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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】基板処理装置及び音響センサ用防水装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/06 20060101AFI20240719BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20240719BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240719BHJP
   B24B 37/32 20120101ALI20240719BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B37/013
B24B49/10
B24B37/32 Z
H01L21/304 622K
H01L21/304 622S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020120201
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017108
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】西田 弘明
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-528904(JP,A)
【文献】国際公開第2010/067732(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B55/06
B24B37/013
B24B49/10
B24B37/32
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を研磨パッドに押し付けることにより前記基板の研磨を行う基板処理装置において、
前記基板を回転可能に保持する基板保持装置と、
前記基板の研磨音を検出して音響信号として出力するセンサ本体と、当該センサ本体を収容するセンサカバーを備えた音響センサと、
前記音響信号から前記基板の研磨終点を検出する終点検出部と、
前記センサ本体への水分の付着を防止するために、前記センサカバーの内部へ気体を供給する気体供給装置を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記気体供給装置は、気体を供給する気体供給源と、前記気体供給源からの前記音響センサへの気体の供給をオン・オフする切替部と、気体の供給量を調節する調節部と、前記音響センサの内部へ供給される気体から異物を除去するためのフィルタを備えたことを特徴とする、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板保持装置は、基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、前記気体供給源から気体を供給することで前記複数の圧力室の圧力を制御する圧力制御部とを備えることを特徴とする、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記センサ本体の検出面側には、前記センサカバーの内部への水滴の浸入を防止する防水シートが設けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記気体供給装置は前記センサカバーの内部に気体を供給するように前記センサカバーと接続されており、
前記センサカバーには、前記気体供給装置からの気体を通過させるための溝が形成されており、
前記防水シートには、前記気体供給装置からの気体を通過させるための複数の微小開口が形成されていることを特徴とする、請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板保持装置を支持する支持部材と、前記支持部材に固定され前記音響センサを保持する保持機構を備え、
前記音響センサは、一定間隔で形成された複数の位置決め穴及びピンを介して、取付位置及び前記研磨パッドに対する取付角度が調節可能とされていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板を研磨パッドに押し付けることにより前記基板の研磨を行う基板処理装置において、前記基板の研磨音を検出して音響信号として出力するセンサ本体への水分の付着を防止するための防水装置であって、
