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特許7523289ネガ型感光性組成物、パターン形成方法及び中空構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ネガ型感光性組成物、パターン形成方法及び中空構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20240719BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20240719BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G03F7/038 503
C08G59/20
G03F7/20 501
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020149418
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043914
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋文
(72)【発明者】
【氏名】武内 弘明
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】山形 憲一
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-522531(JP,A)
【文献】国際公開第2016/153044(WO,A1)
【文献】特開2012-215874(JP,A)
【文献】特開2014-074773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
C08G 59/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有化合物(A)及びカチオン重合開始剤(I)を含有するネガ型感光性組成物であって、
前記エポキシ基含有化合物(A)は、
(A1’)成分:エポキシ当量が300g/eq.以上の下記一般式(abp1)で表されるエポキシ樹脂と、
(A2)成分:エポキシ当量が前記(A1’)成分より小さい下記一般式(A2-1)で表されるエポキシ樹脂と、
を含み、
前記(A1’)成分の含有量は、前記エポキシ基含有化合物(A)の総質量(100質量%)に対して、60~90質量%であり、
前記(A2)成分の含有量は、前記エポキシ基含有化合物(A)の総質量(100質量%)に対して、10~40質量%である、ネガ型感光性組成物。
【化1】
[式中、R EP は、エポキシ基含有基であり、R a31 、R a32 はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、na 31 は1~50の整数である。]
【化2】
[式中、Rp1及びRp2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。複数のRp1は、互いに同一でもよく異なってもよい。複数のRp2は、互いに同一でもよく異なってもよい。nは、1~5の整数である。REPは、エポキシ基含有基である。複数のREPは、互いに同一であってもよく異なってもよい。]
【請求項2】
前記カチオン重合開始剤(I)の含有量は、前記エポキシ基含有化合物(A)の総質量100質量部に対して、0.3~5.0質量部である、請求項1に記載のネガ型感光性組成物。
【請求項3】
硬化物における応力が20MPa以下である、請求項1又は2に記載のネガ型感光性組成物。
【請求項4】
硬化物における150℃の熱時弾性率が40MPa以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のネガ型感光性組成物。
【請求項5】
中空構造体製造用ネガ型感光性組成物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のネガ型感光性組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のネガ型感光性組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程と、前記感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像してネガ型パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
【請求項7】
前記支持体は、タンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板である、請求項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
凹部と、この凹部の開口面を塞ぐ天板部と、からなる中空構造体の製造方法であって、
下記(パターン形成方法)を使用して、表面に凹部を有する基板を用意する工程(0-i)と、
ネガ型の感光性樹脂膜を有する感光性レジストフィルムを用意する工程(0-ii)と、
前記感光性レジストフィルムの感光性樹脂膜表面が、前記基板における前記凹部の開口面を塞ぐように、前記感光性レジストフィルムを配置する工程(i)と、
前記工程(i)後、前記感光性樹脂膜を露光する工程(ii)と、
前記工程(ii)後の前記感光性樹脂膜に対して加熱処理を行う工程(iii)と、
前記工程(iii)後、前記感光性樹脂膜を現像して、前記凹部の開口面を塞ぐ屋根パターンを形成する工程(iv)と、
前記工程(iv)後の前記屋根パターンに対し、さらに加熱処理を行うことにより硬化させて、前記天板部が前記感光性樹脂膜の硬化体からなる中空構造体を得る工程(v)と、を有する、中空構造体の製造方法。
(パターン形成方法)
下記(ネガ型感光性組成物)を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程と、前記感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像してネガ型パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
(ネガ型感光性組成物)
エポキシ基含有化合物(A)及びカチオン重合開始剤(I)を含有するネガ型感光性組成物であって、
前記エポキシ基含有化合物(A)は、
(A1)成分:エポキシ当量が300g/eq.以上のエポキシ樹脂と、
(A2)成分:エポキシ当量が前記(A1)成分より小さい下記一般式(A2-1)で表されるエポキシ樹脂と、
を含み、
前記(A1)成分の含有量は、前記エポキシ基含有化合物(A)の総質量(100質量%)に対して、60~90質量%であり、
前記(A2)成分の含有量は、前記エポキシ基含有化合物(A)の総質量(100質量%)に対して、10~40質量%である、ネガ型感光性組成物。
【化3】
[式中、R p1 及びR p2 は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。複数のR p1 は、互いに同一でもよく異なってもよい。複数のR p2 は、互いに同一でもよく異なってもよい。n は、1~5の整数である。R EP は、エポキシ基含有基である。複数のR EP は、互いに同一であってもよく異なってもよい。]
【請求項9】
前記支持体は、タンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板である、請求項8に記載の中空構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性組成物、パターン形成方法及び中空構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化及び高密度化に伴い、例えば表面弾性波(SAW)フィルター等の、中空封止構造を有する電子部品、に用いられる感光性組成物への要求が高まっている。この電子部品の中空封止構造の形成においては、感光性組成物を硬化した硬化膜の薄膜化及び強度が必要になる。
【0003】
また、感光性組成物は、半導体ウェーハと透明基板との間のスペーサ(壁材)にも用いられる。例えばネガ型感光性組成物を用いて、半導体ウェーハ等の表面に感光性樹脂膜を形成し、該感光性樹脂膜に対して光、電子線等の放射線による選択的露光を行い、現像処理を施してパターンを形成した後、透明基板(例えばガラス基板等)と圧着してスペーサとされる。この感光性樹脂膜においては、フォトリソグラフィー法により、現像処理を施した際に、スペーサに必要とされる厚さの膜が形成され、かつ、良好な形状で残渣等がなく高解像度のパターニングが可能であることや、透明基板との密着性が必要になる。
【0004】
前記の要求に対し、前記感光性樹脂膜と透明基板との密着性の向上のために用いられる手段として、感光性樹脂膜の応力を低下させる方法が知られている。
例えば、前記感光性樹脂膜を形成する感光性材料について、感光性樹脂膜の応力を低下させるために、エポキシ当量の大きい固形のビスフェノールF型エポキシ樹脂等を用いることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/190476号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の感光性材料では、硬化膜内部の応力が高く、硬化膜の基板に対する密着性が十分に担保できているとはいえない。一方、硬化膜の基板に対する密着性を高めるために、硬化膜内部の応力を低くしていくと、その後のモールド試験におけるモールド耐性が担保できないという不具合がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、硬化膜内部の応力が低く抑えられ、かつ、モールド耐性を高められるネガ型感光性組成物、並びにこれを用いたパターン形成方法及び中空構造体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の第1の態様は、エポキシ基含有化合物(A)及びカチオン重合開始剤(I)を含有するネガ型感光性組成物であって、前記エポキシ基含有化合物(A)は、(A1)成分:エポキシ当量が300g/eq.以上のエポキシ樹脂と、(A2)成分:エポキシ当量が前記(A1)成分より小さい下記一般式(A2-1)で表されるエポキシ樹脂と、を含み、前記(A1)成分の含有量は、前記エポキシ基含有化合物(A)の総質量(100質量%)に対して、60~90質量%であり、前記(A2)成分の含有量は、前記エポキシ基含有化合物(A)の総質量(100質量%)に対して、10~40質量%であることを特徴とする、ネガ型感光性組成物である。
【0009】
【化1】
[式中、Rp1及びRp2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。複数のRp1は、互いに同一でもよく異なってもよい。複数のRp2は、互いに同一でもよく異なってもよい。nは、1~5の整数である。REPは、エポキシ基含有基である。複数のREPは、互いに同一であってもよく異なってもよい。]
【0010】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係るネガ型感光性組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程と、前記感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像してネガ型パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする、パターン形成方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、凹部と、この凹部の開口面を塞ぐ天板部と、からなる中空構造体の製造方法であって、前記第2の態様に係るパターン形成方法を使用して、表面に凹部を有する基板を用意する工程(0-i)と、ネガ型の感光性樹脂膜を有する感光性レジストフィルムを用意する工程(0-ii)と、前記感光性レジストフィルムの感光性樹脂膜表面が、前記基板における前記凹部の開口面を塞ぐように、前記感光性レジストフィルムを配置する工程(i)と、前記工程(i)後、前記感光性樹脂膜を露光する工程(ii)と、前記工程(ii)後の前記感光性樹脂膜に対して加熱処理を行う工程(iii)と、前記工程(iii)後、前記感光性樹脂膜を現像して、前記凹部の開口面を塞ぐ屋根パターンを形成する工程(iv)と、前記工程(iv)後の前記屋根パターンに対し、さらに加熱処理を行うことにより硬化させて、前記天板部が前記感光性樹脂膜の硬化体からなる中空構造体を得る工程(v)と、を有することを特徴とする、中空構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化膜内部の応力が低く抑えられ、かつ、モールド耐性を高められるネガ型感光性組成物、並びにこれを用いたパターン形成方法及び中空構造体の製造方法を提供することができる。
