(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】送信装置、中継装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20240719BHJP
H03M 13/19 20060101ALI20240719BHJP
H03M 13/25 20060101ALI20240719BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20240719BHJP
H04L 27/01 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H04L1/00 B
H04L1/00 E
H03M13/19
H03M13/25
H04L27/00 B
H04L27/01
(21)【出願番号】P 2020143054
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】川島 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 宏明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 知明
(72)【発明者】
【氏名】井地口 朋也
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩平
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
(72)【発明者】
【氏名】土田 健一
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-054931(JP,A)
【文献】特開2011-244063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0088568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H03M 13/19
H03M 13/25
H04L 27/00
H04L 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号にLDPC符号化を施し、LDPC符号化後の信号に変調を施して本線信号の放送波を送信する送信装置において、
前記放送波を受信する受信装置がLLR(対数尤度比)を計算する際の前記LLRの縮退に関する情報を縮退量情報として生成する縮退量情報生成部と、
前記縮退量情報生成部により生成された前記縮退量情報に変調を施し、縮退量情報信号を生成する変調部と、
前記本線信号と前記変調部により生成された前記縮退量情報信号とを合成する合成部と、
前記合成部により合成された前記本線信号及び前記縮退量情報信号を含む前記放送波を送信する送信部と、を備え、
前記縮退量情報生成部は、
前記LLRを縮退させる処理を行わない縮退処理オフを示す前記縮退量情報を生成する、ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
送信装置から送信された放送波を受信し、前記放送波の信号に伝送路等化を施し、伝送路等化後の信号にシンボル判定を施し、シンボル判定後の信号に再変調を施して本線信号の放送波を再送信する中継装置において、
前記伝送路等化後の信号に基づいて、当該中継装置におけるC/N比を中継局受信C/Nとして推定する中継局受信C/N推定部と、
所定の関数またはテーブルを用いて、前記中継局受信C/N推定部により推定された前記中継局受信C/Nに対応するデータを、前記放送波を受信する受信装置がLLR(対数尤度比)を計算する際の前記LLRの縮退に関する縮退量情報として生成する縮退量情報生成部と、
前記縮退量情報生成部により生成された前記縮退量情報に変調を施し、縮退量情報信号を生成する変調部と、
前記本線信号と前記変調部により生成された前記縮退量情報信号とを合成する合成部と、
前記合成部により合成された前記本線信号及び前記縮退量情報信号を含む前記放送波を送信する送信部と、を備え、
前記縮退量情報生成部は、
前記中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記LLRを縮退させる度合いが低くなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記LLRを縮退させる度合いが高くなるように、前記縮退量情報を生成する、ことを特徴とする中継装置。
【請求項3】
請求項2に記載の中継装置において、
前記縮退量情報生成部は、
前記受信装置が前記LLRを伝送路等化後の信号及び雑音分散調整値σ’
2から計算する際の前記LLRを縮退させる処理として、前記伝送路等化後の信号から推定した雑音分散推定値σ
2に雑音分散加算値σ
2
addを加算して前記雑音分散調整値σ’
2を求める加算方式を用いる場合に、
前記中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記雑音分散加算値σ
2
addが小さくなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記雑音分散加算値σ
2
addが大きくなるように、前記雑音分散加算値σ
2
addを前記縮退量情報として生成し、
前記LLRを縮退させる処理として、前記伝送路等化後の信号から推定した前記雑音分散推定値σ
2が雑音分散クリップ値σ
2
clip以上のとき、前記雑音分散推定値σ
2を前記雑音分散調整値σ’
2とし、前記雑音分散推定値σ
2が前記雑音分散クリップ値σ
2
clip未満のとき、前記雑音分散クリップ値σ
2
clipを前記雑音分散調整値σ’
2とするクリップ処理を用いる場合に、
前記中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記雑音分散クリップ値σ
2
clipが小さくなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記雑音分散クリップ値σ
2
clipが大きくなるように、前記雑音分散クリップ値σ
2
clipを前記縮退量情報として生成する、ことを特徴とする中継装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の中継装置において、
前記中継局受信C/N推定部は、
前記伝送路等化後の信号に基づいて、全体帯域の前記中継局受信C/N、またはセグメント毎の前記中継局受信C/Nを推定し、
前記縮退量情報生成部は、
前記所定の関数またはテーブルを用いて、前記中継局受信C/N推定部により推定された前記全体帯域の前記中継局受信C/Nに対応するデータを、前記全体帯域の前記縮退量情報として生成するか、または前記セグメント毎の前記中継局受信C/Nに対応するデータを、前記セグメント毎の前記縮退量情報として生成する、ことを特徴とする中継装置。
【請求項5】
送信装置及び中継装置から送信された放送波をそれぞれ受信し、前記放送波の信号に伝送路等化を施し、伝送路等化後の信号からLLR(対数尤度比)を計算してLDPC復号を施し、放送信号を復元する受信装置において、
前記放送波の信号から縮退量情報信号を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された前記縮退量情報信号に復調を施し、縮退量情報を求める復調部と、
前記伝送路等化後の信号及び前記復調部により求めた前記縮退量情報に基づいて、前記LLRを計算するLLR処理部と、を備え、
前記LLR処理部は、
前記伝送路等化後の信号に基づいて、雑音分散推定値σ
2を推定する雑音分散推定部と、
前記縮退量情報に基づいて、前記雑音分散推定部により推定された前記雑音分散推定値σ
2を調整し、雑音分散調整値σ’
2を求める雑音分散調整部と、
前記伝送路等化後の信号及び前記雑音分散調整部により求めた前記雑音分散調整値σ’
2に基づいて、前記LLRを計算するLLR計算部と、を備え、
前記送信装置から送信された前記放送波を受信した場合の前記縮退量情報を、前記LLRを縮退させる処理を行わない縮退処理オフを示すデータとし、
前記中継装置から送信された前記放送波を受信した場合の前記縮退量情報を、前記中継装置におけるC/N比である中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記LLRを縮退させる度合いが低くなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記LLRを縮退させる度合いが高くなるような前記LLRを縮退させる度合いを示すデータとし、
前記雑音分散調整部は、
前記縮退量情報が前記縮退処理オフを示している場合、前記雑音分散推定値σ
2を前記雑音分散調整値σ’
2とし、
前記縮退量情報が前記LLRを縮退させる度合いを示している場合、前記LLRを縮退させる度合いを反映した前記雑音分散調整値σ’
2を求める、ことを特徴とする受信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の受信装置において、
前記雑音分散調整部は、
前記LLRを縮退させる処理として加算方式を用いるものとし、前記送信装置及び前記中継装置により雑音分散加算値σ
2
addが前記縮退量情報として生成された場合、前記雑音分散推定値σ
2に前記雑音分散加算値σ
2
addを加算し、前記雑音分散調整値σ’
2を求め、
前記LLRを縮退させる処理としてクリップ方式を用いるものとし、前記送信装置及び前記中継装置により雑音分散クリップ値σ
2
clipが前記縮退量情報として生成された場合、前記雑音分散推定値σ
2が前記雑音分散クリップ値σ
2
clip以上のとき、前記雑音分散推定値σ
2を前記雑音分散調整値σ’
2とし、前記雑音分散推定値σ
2が前記雑音分散クリップ値σ
2
clip未満のとき、前記雑音分散クリップ値σ
2
clipを前記雑音分散調整値σ’
2とする、ことを特徴とする受信装置。
【請求項7】
放送信号にLDPC符号化を施し、LDPC符号化後の信号に変調を施して本線信号を生成し、自らの装置のTxID(識別信号)に変調を施して変調後のTxIDを生成し、前記本線信号及び前記変調後のTxIDを合成した放送波を送信する送信装置において、
当該送信装置から送信された前記放送波を受信する中継装置により推定されたC/N比である中継局受信C/N及び前記中継装置のTxIDを、前記中継装置から受信する受信部と、
当該送信装置から送信された前記放送波及び前記中継装置から再送信された放送波を受信する受信装置がLLR(対数尤度比)を計算する際の前記LLRを縮退させる処理を行わない縮退処理オフを示す縮退量情報を生成し、
所定の関数またはテーブルを用いて、前記受信部により受信された前記中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記LLRを縮退させる度合いが低くなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記LLRを縮退させる度合いが高くなるように、前記LLRを縮退させる度合いを示す前記縮退量情報を生成し、
当該送信装置のTxID及び当該TxIDに対応する前記縮退処理オフを示す前記縮退量情報、並びに、前記中継装置のTxID及び当該TxIDに対応する前記LLRを縮退させる度合いを示す前記縮退量情報を含む対応テーブルを生成する対応テーブル生成部と、
前記対応テーブル生成部により生成された前記対応テーブルを含む前記放送信号を生成する放送信号生成部と、
前記放送信号生成部により生成された前記放送信号に前記LDPC符号化及び前記変調を施すことで生成された前記本線信号と、前記変調後のTxIDとを合成する合成部と、
前記合成部により合成された前記本線信号及び前記TxIDを含む前記放送波を送信する送信部と、
を備えたことを特徴とする送信装置。
【請求項8】
請求項7に記載の送信装置において、
前記放送信号生成部は、
前記対応テーブルを、前記放送信号の固定受信及び部分受信のデータ放送領域に格納し、前記対応テーブルを含む前記放送信号を生成する、ことを特徴とする送信装置。
【請求項9】
請求項7に記載の送信装置及び中継装置から送信された放送波をそれぞれ受信し、前記放送波の信号に伝送路等化を施し、伝送路等化後の信号からLLR(対数尤度比)を計算してLDPC復号を施し、放送信号を復元する受信装置において、
前記放送波の信号から前記送信装置のTxID(識別信号)及び前記中継装置のTxIDを抽出する抽出部と、
前記伝送路等化後の信号からLLRが計算されLDPC復号が施されることで復元された前記対応テーブルから、前記抽出部により抽出された前記TxIDに対応する前記縮退量情報を読み出す縮退量情報読出部と、
