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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】可動型カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20240719BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/00 532
A61M25/00 540
A61M25/00 630
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021508884
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008718
(87)【国際公開番号】W WO2020195581
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019055390
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】嶋 辰也
(72)【発明者】
【氏名】米道 渉
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530223(JP,A)
【文献】特表2012-502679(JP,A)
【文献】特表2018-518270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276619(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0224647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入される遠位端および体外に配置される近位端を備える可撓性のチューブと、該チューブの近位端部に設けられた操作部とを有し、該操作部における操作により、該チューブの遠位端側の偏向部を偏向させるようにした可動型カテーテルであって、
前記チューブは、軸心方向に圧縮力を受けても実質的に柔軟性が変化しない第1チューブ部と、該第1チューブ部の遠位端に連続するように接合され、軸心方向に作用する圧縮力の程度に応じて圧縮されて硬質となり、該圧縮力が解除されることにより元に戻って軟質となる多孔質チューブで構成された前記偏向部としての第2チューブ部とを備え、
前記第1チューブ部を前記操作部に対して遠位端側に押し出すことにより前記第2チューブ部を硬質な状態とし、前記第1チューブ部を前記操作部に対して遠位端側に押し出すことを解除することにより前記第2チューブを軟質な状態とする硬軟調整手段を、該第1チューブ部の近位端部と該操作部との間に介装した可動型カテーテル。
【請求項2】
前記硬軟調整手段は、
基端部が前記第1チューブ部の近位端部および前記操作部の一方に固定され、外側面に右ねじである第1雄ねじ部を有する略円筒状の第1雄ねじ部材と、
基端部が前記第1チューブ部の近位端部および前記操作部の他方に固定され、外側面に左ねじである第2雄ねじ部を有する略円筒状の第2雄ねじ部材と、
互いに略同軸上に配置され、前記第1雄ねじ部が螺合される第1雌ねじ部および前記第2雄ねじ部が螺合される第2雌ねじ部を備える連結雌ねじ部材とを備える請求項1に記載の可動型カテーテル。
【請求項3】
前記硬軟調整手段は、前記連結雌ねじ部材の回転に伴う、該連結雌ねじ部材にそれぞれ螺合された前記第1雄ねじ部材および前記第2雄ねじ部材の互いの接離を阻害することなく、互いの回転を規制する回転規制手段を備える請求項2に記載の可動型カテーテル。
【請求項4】
前記回転規制手段は、前記第1雄ねじ部材および前記第2雄ねじ部材の一方に軸心方向に沿って突出するように設けられた嵌合凸部と、該第1雄ねじ部材および該第2雄ねじ部材の他方に設けられ、該嵌合凸部が摺動可能に嵌合する嵌合凹部とを備える請求項3に記載の可動型カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の治療や検査等を行うために用いられる医療用処置具であるカテーテルに関し、特に、先端部等を自在に偏向することが可能な可動型カテーテル(Steerable Catheter)に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔、管腔または血管等を通して、各種の臓器(たとえば、胆管、心臓)等の目的組織まで挿入される医療用処置具(たとえば、造影剤注入用カテーテル、電極カテーテル、アブレーションカテーテル、カテーテルシースを含む)として、その挿入や目的組織への接近の容易化等を図るため、体内に挿入されるカテーテルの先端(遠位端)の向きを、体外に配置されるカテーテルの基端(近位端)側に設けられた操作部を操作することにより偏向できるようにした可動型のカテーテルが知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のカテーテルは、胆管内の検査のために胆管内にX線造影剤を注入するためなどに用いられる内視鏡用のカテーテルであって、内視鏡を介して十二指腸内まで挿入されたのち、先端部を十二指腸側から十二指腸乳頭に挿入して胆管内に到達させやすいように、体外側から操作ワイヤを操作する(押し出しまたは引っ張る)ことによって、先端部を偏向(湾曲)操作できるようにしたカテーテルである。この特許文献1に記載のカテーテルは、造影剤を注入するためなどに用いられる大径のルーメンとは別に、先端部を偏向操作するための操作ワイヤが挿入されるルーメンを有していて、操作ワイヤはカテーテルの先端部に設けられた先端チップとプラズマ溶接などの手段によって接合されているため、体外側の操作ワイヤを引っ張ることにより、カテーテルの先端部を偏向させることができる。