かかる本発明の適用により、電子部品における中空封止構造の作製において、基板と、壁となる材料との密着性の向上、及び耐モールド性の向上をいずれも図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、芳香族性を持たない化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合と、の両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0014】
(ネガ型感光性組成物)
本実施形態のネガ型感光性組成物(以下単に「感光性組成物」ということがある)は、エポキシ基含有化合物(A)及びカチオン重合開始剤(I)を含有する。以下、これらの各成分をそれぞれ(A)成分、(I)成分ともいう。
かかる感光性組成物を用いて感光性樹脂膜を形成し、該感光性樹脂膜に対して選択的に露光を行うと、該感光性樹脂膜の露光部では、(I)成分のカチオン部が分解して酸が発生し、該酸の作用により(A)成分中のエポキシ基が開環重合して、有機溶剤を含有する現像液に対する該(A)成分の溶解性が減少する一方で、該感光性樹脂膜の未露光部では、有機溶剤を含有する現像液に対する該(A)成分の溶解性が変化しないため、感光性樹脂膜の露光部と未露光部との間で、有機溶剤を含有する現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像すると、未露光部が溶解除去されて、ネガ型のパターンが形成される。
【0015】
<エポキシ基含有化合物(A)>
本実施形態の感光性組成物で用いられるエポキシ基含有化合物((A)成分)は、(A1)成分:エポキシ当量が300g/eq.以上のエポキシ樹脂と、(A2)成分:エポキシ当量が前記(A1)成分より小さい下記一般式(A2-1)で表されるエポキシ樹脂と、を含む。
【0016】
【化2】
[式中、Rp1及びRp2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。複数のRp1は、互いに同一でもよく異なってもよい。複数のRp2は、互いに同一でもよく異なってもよい。nは、1~5の整数である。REPは、エポキシ基含有基である。複数のREPは、互いに同一であってもよく異なってもよい。]
【0017】
≪(A1)成分≫
(A1)成分は、エポキシ当量が300g/eq.以上のエポキシ樹脂である。
(A1)成分におけるエポキシ当量は、300g/eq.以上であり、350~1500g/eq.が好ましく、400~1200g/eq.がより好ましい。
【0018】
(A1)成分としては、例えば、下記一般式(abp1)で表される構造のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0019】
【化3】
[式中、REPは、エポキシ基含有基であり、Ra31、Ra32はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、na31は1~50の整数である。]
【0020】
前記式(abp1)中、REPは、エポキシ基含有基である。
EPのエポキシ基含有基としては、特に限定されるものではなく、エポキシ基のみからなる基;脂環式エポキシ基のみからなる基;エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基が挙げられる。
脂環式エポキシ基とは、3員環エーテルであるオキサシクロプロパン構造を有する脂環式基であって、具体的には、脂環式基とオキサシクロプロパン構造とを有する基である。
脂環式エポキシ基の基本骨格となる脂環式基としては、単環でも多環でもよい。単環の脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。また、これら脂環式基の水素原子は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等で置換されてもよい。
エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基の場合、式中の酸素原子(-O-)に結合した2価の連結基を介してエポキシ基又は脂環式エポキシ基が結合することが好ましい。
【0021】
ここで、2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0022】
置換基を有してもよい2価の炭化水素基について:
かかる2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよく、芳香族炭化水素基でもよい。
2価の炭化水素基における脂肪族炭化水素基は、飽和でもよく、不飽和でもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0023】
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が2~10であることが好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましく、2又は3が最も好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0024】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基でもよく、単環式基でもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0025】
2価の炭化水素基における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、(4n+2)個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は、5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アリール基またはヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0026】
2価の炭化水素基は、置換基を有してもよい。
2価の炭化水素基としての、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有してもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1~5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0027】
2価の炭化水素基としての、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基における脂環式炭化水素基は、置換基を有してもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
脂環式炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-が好ましい。
【0028】
2価の炭化水素基としての、芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されてもよい。例えば当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されてもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子及びハロゲン化アルキル基としては、前記脂環式炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0029】
ヘテロ原子を含む2価の連結基について:
ヘテロ原子を含む2価の連結基におけるヘテロ原子とは、炭素原子及び水素原子以外の原子であり、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0030】
ヘテロ原子を含む2価の連結基において、該連結基として好ましいものとしては、-O-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-;-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されてもよい。);-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-または-Y21-O-C(=O)-Y22-で表される基[式中、Y21及びY22はそれぞれ独立して置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル等の置換基で置換されてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-または-Y21-O-C(=O)-Y22-中、Y21及びY22は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、上述した2価の連結基としての説明で挙げた「置換基を有してもよい2価の炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CHa’-C(=O)-O-(CHb’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0031】
なかでも、REPにおけるエポキシ基含有基としては、グリシジル基が好ましい。
【0032】
前記式(abp1)中、Ra31、Ra32はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。
a31、Ra32の炭素数1~5のアルキル基は、例えば炭素数1~5の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
なかでもRa31、Ra32としては、水素原子又は直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、水素原子又は直鎖状のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
【0033】
前記式(abp1)中、na31は、1~50の整数であり、好ましくは4~50の整数であり、より好ましくは4~15の整数であり、さらに好ましくは5~8である。
【0034】
好ましい(A1)成分としては、例えば、下記一般式(a1-01)または下記一般式(a1-02)で表される構造のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0035】
【化4】
[式中、REPは、エポキシ基含有基であり、na31は4~50の整数である。]
【0036】
【化5】
[式中、REPは、エポキシ基含有基であり、na31は4~50の整数である。]
【0037】
前記式(a1-01)中および前記式(a1-02)中、REPは、エポキシ基含有基であり、前記式(abp1)中のREPと同様の説明である。なかでも、REPにおけるエポキシ基含有基としては、グリシジル基が好ましい。
前記式(a1-01)中および前記式(a1-02)中、na31はそれぞれ、4~50の整数であり、好ましくは4~15の整数であり、より好ましくは5~8の整数である。
【0038】
硬化膜内部の応力がより低く抑えられやすい点から、上記一般式(a1-01)で表される構造のエポキシ樹脂が好ましい。
モールド耐性をより高められやすい点から、上記一般式(a1-02)で表される構造のエポキシ樹脂が好ましい。
【0039】
(A1)成分として使用可能な市販品は、例えば、JER-4004、JER-4005、JER-4007、JER-4010(以上、三菱ケミカル株式会社製);EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
(A1)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物中、(A1)成分の含有量は、(A)成分の総質量(100質量%)に対して、60~90質量%であり、65~90質量%であることが好ましく、70~90質量%であることがより好ましい。
【0041】
≪(A2)成分≫
(A2)成分は、エポキシ当量が前記(A1)成分より小さい下記一般式(A2-1)で表されるエポキシ樹脂である。すなわち、(A2)成分には、ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)を用いる。
(A2)成分は、前記(A1)成分におけるエポキシ当量より相対的にエポキシ当量が小さいものであればよい。
【0042】
【化6】
[式中、Rp1及びRp2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。複数のRp1は、互いに同一でもよく異なってもよい。複数のRp2は、互いに同一でもよく異なってもよい。nは、1~5の整数である。REPは、エポキシ基含有基である。複数のREPは、互いに同一であってもよく異なってもよい。]
【0043】
前記式(A2-1)中、Rp1、Rp2の炭素数1~5のアルキル基は、例えば炭素数1~5の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
なかでもRp1、Rp2としては、水素原子又は直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、水素原子又は直鎖状のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