前記伝送路等化後の信号及び前記縮退量情報読出部により読み出された前記縮退量情報に基づいて、前記LLRを計算するLLR処理部と、を備え、
前記LLR処理部は、
前記伝送路等化後の信号に基づいて、雑音分散推定値σ
2を推定する雑音分散推定部と、
前記縮退量情報読出部により読み出された前記縮退量情報に基づいて、前記雑音分散推定部により推定された前記雑音分散推定値σ
2を調整し、雑音分散調整値σ’
2を求める雑音分散調整部と、
前記伝送路等化後の信号及び前記雑音分散調整部により求めた前記雑音分散調整値σ’
2に基づいて、前記LLRを計算するLLR計算部と、を備え、
前記雑音分散調整部は、
前記縮退量情報が前記縮退処理オフを示している場合、前記雑音分散推定値σ
2を前記雑音分散調整値σ’
2とし、
前記縮退量情報が前記LLRを縮退させる度合いを示している場合、前記LLRを縮退させる度合いを反映した前記雑音分散推定値σ
2を求める、ことを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号の送信装置、中継装置及び受信装置に関し、特に、デジタル放送の放送波中継を行い、シンボル判定して再送信した信号を受信するシステムにおいて、データの誤りを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高性能な誤り訂正符号であるLDPC符号を採用したデジタル放送方式が規格化され、一部の国で既に実際の放送が行われている。LDPC符号は、パリティ検査行列の“1”の密度が低く、符号長が長いことを特徴とするブロック符号であり、シャノン限界に近い性能を得ることが知られている。
【0003】
従来の地上デジタル放送では、内符号に畳み込み符号、外符号にリードソロモン符号を用いていたが、LDPC符号が実用化されて以来、内符号にLDPC符号、外符号にBCH符号を用いる新たな方式の提案が相次いでいる。高性能なLDPC符号を用いることで、シンボル変調多値数を増加させることが可能となり、伝送レートの向上が可能となる。
【0004】
LDPC符号を用いる放送方式の例として、高度広帯域衛星デジタル放送方式、DVB-S2、DVB-T2、DVB-NGH等が挙げられる。DVB-T2は、LDPC符号を用いる欧州の地上デジタル放送方式であり、符号長が64,800ビットの非正則LDPC符号が採用されている。
【0005】
日本では、ISDB-Tによる地上デジタル放送が実施されている。ISDB-Tは、DVB-T2と同様に、直交周波数分割多重(OFDM)を基本とした方式であり、内符号には畳み込み符号が用いられている。
【0006】
日本においても、LDPC符号を採用した次世代地上デジタル放送方式が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。現行のISDB-Tでは、固定受信階層において1シンボルで6ビットを伝送する64QAMが採用されているが、1シンボルで8ビットを伝送する256QAM、10ビットを伝送する1024QAM、12ビットを伝送する4096QAM等が検討され、伝送容量の拡大が期待される。
【0007】
また、日本では、地上デジタル放送の電波をあまねく全国に届けるために、数多くの中継局が設置されており、中継局の多くは、中継方式として上位局の電波を受信及び増幅して再送信する放送波中継を採用している。
【0008】
中継局に設けられた中継装置は、単純に上位局から送信された電波を受信し、増幅及び再送信処理を行うだけでなく、受信した電波に含まれるマルチパス歪みの等化を行う機能、及び判定処理による雑音成分の除去を行う機能を持つものがある。このような中継装置は、多段中継における信号品質劣化の軽減に役立っている。
【0009】
図27は、従来の送信装置、中継装置及び受信装置を備えて構成される地上放送システムの全体構成例を示すブロック図である。この地上放送システムは、放送波を中継する場合の構成を示しており、誤り訂正符号としてLDPC符号を用いている。地上放送システムは、親局に設けられた送信装置100、中継局に設けられた中継装置200、及び一般家庭に設けられた受信装置300を備えて構成される。
【0010】
送信装置100は、LDPC符号化部101にて放送信号にLDPC符号化を施し、変調部102にてLDPC符号化後のビット系列に変調を施し、放送波を送信する。送信装置100からの放送波は、送信装置100と中継装置200との間の伝送路150を介して、中継装置200へ送信される。
【0011】
中継装置200は、送信装置100から送信された放送波を受信し、伝送路等化部201にて受信信号に伝送路等化を施し、シンボル判定部202にて伝送路等化後の信号にシンボル判定を施し、再変調部203にてシンボル判定後の信号に再変調を施す。そして、中継装置200は、放送波を再送信する。中継装置200からの放送波は、中継装置200と受信装置300との間の伝送路250を介して、受信装置300へ送信される。
【0012】
受信装置300は、中継装置200から再送信された放送波を受信し、伝送路等化部301にて受信信号に伝送路等化を施し、LLR(log likelihood ratio:対数尤度比)計算部302にて伝送路等化後の信号からLLRを計算し、LDPC復号部303にてLLRに復号を施す。これにより、元の放送信号を復元することができる。
【0013】
また、地上放送システムにおいては、中継局を設置して放送エリアを設計するにあたり、各送信局が自局(送信局固有)のTxID(識別信号)を送信信号に多重して送信する手法が検討されている。このTxIDを用いることにより、受信装置は、受信信号がどの送信局から送信されたのかを識別することができる。TxIDは、送信局を識別するための信号である。
【0014】
図28は、TxIDの送受信を想定した場合の地上放送システムの全体構成例を示すブロック図である。この地上放送システムは、
図27に示した地上放送システムに、TxIDの送受信の機能を追加したものである。地上放送システムは、親局に設けられた送信装置110、中継局に設けられた中継装置210、及び一般家庭に設けられた受信装置310を備えて構成される。
【0015】
送信装置110は、TxID生成部103にて自局のTxIDを生成し、変調部104にてTxIDに変調を施す。そして、送信装置110は、LDPC符号化部101及び変調部102により生成された放送信号の変調信号とTxIDの変調信号とを多重することで合成し、放送波を送信する。送信装置110からの放送波は、伝送路150を介して中継装置210へ送信される。
【0016】
中継装置210は、TxID生成部204にて自局のTxIDを生成し、変調部205にてTxIDに変調を施す。そして、中継装置210は、伝送路等化部201、シンボル判定部202及び再変調部203により生成された放送信号の変調信号とTxIDの変調信号とを多重することで合成し、放送波を再送信する。中継装置210からの放送波は、伝送路250を介して受信装置310へ送信される。
【0017】
受信装置310は、中継装置210から再送信された放送波を受信し、伝送路等化部301、LLR計算部302及びLDPC復号部303により得られた元の放送信号を出力する。また、受信装置310は、TxID抽出部304にて受信信号からTxIDの変調信号を抽出し、TxIDの変調信号に復調を施すことで、受信信号の送信元のTxIDを得る。これにより、受信装置310は、受信信号がどの送信局から送信されたのかを認識することができる
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【文献】“地上放送高度化に向けた伝送技術 特集号”、NHK技術R&D、No.172、2018年11月発行、p2-p47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
図27及び
図28に示した地上放送システムにおいて、上位局である親局の送信装置100,110から送信された放送波を中継局の中継装置200,210で受信することを、上位局受信という。中継装置200,210が上位局受信する場合に、受信信号の信号電力と白色ガウス雑音の電力との間の比(C/N比)を中継局受信C/Nという。
【0020】
また、中継局の中継装置200,210から再送信された放送波を受信装置300,310で受信することをエリア受信という。受信装置300,310がエリア受信する場合に、受信信号の信号電力と白色ガウス雑音の電力との間の比(C/N比)をエリア受信C/Nという。
【0021】
ここで、中継局受信C/Nが低いため、当該中継装置200,210にてシンボル誤りが生じた場合を想定する。この場合、エリア受信C/Nが所要C/Nよりも十分高いときには、受信装置300,310において、LDPC復号の処理に対して最初に与えるLLR(初期LLR)が高い値となる。そうすると、シンボル誤りが復号結果にそのまま反映される可能性が高くなり、結果として、誤った信号が復元されてしまうことがあり得る。
【0022】
受信装置300,310によるLDPC符号の復号処理は、各ビットのLLRをビットノードとチェックノードで繰り返し交換し合うことにより、LDPC符号全体のビットのLLRを改善する処理である。このため、訂正能力を十分に発揮するためには、最初に与える初期LLRが重要となる。この初期LLRは、受信信号点とコンスタレーション点との間の距離、及びエリア受信における雑音分散から求められる。エリア受信C/Nが高い場合には、雑音分散が小さくなり、初期LLRは高い値となる。
【0023】
中継装置200,210がシンボル硬判定を行う場合には、中継装置200,210の受信信号の信号点は、最も近いコンスタレーション点に再マッピングされる。このため、中継局受信C/Nが低い場合、送信装置100,110からの送信信号の信号点とは異なる点に再マッピングされることがあり得る。これは、中継装置200,210が誤った信号を再送信することを意味する。
【0024】
受信装置300,310がこの信号を高いエリア受信C/Nで受信した場合、全ビットの初期LLRが高い状態で復号処理が開始され、LDPC復号部303は、誤判定された信号を判別することができない。
【0025】
このように、
図27及び
図28に示した地上放送システムでは、受信装置300,310において、エリア受信C/Nが高いにも関わらず、誤りが発生するという問題があった。
【0026】
このような問題を解決するために、中継装置200,210において、LLRに基づいてシンボルを判定する手法(軟判定)を用いることが想定される。軟判定を用いることにより、エリア受信C/Nが高い場合であっても、誤りを軽減することができる。しかし、この手法では、完全には誤りを抑制することはできない。
【0027】
また、中継装置200,210にて再送信する信号のうち、雑音分散推定のために用いるデータ(例えばTMCC、LLch)に雑音を付加する手法が提案されている(本件特許出願の同一の出願人によりなされた、本件特許出願の出願時に未公開の特願2019-195792号公報を参照)。
【0028】
雑音分散推定のために用いるTMCC、LLch等に雑音を付加することにより、エリア受信C/Nを故意に低くし、LLRを縮退させる(LLRの絶対値を小さくする)ことができる。LLRを縮退させることにより、LDPC復号の処理においてシンボル誤りが覆る可能性があり、結果として、エリア受信C/Nが高い状態において誤りを抑制することができる。しかし、中継装置200,210は、雑音を付加するための回路を備える必要があり、また、TMCC、LLch等の伝送特性が劣化してしまう。
【0029】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、放送波を送信する送信装置と、送信装置から送信された放送波を受信し、シンボル判定して再送信する中継装置と、中継装置から再送信された放送波を受信する受信装置とを備えて構成される地上放送システムにおいて、中継装置が信号に雑音を付加することなく、受信装置がエリア受信C/Nの高い状況下で受信した再送信信号の誤りを抑制可能な送信装置、中継装置及び受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前記課題を解決するために、請求項1の送信装置は、放送信号にLDPC符号化を施し、LDPC符号化後の信号に変調を施して本線信号の放送波を送信する送信装置において、前記放送波を受信する受信装置がLLR(対数尤度比)を計算する際の前記LLRの縮退に関する情報を縮退量情報として生成する縮退量情報生成部と、前記縮退量情報生成部により生成された前記縮退量情報に変調を施し、縮退量情報信号を生成する変調部と、前記本線信号と前記変調部により生成された前記縮退量情報信号とを合成する合成部と、前記合成部により合成された前記本線信号及び前記縮退量情報信号を含む前記放送波を送信する送信部と、を備え、前記縮退量情報生成部が、前記LLRを縮退させる処理を行わない縮退処理オフを示す前記縮退量情報を生成する、ことを特徴とする。