【0004】
特許文献2に記載の先端可動カテーテルは、心臓に対してカテーテルアブレーション処置を行うためにアブレーションカテーテルを心臓の処置すべき部位まで案内するためなどに用いられるカテーテルであって、アブレーションカテーテルの先端を心臓の所望の位置に案内しやすいように、体外側から操作部を操作することによって、先端部を偏向(湾曲)操作できるようにしたカテーテルである。この特許文献2に記載されたカテーテルを構成するカテーテルチューブは、各種の処置具が挿入されるメインルーメンの他に、その管壁内の互いに180°対向する位置に、一対のワイヤ用ルーメンを有している。そして、カテーテルチューブの先端部の偏向すべき部分は、たとえば先端に行くにしたがってその剛性が段階的に低く設定されており、その先端部に一体的に装着されたリング(プルリング)に、ワイヤ用ルーメンのそれぞれに挿通された一対のワイヤのそれぞれの先端をレーザ溶接などの手段により接続し、該一対のワイヤのそれぞれの基端は操作部に接続してある。そして、その操作部を操作することによって、一方のワイヤを引っ張り、他方のワイヤを弛ませて、チューブ先端の向きを制御できるようにしている。
【0005】
ところで、この種の可動型カテーテルでは、可動部(偏向部)はワイヤの操作により容易かつ自在に偏向(湾曲)させ得る程度の柔軟性を有する必要がある。しかしながら、操作性を考慮して柔軟(軟質)な構成にすると、たとえば胆管等の管腔内の狭窄部を突破(貫通)させるような場合に屈曲や座屈が生じてしまい、挿入性が低下するおそれがある。反対に、操作性を考慮して剛直(硬質)な構成にすると、操作性が犠牲になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-272675号公報
【文献】特開2014-188039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、操作性および挿入性を両立的に向上し得る可動型カテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る可動型カテーテルは、
体内に挿入される遠位端および体外に配置される近位端を備える可撓性のチューブと、該チューブの近位端部に設けられた操作部とを有し、該操作部における操作により、該チューブの遠位端側の偏向部を偏向させるようにした可動型カテーテルであって、
前記チューブは、軸心方向に圧縮力を受けても実質的に柔軟性が変化しない第1チューブ部と、該第1チューブ部の遠位端に連続するように接合され、軸心方向に作用する圧縮力の程度に応じて圧縮されて硬質となり、該圧縮力が解除されることにより元に戻って軟質となる多孔質チューブで構成された前記偏向部としての第2チューブ部とを備え、
前記第1チューブ部を前記操作部に対して遠位端側に解除可能に押し出すことにより前記第2チューブ部の硬軟を調整する硬軟調整手段を、該第1チューブ部の近位端部と該操作部との間に介装した可動型カテーテルである。
【0009】
本発明に係る可動型カテーテルによれば、硬軟調整手段を適宜に操作して、第1チューブ部を押し出していない状態(押し出しを解除した状態)にして、操作部を適宜に操作することにより、偏向部としての第2チューブ部を偏向させることができ、このとき第1チューブ部が押し出されていないことから第2チューブ部には圧縮力が作用しておらず、第2チューブ部は軟質な状態となっている。このため、良好な操作性を実現することができる。一方、たとえば胆管等の体内管腔内の狭窄部を突破(貫通)させるような場合には、硬軟調整手段を適宜に操作して、第1チューブ部を遠位端側に押し出すことにより、第2チューブ部に圧縮力を作用させて第2チューブ部を硬質な状態とすることができる。これにより、屈曲や座屈が生じることを抑制することができ、挿入性を向上することができる。したがって、操作性および挿入性を両立的に向上し得る可動型カテーテルを提供することができる。
【0010】
本発明に係る可動型カテーテルにおいて、前記硬軟調整手段は、基端部が前記第1チューブ部の近位端部および前記操作部の一方に固定され、外側面に右ねじである第1雄ねじ部を有する略円筒状の第1雄ねじ部材と、基端部が前記第1チューブ部の近位端部および前記操作部の他方に固定され、外側面に左ねじである第2雄ねじ部を有する略円筒状の第2雄ねじ部材と、互いに略同軸上に配置され、前記第1雄ねじ部が螺合される第1雌ねじ部および前記第2雄ねじ部が螺合される第2雌ねじ部を備える連結雌ねじ部材とを備えることができる。連結雌ねじ部材を第1雄ねじ部材および第2雄ねじ部材に対して一方向に回転させることにより、第1雄ねじ部材と第2雄ねじ部材とを離間させることができ、逆方向に回転させることにより、第1雄ねじ部材と第2雄ねじ部材とを近接させることができる。したがって、第1チューブ部を操作部に対して遠位端側に押し出し、または第1チューブ部を操作部に対して近位端側に引き戻す(押し出しを解除する)ことができ、しかも押出量を任意に調整することができるため、第2チューブ部の硬軟(硬さまたは柔らかさ)を必要に応じて任意に調整することができる。
【0011】
