の半導体メモリやHDD等の磁気ディスク等の記憶媒体で構成される。
【0046】
本実施形態では、自動分析装置200が生化学項目を測定する構成の場合について説明しているが、生化学項目を測定する形態に限られず、例えば免疫項目や電解質項目等の他の項目を測定する形態とすることができる。
【0047】
また、自動分析装置200が1つの分析ユニットで構成される場合について説明しているが、分析ユニットは2つ以上備えることができる。この場合、分析ユニットの種類も特に限定されず、生化学分析ユニットや免疫分析ユニット、血液凝固分析ユニット等の各種分析ユニットをそれぞれ1つ以上備えることができる。
【0048】
更に、自動分析装置200には搬送ユニットを備えることができる。
【0049】
次に、図1に示す自動分析装置200の機構動作の概略を説明する。
【0050】
検体搬送機構8に設置された各検体に対して、操作ユニット24により依頼された測定項目に従い、検体ノズル10により分注動作が実施される。
【0051】
検体ノズル10は、吸引した検体を反応ディスク1上にある反応容器2に吐出し、その反応容器2に対して試薬ノズル12,14により試薬ディスク3の試薬ボトル4から吸引した試薬をさらに添加し、攪拌する。その後、分光光度計16bにより撹拌により調整された反応液の光学特性が測定され、測定結果が操作ユニット24の全体制御部24-1に送信される。
【0052】
全体制御部24-1は、送信された測定結果から演算処理によって検体内の特定成分の濃度を求める。分析結果は表示部24-3を介してユーザーに通知されるとともに、記憶部24-2に記録される。
【0053】
<試薬登録について>
次に、本実施形態における試薬ボトル4の登録動作の詳細について図6乃至図15を用いて説明する。
【0054】
図6は試薬ボトルの向き判定に関する制御ブロック図、図7は分析パラメータと試薬ボトル紐づけの概念図、図8は試薬ボトル登録のフローチャート、図9は試薬ボトル設置向き情報取得のフローチャート、図10は液面高さ判定のフローチャート、図11および図12は試薬下降高さの概念図、図13は液性判定のフローチャート、図14は吸光度判定のフローチャート、図15は吸光度判定の詳細を示す図である。
【0055】
まず、本実施形態の自動分析装置200における、試薬の登録に関係する構成について図6を用いて説明する。
【0056】
本実施形態の自動分析装置200では、試薬の登録は、情報媒体読取機構27,28によって試薬ボトル4に添付された情報媒体29から読み取られた第一試薬情報と、情報取得部によって実測される試薬ディスク3に設置された際に試薬ボトル4の設置向きを特定するための第二試薬情報とを用いて行われる。
【0057】
図6に示すように、試薬の登録に関係する構成として、分析ユニット100では、情報媒体読取機構27,28、分光光度計16b、試薬分注機構11,13の液面センサ11a,13aおよび圧力センサ11b,13bが挙げられる。全体制御部24-1では、媒体読取判定部241a、ボトル適否判定部241b、ボトル設置向き判定部241cが挙げられる。記憶部24-2では、ボトル情報記憶部242a、ポジション情報記憶部242a1、ボトルコード記憶部242bが挙げられる。
【0058】
情報取得部は、第二試薬情報を少なくとも2以上の異なる手法により実測可能であり、試薬分注機構11,13により実測されるものとすることができる。
【0059】
例えば、試薬分注機構11,13に備えられた液面センサ11a,13aにより実測される試薬液面高さ、あるいは試薬の吸引時に試薬分注機構11,13に備えられた圧力センサ11b,13bにより実測される圧力波形データとすることができる。
【0060】
また、第二試薬情報を、分光光度計16bにより実測される吸光度や、同一の試薬ボトル4に充填された試薬間の吸光度の相対比較の演算結果607,609とボトルコード記憶部242b内に保存されている吸光度情報と実測された吸光度との乖離を評価する絶対比較の乖離率608,610とのうち少なくともいずれかとすることができる。
【0061】
なお、第二試薬情報の実測手法については、上述のような方法を採用した場合は、試薬液面高さの検知、試薬の吸引時の圧力波形データ、試薬の吸光度としたときに、最も優先される手法を試薬液面高さの検知とし、次いで圧力波形データとすることができる。