式(A2-1)中、複数のRp1は、互いに同一でもよく異なってもよい。複数のRp2は、互いに同一でもよく異なってもよい。
【0044】
式(A2-1)中、nは、1~5の整数であり、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。
【0045】
式(A2-1)中、REPは、エポキシ基含有基であり、前記式(abp1)中のREPと同様の説明である。なかでも、REPにおけるエポキシ基含有基としては、グリシジル基が好ましい。
【0046】
上記一般式(A2-1)で表されるエポキシ樹脂として使用可能な市販品は、例えば、JER-152、JER-154、JER-157S70、JER-157S65(以上、三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0047】
(A2)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の感光性組成物中、(A2)成分の含有量は、(A)成分の総質量(100質量%)に対して、10~40質量%であり、10~35質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0048】
(A1)成分として一般式(a1-01)で表される構造のエポキシ樹脂と、(A2)成分として一般式(A2-1)で表されるエポキシ樹脂とを併用する場合、(A1)成分と(A2)成分との合計量(100質量%)に対して、(A1)成分(一般式(a1-01)で表される構造のエポキシ樹脂)の含有量は、基板への壁となる材料の密着性と耐モールド性との両立の点から、60~90質量%であり、60~80質量%であることがより好ましく、60~75質量%であることがさらに好ましく、60~70質量%であることが特に好ましく、(A2)成分の含有量は、10~40質量%であり、20~40質量%であることがより好ましく、25~40質量%であることがさらに好ましく、30~40質量%であることがさらに好ましい。
【0049】
(A1)成分として一般式(a1-02)で表される構造のエポキシ樹脂と、(A2)成分として一般式(A2-1)で表されるエポキシ樹脂とを併用する場合、(A1)成分と(A2)成分との合計量(100質量%)に対して、(A1)成分(一般式(a1-02)で表される構造のエポキシ樹脂)の含有量は、基板への壁となる材料の密着性と耐モールド性との両立の点から、60~90質量%であり、65~90質量%であることがより好ましく、70~90質量%であることがさらに好ましく、(A2)成分の含有量は、10~40質量%であり、10~35質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。
【0050】
≪その他の(A)成分≫
本実施形態の感光性組成物において、(A)成分は、(A1)成分及び(A2)成分に加えて、これら以外のエポキシ基含有化合物(以下これを「(A3)成分」ともいう。)を含んでもよい。
【0051】
(A3)成分としては、例えば、下記一般式(anv1)で表される構成単位を有するノボラック型エポキシ樹脂(Anv)が挙げられる。
【0052】
【化7】
[式中、REPは、エポキシ基含有基であり、Ra22、Ra23は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。]
【0053】
式(anv1)中、Ra22、Ra23の炭素数1~5のアルキル基は、前記式(A2-1)中のRp1、Rp2の炭素数1~5のアルキル基と同様である。Ra22、Ra23のハロゲン原子は、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
式(anv1)中、REPは、前記式(abp1)中のREPと同様であって、グリシジル基が好ましい。
【0054】
以下に前記式(anv1)で表される構成単位の具体例を示す。
【0055】
【化8】
【0056】
ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)は、前記構成単位(anv1)のみからなる樹脂でもよく、構成単位(anv1)と他の構成単位とを有する樹脂でもよい。この他の構成単位としては、例えば、下記一般式(anv2)~(anv3)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0057】
【化9】
[式中、Ra24は、置換基を有してもよい炭化水素基である。Ra25~Ra26、Ra28~Ra30は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。Ra27は、エポキシ基含有基又は置換基を有してもよい炭化水素基である。]
【0058】
式(anv2)中、Ra24は、置換基を有してもよい炭化水素基である。置換基を有してもよい炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1~5であることが好ましく、1~4がより好ましく、1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0059】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0060】
a24が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0061】
a24の環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
a24における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0062】
式(anv2)、(anv3)中、Ra25~Ra26、Ra28~Ra30は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子であって、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子は、それぞれ前記Ra22、Ra23と同様である。
【0063】
式(anv3)中、Ra27は、エポキシ基含有基又は置換基を有してもよい炭化水素基である。Ra27のエポキシ基含有基は、前記式(A2-1)中のREPと同様であり、Ra27の置換基を有してもよい炭化水素基は、Ra24と同様である。
【0064】
以下に、前記式(anv2)~(anv3)でそれぞれ表される構成単位の具体例を示す。
【0065】
【化10】
【0066】
ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)が、構成単位(anv1)に加えて他の構成単位を有する場合、樹脂(Anv)中の各構成単位の割合は、特に限定されるものではないが、樹脂(Anv)を構成する全構成単位の合計に対して、エポキシ基を有する構成単位の合計が10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましい。
【0067】
上記例示のノボラック型エポキシ樹脂(Anv)としてそれぞれ使用可能な市販品は、例えば、EPICLON N-660、EPICLON N-665、EPICLON N-670、EPICLON N-673、EPICLON N-680、EPICLON N-690、EPICLON N-695、EPICLON HP5000(以上、DIC株式会社製);EOCN-1020(日本化薬株式会社製);YDCN-704(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられる。
【0068】
また、(A3)成分には、上述した樹脂以外に、下記化学式(A3-1)で表される化合物を使用してもよい。下記化学式(A3-1)で表される化合物として使用可能な市販品は、例えば、TECHMORE VG-3101L(プリンテック株式会社製)等が挙げられる。
【0069】
【化11】
【0070】
(A3)成分には、上述した樹脂以外に、下記化学式(A3-2)で表される化合物を使用してもよい。下記化学式(A3-2)で表される化合物として使用可能な市販品は、例えば、ショウフリー(登録商標)BATG(昭和電工株式会社製)等が挙げられる。
【0071】
【化12】
【0072】
また、(A3)成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、エリスリトールテトラグリシジルエーテル;キシリトールペンタグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタグリシジルエーテル、イノシトールペンタグリシジルエーテル;ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、イノシトールヘキサグリシジルエーテル等も挙げられる。
【0073】
また、(A3)成分としては、例えば、脂肪族エポキシ樹脂、アクリル樹脂(Aac)も挙げられる。
かかる脂肪族エポキシ樹脂、アクリル樹脂(Aac)としては、例えば、下記一般式(a1-1)~(a1-2)でそれぞれ表されるエポキシ基含有単位を有する樹脂が挙げられる。
【0074】
【化13】
[式中、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Va41は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。na41は0~2の整数である。Ra41、Ra42はエポキシ基含有基である。na42は0又は1である。Wa41は(na43+1)価の脂肪族炭化水素基である。na43は1~3の整数である。]
【0075】
前記式(a1-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Rの炭素数1~5のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rの炭素数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0076】
前記式(a1-1)中、Va41は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であって、前記式(abp1)中のREPにおいて説明した、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様の基が挙げられる。
上記の中でも、Va41の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基がさらに好ましく、直鎖状のアルキレン基が特に好ましい。
【0077】
式(a1-1)中、na41は、0~2の整数であり、0又は1が好ましい。
【0078】
式(a1-1)、(a1-2)中、Ra41、Ra42は、エポキシ基含有基であって、前記式(abp1)中のREPと同様である。
【0079】
式(a1-2)中、Wa41における(na43+1)価の脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味し、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、又は、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と構造中に環を含む脂肪族炭化水素基とを組み合わせた基が挙げられる。
【0080】
式(a1-2)中、na43は、1~3の整数であり、1又は2が好ましい。
【0081】
以下に前記式(a1-1)又は(a1-2)で表される構成単位の具体例を示す。
【0082】
【化14】
【0083】
【化15】
【0084】
【化16】
【0085】
【化17】
【0086】
上記式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
a51は、炭素数1~8の2価の炭化水素基を示す。Ra52は、炭素数1~20の2価の炭化水素基を示す。Ra53は、水素原子又はメチル基を示す。na51は、0~10の整数である。
a51、Ra52、Ra53は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0087】
さらに、アクリル樹脂(Aac)は、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物から誘導される構成単位を有してもよい。
このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等が挙げられる。
【0088】
脂肪族エポキシ樹脂、アクリル樹脂(Aac)が他の構成単位を有する場合、当該樹脂におけるエポキシ基含有単位の含有比率は、5~40モル%であることが好ましく、10~30モル%であることがより好ましく、15~25モル%であることが最も好ましい。
【0089】
また、脂肪族エポキシ樹脂としては、下記一般式(m1)で表される部分構造を含む化合物(以下「(m1)成分」ともいう)も好適に挙げられる。
【0090】
【化18】
[式中、nは、1~4の整数である。*は結合手を示す。]
【0091】
