(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】半導体処理装置
(51)【国際特許分類】
F16K 51/02 20060101AFI20240718BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240718BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F16K51/02 B
H01L21/02 Z
H01L21/31 F
(21)【出願番号】P 2023174625
(22)【出願日】2023-10-06
【審査請求日】2023-11-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522245189
【氏名又は名称】蘇州芯慧聯半導体科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU XINHUILIAN SEMICONDUCTOR TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120226
【氏名又は名称】西村 知浩
(72)【発明者】
【氏名】任潮群
(72)【発明者】
【氏名】ギラセ クルナル ガジェンダラシンク
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-139255(JP,A)
【文献】特開2003-120857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0162770(US,A1)
【文献】特開2002-50461(JP,A)
【文献】特開平10-89497(JP,A)
【文献】特開2005-351400(JP,A)
【文献】特開2014-67655(JP,A)
【文献】特開2002-261039(JP,A)
【文献】特開平10-321530(JP,A)
【文献】特許第7416554(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 39/00-51/02
H01L 21/31,21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理する空間部を有する半導体処理装置であって、
前記空間部は、光を透過する部材で構成された加熱源が気密部材を介して支持部で支持される加熱源保持機構を有し、前記気密部材に対して光が照射する光路上であって、前記加熱源の前記気密部材との接触部位に輻射熱を遮断する輻射熱遮断部が設けられ、
前記空間部には、前記被処理物が通過可能となる搬出口が形成され、
前記搬出口には、高温対応真空仕切弁が設けられ、
前記高温対応真空仕切弁は、弁体と、前記弁体に設けられ前記空間部を気密に維持するシール材と、を有し、前記弁体の前記空間部側に露出する表面
に輻射熱を遮蔽する輻射熱遮蔽部を施した、
半導体処理装置。
【請求項2】
前記輻射熱遮蔽部は、前記弁体の少なくとも一部を覆って前記輻射熱を反射する反射板である、請求項1に記載の
半導体処理装置。
【請求項3】
前記反射板は、セラミック材料で形成されている、請求項2に記載の
半導体処理装置。
【請求項4】
前記反射板には、前記輻射熱を反射する金属膜が形成される、請求項2に記載の
半導体処理装置。
【請求項5】
前記反射板には、前記輻射熱を反射する光学膜が形成される、請求項2に記載の
半導体処理装置。
【請求項6】
前記反射板には、前記輻射熱を反射する不透明石英が形成される、請求項2に記載の
半導体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温対応真空仕切弁を備えた半導体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の真空熱処理装置として、例えば真空アニール炉、高温酸化炉、高温CVD炉、エピタキシャル成長炉等の各装置では、シリコン基板などの被処理物を大気圧環境から処理室の内部に搬送するとき、処理室の内部を汚染しないように、ロードロック室を設け、ロードロック室等の真空予備室において、真空排気又は窒素ガス等の不活性雰囲気に置換して、被処理物に付着している残留水分等を取り除く工程が必要とされている。このため、例えば、大気圧環境とロードロック室との間、またロードロック室と処理室との間には、大気圧と真空を仕切るための仕切弁が設けられている。
【0003】
ここで、シリコン、GaN、SiC等の基板材料を用いた半導体製造において、数百工程に及ぶ熱処理、酸化、窒化、成膜、エッチングの処理工程があり、その多くは真空環境又は気密環境で実行される工程である。大気圧工程において、処理室及び被処理物の表面に酸素や水分を含む不純物が残留していると、プロセス特性に影響を与えることがあるため、ロードロック室等の真空予備室の内部で被処理物の表面から不純物を取り除く必要がある。この場合、大気圧環境側とロードロック室との間、またロードロック室と処理室との間には、仕切弁をそれぞれ設置し、ロードロック室等の真空予備室の内部を大気圧から真空に排気して、被処理物の表面に残留する水分等を除去している。
【0004】
特許文献1に示すように、ロードロック室から真空ロボットを用いて複数の処理室に被処理物を搬送するための搬送室が接続されている場合には、多数の仕切弁が必要になる。仕切弁には、その使用条件により圧力差、環境温度、さらにはCVDやエッチングの場合には材料ガスの種類により雰囲気が影響を受けて、成膜、浸食等が起こる。この結果、製品に歩留まりが生じ、また仕切弁の製品寿命が低下する問題がある、これらの問題を未然に防止するためには、仕切弁は大気圧と真空間の圧力差、及び処理室外部への熱漏れ以外にも、微小異物を排除するための技術的な対策が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-65559号公報