前記センサ本体を収容するセンサカバーと、
前記センサ本体への水分の付着を防止するために、前記センサカバーの内部へ気体を供給する気体供給装置とを備えたことを特徴とする防水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等の表面を処理する装置及び基板処理装置に用いられる音響センサ用防水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、半導体基板等の基板の表面を研磨処理する研磨装置が広く使用されている。この種の研磨装置では、基板はトップリング又は研磨ヘッドと称される基板保持装置により保持された状態で回転する。この状態で、研磨パッドとともに研磨テーブルを回転させながら、基板の表面を研磨パッドの研磨面に押し付け、研磨液の存在下で基板の表面を研磨面に摺接させることで、基板の表面が研磨される。
【0003】
基板表面の研磨により、基板表面の膜厚が所定値に達した場合、あるいは下地層(例えばストッパ層)が表れたことが検出されると、基板研磨処理が終了される。このような研磨処理においては、加工後の基板表面の膜厚を正確に制御することが求められている。基板研磨の終了を検出するために様々な方法が検討されており、例えば音響センサを用いて研磨音の変化を検出することも提案されている。
【0004】
例えば特許文献1に記載の制御装置では、音響センサを用いて基板からの研磨音のパワースペクトルを検出するとともに、当該パワースペクトルの変化量から単位時間あたりのS/N比を算出し、得られたS/N比が閾値を超えた場合に基板研磨の終点であると判定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-163100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
音響センサを用いて基板研磨の終点検知を行うためには、できる限り音響センサを研磨中の基板に近づける必要がある。このため、基板研磨時に用いられる砥液や、基板研磨後に用いられる洗浄液により、音響センサの近傍が高湿度に曝されることとなり、それにより音響センサに水滴が付着し、あるいは水蒸気が結露して検出不良が生じるおそれが生じる。
【0007】
かかる事態を防止するために、音響センサを防水性のある筐体で密閉することが考えられるが、研磨中の基板からの研磨音が筐体により部分的に遮られてしまい、研磨音の測定性能が低下するおそれがある。また、筐体の内部が結露した場合には、音響センサに水滴が付着し、あるいは水蒸気が結露して検出不良が生じるおそれがある。
【0008】
また、音響センサを保持する筐体の一部(音響センサの検出部近傍)を開口構造とし、当該部分に防水シート(防水膜)を被せることで、研磨音を通過させつつ防水性を向上することができるが、音響センサの近傍の湿気を完全に防ぐことはできない。このため、長期間の使用により音響センサが高湿度の環境に置かれてしまうと、筐体の内部で湿気が凝集または結露してしまい、音響センサに水滴が付着し、あるいは水蒸気が結露して検出不良が生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、音響センサを用いて基板研磨処理を行うにあたり、湿気による音響センサへの影響を効果的に防止することが可能な基板処理装置及び当該基板処理装置に用いられる音響センサ用防水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、基板を研磨パッドに押し付けることにより前記基板の研磨を行う基板処理装置であって、前記基板を回転可能に保持する基板保持装置と、前記基板の研磨音を検出して音響信号として出力するセンサ本体と、当該センサ本体を収容するセンサカバーを備えた音響センサと、前記音響信号から前記基板の研磨終点を検出する終点検出部と、前記センサ本体への水分の付着を防止するために、前記センサカバーの内部へ気体を供給する気体供給装置とを備えた構成を有する。
【0011】
本発明の一態様は、基板を研磨パッドに押し付けることにより前記基板の研磨を行う基板処理装置において、前記基板の研磨音を検出して音響信号として出力するセンサ本体への水分の付着を防止するための防水装置であって、前記センサ本体を収容するセンサカバーと、前記センサ本体への水分の付着を防止するために、前記センサカバーの内部へ気体を供給する気体供給装置とを備えた構成を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、音響センサのセンサ本体を収容するカバー部材に対して気体を吹き付けるようにしたので、湿気によるセンサ本体への影響を効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す平面図である。