式(m1)中、nは、1~4の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2である。
【0092】
(m1)成分としては、2価の連結基又は単結合を介して、上記一般式(m1)で表される部分構造の複数が結合した化合物が挙げられる。この中でも、2価の連結基を介して、上記一般式(m1)で表される部分構造の複数が結合した化合物が好ましい。
ここでの2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基については、上記式(abp1)中のREP(エポキシ基含有基)において説明した、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基と同様であり、この中でもヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、-Y21-C(=O)-O-で表される基、-C(=O)-O-Y21-で表される基がより好ましい。Y21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
【0093】
さらに、脂肪族エポキシ樹脂としては、下記一般式(m2)で表される化合物(以下「(m2)成分」ともいう)も好適に挙げられる。
【0094】
【化19】
[式中、REPは、エポキシ基含有基である。複数のREPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。]
【0095】
式(m2)中、REPは、エポキシ基含有基であって、前記式(abp1)中のREPと同様である。
【0096】
上記脂肪族エポキシ樹脂として使用可能な市販品は、例えば、ADEKA RESIN EP-4080S、同EP-4085S、同EP-4088S(以上、株式会社ADEKA製);セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド8000、セロキサイド8010、EHPE-3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、株式会社ダイセル製);デナコール EX-211L、EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L(以上、ナガセケムテックス株式会社製);TEPIC-VL(日産化学株式会社製)等が挙げられる。
【0097】
本実施形態の感光性組成物に(A3)成分を併用する場合、(A3)成分の含有量は、(A)成分の総質量(100質量%)に対して、30質量%以下であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましく、5~25質量%であることがさらに好ましく、5~20質量%であることが特に好ましい。
【0098】
本実施形態の感光性組成物中の(A)成分の含有量は、形成しようとする感光性樹脂膜の膜厚等に応じて調整すればよい。
例えば、本実施形態の感光性組成物中、(A)成分の含有量は、感光性組成物の総質量(100質量%)に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0099】
<カチオン重合開始剤(I)>
カチオン重合開始剤((I)成分)は、紫外線、遠紫外線、KrF、ArF等のエキシマレーザー光、X線、電子線等といった活性エネルギー線の照射を受けてカチオンを発生し、そのカチオンが重合開始剤となり得る化合物である。
【0100】
本実施形態の感光性組成物中の(I)成分は、特に限定されず、例えば、下記一般式(I1)で表される化合物(以下「(I1)成分」という)、下記一般式(I2)で表される化合物(以下「(I2)成分」という)、下記一般式(I3-1)又は(I3-2)で表される化合物(以下「(I3)成分」という)が挙げられる。
上記の中でも、(I1)成分及び(I2)成分は、いずれも、露光により比較的に強い酸を発生するため、(I)成分を含有する感光性組成物を用いてパターンを形成する場合に、充分な感度が得られて良好なパターンが形成される。
【0101】
≪(I1)成分≫
(I1)成分は、下記一般式(I1)で表される化合物である。
【0102】
【化20】
[式中、Rb01~Rb04は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、又はフッ素原子である。qは1以上の整数であって、Qq+は、それぞれ独立に、q価の有機カチオンである。]
【0103】
・アニオン部
前記式(I1)中、Rb01~Rb04は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、又はフッ素原子である。
b01~Rb04におけるアリール基は、炭素数が5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。具体的には、ナフチル基、フェニル基、アントラセニル基などが挙げられ、入手が容易であることからフェニル基が好ましい。
b01~Rb04におけるアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数は1~5が好ましい)、ハロゲン化アルキル基が好ましく、ハロゲン原子又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基がより好ましく、フッ素原子又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基が特に好ましい。アリール基がフッ素原子を有することにより、アニオン部の極性が高まり好ましい。
中でも、式(I1)のRb01~Rb04としては、それぞれ、フッ素化されたフェニル基が好ましく、パーフルオロフェニル基が特に好ましい。
【0104】
式(I1)で表される化合物のアニオン部の好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C);テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(CCF);ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(CBF);トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C)BF);テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C)等が挙げられる。
中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)が特に好ましい。
【0105】
・カチオン部
式(I1)中、qは1以上の整数であって、Qq+は、それぞれ独立に、q価の有機カチオンである。
このQq+としては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好適に挙げられ、下記の一般式(ca-1)~(ca-5)でそれぞれ表される有機カチオンが特に好ましい。
【0106】
【化21】
[式中、R201~R207、およびR211~R212は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表す。R201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互に結合して、式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表す。R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。L201は、-C(=O)-または-C(=O)-O-を表す。Y201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基を表す。xは、1または2である。W201は、(x+1)価の連結基を表す。]
【0107】
201~R207、およびR211~R212におけるアリール基としては、炭素数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
201~R207、およびR211~R212におけるヘテロアリール基としては、前記アリール基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されたものが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。このヘテロアリール基として、9H-チオキサンテンから水素原子を1つ除いた基;置換ヘテロアリール基として、9H-チオキサンテン-9-オンから水素原子を1つ除いた基などが挙げられる。
201~R207、およびR211~R212におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1~30のものが好ましい。
201~R207、およびR211~R212におけるアルケニル基としては、炭素数が2~10であることが好ましい。
201~R207、およびR210~R212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、オキソ基(=O)、アリール基、下記式(ca-r-1)~(ca-r-10)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0108】
【化22】
[式中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0109】
前記の式(ca-r-1)~(ca-r-10)中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。
【0110】
置換基を有していてもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、環状の脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0111】
R’201における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
R’201における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、もしくはこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環、又は、これらの芳香環もしくは芳香族複素環を構成する水素原子の一部がオキソ基などで置換された環が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
R’201における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)、前記芳香環を構成する水素原子の一部がオキソ基などで置換された環(例えばアントラキノン等)から水素原子を1つ除いた基、芳香族複素環(例えば9H-チオキサンテン、9H-チオキサンテン-9-オンなど)から水素原子を1つ除いた基等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0112】
R’201における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0113】
なかでも、R’201における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0114】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0115】
置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基:
R’201の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0116】
置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基:
R’201の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素数が2~10であることが好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0117】
R’201の環式基、鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、オキソ基、上記R’201における環式基、アルキルカルボニル基、チエニルカルボニル基等が挙げられる。
【0118】
なかでも、R’201は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。
【0119】
201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、-SO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CONH-または-N(R)-(該Rは炭素数1~5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、例えばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H-チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0120】