【文献】特開2020-125815号公報
【文献】特開2016-4985号公報
【文献】国際公開WO2011/43189
【文献】特開2020-61493号公報
【文献】特開2019-91930号公報
【文献】特開2018-56566号公報
【文献】特開2022-175988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、処理室の内部が800~2000℃の高温に至るため、処理室を仕切る仕切弁が受ける熱エネルギーは、仕切弁を構成する弁体及びシール材を直接に加熱する。これにより、融点の低いシール材が溶融し、消失又は蒸発する。さらには、弁体の材料によっては弁体そのものが変形し、また溶融することがある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、高温対応真空仕切弁のシール材及び弁体に対する熱による悪影響を防止することができる、半導体処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、被処理物を処理する空間部を有する半導体処理装置であって、前記空間部は、光を透過する部材で構成された加熱源が気密部材を介して支持部で支持される加熱源保持機構を有し、前記気密部材に対して光が照射する光路上であって、前記加熱源の前記気密部材との接触部位に輻射熱を遮断する輻射熱遮断部が設けられ、前記空間部には、前記被処理物が通過可能となる搬出口が形成され、前記搬出口には、高温対応真空仕切弁が設けられ、前記高温対応真空仕切弁は、弁体と、前記弁体に設けられ前記空間部を気密に維持するシール材と、を有し、前記弁体の前記空間部側に露出する表面に輻射熱を遮蔽する輻射熱遮蔽部を施した発明である。
【0009】
第1の発明において、前記輻射熱遮蔽部は、前記弁体の少なくとも一部を覆って前記輻射熱を反射する反射板でもよい。
【0010】
第1の発明において、前記反射板は、セラミック材料で形成されてもよい。
【0011】
第1の発明において、前記反射板に、前記輻射熱を反射する金属膜が形成されてもよい。
【0012】
第1の発明において、前記反射板に、前記輻射熱を反射する光学膜が形成されてもよい。
【0013】
第1の発明において、前記反射板は、前記輻射熱を反射する不透明石英が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シール材及び弁体に対する熱による悪影響を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体処理装置の縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る半導体処理装置を構成する蓋部の縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る半導体処理装置に用いられる加熱源である石英ヒータの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る半導体処理装置に用いられる加熱源である複数の石英ヒータが環状配置された構成の平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る半導体処理装置に用いられる石英ヒータが蓋部に取り付けられる加熱源保持機構を示す拡大縦断面図である。
【
図6】半導体処理装置に用いられる石英ヒータで発生する加熱エネルギーの熱伝搬を示した縦断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る加熱源保持機構の石英ヒータの一部に金属膜を塗布した構成の縦断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る加熱源保持機構の石英ヒータの一部を不透明石英にした構成の縦断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁が設けられた半導体処理装置の概念図である。
【
図10】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の一方側に可動可能な反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の一方側に可動可能な反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【
図11】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の一方側及び他方側に可動可能な反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の一方側及び他方側に可動可能な反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【
図12】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の一方側に固定された反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の一方側に固定された反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【
図13】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の一方側及び他方側に固定された反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の一方側及び他方側に固定された反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【
