(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】酸化物薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240718BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20240718BHJP
C23C 14/10 20060101ALI20240718BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01L21/316 Y
C23C14/08
C23C14/10
C23C14/34 Z
(21)【出願番号】P 2023524557
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2021125198
(87)【国際公開番号】W WO2022089288
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】202011157653.2
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510182294
【氏名又は名称】北京北方華創微電子装備有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING NAURA MICROELECTRONICS EQUIPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.8 Wenchang Avenue Beijing Economic-Technological Development Area, Beijing 100176, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルゥォ ジィェンホン
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-523977(JP,A)
【文献】特開平09-228028(JP,A)
【文献】特開2004-071696(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017078(WO,A1)
【文献】特開平03-013573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C23C 14/08
C23C 14/10
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物薄膜の製造方法であって、
薄膜を成長させたいウェハを反応チャンバのベースに入れるステップ1と、
前記反応チャンバ内に衝撃ガスと酸化ガスとの第1混合ガスを供給し、ターゲットを衝撃して前記ウェハに酸化物薄膜を形成するように、前記ターゲットに直流電力及びRF電力を印加して、前記第1混合ガスを励起してプラズマを形成するステップ2と、
前記ターゲットに前記直流電力及びRF電力を印加することを停止し、前記反応チャンバ内に衝撃ガス、酸化ガス及び窒素ガスの第2混合ガスを供給し、前記酸化物薄膜を衝撃して
酸窒化物薄膜を形成するように、前記ベースにRF電力を印加して、前記第2混合ガスを励起してプラズマを形成するステップ3と、
前記反応チャンバ内に前記第2混合ガスを供給し続け、前記ターゲット及び前記ステップ3において形成された前記
酸窒化物薄膜を衝撃して前記ステップ3において形成された
酸窒化物薄膜に
酸窒化物薄膜を形成するように、前記ターゲットに直流電力及びRF電力を印加して、前記ベースにRF電力を印加し続けて、前記第2混合ガスを励起してプラズマを形成するステップ4と、を含むことを特徴とする酸化物薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ2において
、前記ターゲットに印加したRF電力が3000Wよりも小さく、前記ターゲットに印加したRF電力と前記ターゲットに印加した直流電力との比が2以上且つ4以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ2において、前記ターゲットに印加した直流電力が100W以上且つ200W以下であり、前記ターゲットに印加したRF電力が300W以上且つ600W以下であり、前記ターゲットに印加したRF電力と前記ターゲットに印加した直流電力との比が3であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ4において、前記ターゲットに印加した直流電力が10000Wよりも小さく、前記ターゲットに印加したRF電力が3000Wよりも小さく、前記ターゲットに印加した