前記式(ca-3)中、R208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
【0121】
前記式(ca-3)中、R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。
210におけるアリール基としては、炭素数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1~30のものが好ましい。
210におけるアルケニル基としては、炭素数が2~10であることが好ましい。
【0122】
前記の式(ca-4)、式(ca-5)中、Y201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を表す。
201におけるアリーレン基は、R’201における芳香族炭化水素基として例示したアリール基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
201におけるアルキレン基、アルケニレン基は、R’201における鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基として例示した基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0123】
前記の式(ca-4)、式(ca-5)中、xは、1または2である。
201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、上記式(abp1)中のREPで例示した置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様の基が好ましい。W201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基、又はアリーレン基のみからなる基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
201における3価の連結基としては、前記W201における2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基などが挙げられる。W201における3価の連結基としては、アリーレン基に2個のカルボニル基が結合した基が好ましい。
【0124】
前記式(ca-1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-1-1)~(ca-1-24)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0125】
【化23】
【0126】
【化24】
[式中、R”201は、水素原子又は置換基である。該置換基としては、前記R201~R207、およびR210~R212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0127】
また、前記式(ca-1)で表されるカチオンとしては、下記一般式(ca-1-25)~(ca-1-35)でそれぞれ表されるカチオンも好ましい。
【0128】
【化25】
【0129】
【化26】
[式中、R’211はアルキル基である。Rhalは、水素原子又はハロゲン原子である。]
【0130】
また、前記式(ca-1)で表されるカチオンとしては、下記化学式(ca-1-36)~(ca-1-47)でそれぞれ表されるカチオンも好ましい。
【0131】
【化27】
【0132】
前記式(ca-2)で表される好適なカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0133】
前記式(ca-3)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-3-1)~(ca-3-6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0134】
【化28】
【0135】
前記式(ca-4)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-4-1)~(ca-4-2)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0136】
【化29】
【0137】
また、前記式(ca-5)で表されるカチオンとしては、下記一般式(ca-5-1)~(ca-5-3)でそれぞれ表されるカチオンも好ましい。
【0138】
【化30】
[式中、R’212はアルキル基又は水素原子である。R’211はアルキル基である。]
【0139】
上記の中でも、カチオン部[(Qq+1/q]は、一般式(ca-1)で表されるカチオンが好ましく、式(ca-1-1)~(ca-1-47)でそれぞれ表されるカチオンがより好ましく、式(ca-1-29)、式(ca-1-35)、式(ca-1-47)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
【0140】
≪(I2)成分≫
(I2)成分は、下記一般式(I2)で表される化合物である。
【0141】
【化31】
[式中、Rb05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基、又はフッ素原子である。複数のRb05は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。qは1以上の整数であって、Qq+は、それぞれ独立に、q価の有機カチオンである。]
【0142】
・アニオン部
前記式(I2)中、Rb05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基、又はフッ素原子である。複数のRb05は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
b05におけるフッ素化アルキル基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~8がより好ましく、1~5がさらに好ましい。具体的には、炭素数1~5のアルキル基において、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
中でも、Rb05としては、フッ素原子又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基がさらに好ましい。
【0143】
式(I2)で表される化合物のアニオン部は、下記一般式(b0-2a)で表されるものが好ましい。
【0144】
【化32】
[式中、Rbf05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基である。nbは、1~5の整数である。]
【0145】
式(b0-2a)中、Rbf05における置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基としては、前記Rb05で挙げた、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基と同様である。
中でも、Rbf05としては、炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基がさらに好ましい。
式(b0-2a)中、nbは、1~4の整数が好ましく、2~4の整数がより好ましく、3が最も好ましい。
【0146】
・カチオン部
式(I2)中、qは1以上の整数であって、Qq+は、それぞれ独立に、q価の有機カチオンである。
このQq+としては、上記式(I1)と同様のものが挙げられ、その中でも、一般式(ca-1)で表されるカチオンが好ましく、式(ca-1-1)~(ca-1-47)でそれぞれ表されるカチオンがより好ましく、式(ca-1-35)、式(ca-1-47)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
【0147】
≪(I3)成分≫
(I3)成分は、下記一般式(I3-1)又は(I3-2)で表される化合物である。
【0148】
【化33】
[式中、Rb11~Rb12は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。mは1以上の整数であって、Mm+はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]
【0149】
{(I3-1)成分}
・アニオン部
式(I3-1)中、Rb12は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であって、上述したR’201の説明中の環式基、鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基のうち、置換基を有しないもの又はハロゲン原子以外の置換基を有するものが挙げられる。
b12としては、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。
鎖状のアルキル基としては、炭素数1~10であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
b12の炭化水素基はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(I3-2)のRb11における炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよいハロゲン原子以外の置換基と同様のものが挙げられる。
ここでいう「ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい」とは、ハロゲン原子のみからなる置換基を有する場合を排除するのみではなく、ハロゲン原子を1つでも含む置換基を有する場合(例えば、置換基がフッ素化アルキル基である場合等)を排除するものである。
【0150】
以下に(I3-1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0151】
【化34】
【0152】
・カチオン部
式(I3-1)中、Mm+は、m価の有機カチオンである。
m+の有機カチオンとしては、上記一般式(ca-1)~(ca-5)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、これらの中でも、上記一般式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましい。この中でも、上記一般式(ca-1)中のR201、R202、R203のうちの少なくとも1つが、置換基を有していてもよい炭素数16以上の有機基(アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基またはアルケニル基)であるスルホニウムカチオンが、解像性やラフネス特性が向上することから特に好ましい。
前記の有機基が有していてもよい置換基としては、上記と同様であり、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、オキソ基(=O)、アリール基、上記式(ca-r-1)~(ca-r-10)でそれぞれ表される基が挙げられる。
前記の有機基(アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基またはアルケニル基)における炭素数は、好ましくは16~25、より好ましくは16~20であり、特に好ましくは16~18であり、かかるMm+の有機カチオンとしては、例えば、上記式(ca-1-25)、(ca-1-26)、(ca-1-28)~(ca-1-36)、(ca-1-38)、(ca-1-46)、(ca-1-47)でそれぞれ表されるカチオンが好適に挙げられ、その中でも、上記式(ca-1-29)で表されるカチオンが特に好ましい。
【0153】
{(I3-2)成分}
・アニオン部
式(I3-2)中、Rb11は、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であって、上述したR’201の説明中の環式基、鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基のうち、置換基を有しないもの又はハロゲン原子以外の置換基を有するものが挙げられる。
【0154】
これらのなかでも、Rb11としては、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、ラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの組合せが挙げられる。
エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよく、この場合の置換基としては、下記一般式(y-al-1)~(y-al-7)でそれぞれ表される連結基が好ましい。
【0155】
【化35】