【0062】
全体制御部24-1の媒体読取判定部241aは、情報媒体読取機構27,28により試薬ボトル4の情報媒体29が読み取れたか否かを判定することで、試薬ボトル4が試薬設置位置に設置されているか否かを判定する。
【0063】
ボトル適否判定部241bは、読み取られた情報媒体29からの第一試薬情報と記憶部24-2内のボトルコード記憶部242bに保存されている分析パラメータ内のボトルコードと照合し、分析パラメータとボトルコードとが一致しているか否かを判定する。
【0064】
ここで、試薬ボトル4の第一試薬情報とは、図7に示すように、項目名、ボトルコード、有効期限、ロット等を含む情報である。
【0065】
ボトルコードは、当該試薬ボトル4と当該試薬を使用する分析パラメータとを紐づけるための識別番号であり、第一試薬情報のボトルコードやロットと対比することで、設置された試薬に関係する分析パラメータを特定する。
【0066】
分析パラメータは、図7に示すようにオンラインデータベースや外部記憶媒体を用いて、ボトルコード記憶部242b内にダウンロードされる。分析パラメータには、分析パラメータ番号、項目名、波長、検体分注量、試薬分注量などの分析に必要な情報が保存されている。分析パラメータには、前述の情報に加えて、分析パラメータボトル情報が含まれる。
【0067】
分析パラメータボトル情報とは、ボトルコード及び対象ボトルに充填されている試薬の充填量情報および後述の判定に使用する粘度、吸光度情報である。
【0068】
更には、分析パラメータボトル情報には、第二試薬情報の取得に用いる判定方法についても保存されている。例えば、図7であれば、液面高さ判定、および液性判定については実行可能であり、吸光度判定については実行不可となっている。
【0069】
なお、第二試薬情報の取得に用いる判定方法については、図7であれば、3つの方法のうちの全て、またはいずれかを使用する設定とすることができる。この場合、使用可能な判定方法を選択可能とすることができる。また、2つ以上選択されている場合は、使用の優先順位をつけることができる。更には、判別には、自動分析装置200内の単一の機構を使用して判別しても、複数の機構を使用して判別しても良く、特に限定されない。
【0070】
なお、試薬充填量や、液性情報、吸光度情報等の分析パラメータに関する情報は、オンライン経由で取得する形態に限られず、第一試薬情報として試薬ボトル4の情報媒体29にもともと記録されており、第一試薬情報としてまとめて取得される形態や、記憶部24-2に記録されている形態とすることができる。
【0071】
ボトル設置向き判定部241cは、情報媒体読取機構27,28により読み取られた第一試薬情報と、情報取得部により実測された第二試薬情報とから、試薬ボトル4の設置向きを判別する。このボトル設置向き判定部241cは、本実施形態では、液面高さ判定部241c1、液性判定部241c2、および吸光度判定部241c3を有する。その詳細は後述する。
【0072】
記憶部24-2のうち、ボトル情報記憶部242aは、情報媒体読取機構27,28により読み取られた試薬ボトル4の第一試薬情報を記憶している。このボトル情報記憶部242aは、試薬ボトル4の設置向きの情報を記憶するポジション情報記憶部242a1を有している。
【0073】
ボトルコード記憶部242bは、図7に示すようなオンラインデータベースや外部記憶媒体から取得された分析パラメータが記憶されている。このボトルコード記憶部242bは、記憶部24-2、すなわち自動分析装置200の外部の構成であってもよく、オンラインデータベースや外部記憶媒体のままでもよい。
【0074】
次いで、自動分析装置200における試薬登録方法の流れについて図8以降を用いて説明する。
【0075】
まず、図8に示すように、ユーザーは試薬ディスク3の蓋を開けて(ステップS101)、試薬ボトル4を設置する(ステップS102)。これらステップS101,S102が設置工程に相当する。
【0076】