図14】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の一方側に可動可能で輻射熱遮蔽部を有する反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の一方側に可動可能で輻射熱遮蔽部を有する反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【
図15】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の一方側及び他方側に可動可能で輻射熱遮蔽部を有する反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の一方側及び他方側に可動可能で輻射熱遮蔽部を有する反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【
図16】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の一方側に固定され輻射熱遮蔽部を有する反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の一方側に固定され輻射熱遮蔽部を有する反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【
図17】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の一方側及び他方側に固定され輻射熱遮蔽部を有する反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の一方側及び他方側に固定され輻射熱遮蔽部を有する反射板を備えた弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【
図18】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の冷媒が流れる冷媒流路を備えた弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の冷媒が流れる冷媒流路を備えた弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【
図19】(A)は本発明の一実施形態に係る高温対応真空仕切弁の冷媒が流れる冷媒流路を備え輻射熱遮蔽部を有する弁体が弁箱の通過口を閉じた状態の構成図であり、(B)は高温対応真空仕切弁の冷媒が流れる冷媒流路を備え輻射熱遮蔽部を有する弁体が弁箱の通過口を開口(開放)した状態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る半導体処理装置に用いる高温対応真空仕切弁及び高温対応真空仕切弁の輻射熱遮断方法について、図面を参照して説明する。
【0024】
[半導体処理装置の全体構成]
図1に示すように、半導体処理装置10は、被処理物(例えば、シリコン基板、半導体ウエハ、シリコンウエハともいう。図示省略)を装置内部に形成された空間部12に収容し、被処理物に対して加熱して熱処理を実行するための装置である。半導体処理装置10は、被処理物を載せる土台部14と、土台部14を上方から覆う蓋部16と、土台部14と蓋部16の周囲を囲む周壁部18と、で構成されている。土台部14と蓋部16と周壁部18とで囲まれた空間部12が、熱処理時において被処理物を大気から遮断可能となる気密空間になる。換言すれば、半導体処理装置10は、熱処理室ともいわれる。また、空間部12は、処理空間部とも称する。
【0025】
図2に示すように、蓋部16は、蓋部本体20と、蓋部本体20の内面側に配置された加熱源22と、を有している。加熱源22は、光を透過する部材、例えばハロゲンヒータで構成され、具体的には石英ヒータが使用される。光が透過する部材であれば、石英のほか、ガラス系、サファイアのセラミック材料、アクリル樹脂、プラスチック樹脂、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどの結晶材で構成されてもよい。以下、加熱源22として、石英ヒータ22Hを例にあげて説明する。この場合、半導体処理装置10は、ハロゲンヒータ容器と称する。
【0026】
図3及び
図4に示すように、石英ヒータ22Hは、被処理物が平面視において円盤状に形成されていることから、平面視で円形かつ環状に形成されていることが好ましい。
【0027】
ここで、石英ヒータ22Hは、平面視において円周方向に沿って部分的に非連続になる空隙部24が形成されている。この空隙部24は非発光部24Nである。例えば、
図4に示す石英ヒータでは、円周上に沿って4カ所の非発光部24Nが形成されているが、個数が4個に限定されるものではない。
【0028】
ここで、石英ヒータ22Hは、径方向に沿って径の異なる複数の円形かつ環状の石英ヒータが配置されている。この配置構造の石英ヒータ22Hは、径方向に沿った直線上に複数の非発光部24Nが存在しているが、径方向に沿って隣接する非発光部24Nと非発光部24Nとの間には、石英ヒータ22Hの発光部25B(
図4参照)が介在している。なお、発光部25Bとは、石英ヒータ22Hの石英管が存在している部位をいう。
【0029】
図1に示すように、蓋部本体20の内面側には、反射処理板26が設けられている。反射処理板26により、石英ヒータ22Hから放出される輻射熱が反射され、蓋部本体20の内部への伝熱を回避している。これにより、蓋部本体20への固定伝導熱による熱ダメージを防止できる。反射処理板26に限定されるものではなく、蓋部本体20の内面に反射処理膜を塗布して形成してもよい。