[式中、V’101は単結合または炭素数1~5のアルキレン基であり、V’102は炭素数1~30の2価の飽和炭化水素基である。]
【0156】
V’102における2価の飽和炭化水素基は、炭素数1~30のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~5のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0157】
V’101およびV’102におけるアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基でもよく分岐鎖状のアルキレン基でもよく、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
V’101およびV’102におけるアルキレン基として、具体的には、メチレン基[-CH-];-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;エチレン基[-CHCH-];-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n-プロピレン基)[-CHCHCH-];-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[-CHCHCHCH-];-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[-CHCHCHCHCH-]等が挙げられる。
また、V’101又はV’102における前記アルキレン基における一部のメチレン基が、炭素数5~10の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、R’201の環状の脂肪族炭化水素基(単環式の脂環式炭化水素基、多環式の脂環式炭化水素基)から水素原子をさらに1つ除いた2価の基が好ましく、シクロへキシレン基、1,5-アダマンチレン基又は2,6-アダマンチレン基がより好ましい。
【0158】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基もしくはナフチル基がより好ましい。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状のアルキル基としては、炭素数が1~10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0159】
b11としては、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい環式基が好ましい。
以下に(I3-2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0160】
【化36】
【0161】
・カチオン部
式(I3-2)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(I3-1)中のMm+と同様である。
【0162】
また、(I)成分は、樹脂膜の高弾性化、及び、残渣なく微細構造を形成しやすい点から、露光によりpKa(酸解離定数)が-5以下の酸を発生するカチオン重合開始剤であることが好ましい。より好ましくはpKaが-6以下、さらに好ましくはpKaが-8以下の酸を発生するカチオン重合開始剤を用いることにより、露光に対する高い感度を得ることが可能となる。(I)成分が発生する酸のpKaの下限値は、好ましくは-15以上である。かかる好適なpKaの酸を発生するカチオン重合開始剤を用いることで、高感度化が図られやすくなる。
ここで「pKa(酸解離定数)」とは、対象物質の酸強度を示す指標として一般的に用いられているものをいう。なお、本明細書におけるpKaは、25℃の温度条件における値である。また、pKa値は、公知の手法により測定して求めることができる。また、「ACD/Labs」(商品名、Advanced Chemistry Development社製)等の公知のソフトウェアを用いた計算値を用いることもできる。
【0163】
以下に好適な(I)成分の具体例を挙げる。
【0164】
【化37】
【0165】
【化38】
【0166】
【化39】
【0167】
(I)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(I)成分は、(I1)成分、(I2)成分及び(I3)成分からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、(I1)成分及び(I3)成分からなる群より選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、(I1)成分と(I3)成分とを組み合わせて含むことがさらに好ましい。
【0168】
(I)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.3~5質量部であることが好ましく、0.5~4質量部であることがより好ましく、1~3.5質量部であることがさらに好ましい。
(I)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、充分な感度が得られて、パターンのリソグラフィー特性がより向上する。加えて、硬化膜の強度がより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、感度が適度に制御され、良好な形状のパターンが得られやすくなる。
【0169】
<任意成分>
本実施形態の感光性組成物は、上述した(A)成分及び(I)成分以外に、必要に応じてその他成分を含有してもよい。
実施形態の感光性組成物には、所望により、混和性のある添加剤、例えば金属酸化物(M)、シランカップリング剤、増感剤成分、溶剤、膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、塩基性化合物、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0170】
≪金属酸化物(M)≫
本実施形態の感光性組成物は、(A)成分及び(I)成分に加えて、強度が高められた硬化膜が得られやすいことから、さらに、金属酸化物(M)(以下「(M)成分」ともいう)を含有してもよい。また、(M)成分を併有することで、良好な形状で高解像のパターンを形成し得る。
(M)成分としては、例えば、ケイ素(金属ケイ素)、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の金属の酸化物が挙げられる。これらの中でも、ケイ素の酸化物が好ましく、この中でもシリカを用いることが特に好ましい。
【0171】
また、(M)成分の形状は、粒子状であることが好ましい。
かかる粒子状の(M)成分としては、体積平均粒子径が5~40nmの粒子群からなるものが好ましく、体積平均粒子径が5~30nmの粒子群からなるものがより好ましく、体積平均粒子径が10~20nmの粒子群からなるものがさらに好ましい。
(M)成分の体積平均粒子径が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、硬化膜の強度が高められやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、パターンの形成において、残渣が生じにくくなり、より高解像のパターンが形成されやすくなる。加えて、樹脂膜の透明性が高められる。
(M)成分の粒子径は、露光光源に応じて適宜選択すればよい。一般的に、光の波長に対して、1/10以下の粒子径を持つ粒子は、光散乱の影響はほぼ考えなくてよいとされている。このため、例えばi線(365nm)でのフォトリソグラフィーにより微細構造を形成する場合、(M)成分としては、1次粒子径(体積平均値)10~20nmの粒子群(特に好ましくはシリカ粒子群)を用いることが好ましい。
【0172】
(M)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(M)成分を含む場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、10~40質量部であることがより好ましい。
(M)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、硬化膜の強度がより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、樹脂膜の透明性がより高められる。
【0173】
≪シランカップリング剤≫
本実施形態の感光性組成物は、基板との接着性を向上させるため、さらに接着助剤を含有していてもよい。この接着助剤としては、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えばカルボキシ基、メタクリロイル基、イソシアナート基、エポキシ基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤を含む場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.3~15質量部であることがより好ましく、0.5~10質量部であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤の含有量が、前記の好ましい範囲であると、硬化膜の強度がより高められる。加えて、硬化膜と基板との接着性がより強められる。
【0174】
≪増感剤成分≫
本実施形態の感光性組成物は、さらに、増感剤成分を含有してもよい。
増感剤成分としては、露光によるエネルギーを吸収して、そのエネルギーを他の物質に伝達し得るものであれば特に限定されるものではない。
増感剤成分として具体的には、ベンゾフェノン、p,p’-テトラメチルジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光増感剤、カルバゾール系光増感剤、アセトフェン系光増感剤、1,5-ジヒドロキシナフタレン等のナフタレン系光増感剤、フェノール系光増感剤、9-エトキシアントラセン等のアントラセン系光増感剤、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン、フェノチアジン、アントロン等の公知の光増感剤を用いることができる。
増感剤成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増感剤成分を含む場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~15質量部であることが好ましく、0.3~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることがさらに好ましい。
増感剤成分の含有量が前記の好ましい範囲であると、感度及び解像性がより高められる。
【0175】
≪溶剤≫
本実施形態の感光性組成物は、さらに、溶剤(以下「(S)成分」ということがある)を含有してもよい。
(S)成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
(S)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0176】
(S)成分を含む場合の使用量は、特に限定されず、感光性組成物を基板等に液垂れが無く塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。
たとえば、固形分濃度が50質量%以上となるように(S)成分を使用することができ、60質量%以上となるように(S)成分を使用することができる。
また、(S)成分を実質的に含まない態様(すなわち、固形分濃度が100質量%である態様)も採用できる。
【0177】
以上説明した本実施形態のネガ型感光性組成物においては、エポキシ基含有化合物(A)の総質量(100質量%)に対して、(A1)成分:エポキシ当量が300g/eq.以上のエポキシ樹脂60~90質量%と、(A2)成分:エポキシ当量が前記(A1)成分より小さい上記一般式(A2-1)で表されるエポキシ樹脂10~40質量%と、を組み合わせて用いている。
【0178】
このようなエポキシ当量の異なる特定のエポキシ基含有化合物を併有するネガ型感光性組成物を適用することで、特定のエポキシ基含有化合物同士の相乗的な作用により、形成する硬化膜内部の応力が低く抑えられるため、基板と、壁となる材料との密着性の向上を図ることができる。加えて、本実施形態のネガ型感光性組成物を用いて作製した中空構造体は、故障を生じにくく信頼性が高いものになる。
また、このようなエポキシ当量の異なる特定のエポキシ基含有化合物を併有するネガ型感光性組成物を適用することで、特定のエポキシ基含有化合物同士の相乗的な作用により、形成する硬化膜の熱時弾性率が高められて、耐モールド性の向上を図ることができる。
【0179】
かかる本実施形態のネガ型感光性組成物においては、硬化膜の基板に対する密着性の点から、硬化物における応力が20MPa以下であることが好ましく、18MPa以下であることがより好ましく、16MPa以下であることがさらに好ましく、14MPa以下であることが特に好ましい。
【0180】
硬化物における応力は、残留応力測定装置を用いて測定することができる。
【0181】
