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特許7523549電気絶縁性に優れたエチレン/アルファ-オレフィン共重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】電気絶縁性に優れたエチレン/アルファ-オレフィン共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/02 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
C08F210/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022544402
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 KR2021004828
(87)【国際公開番号】W WO2021210958
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0046025
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0103861
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・サム・ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・クク・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ヒョン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ギル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ジ・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウク・ハン
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2071594(KR,B1)
【文献】国際公開第2007/034920(WO,A1)
【文献】特表2008-545015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(c)の条件を満たし、o-ジクロロベンゼンを溶媒としたクロス分別クロマトグラフィー(CFC、Cross-Fractionation Chromatography)で得られた曲線で最高点ピークを有する溶離温度(Te)は25℃以上であり、エチレンとアルファ-オレフィン系単量体を共重合して製造され、前記アルファ-オレフィン系単量体は、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択される1種以上を含む、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
(a)密度は、0.85~0.89g/cc;
(b)示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)で得られた曲線で最高点ピークを有する溶融温度(Tm)は、60℃超~90℃;および
(c)前記溶融温度(Tm)と溶離温度(Te)は、下記式1を満たす;
[式1]
35℃<Tm-Te<65℃。
【請求項2】
分子量分布は、1.5~2.5である、請求項1に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【請求項3】
前記溶離温度(Te)は、25~50℃である、請求項1に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【請求項4】
溶融指数は、1~100dg/分である、請求項1に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【請求項5】
重量平均分子量は、40,000~150,000g/molである、請求項1に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【請求項6】
前記アルファ-オレフィンは、共重合体に対して、0超99モル%以下で含まれる、請求項1に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月16日付けの韓国特許出願第10-2020-0046025号および2020年8月19日付けの韓国特許出願第10-2020-0103861号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、体積抵抗と光透過率に優れたエチレン/アルファ-オレフィン共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
地球環境問題、エネルギー問題などが深刻になりつつあるところ、クリーンで枯渇の恐れがないエネルギーの生成手段として太陽電池が注目されている。太陽電池は、建物の屋根など、屋外で使用する場合、モジュールの形態で使用することが一般的であるが、太陽電池モジュールの製造時には、結晶型太陽電池モジュールを得るために、太陽電池モジュール用保護シート(表面側透明保護部材)/太陽電池封止材/結晶型太陽電池素子/太陽電池封止材/太陽電池モジュール用保護シート(裏面側保護部材)の順に積層して製造する。
【0004】
太陽電池封止材として、一般的に、エチレン/酢酸ビニル共重合体やエチレン/アルファ-オレフィン共重合体などが使用されている。また、太陽電池封止材には、長期間の耐候性が求められる点で、添加剤として光安定剤が通常含まれており、ガラスに代表される表面側透明保護部材もしくは裏面側保護部材の密着性を考慮して、シランカップリング剤なども一般的に含まれている。しかし、エチレン/酢酸ビニル共重合体などを太陽電池封止材の構成材料として使用する場合、エチレン/酢酸ビニル共重合体が分解して発生する酢酸ガスなどの成分が太陽電池素子に影響を及ぼす可能性が懸念される。
【0005】
