(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ポリマー系インク及びペーストの改良された処理
(51)【国際特許分類】
H05K 3/12 20060101AFI20240719BHJP
C09D 11/52 20140101ALI20240719BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240719BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20240719BHJP
H01B 1/22 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
H05K3/12 610D
H05K3/12 630Z
C09D11/52
H01B13/00 503C
H01L31/04 264
H01B1/22 A
(21)【出願番号】P 2019507332
(86)(22)【出願日】2017-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2017068828
(87)【国際公開番号】W WO2018028984
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-28
(32)【優先日】2016-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】インヘ・ファン・デル・ミューレン
(72)【発明者】
【氏名】フンテル・ドレーゼン
(72)【発明者】
【氏名】アーニャ・ヘンケンス
(72)【発明者】
【氏名】ステイン・ヒリッセン
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ・ワルモルト・オルデンゼイル
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】恩田 春香
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-234075(JP,A)
【文献】特開2011-249036(JP,A)
【文献】特開2014-154778(JP,A)
【文献】特開2010-149301(JP,A)
【文献】特開2001-308496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/12
C09D11/52
H01B13/00
H01L31/0224
H01B1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)基材を準備する工程;
b)導電性組成物を準備する工程;
c)該導電性組成物を、該基材の少なくとも一部に塗布する工程;及び
d)基材上の該導電性組成物を近赤外光に曝露して、導電体を形成する工程
を含んでな
る、
基材上に導電体を形成する方法により形成される導電体を含んでなる電気デバイスの製造方法であって、前記電気デバイスは太陽電池又は太陽モジュールであり、
前記近赤外光は、750nmのピーク波長を有する350~2250nmの間の波長を有し、前記基材上の前記導電性組成物は、5~30秒間前記近赤外光に曝露され、
前記導電性組成物は、樹脂、導電性粒子、並びに、任意に有機溶媒及び/又は添加剤からなり、
前記樹脂は、熱可塑性ポリウレタン
、ハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー
、フェノキシ樹脂
、フェノール樹脂
、セルロース、エポキシド、及びそれらの混合物からなる群から選択される樹脂を含み、
前記導電性粒子は、銀、ニッケル、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、銅、インジウム、インジウム合金、金、白金、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、スズ合金、銀被覆銅、銀被覆グラファイト、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記添加剤は、レオロジー添加剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、接着促進剤、腐食防止剤、抑制剤、安定剤、フラックス剤、界面活性剤及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記基材は、プラスチック、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、織物、プリント回路基板(PCB)、シリコンウエハ、透明導電性酸化物被覆基材及びそれらの混合物からなる群から選択される、
製造方法。
【請求項2】
前記方法は、基材上の前記導電性組成物を近赤外光に曝露する前に行われる乾燥工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の
製造方法。
【請求項3】