【0030】
蓋部本体20の内部には、冷却液を流すための冷却液流路28が形成されている。冷却液流路28に冷却液を流動(流通)させることにより、蓋部16の全体を冷却している。
【0031】
[加熱源保持機構]
次に、半導体処理装置に用いる加熱源保持機構について説明する。
【0032】
図1及び
図2に示すように、石英ヒータ22Hは、蓋部16に保持されている。蓋部16には、鉛直方向(重力方向)に延びる取付フランジ30が形成されている。このため、蓋部16には、蓋部16の内面と取付フランジ30で囲まれた凹部32が形成されている。石英ヒータ22Hは、この凹部32に位置している。なお、反射処理板26は、蓋部16の内面から取付フランジ30にわたって設けられており、輻射熱を反射する。
【0033】
図5に示すように、石英ヒータ22Hは、水平方向に延びる第1ヒータ部23Aと、第1ヒータ部23Aと接続するとともに鉛直方向(重力方向)に延びる第2ヒータ部23Bと、で構成されている。蓋部本体20には厚み方向に貫通した貫通孔34が形成されており、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bが貫通孔34に挿通されている。なお、例えば、第2ヒータ部23Bは、第1ヒータ部23Aに対して垂直に折り曲げて形成されるが、両者を別部材で形成して相互に接続してもよい。
【0034】
このため、円周方向に隣接する石英ヒータ22Hは、
図3及び
図4に示すように、第2ヒータ部23Bの部位において非連続になり、非発光部24Nが形成される。また円周方向に隣接する石英ヒータ22Hの第1ヒータ部23A同士の離間距離を最小距離T(
図5参照)に設定することができ、非発光部24Nを最小化にして半導体処理装置10の大型化を回避している。
【0035】
石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bは、例えば、非発熱部として形成される。
【0036】
図5に示すように、蓋部本体20には厚み方向に貫通した貫通孔34の内周面には、気密部材36が配置されている。気密部材36は、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bと押圧することにより、石英ヒータ22Hを保持している。気密部材36は、例えば、弾性部材であり、Oリングで構成される。Oリングは、エラストマー材料で形成されている。エラストマー材料として、例えば、バインドゴム又はフッ素ゴムなどが使用される。
【0037】
貫通孔34の内周面には、気密部材36に対して押圧するための圧縮リング38と、圧縮リング38を蓋部本体20に固定するための抑えフランジ40が設けられている。これにより、気密部材36は、貫通孔34の内周面に固定される。
【0038】
蓋部16の上方側(大気側)には、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bに接続する電流導入部42が突出している。電流導入部42に電圧が印加されて、石英ヒータ22Hの第1ヒータ部23Aが発熱し、被処理物が加熱される。電流導入部42は大気側に露出しているため、電流導入部42への伝熱がなく、発熱による技術的な問題は生じない。
【0039】
[加熱源保持機構の輻射熱遮断処理]
次に、半導体処理装置10に用いる加熱源保持機構に対する輻射熱遮断処理について説明する。
【0040】
図7に示すように、石英ヒータ22Hの近傍、すなわち石英ヒータ22Hからの光が気密部材36に対して照射可能な光路上の位置に、輻射熱を遮断する輻射熱遮断部が施されている。例えば、石英ヒータ22Hの外表面であって気密部材36との接触部位に、輻射熱を遮断する輻射熱遮断部が施されている。換言すれば、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの外表面には、輻射熱遮断部としての金属膜(金属反射膜)X1が塗布されている。金属膜X1は、熱反射率が高くて熱を吸収し難い、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、金、ニッケルなどを単体で又は任意の材質を混合して構成されている。金属膜X1により石英ヒータ22Hの第1ヒータ部23Aからの輻射熱が反射し、第2ヒータ部23Bの内部への伝熱を防止できる。このため、第2ヒータ部23Bは、非発熱部としての機能が維持される。
【0041】
なお、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの外表面に金属膜(金属反射膜)X1を塗布する構成以外のものとして、例えば、金属膜X1を別部材で形成し、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの外表面に被せ、又は巻回することも可能である。
【0042】
別の実施形態として、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの外表面には、輻射熱遮断部としての光学膜(光学フィルター膜、赤外線フィルター膜、図示省略)が塗布されている。光学膜により石英ヒータ22Hからの輻射熱が反射し、第2ヒータ部23Bの内部への伝熱を防止できる。このため、第2ヒータ部23Bは、非発熱部としての機能が維持される。光学膜として、例えば、曇りガラス、石英に乱反射する材料、発泡させて光散乱、屈折率を変えて光を透過させない金属を使用してもよい。
【0043】
なお、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの表面には、赤外線フィルター膜(光学フィルター膜)を塗布する構成以外のものとして、例えば、赤外線フィルター膜を別部材で形成し、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの表面に被せ、又は巻回することも可能である。