また、最近の太陽光発電普及に伴って、メガソーラなど、発電システムの大規模化が進められており、伝送損失を下げるなどの目的として、システム電圧の高電圧化の動きもある。システム電圧が上昇することで、太陽電池モジュールでは、フレームとセルとの電位差が大きくなる。すなわち、太陽電池モジュールのフレームは、一般的に接地されており、太陽電池アレイのシステム電圧が600V~1000Vになると、最も電圧が高くなるモジュールでは、フレームとセルとの電位差がそのままシステム電圧の600V~1000Vになり、高電圧が印加された状態で昼の間に発電を維持する。また、ガラスは、封止材と比較して電気抵抗が低く、フレームを介在してガラスとセルとの間にも高電圧が発生する。すなわち、昼の間に発電している状況下で、直列接続されたモジュールは、セルとモジュールとの間およびセルとガラス面との電位差が接地側から順に大きくなり、最も大きいところではほとんどシステム電圧の高電圧の電位差が維持される。このような状態で使用された太陽電池モジュールの中には、出力が大きく低下し、特性劣化が生じるPID(電圧誘起出力低下(Potential Induced Degradation))現象が発生した結晶系発電素子を使用したモジュールの例も報告されている。したがって、この問題を解決するために、太陽電池素子に直接接している太陽電池封止材には、より高い固有体積抵抗率が求められている。
【0006】
電気抵抗としても知られている体積抵抗または比抵抗(ρ)は、物質1mの対向する面の間の電気抵抗として定義されるが、この体積抵抗が、前記の適用するところのすべてにおいて予め定められた範囲内で再現されることができ、永久的な成形製品を取得することが重要である。高電圧電力ケーブル用電気絶縁材料分野において、高圧加工した低密度ポリエチレン、架橋結合したポリエチレンなどが、優れた電気的特性によって広く使用されてきた。高圧電力ケーブルが有する不都合の一つは、電力の伝達中に発現する電力損失であり、電力損失の減少は、絶縁材料の高圧特性、特に、体積抵抗を増進させることで行われることができる。しかし、電力ケーブル用絶縁材料は、内部伝導体付近に対しては電流を通過させて発生させた熱によって高温(約90℃)まで加熱されるが、外部伝導体付近は常温を維持するが、従来のポリエチレンは、電流の流れによって内部伝導体付近で著しい体積抵抗の降下を示す。
【0007】
このように、体積抵抗に優れ、太陽電池封止材など、高い絶縁性が求められる物質として広く活用することができるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体の開発が依然として必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-258439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、体積抵抗および光透過率がいずれも優秀に実現されて、絶縁材として有用に活用することができるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、下記(a)~(c)の条件を満たすエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を提供する。
(a)密度は、0.85~0.89g/cc;
(b)示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)で得られた曲線で最高点ピークを有する溶融温度(Tm)は、40~90℃;および
(c)前記溶融温度(Tm)とクロス分別クロマトグラフィー(CFC、Cross-Fractionation Chromatography)で得られた曲線で最高点ピークを有する溶離温度(Te)は、下記式1を満たす;
[式1]
35℃<Tm-Te<65℃。
【発明の効果】
【0011】
本発明で定義した条件をすべて満たすエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、高い体積抵抗を有して絶縁性に優れることから、電機電子産業分野において様々な用途に広く利用可能であり、特に、太陽電池モジュールに使用する際、PID現象を最大限に遅延させ、高い光透過率を示すことで、優れたモジュール効率を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関する理解に資するため、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
本発明の説明および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、本発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0014】
本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、下記(a)~(c)の条件を満たすことを特徴とする。
(a)密度は、0.85~0.89g/cc;
(b)示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)で得られた曲線で最高点ピークを有する溶融温度(Tm)は、40~90℃;および
(c)前記溶融温度(Tm)とクロス分別クロマトグラフィー(CFC、Cross-Fractionation Chromatography)で得られた曲線で最高点ピークを有する溶離温度(Te)は、下記式1を満たす;
[式1]
35℃<Tm-Te<65℃。
【0015】
本発明は、体積抵抗が高くて優れた電気絶縁性を示すエチレン/アルファ-オレフィン共重合体に関し、本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、DSCで測定された溶融温度とCFCで測定された溶離温度との差が特定の範囲を満たすことから、体積抵抗が高いとともに優れた光透過率を有することを特徴とする。
【0016】
具体的には、本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、後述するように、化学式1および化学式2で表される遷移金属化合物を混合して触媒として使用することで製造されるが、化学式1で表される遷移金属化合物は、触媒の構造的な特徴上、アルファ-オレフィン系単量体の導入が難しく、高密度領域の共重合体が製造される傾向が現れ、化学式2で表される遷移金属化合物は、多量のアルファ-オレフィンが導入可能であることから超低密度領域の重合体(エラストマー)も製造することができ、前記二つの遷移金属化合物は、それぞれ単独で使用した時に、アルファ-オレフィン系単量体を混入させる共重合性が相違する。