前記基材上の前記導電性組成物は、30秒間近赤外光に曝露される、請求項1又は2に記載の
製造方法。
【請求項4】
前記導電性組成物は、スクリーン印刷、フレキソグラビア印刷、ロトグラビア印刷、オフセット印刷、ロトスクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ステンシル印刷、ジェットディスペンシング、オーガバルブディスペンシング、時間-圧力ディスペンシング、スロットダイコーティング、レーザー誘起前方転写、ピン転写、ロールコーティング、コンマコーティングからなる群から選択される方法によって基材上に塗布される、請求項1~3のいずれかに記載の
製造方法。
【請求項5】
前記樹脂は、熱可塑性ポリウレタン、ハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー、フェノキシ樹脂、セルロース、及びそれらの混合物からなる群から選択される樹脂を含む、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記導電性組成物は、ペースト又はインクの形態である、請求項1~
5のいずれかに記載の
製造方法。
【請求項7】
前記導電性組成物はインクであり、
a)前記樹脂の含有量は、0.1~15重量%であり;
b)前記導電性粒子の含有量は、15重量%~75重量%であり;
c)前記有機溶媒の含有量は、10~70重量%であり、
全ての重量%は該組成物の総重量に基づく、請求項
6に記載の
製造方法。
【請求項8】
前記導電性組成物はペーストであり、
a)前記樹脂の含有量は、0.1~15重量%であり;
b)前記導電性粒子の含有量は、45重量%~97重量%であり;
c)前記有機溶媒の含有量は、0~15重量%であり、
全ての重量%は該組成物の総重量に基づく、請求項
6に記載の
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a)基材を準備する工程;b)導電性組成物を準備する工程;c)該導電性組成物を、該基材の少なくとも一部に塗布する工程;及びd)基材上の該導電性組成物を近赤外(NIR)光に曝露して、導電性経路を形成する工程を含んでなる基材上に導電体を形成する方法に関する。NIR光硬化は、非常に短い時間で感熱性基材に損傷を与えないで硬化組成物の電気的特性を改善する。
【背景技術】
【0002】
導電体は、基材上の表面に導電性組成物を印刷あるいは塗布し、塗布した組成物を硬化させることにより基材上に形成される。繊細な表面上に堆積される印刷された導電性インク及びペーストは、それらの比較的高い硬化温度のために硬化及び/又は焼結が困難であることが多い。これらの高い硬化温度は、使用される繊細な基材と相性がよくないことが多い。
【0003】
プリンテッドエレクトロニクスの印刷工程において現在使用されている硬化技術の1つは、ボックスオーブン工程における硬化又は乾燥である。ボックスオーブン(Box-oven)硬化/乾燥技術は時間のかかる技術である。ボックスオーブン技術では、完全な硬化/乾燥に最大1時間かかることがある。
【0004】
ボックスオーブン硬化技術の代替法は、ますます使用されるIR乾燥/硬化である。IR硬化は有効であり、比較的速い硬化技術である。IR乾燥/硬化技術は、ロールツーロール製造プロセスにおいてインラインで使用することができ、乾燥/硬化時間に関しては既にはるかに速い。しかしながら、この技術は基材の温度を非常に激しく上昇させ、それは繊細な基材にとって有害となり得る。
【0005】
現在使用されている別の硬化技術はフォトニックフラッシュであり、これは高速硬化技術である。しかしながら、この技術を単独で高溶媒系システムに使用することは不可能である。フラッシュ硬化技術のためには、溶媒を蒸発させる必要がある。この溶媒除去は、上記のように従来のボックスオーブン乾燥又はIR乾燥によって行うことができ、時間がかかり、及び/又は繊細な基材に有害であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、工程中に繊細な基材を損傷することなく、迅速な乾燥/硬化を提供するための硬化/乾燥技術が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、a)基材を準備する工程;b)導電性組成物を準備する工程;c)該導電性組成物を、該基材の少なくとも一部に塗布する工程;及びd)基材上の該導電性組成物を近赤外光に曝露して、導電体を形成する工程を含んでなる基材上に導電体を形成する方法に関する。
【0008】
本発明はまた、本発明の方法によって形成される導電体を含んでなる電気デバイスに関する。該電気デバイスは、太陽電池又は太陽モジュールであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、NIR硬化を伴う基材上の温度プロファイルを示す。
【
図2】
図2は、ボックスオーブン硬化を伴う温度プロファイルを示す。
【
図3】
図3は、IRリフロー硬化を伴う温度プロファイルを示す。
【
図4】
図4は、異なる硬化技術で得られたインクとペーストの抵抗値の比較を示す。
【
図5】
図5は、導電性インクについてのIR硬化とボックスオーブン硬化との間の比較を示す。