このステップS102における試薬ボトル4の設置は、ユーザーの手による。または、装置に試薬ボトル4を自動で試薬ディスク3へ架設する機構(オートローダー)を搭載する形態でも良い。ここではユーザーが手で試薬ボトル4を設置する場合について記載する。試薬ボトル4は図2のように試薬ディスク3に設置する際に、試薬ボトル4の設置向きを考慮することなく設置可能である。
【0077】
その後、必要な試薬ボトル4を試薬ディスク3に設置した後、試薬ディスク3の蓋を閉める(ステップS103)。
【0078】
その後、試薬ボトル4の第一試薬情報の読み取りを開始する。開始のタイミングは試薬ディスク3の蓋を閉めたタイミングで自動的に開始しても良く、ユーザーが画面から試薬ボトル4情報読取開始の指示を出しても良い。試薬ボトル4の情報読取が開始されると、試薬ボトル4に添付された情報媒体29を読み取るために、全ての試薬ボトル4の設置位置が情報媒体読取機構27,28の位置を通過するように試薬ディスク3が回転する(ステップS104)。このステップS104が情報媒体読取工程に相当する。
【0079】
次いで、媒体読取判定部241aは、ポジションx(x=1~nの自然数で全ポジション数)に対して情報媒体29の読み取りができたか否かを判定する(ステップS105)。情報媒体29が読み取れた試薬ディスク3ポジションについては、試薬ボトル4が設置してあると判定し(ステップS107)、処理をステップS108に進める。これに対し、情報媒体29が読み取れない場合は、当該位置に試薬ボトル4設置されていないと判定して(ステップS106)、処理を終了する。
【0080】
次いで、ボトル適否判定部241bは、ボトルコード記憶部242bに保存されている分析パラメータ内のボトルコードと照合し、分析パラメータとボトルコードが一致しているか否かを判定する(ステップS108)。
【0081】
照合の結果、ボトルコード記憶部242b内に記憶されている分析パラメータとボトルコードが一致した場合、処理をステップS110に進めて、当該試薬ボトル4に対して後述の試薬ボトル4設置向き情報取得を開始する(ステップS110)。このステップS110が、情報取得工程、および判別工程に相当する。
【0082】
照合の結果、分析パラメータとボトルコードが一致しない場合、当該試薬ボトル4は登録せず(ステップS109)、処理を終了する。
【0083】
次いで、ステップS110における試薬ボトル4設置向き情報取得について図9を参照して以下説明する。対象の試薬ボトル4に対する試薬ボトル4設置向き情報取得は、「液面高さ判定」「液性判定」「吸光度判定」の3つの判定で実施する。各判定の詳細な方法については図10以降を用いて後述する。
【0084】
初期設定として、図7に示しているように、分析パラメータ内の対象ボトルコードに対して、予めどの判定で試薬ボトル4設置向き情報を取得するかを設定しておく。例えば、試薬ボトル4内の第一試薬と第二試薬の液面高さが異なる場合は、液面高さの差異から判別が可能となる。
【0085】
また、試薬ボトル4内の第一試薬と第二試薬の液面高さが同程度で「液面高さ判定」で判別困難な場合は、「液性判定」を設定する。液性判定とは、後述のように第一試薬と第二試薬の粘度が異なる場合に、試薬の圧力波形データを利用して、試薬液性から第一試薬と第二試薬を判別する方法である。
【0086】
「液面高さ判定」および「液性判定」でも判別困難な試薬ボトル4に対しては「吸光度判定」を設定する。試薬の吸光度は、各々の試薬の処方により、固有の紫外-可視吸収スペクトルをもっているため、吸光度を実測すれば試薬の判別が可能となる。
【0087】
これらの設定がされている状態において、試薬ボトル4設置向き情報の取得処理が開始されると、最初に、図9に示すように、分析パラメータ内の対象ボトルコードに対して液面高さ判定が有効になっているか否かを判定する(ステップS201)。
【0088】
液面高さ判定が有効になっていると判定されたときは処理をステップS202Aに進め、液面高さ判定を実行し(ステップS202A)、判定が問題なく行えたか否かを判定する(ステップS202B)。液面高さが検知できたときは処理をステップS208に進め、液面高さが検知できなかった(判定NG)ときは処理をステップS207に進める。
【0089】