この場合において、前記硬軟調整手段は、前記連結雌ねじ部材の回転に伴う、該連結雌ねじ部材にそれぞれ螺合された前記第1雄ねじ部材および前記第2雄ねじ部材の互いの接離を阻害することなく、互いの回転を規制する回転規制手段を備えることができる。前記回転規制手段としては、前記第1雄ねじ部材および前記第2雄ねじ部材の一方に軸心方向に沿って突出するように設けられた嵌合凸部と、該第1雄ねじ部材および該第2雄ねじ部材の他方に設けられ、該嵌合凸部が摺動可能に嵌合する嵌合凹部とを備えるものを採用することができる。第1雄ねじ部材および第2雄ねじ部材を離間または近接させるために、連結雌ねじ部材を第1雄ねじ部材および第2雄ねじ部材に対して回転させた際における第1雄ねじ部材および第2雄ねじ部材の相対的な回転を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態の可動型カテーテルの外観構成を示す図である。
図2A図2Aは、図1のIIa-IIa線に沿って切断した断面図である。
図2B図2Bは、図1の可動型カテーテルの要部を拡大して示す斜視図である。
図2C図2Cは、図2Bの可動型カテーテルの遠位端部を一対のワイヤ用ルーメンのそれぞれの軸心を通る面で切断した断面図である。
図3図3は、図1の可動型カテーテルの遠位端部を拡大して示す図であり、偏向部の動作を説明するための図である。
図4A図4Aは、図2Bの可動型カテーテルのワイヤ用ルーメンに挿通するワイヤの数を増やした場合を示す斜視図である。
図4B図4Bは、図4Aの可動型カテーテルの遠位端部をその軸心に直交する面で切断した断面図である。
図4C図4Cは、図4Aの可動型カテーテルの遠位端部を一対のワイヤ用ルーメンのそれぞれの軸心を通る面で切断した断面図である。
図5A図5Aは、図4Aの可動型カテーテルの変形例を示す図である。
図5B図5Bは、図4Aの可動型カテーテルの他の変形例を示す図である。
図5C図5Cは、図4Aの可動型カテーテルのさらに他の変形例を示す図である。
図6A図6Aは、図1の可動型カテーテルの硬軟調整手段の正面図であり、第1雄ねじ部材および第2雄ねじ部材を互いに近接させた状態を示す図である。
図6B図6Bは、図6Aの硬軟調整手段の第1雄ねじ部材および第2雄ねじ部材を互いに離間させた状態を示す図である。
図7A図7Aは、図6Aの硬軟調整手段の第1雄ねじ部材の正面図である。
図7B図7Bは、図7Aの第1雄ねじ部材の先端側から見た側面図である。
図7C図7Cは、図6Aの硬軟調整手段の第2雄ねじ部材の正面図である。
図7D図7Dは、図7Cの第2雄ねじ部材の先端側から見た側面図である。
図7E図7Eは、図6Aの硬軟調整手段の連結雌ねじ部材の軸心を含む面で切断した断面図である。
図7F図7Fは、図7Eの連結雌ねじ部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。本実施形態の可動型カテーテルとしてのカテーテルシース(可動型シース)は、たとえば、カテーテルアブレーションを行う際に、心電を検出するための電極カテーテルや患部を焼灼するためのアブレーションカテーテル等に先行して挿入され、これらの電極カテーテルやアブレーションカテーテル等を案内するカテーテルである。以下では、本発明が適用される可動型カテーテルとして、カテーテルシースを例に説明するが、電極カテーテルやアブレーションカテーテル、胆管内の検査のために胆管内にX線造影剤を注入するためなどに用いられる可動型内視鏡用カテーテル、その他の可動型カテーテルにも本発明を適用することができる。
【0014】
なお、カテーテルアブレーションとは、心臓に生じる不整脈を治療するための治療法であり、その先端部に高周波電極を有するアブレーションカテーテルを血管を経由して心臓内の不整脈の原因となっている心筋組織まで挿入し、該心筋組織またはその近傍を60~70℃程度で焼灼して凝固壊死せしめ、不整脈の回路を遮断する治療法である。
【0015】
まず、図1および図2A図2Cを参照する。カテーテルシース(可動型カテーテル)1は、シース(チューブ)2、操作部3、グリップ部4、および一対のワイヤW1,W2を概略備えて構成されている。
【0016】
シース2は、体内に挿入される遠位端および体外に配置される近位端を有する可撓性の中空チューブからなり、近位端側に配置されるシース本体部(第1チューブ部)20および遠位端側に配置される偏向部(第2チューブ部)21から構成されている。シース本体部20は、軸心に沿う方向(軸心方向)に圧縮力を受けても実質的に柔軟性が変化しないように比較的に高い剛性を有するように構成されている。シース本体部20としては、たとえば網状のステンレス鋼等からなるブレード層および複数の樹脂層を含む多層チューブが用いられる。
【0017】
偏向部21は、近位端がシース本体部20の遠位端に連続するように一体的に接合されている。偏向部21の内腔とシース本体部20の内腔とは、互いに連続して接続されており、これらによりメインルーメン22が構成されている。偏向部21は、軸心方向に作用する圧縮力の程度に応じて圧縮されて硬質となり、該圧縮力が解除されることにより元に戻って軟質となる多孔質チューブで構成されている。多孔質チューブは、軸心方向に作用させる圧縮力を調整することによって、その柔軟性(硬軟)を制御することができる。
【0018】
シース本体部20の材質は、可撓性を備えるものであれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーであることが好ましく、たとえば、ポリエーテルブロックアミド共重合体などのポリアミド系エラストマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが用いられる。