【
図6】
図6は、導電性ペーストについてのIR硬化とボックスオーブン硬化との間の比較を示す。
【
図7】
図7は、太陽電池効率に対するNIRによる後硬化の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の節において、本発明をより詳細に説明する。そのように記載された各態様は、そうでないことが明確に示されていない限り、任意の他の1つの態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の1つの特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0011】
本発明の文脈において、使用される用語は、文脈が他に指示しない限り、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0012】
本明細書で使用されているように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、単数形及び複数形の両方の指示対象を含む。
【0013】
本明細書で使用される「含んでなる」、「含む」、及び「構成される」という用語は、「含む」、「含む」又は「含有する」、「含有する」と同義であり、両端を含むか又は無制限であり、追加の、未記載の部材、要素又は方法ステップを排除しない。
【0014】
数値終点の記載は、記載された終点だけでなく、それぞれの範囲内に包含される全ての数及び分数を含む。
【0015】
本明細書で言及される全ての百分率、部、割合などは、特に示さない限り、重量に基づく。
【0016】
量、濃度、その他の数値又はパラメータが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値で表される場合、得られた範囲が文脈において明確に言及されているかどうかを考慮することなく、任意の上限又は好ましい値を任意の下限又は好ましい値とともに組み合わせることによって得られる任意の範囲が具体的に開示されると理解すべきである。
【0017】
本明細書において引用された全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
他に定義されない限り、技術的及び科学的用語を含む本発明の開示において使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味を有する。さらなるガイダンスにより、本発明の教示をより良く理解するために用語定義が含まれる。
【0019】
本発明によれば、導電性組成物を近赤外光に暴露して導電体を形成する、基材上に導電体を形成する方法が提供される。
【0020】
驚くべきことに、本出願人は、NIR硬化技術が著しく速い硬化を提供するだけでなく、硬化組成物の電気的特性も改善することを見出した。
【0021】
本発明は、a)基材を準備する工程;b)導電性組成物を準備する工程;c)該導電性組成物を、該基材の少なくとも一部に塗布する工程;及びd)基材上の該導電性組成物を近赤外光に曝露して、導電体を形成する工程を含んでなる基材上に導電体を形成する方法に関する。
【0022】
本発明の方法は、広範囲の基材、特に感熱性基材の表面上に導電体を形成することを目的とする。導電体を形成する材料は、典型的には高い乾燥/硬化温度を有し、従って、硬化/乾燥工程の間、基材は高温に長期間曝される。これは感熱性基材にとって有害であり得る。
【0023】
本発明の方法で使用するのに適した基材はプラスチック;ポリエチレンテレフタレート;ポリエチレン;ポリイミド;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン;ポリウレタン;ポリカーボネート;織物;紙;厚紙;FR4(エポキシ樹脂、ガラス織布補強材及び臭素化難燃剤から形成される)、FR5、HDI及び任意の他の種類のエポキシ又はフェノール系ガラスフィラー強化積層体などのプリント回路基板(PCB);シリコンウエハ;透明導電性酸化物被覆基材及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
本発明の方法は、導電性組成物を基材の少なくとも一部に塗布することを含む。
【0025】
導電性組成物は、任意の適切な方法によって基材の表面に塗布することができる。好ましくは、導電性組成物は、スクリーン印刷、フレキソグラビア印刷、ロトグラビア印刷、オフセット印刷、ロトスクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ステンシル印刷、ジェットディスペンシング、オーガバルブディスペンシング、時間-圧力ディスペンシング、スロットダイコーティング、レーザー誘起前方転写、ピン転写、ロールコーティング、コンマコーティングからなる群から選択される方法、好ましくはフレキソ印刷、ロトスクリーン印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷及びグラビア印刷からなる群から選択される方法によって塗布される。
【0026】