かかる本実施形態のネガ型感光性組成物においては、モールド耐性の点から、硬化物における150℃の熱時弾性率E*が40MPa以上であることが好ましく、42MPa以上であることがより好ましく、45MPa以上であることがさらに好ましく、50MPa以上であることが特に好ましい。
【0182】
硬化物における150℃の熱時弾性率E*は、硬化膜について、周波数1MHzで粘弾性測定した場合における温度150℃での測定値とする。
【0183】
また、かかる実施形態のネガ型感光性組成物によれば、中空封止構造の作製において、スペーサに必要とされる厚さの膜を形成でき、かつ、良好な形状で残渣等がなく高解像度のパターニングが可能である。
【0184】
さらに、本実施形態のネガ型感光性組成物は、厚膜で膜を形成した場合にも同様に前記パターニングが可能であり、良好な特性を得られるものである。これより、本実施形態のネガ型感光性組成物は、感光性ドライフィルムレジスト用としても有用なものである。
【0185】
(パターン形成方法)
本実施形態のパターン形成方法は、上述した実施形態のネガ型感光性組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程(以下「膜形成工程」という)と、前記感光性樹脂膜を露光する工程(以下「露光工程」という)と、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像してネガ型パターンを形成する工程(以下「現像工程」という)と、を有する。
本実施形態のパターン形成方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
【0186】
[膜形成工程]
まず、支持体上に、上述した実施形態のネガ型感光性組成物を、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等の公知の方法で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば50~150℃の温度条件にて2~60分間施し、感光性樹脂膜を形成する。
【0187】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコン、窒化シリコン、チタン、タンタル、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、パラジウム、チタンタングステン、銅、クロム、鉄、アルミニウムなどの金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
【0188】
本実施形態のパターン形成方法は、支持体として、例えば、通信端末に搭載されるSAWデバイス用途のタンタル酸リチウム基板(LiTaO基板)、ニオブ酸リチウム基板(LiNbO基板)を用いることが好ましい。
【0189】
ネガ型感光性組成物により形成される感光性樹脂膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、10~100μm程度が好ましい。上述した実施形態のネガ型感光性組成物は、厚膜で膜を形成した場合にも良好な特性を得られるものである。
【0190】
[露光工程]
次に、形成された感光性樹脂膜に対し、公知の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光、又はマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行う。
前記選択的露光を行った後、必要に応じてベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80~150℃の温度条件にて40~1200秒間、好ましくは40~1000秒間、より好ましくは60~900秒間施す。
【0191】
露光に用いる波長は特に限定されず、放射線、例えば波長が300~500nmの紫外線、i線(波長365nm)又は可視光線を選択的に照射(露光)する。これらの放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。
ここで放射線とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線などを意味する。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の膜厚などによって異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100~2000mJ/cmである。
【0192】
感光性樹脂膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
【0193】
露光工程後の感光性樹脂膜は、透明性が高く、例えばi線(波長365nm)を照射した際のヘーズ値が、好ましくは3%以下、より好ましくは1.0~2.7%である。
このように、上述した実施形態のネガ型感光性組成物を用いて形成された感光性樹脂膜は、透明性が高い。このため、パターン形成における露光の際、光透過性が高まり、良好なリソグラフィー特性のネガ型パターンが得られやすい。
かかる露光工程後の感光性樹脂膜のヘーズ値は、JIS K 7136(2000)に準拠した方法を用いて測定される。
【0194】
[現像工程]
次に、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)で現像する。現像の後、好ましくはリンス処理を行う。必要に応じてベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0195】
有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0196】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)等が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶剤としては、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)が好ましい。
【0197】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶剤としては、酢酸ブチル又はPGMEAが好ましい。
【0198】
ニトリル系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、プロピオ二トリル、バレロニトリル、ブチロ二トリル等が挙げられる。
【0199】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、非イオン性のフッ素系界面活性剤、又は非イオン性のシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0200】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば、現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0201】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、たとえば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
リンス処理は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
【0202】
上述した膜形成工程、露光工程及び現像工程により、パターンを形成できる。
【0203】
上述した実施形態のパターン形成方法においては、上述した第1の態様であるネガ型感光性組成物が用いられているため、硬化膜内部の応力が低く抑えられ、かつ、弾性率が高くてモールド耐性が高められたパターンを形成することができる。
かかる実施形態のパターン形成方法は、中空構造体の側壁(Wall)の作製に有用な方法である。かかるパターン形成方法の適用により、ヒートサイクル試験に優れ、故障を生じにくく信頼性が高い中空構造体を製造することができる。
加えて、実施形態のパターン形成方法によれば、高感度化が図れ、残渣が低減されて良好な形状のパターンを形成することができる。
【0204】
(硬化膜)
本実施形態の硬化膜は、上述した実施形態のネガ型感光性組成物が硬化したものである。
【0205】
かかる本実施形態の硬化膜は、基板に対する密着性の点から、硬化物における応力が20MPa以下であることが好ましく、4MPa以上20MPa以下であることがより好ましく、7MPa以上20MPa以下であることがさらに好ましく、10MPa以上20MPa以下であることが特に好ましい。
【0206】
かかる本実施形態の硬化膜は、モールド耐性の点から、硬化物における150℃の熱時弾性率E*が40MPa以上であることが好ましく、40MPa以上100MPa以下であることがより好ましく、40MPa以上95MPa以下であることがさらに好ましく、40MPa以上90MPa以下であることが特に好ましい。
【0207】
硬化膜の製造方法:
本実施形態の硬化膜の製造方法は、上述した実施形態のネガ型感光性組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程(i)と、前記感光性樹脂膜を硬化させて硬化膜を得る工程(ii)と、を有する。
工程(i)の操作は、上述した[膜形成工程]と同様にして行うことができる。ベーク処理は、例えば温度80~150℃の温度条件にて40~600秒間の条件で行うことができる。
工程(ii)での硬化処理は、例えば温度100~250℃、0.5~2時間の条件で行うことができる。
【0208】
実施形態の硬化膜の製造方法は、工程(i)及び工程(ii)以外に、その他工程を有してもよい。例えば、工程(i)と工程(ii)との間に、上述した[露光工程]を有してもよく、工程(i)で形成された感光性樹脂膜に対して選択的露光を行い、必要に応じてベーク(PEB)処理が施された感光性樹脂膜(プレ硬化膜)を硬化させて、硬化膜を得ることもできる。
上述した実施形態の硬化膜の製造方法によれば、支持体との密着性の向上、及び耐モールド性の向上をいずれも図ることができ、さらに、マスクパターンを忠実に再現した硬化膜が容易に製造できる。
【0209】
(中空構造体の製造方法)
本実施形態の中空構造体の製造方法は、凹部と、この凹部の開口面を塞ぐ天板部と、からなる中空構造体の製造方法であって、下記の工程(0-i)と、工程(0-ii)と、工程(i)と、工程(ii)と、工程(iii)と、工程(iv)と、工程(v)とを有する。
【0210】
工程(0-i):上述したパターン形成方法を使用して、表面に凹部を有する基板を用意する工程
工程(0-ii):ネガ型の感光性樹脂膜を有する感光性レジストフィルムを用意する工程
工程(i):前記感光性レジストフィルムの感光性樹脂膜表面が、前記基板における前記凹部の開口面を塞ぐように、前記感光性レジストフィルムを配置する工程
工程(ii):前記工程(i)後、前記感光性樹脂膜を露光する工程
工程(iii):前記工程(ii)後の前記感光性樹脂膜に対して加熱処理を行う工程
工程(iv):前記工程(iii)後、前記感光性樹脂膜を現像して、前記凹部の開口面を塞ぐ屋根パターンを形成する工程
工程(v):前記工程(iv)後の前記屋根パターンに対し、さらに加熱処理を行うことにより硬化させて、前記天板部が前記感光性樹脂膜の硬化体からなる中空構造体を得る工程
【0211】
[工程(0-i)]
本実施形態における工程(0-i)では、上述したパターン形成方法を使用して、表面に凹部を有する基板を用意する。具体的には、中空構造体の側壁(Wall)となるネガ型パターンを基板上に形成する。
側壁(Wall)の幅(支持体に対して水平方向の寸法)及び高さ(支持体に対して垂直方向の寸法)は、凹部に収容される電子デバイスの種類に応じて決定される中空部(キャビティ)の大きさに応じて適宜設定することができる。
側壁(Wall)の幅は、例えば10~100μmが好ましい。
中空構造体においてキャビティとなる空間の底面は、例えば、縦500μm×横150μmの四角形状が挙げられる。
【0212】
[工程(0-ii)]
本実施形態における工程(0-ii)では、ネガ型の感光性樹脂膜を有する感光性レジストフィルムを用意する。
【0213】
≪感光性レジストフィルムについて≫
本実施形態における感光性レジストフィルムは、例えば、上述のエポキシ基含有樹脂((A)成分)及びカチオン重合開始剤((I)成分)を含有するネガ型の感光性樹脂膜を有する。
かかる感光性レジストフィルムを構成する成分についての説明は上記と同様である。
【0214】
かかる感光性レジストフィルムを用いて感光性樹脂膜を形成し、該感光性樹脂膜に対して選択的に露光を行うと、該感光性樹脂膜の露光部では、(I)成分から酸が発生し、該酸の作用により(A)成分中のエポキシ基が開環重合して、有機溶剤を含有する現像液に対する該(A)成分の溶解性が減少する一方で、該感光性樹脂膜の未露光部では、有機溶剤を含有する現像液に対する該(A)成分の溶解性が変化しないため、該感光性樹脂膜の露光部と未露光部との間で、有機溶剤を含有する現像液に対する溶解性の差が生じる。すなわち、該感光性樹脂膜はネガ型である。そのため、該感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像すると、未露光部が溶解除去されて、ネガ型パターンが形成される。