【0044】
別の実施形態として、
図8に示すように、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの材質を不透明石英X2で構成し、第1ヒータ部23Aの材質を透明石英で構成し、不透明石英X2の端部と透明石英の端部とで融着させて接続してもよい。不透明石英X2の端部と透明石英の端部との接続部は透明石英になるものの、第2ヒータ部23Bに輻射熱遮断部を形成することができる。これにより、第2ヒータ部23Bは、非発熱部としての機能が維持される。
【0045】
なお、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの材質を不透明石英X2で構成する以外のものとして、例えば、別部材として不透明石英X2で形成した輻射熱反射部材を作り、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの外表面に輻射熱反射部材を被せ、又は巻回することも可能である。
【0046】
次に、半導体処理装置10に用いる加熱源保持機構に対する輻射熱遮断処理の作用について説明する。
【0047】
図5乃至
図8に示すように、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bを蓋部本体20の貫通孔34に挿通し、気密部材36が第2ヒータ部23Bと接触して保持する構成では、石英ヒータ22Hの第1ヒータ部23Aで発生した加熱エネルギー(
図6の矢印参照)が第2ヒータ部23Bに向かって熱伝搬していき、第2ヒータ部23Bの温度が高温になる。このとき、第2ヒータ部23Bと接触している気密部材36にも加熱エネルギーが熱伝搬し、気密部材36の温度が高温になる。
【0048】
詳細には、一般に石英では、熱エネルギーを可視光400nmから赤外光2700nmの範囲で投下することができるが、熱源を中心とした石英管の放射方向(配管断面方向)に透過するとともに、石英管の軸方向にも透過する性質がある。このため、石英ヒータ22Hを気密部材36で鉛直方向(重力方向)に支持する構成では、気密部材36は石英管の壁を伝達した可視光~赤外線の熱の影響を受けることになる。この理由により、第2ヒータ部23Bと接触している気密部材36にも加熱エネルギーが熱伝搬して高温になり、この温度が気密部材36の耐熱温度以上に至る場合には、気密部材36が溶融又は焼損するのである。
【0049】
これらの理由から、半導体処理装置10での熱処理では、気密部材36が異常な程の高温状態になるため、気密部材36が溶融又は炭化、さらには弾性劣化する。このため、石英ヒータ22Hと蓋部本体20の貫通孔34との間に隙間が形成され、隙間から外部に熱が逃げる技術的問題が生じるおそれがある。外部への熱漏れが生じると、被処理物に対する熱処理が不十分になり、不良の原因になる。また、気密部材36が溶けると、石英ヒータ22Hを保持する保持力が弱くなり、石英ヒータ22Hが落下する不具合が生じるおそれもある。
【0050】
そこで、本実施形態では、
図7に示すように、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの外表面には、輻射熱遮断部としての金属膜(金属反射膜)X1が塗布されている。このため、石英ヒータ22Hの第1ヒータ部23Aで生じた加熱エネルギーは、金属膜X1で遮断されるため、第2ヒータ部23Bに熱が伝導しない。これにより、第2ヒータ部23Bの温度が高温になることを阻止できる。この結果、第2ヒータ部23Bと接触する気密部材36の温度が高温になることも回避でき、気密部材36の劣化を防止できる。
【0051】
気密部材36の劣化を防止できるため、気密部材36による第2ヒータ部23Bの保持力を確保できる。このため、外部への熱漏れや石英ヒータ22Hの落下を防止できる。
【0052】
また、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの外表面には、金属や誘電材料等を用いて、輻射熱遮断部としての赤外線フィルター膜(光学フィルター膜)が塗布されている構成でも、同様の作用が得られる。
【0053】
図8に示すように、石英ヒータ22Hの第2ヒータ部23Bの材質を不透明石英X2で構成しても、同様の作用が得られる。
【0054】
[高温対応真空仕切弁及び高温対応真空仕切弁の輻射熱遮断方法]
次に、半導体処理装置に取り付けられる高温対応真空仕切弁及び高温対応真空仕切弁の輻射熱遮断方法の構成の詳細について説明する。高温対応真空仕切弁及び高温対応真空仕切弁の輻射熱遮断方法は、主として、2つの実施例に分けられる。以下では、第1実施例と、第2実施例と、に分けて説明する。
【0055】
[第1実施例]
第1実施例の高温対応真空仕切弁及び高温対応真空仕切弁の輻射熱遮断方法は、高温対応真空仕切弁に反射板を備えた構成である。「反射板」とは、輻射シールド(以下同様)とも称する。
【0056】
図9に示すように、半導体処理装置10には、高温対応真空仕切弁50が設けられている。高温対応真空仕切弁50は、半導体処理装置10の大気圧環境側に配置されていることが好ましい。具体的には、半導体処理装置10の側壁には、被処理物が通過可能となる搬出口11が形成されている。高温対応真空仕切弁50は、搬出口11と連通するように設けられている。
【0057】
高温対応真空仕切弁50は、搬出口11に連通した通過口52を有する弁箱54と、弁箱54の通過口52を開閉可能な弁体56と、弁体56の先端部に設けられ弁体56が弁箱54の通過口52を閉鎖した(閉じた)ときに弁箱54の外筒58に位置する内壁60に対して圧接するシール材62と、を含んで構成されている。
【0058】