図2】基板研磨ユニットの一実施形態を概略的に示す斜視図である。
図3】基板研磨ユニットの構成を示す側面図である。
図4】制御装置の構成の一例を示す説明図である。
図5】基板研磨ユニットの構成を部分的に示す部分断面図である。
図6】気体供給装置の構成を示す側面図である。
図7】音響センサの保持機構の構成を示す斜視図である。
図8】音響センサの構成を示す斜視断面図である。
図9】音響センサの内部構成を示す説明図であり、(a)は検出面側から、(b)は側面から見た場合を示す。
図10】気体供給装置の構成の別の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る基板処理装置について、図面を参照して説明する。なお、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0015】
図1は、基板処理装置の全体構成を示す平面図である。基板処理装置10は、ロード/アンロード部12、研磨部13と、洗浄部14とに区画されており、これらは矩形状のハウジング11の内部に設けられている。また、基板処理装置10は、基板搬送、研磨、洗浄等の処理の動作制御を行う制御装置15を備えている。
【0016】
ロード/アンロード部12は、複数のフロントロード部20と、走行機構21と、搬送ロボット22を備えている。フロントロード部20には、多数の基板(ウエハ)Wをストックする基板カセットが載置される。搬送ロボット22は、上下に2つのハンドを備えており、走行機構21上を移動することで、フロントロード部20に置かれた基板カセット内の基板Wを取り出して研磨部13へ送るとともに、洗浄部14から送られる処理済みの基板を基板カセットに戻す動作を行う。
【0017】
研磨部13は、基板の研磨(平坦化処理)を行う領域であり、複数の研磨ユニット13A~13Dが設けられ、基板処理装置の長手方向に沿って配列されている。個々の研磨ユニットは、研磨テーブル上の基板Wを研磨パッドに押圧しながら研磨するためのトップリングと、研磨パッドに研磨液や純水等の液体を供給する液体供給ノズルと、研磨パッドの研磨面の目立て(ドレッシング)を行うドレッサと、液体と気体の混合流体または霧状の液体を研磨面に噴射して研磨面に残留する研磨屑や砥粒を洗い流すアトマイザを備えている。
【0018】
研磨部13と洗浄部14との間には、基板Wを搬送する搬送機構として、第1,第2リニアトランスポータ16,17が設けられている。第1リニアトランスポータ16は、ロード/アンロード部12から基板Wを受け取る第1位置、研磨ユニット13A,13Bとの間で基板Wの受け渡しを行う第2,第3位置、第2リニアトランスポータ17へ基板Wを受け渡すための第4位置との間で移動自在とされている。
【0019】
第2リニアトランスポータ17は、第1リニアトランスポータ16から基板Wを受け取るための第5位置、研磨ユニット13C,13Dとの間で基板Wの受け渡しを行う第6,第7位置との間で移動自在とされている。これらトランスポータ16,17の間には、基板Wを第4位置や第5位置から洗浄部14へ、及び第4位置から第5位置へ送るためのスイングトランスポータ23が備えられている。
【0020】
洗浄部14は、第1基板洗浄装置30、第2基板洗浄装置31、基板乾燥装置32と、これら装置間で基板の受け渡しを行うための搬送ロボット33,34を備えている。研磨ユニットで研磨処理が施された基板Wは、第1基板洗浄装置30で洗浄(一次洗浄)され、次いで第2基板洗浄装置31で更に洗浄(仕上げ洗浄)される。洗浄後の基板は、第2基板洗浄装置31から基板乾燥装置32に搬入されてスピン乾燥が施される。乾燥後の基板Wは、搬送ロボット22にて取り出され、フロントロード部20に載置された基板カセットに戻される。
【0021】
図2は研磨ユニット13A~Dの構成を概略的に示す斜視図である。研磨ユニット40は、上面を研磨面42aとした研磨パッド42と、研磨パッド42を取り付けた研磨テーブル43と、被研磨物であるウェハ等の基板Wを保持して研磨面42aに摺接させて研磨するトップリング41と、研磨面42aのドレッシングを行うドレッサを備えている。研磨テーブル43は図示しないモータに連結されており、研磨テーブル43及び研磨パッド42は、図中矢印で示す方向に回転する。