【0215】
ここで、感光性レジストフィルムが有するネガ型の感光性樹脂膜は、典型的にはBステージ状(半硬化状態)の樹脂材料により構成される。
感光性レジストフィルムとしては、感光性樹脂膜が基材フィルムに積層した積層フィルムからなるものが挙げられる。
【0216】
かかる感光性レジストフィルムは、基材フィルム上に、(A)成分及び(I)成分が溶剤に溶解したネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて感光性樹脂膜を形成することにより製造できる。
基材フィルム上へのネガ型感光性樹脂組成物の塗布は、アプリケーター、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等による適宜の方法を用いて行えばよい。
感光性樹脂膜の厚さは、100μm以下が好ましく、より好ましくは5~50μmである。
【0217】
基材フィルムには、公知のものを使用でき、例えば熱可塑性樹脂フィルム等が用いられる。この熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられる。基材フィルムの厚さは、好ましくは2~150μmである。
【0218】
上記工程(0-i)で用意した、表面に凹部を有する基板と、上記工程(0-ii)で用意した感光性レジストフィルムとを用いて、下記工程(i)~工程(v)を行う。
【0219】
[工程(i)]
工程(i)では、感光性レジストフィルムの感光性樹脂膜表面が、基板における凹部の開口面を塞ぐように、感光性レジストフィルムを配置する。
感光性レジストフィルムは、側壁を介して基板と対向するように配置される。そして、基板と、側壁と、感光性樹脂膜とで囲まれた中空の密閉空間(キャビティ)が形成される。
【0220】
[工程(ii)]
工程(ii)では、感光性樹脂膜を露光する。
例えば、感光性樹脂膜に対し、公知の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたフォトマスクを介した選択的露光を行う。
【0221】
露光に用いる波長は特に限定されず、放射線、例えば波長が300~500nmの紫外線、i線(波長365nm)又は可視光線を選択的に照射(露光)する。これらの放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。
【0222】
[工程(iii)]
工程(iii)では、露光後の感光性樹脂膜に対して加熱処理、いわゆるポストエクスポージャーベーク(PEB)処理を行う。
PEB処理は、例えば、80~150℃の温度条件にて40~600秒間、好ましくは60~300秒間で行う。
工程(iii)における加熱処理により、露光後の感光性樹脂膜は、(A)成分中のエポキシ基が開環重合した露光部と、変化のない未露光部となる。
【0223】
[工程(iv)]
工程(iv)では、PEB処理後の感光性樹脂膜を現像してネガ型パターンを形成する。
ここでの現像は、上述した[現像工程]と同様にして行うことができる。現像の後、好ましくはリンス処理を行う。
工程(iv)における現像により、未露光部が溶解除去されて、ネガ型パターンとして天板部(凹部の開口面を塞ぐ屋根(Roof))となる露光部が残像する。
【0224】
[工程(v)]
工程(v)では、現像後のネガ型パターン(露光部)に対し、さらに加熱処理(キュア操作)を行うことにより硬化させて、天板部が感光性樹脂膜の硬化体からなる中空構造体を得る。
【0225】
本実施形態の中空構造体の製造方法によれば、支持体との密着性の向上、及び耐モールド性の向上をいずれも図ることができ、キュア操作による天板部の変形が抑制され、かつ、強度がより高められた中空構造体を安定に製造することができる。
本実施形態の中空構造体の製造方法により製造される中空構造体は、凹部と、この凹部の開口面を塞ぐ天板部とからなる。当該中空構造体は、SAWフィルター、MEMS、各種センサー等で利用される中空パッケージに好適に用いることができる。
【実施例
【0226】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0227】
<ネガ型感光性組成物の調製>
(実施例1~4、比較例1~5)
表1に示す各成分を、3-メトキシブチルアセテートに混合して溶解し、PTFEフィルター(孔径1μm、PALL社製)を用いて濾過を行い、各例のネガ型感光性組成物(固形分80~85質量%の溶液;23℃の粘度1.0Pa・s)をそれぞれ調製した。
【0228】
【表1】
【0229】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は、各成分の配合量(質量部;固形分換算)である。
(A1)-1:下記一般式(A1-1)で表されるエポキシ基含有樹脂。商品名「EPICLON1055」、DIC製。エポキシ当量470g/eq.。
(A1)-2:下記一般式(A1-2)で表されるエポキシ基含有樹脂。商品名「jER-4005P」、三菱ケミカル株式会社製。エポキシ当量1070g/eq.。
【0230】
【化40】
【0231】
(A2)-1:下記化学式(A2-1)で表される化合物。商品名「jER-157S70」、三菱ケミカル株式会社製。エポキシ当量210g/eq.。
【0232】
【化41】
【0233】
(I)-1:下記化学式(I1-1)で表されるカチオン重合開始剤。商品名「CPI-310B」、サンアプロ株式会社製。
(I)-2:下記化学式(I3-1-1)で表されるカチオン重合開始剤。商品名「HS-1CS」、サンアプロ株式会社製。
【0234】
【化42】
【0235】
<評価(1)>
各例のネガ型感光性組成物を用いて硬化膜を形成し、以下に示す応力の評価、熱時弾性率の評価をそれぞれ行った。
【0236】
[応力の評価]
残留応力測定装置(テンコール社製、型式名FLX-2320)を用いて、予め、厚み625μm±25μmの6インチシリコンウェーハの「反り量」を測定した。
その6インチシリコンウェーハ上に、上記で得られた各例のネガ型感光性組成物を、アプリケーターを用いて均一にそれぞれ塗布し、加熱温度115℃、5分間でベーク処理(PAB)を行って感光性樹脂膜(膜厚15μm)を形成した。
次に、前記感光性樹脂膜を、200mJ/cmの照射量(ghiブロードバンド)で露光した。
次に、前記露光後の感光性樹脂膜を、90℃のホットプレート上で、5分間の露光後加熱を行い、プレ硬化膜を得た。
その後、得られたプレ硬化膜を、窒素雰囲気下、200℃で1時間加熱して硬化させることにより、目的の硬化膜を得た。
【0237】
前記硬化膜が形成した6インチシリコンウェーハの反り量を、前記の残留応力測定装置を用いて測定し、シリコンウェーハと硬化膜との間に生じた応力[MPa]を評価した。この評価結果を表2に示した。
応力の評価において、「○」と評価したものは、応力が20MPa以下であったものであり、「×」と評価したものは、応力が20MPaを超えたものである。
【0238】
[熱時弾性率の評価]
6インチシリコンウェーハ上に、上記で得られた各例のネガ型感光性組成物を、アプリケーターを用いて均一にそれぞれ塗布し、加熱温度115℃、5分間でベーク処理(PAB)を行って感光性樹脂膜(膜厚15μm)を形成した。
次に、前記感光性樹脂膜を、200mJ/cmの照射量(ghiブロードバンド)で露光した。
次に、前記露光後の感光性樹脂膜を、90℃のホットプレート上で、5分間の露光後加熱を行い、プレ硬化膜を得た。
次に、現像液としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いて、23℃にて120秒間パドル現像を行い、振り切り乾燥の後、窒素雰囲気下、200℃で1時間加熱して硬化させることにより、5mm×10mmの四角形状の硬化膜を得た。
得られた硬化膜の強度について、熱時弾性率を指標として評価した。熱時弾性率は以下のようにして測定した。この測定結果を表2に示した。
【0239】
得られた硬化膜をシリコンウェーハから剥離し、150℃における硬化膜の熱時弾性率(E*/MPa)を、以下の評価装置及び測定条件により測定した。
・評価装置:Reogel E-4000(UBM社製)
・測定条件:引張モード、周波数1MHz、チャック間距離10mm
熱時弾性率の評価において、「○」と評価したものは、熱時弾性率が40MPa以上であったものであり、「×」と評価したものは、熱時弾性率が40MPa未満であったものである。
【0240】
<評価(2)>
また、各例のネガ型感光性組成物を用いて中空構造体を作製し、以下に示す信頼性の評価、モールド耐性の評価をそれぞれ行った。
【0241】
≪中空構造体の製造≫
天板部となる屋根(Roof)材料として、感光性樹脂組成物TMMF SP1030HQ3により形成されたネガ型の感光性樹脂膜を有する感光性レジストフィルムを用意した。
また、基板には、タンタル酸リチウム基板を用いた。
【0242】
前記タンタル酸リチウム基板上に、上記で得られた各例のネガ型感光性組成物を、アプリケーターを用いて均一にそれぞれ塗布し、加熱温度115℃、5分間でベーク処理(PAB)を行って感光性樹脂膜(膜厚15μm)を形成した。
次に、前記感光性樹脂膜に、200mJ/cmの照射量(ghiブロードバンド)で露光した。
次に、前記露光後の感光性樹脂膜を、90℃のホットプレート上で、5分間の露光後加熱を行い、プレ硬化膜を得た。
次に、現像液としてPGMEAを用いて、23℃にて120秒間パドル現像を行い、振り切り乾燥の後、窒素雰囲気下、200℃で1時間加熱して硬化させた。
以上により、タンタル酸リチウム基板上に、縦500μm×横150μmの四角形周囲を硬化膜からなる幅50μmの側壁(Wall)が囲む凹部パターンが形成された、壁付き基板を得た。
【0243】
次に、前記の壁付き基板における前記凹部の開口面を塞ぐように、前記感光性レジストフィルムを配置(ラミネート)した。
【0244】
次いで、Canon PLA-501 ghi線 アライナーを用い、前記感光性レジストフィルムに対し、所定のマスクパターンを介して、200mJ/cm(i線換算)を露光した。
【0245】
次いで、前記露光の後の感光性レジストフィルムに対し、オーブンにて温度90℃、5分間の露光後加熱を行った。
【0246】
次いで、露光後加熱の後の感光性レジストフィルムを、現像液としてPGMEAを用いて、23℃にて120秒間パドル現像を行うことにより、天板部(前記凹部の開口面を塞ぐ屋根(Roof))となる屋根パターンを形成した。
【0247】
前記屋根パターンに対し、さらに、オーブンにて温度200℃、60分間の加熱処理を行うことにより硬化させて、中空構造体(キャビティサイズ:縦500μm×横150μm×高さ45μm)を製造した。
【0248】
[信頼性の評価]
各例のネガ型感光性組成物を用いて製造した中空構造体を、それぞれ、恒温槽内に静置した。前記中空構造体が静置されている恒温槽内の温度を、室温から125℃まで昇温して125℃で15分間保持した後、-55℃まで冷却して-55℃で15分間保持した後、室温に戻すサイクルを、200回繰り返すヒートサイクル試験を実施した。
200サイクルのヒートサイクル試験の終了後の中空構造体を観察し、信頼性として基板と、中空構造体との間の剥がれの有無を顕微鏡にて評価した。基板と、中空構造体との間に、剥がれが生じなかったものを「○」と評価し、生じたものを「×」と評価した。この評価結果を表2に示した。
【0249】
[モールド耐性の評価]
各例のネガ型感光性組成物を用いて製造した中空構造体に、エポキシ樹脂モールディングコンパウンド材を使用し、コンプレッションモールディングを行った。コンプレッションモールディングは、モールディング装置としてCPM-1080(TOWA社製)を用いて、圧力6Mpa・温度130℃・時間10分間の条件で行った。その後さらに、中空構造体に対して、160℃で120分間加熱処理(キュア操作)をした。
前記キュア操作の後の中空構造体の断面形状をSEMで観察し、壁材が変形していないものを「○」と評価し、壁材が変形しているものを「×」と評価した。この評価結果を表2に示した。
【0250】
【表2】
【0251】
表2に示す結果から、本発明を適用した実施例1~4のネガ型感光性組成物によれば、硬化膜内部の応力が低く抑えられるとともに、熱時弾性率が高められていることが確認できる。
かかる実施例1~4のネガ型感光性組成物を用いることにより、電子部品における中空封止構造の作製において、基板等に対する密着性の向上、及び耐モールド性の向上をいずれも図ることができる。
加えて、実施例1~4のネガ型感光性組成物により製造された中空構造体は、ヒートサイクル試験の結果が良好であり、故障を生じにくく信頼性が高いものであること、が確認できる。
【0252】
一方、比較例1および比較例4のネガ型感光性組成物は、(A)成分が(A1)成分から構成されているため、熱時弾性率評価において150℃40MPaを満たさず、モールド耐性の評価が「×」であった。
比較例2および比較例5のネガ型感光性組成物は、(A1)成分と(A2)成分とが同量の質量部から構成されているため、応力の評価が「×」であった。
比較例3のネガ型感光性組成物は、(A)成分が(A2)成分から構成されているため、応力の評価が「×」であった。