直流電力と前記ターゲットに印加した
RF電力との比が2以上且つ7以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ4において、前記ターゲットに印加した直流電力が3000W以上且つ6000W以下であり、前記ターゲットに印加したRF電力が1000W以上且つ2000W以下であり、前記ターゲットに印加した
直流電力と前記ターゲットに印加した
RF電力との比が3以上且つ6以下であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ3及び/又は前記ステップ4において、前記酸化ガス及び窒素ガスの流量の和が前記衝撃ガスの流量よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ3及び/又は前記ステップ4において、前記ベースに印加したRF電力が500Wよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ1におけるプロセス条件は、前記反応チャンバの真空度が5×10
-6Torrよりも小さく、前記ベースの温度が250℃以上且つ350℃以下であるということであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ2及び/又は前記ステップ3において、前記衝撃ガスの流量が500sccmよりも小さく、前記酸化ガスの流量が500sccmよりも小さく、前記衝撃ガスの流量が前記酸化ガスの流量よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ターゲットはアルミニウム、チタン、シリコン、ハフニウム又はタンタルターゲット、或いはアルミニウム、チタン、シリコン、ハフニウム又はタンタル含有の化合物ターゲットを含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体プロセス分野に関し、より具体的に、酸化物薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年以来、超大規模集積回路の技術は迅速に発展しており、デバイスの特徴寸法が絶えず縮小し、デバイスの密度が絶えず増大し、金属化相互接続によるRC遅延が既に超高密度集積回路の性能及び速度を妨害する重要な要素となった。従って、RC相互接続遅延を減少させることは近年以来半導体業界の専攻方向となった。集積回路の製造プロセスにおいて、金属線は一般的に低誘電率を有する層間誘電体(ILD)層に嵌め込まれる。ダマシン法において、一般的に層間誘電体層及び金属線上にエッチング停止層を成長させ、該エッチング停止層は集積回路の製造プロセスにおけるパターン化製造過程においてエッチング停止層で覆われる材料がパターン化する期間においてエッチングされないように保護するためのものである。該エッチング停止層は一般的に完全に除去されることがなく、最終的に製造された半導体デバイスに残される。
【0003】
アルミナは良好なプロセス互換性を有するため、徐々にエッチング停止層として使用されるようになっている。アルミナ薄膜を製造するために一般的に用いる方法は化学気相成長(CVD、Chemical Vapor Deposition)方法であるが、該CVD方法で製造された薄膜は不純物が多く、密度が小さく且つプロセスコストが高い。更にパルスマグネトロンスパッタ方法があり、該方法は物理気相成長(PVD、Physical Vapor Deposition)方法であり、該PVD方法で製造されたアルミナ薄膜は良好な薄膜均一性を有し、不純物が少なく、密度が大きいという優位性を有し、現在集積回路の金属化製造プロセスにおいて最もよく使用される方法の1つである。ところが、従来のPVD方法で非導電性の酸化物薄膜を製造する際に、プロセスウィンドウが小さく、成長速度が遅く、均一にエッチングできず、及び頻繁なアークの異常放電により粒子欠陥を引き起こすという問題が存在し、これらの問題は後続のプロセス集積に大きな困難さを与えてしまう。従って、新しい酸化物薄膜の製造方法を見つける必要性が大きくなっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、プロセス過程において成長速度が遅く、粒子に欠陥があり、表面粗度が大きく、薄膜の密度が低いという問題を解決するように、酸化物薄膜の製造方法を提供することを目的とし、前記製造方法は、