これに対し、ステップS201において液面高さ判定が有効になっていないと判定されたときは処理をステップS203に進め、分析パラメータ内の対象ボトルコードに対して液性判定が有効になっているか否かを判定する(ステップS203)。
【0090】
液性判定が有効になっていると判定されたときは処理をステップS204Aに進め、液性判定を実行し(ステップS204A)、判定が問題なく行えたか否かを判定する(ステップS204B)。液性が判定できたときは処理をステップS208に進め、液性が判定できなかった(判定NG)ときは処理をステップS207に進める。
【0091】
これに対し、ステップS203において液性判定が有効になっていないと判定されたときは処理をステップS205に進め、分析パラメータ内の対象ボトルコードに対して吸光度判定が有効になっているか否かを判定する(ステップS205)。
【0092】
液面高さ判定が有効になっていると判定されたときは処理をステップS206Aに進め、吸光度判定を実行し(ステップS206A)、判定が問題なく行えたか否かを判定する(ステップS206B)。吸光度測定により試薬の特定ができたときは処理をステップS208に進め、試薬が特定できなかった(判定NG)ときは処理をステップS207に進める。
【0093】
各種判別で判別可能となった場合(ステップS202B,S204B,S206Bの判定OK)、試薬の吸引ポジション、すなわち試薬ボトル4の設置向きがどのように配置されているかが確定され(ステップS208)、試薬ボトル設置向き情報取得を終了させる。
【0094】
これに対し、判別方法が設定されていない場合(ステップS205のNo)や各種判定でNG(ステップS202B,S204B,S206Bの判定NG)となった場合、対象の試薬ボトル4を登録不可として(ステップS207)、試薬ボトル設置向き情報取得を終了させる。
【0095】
なお、処置の手順は上述の流れに限られず、例えばステップS202Bにおいて液面高さ検知がNGであったと判定されたときは処理をステップS203に進めて液性判定が実行可能であるか否かを判定する等、試薬ボトル4の設置向きを極力判定する手順とすることができる。
【0096】
以下、図9のステップS202Aにおける液面高さ判定の詳細について図10乃至図12を用いて記載する。
【0097】
液面高さ判定は、試薬分注機構11,13に備えられた液面センサ11a,13aを用いる。
【0098】
図10に示すように、液面高さ判定開始後、最初に、液面高さ判定部241c1は、分析パラメータに設定されている第一試薬、第二試薬の設定高さ情報を取得する(ステップS301)。
【0099】
その後、取得した設定高さ情報をもとに、液面高さ判定部241c1は試薬ボトル4への試薬ノズル12,14の下降量を決定する。試薬ノズル12,14の下降量は、第一試薬、第二試薬の液高さの関係によって変わる。
【0100】
例えば、設定されている第一試薬の液高さが第二試薬よりも高い場合は設定されている第一試薬の液高さめがけ(図10のケース1)、設定されている第二試薬の液高さが第一試薬よりも高い場合は設定されている第二試薬の液高さめがけ(図10のケース2)、液面高さ判定部241c1は試薬ノズル12,14のいずれかを下降させる(ステップS302)。以下、試薬ノズル12を下降させるものとする。
【0101】
なお、本実施形態では、試薬ディスク3の中心方向に近い方をポジションA、遠い方をポジションBとし、ポジションAに対して試薬ノズル12が下降させるものとし、図11に示すように、ポジションAとポジションBのどちらか一方の液面に試薬ノズル12が浸漬する高さまで下降させるようにする。
【0102】
また、液面検知のやり方としては、(1)液面を探しながら下降させる、(2)ソフト的に予め分析パラメータから取得した液面の位置を狙ってそこまで下降させる方法が挙げられる。ここで、試薬容器4A,4Bがキャップなし開放型の場合は、液面を探しながら降りて、検知した位置が想定と一致しているかを確認することが望ましい。
【0103】
ポジションAに対して、ステップS302の設定下降量で試薬ノズル12が下降した後、液面センサ11a,13aにより液面の有無を確認し(ステップS303)、液面が検知されたか否かを判定する(ステップS304)。液面が確認できた場合、ケース1であればポジションAの位置が第一試薬、ポジションBは第二試薬と決定され、ケース2であれば、ポジションAの位置が第二試薬、ポジションBは第一試薬と決定される(ステップS305)。