【0022】
トップリング41は、駆動機構を覆うトップリングヘッドカバー46から下方に突出する駆動軸44の下端に連結されており、その底面は真空吸着等により基板を保持する基板保持面を構成する。また、トップリング41は、揺動軸47の回転に伴う図示しない旋回アームの揺動により、研磨テーブル43の上方に位置する研磨位置と、研磨テーブルの側方の基板受渡位置との間で移動可能とされている。
【0023】
トップリング41は、その下面に真空吸着により基板Wを保持できるように構成されている。また、研磨テーブル43は、図示しないモータによりテーブル軸43aを中心として回転可能とされている。トップリング41と研磨テーブル43は、矢印で示す方向に回転し、この状態でトップリング41は、基板Wを研磨テーブル43に保持される研磨パッド42の上側の研磨面42aに押しつける。研磨液供給ノズル45から研磨パッド42上に供給される研磨液の存在下で、基板Wは研磨パッド42に摺接されて研磨される。
【0024】
基板Wは、例えば金属やシリコン酸化膜といった上層と、例えばシリコン膜である下層から構成される。基板Wの上層と下層を構成する材料が異なるため、基板Wの上層の研磨が進行して下層が露出したとき、基板Wと研磨パッド42による研磨音の音響スペクトル(パワースペクトル)が変化する。なお、本発明における基板Wの構成はこれに限られることはなく、半導体チップ製造プロセスで用いられる種々の材料を用いることができる。
【0025】
図3において、トップリング41の近傍には、基板Wからの研磨音を検出する音響センサ50が配置されている。音響センサ50は、例えば超音波マイク(図8の符番100参照)が用いられ、トップリング41による押圧を受けた基板Wと研磨パッド42との摩擦に起因する研磨音を検出して電気信号(音響信号)として出力する。音響センサ50は制御装置15(図4参照)に接続されており、基板Wの研磨音に対応する音響信号が制御装置15に送られる。あるいは、音響センサ50としてアコースティックエミッションセンサを用いても良い。
【0026】
音響センサ50は、保持機構52によってトップリングヘッドカバー46の底部に固定されている。また、トップリングヘッドカバー46の内部には、空気や窒素等の不活性気体を音響センサ50に供給するための配管53、電磁弁54、流量調整バルブ55、クリーンフィルタ56が設けられており、これらは気体供給装置57を構成する。保持機構52及び気体供給装置57の詳細な構成については、後述する。
【0027】
図4は、制御装置15の構成の一例を示したものである。制御装置15は、例えば汎用のコンピュータ装置であり、CPU、制御プログラムを記憶するメモリ、入力部、表示部などを備えている。制御装置15は、メモリに記憶された制御プログラムを起動させることにより、研磨制御部60、スペクトル生成部62、終点判定部66として動作することで、研磨ユニット40の動作を統括的に制御する。なお、制御装置15の構成は図4に示されたものに限定されず、基板処理装置10の他の要素(例えば、ロード/アンロード部12や洗浄部14)の動作を制御する構成や後述する音響センサ50内部への気体供給を制御する構成も備えられている。
【0028】
基板処理装置10の動作を制御するための制御プログラムは、予め制御装置15を構成するコンピュータにインストールされていても良く、あるいは、CD-ROM、DVD-ROM等の記憶媒体に記憶されていても良く、さらには、インターネットを介して制御装置15にインストールするようにしても良い。
【0029】
研磨制御部60は、研磨ユニット40を構成するトップリング41、研磨テーブル43等の動作を制御して、トップリング41に保持された基板Wに対して研磨処理を行う。
【0030】
スペクトル生成部62は、音響センサ50から送信されてきた音響信号(研磨パッド42による押圧を受けた基板Wの摩擦音に起因する信号)のデータに対して、FFT(高速フーリエ変換)を行って周波数成分とその強度を抽出し、基板Wの音響信号のパワースペクトル(周波数に対する音圧レベル)として出力する。
【0031】
終点判定部66は、所定の周波数帯域(モニタ範囲)におけるパワースペクトルを監視し、当該モニタ範囲におけるパワースペクトルに所定の変化が生じたか否かを判定する。終点判定部66は、モニタ範囲におけるパワースペクトルの変化を検出したときに、基板研磨の終了を指示する信号を研磨制御部60に送る。
【0032】
記憶部68は、例えば不揮発性のメモリ装置であり、音響センサ50から受信した信号の情報、スペクトル生成部62において生成されたパワースペクトルの情報、基板Wを構成する各層の種類毎に定められたモニタ範囲といった情報が記憶され、適宜読み出される。