薄膜を成長させたいウェハを反応チャンバのベースに入れるステップ1と、
前記反応チャンバ内に衝撃ガスと酸化ガスとの第1混合ガスを供給し、ターゲットを衝撃して前記ウェハに酸化物薄膜を形成するように、前記ターゲットに直流電力及びRF電力を印加して、前記第1混合ガスを励起してプラズマを形成するステップ2と、
ターゲットに直流電力及びRF電力を印加することを停止し、反応チャンバ内に衝撃ガス、酸化ガス及び窒素ガスの第2混合ガスを供給し、酸化物薄膜を衝撃して酸窒化物薄膜を形成するように、ベースにRF電力を印加して、第2混合ガスを励起してプラズマを形成するステップ3と、
前記反応チャンバ内に前記第2混合ガスを供給し続け、前記ターゲット及び前記ステップ3において形成された前記酸窒化物薄膜を衝撃して前記ステップ3において形成された酸窒化物薄膜に酸窒化物薄膜を形成するように、前記ターゲットに直流電力及びRF電力を印加して、前記ベースにRF電力を印加し続けて、前記第2混合ガスを励起してプラズマを形成するステップ4と、を含む。
【0005】
選択可能な案において、前記ステップ2において、前記ターゲットに印加した直流電力が10000Wよりも小さく、前記ターゲットに印加したRF電力が3000Wよりも小さく、前記ターゲットに印加したRF電力と前記ターゲットに印加した直流電力との比が2以上且つ4以下である。
【0006】
選択可能な案において、前記ステップ2において、前記ターゲットに印加した直流電力が100W以上且つ200W以下であり、前記ターゲットに印加したRF電力が300W以上且つ600W以下であり、前記ターゲットに印加したRF電力と前記ターゲットに印加した直流電力との比が3である。
【0007】
選択可能な案において、前記ステップ4において、前記ターゲットに印加した直流電力が10000Wよりも小さく、前記ターゲットに印加したRF電力が3000Wよりも小さく、前記ターゲットに印加した直流電力と前記ターゲットに印加したRF電力との比が2以上且つ7以下である。
【0008】
選択可能な案において、前記ステップ4において、前記ターゲットに印加した直流電力が3000W以上且つ6000W以下であり、前記ターゲットに印加したRF電力が1000W以上且つ2000W以下であり、前記ターゲットに印加した直流電力と前記ターゲットに印加したRF電力との比が3以上且つ6以下である。
【0009】
選択可能な案において、前記ステップ3及び/又は前記ステップ4において、前記酸化ガス及び窒素ガスの流量の和が前記衝撃ガスの流量よりも大きい。
【0010】
選択可能な案において、前記ステップ3及び/又は前記ステップ4において、前記ベースに印加したRF電力が500Wよりも小さい。
【0011】
選択可能な案において、前記ステップ1におけるプロセス条件は、前記反応チャンバの真空度が5×10-6Torrよりも小さく、前記ベースの温度が250℃以上且つ350℃以下であるということである。
【0012】
選択可能な案において、前記ステップ2及び/又は前記ステップ3において、前記衝撃ガスの流量が500sccmよりも小さく、前記酸化ガスの流量が500sccmよりも小さく、前記衝撃ガスの流量が前記酸化ガスの流量よりも大きい。
【0013】
選択可能な案において、前記ターゲットはアルミニウム、チタン、シリコン、ハフニウム又はタンタルターゲット、或いはアルミニウム、チタン、シリコン、ハフニウム又はタンタル含有の化合物ターゲットを含む。
【0014】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0015】
ステップ2において、ターゲットに直流電力及びRF電力を同時に印加することにより、酸化物の成長過程における粒子欠陥の発生を減少させることができる。ステップ3において、衝撃ガス、酸化ガス及び窒素ガスの第2混合ガスを供給して、ベースにRF電力を印加することにより、酸窒化物薄膜をその場生成することができるだけでなく、酸化物薄膜の表面に対して所定のエッチングを施すこともでき、それにより酸化物薄膜の表面欠陥を減少させるとともに表面粗度を低減することができる。ステップ4において、上記第2混合ガスを供給し続けるとともに、ターゲットに直流電力及びRF電力を印加して、ベースにRF電力を印加することにより、ウェハの表面に高密度・低粗度の酸窒化物薄膜を成長形成することができ、それにより薄膜の品質を向上させることができ、且つ高品質の薄膜表面は更にエッチング層と金属層との間に過渡層を形成するように抑制することができ、これにより、金属層の酸化を減少させることができる。