【0019】
偏向部21を構成する多孔質チューブの材質としては、限定はされないが、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いることが、耐熱性、耐薬品性、耐候性、撥水性等に優れていること等から好ましい。多孔質チューブとしては、PTFEを押し出し成形して得られたチューブを軸心方向に延伸加工することにより製造したものを用いることができる。PTFEを多孔質化することにより、通気性を保持しつつ必要な防水性を得ることができる。また、延伸加工する際の延伸率(延伸の度合い)を適宜に調整することにより、気孔率を調整することができ、圧縮した際の柔軟性の変化を適宜に調整(制御)することが可能である。なお、気孔率を調整することにより、通気性能を変化させることも可能である。
【0020】
シース2(シース本体部20)の近位端側には操作部3およびグリップ部4が設けられており、シース2の近位端部は硬軟調整手段6(詳細後述)を介して操作部3の遠位端部に取り付けられている。硬軟調整手段6内に設けられた内腔(後述する貫通孔61d,62d、嵌合凹部62c)ならびに操作部3およびグリップ部4内に設けられた内腔(不図示)を貫通して接続チューブ(不図示)が設けられており、接続チューブの遠位端側はシース2のメインルーメン22内に至っている。接続チューブは、メインルーメン22の内径よりも僅かに小さい外径を有しており、遠位端側がシース2のメインルーメン22および硬軟調整手段6の内腔に対して摺動可能となるように挿入されている。したがって、シース2のメインルーメン22は、接続チューブの内腔を介してグリップ部4の近位端に連通している。グリップ部4の近位端には、シースハブ41aが取り付けられている。
【0021】
シースハブ41aは内腔を有していて、シースハブ41aの近位端側にはグリップ部4内の接続チューブが、シースハブ41aの内腔と接続チューブの内腔とが連通するように取り付けられている。また、シースハブ41aの遠位端側には、止血弁を備えたカテーテル挿入口が形成されている。カテーテルシース1の使用時(処置時)には、上述した電極カテーテルやアブレーションカテーテルがシースハブ41aのカテーテル挿入口から挿入され、接続チューブを介してシース2のメインルーメン22に案内されて、それぞれの遠位端部が処置すべき心筋組織まで導かれる。また、シースハブ41aの側部には、側注管が形成されていて、その側注管にはチューブ41bを介して三方活栓41cが取り付けられている。三方活栓41cには、たとえばシリンジなどを取り付けて、体内の血液を吸引したり、体内に薬液を送り込んだりすることができる。なお、接続チューブの遠位端は、本実施形態では、シース2の近位端よりも遠位端側の近傍位置まで至っているものとするが、シース2の遠位端にまで至っていてもよく、この場合には、接続チューブの内腔がメインルーメン22として機能することになる。
【0022】
シース2の遠位端(偏向部21の先端)には、樹脂からなり、遠位端側が半球状にされた略円筒状の先端保護部材29が設けられている。先端保護部材29は、シース2のメインルーメン22と略同径の内腔を有し、シース2(偏向部21)の遠位端部に熱融着等により一体的に接合(固着)されている。ただし、先端保護部材29は省略してもよい。
【0023】
シース2(シース本体部20および偏向部21)の管壁内には、メインルーメン22の外側を取り囲むように、メインルーメン22に略平行する4つのワイヤ用ルーメン(サブルーメン)23a~23dが形成されている。ワイヤ用ルーメン23a~23dは、シース2の近位端部(シース本体部20の近位端部)から遠位端部(偏向部21の遠位端部)に至って形成されている。ワイヤ用ルーメン23a~23dは、シース2の軸心を中心として、メインルーメン22の外側に、互いに略90°の角度ピッチ(角度間隔)で互いに離間して形成されている。
【0024】
ワイヤ用ルーメン23aおよびワイヤ用ルーメン23bには、単一のワイヤW1が挿通されており、ワイヤ用ルーメン23cおよびワイヤ用ルーメン23dには、単一のワイヤW2が挿通されている。本実施形態では、ワイヤW1,W2は、ステンレス鋼等の金属から形成されているが、ワイヤW1,W2は、たとえば樹脂等の他の材料で形成されていてもよい。
【0025】
ワイヤW1は、その一端部側の略半分W1aがワイヤ用ルーメン23aに挿通され、その中間部分W1cがシース2の先端保護部材29が接合される遠位端面で折り返されて、その他端部側の略半分W1bがワイヤ用ルーメン23bに挿通され、その両端部(一端部および他端部)がシース2の近位端側の操作部3に位置するように配置されている。同様に、ワイヤW2は、その一端部側の略半分W2aがワイヤ用ルーメン23cに挿通され、その中間部分W2cがシース2の先端保護部材29が接合される遠位端面で折り返されて、その他端部側の略半分W2bがワイヤ用ルーメン23dに挿通され、その両端部(一端部および他端部)がシース2の近位端側の操作部3に位置するように配置されている。
【0026】
ワイヤW1の両端部ならびにワイヤW2の両端部は、硬軟調整手段6内(後述するワイヤ用挿通孔64a~64d,65a~65d)を貫通して、操作部3の内部に至っており、操作部3の回転操作部材31にそれぞれ接続されている。操作部3は、回転操作部材31に一体的に設けられた一対の突起状の把持部32,32を有しており、グリップ部4の先端(遠位端)側に設けられた保持部42にねじ込み式のノブ部材5を介して保持されている。
【0027】