【0031】
また、請求項2の中継装置は、送信装置から送信された放送波を受信し、前記放送波の信号に伝送路等化を施し、伝送路等化後の信号にシンボル判定を施し、シンボル判定後の信号に再変調を施して本線信号の放送波を再送信する中継装置において、前記伝送路等化後の信号に基づいて、当該中継装置におけるC/N比を中継局受信C/Nとして推定する中継局受信C/N推定部と、所定の関数またはテーブルを用いて、前記中継局受信C/N推定部により推定された前記中継局受信C/Nに対応するデータを、前記放送波を受信する受信装置がLLR(対数尤度比)を計算する際の前記LLRの縮退に関する縮退量情報として生成する縮退量情報生成部と、前記縮退量情報生成部により生成された前記縮退量情報に変調を施し、縮退量情報信号を生成する変調部と、前記本線信号と前記変調部により生成された前記縮退量情報信号とを合成する合成部と、前記合成部により合成された前記本線信号及び前記縮退量情報信号を含む前記放送波を送信する送信部と、を備え、前記縮退量情報生成部が、前記中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記LLRを縮退させる度合いが低くなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記LLRを縮退させる度合いが高くなるように、前記縮退量情報を生成する、ことを特徴とする。
【0032】
また、請求項3の中継装置は、請求項2に記載の中継装置において、前記縮退量情報生成部が、前記受信装置が前記LLRを伝送路等化後の信号及び雑音分散調整値σ’2から計算する際の前記LLRを縮退させる処理として、前記伝送路等化後の信号から推定した雑音分散推定値σ2に雑音分散加算値σ2
addを加算して前記雑音分散調整値σ’2を求める加算方式を用いる場合に、前記中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記雑音分散加算値σ2
addが小さくなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記雑音分散加算値σ2
addが大きくなるように、前記雑音分散加算値σ2
addを前記縮退量情報として生成し、前記LLRを縮退させる処理として、前記伝送路等化後の信号から推定した前記雑音分散推定値σ2が雑音分散クリップ値σ2
clip以上のとき、前記雑音分散推定値σ2を前記雑音分散調整値σ’2とし、前記雑音分散推定値σ2が前記雑音分散クリップ値σ2
clip未満のとき、前記雑音分散クリップ値σ2
clipを前記雑音分散調整値σ’2とするクリップ処理を用いる場合に、前記中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記雑音分散クリップ値σ2
clipが小さくなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記雑音分散クリップ値σ2
clipが大きくなるように、前記雑音分散クリップ値σ2
clipを前記縮退量情報として生成する、ことを特徴とする。
【0033】
また、請求項4の中継装置は、請求項2または3に記載の中継装置において、前記中継局受信C/N推定部が、前記伝送路等化後の信号に基づいて、全体帯域の前記中継局受信C/N、またはセグメント毎の前記中継局受信C/Nを推定し、前記縮退量情報生成部が、前記所定の関数またはテーブルを用いて、前記中継局受信C/N推定部により推定された前記全体帯域の前記中継局受信C/Nに対応するデータを、前記全体帯域の前記縮退量情報として生成するか、または前記セグメント毎の前記中継局受信C/Nに対応するデータを、前記セグメント毎の前記縮退量情報として生成する、ことを特徴とする。
【0034】
また、請求項5の受信装置は、送信装置及び中継装置から送信された放送波をそれぞれ受信し、前記放送波の信号に伝送路等化を施し、伝送路等化後の信号からLLR(対数尤度比)を計算してLDPC復号を施し、放送信号を復元する受信装置において、前記放送波の信号から縮退量情報信号を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された前記縮退量情報信号に復調を施し、縮退量情報を求める復調部と、前記伝送路等化後の信号及び前記復調部により求めた前記縮退量情報に基づいて、前記LLRを計算するLLR処理部と、を備え、前記LLR処理部が、前記伝送路等化後の信号に基づいて、雑音分散推定値σ2を推定する雑音分散推定部と、前記縮退量情報に基づいて、前記雑音分散推定部により推定された前記雑音分散推定値σ2を調整し、雑音分散調整値σ’2を求める雑音分散調整部と、前記伝送路等化後の信号及び前記雑音分散調整部により求めた前記雑音分散調整値σ’2に基づいて、前記LLRを計算するLLR計算部と、を備え、前記送信装置から送信された前記放送波を受信した場合の前記縮退量情報を、前記LLRを縮退させる処理を行わない縮退処理オフを示すデータとし、前記中継装置から送信された前記放送波を受信した場合の前記縮退量情報を、前記中継装置におけるC/N比である中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記LLRを縮退させる度合いが低くなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記LLRを縮退させる度合いが高くなるような前記LLRを縮退させる度合いを示すデータとし、前記雑音分散調整部が、前記縮退量情報が前記縮退処理オフを示している場合、前記雑音分散推定値σ2を前記雑音分散調整値σ’2とし、前記縮退量情報が前記LLRを縮退させる度合いを示している場合、前記LLRを縮退させる度合いを反映した前記雑音分散調整値σ’2を求める、ことを特徴とする。
【0035】
また、請求項6の受信装置は、請求項5に記載の受信装置において、前記雑音分散調整部が、前記LLRを縮退させる処理として加算方式を用いるものとし、前記送信装置及び前記中継装置により雑音分散加算値σ2
addが前記縮退量情報として生成された場合、前記雑音分散推定値σ2に前記雑音分散加算値σ2
addを加算し、前記雑音分散調整値σ’2を求め、前記LLRを縮退させる処理としてクリップ方式を用いるものとし、前記送信装置及び前記中継装置により雑音分散クリップ値σ2
clipが前記縮退量情報として生成された場合、前記雑音分散推定値σ2が前記雑音分散クリップ値σ2
clip以上のとき、前記雑音分散推定値σ2を前記雑音分散調整値σ’2とし、前記雑音分散推定値σ2が前記雑音分散クリップ値σ2
clip未満のとき、前記雑音分散クリップ値σ2
clipを前記雑音分散調整値σ’2とする、ことを特徴とする。
【0036】
また、請求項7の送信装置は、放送信号にLDPC符号化を施し、LDPC符号化後の信号に変調を施して本線信号を生成し、自らの装置のTxID(識別信号)に変調を施して変調後のTxIDを生成し、前記本線信号及び前記変調後のTxIDを合成した放送波を送信する送信装置において、当該送信装置から送信された前記放送波を受信する中継装置により推定されたC/N比である中継局受信C/N及び前記中継装置のTxIDを、前記中継装置から受信する受信部と、当該送信装置から送信された前記放送波及び前記中継装置から再送信された放送波を受信する受信装置がLLR(対数尤度比)を計算する際の前記LLRを縮退させる処理を行わない縮退処理オフを示す縮退量情報を生成し、所定の関数またはテーブルを用いて、前記受信部により受信された前記中継局受信C/Nが高ければ高いほど、前記LLRを縮退させる度合いが低くなり、前記中継局受信C/Nが低ければ低いほど、前記LLRを縮退させる度合いが高くなるように、前記LLRを縮退させる度合いを示す前記縮退量情報を生成し、当該送信装置のTxID及び当該TxIDに対応する前記縮退処理オフを示す前記縮退量情報、並びに、前記中継装置のTxID及び当該TxIDに対応する前記LLRを縮退させる度合いを示す前記縮退量情報を含む対応テーブルを生成する対応テーブル生成部と、前記対応テーブル生成部により生成された前記対応テーブルを含む前記放送信号を生成する放送信号生成部と、前記放送信号生成部により生成された前記放送信号に前記LDPC符号化及び前記変調を施すことで生成された前記本線信号と、前記変調後のTxIDとを合成する合成部と、前記合成部により合成された前記本線信号及び前記TxIDを含む前記放送波を送信する送信部と、を備えたことを特徴とする。
【0037】
また、請求項8の送信装置は、請求項7に記載の送信装置において、前記放送信号生成部が、前記対応テーブルを、前記放送信号の固定受信及び部分受信のデータ放送領域に格納し、前記対応テーブルを含む前記放送信号を生成する、ことを特徴とする。
【0038】
また、請求項9の受信装置は、請求項7に記載の送信装置及び中継装置から送信された放送波をそれぞれ受信し、前記放送波の信号に伝送路等化を施し、伝送路等化後の信号からLLR(対数尤度比)を計算してLDPC復号を施し、放送信号を復元する受信装置において、前記放送波の信号から前記送信装置のTxID(識別信号)及び前記中継装置のTxIDを抽出する抽出部と、前記伝送路等化後の信号からLLRが計算されLDPC復号が施されることで復元された前記対応テーブルから、前記抽出部により抽出された前記TxIDに対応する前記縮退量情報を読み出す縮退量情報読出部と、前記伝送路等化後の信号及び前記縮退量情報読出部により読み出された前記縮退量情報に基づいて、前記LLRを計算するLLR処理部と、を備え、前記LLR処理部が、前記伝送路等化後の信号に基づいて、雑音分散推定値σ2を推定する雑音分散推定部と、前記縮退量情報読出部により読み出された前記縮退量情報に基づいて、前記雑音分散推定部により推定された前記雑音分散推定値σ2を調整し、雑音分散調整値σ’2を求める雑音分散調整部と、前記伝送路等化後の信号及び前記雑音分散調整部により求めた前記雑音分散調整値σ’2に基づいて、前記LLRを計算するLLR計算部と、を備え、前記雑音分散調整部が、前記縮退量情報が前記縮退処理オフを示している場合、前記雑音分散推定値σ2を前記雑音分散調整値σ’2とし、前記縮退量情報が前記LLRを縮退させる度合いを示している場合、前記LLRを縮退させる度合いを反映した前記雑音分散推定値σ2を求める、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
以上のように、本発明によれば、放送波を送信する送信装置と、送信装置から送信された放送波を受信し、シンボル判定して再送信する中継装置と、中継装置から再送信された放送波を受信する受信装置とを備えて構成される地上放送システムにおいて、中継装置が信号に雑音を付加することなく、受信装置がエリア受信C/Nの高い状況下で受信した再送信信号の誤りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】実施例1,2の送信装置、中継装置及び受信装置を備えて構成される地上放送システムの全体構成例を示す概略図である。
【
図2】実施例1の送信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施例1の中継装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】縮退量情報生成部の処理例を示すフローチャートである。
【
図5】中継局受信C/Nと雑音分散加算値σ
2
add(C/N換算値)との関係の一例を示す図である。
【
図6】中継局受信C/Nと雑音分散クリップ値σ
2
clip(C/N換算値)との関係の一例を示す図である。
【
図7】実施例1の受信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図8】LLR処理部の構成例を示すブロック図である。
【
図9】LLR処理部の処理例を示すフローチャートである。
【
図10】雑音分散調整部の第一構成例の処理(加算方式の場合)を説明する図である。
【
図11】雑音分散調整部の第一構成例により得られる雑音分散調整値σ’
2(加算方式の場合)を示す図である。
【
図12】雑音分散調整部の第二構成例の処理(クリップ方式の場合)を説明する図である。
【
図13】雑音分散調整部の第二構成例が入力する雑音分散推定値σ2と出力する雑音分散調整値σ’
2(クリップ方式の場合)の関係を示す図である。
【
図14】雑音分散調整部の第二構成例により得られる雑音分散調整値σ’
2(クリップ方式の場合)を示す図である。
【