【0016】
本発明の方法は他の特性及び利点を有し、これらの特性及び利点は本明細書に取り込まれる図面及びその後の具体的な実施形態から明らかになり、又は本明細書に取り込まれる図面及びその後の具体的な実施形態において詳しく説明され、これらの図面と具体的な実施形態は共に本発明の特定の原理を解釈するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面を参照しつつ本発明の例示的な実施例をより詳しく説明することにより、本発明の上記並びに他の目的、特徴及び優位性はより明らかになる。
【
図1】本発明の一実施例に係る酸化物薄膜の製造方法のステップを示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例及び従来技術で製造された酸化物薄膜の粒子欠陥の数を示す比較図である。
【
図3】本発明の一実施例及び従来技術で製造された酸化物薄膜のエッチング均一性を示す比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明をより詳しく説明する。本発明は好ましい実施例を提供するが、理解されるように、様々な形式で本発明を実現することができるが、ここに説明される実施例により制限されるべきではない。それとは逆に、本発明をより徹底的及び完全にして、本発明の範囲を当業者に完全に伝達できるようにするために、これらの実施例を提供する。
【0019】
本発明の一実施例は酸化物薄膜の製造方法を提供し、
図1は本発明の一実施例に係る酸化物薄膜の製造方法のステップを示すフローチャートである。
図1を参照し、酸化物薄膜の製造方法は、
薄膜を成長させたいウェハを反応チャンバのベースに入れるステップ1と、
反応チャンバ内に衝撃ガスと酸化ガスとの第1混合ガスを供給し、ターゲットを衝撃してウェハに酸化物薄膜を形成するように、ターゲットに直流電力及びRF電力を印加して、該第1混合ガスを励起してプラズマを形成するステップ2と、
ターゲットに前記直流電力及びRF電力を印加することを停止し、反応チャンバ内に衝撃ガス、酸化ガス及び窒素ガスの第2混合ガスを供給し、酸化物薄膜を衝撃して
酸窒化物薄膜を形成するように、ベースにRF電力を印加して、第2混合ガスを励起してプラズマを形成するステップ3と、
反応チャンバ内に上記第2混合ガスを供給し続け、ターゲット及び上記ステップ3において形成された
酸窒化物薄膜を衝撃して上記ステップ3において形成された
酸窒化物薄膜に
酸窒化物薄膜を形成するように、ターゲットに直流電力及び無線周波数電力を印加して、ベースにRF電力を印加し続けて、第2混合ガスを励起してプラズマを形成するステップ4と、を含む。
【0020】
本案を理解しやすくするために、まず薄膜を製造するための装置について簡単に説明する。薄膜の製造は反応チャンバにおいて行われ、反応チャンバ内には薄膜を成長させたいウェハを載置するためのベースが設けられ、該ベースはウェハの温度を制御できるように、加熱及び/又は冷却機能を有する。反応チャンバに真空システムが接続され、該真空システムは、反応チャンバが必要な真空度に達するようにして反応チャンバから吸気することができ、それによりプロセスに必要な真空条件を満たす。プロセスに必要なガス(例えば、衝撃ガス、酸化ガスなど)は吸気管路を介して反応チャンバに供給され、且つ該吸気管路にはガスの流量を制御するように流量計が設置されてもよい。プロセスに必要なターゲットは反応チャンバの上方領域(ベースの上方)に密封される。上記ターゲットは純金属であってもよく、金属化合物であってもよく、シリコン又はシリカ(シリコンを成長させる酸化物を必要とする場合)であってもよい。薄膜成長を行う際に、電源は電力をターゲットに印加して、接地される反応チャンバに対してそれが負バイアスになるようにし、また、高圧によって衝撃ガス、酸化ガスを電離放電させて正電気を帯びたプラズマを発生させ、正電気を帯びたプラズマはターゲットにより引き付けられてターゲットを衝撃する。プラズマのエネルギーが十分に高い場合、ターゲットの表面の原子を遊離させてウェハ上に成長させることとなり、それによりウェハの表面に薄膜を成長させることが実現される。