【0033】
図5に示すように、トップリング41は、トップリングシャフト44の下端に固定されたヘッド本体70と、基板Wの側縁を支持するリテーナリング71と、基板Wを研磨パッド42の研磨面に対して押圧する柔軟な弾性膜72を備えている。リテーナリング71は基板Wを囲むように配置されており、ヘッド本体70に連結されている。弾性膜72は、ヘッド本体70の下面を覆うようにヘッド本体70に取り付けられている。
【0034】
ヘッド本体70は、例えばエンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂等の材料により形成され、弾性膜72は、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材等の材料によって形成されている。トップリング41を構成するヘッド本体70およびリテーナリング71は、トップリングシャフト47の回転により一体に回転するように構成されている。
【0035】
リテーナリング71は、ヘッド本体70及び弾性膜72を囲むように配置されている。このリテーナリング71は、研磨パッド42の研磨面42aに接触するリング状の樹脂材料から構成された部材であり、基板Wの外周に当たる研磨パッド42が水平に保たれるように、研磨パッド42を保持する。また、リテーナリング71は、ヘッド本体70に保持される基板Wの外周縁を囲むように配置されており、研磨中の基板Wがトップリング41から飛び出さないように基板Wの外周縁を支持する。
【0036】
リテーナリング71の上面には、図示しない環状のリテーナリング押圧機構に連結されており、リテーナリング71の上面の全体に均一な下向きの荷重を与える。これによりリテーナリング71の下面を研磨パッド42の研磨面42aに対して押圧する。
【0037】
弾性膜72は、同心状に配置された複数(図4では4つ)の環状の周壁72a,72b,72c,72dが設けられている。これら複数の周壁72a~72dによって、弾性膜72の上面とヘッド本体70の下面との間に、中央に位置する円形状の第1圧力室D1と、環状の第2、第3及び第4圧力室D2、D3、D4が形成されている。
【0038】
ヘッド本体70内には、中央の第1圧力室D1に連通する流路G1、第2~第4圧力室D2~D4にそれぞれ連通する流路G2~G4が、それぞれ形成されている。これら流路G1~G4は、それぞれ気体ラインを介して気体供給源74に接続されている。各気体ラインには、それぞれエアオペレートバルブ(V1~V4のいずれか一つ)と図示しない圧力コントローラが設置されている。エアオペレートバルブV1~V4は、エアー圧の大小によりオンオフが切り替えられるバルブであり、気体供給源74からの(気体ラインとは別に設けられた)切替ライン73を通じて、制御装置15によりオンオフが切り替えられる。なお、気体供給源74とは別の気体供給源を設けて、エアオペレートバルブV1~V4のオンオフを制御するようにしても良い。
【0039】
リテーナリング71の直上にはリテーナ圧力室D5が形成されており、リテーナ圧力室D5は、ヘッド本体70内に形成された流路G5、エアオペレートバルブV5及び図示しない圧力コントローラが設置された気体ラインを介して気体供給源74に接続されている。各気体ラインに設置された圧力コントローラは、それぞれ気体供給源74から圧力室D1~D4およびリテーナ圧力室D5に供給する圧力気体の圧力を調整する圧力調整機能を有している。圧力コントローラおよびエアオペレートバルブV1~V5は、それらの作動が制御装置15で制御されるようになっている。また、気体供給源74は、切替ライン73を通じて気体供給機構57の電磁弁54に接続されており、この電磁弁54は制御装置15によって作動される。
【0040】
図6において、音響センサ50は保持機構52によってトップリングヘッドカバー46の底部に固定されている。保持機構52は、カバー取り付け部材83、支持プレート84とブラケット85から構成されている。音響センサ50は、エアーの配管53及び音響センサ50からの配線92を収容するチューブ93を介して継手94に接続されている。この継手94は、トップリングヘッドカバー46の底部46aに取り付けられた支持部95の内部に入り込んでおり、これにより継手94がトップリングヘッドカバー46の底部に固定される。
【0041】