ワイヤW1,W2の遠位端部(折り返し部W1c,W2c)は、偏向部21の遠位端で折り返されているため、ワイヤW1,W2の近位端部(両端部)を同時に引っ張ることにより、ワイヤW1,W2の遠位端部が偏向部21の遠位端部に係合した状態となり、偏向部21の遠位端部に力を作用させることができる。
【0028】
硬軟調整手段6は、シース2(シース本体部20)の近位端部と操作部3との間に介装され、シース本体部20を操作部3に対して遠位端側に押し出し、または押し出し解除する(近位端側に引き戻す)ことにより偏向部21の硬軟(柔軟性)を調整する手段である。本実施形態の硬軟調整手段6は、いわゆるターンバックルである。すなわち、硬軟調整手段6は、図6Aおよび図6Bに示すように、第1雄ねじ部材61、第2雄ねじ部材62および連結雌ねじ部材63を備えて構成されている。
【0029】
第1雄ねじ部材61は、図7Aおよび図7Bに示すように、全体として略円筒状の部材であり、基端側から先端側に向かって、操作部側固定部61a、雄ねじ部61bおよび嵌合凸部(回転規制手段)61cを有している。
【0030】
操作部側固定部61aは、操作部3の遠位端部に固定される部位であり、本実施形態では略円板状の部位としているが、操作部3の遠位端部に固定するのに適した形状であれば、どのような形状でもよい。
【0031】
雄ねじ部61bは、操作部側固定部61aの操作部3に固定される側と反対側の面に立設されており、その外側面には、右ねじ(正ねじ)である雄ねじが形成されている。嵌合凸部61cは、雄ねじ部61bの先端面に立設されている。嵌合凸部61cは後述する第2雄ねじ部材62の嵌合凹部62cに軸心方向に摺動可能に嵌合される部位である。
【0032】
第1雄ねじ部材61の中心部には、軸心方向に沿って貫通する貫通孔61dが形成されている。雄ねじ部61bの側壁内には、該雄ねじ部61bの先端面(嵌合凸部61cが立設された部分の外側の部分)から操作部側固定部61aの操作部3に固定される側の面にわたって貫通するように、略90°の角度ピッチで4本のワイヤ用挿通孔64a~64dが形成されている。ワイヤ用挿通孔64a~64dは、シース2のワイヤ用ルーメン23a~23dのそれぞれに対応するように設けられており、ワイヤW1の両端部およびワイヤW2の両端部は、それぞれ対応するワイヤ用挿通孔64a~64dを貫通して、操作部3の内部に導かれる。
【0033】
第2雄ねじ部材62は、図7Cおよび図7Dに示すように、全体として略円筒状の部材であり、基端側から先端側に向かって、シース側固定部62aおよび雄ねじ部62bを有している。
【0034】
シース側固定部62aは、シース2(シース本体部20)の近位端部が固定される部位であり、シース2の近位端部が固定されるのに適した形状であれば、どのような形状でもよい。本実施形態では、シース側固定部62aは、略円板状の円板部とシース連結部62eとを有するものとしている。シース連結部62eは、該円板部のシース2の近位端部が固定される側の面に突出するように設けられている。シース連結部62eは、その周囲に複数の略傘状のかえしが形成された管状の部位であり、この部分がシース2の近位端部のメインルーメン22内に圧入されることにより、シース2が連結・固定される。
【0035】
雄ねじ部62bは、シース側固定部62aの円板部のシース連結部62eと反対側の面に立設されており、その外側面には、左ねじ(逆ねじ)である雄ねじが形成されている。第2雄ねじ部材62の雄ねじ部62bの中心部には、軸心方向に沿って先端側から凹陥するように、第1雄ねじ部材の嵌合凸部61cが軸心方向に摺動可能に嵌合される嵌合凹部(回転規制手段)62cが形成されている。
【0036】
シース連結部62eの内腔(貫通孔62d)は、嵌合凹部62cの底面に開口している。雄ねじ部62bの側壁内であって、嵌合凹部62cの外側には、雄ねじ部62bの先端面からシース側固定部62aの円板部のシース2が固定される側の面にわたって貫通するように、略90°の角度ピッチで4本のワイヤ用挿通孔65a~65dが形成されている。ワイヤ用挿通孔65a~65dは、シース2のワイヤ用ルーメン23a~23dのそれぞれに対応するように設けられており、ワイヤW1の両端部およびワイヤW2の両端部は、それぞれ対応するワイヤ用挿通孔65a~65dを貫通して、操作部3の内部に導かれる。
【0037】
連結雌ねじ部材63は、図7Eおよび図7Fに示すように、全体として略円筒状の部材からなり、その内面に、互いに同軸上に配置され、第1雄ねじ部材61の雄ねじ部61bが螺合される第1雌ねじ部63aおよび第2雄ねじ部材62の雄ねじ部62bが螺合される第2雌ねじ部63bを備えている。すなわち、第1雌ねじ部63aは右ねじ(正ねじ)となっており、第2雌ねじ部63bは左ねじ(逆ねじ)となっている。連結雌ねじ部材63の外周面には、これを術者が手で回転させる際に、滑りを防止するため、軸心方向に沿って複数の溝63cが形成されている。
【0038】
連結雌ねじ部材63の第1雌ねじ部63aに第1雄ねじ部材61の雄ねじ部61bをねじ込むとともに、連結雌ねじ部材63の第2雌ねじ部63bに第2雄ねじ部材62の雄ねじ部62bをねじ込み、第1雄ねじ部材61の嵌合凸部61cを第2雄ねじ部材62の嵌合凹部62cに挿入し、第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62に対して、連結雌ねじ部材63を所定方向に回転させて、図6Aに示した状態(初期状態)とする。この状態から、第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62に対して、連結雌ねじ部材63を前記所定方向と逆方向に回転させると、図6Bに示すように、第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62は互いに離間する方向に移動する。