【0017】
これらの混合組成物を触媒として使用して製造された本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、アルファ-オレフィン系単量体が多量混入された低密度領域とアルファ-オレフィン系単量体が少量混入された高密度領域がすべて存在する共重合体であり、Tm-Teの値が所定値以上に示されるが、これは、高結晶性領域と低結晶性領域がすべて含有されており、結晶性分布が広く、自由体積(free volume)が少ないということを意味し、したがって、重合体の電荷移動度(mobility)が低いため、体積抵抗が高く示される。また、Tm-Teの値が高すぎる場合、かえって低結晶性領域によって体積抵抗が低下し、高結晶性領域によって光透過率も低下するため、本発明では、優れた体積抵抗および光透過率をいずれも実現することができる適切な範囲のTm-Teの値を導き出し、これを満たすエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を開発したものである。
【0018】
本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、密度が0.85~0.89g/ccの範囲の低密度である重合体であり、具体的には、前記密度は、0.850g/cc以上、0.860g/cc以上、または0.870g/cc以上であることができ、0.890g/cc以下、または0.880g/cc以下であることができる。この際、前記密度は、ASTM D-792に準じて測定された密度を意味し得る。
【0019】
通常、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の密度は、重合時に使用される単量体の種類と含量、重合度などの影響を受け、共重合体の場合、共単量体の含量による影響を大きく受ける。この際、共単量体の含量が多いほど、低密度のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体が製造されることができ、共単量体が共重合体内に導入され得る含量は、触媒固有の共重合性に依存的であり得る。
【0020】
本発明の共重合体は、化学式1および化学式2で表される化合物を触媒として使用して製造された共重合体であり、上記のような低密度を示し、結果、優れた加工性を示すことができる。
【0021】
本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)で得られた曲線で最高点ピークを有する溶融温度(Tm)とクロス分別クロマトグラフィー(CFC、Cross-Fractionation Chromatography)で得られた曲線で最高点ピークを有する溶離温度(Te)が下記式1を満たす。
【0022】
[式1]
35℃<Tm-Te<65℃
【0023】
ここで、溶融温度は、温度に対する熱流量で表現されるDSC曲線で最も高いピークの最高点温度を意味し、溶離温度は、温度に対する溶出量(dC/dT)で表現されるCFC溶出曲線で最も高いピークの最高点温度を意味する。
【0024】
前記クロス分別クロマトグラフィー(CFC、Cross-Fractionation Chromatography)とは、昇温溶出分別(TREF、Temperature Rising Elution Fractionation)とゲル濾過クロマトグラフィー(GPC、Gel Filtration Chromatography)を組み合わせた方法であり、これにより、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の結晶性分布を測定することができる。具体的には、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体を溶媒に完全に溶解させた高温の試料溶液を不活性担体を充填したカラム内に注入し、カラムの温度を降下させて試料を充填剤の表面に付着させた後、前記カラム内にo-ジクロロベンゼンが流れるようにしてカラムの温度を徐々に上昇させる。各温度で溶出されるオレフィン系共重合体の濃度を検出し、同時に各温度で溶出した成分を分画(fraction)ごとにオンラインでGPCに送ってクロマトグラムを得た後、溶出成分の結晶性が高いほど溶出温度も高くなることから、溶出温度とエチレン/アルファ-オレフィン共重合体の溶出量(重量%)との関係を求めることで、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の結晶性分布を知ることができる。
【0025】
前記Tm-Teの値が35℃以下である場合、共重合体内の高結晶性領域の含量が低いため、体積抵抗が低下する問題が発生し得、前記Tm-Teの値が65℃以上である場合、共重合体の結晶性分布が過剰に広くなり、高結晶性領域によって光透過率が低下し、低結晶性領域によって体積抵抗が低下する問題が発生し得る。
【0026】
本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)で得られた曲線で最高点ピークを有する溶融温度(Tm)が40~90℃である。具体的には、前記溶融温度は、40℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、61℃以上、90℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、68℃以下であることができる。
【0027】
上述のように、本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、前記式1で表されるTm-Teの値を満たすとともに、密度が0.85~0.89g/ccであり、溶融温度(Tm)が40~90℃であることを特徴とする。前記式1を満たしても、密度や溶融温度(Tm)の値が前記範囲から逸脱して過剰に高く示される場合、光透過率が低下する問題が発生し得、したがって、本発明で定義した(a)~(c)の条件をすべて満たした時に、優れた体積抵抗および光透過率を同時に実現し、例えば、太陽電池の封止材フィルムなどの用途としての使用に適する物性を示す。