図15】実施例2の送信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図16】対応テーブル生成部の処理例を示すフローチャートである。
【
図17】対応テーブルの例(加算方式の場合)を示す図である。
【
図18】対応テーブルの例(クリップ方式の場合)を示す図である。
【
図19】実施例2の中継装置の構成例を示すブロック図である。
【
図20】実施例2の受信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図21】縮退量情報読出部の処理例を示すフローチャートである。
【
図23】シミュレーション諸元(加算方式の場合)を示す図である。
【
図24】シミュレーションにより得られたBER特性(加算方式の場合)を示す図である。
【
図25】シミュレーション諸元(クリップ方式の場合)を示す図である。
【
図26】シミュレーションにより得られたBER特性(クリップ方式の場合)を示す図である。
【
図27】従来の送信装置、中継装置及び受信装置を備えて構成される地上放送システムの全体構成例を示すブロック図である。
【
図28】TxIDの送受信を想定した場合の地上放送システムの全体構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明の実施例1は、送信装置及び中継装置が縮退量情報を生成して送信し、受信装置が縮退量情報に基づいてLLRを縮退させることを特徴とする。また、本発明の実施例2は、送信装置が、当該送信装置及び中継装置毎の縮退量情報を含む対応テーブルを生成して送信し、受信装置が、対応テーブルから、受信信号の送信元のTxIDに対応する縮退量情報を読み出し、縮退量情報に基づいてLLRを縮退させることを特徴とする。
【0042】
ここで、LLRを縮退させるとは、LLRの絶対値を小さくすることをいう。LLRの絶対値が大きい場合、ビット値0または1の確率が高いことを意味し、LLRの絶対値が小さい場合、ビット値0または1の確率が低いことを意味する。
【0043】
LLRを縮退させることにより、LLRの絶対値が小さくなり、そのビット値0または1の確率が低くなる。このような曖昧な状態のLLRを用いてLDPC復号の処理が行われると、シンボル誤りが覆り、誤りが訂正される可能性がある。
【0044】
これにより、中継装置が雑音分散推定のために用いるデータに雑音を付加することなく、受信装置がエリア受信C/Nの高い状況下で受信した再送信信号の誤りを抑制することができる。
【0045】
〔地上放送システム〕
図1は、実施例1,2の送信装置、中継装置及び受信装置を備えて構成される地上放送システムの全体構成例を示す概略図である。この地上放送システムは、親局に設けられた送信装置1、中継局に設けられた中継装置2、及び一般家庭に設けられた受信装置3を備えて構成される。
【0046】
この地上放送システムは、
図28に示した地上放送システムによるTxIDを本線信号に多重する手法を応用したものである。実施例1では、送信装置及び中継装置から受信装置へ縮退量情報を伝送し、実施例2では、送信装置から受信装置へ、TxID及び縮退量情報からなる対応テーブルを伝送する。
【0047】
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。前述のとおり、実施例1は、送信装置及び中継装置が、縮退量情報を生成して送信し、受信装置が、縮退量情報に基づいてLLRを縮退させる例である。
【0048】
〔親局/送信装置1/実施例1〕
まず、実施例1における親局に設けられた送信装置1について説明する。
図2は、実施例1の送信装置1の構成例を示すブロック図である。この送信装置1-1は、LDPC符号化部10、変調部11,15、縮退量情報生成部12、TxID生成部13、多重情報生成部14及び合成部16を備えている。
【0049】
LDPC符号化部10は、放送信号を入力し、放送信号にLDPC符号化を施し、LDPC符号化後の信号を変調部11に出力する。変調部11は、LDPC符号化部10からLDPC符号化後の信号を入力し、LDPC符号化後の信号に変調を施し、変調後の信号を本線信号として合成部16に出力する。
【0050】
縮退量情報生成部12は、縮退処理を行わないこと(縮退処理オフ)を示す予め設定された縮退量情報(縮退方式が加算方式の場合は雑音分散加算値σ2
add=0、クリップ方式の場合は雑音分散クリップ値σ2
clip=0)を親局の縮退量情報として生成する。そして、縮退量情報生成部12は、縮退量情報を多重情報生成部14に出力する。縮退量情報は、後述する受信装置3-1がLLRを計算する際のLLRの縮退に関する情報である。
【0051】
ここで、縮退方式が加算方式であるか、またはクリップ方式であるかについては、地上放送システムにおいて予め設定されているものとする。雑音分散加算値σ2
add=0または雑音分散クリップ値σ2
clip=0は、後述する受信装置3-1において、LLRを算出する際に雑音分散を調整しない縮退処理オフを示している。これは、放送波が送信装置1-1から後述する受信装置3-1へ直接送信される場合には、後述する中継装置2-1によるシンボル判定が行われないため、シンボル誤りが生じることがなく、受信装置3-1において、LLRを縮退させる必要がないからである。
【0052】
後述する受信装置3-1は、縮退方式が加算方式の場合に雑音分散加算値σ2
add=0のとき、縮退処理オフの指示を受けたことを認識することができ、雑音分散加算値σ2
add≠0のとき、縮退処理を行う指示を受けたことを認識することができる。また、後述する受信装置3-1は、縮退方式がクリップ方式の場合に雑音分散クリップ値σ2
clip=0のとき、縮退処理オフの指示を受けたことを認識することができ、雑音分散クリップ値σ2
clip≠0のとき、縮退処理を行う指示を受けたことを認識することができる。
【0053】
TxID生成部13は、予め設定された自局(親局固有)の識別信号をTxIDとして生成し、TxIDを多重情報生成部14に出力する。
【0054】
多重情報生成部14は、縮退量情報生成部12から縮退量情報を入力すると共に、TxID生成部13からTxIDを入力し、縮退量情報及びTxIDを多重することでビット系列を生成する。そして、多重情報生成部14は、ビット系列を多重情報として変調部15に出力する。
【0055】
変調部15は、多重情報生成部14から多重情報を入力し、多重情報に変調を施し、変調後の多重情報を多重情報信号として合成部16に出力する。例えば変調部15は、多重情報をGold信号のような相関の高い系列で符号化し、符号化後の多重情報にBPSK変調を施して減衰させることで、多重情報信号を生成する。
【0056】
合成部16は、変調部11から本線信号を入力すると共に、変調部15から多重情報信号を入力し、本線信号及び多重情報信号を多重することで合成し、合成した本線信号及び多重情報信号を、図示しない送信部に出力する。そして、図示しない送信部は、合成部16により合成された本線信号及び多重情報信号(縮退量情報及び当該送信装置1-1のTxID)を含む放送波を送信する。
【0057】
これにより、送信装置1-1から、本線信号、縮退処理オフを示す縮退量情報及び当該送信装置1-1のTxIDが送信される。
【0058】
また、後述する受信装置3-1は、送信装置1-1から縮退処理オフを示す縮退量情報を受信することができ、送信装置1-1から受信した信号について、縮退処理を行わないようにすることができる。
【0059】
尚、送信装置1-1は、多重情報生成部14が縮退量情報及びTxIDを多重し、合成部16が本線信号及び多重情報信号を合成し、図示しない送信部が本線信号及び多重情報信号を含む放送波を送信するようにした。これに対し、送信装置1-1は、TxIDを送信しなくてもよい。この場合、送信装置1-1は、TxID生成部13及び多重情報生成部14を備えておらず、変調部15は、縮退量情報生成部12から縮退量情報を入力して変調を施し、変調後の縮退量情報を縮退量情報信号として生成する。そして、合成部16は、本線信号及び縮退量情報信号を合成し、図示しない送信部は、本線信号及び縮退量情報信号を含む放送波を送信する。
【0060】
〔中継局/中継装置2/実施例1〕
次に、実施例1における中継局に設けられた中継装置2について説明する。
図3は、実施例1の中継装置2の構成例を示すブロック図である。この中継装置2-1は、伝送路等化部20、シンボル判定部21、再変調部22、中継局受信C/N推定部23、縮退量情報生成部24、TxID生成部25、多重情報生成部26、変調部27及び合成部28を備えている。
【0061】
中継装置2-1は、送信装置1-1から送信された放送波を受信する。伝送路等化部20は、受信した放送波の信号を入力し、放送波の信号に伝送路等化を施し、伝送路等化後の信号を中継局受信C/N推定部23及びシンボル判定部21に出力する。
【0062】
シンボル判定部21は、伝送路等化部20から伝送路等化後の信号を入力し、伝送路等化後の信号にシンボル判定を施し、シンボル判定後の信号を再変調部22に出力する。再変調部22は、シンボル判定部21からシンボル判定後の信号を入力し、シンボル判定後の信号に再変調を施す。
【0063】
ここで、伝送路等化部20から再変調部22までの過程において、送信装置1-1から送信された放送波の信号に含まれる多重情報信号(縮退量情報及びTxID)が除去され、再変調後の信号が本線信号となる。再変調部22は、再変調後の信号を本線信号として合成部28に出力する。
【0064】
中継局受信C/N推定部23は、伝送路等化部20から伝送路等化後の信号を入力し、伝送路等化後の信号に基づいて、中継局受信C/Nを推定する。そして、中継局受信C/N推定部23は、中継局受信C/Nを縮退量情報生成部24に出力する。
【0065】
図4は、縮退量情報生成部24の処理例を示すフローチャートである。縮退量情報生成部24は、中継局受信C/N推定部23から中継局受信C/Nを入力する(ステップS401)。そして、縮退量情報生成部24は、所定の関数を用いて、中継局受信C/Nから縮退量情報(縮退方式が加算方式の場合は雑音分散加算値σ
2
add、クリップ方式の場合は雑音分散クリップ値σ
2
clip)を求める(ステップS402)。
【0066】
ここで、所定の関数は、縮退方式が加算方式の場合、中継局受信C/Nが高ければ高いほど、後述する受信装置3-1が計算するLLRを縮退させる程度を低くするために、雑音分散加算値σ2
addとして小さい値を出力し、中継局受信C/Nが低ければ低いほど、LLRを縮退させる程度を高くするために、雑音分散加算値σ2
addとして大きい値を出力する(負の相関特性を有する)関数である。
【0067】
また、所定の関数は、縮退方式がクリップ方式の場合、中継局受信C/Nが高ければ高いほど、LLRを縮退させる程度を低くするために、雑音分散クリップ値σ2
clipとして小さい値を出力し、中継局受信C/Nが低ければ低いほど、LLRを縮退させる程度を高くするために、雑音分散クリップ値σ2
clipとして大きい値を出力する(負の相関特性を有する)関数である。
【0068】
縮退量情報生成部24は、縮退量情報を多重情報生成部26に出力する(ステップS403)。
【0069】
尚、縮退量情報生成部24は、予め設定されたテーブルを用いて、中継局受信C/Nに対応する縮退量情報を読み出し、縮退量情報を出力するようにしてもよい。テーブルには、中継局受信C/N及び当該中継局受信C/Nに対応する縮退量情報が格納されており、前述の所定の関数と同じ負の相関特性を有する。
【0070】
また、縮退量情報生成部24は、全体帯域で一律の値の縮退量情報を生成するようにしてもよい。また、縮退量情報生成部24は、セグメント毎の縮退量情報を生成するようにしてもよい。この場合、中継局受信C/N推定部23は、セグメント毎の中継局受信C/Nを推定し、縮退量情報生成部24は、セグメント毎に、所定の関数または予め設定されたテーブルを用いて、中継局受信C/Nから縮退量情報を求める。このセグメント毎の処理は、上位局受信にマルチパスが含まれる場合に有効である。
【0071】
また、縮退量情報生成部24は、所定数のセグメントを単位として、所定数のセグメント毎の縮退量情報を生成するようにしてもよいし、キャリア毎の縮退量情報を生成するようにしてもよい。この場合、中継局受信C/N推定部23は、所定数のセグメント毎またはキャリア毎の中継局受信C/Nを推定する。そして、縮退量情報生成部24は、所定数のセグメント毎またはキャリア毎に、所定の関数または予め設定されたテーブルを用いて、中継局受信C/Nから縮退量情報を求める。
【0072】
図5は、中継局受信C/Nと雑音分散加算値σ
2
add(C/N換算値)との関係の一例を示す図である。横軸は中継局受信C/N[dB]を示し、縦軸は雑音分散加算値σ
2
add(C/N換算値)[dB]を示す。
【0073】