組成物は、基材の少なくとも一部に塗布される。組成物は、基材の全表面を覆ってもよく、又はその一部のみを覆ってもよい。組成物は、基材の表面の1つの特定の領域を覆ってもよく、又は対称的又は非対称的なパターンを覆ってもよい。対称的なパターンの例は、太陽電池の表面上のフィンガー及びバスバー要素である。また、任意の種類の印刷されたRFIDアンテナも本発明の方法から利益を得ることができる。
【0027】
本発明の方法は、導電体を形成するために、基材上の導電性組成物を近赤外光に暴露して導電性組成物を硬化させることを含む。NIR硬化は著しく速い硬化を提供するだけでなく、硬化組成物の電気的特性も改善することが見出された。
【0028】
NIR光源を使用することによって、完全な硬化を非常に短時間で達成することができる。基材の温度は短時間で最高温度まで上昇するので、NIR硬化技術は繊細な表面にとって有害ではない。NIR硬化中の基材温度の温度曲線を
図1に示す。この曲線は、最大基材温度がわずか数秒間であることを示す。比較として、ボックスオーブン及びIR技術の温度曲線を
図2及び3に示す。曲線は、最大基材温度がIR硬化では数秒から1分近くであり、ボックスオーブン硬化では数分であることを示す。
【0029】
本発明の方法では、基材の少なくとも一部の上の導電性組成物を、30秒間、好ましくは20秒間、より好ましくは10秒間近赤外光に露光する。
【0030】
本発明の方法で使用されるNIR光は、約750nmのピーク波長を有する350~2250nmの間の波長を有する。
【0031】
NIR光の強度は使用されるランプに依存する。異なる供給者が異なる強度のランプを供給するかもしれない。本発明で使用されるべき特に好ましいランプは、Adphos U-emitterである。本発明での使用に適した市販のNIR光の例は、Adphos Innovative Technologies GmbH製のAdphos U emitter NB 18-250である。
【0032】
本発明の方法は、基材上の前記導電性組成物を近赤外光に露光する前に行われる乾燥工程をさらに含み得る。乾燥は従来の方法で行うことができる。
【0033】
本発明の方法で使用するのに適した導電性組成物はペースト又はインクの形態である。適当な導電性組成物は、樹脂、導電性粒子、溶媒及びさらなる添加剤を含み得る。
【0034】
本発明の方法を使用して導電体を形成するのに適した典型的な導電性インク(ECI)組成物は、組成物の総重量に対して0.5~15重量%、好ましくは1.0~10重量%の樹脂;組成物の総重量に対して15~75重量%、好ましくは45~65重量%の導電性粒子;及び組成物の総重量に対して15~70重量%、好ましくは25~40重量%の1以上の有機溶媒を含んでなる。適当な導電性インク(ECI)組成物は、組成物の総重量に対して0~5重量%、好ましくは0.1~3重量%の添加剤をさらに含み得る。
【0035】
本発明の方法を使用して導電体を形成するのに適した典型的な導電性ペースト(ECP)組成物は、組成物の総重量に対して0~15重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは1~12重量%の樹脂;組成物の総重量に対して45~97重量%、好ましくは60~95重量%の導電性粒子を含んでなる。適当な導電性ペースト(ECP)組成物は、組成物の総重量に対して0~20重量%、好ましくは0.1~5重量%の1以上の有機溶媒;及び組成物の総重量に対して0~5重量%、好ましくは0.1~3重量%の添加剤をさらに含み得る。
【0036】
本発明の方法で使用するのに適した典型的な導電性組成物は樹脂を含み得る。本発明の方法で使用するのに適した典型的な導電性インク(ECI)組成物は樹脂を含んでなる。導電性ペースト(ECP)は樹脂を含み得るが、任意成分としてである。
【0037】
本発明で使用するのに適した樹脂は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であり得る。本発明で使用するのに適した熱可塑性樹脂は、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー、ポリアミドコポリマー、フェノキシ樹脂、ポリエーテル、ポリケトン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリオール、セルロース及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0038】
本発明で使用するのに適した熱硬化性樹脂は、エポキシド、シリコーン、アクリレート、BMI、ベンゾオキサジン、シアネートエステル、オレフィン、フェノール樹脂、オキセタン、ビニルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0039】
本発明の方法で使用するのに適した導電性組成物は溶媒を含み得る。本発明の方法で使用するのに適した典型的な導電性インク(ECI)組成物は溶媒を含んでなる。導電性ペースト(ECP)は溶媒を含んでもよいが、任意成分としてである。
【0040】