【0028】
また、前記溶離温度(Te)は、10~50℃、具体的には10℃以上、15℃以上、20℃以上、25℃以上、50℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下であることができる。
【0029】
本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、1.5~2.5の狭い分子量分布(MWD、Molecular Weight Distribution)を有する。より具体的には、前記分子量分布は、1.5以上、1.7以上、1.8以上、2.0以上であることができ、2.5以下、2.4以下、2、3以下、2.2以下であることができる。
【0030】
通常、2種以上の単量体が重合する場合、分子量分布は増加し、結果、衝撃強度と機械的物性などが減少し、ブロッキング現象などが生じる可能性がある。特に、触媒ごとに単量体の重合性が異なり、触媒の種類に応じて最終製造される重合体の分子量は影響を受けるが、2種以上の触媒を混合して重合反応に使用する場合、各触媒の重合性の差が大きいと、重合体の分子量分布も広くなる問題がある。
【0031】
共重合体の架橋特性、衝撃強度、機械的物性などの低下を防止しようと分子量分布を縮小するために、重合反応時に適正量の水素を投入して重合体鎖で任意にベータ-水素脱離(β-hydride elimination)反応が起こることを防止し、水素投入で均一な終結(termination)反応を誘導することが可能であるが、この場合、水素の投入によって共重合体の重量平均分子量と溶融指数が低くなる傾向があるため、触媒構造が重量平均分子量と溶融指数に及ぼす固有の特性と水素の投入による分子量分布減少効果をいずれも取ることができる範囲で、適切な触媒種類と水素投入量を決定すべきである。
【0032】
前記のような点を考慮して、本発明では、後述するように、化学式1で表される遷移金属化合物および化学式2で表される遷移金属化合物を混合して触媒として使用して、最適含量の水素を投入しながら製造したことから、上述の範囲の狭い分子量分布を有して、架橋特性、衝撃強度、機械的物性などの低下を防止し、且つ体積抵抗と光透過率は高く示される特徴がある。
【0033】
前記重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel Permeation Chromatography)で分析されるポリスチレン換算分子量であり、前記分子量分布は、Mw/Mnの比から計算することができる。
【0034】
また、本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、重量平均分子量(Mw)が40,000~150,000g/molであることができる。具体的には、前記重量平均分子量は、40,000g/mol以上、45,000g/mol以上、50,000g/mol以上であることができ、150,000g/mol以下、130,000g/mol以下、100,000g/mol以下、90,000g/mol以下、80,000g/mol以下であることができる。
【0035】
本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が1~100dg/分であることができる。具体的には、前記溶融指数は、1dg/分以上、2dg/分以上、3dg/分以上、または4dg/分以上であることができ、100dg/分以下、50dg/分以下、20dg/分以下、15dg/分以下であることができる。
【0036】
前記溶融指数が1dg/分未満である場合、高い負荷によって生産速度が落ちることもあり、溶融指数が100dg/分を超える場合、フィルム成形が難しくて、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体を太陽電池の封止材フィルム用組成物などとして使用する時に好適でないという問題が発生し得る。
【0037】
本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、エチレンとアルファ-オレフィン系単量体を共重合して製造されたものであり、この際、共重合体内のアルファ-オレフィン系単量体から由来した部分を意味する前記アルファ-オレフィンは、C4~C20のアルファ-オレフィン、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物であることができる。
【0038】
中でも、前記アルファ-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンであることができ、好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0039】
また、前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体において、アルファ-オレフィンの含量は、上記の物性的要件を満たす範囲内で適切に選択されることができ、具体的には0超99モル%以下、または10~50モル%であることができるが、これに制限されない。
【0040】
上述の本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、下記化学式1および化学式2で表される遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、エチレンおよびアルファ-オレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法で製造されることができる。
【0041】
【化1】
【0042】
前記化学式1中、
は、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;または炭素数6~20のアリールアミドであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、
~Rは、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、
前記R~Rのうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて環を形成してもよく、