図5に示すように、両者の関係は、中継局受信C/Nが高くなればなるほど、雑音分散加算値σ
2
add(C/N換算値)が大きくなり、中継局受信C/Nが低くなればなるほど、雑音分散加算値σ
2
add(C/N換算値)が小さくなる特性(正の相関特性)を有している。
【0074】
つまり、縮退量情報生成部24にて用いる関数(縮退方式が加算方式の場合)としては、前述のとおり、中継局受信C/Nが高ければ高いほど、雑音分散加算値σ2
addとして小さい値を出力し、中継局受信C/Nが低ければ低いほど、雑音分散加算値σ2
addとして大きい値を出力する(負の相関特性を有する)関数となる。
【0075】
なぜならば、中継局受信C/Nが低い場合、シンボル誤りが生じ易くなり、雑音分散加算値σ2
addとして大きい値を設定することで、エリア受信C/Nが高い場合に、LLRを計算する際に用いる雑音分散調整値σ’2を大きい値とすることができ、LLRを縮退させることができるからである。
【0076】
尚、縮退量情報生成部24が予め設定されたテーブルを用いる場合も同様であり、前述の関数の特性が反映されたテーブルが用いられる。また、この関数は、キャリア変調方式及び符号化率等の伝送パラメータ等により変化する。これは、伝送パラメータ等により、後述する受信装置3-1において、エリア受信C/Nが高い場合の誤りの出方が変化し、また、雑音分散加算値σ2
addも変化するからである。
【0077】
図6は、中継局受信C/Nと雑音分散クリップ値σ
2
clip(C/N換算値)との関係の一例を示す図である。横軸は中継局受信C/N[dB]を示し、縦軸は雑音分散クリップ値σ
2
clip(C/N換算値)[dB]を示す。
【0078】
図6に示すように、両者の関係は、中継局受信C/Nが高くなればなるほど、雑音分散クリップ値σ
2
clip(C/N換算値)が大きくなり、中継局受信C/Nが低くなればなるほど、雑音分散クリップ値σ
2
clip(C/N換算値)が小さくなる特性(正の相関特性)を有している。
【0079】
つまり、縮退量情報生成部24にて用いる関数(縮退方式がクリップ方式の場合)としては、前述のとおり、中継局受信C/Nが高ければ高いほど、雑音分散クリップ値σ2
clipとして小さい値を出力し、中継局受信C/Nが低ければ低いほど、雑音分散クリップ値σ2
clipとして大きい値を出力する(負の相関特性を有する)関数となる。
【0080】
なぜならば、中継局受信C/Nが低い場合、シンボル誤りが生じ易くなり、雑音分散クリップ値σ2
clipとして大きい値を設定することで、エリア受信C/Nが高い場合に、雑音分散推定値σ2をクリップし易くし、LLRを計算する際に用いる雑音分散調整値σ’2をクリップ前に比べて大きい値とすることができ、LLRを縮退させることができるからである。
【0081】
尚、縮退量情報生成部24が予め設定されたテーブルを用いる場合も同様であり、前述の関数の特性が反映されたテーブルが用いられる。また、この関数は、縮退方式が加算方式の場合と同様に、キャリア変調方式及び符号化率等の伝送パラメータ等により変化する。
【0082】
図3に戻って、TxID生成部25は、予め設定された自局(中継局固有)の識別信号をTxIDとして生成し、TxIDを多重情報生成部26に出力する。
【0083】
多重情報生成部26は、縮退量情報生成部24から縮退量情報を入力すると共に、TxID生成部25からTxIDを入力し、縮退量情報及びTxIDを多重することでビット系列を生成する。そして、多重情報生成部26は、ビット系列を多重情報として変調部27に出力する。
【0084】
変調部27は、多重情報生成部26から多重情報を入力し、多重情報に変調を施し、変調後の多重情報を多重情報信号として合成部28に出力する。例えば変調部27は、
図2に示した変調部15と同様に、多重情報をGold信号のような相関の高い系列で符号化し、符号化後の多重情報にBPSK変調を施して減衰させることで、多重情報信号を生成する。
【0085】
合成部28は、再変調部22から本線信号を入力すると共に、変調部27から多重情報信号を入力し、本線信号及び多重情報信号を多重することで合成し、合成した本線信号及び多重情報信号を、図示しない送信部に出力する。そして、図示しない送信部は、合成部28により合成された本線信号及び多重情報信号(縮退量情報及び当該中継装置2-1のTxID)を含む放送波を送信する。
【0086】
これにより、中継装置2-1から、本線信号、縮退量情報(雑音分散加算値σ2
addまたは雑音分散クリップ値σ2
clip)及び当該中継装置2-1のTxIDが送信される。
【0087】
また、後述する受信装置3-1は、中継装置2-1から縮退量情報を受信することができ、中継装置2-1から受信した信号について、縮退量情報に基づいた縮退処理を行うことができる。
【0088】
尚、中継装置2-1は、多重情報生成部26が縮退量情報及びTxIDを多重し、合成部28が本線信号及び多重情報信号を合成し、図示しない送信部が本線信号及び多重情報信号を含む放送波を送信するようにした。これに対し、中継装置2-1は、TxIDを送信しなくてもよい。この場合、中継装置2-1は、TxID生成部25及び多重情報生成部26を備えておらず、変調部27は、縮退量情報生成部24から縮退量情報を入力して変調を施し、変調後の縮退量情報を縮退量情報信号として生成する。そして、合成部28は、本線信号及び縮退量情報信号を合成し、図示しない送信部は、本線信号及び縮退量情報信号を含む放送波を送信する。
【0089】
〔受信装置/受信装置3/実施例1〕
次に、実施例1における一般家庭に設けられた受信装置3について説明する。
図7は、実施例1の受信装置3の構成例を示すブロック図である。この受信装置3-1は、伝送路等化部30、多重情報抽出部31、復調部32、LLR処理部33及びLDPC復号部34を備えている。
【0090】
受信装置3-1は、送信装置1-1及び中継装置2-1から送信された放送波をそれぞれ受信する。伝送路等化部30は、受信した放送波の信号を入力し、放送波の信号に伝送路等化を施し、伝送路等化後の信号をLLR処理部33に出力する。
【0091】
多重情報抽出部31は、受信した放送波の信号を入力し、放送波の信号から多重情報信号を抽出し、多重情報信号を復調部32に出力する。例えば多重情報抽出部31は、
図2及び
図3に示した変調部15,27にて用いたGold信号のような相関の高い系列を用いて、放送波の信号との間で相関を順次とり、放送波の信号に多重されている多重情報信号を抽出する。
【0092】
復調部32は、多重情報抽出部31から多重情報信号を入力し、多重情報信号に対し、
図2及び
図3に示した変調部15,27に対応する復調を施し、復調後の信号である多重情報から縮退量情報及びTxIDを分離する。そして、復調部32は、TxIDを出力すると共に、縮退量情報をLLR処理部33に出力する。
【0093】
尚、放送波にTxIDが含まれていない場合、受信装置3-1は、多重情報抽出部31の代わりに縮退量情報抽出部を備え、縮退量情報抽出部は、受信した放送波の信号から縮退量情報信号を抽出し、復調部32は、縮退量情報信号に復調を施すことで、縮退量情報を求める。
【0094】
LLR処理部33は、伝送路等化部30から伝送路等化後の信号を入力すると共に、復調部32から縮退量情報を入力し、伝送路等化後の信号に基づいて雑音分散推定値σ2を推定する。そして、LLR処理部33は、縮退量情報に基づいて雑音分散推定値σ2を調整し、雑音分散調整値σ’2を求める。そして、LLR処理部33は、伝送路等化後の信号及び雑音分散調整値σ’2に基づいてLLRを計算し、LLRをLDPC復号部34に出力する。
【0095】
ここで、縮退量情報が送信装置1-1から送信された情報である場合、当該縮退量情報は、縮退処理オフを示す情報(縮退方式が加算方式の場合は雑音分散加算値σ2
add=0、クリップ方式の場合は雑音分散クリップ値σ2
clip=0)である。この場合、LLR処理部33において縮退処理は行われない。一方、縮退量情報が中継装置2-1から送信された情報である場合、当該縮退量情報は、加算方式の場合は雑音分散加算値σ2
add≠0、クリップ方式の場合は雑音分散クリップ値σ2
clip≠0である。この場合、LLR処理部33において縮退処理が行われる。LLR処理部33の詳細については後述する。
【0096】
LDPC復号部34は、LLR処理部33からLLRを入力し、LLRにLDPC復号を施し、元の放送信号を復元して出力する。
【0097】
(LLR処理部33)
次に、
図7に示したLLR処理部33について詳細に説明する。
図8は、LLR処理部33の構成例を示すブロック図であり、
図9は、LLR処理部33の処理例を示すフローチャートである。このLLR処理部33は、雑音分散推定部40、雑音分散調整部41及びLLR計算部42を備えている。
【0098】
LLR処理部33は、伝送路等化部30から伝送路等化後の信号xI,xQを入力すると共に、復調部32から縮退量情報(雑音分散加算値σ2
addまたは雑音分散クリップ値σ2
clip)を入力する(ステップS901)。xIは受信シンボルのI軸成分であり、xQは受信シンボルのQ軸成分である。
【0099】
雑音分散推定部40は、伝送路等化後の信号xI,xQを入力し、伝送路等化後の信号xI,xQに基づいて、雑音分散推定値σ2を求める(ステップS902)。そして、雑音分散推定部40は、雑音分散推定値σ2を雑音分散調整部41に出力する。
【0100】
雑音分散調整部41は、雑音分散推定部40から雑音分散推定値σ2を入力すると共に、縮退量情報を入力し、雑音分散推定値σ2及び縮退量情報に基づいて雑音分散調整値σ’2を求める(ステップS903)。そして、雑音分散調整部41は、雑音分散調整値σ’2をLLR計算部42に出力する。雑音分散調整部41の詳細については後述する。
【0101】
LLR計算部42は、伝送路等化後の信号x
I,x
Qを入力すると共に、雑音分散調整部41から雑音分散調整値σ’
2を入力する。そして、LLR計算部42は、以下の式を用いて、伝送路等化後の信号x
I,x
Q及び雑音分散調整値σ’
2に基づきλ
k(LLR)を求める(ステップS904)。LLR計算部42は、λ
kをLDPC復号部34に出力する(ステップS905)。
【数1】
【0102】
前記式(1)は、伝送路等化後の信号xI,xQである受信点とコンスタレーションの規定点との間のユークリッド距離、及び雑音分散(雑音分散調整値σ’2)からλkを計算する式である。
【0103】
λkは、キャリア変調多値数をM=2Vとしたときのkビット目の対数尤度比である。キャリア変調多値数をM=2V、規定信号点配置をsm(0≦m<2V)、そのI,Q座標をsm,I,sm,Q、受信シンボルの実部をxI、虚部をxQ、雑音分散調整値をσ’2とする。Sk,0,Sk,1は、それぞれk番目のビットが0,1を表す信号点の集合である。
【0104】
(雑音分散調整部41)
次に、
図8に示した雑音分散調整部41及び
図9に示したステップS903の処理について詳細に説明する。
【0105】
(縮退方式が加算方式の場合)
図10は、雑音分散調整部41の第一構成例の処理(加算方式の場合)を説明する図である。加算方式を適用する雑音分散調整部41-1は、以下の式を用いて、雑音分散推定値σ
2に縮退量情報の雑音分散加算値σ
2
addを加算し、雑音分散調整値σ’
2を求める。
【数2】
【0106】
図11は、雑音分散調整部41の第一構成例により得られる雑音分散調整値σ’
2(加算方式の場合)を示す図である。
図11において、横軸はエリア受信C/N[dB]を示し、縦軸は雑音分散調整値σ’
2を示す。
【0107】
図11から、エリア受信C/N及び雑音分散調整値σ’
2の対応関係は、エリア受信C/Nが高くなればなるほど、雑音分散調整値σ’
2が小さくなり、エリア受信C/Nが低くなればなるほど、雑音分散調整値σ’
2が大きくなる特性(負の相関特性)を有することがわかる。
【0108】
この負の相関特性は、雑音加算なし(調整なし)の場合、すなわち縮退量情報の雑音分散加算値σ2
add=0の場合に、その度合いが最も大きい。つまり、この負の相関特性は、雑音分散加算値σ2
addが小さいほど、その度合いは大きくなり、雑音分散加算値σ2
addが大きいほど、その度合いは小さくなる。
【0109】
雑音加算なし(調整なし)、すなわち縮退処理オフの場合、雑音分散加算値σ2
add=0であり、エリア受信C/Nが高いときに、雑音分散調整値σ’2が小さくなり、初期LLRは高い値となる。
【0110】
一方、雑音分散加算値σ
2
add≠0の場合、
図10に示した雑音分散調整部41-1により雑音分散が調整されるため、エリア受信C/Nが高いときに、雑音加算なしに比べて雑音分散調整値σ’
2が大きくなり、初期LLRを縮退させることができる。
【0111】