トップリングヘッドカバー46に設けられた支持部95の他端は、封止部材96によって封止されており、これによりトップリングヘッドカバー46の内部が外気にさらされるのを防止する。継手94及び封止部材96には、音響センサ50からの配線92を通すための貫通孔が形成されており、これにより音響センサ50が制御装置15に電気的に接続される。また、封止部材96によりトップリングヘッドカバー46と音響センサ50の内部が互いに遮蔽されることで、音響センサ50に供給された気体がトップリングヘッドカバー46の内部に逆流することが防止され、供給した気体が効率よくセンサ本体(超音波マイク)に供給される。
【0042】
なお、封止部材96としては、例えば弾性体としてのゴム栓が好ましく用いられるが、気体を封止できる部材であれば特に限定はなく、例えば、Oリング等のシール部品を付けた閉止部品や、コーキング材を用いても良い。
【0043】
気体供給装置57は、音響センサ50の内部に付着しうる水滴を除去するための気体を供給するために設けられ、電磁弁54、流量調整バルブ55及びクリーンフィルタ56から構成され、これらはトップリングヘッドカバー46の内部に固定されている。
【0044】
電磁弁54は気体供給源74に接続されており、制御装置15によって作動され、音響センサ50への気体(例えば窒素ガス)の供給をオン・オフする。流量調整バルブ55は、例えばダイヤル付きスピードコントローラであり、装置の停止時(例えばメンテナンス時)にダイヤルを回すことで、音響センサ50への気体の供給量を調整する。あるいは、流量調整バルブ55による供給量の調整を自動で行うように構成しても良い。クリーンフィルタ56は、気体供給源74から供給される気体に含まれるパーティクル等の不純物を除去し、音響センサ50内部への異物の混入を防止する。また、ホルダ94及び封止部材96には、音響センサ50からの気体の配管53を通すための貫通孔が形成されている。
【0045】
このように、音響センサ50へ気体を供給する気体供給装置57をトップリングヘッドカバー46の内部に配置することで、省スペースかつ低コストにより音響センサへの気体供給装置を構成することができる。
【0046】
図6及び図7において、カバー取り付け部材83は、トップリングヘッドカバー46の底部46aに固定されており、複数の位置決め穴83aが一定間隔で形成されている。支持プレート84は、カバー取り付け部材83と接する面(図7における背面)に、複数の位置決め穴が一定間隔で形成されており、位置決め用のピン86がカバー取り付け部材83及び支持プレート84の位置決め穴に入り込むことで、支持プレート84のカバー取り付け部材83に対する取付位置を適宜変更することができる。また、支持プレート84は、ボルト87によりカバー取り付け部材83に固定される。
【0047】
ブラケット85は、支持プレート84と接する面(図7における前面)に、複数の位置決め穴85aが一定間隔で形成されている。同様に、支持プレート84の対応する面(図7における背面)にも、複数の位置決め穴が一定間隔で形成されている。位置決め用のピン88が支持プレート84及びブラケット85の位置決め穴に入り込むことで、ブラケット85の支持プレート84に対する取付位置を適宜変更することができる。また、ブラケット85は、ボルト89により支持プレート84に固定される。
【0048】
さらに、音響センサ50は、ブラケット85と接する面(図7における前面)に、複数の位置決め穴50aが同心円状に一定間隔で形成されており、これはブラケット85の対応する面(図7における背面)に、同心円状に一定間隔で形成された複数の位置決め穴に対応する。そして、位置決め用のピン90が、音響センサ50及びブラケット85の位置決め穴に入り込むことで、音響センサ50の取付角度を調整することができる。また、音響センサ50は、ボルト91によりブラケット85に固定される。
【0049】
このように、音響センサ50の取付位置及び取付角度を、ピンにより位置決めすることにより、例えば装置のメンテナンス時に音響センサ50を一時的に取り外した場合にも、容易に元の状態に復元することができる。
【0050】
図8及び図9に示すように、音響センサ50は、基板Wからの研磨音を検出するセンサ本体100とセンサカバー101とを備えて構成され、センサ本体100はセンサカバー101の内部に入り込んだ状態で保持されている。センサ本体100の検出面100aの前面には防水シート104が配置されており、さらにその前面に設けられた開口部106aを有する前カバー106によって、センサカバー101と前カバー106との間に挟み込まれた状態で固定されている。
【0051】