【0104】
一方で、ポジションAに対して試薬ノズル12の下降位置で液面が確認できなかった場合、ポジションBに対して、試薬ノズル12が第一試薬の液高さまで下降し、液面の確認を行って(ステップS306)、液面が検知されたか否かを判定する(ステップS307)。
【0105】
ここで、ステップS302において高いほうに先にアクセスする理由は、図11に示すように、設定されている第一試薬の液高さが第二試薬よりも高い場合、高い側の第一試薬の液高さめがけて試薬ノズル12が下降した場合は、どちらか一方の試薬のみ液面に入るのみで済むが、図12に示すように低い側の第二試薬の液高さめがけて試薬ノズル12が下降した場合は、どちらの試薬も液に入り、いずれも液面検知がありとなってしまうためである。また、試薬ノズル12の試薬への突っ込み量が大きくなってしまい、洗浄を多く行う必要が生じるため、これを避けるためである。
【0106】
なお、液面を探しながら下降させる形態を採用した場合では、前者の問題は生じないものの、後者の問題は存在するため、先に高いほうにアクセスする設定の方が望ましいことは同じである。
【0107】
このステップS306は、第二試薬である、ということを確認するための処理であり、省略してステップS303,S304の判定結果のみで登録する処理とすることも可能である。
【0108】
ただし、試薬ボトル4が、3つ以上の試薬容器から構成される場合は、このステップS306やその後のステップS307等の処理を少なくとも1回以上行うことが望ましい。
【0109】
ステップS306において液面を確認できた場合、ケース1であればポジションAの位置が第二試薬、ポジションBは第一試薬と決定され、ケース2であれば、ポジションAの位置が第一試薬、ポジションBは第二試薬と決定される(ステップS308)。
【0110】
一方で、ポジションBでも試薬ノズル12の下降位置で液面が確認できなかった場合は、不適切な試薬が入っている可能性が非常に高いと思われるため、当該試薬ボトル4を登録不可とする(ステップS309)。
【0111】
ステップS305やステップS308で決定された試薬のポジション情報は、試薬ボトル4の設置向き情報(試薬の吸引ポジション情報)としてポジション情報記憶部242a1に登録され(ステップS310)、処理が終了する。
【0112】
次いで、図9のステップS204Aにおける液性判定の詳細について図13を用いて記載する。
【0113】
液性判定は、試薬分注機構11に備えている圧力センサ11b,13bを用いる。
【0114】
図13に示すように、液性判定開始後、最初に、液性判定部241c2は、分析パラメータに設定されている第一試薬、第二試薬の液面高さおよび液性情報を取得する(ステップS401)。本実施形態では液性情報として粘度情報を使用する。この粘度情報とは、当該試薬ボトル4における第一試薬および第二試薬を装置が吸引した際の圧力波形データを示すものとする。
【0115】
情報取得後、液性判定部241c2は、試薬ボトル4の一方のポジションへ試薬ノズル12のいずれかを下降させる(ステップS402)。ここではポジションAへと下降させるものとする。このときの試薬ノズル12の下降量は、図12に示すように、確実に液面に入るために第一試薬の設定高さと第二試薬の設定液高さとのうち、低い方の高さへ下降させるものとする。
【0116】
その後、液面を確認し(ステップS403)、液面が確認できたか否かを判定する(ステップS404)。確認できた場合は試薬の吸引動作を行い(ステップS405)、圧力データを取得する(ステップS406)。この時の試薬吸引量は、圧力データが取得できる程度の規定量とする。ここでは50μLと規定する。
【0117】
その後、ポジションBに対して、上記と同様の動作を行い、圧力データを取得する(ステップS407,S408,S409,S410,S411)。
【0118】
ステップS403,S408において液面が検知されず、ステップS404,S409でNoと判定されたときは不適切な試薬が入っている可能性が非常に高いと思われるため、当該試薬ボトル4を登録不可とする(ステップS414)。