これにより、受信信号の全てのビットの初期LLRが縮退することで、後段のLDPC復号部34において、中継装置2-1により誤判定されたビットを訂正することができる。
【0112】
(縮退方式がクリップ方式の場合)
図12は、雑音分散調整部41の第二構成例の処理(クリップ方式の場合)を説明する図であり、
図13は、雑音分散調整部41の第二構成例が入力する雑音分散推定値σ2と出力する雑音分散調整値σ’
2(クリップ方式の場合)の関係を示す図である。
図13において、横軸は雑音分散推定値σ
2を示し、縦軸は雑音分散調整値σ’
2を示す。
【0113】
クリップ方式を適用する雑音分散調整部41-2は、
図13に示すように、以下の式を用いて、雑音分散推定値σ
2が縮退量情報の雑音分散クリップ値σ
2
clip以上の場合、雑音分散推定値σ
2をそのまま雑音分散調整値σ’
2に設定する。一方、雑音分散調整部41-2は、雑音分散推定値σ
2が雑音分散クリップ値σ
2
clip未満の場合、雑音分散推定値σ
2にクリップ処理を施し、雑音分散クリップ値σ
2
clipを雑音分散調整値σ’
2に設定する。
【数3】
【0114】
図14は、雑音分散調整部41の第二構成例により得られる雑音分散調整値σ’
2(クリップ方式の場合)を示す図である。
図14において、横軸はエリア受信C/N[dB]を示し、縦軸は雑音分散調整値σ’
2を示す。
【0115】
図14から、エリア受信C/N及び雑音分散調整値σ’
2の対応関係は、エリア受信C/Nが高くなればなるほど、雑音分散調整値σ’
2が小さくなり、エリア受信C/Nが低くなればなるほど、雑音分散調整値σ’
2が大きくなる特性(負の相関特性)を有することがわかる。
【0116】
この負の相関特性は、雑音加算なし(調整なし)、すなわち縮退処理オフの場合、雑音分散クリップ値σ2
clip=0であり、クリップ処理が行われていないエリア受信C/Nの全範囲において表れている。
【0117】
また、この負の相関特性は、雑音分散クリップ値σ2
clip=1.00×10-3の場合に、クリップ位置を基準にしてクリップ処理が行われていないエリア受信C/Nが低い範囲において表れている。また、クリップ位置を基準にしてクリップ処理が行われているエリア受信C/Nの高い範囲においては、雑音分散調整値σ’2は一定値である。
【0118】
雑音加算なし(調整なし)の場合、すなわち雑音分散クリップ値σ2
clip=0の場合、エリア受信C/Nが高いときに、雑音分散調整値σ’2が小さくなり、初期LLRは高い値となる。
【0119】
一方、雑音分散クリップ値σ
2
clip≠0の場合、
図12に示した雑音分散調整部41-2により雑音分散が調整されるため、エリア受信C/Nが高いときに、雑音加算なしに比べて雑音分散調整値σ’
2が大きくなり(雑音分散調整値σ’
2が一定値となり)、初期LLRを縮退させることができる。
【0120】
つまり、雑音分散クリップ値σ2
clipが適切に生成されることで、エリア受信C/Nが所要C/N付近では初期LLRを縮退させず、誤りが発生し得るエリア受信C/Nが高い範囲では初期LLRを縮退させることができる。これにより、受信信号の全てのビットの初期LLRが縮退することで、LDPC復号部34において、中継装置2-1により誤判定されたビットを訂正することができる。
【0121】
以上のように、実施例1の送信装置1-1によれば、縮退量情報生成部12は、縮退処理オフを示す予め設定された縮退量情報(縮退方式が加算方式の場合は雑音分散加算値σ2
add=0、クリップ方式の場合は雑音分散クリップ値σ2
clip=0)を親局の縮退量情報として生成する。
【0122】
多重情報生成部14は、縮退量情報及び自局のTxIDを多重して多重情報を生成し、変調部15は、多重情報を変調して多重情報信号を生成する。
【0123】
合成部16は、LDPC符号化部10及び変調部11により生成された本線信号及び多重情報信号を多重することで合成し、図示しない送信部は、合成部16により合成された本線信号及び多重情報信号(縮退量情報及び当該送信装置1-1のTxID)を含む放送波を送信する。
【0124】
また、実施例1の中継装置2-1によれば、送信装置1-1から放送波を受信すると、中継局受信C/N推定部23は、伝送路等化部20により等化された信号に基づいて中継局受信C/Nを推定する。縮退量情報生成部24は、所定の関数を用いて、中継局受信C/Nから縮退量情報(縮退方式が加算方式の場合は雑音分散加算値σ2
add、クリップ方式の場合は雑音分散クリップ値σ2
clip)を求める。
【0125】
これにより、中継局受信C/Nが高ければ高いほど、すなわちシンボル誤りが生じ難い場合に、小さい値の雑音分散加算値σ2
addまたは雑音分散クリップ値σ2
clipが求められる。一方、中継局受信C/Nが低ければ低いほど、すなわちシンボル誤りが生じ易い場合に、大きい値の雑音分散加算値σ2
addまたは雑音分散クリップ値σ2
clipが求められる。
【0126】
多重情報生成部26は、縮退量情報及び自局のTxIDを多重して多重情報を生成し、変調部27は、多重情報を変調して多重情報信号を生成する。
【0127】
合成部28は、シンボル判定部21及び再変調部22により生成された本線信号及び多重情報信号を多重することで合成する。そして、中継装置2-1は、本線信号及び多重情報信号(縮退量情報及び当該中継装置2-1のTxID)を含む放送波を送信する。
【0128】
また、実施例1の受信装置3-1によれば、多重情報抽出部31は、受信した放送波の信号から多重情報信号を抽出し、復調部32は、多重情報信号に復調を施し、復調後の信号である多重情報から縮退量情報及びTxIDを分離する。
【0129】
LLR処理部33は、伝送路等化部30により等化された信号から雑音分散推定値σ2を推定し、縮退量情報に基づいて雑音分散推定値σ2を調整し、雑音分散調整値σ’2を求め、伝送路等化後の信号及び雑音分散調整値σ’2に基づいてLLRを計算する。
【0130】
ここで、LLR処理部33は、縮退方式が加算方式の場合、雑音分散推定値σ2に縮退量情報の雑音分散加算値σ2
addを加算し、雑音分散調整値σ’2を求める。一方、LLR処理部33は、縮退方式がクリップ方式の場合、雑音分散推定値σ2が縮退量情報の雑音分散クリップ値σ2
clip以上の場合、雑音分散推定値σ2をそのまま雑音分散調整値σ’2に設定し、雑音分散推定値σ2が雑音分散クリップ値σ2
clip未満の場合、雑音分散推定値σ2にクリップ処理を施し、雑音分散クリップ値σ2
clipを雑音分散調整値σ’2に設定する
【0131】
LDPC復号部34は、LLRにLDPC復号を施し、元の放送信号を復元して出力する。
【0132】
これにより、中継局受信C/Nが低く、かつエリア受信C/Nが高い状況下において、雑音分散調整値σ’2を大きい値とすることができ、LLRを縮退させることができる。従来は、中継局受信C/Nを受信装置3におけるLLRに反映することができず、中継局受信C/Nが低いためシンボル誤りが生じた場合に、エリア受信C/Nが高いときは、受信装置3において、その誤りを訂正することができなかった。
【0133】
本発明の実施形態では、中継局受信C/Nを受信装置3におけるLLRに反映し、LLRを縮退させることにより、LLRの絶対値が小さくなり、そのビット値0または1の確率が低くなる。このような曖昧な状態のLLRを用いてLDPC復号の処理が行われると、シンボル誤りが覆り、誤りが訂正される可能性がある。
【0134】
したがって、中継装置2-1が信号に雑音を付加することなく、受信装置3-1がエリア受信C/Nの高い状況下で受信した再送信信号の誤りを抑制することができる。
【0135】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。前述のとおり、実施例2は、送信装置が、当該送信装置及び中継装置毎の縮退量情報を含む対応テーブルを生成して送信し、受信装置が、対応テーブルから、受信信号の送信元のTxIDに対応する縮退量情報を読み出し、縮退量情報に基づいてLLRを縮退させる例である。
【0136】
〔親局/送信装置1/実施例2〕
まず、実施例2における親局に設けられた送信装置1について説明する。
図15は、実施例2の送信装置1の構成例を示すブロック図である。この送信装置1-2は、LDPC符号化部10、変調部11,15、TxID生成部13、合成部16及び対応テーブル生成部17を備えている。
【0137】
LDPC符号化部10、変調部11及びTxID生成部13は、
図2に示したLDPC符号化部10、変調部11及びTxID生成部13と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0138】
変調部15は、TxID生成部13からTxIDを入力し、TxIDに変調を施し、変調後のTxIDを合成部16に出力する。例えば変調部15は、TxIDをGold信号のような相関の高い系列で符号化し、符号化後のTxIDにBPSK変調を施して減衰させることで、変調後のTxIDを生成する。
【0139】
送信装置1-2に備えた図示しない受信部は、後述する中継装置2-2から、専用回線等を介して送信された中継装置2-2の中継局受信C/N及びTxIDを受信する。そして、受信部は、中継装置2-2の中継局受信C/N及びTxIDを対応テーブル生成部17に出力する。
【0140】
図16は、対応テーブル生成部17の処理例を示すフローチャートである。対応テーブル生成部17は、図示しない受信部から、中継装置2-2の中継局受信C/N及びTxIDを入力する(ステップS1601)。
【0141】
対応テーブル生成部17は、
図2に示した縮退量情報生成部12の処理と同様に、縮退処理オフを示す予め設定された縮退量情報(雑音分散加算値σ
2
add=0または雑音分散クリップ値σ
2
clip=0)を親局の縮退量情報として生成する。
【0142】
対応テーブル生成部17は、
図3及び
図4に示した縮退量情報生成部24の処理と同様に、所定の関数を用いて、中継局受信C/Nから縮退量情報(雑音分散加算値σ
2
addまたは雑音分散クリップ値σ
2
clip)を求める(ステップS1602)。
【0143】
対応テーブル生成部17は、予め設定された自局(親局固有、送信装置1-2)のTxID及び親局の縮退量情報、並びに中継装置2-2のTxID及びステップS1602にて生成した縮退量情報から、対応テーブルを生成する(ステップS1603)。そして、対応テーブル生成部17は、対応テーブルを、図示しない放送信号生成部に出力する(ステップS1604)。
【0144】
図17は、対応テーブルの例(加算方式の場合)を示す図である。加算方式の場合の対応テーブルは、TxID及び縮退量情報の雑音分散加算値σ
2
addから構成される。
【0145】
図17の対応テーブルには、親局である送信装置1-2のTxID及び当該TxIDに対応する縮退処理オフを示す雑音分散加算値σ
2
add=0、第1の中継装置2-2から受信した当該中継装置2-2のTxID及び当該TxIDに対応するステップS1602にて求めた雑音分散加算値σ
2
add=1.0×10
-3、並びに、第2の中継装置2-2から受信した当該中継装置2-2のTxID及び当該TxIDに対応するステップS1602にて求めた雑音分散加算値σ
2
add=2.5×10
-3等が格納されている。
【0146】
中継装置2-2毎(中継局毎)のTxID及び雑音分散加算値σ2
addは、当該送信装置1-2が受信した中継局受信C/N及びTxIDの送信元である中継装置2-2毎のデータである。
【0147】
図18は、対応テーブルの例(クリップ方式の場合)を示す図である。クリップ方式の場合の対応テーブルは、TxID及び縮退量情報の雑音分散クリップ値σ
2
clipから構成される。
【0148】
図18の対応テーブルには、親局である送信装置1-2のTxID及び当該TxIDに対応する縮退処理オフを示す雑音分散クリップ値σ
2
clip=0、第1の中継装置2-2から受信した当該中継装置2-2のTxID及び当該TxIDに対応するステップS1602にて求めた雑音分散クリップ値σ
2
clip=2.0×10
-3、並びに、第2の中継装置2-2から受信した当該中継装置2-2のTxID及び当該TxIDに対応するステップS1602にて求めた雑音分散クリップ値σ
2
clip=8.0×10
-3等が格納されている。
【0149】
中継装置2-2毎(中継局毎)のTxID及び雑音分散クリップ値σ2
clipは、当該送信装置1-2が受信した中継局受信C/N及びTxIDの送信元である中継装置2-2毎のデータである。
【0150】
尚、対応テーブル生成部17は、実施例1の場合と同様に、所定の関数の代わりに予め設定されたテーブルを用いて、中継局受信C/Nに対応する縮退量情報を読み出すことで、縮退量情報を求めるようにしてもよい。
【0151】
また、対応テーブル生成部17は、