は、Si、C、N、PまたはSであり、
は、Ti、HfまたはZrであり、
およびXは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミノ;または炭素数6~20のアリールアミノであり、
【化2】
前記化学式2中、
10は、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであり、
11a~R11eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;または炭素数6~20のアリールであり、
12は、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;または炭素数6~20のアリールアミドであり、
13およびR14は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、
15~R18は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、
前記R15~R18のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて環を形成してもよく、
は、Si、C、N、PまたはSであり、
は、Ti、HfまたはZrであり、
およびXは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミノ;または炭素数6~20のアリールアミノである。
【0043】
具体的には、前記化学式1中、Rは、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであり、より具体的には、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フルオロフェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、ジメチルフェニルまたはジエチルフェニルであってもよい。
【0044】
具体的には、前記化学式1中、前記RおよびRは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;または炭素数6~20のアリールアミドであり、より具体的には、前記RおよびRは、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;または炭素数7~20のアリールアルキルであってもよい。
【0045】
具体的には、前記化学式1中、前記RおよびRは、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、より具体的には、炭素数1~6のアルキルであってもよい。さらに具体的には、前記RおよびRは、メチル、エチルまたはプロピルであってもよい。
【0046】
具体的には、前記化学式1中、前記R~Rは、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルである。より具体的には、前記R~Rは、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素またはメチルであってもよい。
【0047】
前記R~Rのうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて炭素数5~20の脂肪族環または炭素数6~20の芳香族環を形成してもよく、前記脂肪族環または芳香族環は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニルまたは炭素数6~20のアリールで置換されてもよい。
【0048】
具体的には、前記化学式1中、Qは、Si、C、N、PまたはSであり、より具体的には、Qは、Siであってもよい。
【0049】
具体的には、前記化学式1中、Mは、Ti、HfまたはZrであってもよい。
【0050】
具体的には、前記化学式1中、XおよびXは、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミノ;または炭素数6~20のアリールアミノであってもよい。
【0051】
また、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式のいずれか一つで表される化合物であってもよい。
【0052】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0053】
その他にも、前記化学式1に定義された範囲で様々な構造を有する化合物であってもよい。
【0054】
また、前記化学式2中、前記R10は、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであり、より具体的には、前記R10は、水素;炭素数1~20または炭素数1~12のアルキル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであってもよい。
【0055】
具体的には、前記化学式2中、R11a~R11eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;または炭素数6~20のアリールであり、より具体的には、水素;ハロゲン;炭素数1~12のアルキル;炭素数3~12のシクロアルキル;炭素数2~12のアルケニル;炭素数1~12のアルコキシ;またはフェニルであってもよい。
【0056】
具体的には、前記化学式2中、R12は、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;または炭素数6~20のアリールアミドであり、より具体的には、水素;ハロゲン;炭素数1~12のアルキル;炭素数3~12のシクロアルキル;炭素数2~12のアルケニル;またはフェニルであってもよい。
【0057】
具体的には、前記化学式2中、R13およびR14は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、より具体的には、水素;または炭素数1~12のアルキルであってもよい。
【0058】