【0021】
本実施例はウェハの表面にアルミナ及びオキシ窒化アルミニウムの複合薄膜を成長させる場合を例として、酸化物薄膜の製造方法を詳しく説明する。
【0022】
具体的に、ステップ1を実行し、成長させた薄膜の相違に応じて、反応チャンバに適切なプロセス条件を設定し、薄膜を成長させたいウェハを反応チャンバのベースに入れて、ベースの温度をプロセスに必要な温度に調整する。本実施例では、製造方法はアルミナ薄膜を成長させるためのものであり、このような場合、設定されたプロセス条件は、反応チャンバの真空度が5×10-6Torrよりも小さく、ベースの温度が250℃以上且つ350℃以下、好ましくは300℃であるということである。
【0023】
ステップ2を実行し、反応チャンバ内に衝撃ガスと酸化ガスとの第1混合ガスを供給し、ターゲットを衝撃してウェハに酸化物薄膜を形成するように、ターゲットに直流電力及びRF電力を印加して、該第1混合ガスを励起してプラズマを形成する。
【0024】
従来技術において、ターゲットにパルス直流電力のみを印加し、アルミナ薄膜が非導電性酸化物であるため、パルス直流電力は1周期内に正電圧及び負電圧の2つの段階があり、負電圧段階において、直流電源はターゲットに負電圧を印加し、この際に、プラズマがターゲットを衝撃することとなり、ターゲットのスパッタリングを実現し、正電圧段階において、直流電源はターゲットに正電圧を印加し、この際に、ターゲットの表面に蓄積した正電荷を中和するように、ターゲットに電子を導入することとなる。このようなパルス直流電力の印加方式はプロセス過程において成長速度が遅く、均一にエッチングできず、頻繁なアークの異常放電により粒子欠陥を引き起こし、薄膜の表面粗度が大きく、薄膜の密度が低く、空気中の水、酸素、炭素などの不純物ガスを吸着して表面欠陥を形成しやすいという問題をもたらすこととなり、後続のプロセス統合に大きな困難さを与えてしまう。
【0025】
上記問題を解決するために、本実施例のステップ2において、ターゲットに直流電力及びRF電力を同時に印加し、このようなRF/直流共スパッタリングの電力印加方式はターゲットに負電圧を形成することができ、それによりプラズマがターゲットを衝撃することを促進し、ターゲットのスパッタリングを実現することができる。このようなRF/直流共スパッタリングの電力印加方式はイオンエネルギーを低減して、ウェハの最下層の層間誘電体(ILD)薄膜を損傷するように回避することもでき、それにより高密度のアルミナ薄膜を形成する(例えば、接触層として使用される)ことができ、また、金属酸化物の成長過程における粒子欠陥の発生を減少させることができるとともに、酸窒化物薄膜の成長過程において空気中の水、酸素、炭素が金属酸化物の表面に吸着されて粒子欠陥が発生するように抑制することができる。また、ターゲットにおいてRF電力を増加させることにより、プラズマ中の酸素の衝突イオン化を増加させて、酸素原子の分布を変えて、酸化物薄膜の湿式エッチングの均一性の問題を改善することができる。
【0026】
ステップ3を実行し、ターゲットに直流電力及びRF電力を印加することを停止し、反応チャンバ内に衝撃ガス、酸化ガス及び窒素ガスの第2混合ガスを供給し、酸化物薄膜を衝撃して酸窒化物薄膜を形成するように、ベースにRF電力を印加して、第2混合ガスを励起してプラズマを形成する。
【0027】
このステップにおいて、ベースにRF電力を印加することにより、ベースに負バイアスを形成することができ、それによりプラズマを引き付けて薄膜表面を衝撃させ、これにより、ステップ2において形成された酸化物薄膜の表面を処理する目的を実現し、このような表面処理は酸窒化物薄膜をその場形成し、即ち酸化物薄膜の表面に1層の比較的薄い酸窒化物薄膜を生成することができ、それにより酸化物薄膜の表面欠陥を減少させるとともに、上記表面処理は更に形成された酸化物薄膜の表面に対して所定のエッチングを施すことができ、それにより薄膜表面の粗度を低減する。
【0028】
ステップ4を実行し、反応チャンバ内に上記第2混合ガスを供給し続け、ターゲット及び上記ステップ3において形成された酸窒化物薄膜を衝撃して上記ステップ3において形成された酸窒化物薄膜(又は、酸化物薄膜)に酸窒化物薄膜を形成するように、ターゲットに直流電力及びRF電力を印加して、ベースにRF電力を印加し続けて、第2混合ガスを励起してプラズマを形成する。
【0029】