外筒58は、弁箱54の少なくとも一部を構成している。内壁60は、外筒58の少なくとも一部を構成している。
【0059】
シール材62は、例えば、エラストマー材料、ゴム等で構成されている。シール材62は、一般の半導体製造装置に用いられる他のシール材と同じ材料で構成されてもよい。
【0060】
図10乃至
図14に示す弁体56の内部は、冷却機構が配置されておらず、冷却水等の冷媒も流動(流通)していない。これにより、冷却水等の冷媒が漏洩して半導体処理装置10の空間部12に浸入する可能性をゼロにしている。
【0061】
ここで、
図9に示すように、半導体処理装置10の空間部12では、被処理物の処理時において800~2000℃に達する。このため、空間部12を仕切る高温対応真空仕切弁50が受ける熱エネルギーは、高温対応真空仕切弁50を構成する弁体56及びシール材62を直接に加熱する。これにより、融点の低いシール材62が溶融し、消失又は蒸発する。さらには、弁体56の材料によっては弁体が変形し、また溶融することがある。本実施形態では、これらの技術的課題を解決することができる。
【0062】
図10に示すように、弁箱54は、弁体56が退避するための退避部64を備えている。退避部64は、例えば、弁体56が収納される空間部である。弁箱54の通過口52を開口(開放)する場合には、弁体56が退避部64に位置した状態になる。一方、弁箱54の通過口52を閉じる場合には、弁体56が退避部64から送り出されて通過口52を遮断するように位置した状態になる。また、弁体56が通過口52を遮断した位置に移動したときは、シール材62が弁箱54の外筒58の内壁60に対して圧接され、弾性変形した状態になる。これにより、空間部12の気密が実現される。
【0063】
なお、弁体56を駆動させるための駆動源は、図示しないが、モータやシリンダー(エア又は油圧)等が用いられる。
【0064】
弁体56の空間部12側に露出した表面には、側面視(
図10参照)にて、凹部66が形成されている。また、弁体56の凹部66を覆うようにして、輻射熱を反射する輻射熱遮断部としての反射板68が配置されている。このため、反射板68は、弁体56の空間部側に露出した表面の少なくとも一部を覆っている。
【0065】
弁体56と反射板68との間には、凹部66が位置しており、所定の隙間70が形成された構造になる。この隙間70は、
図10(A)に示すように弁体56が通過口52を遮断したときに、弁体56と反射板68との離間距離が例えば、1mm以上となるような深さに設定されることが好ましい。また、
図10(B)に示すように弁体56が通過口52を開口したときに、弁体56と反射板68との離間距離が例えば、1mm以上となるような間隔が開けられていてもよいし、間隔がなくてもよい。
【0066】
図10(B)に示すように、弁体56が退避部64に収納されるときには、反射板68が凹部66の隙間70に進入する。これにより、反射板68が弁箱54の一部に干渉することなく、弁体56が退避部64に収納可能になる。一方、
図10(A)に示すように、弁体56が退避部64から出て通過口52を遮断するときは、シール材62が弁箱54の外筒58の内壁60に対して圧接され、空間部12(
図9参照)が密閉される。この状態では、反射板68と弁体56との間には所定の隙間70が形成されている。
【0067】
なお、反射板68が凹部66の隙間70に進入するための機構又は構造は、図示しないが、例えば、リンク機構やスライド機構を用いてもよい。
【0068】
弁体56、反射板68、リンク機構(図示省略)、スライド機構(図示省略)は、被処理物の処理温度に耐え得る融点の高い金属やセラミック材料、その他の材料で形成されていることが好ましい。これらの材料は、加熱源22の加熱温度よりも融点が高くなる材料を意味する。従来の半導体処理装置に設けられる仕切弁に用いられる材料を利用できる。
【0069】
反射板68をセラミック材料で形成する場合には、例えば、セラミック材料に対して研磨等を施して反射率を高くすることが好ましい。
【0070】
これにより、被処理物に対する処理が実行されている場合、
図10(A)に示すように、弁体56が通過口52を塞いで空間部12が密閉された状態になるが、加熱源22からの熱エネルギーは反射板68に照射しても反射板68で反射され、弁体56側に伝熱され難い。特に反射板68と弁体56との間に隙間70が形成されているため、隙間70により反射板68で受けた熱が弁体56側に伝熱され難くなり、熱が空気流により隙間70を通過する過程で熱が拡散される。
【0071】
ここで、弁体56に形成された凹部66は、弁体56の一方側の表面だけに限定されるものではない。例えば、
図11に示すように、弁体56の一方側及び他方側の両面に凹部66が形成されている構造もあり得る。具体的には、被処理物を加熱処理する空間部が弁体56の一方側及び他方側の両方に設けられている場合、弁体56の一方側及び他方側に対して空間部70からの熱エネルギーが照射される。この構成では、弁体56の一方側及び他方側の両面に凹部66が形成され、それぞれの凹部66を覆う反射板68が設置されており、弁体56が通過口52を遮断したときに弁体56の一方側表面と反射板68との間に所定の隙間70が形成される。また弁体56の他方側表面と反射板68との間に所定の隙間70が形成されていれば、空間部12からの熱エネルギーを反射板68で遮断することができ、弁体56に熱エネルギーが照射されることを防止できる。
【0072】
また、弁体56の表面に凹部66が形成されていない構成も採用することができる。例えば、
図12に示すように、弁体56の空間部12側に露出した表面に反射板68を配置するが、反射板68はアーム部材72により弁体56側に固定されている。アーム部材72は、加熱源22の温度よりも融点が高い金属やセラミック材料、その他の材料で形成されていることが好ましい。
【0073】