本発明で使用するのに適した溶媒は、アルコール、ケトン、エステル、グリコールエステル、グリコールエーテル、エーテル、酢酸塩、炭酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましくは、溶媒は、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トリデカノール、1,2-オクタンジオール、ブチルジグリコール、α-テルピネオール又はβ-テルピネオール、2-(2-ブトキシエトキシ)エチルアセテート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、1,2-プロピレンカーボネート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、2-フェノキシエタノール、ヘキシレングリコール、ジブチルフタレート、二塩基酸エステル(DBE)、二塩基酸エステル9(DBE-9)、二塩基酸エステル7(DBE-7)及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
本発明の方法で使用するのに適した典型的な導電性インク(ECI)又はペースト(ECP)組成物は導電性材料を含んでなる。本発明で使用するのに適した導電性材料は、銀、ニッケル、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、銅、インジウム、インジウム合金、金、白金、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、スズ合金、銀被覆銅、銀被覆グラファイト、銀被覆ポリマーなどの銀被覆フィラー及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0042】
本発明の方法で使用するのに適した典型的な導電性インク(ECI)又はペースト(ECP)組成物は、さらに硬化剤を含んでもよい。特に、選択された樹脂が熱硬化性樹脂であるとき、硬化剤は組成物中に存在する。
【0043】
本発明で使用するのに適した硬化剤は、可能な硬化機構にかかわらず、加熱されたときに反応を開始させるための任意の種類の硬化剤である。本発明で使用するのに適した硬化剤の例は、任意の種類のアミド、又はエポキシ-アミン付加体、イミダゾール、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾール、プリン、トリアゾールを含むアミン;ジカルボン酸:無水物;メルカプタン;チオール;ポリスルフィド;ルイス酸又は塩、典型的には開始/活性化時に硬化を引き起こすために超酸を生成するSbF6又はPF6系ヨードニウム又はスルホニウム塩が使用され;過酸化物;加熱により解離するアゾ化合物及びそれらの混合物である。
【0044】
本発明の方法で使用するのに適した典型的な導電性インク(ECI)又はペースト(ECP)組成物は、1以上の添加剤をさらに含んでよい。本発明で使用するのに適した添加剤は、レオロジー添加剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、接着促進剤、腐食防止剤、抑制剤、安定剤、フラックス剤、界面活性剤及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0045】
一実施態様において、本発明の方法で使用するのに適した導電性インク組成物は
a)0.5~15重量%の樹脂;
b)15重量%~75重量%の導電性銀粒子;及び
c)10~70重量%の1以上の有機溶媒;
を含んでなり、全ての重量%は組成物の総重量に基づく。
【0046】
別の実施態様において、本発明の方法で使用するのに適した導電性インク組成物は、
a)0.5~15重量%の樹脂;
b)15重量%~75重量%の導電性銀粒子;
c)15~70重量%の1以上の有機溶媒;及び
d)0.01~3重量%の1以上の添加剤;
を含んでなり、全ての重量%は組成物の総重量に基づく。
【0047】
一実施態様において、本発明の方法で使用するのに適した導電性ペースト組成物は、
a)0~15重量%、好ましくは0.1~15重量%の樹脂;及び
b)45重量%~97重量%の導電性銀粒子;
を含んでなり、全ての重量%は組成物の総重量に基づく。
【0048】
別の実施態様において、本発明の方法で使用するのに適した導電性ペースト組成物は、a)0~15重量%、好ましくは0.1~15重量%の樹脂;
b)45重量%~97重量%の導電性銀粒子;
c)0.1~15重量%の1以上の有機溶媒;及び
d)0.01~3重量%の1以上の添加剤;
を含んでなり、全ての重量%は組成物の総重量に基づく。
【0049】
本発明は、本発明の方法によって形成された導電体を含んでなる電気デバイスに関する。電気デバイスは高速印刷電子デバイスとすることができる。電気デバイスは、プリント回路を含んでなる任意のデバイスとすることができる。より具体的には、電気デバイスは、本発明の方法によって形成された導電体を含んでなる太陽電池又は太陽モジュールとすることができる。
【実施例】
【0050】