【0119】
ポジションA、ポジションBの圧力データを取得後、予めボトルコード記憶部242b内に保存されている圧力波形データとの比較解析を行い、ポジションA、ポジションBがそれぞれ第一試薬、第二試薬どちらに分類されるかを判別する(ステップS412)。
【0120】
このステップS412における圧力波形の比較判別手法については、参照している圧力波形データと実測の圧力波形データの類似性を定量的に判別できればよく、手法は問わない。
【0121】
判別が可能な場合は、吸引ポジション情報を登録する(ステップS413)。判別できない場合は、登録不可とする(ステップS414)。
【0122】
判定基準となる試薬の粘度情報は、試薬ロットによって変わるケースがあるため、試薬ロットごとにオンラインデータベースや外部メディアを使用して、参照する圧力波形情報をアップデートしてもよい。
【0123】
なお、予め把握している情報から、圧力には差がでないことがわかっている場合は、図7のところの設定で液性はチェックしないようにする、あるいは液面にあえて差をつけるように試薬ボトル4側を工夫するなどで対応することが望ましい。
【0124】
次いで、図9のステップS206Aにおける吸光度判定の詳細について図14および図15を用いて記載する。
【0125】
吸光度判定は、試薬分注機構11,13、反応ディスク1の反応容器2、光源16a、および分光光度計16bを使用して実施する。
【0126】
図14に示すように、吸光度判定開始後、吸光度判定部241c3は、まず分析パラメータに設定されている液面高さおよび吸光度情報を取得する(ステップS501)。
【0127】
その後、吸光度判定部241c3は、図12のように、ポジションAに対して、第一試薬の設定液高さと第二試薬の設定液高さのうち、低い方の高さへ試薬ノズル12を下降させる(ステップS502)。試薬ノズル12の下降後、液面の有無を確認し(ステップS503)、液面が確認できたか否かを判定する(ステップS504)。
【0128】
確認できた場合、吸光度判定部241c3は、試薬を吸引させる(ステップS505)。この時の試薬吸引量は、「反応容器で測光できる最低液量+余分量」である。余分量とは、試薬ノズル内を満たす純水による試薬の薄まりを避けるために余分に吸引する試薬量を指す。また最低液量は反応容器の形状で決まり、ここでは75μLである。その後、吸光度判定部241c3は、吸引した試薬を反応容器2へ吐出させる(ステップS506)。
【0129】
ポジションBに対しても、ステップS502と同じ液高さまで試薬ノズル12を下降させ(ステップS507)、液面確認し(ステップS508)、液面が確認できたか否かを判定する(ステップS509)。
【0130】
確認できた場合は、吸光度判定部241c3は、試薬吸引を行い(ステップS510)、ポジションAの試薬とは異なる反応容器2へ試薬を吐出させる(ステップS511)。このときの試薬吸引吐出量はポジションAのときと同じである。
【0131】
ポジションAおよびポジションBの試薬が反応容器2に吐出された後、反応ディス1クを回転し、吸光度測定を行う(ステップS512)。吸光度測定は、反応ディスク1を回転させて、光源16aから放出され、吐出した試薬を透過した光の光量を分光光度計16bで測定して、各試薬の吸光度を取得する動作である。
【0132】
ここで、試薬ディスク3内に、吸光度判定の設定がされている新規の試薬ボトル4が複数存在する場合は、対象の試薬ボトル4から反応容器2への試薬吐出がすべて完了してから吸光度測定に遷移する。
【0133】
なお、ステップS503,S508において液面が検知されず、ステップS504,S509でNoと判定されたときは不適切な試薬が入っている可能性が非常に高いと思われるため、当該試薬ボトル4を登録不可とする(ステップS515)。
【0134】
吸光度測定後、吸光度判定を行う(ステップS513)。吸光度測定時の取得対象波長は、指定波長でも装置で取得できる全ての波長のいずれでもよい。吸光度判定は予め分析パラメータに設定されている吸光度情報と実測吸光度の比較により行う。
【0135】