【0039】
第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62に対して、連結雌ねじ部材63を前記所定方向に回転させると、図6Aに示すように、第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62は互いに近接する方向に移動して、元に戻すことができる。したがって、連結雌ねじ部材63を回転させることにより、第1雄ねじ部材61が固定された操作部3に対して、第2雄ねじ部材62に固定されたシース本体部20を遠位端側に押し出し、または押し出しの解除(近位端側への引き戻し)を行うことができる。しかも、連結雌ねじ部材の回転量に応じて、シース本体部20の押出量も任意に調整することができる。
【0040】
第1雄ねじ部材61の嵌合凸部61cおよび第2雄ねじ部材62の嵌合凹部62cは、連結雌ねじ部材63の回転に伴う、該連結雌ねじ部材63にそれぞれ螺合された第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62の互いの接離を阻害することなく、互いの回転を規制する回転規制手段として機能する。このため、連結雌ねじ部材63の回転に伴い、第2雄ねじ部材62が連結雌ねじ部材63の回転に引きずられて、回転してしまうことを防止でき、シース本体部20に不要な捻れが生じたり、シース本体部20の押出量が不足したりすることを防止できる。ただし、このような回転規制手段は必須ではなく、省略してもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、嵌合凸部61cおよび嵌合凹部62cの断面形状は、図7Bおよび図7Dに示すように、角部を丸めた略矩形状としたが、第1雄ねじ部材61と第2雄ねじ部材62との互いの軸心方向への摺動を阻害することなく、第1雄ねじ部材61と第2雄ねじ部材62との互いの回転を規制できる形状であれば、他の形状であってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、第1雄ねじ部材61に嵌合凸部61cを、第2雄ねじ部材62に嵌合凹部62cを設けたが、これと反対に、第1雄ねじ部材61に嵌合凹部62cと同様な嵌合凹部を、第2雄ねじ部材62に嵌合凸部61cと同様な嵌合凸部を設けるようにしてもよい。
【0043】
さらに、本実施形態では、第1雄ねじ部61bおよび第1雌ねじ部63aを右ねじとし、第2雄ねじ部62bおよび第2雌ねじ部63bを左ねじとしたが、これと反対に、第1雄ねじ部61bおよび第1雌ねじ部63aを左ねじとし、第2雄ねじ部62bおよび第2雌ねじ部63bを右ねじとしてもよい。
【0044】
操作部3を図1に示したニュートラル状態とし、回転規制手段6を図6Aに示した初期状態にすると、ワイヤW1およびワイヤW2が両者とも実質的に無張力状態となり、シース2の先端の偏向部21は、図1および図3(a)に示す通り、直線状に延びた状態となる。このとき、偏向部21には、軸心方向に圧縮力が作用していないので、圧縮されることなく、偏向部21の軸心方向の寸法はL1となっており、偏向部21を構成する多孔質チューブの性質により、偏向部21は比較的に軟質な状態となっている。
【0045】
ニュートラル状態から、回転操作部材31の把持部32,32を操作して、回転操作部材31を図1において矢印A1の方向に回転させると、この回転に伴い、ワイヤW1が引っ張られ、ワイヤW2が緩められることにより、先端の偏向部21が図1および図3(b)において矢印A3に示すように偏向される。
【0046】
これと反対に、回転操作部材31の把持部32,32を操作して、回転操作部材31を図1において矢印A2方向に回転させると、ワイヤW1が緩められ、ワイヤW2が引っ張られることにより、先端の偏向部21が図1および図3(b)において矢印A4に示すように偏向される。
【0047】
偏向部21を偏向させた状態で、偏向部21の形状を固定したい場合には、ノブ部材5を時計方向に回転させて締め込むことにより、回転操作部材31が保持部42に押圧されて、回転操作部材31が現在位置で固定され、偏向部21の形状が固定される。偏向部21の形状の固定を解除したい場合(偏向状態を調整したい場合)には、上記と反対に、ノブ部材5を反時計方向に回転させて緩めることにより、回転操作部材31が保持部42に緩く押圧された状態となり、回転操作部材31が回転し得る状態となる。その結果、偏向部21の形状の固定が解除されて、把持部32を把持して回転操作部材31を回転操作することにより偏向部21の偏向状態を調整することができる。
【0048】
次に、操作部3を図1に示したニュートラル状態とし、回転規制手段6を図6Aに示した初期状態から、図6Bに示すように、硬軟調整手段6の連結雌ねじ部材63を第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62が互いに離間するように回転させて、シース2を操作部3に対して所定量だけ押し出す。この状態では、ワイヤW1,W2の両方に略均等な張力がかかり、偏向部21の遠位端はワイヤW1,W2により実質的に拘束されているため、偏向部21の近位端は押し出されたシース本体部20の遠位端によって押圧され、その結果、偏向部21には軸心方向に圧縮力が作用する。この圧縮力により、偏向部21は軸心方向に圧縮(短縮)されて、図3(c)に示すように、偏向部21の軸心方向の寸法がL1よりも小さいL2となり、偏向部21を構成する多孔質チューブの性質にしたがって、偏向部21は比較的に硬質な状態となる。