以下に記載される実施例は、本発明の実施態様による組成物の特性を例示する。別段の指示がない限り、以下の実施例及び説明全体を通して、すべての部及びパーセントは、それぞれ重量部又は重量パーセントである。
【0051】
以下の実施例は、本開示がより容易に理解し得るように説明の目的で含まれ、他に具体的に示されない限り、決して本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0052】
実施例1
【0053】
【表1】
InChem製のフェノキシ樹脂PKHH;Momentive製の溶媒PF9132KP中のフェノール樹脂;Metalor製のAgフレークGA238-11。
【0054】
実施例2(参考例)
【0055】
【表2】
DOWA製のAgフレークFA-S-6;Metalor製のAgフレークGA238-11;Sigma Aldrich製のLuperox 10。
【0056】
実施例3
【0057】
【表3】
BYK Chemie製のDisperbyk 110;Invista製のDBE-9;旭化成製のSaran F-310;Metalor製のAgフレーク AA 3462;Lubrizol製のEstane 5715。
【0058】
実施例4
【0059】
【表4】
アルケマ製のCrayvallac Super。
【0060】
実施例5
【0061】
【表5】
InChem製のフェノキシ樹脂;Metalorにより供給されたAgフレーク P 554-19;DOWA製のAgフレーク SAB 520。
【0062】
図4は、異なる硬化技術で得られた硬化インク及びペーストの抵抗値の比較を示す。スクリーン印刷によって組成物を基材(ITO被覆シリコンウエハ)の表面に塗布した。塗布した組成物を5~10秒間NIRに曝露し、組成物を乾燥又は硬化させた。さらに、同じ組成の追加のサンプルを従来のボックスオーブン硬化(20分)及びIR硬化(10秒)を用いて硬化した。図が示すように、電気的特性は、NIRで硬化させた組成物の方が優れている。同時に、従来のボックスオーブン硬化に20分間曝露したときに組成物の焼結が観察された。一方、焼結はNIR硬化では10秒以内になされた。これらの結果は、NIR硬化を使用する本発明による方法が、最適な電気的特性を確保しながら、非常に速い硬化方法を提供することを示している。ECIは実施例4であり、ECP1及びECP2は、実施例5のバリエーションである。
【0063】
実施例5a及び5b
【0064】
【0065】
図5及び6は、ボックスオーブン(20分)及びIR硬化(10秒)で得られた硬化インク及びペーストの抵抗値の比較を示す。組成物をスクリーン印刷によって基材(ITO被覆シリコンウエハ)の表面に塗布し、硬化させた。幅が異なる3つの異なるスクリーン開口部、すなわち幅60μm、65μm及び75μmを使用した。続いて、ライン抵抗は、トラックの抵抗(4点プローブで測定)をトラックの長さで割ることによって計算された。試験結果は、全てのライン幅が印刷され、ボックスオーブン硬化を用いて硬化された材料は、材料がはるかに短い時間でIRを用いて硬化されるときよりも、かなり低い抵抗を生じることを示す。これはペーストとインクの両方に当てはまる。
【0066】
図1、2及び3は、ボックスオーブン、IR及びNIR硬化間の基材の温度プロファイルを示す。NIR硬化は、短時間(数秒)だけ基材をより高温に曝すが、ボックスオーブン法とIR硬化法はどちらもより長時間(2、3分~数分)、より高温に基材を曝す。これは繊細な基材にとって有害であり得る。
【0067】
耐熱性テープを用いて熱電対を基材(この場合はITO被覆シリコンウエハ)に固定することにより温度プロファイルを測定し、硬化プロファイルを動かした。熱電対をPCと接続し、PicoLogソフトウェアを介して温度プロファイルを記録した。
【0068】
例えば、活性太陽電池としての感熱性基材及びプラスチックは、短期間の間、高温に耐えることができる。従って、本発明の方法は、基材を損傷することなく、これらの基材上に非常に高い導電性の材料を使用することを可能にする。
【0069】
実施例6
【0070】
本発明の方法の硬化工程は後処理工程としても使用できる。これは、異なる技術で既に硬化されている硬化性材料に追加のNIR硬化を提供できることを意味する。その結果は、追加のNIR硬化が材料のより良好な導電性をもたらし、これにより、より良好な性能をもたらすことを例示する。
【0071】
太陽電池を1日目に印刷し、従来のボックスオーブン硬化技術を使用することによって硬化させた。実施例4の組成物をここで使用した。セルの効率を経時的に測定した。ゆっくりとした性能の低下が視覚できる(
図7を参照、各記号は異なるセルを表す)。67日後(2つのサンプル)及び82日後(1つのサンプル)に、いくつかのセル(グラフ中に星印を付けた記号によって示される)を3.6秒間NIRで後硬化した。その後、セル効率を再度測定したところ、初期セル効率よりも高いことがわかった。
図7はこれらの結果を示す。
【0072】
セルの効率はI-V試験で測定した。使用された試験装置は、classAAA、一定照明ソーラーシミュレータを備えたIndustrial Vision Technology(S)Pte Ltd(シンガポール)製の太陽電池I-Vテスターであった。