図3に示した縮退量情報生成部24と同様に、全体帯域で一律の値の縮退量情報を生成するようにしてもよく、セグメント毎の縮退量情報を生成するようにしてもよい。また、対応テーブル生成部17は、所定数のセグメント毎の縮退量情報を生成するようにしてもよいし、キャリア毎の縮退量情報を生成するようにしてもよい。
【0152】
図15に戻って、図示しない放送信号生成部は、対応テーブル生成部17から対応テーブルを入力し、対応テーブルを放送信号に格納することで対応テーブルを含む放送信号を生成し、放送信号をLDPC符号化部10に出力する。例えば放送信号生成部は、対応テーブルを、放送波によるソフトウェアアップデートの用途に用いるES(Engineering Service:エンジニアリングサービス)、固定受信及び部分受信のデータ放送領域、またはLLchに格納することで、対応テーブルを含む放送信号を生成する。
【0153】
対応テーブルを含む放送信号は、LDPC符号化部10によりLDPC符号化され、変調部11により変調されることで、対応テーブルを含む本線信号が生成される。
【0154】
合成部16は、変調部11から対応テーブルを含む本線信号を入力すると共に、変調部15から変調後のTxIDを入力し、本線信号及び変調後のTxIDを多重することで合成する。そして、図示しない送信部は、合成部16により合成された本線信号及び当該送信装置1-2のTxIDを含む放送波を送信する。
【0155】
これにより、送信装置1-2から、対応テーブルを含む本線信号、及び当該送信装置1-2のTxIDが送信される。対応テーブルは、
図17及び
図18に示したとおり、当該送信装置1-2のTxID及び縮退処理オフを示す縮退量情報、並びに中継装置2-2毎のTxID及び所定の関数を用いて求めた縮退量情報からなる。
【0156】
また、後述する受信装置3-2は、送信装置1-2から当該送信装置1-2のTxID及び対応テーブルを受信することができる。受信装置3-2は、受信したTxIDから、受信信号が当該送信装置1-2から送信された信号であることを判別することができる。さらに、受信装置3-2は、受信した対応テーブルを用いて、受信したTxIDに対応する縮退量情報を読み出し、当該縮退量情報に基づいた縮退処理を行うことができる。
【0157】
〔中継局/中継装置2/実施例2〕
次に、実施例2における中継局に設けられた中継装置2について説明する。
図19は、実施例2の中継装置2の構成例を示すブロック図である。この中継装置2-2は、伝送路等化部20、シンボル判定部21、再変調部22、中継局受信C/N推定部23、TxID生成部25、変調部27及び合成部28を備えている。
【0158】
中継装置2-2は、送信装置1-2から送信された放送波を受信する。伝送路等化部20、シンボル判定部21及び再変調部22は、
図3に示した伝送路等化部20、シンボル判定部21及び再変調部22と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0159】
ここで、伝送路等化部20から再変調部22までの過程において、送信装置1-2から送信された放送波の信号に含まれる当該送信装置1-2のTxIDが除去され、再変調後の信号が本線信号となる。再変調部22は、再変調後の信号を本線信号(対応テーブルを含む)として合成部28に出力する。
【0160】
中継局受信C/N推定部23は、
図3に示した中継局受信C/N推定部23の処理と同様に、伝送路等化後の信号に基づいて中継局受信C/Nを推定する。そして、中継局受信C/N推定部23は、中継局受信C/Nを図示しない送信部に出力する。
【0161】
TxID生成部25は、
図3に示したTxID生成部25の処理と同様に、予め設定された自局(中継局固有)の識別信号をTxIDとして生成する。そして、TxID生成部25は、TxIDを図示しない送信部に出力すると共に、変調部27に出力する。
【0162】
図示しない送信部は、中継局受信C/N推定部23から中継局受信C/Nを入力すると共に、TxID生成部25からTxIDを入力し、当該中継装置2-2の中継局受信C/N及びTxIDとして、専用回線等を介して送信装置1-2へ送信する。これにより、当該中継装置2-2の中継局受信C/N及びTxIDは、送信装置1-2へフィードバックされる。
【0163】
変調部27は、TxID生成部25からTxIDを入力し、TxIDに変調を施し、変調後のTxIDを合成部28に出力する。例えば変調部27は、TxIDをGold信号のような相関の高い系列で符号化し、符号化後のTxIDにBPSK変調を施して減衰させることで、変調後のTxIDを生成する。
【0164】
合成部28は、再変調部22から本線信号を入力すると共に、変調部27から変調後のTxIDを入力し、本線信号及び変調後のTxIDを多重することで合成する。そして、図示しない送信部は、合成部28により合成された本線信号及び当該中継装置2-2のTxIDを含む放送波を送信する。
【0165】
これにより、中継装置2-2から、当該中継装置2-2の中継局受信C/N及びTxIDが送信装置1-2へ送信され、対応テーブルを含む本線信号及び当該中継装置2-2のTxIDが受信装置3-2へ送信される。
【0166】
また、送信装置1-2は、中継装置2-2から当該中継装置2-2の中継局受信C/N及びTxIDを受信することができ、中継局受信C/Nに基づいて、当該中継装置2-2の縮退量情報を生成することができる。
【0167】
また、後述する受信装置3-2は、中継装置2-2から当該中継装置2-2のTxIDを受信することができ、受信したTxIDから、受信信号が当該中継装置2-2から送信された信号であることを判別することができる。そして、受信装置3-2は、送信装置1-2または中継装置2-2から受信した対応テーブルを用いて、受信したTxIDに対応する縮退量情報を読み出し、当該縮退量情報に基づいた縮退処理を行うことができる。
【0168】
〔受信装置/受信装置3/実施例2〕
次に、実施例3における一般家庭に設けられた受信装置3について説明する。
図20は、実施例2の受信装置3の構成例を示すブロック図である。この受信装置3-2は、伝送路等化部30、LLR処理部33、LDPC復号部34、TxID抽出部35及び縮退量情報読出部36を備えている。
【0169】
受信装置3-2は、送信装置1-2及び中継装置2-2から送信された放送波を受信する。伝送路等化部30、LLR処理部33及びLDPC復号部34は、
図7に示した伝送路等化部30、LLR処理部33及びLDPC復号部34と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0170】
ここで、LDPC復号部34は、LDPC復号処理にて復元した放送信号から対応テーブルを抽出し、対応テーブルを縮退量情報読出部36に出力する。例えば、対応テーブルが放送信号のES、固定受信及び部分受信のデータ放送領域、またはLLchに含まれている場合、LDPC復号部34は、放送信号のES、固定受信及び部分受信のデータ放送領域、またはLLchから対応テーブルを抽出する。
【0171】
TxID抽出部35は、受信した放送波の信号を入力し、放送波の信号から、当該信号を送信してきた送信装置1-2または中継装置2-2のTxIDを抽出し、TxIDを縮退量情報読出部36に出力する。例えばTxID抽出部35は、
図15及び
図19に示した変調部15,27にて用いたGold信号のような相関の高い系列を用いて、放送波の信号との間で相関を順次とり、放送波の信号に多重されているTxIDを抽出する。
【0172】
図21は、縮退量情報読出部36の処理例を示すフローチャートである。縮退量情報読出部36は、LDPC復号部34から対応テーブルを入力すると共に、TxID抽出部35からTxIDを入力する(ステップS2101)。
【0173】
縮退量情報読出部36は、対応テーブルから、TxIDに対応する縮退量情報を読み出し(ステップS2102)、縮退量情報をLLR処理部33に出力する(ステップS2103)。
【0174】
例えば縮退方式が加算方式であり、TxID抽出部35により送信装置1-2のTxIDが抽出された場合、縮退量情報読出部36は、
図17に示した対応テーブルから、送信装置1-2のTxIDに対応する縮退量情報の雑音分散加算値σ
2
add=0を読み出す。そして、縮退量情報読出部36は、縮退量情報の雑音分散加算値σ
2
add=0をLLR処理部33に出力する。この場合、雑音分散加算値σ
2
add=0は縮退処理オフを示しているため、LLR処理部33において縮退処理は行われない。
【0175】
また、縮退方式が加算方式であり、TxID抽出部35により中継装置2-2のTxIDが抽出された場合、縮退量情報読出部36は、
図17に示した対応テーブルから、中継装置2-2のTxIDに対応する縮退量情報の雑音分散加算値σ
2
addを読み出す。そして、縮退量情報読出部36は、縮退量情報の雑音分散加算値σ
2
addをLLR処理部33に出力する。この場合、LLR処理部33において縮退処理が行われる。
【0176】
例えば縮退方式がクリップ方式であり、TxID抽出部35により送信装置1-2のTxIDが抽出された場合、縮退量情報読出部36は、
図18に示した対応テーブルから、送信装置1-2のTxIDに対応する縮退量情報の雑音分散クリップ値σ
2
clip=0を読み出す。そして、縮退量情報読出部36は、縮退量情報の雑音分散クリップ値σ
2
clip=0をLLR処理部33に出力する。この場合、雑音分散クリップ値σ
2
clip=0は縮退処理オフを示しているため、LLR処理部33において縮退処理は行われない。
【0177】
また、縮退方式がクリップ方式であり、TxID抽出部35により中継装置2-2のTxIDが抽出された場合、縮退量情報読出部36は、
図18に示した対応テーブルから、中継装置2-2のTxIDに対応する縮退量情報の雑音分散クリップ値σ
2
clipを読み出す。そして、縮退量情報読出部36は、縮退量情報の雑音分散クリップ値σ
2
clipをLLR処理部33に出力する。この場合、LLR処理部33において縮退処理が行われる。
【0178】
これにより、LLR処理部33にて縮退処理が行われることで、受信信号の全てのビットの初期LLRが縮退し、LDPC復号部34において、中継装置2-2により誤判定されたビットを訂正することができる。
【0179】
以上のように、実施例2の送信装置1-2によれば、対応テーブル生成部17は、中継装置2-2から送信された当該中継装置2-2の中継局受信C/N及びTxIDを入力し、所定の関数を用いて、中継局受信C/Nから縮退量情報(雑音分散加算値σ2
addまたは雑音分散クリップ値σ2
clip)を求める。
【0180】
これにより、中継局受信C/Nが高ければ高いほど、すなわちシンボル誤りが生じ難い場合に、小さい値の雑音分散加算値σ2
addまたは雑音分散クリップ値σ2
clipが求められる。一方、中継局受信C/Nが低ければ低いほど、すなわちシンボル誤りが生じ易い場合に、大きい値の雑音分散加算値σ2
addまたは雑音分散クリップ値σ2
clipが求められる。
【0181】
対応テーブル生成部17は、当該送信装置1-2のTxID、及び予め設定された縮退量情報(雑音分散加算値σ2
add=0または雑音分散クリップ値σ2
clip=0)、並びに、中継装置2-2毎のTxID及び所定の関数を用いて求めた縮退量情報からなる対応テーブルを生成する。図示しない放送信号生成部は、対応テーブルを含む放送信号を生成する。
【0182】
合成部16は、LDPC符号化部10及び変調部11により放送信号から生成された本線信号、及び変調部15により変調されたTxIDを多重することで合成する。そして、図示しない送信部は、合成部16により合成された本線信号(対応テーブルを含む)及び当該送信装置1-2のTxIDを含む放送波を送信する。
【0183】
また、実施例2の中継装置2-2によれば、送信装置1-2から放送波を受信すると、中継局受信C/N推定部23は、伝送路等化部20により等化された信号に基づいて中継局受信C/Nを推定する。そして、当該中継装置2-2の中継局受信C/N及びTxIDは、送信装置1-2へ送信される。
【0184】
合成部28は、シンボル判定部21及び再変調部22により生成された本線信号、及び変調部27により変調されたTxIDを多重することで合成する。そして、中継装置2-2は、本線信号及び当該中継装置2-2のTxIDを含む放送波を送信する。
【0185】
また、実施例2の受信装置3-2によれば、TxID抽出部35は、受信した放送波の信号から、当該信号を送信してきた送信装置1-2または中継装置2-2のTxIDを抽出する。縮退量情報読出部36は、LDPC復号部34により復号され抽出された対応テーブルから、TxIDに対応する縮退量情報を読み出す。
【0186】