このステップにおいて、ターゲットに直流電力及びRF電力を同時に印加して、ベースにRF電力を印加することにより、薄膜を同時にエッチング及び成長することができ、且つウェハの表面に高密度・低粗度の薄膜を成長形成できるように成長速度をエッチング速度よりも大きくし、それにより薄膜の品質を向上させることができ、且つ高品質の薄膜表面は更にエッチング層と金属層との間に過渡層を形成するように抑制することができ、これにより、金属層の酸化を減少させることができる。
【0030】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ2において、衝撃ガスは例えばアルゴンガスであり、酸化ガスは例えば酸素ガスである。
【0031】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ2において、反応チャンバのプロセス圧力を3mTorr以上且つ10mTorr以下に維持する。
【0032】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ2において、衝撃ガスの流量が500sccmよりも小さく、好ましい実施例では、衝撃ガスの流量が50sccm以上且つ200sccm以下であり、酸化ガスの流量が500sccmよりも小さく、好ましい実施例では、酸化ガスの流量が20sccm以上且つ100sccm以下である。衝撃ガスの流量が酸化ガスの流量よりも大きく、即ち衝撃ガスと酸化ガスとの比が1よりも大きい。これは従来技術(衝撃ガスと酸化ガスとの比が0.5よりも小さい)と大いに異なり、即ち、本実施例は従来技術に比べて酸化ガスの占有率を減少させ、このように酸化ガスの占有率が高すぎるように回避することができ、酸化ガスの占有率が高すぎることは粒子欠陥及びエッチング均一性の制御にとって不利になり、更に金属酸化物の成長過程における粒子欠陥の発生を減少させることができるとともに、酸窒化物薄膜の成長過程において空気中の水、酸素、炭素が金属酸化物の表面に吸着されて粒子欠陥が発生するように抑制することができる。
【0033】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ2において、ターゲットに印加した直流電力が10000Wよりも小さく、好ましい実施例では、該直流電力が100W以上且つ200W以下である。ターゲットに印加したRF電力が3000Wよりも小さく、好ましい実施例では、RF電力が300W以上且つ600W以下である。ターゲットに印加したRF電力とターゲットに印加した直流電力との比が2以上且つ4以下であり、好ましい実施例では、該比が3である。上記比を該数値範囲内に設定することにより、アルミナ薄膜を成長させる際に、アルミニウム及び酸素の原子の高密度プラズマにおけるイオン化及び衝突を増加して、薄膜が基板の表面に成長する際の水平移行を変えることができ、それにより低損傷・高密度の薄膜を形成し、最下層の低誘電率の層間誘電体層を損傷することを回避し、材料の誘電率を変える。
【0034】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ3において、衝撃ガスは例えばアルゴンガスであり、酸化ガスは例えば酸素ガスである。上記窒素ガスはイオン化した後に形成された酸化物薄膜の表面に対して一定の衝撃作用を果たすためのものである。
【0035】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ3において、反応チャンバのプロセス圧力を3mTorr以上且つ10mTorr以下に維持する。
【0036】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ3において、衝撃ガスの流量が500sccmよりも小さく、好ましい実施例では、衝撃ガスの流量範囲が50sccm以上且つ200sccm以下であり、酸化ガスの流量が500sccmよりも小さく、好ましい実施例では、酸化ガスの流量が20sccm以上且つ100sccm以下である。酸化ガス及び窒素ガスの流量の和が衝撃ガスの流量よりも大きく、即ち酸化ガス及び窒素ガスの流量の和と衝撃ガスの流量との比が1よりも大きい。このように設定すれば、形成された酸化物薄膜の表面に対して所定のエッチングを施すことに寄与し、それにより薄膜表面の粗度を低減する。
【0037】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ3において、ベースに印加したRF電力が500Wよりも小さく、好ましい実施例では、ベースに印加したRF電力範囲が50W以上且つ100W以下である。