【0049】
硬軟調整手段6の連結雌ねじ部材63を第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62が互いに近接するように回転させて、図6Aに示すように、押し出しを解除、すなわちシース本体部20を操作部3に対して所定量だけ引き戻すと、偏向部21に対する圧縮力が解除され、偏向部21を比較的に軟質な状態に戻すことができる。
【0050】
なお、必要があれば、硬軟調整手段6の連結雌ねじ部材63を第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62が互いに離間するように回転させて、偏向部21を硬質にした状態で、回転操作部材31を回転させることにより、図3(d)に示すように、圧縮された状態で、偏向させることも可能である。また、硬軟調整手段6の連結雌ねじ部材63を第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62が互いに近接するように回転させて、偏向部21を軟質とした状態で、回転操作部材31を回転させて偏向部21を適宜に偏向させた後に、硬軟調整手段6の連結雌ねじ部材63を第1雄ねじ部材61および第2雄ねじ部材62が互いに離間するように回転させることにより、図3(d)に示すように、圧縮して硬質とすることも可能である。また、必要があれば、連結雌ねじ部材63の回転量を適宜調整することにより、偏向部21の柔軟性を変更制御することもできる。
【0051】
上述した実施形態では、偏向部21として、シース2を、軸心方向に圧縮力を受けても実質的に柔軟性が変化しないシース本体部20と、シース本体部20の遠位端に連続するように接合され、軸心方向に作用する圧縮力の程度に応じて圧縮されて硬質となり、該圧縮力が解除されることにより元に戻って軟質となる多孔質チューブで構成された偏向部21とから構成している。そして、シース2の複数のワイヤ用ルーメン23a~23dに挿通されたワイヤW1,W2により、偏向部21を軸心方向に圧縮する圧縮力および偏向部21を偏向させる偏向力を解除可能に作用させるようにしている。
【0052】
これにより、ワイヤW1,W2をニュートラル状態として、硬軟調整手段6を初期状態に設定して偏向部21に圧縮力を作用させずに軟質な状態を維持したまま、ワイヤW1,W2の一方を近位端側に引っ張ることにより、偏向部21を偏向させることができ、このとき偏向部21は軟質な状態であるから、良好な操作性を実現することができる。一方、たとえば胆管等の体内管腔内の狭窄部を突破(貫通)させるような場合には、偏向部21が軟質な状態では、屈曲や座屈が生じて挿入が困難となる場合がある。この場合には、硬軟調整手段6を操作してシース本体部20を押し出した状態とすることにより、偏向部21に圧縮力を作用させて硬質な状態とすることができる。このため、偏向部21に屈曲や座屈が生じることを少なくでき、カテーテルの挿入性を向上することができる。
【0053】
また、上述した実施形態では、シース本体部20を押し出して偏向部21を圧縮する際に、偏向部21を偏向させるための一対のワイヤW1,W2により、偏向部21の遠位端を拘束するようにしているが、偏向部21の遠位端の拘束を、ワイヤW1,W2とは別の手段で行うようにしてもよい。たとえば、偏向部21の遠位端を拘束するための手段として、シース2(シース本体部20および偏向部21)の内腔(メインルーメン22)に摺動可能に、メインルーメン22の内径よりも僅かに小さい外径を有する圧縮用チューブを挿通し、該圧縮用チューブの遠位端を偏向部21の遠位端に接続して拘束し、シース本体部21を押し出すことにより、偏向部21に圧縮力を作用させるようにしてもよい。なお、この場合、メインルーメンとしての機能は、圧縮用チューブの内腔が担うことになる。
【0054】
さらに、上述した実施形態では、ワイヤW1の一端部側の略半分W1aをワイヤ用ルーメン23aに挿通し、他端側の略半分W1bをワイヤ用ルーメン23bに挿通し、ワイヤW2の一端部側の略半分W2aをワイヤ用ルーメン23cに挿通し、他端側の略半分W2bをワイヤ用ルーメン23dに挿通している。ワイヤW1,W2は、それぞれ偏向部21の遠位端部で折り返されているため、先端チップやプルリングのようなワイヤを固定するための部材を設ける必要がなく、部品点数を削減することができるとともに、ワイヤを固定するための部材のカテーテルチューブに対する装着作業やその部材に対するワイヤの接続作業を行う必要がないので、その製造における作業工数を削減することができる。また、ワイヤを固定するための部材を設けるための領域をカテーテルシース1の構造内に確保する必要がないので、カテーテルシース1としての構造上の制限を少なくすることができ、たとえばシース2(メインルーメン22)の遠位端(先端)の開口面積を大きくすることが可能となる。
【0055】
また、ワイヤW1のワイヤ用ルーメン23aに挿通された略半分W1aとワイヤ用ルーメン23bに挿通された略半分W1bとの両方を引っ張って、偏向部21を偏向するための偏向力を作用させるようにしている。このため、ワイヤ用ルーメン23aとワイヤ用ルーメン23bとの間隔(角度間隔)に応じて、シース2の周方向における比較的に広い範囲に力を作用させることができる。ワイヤW2に関しても同様である。その結果、単一のルーメンに挿通された折り返しのない1本のワイヤを引っ張ることにより偏向操作を行うものと比較して、ワイヤにかかる力が小さくなるので、偏向操作に伴うワイヤ破断のおそれが小さくなる。また、偏向部21を偏向させる際の遠位端部のブレを小さくすることができ、安定した偏向を実現することができる。同様の理由から、偏向部21に安定的に圧縮力を作用させることもできるようになる。