図15に吸光度判定の一例を示す。図15では、試薬ボトル4の試薬容器4A,4Bにおける実測吸光度601や、ボトルコード記憶部242bに保存されているボトルコード「10001」の装置内吸光度情報602が示されている。ここでは、実測吸光度601は分光光度計16bで測定できる全12波長の実測吸光度を示している。装置内吸光度情報602は、ある特定波長の吸光度の理論値または試薬出荷前に実測した値であり、ここでは2波長における理論値として示している。吸光度判定には、装置内吸光度情報602の理論値と実測吸光度601との差を用いる。
【0136】
なお、試薬の吸光度は、試薬ロットで変動するものも存在する。このため、試薬ロットごとにオンラインデータベースや外部メディアを使用して、装置内吸光度情報をアップデートすることができる。また、試薬製造後から吸光度が徐々に変化していく試薬もあるため、ある波長における第一試薬と第二試薬との吸光度の比や、差分から判定することもできる。
【0137】
第一試薬判定において、分析パラメータボトル情報内に設定されている第一試薬の吸光度とa,bの対応する波長の実測吸光度の差603,604を算出する。その後、a,bの相対判定を行う。相対判定では、吸光度差の演算結果607,609のうち、値が小さい方が選出される。図15の例では演算結果607が選出される。
【0138】
次に、絶対判定を行う。絶対判定では選出された側、図15ではaの実測吸光度が装置内の吸光度情報に対して乖離率608が±20%以内であるかを確認する。乖離率608が±20%以内の場合、図15の例ではaが第一試薬と判定される。
【0139】
第二試薬判定においても同様に、分析パラメータボトル情報内に設定されている第二試薬の吸光度とa,bの対応する波長の実測吸光度の差605,606を算出する。その後、a,bの相対判定を行う。相対判定では、吸光度差の演算結果607,609のうち、値が小さい方が選出される。図15の例では演算結果609が選出される。
【0140】
次に、絶対判定を行う。絶対判定では選出された側、図15ではbの実測吸光度が装置内の吸光度情報に対して乖離率610が±20%以内であるかを確認する。乖離率610が±20%以内の場合、図15の例ではbが第二試薬と判定される。なお、乖離率の値については、装置の測定性能、試薬の処方、製造工程のばらつき等を加味して、試薬ごとに任意の値を設定できる。また、割合ではなく、装置内吸光度との差を用いて判断してもよい。
【0141】
第一試薬判定、第二試薬判定の結果、a,bのポジション割り付けに矛盾が無ければ、吸光度判定部241c3は、最終判定611として、第一試薬および第二試薬のポジション情報を決定する。図15の場合、aが第一試薬、bが第二試薬となる。
【0142】
このように、吸光度判定部241c3は、第一試薬と第二試薬の判別が可能であったか否かを判定し(ステップS513)、判別可能と判定されたときは、試薬吸引ポジション情報をポジション情報記憶部242a1に登録する(ステップS514)。測定吸光度の異常などによって第一試薬と第二試薬との区別ができないと判定された場合は、該当する試薬ボトル4を登録不可とする(ステップS515)。
【0143】
なお、図15では、相対判定と絶対判定とが一致している場合について説明したが、2つの判定結果が分かれた場合には登録不可にすることが望ましい。なお、絶対判定を優先するものとしてもよい。
【0144】
また、相対判定と絶対判定とが一致しているAND条件の場合について説明したが、相対判定と絶対判定とのいずれかを実行するOR条件の形態とすることができる。
【0145】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0146】
上述した本実施例の検体を分析する自動分析装置200は、1種類の試薬を収容した試薬容器4A,4Bが複数集まった試薬ボトル4を複数設置可能な試薬ディスク3と、試薬ボトル4に添付されている情報媒体29に記録されている第一試薬情報を読み取る情報媒体読取機構27,28と、試薬ディスク3に設置された際に試薬ボトル4の設置向きを特定するための第二試薬情報を実測する情報取得部と、を備え、情報媒体読取機構27,28により読み取られた第一試薬情報と、情報取得部により実測された第二試薬情報とから、試薬ボトル4の設置向きを判別する。