具体的には、前記化学式2中、R15~R18は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、より具体的には、水素;炭素数1~12のアルキル;または炭素数3~12のシクロアルキル、または、水素;またはメチルであってもよい。
【0059】
具体的には、前記化学式2中、前記R15~R18のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて環を形成してもよい。
【0060】
具体的には、前記化学式2中、Qは、Si、C、N、PまたはSであり、より具体的には、QはSiであってもよい。
【0061】
具体的には、前記化学式2中、XおよびXは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミノ;または炭素数6~20のアリールアミノであり、具体的には、水素;ハロゲン;炭素数1~12のアルキル;炭素数3~12のシクロアルキル;または炭素数2~12のアルケニルであってもよく、より具体的には、水素;または炭素数1~12のアルキルであってもよい。
【0062】
また、前記化学式2で表される化合物は、具体的には、下記の化学式で表される化合物のうちいずれか一つであってもよい。
【0063】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0064】
前記化学式1および化学式2で表される遷移金属化合物のモル比は、1:0.5~1:8、1:1~1:7、1:1~1:5、1:1~1:4であってもよいが、これに制限されない。
【0065】
上述のように、本発明で使用する化学式1および化学式2で表される遷移金属化合物は、それぞれ、共単量体の混入能が相違する2種の遷移金属化合物を混合して使用しており、これにより、本発明で定義した条件をすべて満たすことで、優れた体積抵抗と光透過率を示す。
【0066】
前記重合反応は、前記触媒組成物の存在下で水素を連続的に投入して、エチレンおよびアルファ-オレフィン系単量体を連続重合させることで行われることができ、具体的には、水素を5~100cc/分で投入しながら行われることができる。
【0067】
前記水素ガスは、重合の初期の遷移金属化合物の急激な反応を抑制し、重合反応を終結する役割をする。これにより、このような水素ガスの使用および使用量の調節によって狭い分子量分布を有するエチレン/アルファ-オレフィン共重合体が効果的に製造されることができる。
【0068】
例えば、前記水素は、5cc/分以上、または7cc/分以上、または10cc/分以上、または15cc/分以上、または19cc/分以上投入されることができ、100cc/分以下、または50cc/分以下、または45cc/分以下、または35cc/分以下、または29cc/分以下投入されることができる。上記の条件で投入される時に、製造されるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体が、本発明での物性的特徴を実現することができる。
【0069】
水素ガスの含量が5cc/分未満で投入される場合、重合反応の終結が均一に行われず、所望の物性を有するエチレン/アルファ-オレフィン共重合体の製造が困難になり得、100cc/分超で投入される場合、終結反応が過剰に迅速に行われ、分子量が非常に低いエチレン/アルファ-オレフィン共重合体が製造される恐れがある。
【0070】
また、前記重合反応は、100~200℃で行われることができ、上記の水素投入量とともに重合温度を制御することで、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体内の結晶性分布と分子量分布をより容易に調節することができる。具体的には、前記重合反応は、100~200℃、120~180℃、130~170℃、または130~150℃で行われることができるが、これに制限されない。
【0071】
本発明において、前記化学式1および/または化学式2の遷移金属化合物を活性化するために、触媒組成物に助触媒をさらに使用することができる。前記助触媒は、第13族金属を含む有機金属化合物であり、具体的には、下記化学式3~5から選択される1種以上を含むことができる。
【0072】
[化学式3]
-[Al(R19)-O]
【0073】
前記化学式3中、
19は、それぞれ独立して、ハロゲン基;炭素数1~20のヒドロカルビル基;またはハロゲンで置換された炭素数1~20のヒドロカルビル基ルであり、
aは、2以上の整数であり、
[化学式4]
D(R19
前記化学式4中、
Dは、アルミニウムまたはホウ素であり、
19は、それぞれ独立して、ハロゲン基;炭素数1~20のヒドロカルビル基;またはハロゲンで置換された炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、
[化学式5]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
前記化学式5中、
Hは、水素原子であり、
Zは、第13族元素であり、
Aは、それぞれ独立して、1以上の水素原子が置換基で置換されることができる炭素数6~20のアリール;または炭素数1~20のアルキルであり、
前記置換基は、ハロゲン;炭素数1~20のヒドロカルビル;炭素数1~20のアルコキシ;または炭素数6~20のアリールオキシであり、
前記[L-H]は、トリメチルアンモニウム;トリエチルアンモニウム;トリプロピルアンモニウム;トリブチルアンモニウム;ジエチルアンモニウム;トリメチルホスホニウム;またはトリフェニルホスホニウムであり、
前記[L]は、N,N-ジエチルアニリニウム;またはトリフェニルカルボニウムである。
【0074】
より具体的には、前記化学式3の化合物は、線状、円状または網状に繰り返し単位が結合したアルキルアルミノキサン系化合物であってもよく、具体的な例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンまたはtert-ブチルアルミノキサンなどが挙げられる。
【0075】
また、前記化学式4の化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリプロピルホウ素またはトリブチルホウ素などが挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムであってもよいが、これに制限されない。