【0056】
ただし、ワイヤ用ルーメン23a~23dのそれぞれに1本ずつワイヤを挿通して、すなわち4本のワイヤを設けて、各ワイヤの遠位端を偏向部21の遠位端にそれぞれ接続(係合)する構成としても勿論よい。この場合において、ワイヤ用ルーメンの数およびワイヤの数はそれぞれ3本としてもよいし、5本以上としてもよい。
【0057】
上述した実施形態では、ワイヤ用ルーメン23aおよびワイヤ用ルーメン23bに挿通されたワイヤW1と、ワイヤ用ルーメン23cおよびワイヤ用ルーメン23dに挿通されたワイヤW2の2本のワイヤを用いているが、図4A図4Cに示すように、ワイヤW3とワイヤW4とを追加して、4本のワイヤを用いる構成としてもよい。
【0058】
すなわち、ワイヤW3は、その一端部側の略半分W3aがワイヤ用ルーメン23aに挿通され、その中間部分W3cがシース2の先端保護部材29が接合される遠位端面で折り返されて、その他端部側の略半分W3bがワイヤ用ルーメン23cに挿通されている。ワイヤW4は、その一端部側の略半分W4aがワイヤ用ルーメン23bに挿通され、その中間部分W4cがシース2の先端保護部材29が接合される遠位端面で折り返されて、その他端部側の略半分W4bがワイヤ用ルーメン23dに挿通されている。このように構成することで、ワイヤW1~W4から適宜1本のワイヤを選択して引っ張ることにより、4方向への偏向が可能となる。また、ワイヤW1~W4から隣合う2本の組み合わせを適宜選択して、それぞれを引っ張る力のバランスを調整することにより、偏向部21を360°任意の方向に偏向し得る。そして、ワイヤW1~W4の全部、またはワイヤW1とW2もしくはワイヤW3とW4に均等に張力を作用させた状態で、硬軟調整手段6を操作してシース本体部20を押し出すことにより、偏向部21を硬質とすることができる。なお、ワイヤW3およびW4を追加したことに対応して、操作部3において回転操作部材31と同様の回転操作部材を追加する等、操作部3の構成を適宜変更する必要がある。
【0059】
また、図4A図4Cに示した例では、ワイヤ用ルーメン23a~23dを4つ設け、ワイヤW1~W4を4本設けた場合を説明したが、たとえば図5A図5Cに示すように、ワイヤ用ルーメンの数を増加または減少させることができ、これに伴い、ワイヤの本数も増加または減少させることができる。
【0060】
すなわち、図5Aでは、60°の角度ピッチで6つのワイヤ用ルーメン24aを設けるとともに、6本のワイヤW5を設けている。これにより、ワイヤW5を1本ずつ引っ張る場合においては偏向部21を6方向に偏向し得、また、隣合う2本のワイヤW5の組合わせを適宜選択して、それぞれを引っ張る力のバランスを調整することにより、偏向部21を360°任意の方向に偏向し得る。図5Bでは、120°の角度ピッチで3つのワイヤ用ルーメン25aを設けるとともに、3本のワイヤW6を設けている。これにより、ワイヤW6を1本ずつ引っ張る場合においては偏向部21を3方向に偏向し得、また、隣合う2本のワイヤW6の組合わせを適宜選択して、それぞれを引っ張る力のバランスを調整することにより、偏向部21を360°任意の方向に偏向し得る。図5Cでは、15°の角度ピッチで24個のワイヤ用ルーメン26aを設けるとともに、24本のワイヤW7を設けている。これにより、ワイヤW7を1本ずつ引っ張る場合において偏向部21を24方向に偏向し得る。これらは例示であって、ワイヤ用ルーメンの数は3本以上であればよく、ワイヤの数は2本以上であればよい。
【0061】
図5A図5Cに示した例では、ワイヤ用ルーメンの数とワイヤの数は一致しているが、これらは異なっていてもよく、たとえばワイヤ用ルーメンの数よりもワイヤの数を少なくしてもよい。また、図5A図5Cに示した例では、隣り合う一対のワイヤ用ルーメンにワイヤの両端部を挿通しているが、たとえば間欠的に一対のワイヤ用ルーメンを選択して、これらにワイヤの両端部を挿通してもよい。なお、シース2内のワイヤ用ルーメンの数や配置を変更した場合には、これらに対応して、硬軟調整手段6の第1雄ねじ部61および第2雄ねじ部62のワイヤ用挿通孔の数や配置を変更することになる。
【0062】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0063】
1…カテーテルシース(可動型カテーテル)
2…シース(チューブ)
20…シース本体部(第1チューブ部)
21…偏向部(第2チューブ部)
22…メインルーメン
23a~23d…ワイヤ用ルーメン
29…先端保護部材
3…操作部
31…回転操作部材
32…把持部
4…グリップ部
42…保持部
5…ノブ部材
6…硬軟調整手段
61…第1雄ねじ部材
61a…操作部側固定部
61b…雄ねじ部
61c…嵌合凸部(回転規制手段)
61d…貫通孔
62…第2雄ねじ部材
62a…シース側固定部
62b…雄ねじ部
62c…嵌合凹部(回転規制手段)
62d…貫通孔
62e…シース連結部
63…連結雌ねじ部材
63a…第1雌ねじ部
63b…第2雌ねじ部
63c…溝
64a~64d,65a~65d…ワイヤ用挿通孔
W1~W7…ワイヤ(操作手段)
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F