反射板68がアーム部材72により弁体56側に固定されている構成では、弁体56が退避部64に収納された状態でも、反射板68が弁体側に近接することがない。弁体56が通過口52を遮断している状態でも、弁体56と反射板68との離間距離が変わらない。このため、反射板68が可動して反射板68と弁体56との離間距離を変更する機構が不要になり、部品点数を削減することができる。これに伴い、弁体56の耐久性が増し、メンテナンス効率が向上する。
【0074】
図13に示すように、弁体56の一方側及び他方側にアーム部材72を設け、両側に反射板68を配置してもよい。
【0075】
以上のように、反射板68で輻射熱を反射することにより、弁体56の温度上昇を抑制でき、弁体56の温度をシール材62の融点以下の温度になるように制御することができる。また、弁体56の先端部に配置されているシール材62に対する弁体56からの伝熱効果が弱くなり、シール材62の温度上昇が抑制される。この結果、シール材62の温度が融点以下になり、シール材62が溶融又は消失することを防止できる。
【0076】
次に、弁体に対する輻射熱遮断機能を一層向上させる構成(改良例)について説明する。
【0077】
図14乃至
図17に示すように、弁体56の近傍には反射板68が配置されているが、反射板68の空間部12側に露出する表面には、輻射熱を反射する輻射熱遮断部としての金属膜(金属反射膜)X1が塗布されている。金属膜X1は、熱反射率が高くて熱を吸収し難い、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、金、ニッケルなどを単体で又は任意の材質を混合して構成されている。金属膜X1により空間部12からの輻射熱が反射し、反射板68への伝熱を防止できる。
【0078】
なお、反射板68に対して金属膜(金属反射膜)X1を塗布する構成以外のものとして、例えば、金属膜X1を別部材で形成し、反射板68の外表面に被せ、又は巻回することも可能である。
【0079】
また、別の実施形態として、反射板68の外表面には、輻射熱を反射する輻射熱遮断部としての光学膜(光学フィルター膜、赤外線フィルター膜)X3が塗布されている。光学膜X3により空間部12からの輻射熱が反射し、反射板68への伝熱を防止できる。光学膜X3として、例えば、曇りガラス、石英に乱反射する材料、発泡させて光散乱、屈折率を変えて光を透過させない金属を使用してもよい。
【0080】
なお、反射板68の表面には、赤外線フィルター膜(光学フィルター膜)を塗布する構成以外のものとして、例えば、赤外線フィルター膜を別部材で形成し、反射板68の表面に被せ、又は巻回することも可能である。
【0081】
さらに、別の実施形態として、反射板68の少なくとも一部の材質を不透明石英X2で構成してもよい。これにより、反射板68に輻射熱遮断部を形成することができる。
【0082】
なお、反射板68の少なくとも一部の材質を不透明石英X2で構成する以外のものとして、例えば、別部材として不透明石英X2で形成した輻射熱反射部材を作り、反射板68の外表面に輻射熱反射部材を被せ、又は巻回することも可能である。
【0083】
反射板68の表面に施される金属膜、光学膜及び不透明石英による作用効果とは、これらが加熱源22に施される形態で説明した作用効果(上述したとおり)と同様の輻射熱遮断効果であるため、ここでは説明を省略する。
【0084】
[第2実施例]
第2実施例の高温対応真空仕切弁及び高温対応真空仕切弁の輻射熱遮断方法は、高温対応真空仕切弁の内部に冷媒を流動(流通)させた構成である。なお、第1実施例の構成と重複する構成には、同符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0085】
図18に示すように、弁体56の内部には、冷却水等の冷媒が流れる流路74が配置されている。弁箱54の外筒58及び退避部近傍の収納壁76にも、同様にして、冷却水等の冷媒が流れる流路74が配置されている。冷媒が流路74を流動(流通)することにより、弁体56及び弁箱54が冷却されてシール材62の融点以下の温度になるように維持される。
【0086】
冷媒とは、例えば、冷却水である。
【0087】
図19に示すように、弁体56の表面であってかつ空間部12に曝される露出表面には、輻射熱を反射する輻射熱遮断部としての金属膜(金属反射膜)X1が塗布されている。金属膜X1は、熱反射率が高くて熱を吸収し難い、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、金、ニッケルなどを単体で又は任意の材質を混合して構成されている。金属膜X1により空間部12からの輻射熱が反射し、弁体56への伝熱を防止できる。
【0088】
なお、弁体56に対して金属膜(金属反射膜)X1を塗布する構成以外のものとして、例えば、金属膜X1を別部材で形成し、弁体56の露出表面に取り付けることも可能である。
【0089】
また、別の実施形態として、弁体56の露出表面には、輻射熱を反射する輻射熱遮断部としての光学膜(光学フィルター膜、赤外線フィルター膜)X3が塗布されている。光学膜X3により空間部12からの輻射熱が反射し、弁体56への伝熱を防止できる。光学膜X3として、例えば、曇りガラス、石英に乱反射する材料、発泡させて光散乱、屈折率を変えて光を透過させない金属を使用してもよい。
【0090】
なお、弁体56の露出表面には、赤外線フィルター膜(光学フィルター膜)を塗布する構成以外のものとして、例えば、赤外線フィルター膜を別部材で形成し、弁体56の露出表面に取り付けることも可能である。
【0091】
さらに、別の実施形態として、弁体56の露出表面の少なくとも一部の材質を不透明石英X2で構成してもよい。これにより、弁体56の露出表面に輻射熱遮断部を形成することができる。
【0092】