【0038】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ4において、反応チャンバのプロセス圧力を3mTorr以上且つ10mTorr以下に維持する。
【0039】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ4において、衝撃ガスの流量が500sccmよりも小さく、好ましい実施例では、衝撃ガスの流量が50sccm以上且つ200sccm以下であり、酸化ガスの流量が500sccmよりも小さく、好ましい実施例では、酸化ガスの流量が20sccm以上且つ100sccm以下である。衝撃ガスの流量が酸化ガスの流量よりも大きく、即ち衝撃ガスと酸化ガスとの比が1よりも大きい。
【0040】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ4において、ターゲットに印加した直流電力が10000Wよりも小さく、好ましい実施例では、該直流電力が3000W以上且つ6000W以下であり、ターゲットに印加したRF電力が3000Wよりも小さく、好ましい実施例では、ターゲットに印加したRF電力が1000W以上且つ2000W以下であり、ターゲットに印加した直流電力とターゲットに印加したRF電力との比が2以上且つ7以下であり、好ましくは、該比が3以上且つ6以下であり、例えば3、5、6などである。上記比の設定はウェハの表面に高密度・低粗度の薄膜を成長形成することに寄与し、それにより薄膜の品質を向上させることができ、且つ高品質の薄膜表面は更にエッチング層と金属層との間に過渡層を形成するように抑制することができ、これにより、金属層の酸化を減少させることができる。
【0041】
いくつかの選択可能な実施例では、ステップ4において、ベースに印加したRF電力が500Wよりも小さく、好ましい実施例では、ベースに印加したRF電力が50W以上且つ200W以下である。
【0042】
図2は本発明の一実施例及び従来技術で製造された酸化物薄膜の粒子欠陥の数を示す比較図である。
図3は本発明の一実施例及び従来技術で製造された酸化物薄膜のエッチング均一性を示す比較図である。
図2及び
図3を参照し、従来技術に比べて、本技術案は粒子欠陥が明らかに減少し、ウェハ上の膜内の30ナノメートルよりも大きな粒子の数が5粒以下であるとともに、湿式エッチングの均一性も大幅に改善され、均一性が12.49%から2.24%に低下することが明確に理解される。
【0043】
以上の説明はアルミニウムの酸化物及び酸窒化物薄膜を形成する場合を例とし、理解されるように、本発明の方法は更に他の薄膜を製造することができ、例えばチタン、シリコン、ハフニウム又はタンタルの酸化物及び酸窒化物の複合薄膜を製造するためのものである。
【0044】
要するに、本発明の実施例に係る酸化物薄膜の製造方法において、ステップ2において、ターゲットに直流電力及びRF電力を同時に印加することにより、酸化物の成長過程における粒子欠陥の発生を減少させることができる。ステップ3において、衝撃ガス、酸化ガス及び窒素ガスの第2混合ガスを供給して、ベースにRF電力を印加することにより、酸窒化物薄膜をその場生成することができるだけでなく、酸化物薄膜の表面に対して所定のエッチングを施すこともでき、それにより酸化物薄膜の表面欠陥を減少させるとともに表面粗度を低減することができる。ステップ4において、上記第2混合ガスを供給し続けるとともに、ターゲットに直流電力及びRF電力を印加して、ベースにRF電力を印加することにより、ウェハの表面に高密度・低粗度の酸窒化物薄膜を成長形成することができ、それにより薄膜の品質を向上させることができ、且つ高品質の薄膜表面は更にエッチング層と金属層との間に過渡層を形成するように抑制することができ、これにより、金属層の酸化を減少させることができる。また、本発明の実施例に係る酸化物薄膜の製造方法において、薄膜の成長過程におけるイオンエネルギー及び分布の制御方式を増加し、プロセスウィンドウを広げ、高密度の酸化物薄膜を製造するために有効な方法を提供する。
【0045】
以上は本発明の各実施例を説明したが、上記説明は例示的なものであって、網羅的なものではなく、且つ開示された各実施例に限らない。説明された各実施例の範囲及び主旨を逸脱せずに、当業者にとって多くの修正及び変更がいずれも明らかである。