防水シート104は、例えば多数の微小開口が形成されたフッ素樹脂製のシートであり、基板Wからの研磨音を遮断することなく、音響センサ50の内部への水滴の侵入を遮断することができる。
【0052】
センサ本体100の検出面とは反対側の面には、コネクタを介して配線92が接続されている。また、センサカバー101に形成された開口には、配線92の一部を収容した継手108が入り込んでおり、継手108とチューブ93により配線92を外気から保護している。
【0053】
音響センサ50の検出面側に配置された防水シート104は水滴の浸入を防止できるものの、水滴よりも微小な水蒸気の侵入を完全に防止することはできない。また、研磨ユニット40の内部は、研磨液が乾燥しないように湿潤状態に保たれる必要があるため、音響センサ50の内部に水蒸気が蓄積して結露するおそれがあり、これにより音響センサ50による研磨音の検出性能が低下し、あるいはセンサが故障してしまう。
【0054】
このため、本実施形態に係る基板処理装置では、気体供給装置57を通じて音響センサ50の内部に気体を供給することで、音響センサ50の内部に気体を通気させて水蒸気を外部に除去するとともに、外部から水滴や水蒸気が音響センサ50の内部に入り込むのを防止するようにしている。これにより、センサ本体100に水分が付着するのを防止することができる。ここで、水分の付着とは、水滴がセンサ本体100に付着する、水蒸気がセンサ本体100の表面で結露することを意味する。
【0055】
音響センサ50の内部には、センサ本体100を収容する窪みと、その両側に一対の溝102が形成されている。音響センサ50の検出面とは反対側の面からチューブ93内の配管53を通じて気体供給源74からの気体が供給されると、センサ本体100の溝102を通じて気体が流れこみ、防水シート104の微小開口を通じてセンサ本体50の外部に通り抜ける(図9(b)の矢印参照)。これにより、音響センサ50の内部に気体を通気させることができる。
【0056】
音響センサ50の内部への気体の供給は、基板Wへの研磨処理の終了後、あるいは、基板Wへの研磨処理が始まる前のタイミングで行われる。基板Wへの研磨処理中(より具体的には、音響センサ50による研磨音の検出中)は音響センサ50の内部への気体供給を停止することで、気体供給により音響センサ50の研磨音の検出性能の低下のおそれをなくすことができる。
【0057】
上記の実施形態では、1つの流量調整バルブ55を備えた構成について説明しているが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば図10に示すように、2つ(またはそれ以上の)流量調整バルブ55を設けてこれを電磁弁111に並列に接続し、これら流量調整バルブ55からの気体を継手114を介してクリーンフィルタ56に流すように構成しても良い。これにより、音響センサ50への気体供給量を精度良くコントロールすることができる。また、一方の流量調整バルブ55に不具合が生じた場合でも、他方の流量調整バルブ55を用いて音響センサ50の内部に気体を通過させて通気を行うことが可能となる。
【0058】
上記実施形態では、研磨終了後のタイミングにて、音響センサ50の内部に気体を通過させて通気を行うようにしているが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば一定時間毎に通気させても良い。さらに、基板研磨処理中に通気させるように構成しても良いが、気体の流れにより音響センサ50による検出性能が低下するおそれがあることから、基板研磨処理中に通気させる場合には、気体の供給量を下げる(あるいは、音響センサ50による研磨音の測定中は気体供給を止める)ことが好ましい。
【0059】
上記実施形態では、音響センサ50への気体の供給は、検出面100a(防水シート104側の面)とは反対側より行われているが、防水シート104、封止部材96、継手108及びチューブ93によりセンサ本体のある内部空間は半密閉状態となっているので、検出面100aの正面側や側面から気体を供給するように構成しても良い。
【0060】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0061】
10 基板処理装置
15 制御装置
40 研磨ユニット
41 トップリング
43 研磨テーブル
46 トップリングヘッドカバー
50 音響センサ
52 保持機構
57、110 気体供給装置
74 気体供給源
100 センサ本体
101 センサカバー
102 溝
104 防水シート
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10