なお、弁体56の露出表面の少なくとも一部の材質を不透明石英X2で構成する以外のものとして、例えば、別部材として不透明石英X2で形成した輻射熱反射部材を作り、弁体56の露出表面に輻射熱反射部材を取り付けることも可能である。
【0093】
また、同様にして、弁箱62の外筒58の内壁60であってシール材62が当接する部位には、輻射熱を反射する輻射熱遮断部としての金属膜(金属反射膜)X1が塗布されている。金属膜X1は、熱反射率が高くて熱を吸収し難い、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、金、ニッケルなどを単体で又は任意の材質を混合して構成されている。金属膜X1により空間部12からの輻射熱が反射し、外筒58への伝熱を防止できる。
【0094】
なお、外筒58に対して金属膜(金属反射膜)X1を塗布する構成以外のものとして、例えば、金属膜X1を別部材で形成し、弁箱54の外筒58の内壁60であってシール材62が当接する部位に取り付けることも可能である。
【0095】
また、弁箱54の外筒58の内壁60であってシール材62が当接する部位には、輻射熱を反射する輻射熱遮断部としての光学膜(光学フィルター膜、赤外線フィルター膜)X3が塗布されている。光学膜X3により空間部12からの輻射熱が反射し、外筒58への伝熱を防止できる。光学膜X3として、例えば、曇りガラス、石英に乱反射する材料、発泡させて光散乱、屈折率を変えて光を透過させない金属を使用してもよい。
【0096】
なお、弁箱54の外筒58の内壁60であってシール材62が当接する部位には、赤外線フィルター膜(光学フィルター膜)を塗布する構成以外のものとして、例えば、赤外線フィルター膜を別部材で形成し、弁箱54の外筒58の内壁60であってシール材62が当接する部位に取り付けることも可能である。
【0097】
さらに、別の実施形態として、弁箱54の外筒58の内壁60であってシール材62が当接する部位の少なくとも一部の材質を不透明石英X2で構成してもよい。これにより、弁箱54の外筒58の内壁60であってシール材62が当接する部位に輻射熱遮断部を形成することができる。
【0098】
なお、弁箱54の外筒58の内壁60であってシール材62が当接する部位の少なくとも一部の材質を不透明石英X2で構成する以外のものとして、例えば、別部材として不透明石英X2で形成した輻射熱反射部材を作り、弁箱54の外筒58の内壁60であってシール材62が当接する部位に輻射熱反射部材を取り付けることも可能である。
【0099】
以上のように、弁体56及び弁箱54の外筒58でシール材62が接触する部位の温度をシール材62の融点以下の温度になるように制御することができる。換言すれば、弁体56の先端部に配置されているシール材62に対する弁体56及び外筒からの伝熱効果が弱くなり、シール材62の温度上昇が抑制される。この結果、シール材62の温度が融点以下になり、シール材62が溶融又は消失することを防止できる。
【0100】
なお、弁体56及び弁箱54に冷却水等の冷媒が流れる流路74が配置されていない構成でも、弁体56及び弁箱54には、輻射熱を反射する輻射熱遮断部が形成されていてもよい。
【0101】
弁体56及び弁箱54に輻射熱を反射する輻射熱遮断部が形成されていない構成でも、弁体56及び弁箱54に冷却水等の冷媒が流れる流路74が配置されている構成を採用してもよい。
【0102】
また、シール材62に金属(図示省略)が含まれていてもよい。シール材62に金属を含めることにより、シール材62自体の熱伝導性が向上する。特にシール材62を形成する材料に金属が含有されていることにより、シール材62が弁箱54の外筒58の内壁60に接触したときに、シール材62と弁箱54の外筒58、シール材62と弁体56との間で熱の伝導性が高くなり、シール材62に蓄積される熱量を早期に弁箱54及び弁体56に流すことができる。また、シール材62の表面に金属が露出している構成では、いわゆる冷却フィンの効果によりシール材62から空気中への放熱が円滑に進む。この結果、シール材62の温度が融点以下になるように維持できるため、シール材62が溶融又は消失しない。
【0103】
なお、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具現した一例に過ぎないものである。本発明は、当然ながらこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を利用した全ての態様を含むものである。
【符号の説明】
【0104】
10 半導体処理装置
11 搬出口
12 空間部
14 土台部
16 蓋部(支持部)
18 周壁部
20 蓋部本体
22 加熱源
22H 石英ヒータ
23A 第1ヒータ部
23B 第2ヒータ部
24 空隙部
24N 非発光部
25B 発光部
26 反射処理板
28 冷却液流路
30 取付フランジ
32 凹部
34 貫通孔
36 気密部材
38 圧縮リング
40 抑えフランジ
42 電流導入部
50 高温対応真空仕切弁
52 通過口
54 弁箱
56 弁体
58 外筒
60 内壁
62 シール材
64 退避部
66 凹部
68 反射板
70 隙間
72 アーム部材
74 流路
X1 金属膜
X2 不透明石英
X3 光学膜
【要約】
【課題】シール材及び弁体に対する熱による悪影響を防止することができる、半導体処理装置に用いる高温対応真空仕切弁及び高温対応真空仕切弁の輻射熱遮断方法を提供する。
【解決手段】被処理物を処理する空間部12を有する半導体処理装置10に用いる高温対応真空仕切弁50であって、弁体56と、弁体56に設けられ空間部12を気密に維持するシール材62と、を有し、弁体56の空間部12側に露出する表面に輻射熱を遮蔽する輻射熱遮蔽部を施し、輻射熱遮蔽部は弁体56の少なくとも一部を覆って輻射熱を反射する反射板68である。
【選択図】
図9