【0147】
自動分析装置には、トラブルが少ない安定した稼働とユーザー作業、特に煩雑な作業の軽減が求められるが、上述のような試薬ボトル4の設置向きを自動で決定する構成を備えていることによって、ユーザーの負担を軽減することができる。また、試薬ボトル4の設置向きを特定するための専用記録媒体と読取機構を設ける必要がないため、媒体や機構が増えることによるコスト増加、及び故障やトラブルによる読み取り不可のリスクを低減することができるため、ユーザーは本機能の安定した運用が可能となる。
【0148】
また、情報取得部は、第二試薬情報を少なくとも2以上の異なる手法により実測可能であるため、様々な形状や状態の試薬ボトル4に対応できるようになり、よりユーザーの負担の軽減を図ることが可能な装置とすることができる。
【0149】
更に、2以上の第二試薬情報の実測手法のうち、いずれの手法を用いるかの情報を記憶する記憶部24-2を更に備えたことで、該当する試薬や試薬ボトル4の特徴に応じた試薬ボトル4の設置向き判定を実行できるため、より正確で、かつ安定した判定が可能となる。
【0150】
また、試薬ボトル4の試薬容器4A,4Bから試薬を分注する試薬ノズル12,14を備えた試薬分注機構11,13を更に備え、第二試薬情報は、試薬分注機構11,13により実測される、例えば、試薬分注機構11,13に備えられた液面センサ11a,13aにより実測される試薬液面高さとすることや、試薬の吸引時に試薬分注機構11,13に備えられた圧力センサ11b,13bにより実測される圧力波形データとすることにより、試薬分注に必要な元来装置に備わっている構成によって設置向き判定が可能であるため、安価で、かつ確実な設置向き判定を実現することができる。
【0151】
更に、試薬に光を照射する光源16aと、光源16aから照射され、試薬を通過した光の光学特性を測定する分光光度計16bと、を更に備え、第二試薬情報を、分光光度計16bにより実測される吸光度とすることによっても、分析装置に元来備わっている構成のみで設置向き判定を実行できる。
【0152】
また、第二試薬情報を、同一の試薬ボトル4に充填された試薬間の吸光度の相対比較とボトルコード記憶部242b内に保存されている吸光度情報と実測された吸光度との乖離を評価する絶対比較とのうち少なくともいずれかとすることにより、より正確な設置向き判定を実施できる。
【0153】
更に、第二試薬情報の実測手法を、試薬液面高さの検知、試薬の吸引時の圧力波形データ、試薬の吸光度としたときに、最も優先される手法を試薬液面高さの検知とし、次いで圧力波形データとすることで、判定を実行した後の後処理が容易な順で設置向き判定を実行することができる。
【0154】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0155】
1…反応ディスク
2…反応容器
3…試薬ディスク(試薬保持機構)
4…試薬ボトル
4A,4B…試薬容器
5…反応槽
6…検体容器
7…ラック
8…検体搬送機構
9…検体分注機構
10…検体ノズル
11,13…試薬分注機構
11a,13a…液面センサ
11b,13b…圧力センサ
12,14…試薬ノズル
15…洗浄機構
16a…光源
16b…分光光度計
17,18…攪拌機構
19,20,21,22,23…洗浄槽
24…操作ユニット
24-1…全体制御部
24-2…記憶部
24-3…表示部
24-4…入力部
26…開口部
27…情報媒体読取機構(試薬ディスク内側)
28…情報媒体読取機構(試薬ディスク外側)
29…情報媒体
100…分析ユニット
200…自動分析装置
241a…媒体読取判定部
241b…ボトル適否判定部
241c…判定部
241c1…判定部
241c2…液性判定部
241c3…吸光度判定部
242a…ボトル情報記憶部
242a1…ポジション情報記憶部
242b…ボトルコード記憶部
601…実測吸光度
602…装置内吸光度情報
603,604,605,606…差
607,609…演算結果
608,610…乖離率
611…最終判定
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15