LLR処理部33は、伝送路等化部30により等化された信号から雑音分散推定値σ2を推定し、縮退量情報に基づいて雑音分散推定値σ2を調整し、雑音分散調整値σ’2を求め、伝送路等化後の信号及び雑音分散調整値σ’2に基づいてLLRを計算する。LDPC復号部34は、LLRにLDPC復号を施し、元の放送信号を復元して出力する。
【0187】
これにより、実施例1の場合と同様に、中継局受信C/Nが低く、かつエリア受信C/Nが高い状況下において、雑音分散調整値σ’2を大きい値とすることができ、LLRを縮退させることができる。したがって、中継装置2-2が信号に雑音を付加することなく、受信装置3-2がエリア受信C/Nの高い状況下で受信した再送信信号の誤りを抑制することができる。
【0188】
〔シミュレーション結果〕
次に、LLRの縮退効果を検証するためのシミュレーション結果について説明する。
図22は、シミュレーション系統を示す図である。このシミュレーション系統は、親局に設けられる送信装置1、中継局に設けられる中継装置2及び一般家庭に設けられる受信装置3を想定した系統にて構成される。以下の送信装置1、中継装置2及び受信装置3の処理が計算機によりシミュレーションとして行われる。
【0189】
送信装置1は、PN(疑似ランダム)生成、LDPC符号化、BIL(ビットインターリーブ)、キャリア変調、周波数IL(インターリーブ)、SP(スキャッタードパイロット)挿入、IFFT(逆高速フーリエ変換)及びGI(ガードインターバル)付与の処理を行い、放送波を送信する。送信装置1からの放送波は中継装置2へ送信され、送信装置1から中継装置2までの間の伝送路において雑音が発生するものとする。この雑音の影響を受けたC/N比が中継局受信C/Nとして推定される。
【0190】
中継装置2は、送信装置1から送信された放送波を受信し、GI除去、FFT(高速フーリエ変換)、等化、シンボル判定(判定なし、硬判定または軟判定)、SP挿入、GI付与及びIFFTの処理を行い、放送波を再送信する。中継装置2からの放送波は受信装置3へ再送信され、中継装置2から受信装置3までの間の伝送路において雑音が発生するものとする。この雑音の影響を受けたC/N比がエリア受信C/Nである。
【0191】
受信装置3は、中継装置2から再送信された放送波を受信し、GI除去、FFT、等化、周波数DeIL(デインターリーブ)、受信点と信号点のユークリッド距離算出、雑音分散推定、雑音分散調整、初期LLR算出、LDPC復号、DeBIL(ビットデインターリーブ)及びBER(ビットエラーレート)測定の処理を行う。
【0192】
(加算方式の場合のシミュレーション結果)
まず、縮退方式が加算方式の場合のシミュレーション結果について説明する。
図23は、シミュレーション諸元(加算方式の場合)を示す図である。加算方式のシミュレーション諸元において、階層、変調、符号化率、SP配置及び中継条件は、
図23のとおりである。
【0193】
図24は、シミュレーションにより得られたBER特性(加算方式の場合)を示す図である。横軸はエリア受信C/N[dB]を示し、縦軸はBERを示す。点線は、AWGN(中継無し)、すなわち受信装置3が送信装置1から放送波を直接受信した場合の特性を示し、*付きの実線は、シンボル判定なしの場合の特性を示す。+付きの実線は、硬判定及び雑音分散調整なし(縮退処理オフ)の場合の特性を示し、■付きの実線は、軟判定及び雑音分散調整なしの場合の特性を示す。△付きの点線は、軟判定及び雑音分散加算値σ
2
add=1.00×10
-3(C/Nが30dB相当)の場合の特性を示す。〇付きの点線は、軟判定及び雑音分散加算値σ
2
add=3.16×10
-3(C/Nが25dB相当)の場合の特性を示す。×付きの点線は、軟判定及び雑音分散加算値σ
2
add=1.00×10
-2(C/Nが20dB相当)の場合の特性を示す。
【0194】
硬判定及び雑音分散調整なしの場合の+付きの実線から、エリア受信C/Nが29dB以上で誤りが発生することがわかる。また、軟判定及び雑音分散調整なしの場合の■付きの実線から、エリア受信C/Nが33dB以上で誤りが発生することがわかる。
【0195】
一方、雑音分散加算値σ2
add=1.00×10-3及び雑音分散加算値σ2
add=3.16×10-3等の△付きの点線及び〇付きの点線等から、雑音分散調整を行う(縮退処理を行う)場合、エリア受信C/Nが高いときに、誤りが解消されていることがわかる。
【0196】
所要C/Nは、BER=1.00E-07を達成するエリア受信C/Nとして定義する。
図24から、所要C/Nは、AWGN(中継無し)の場合に20.7dB、雑音分散調整なしの場合に21.1dB、雑音分散加算値σ
2
add=1.00×10
-3の場合に21.1dB、雑音分散加算値σ
2
add=3.16×10
-3の場合に21.3dB、雑音分散加算値σ
2
add=1.00×10
-2の場合に22.1dBとなる。
【0197】
また、雑音分散加算値σ2
addが大きいほど、すなわち雑音分散調整値σ’2が大きいほど、高エリア受信C/Nでの誤りを抑制する効果は大きいが、所要C/Nが増加するため、トレードオフの関係となっている。
【0198】
このため、雑音分散調整値σ’
2は最適な値に設定する必要があり、つまり、所定の関数から求める雑音分散加算値σ
2
addも最適な値に設定する必要がある。実施例1では、
図3に示した中継装置2-1の縮退量情報生成部24が用いる所定の関数(中継局受信C/Nから雑音分散加算値σ
2
addを求めるための関数)を最適化する必要がある。また、実施例2では、
図15に示した送信装置1-2の対応テーブル生成部17が生成する
図17に示した対応テーブルを最適化する必要がある。対応テーブルは、所定の関数を用いて生成される。
【0199】
所定の関数は、例えば
図24に示したBER特性において、エリア受信C/Nが高い所定範囲において、BERが所定値以下となるように、予め定義される。関数の代わりにテーブルを用いる場合も同様である。
【0200】
(クリップ方式の場合のシミュレーション結果)
次に、縮退方式がクリップ方式の場合のシミュレーション結果について説明する。
図25は、シミュレーション諸元(クリップ方式の場合)を示す図である。クリップ方式のシミュレーション諸元において、階層、変調、符号化率、SP配置及び中継条件は、
図25のとおりである。
【0201】
図26は、シミュレーションにより得られたBER特性(クリップ方式の場合)を示す図である。横軸はエリア受信C/N[dB]を示し、縦軸はBERを示す。点線は、AWGN(中継無し)、すなわち受信装置3が送信装置1から放送波を直接受信した場合の特性を示し、*付きの実線は、シンボル判定なしの場合の特性を示す。■付きの実線は、軟判定及び雑音分散調整なし(縮退処理なし)の場合の特性を示す。□付きの点線は、軟判定及び雑音分散クリップ値σ
2
clip=1.00×10
-3(C/Nが30dB相当)の場合の特性を示す。
【0202】
雑音分散調整なしの場合及び雑音分散クリップ値σ2
clip=1.00×10-3の場合の■付きの実線及び□付きの点線から、エリア受信C/Nが高い場合に、雑音分散調整なしの場合に生じる誤りがクリップ処理により抑制されていることがわかる。
【0203】
所要C/Nは、BER=1.00E-7を達成するエリア受信C/Nとして定義する。
図26から、所要C/Nは、雑音分散調整なしの場合に21.1dB、雑音分散クリップ値σ
2
clip=1.00×10
-3の場合に21.1dBとなり、所要C/Nの劣化が解消されることがわかる。
【0204】
クリップ方式の場合、所要C/N付近では雑音分散推定値σ2を調整しないように、雑音分散クリップ値σ2
clipを設定することで、所要C/Nの劣化を防ぐことができる。
【0205】
このため、雑音分散クリップ値σ
2
clipは、高エリア受信C/Nでの誤りが発生する位置に合わせて適切に設定する必要がある。実施例1では、
図3に示した中継装置2-1の縮退量情報生成部24が用いる所定の関数(中継局受信C/Nから雑音分散クリップ値σ
2
clipを求めるための関数)を最適化する必要がある。また、実施例2では、
図15に示した送信装置1-2の対応テーブル生成部17が生成する
図18に示した対応テーブルを最適化する必要がある。対応テーブルは、所定の関数を用いて生成される。
【0206】
所定の関数は、例えば
図26に示したBER特性において、エリア受信C/Nが高い所定範囲において、BERが所定値以下となるように、予め定義される。関数の代わりにテーブルを用いる場合も同様である。
【0207】
以上、実施例1,2を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1,2に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0208】
前述の実施例2において、
図15に示した送信装置1-2は、対応テーブルを含む放送波を送信するようにした。これに対し、送信装置1-2と受信装置3-2とがインターネット等の通信により接続される場合、送信装置1-2は、対応テーブルを、インターネットを介して受信装置3-2へ送信するようにしてもよい。また、中継装置2-2は、対応テーブルを、インターネットを介して受信装置3-2へ送信するようにしてもよい。
【0209】
また、前述の実施例2において、
図15に示した送信装置1-2の図示しない放送信号生成部は、対応テーブルを、例えばES、固定受信及び部分受信のデータ放送領域、またはLLchに格納し、対応テーブルを含む放送信号を生成するようにした。
【0210】
ここで、送信装置1-2の図示しない放送信号生成部が、対応テーブルを、固定受信及び部分受信のデータ放送領域にそれぞれ格納するものとする。
【0211】
図20に示した受信装置3-2のLLR処理部33は、放送信号の固定受信のデータ放送領域の信号を用いてLLR処理を行い、LDPC復号部34は、LDPC復号処理にて対応テーブルを抽出し、対応テーブルを縮退量情報読出部36に出力する。
【0212】
この場合、初期状態において、LLR処理部33が放送信号の固定受信のデータ放送領域の信号を用いてLLR処理を行い、LDPC復号部34がLDPC復号処理にて対応テーブルを抽出できなかった状況を想定する。
【0213】
LDPC復号部34は、初期状態において対応テーブルを抽出できなかった場合、固定受信を部分受信に切り替える指示をLLR処理部33に出力する。または、縮退量情報読出部36は、初期状態において、LDPC復号部34から対応テーブルを入力できなかった場合、固定受信を部分受信に切り替える指示をLLR処理部33に出力する。
【0214】
LLR処理部33は、LDPC復号部34または縮退量情報読出部36から固定受信を部分受信に切り替える指示を入力すると、固定受信から部分受信に切り替え、放送信号の部分受信のデータ放送領域の信号を用いてLLR処理を行う。そして、LDPC復号部34は、LDPC復号処理にて対応テーブルを抽出する。一般に、部分受信は固定受信に比べて耐性が高いため、LLR処理部33の処理が固定受信から部分受信に切り替わることで、LDPC復号部34は、対応テーブルを抽出する可能性を高めることができる。
【0215】
これにより、縮退量情報読出部36は、LDPC復号部34から対応テーブルを入力することができ、LLR処理部33において縮退処理が行われ、誤りの発生が抑制される。そして、LLR処理部33は、部分受信から固定受信に切り替える。このように、放送信号の部分受信のデータ放送領域を、初期状態の誤りから回復させるためのセーフティネットとして使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明による送信装置、中継装置及び受信装置は、地上放送高度化方式の地上放送システムによる放送波中継に有用である。
【符号の説明】
【0217】
1,1-1,1-2,100,110 送信装置
2,2-1,2-2,200,210 中継装置
3,3-1,3-2,300,310 受信装置
10,101 LDPC符号化部
11,15,27,102,104,205 変調部
12,24 縮退量情報生成部
13,25,103,204 TxID生成部
14,26 多重情報生成部
16,28 合成部
17 対応テーブル生成部
20,30,201,301 伝送路等化部
21,202 シンボル判定部
22,203 再変調部
23 中継局受信C/N推定部
31 多重情報抽出部
32 復調部
33 LLR処理部
34,303 LDPC復号部
35,304 TxID抽出部
36 縮退量情報読出部
40 雑音分散推定部
41,41-1,41-2 雑音分散調整部
42,302 LLR計算部
150,250 伝送路
σ2
add 雑音分散加算値
σ2
clip 雑音分散クリップ値
σ2 雑音分散推定値
σ’2 雑音分散調整値
xI,xQ 伝送路等化後の信号