【0076】
また、前記化学式5の化合物は、三置換されたアンモニウム塩、またはジアルキルアンモニウム塩、三置換されたホスホニウム塩の形態のボレート系化合物が挙げられる。より具体的な例としては、トリメタルアンモニウムテトラフェニルボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、メチルテトラジシクロオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(sec-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-、テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートまたはN,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたアンモニウム塩の形態のボレート系化合物;ジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩の形態のボレート系化合物;またはトリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはトリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたホスホニウム塩の形態のボレート系化合物などがあるが、これに制限されない。
【0077】
このような助触媒の使用により、最終製造されたエチレン/アルファ-オレフィン共重合体の分子量分布がより均一になり、重合活性が向上することができる。
【0078】
前記助触媒は、前記化学式1および/または化学式2の遷移金属化合物の活性化が充分に行われるように、適切な含量で使用されることができる。
【0079】
本発明において、前記化学式1および/または化学式2の遷移金属化合物は、担体に担持された形態で使用されることができる。
【0080】
前記化学式1および/または化学式2の遷移金属化合物が担体に担持される場合、遷移金属化合物および担体の重量比は、1:10~1:1,000、より具体的には1:10~1:500であることができる。上記の範囲の重量比で担体および遷移金属化合物を含む時に、最適の形状を示すことができる。また、前記助触媒がともに担体に担持される場合、助触媒に対する担体の重量比は、1:1~1:100、より具体的には1:1~1:50であることができる。前記重量比で助触媒および担体を含む時に、触媒活性を向上させ、また、製造される重合体の微細構造を最適化することができる。
【0081】
一方、前記担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシアまたはこれらの混合物などが使用されることができ、または、これらの物質を高温で乾燥して表面の水分を除去することで、表面に反応性が大きいヒドロキシ基またはシロキサン基を含む状態で使用されることもできる。また、前記高温乾燥した担体は、NaO、KCO、BaSOおよびMg(NOなどの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、または硝酸塩の成分をさらに含むこともできる。
【0082】
前記担体の乾燥温度は、200~800℃が好ましく、300~600℃がより好ましく、300~400℃が最も好ましい。前記担体の乾燥温度が200℃未満の場合、水分が多すぎて表面の水分と助触媒が反応するようになり、800℃超の場合、担体表面の気孔が合わされて表面積が減少し、また、表面にヒドロキシ基が多数無くなり、シロキサン基だけ残るようになって、助触媒との反応サイトが減少するため、好ましくない。
【0083】
また、前記担体表面のヒドロキシ基の量は、0.1~10mmol/gであることが好ましく、0.5~5mmol/gである時にさらに好ましい。前記担体の表面にあるヒドロキシ基の量は、担体の製造方法および条件または乾燥条件、例えば、温度、時間、真空またはスプレー乾燥などにより調節することができる。
【0084】
また、前記重合反応時には、反応器内の水分を除去するための有機アルミニウム化合物がさらに投入され、その存在下で重合反応が行われることができる。このような有機アルミニウム化合物の具体的な例としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルミニウムジアルキルヒドリドまたはアルキルアルミニウムセスキハライドなどが挙げられ、より具体的な例としては、Al(C、Al(CH、Al(C、Al(CH、Al(i-CH、Al(C17、Al(C1225、Al(C)(C1225、Al(i-C)(C1225、Al(i-CH、Al(i-C、(CAlCl、(i-CAlClまたは(C12Clなどが挙げられる。このような有機アルミニウム化合物は、反応器に連続的に投入されることができ、適切な水分除去のために、反応器に投入される反応媒質の1kg当たり約0.1~10モルの割合で投入されることができる。
【0085】
また、重合圧力は、約1~約100Kgf/cm、好ましくは約1~約50Kgf/cm、より好ましくは約5~約30Kgf/cmであることができる。
【0086】
また、担体に担持された形態で遷移金属化合物が使用される場合、前記遷移金属化合物は、炭素数5~12の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体とトルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒などに溶解するか、希釈後に投入されることができる。これに使用される溶媒は、少量のアルキルアルミニウム処理することで、触媒毒として作用する少量の水または空気などを除去して使用することが好ましく、助触媒をさらに使用して実施することも可能である。
【0087】
本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、光安定剤、UV吸収剤、熱安定剤などを含んで樹脂組成物として加工されることができ、前記成分以外にも、樹脂成分が適用される用途に応じて、当該分野において公知となっている様々な添加剤を適切にさらに含むことができる。
【0088】
また、これは、押出などの方法で成形して様々な成形品として活用されることができ、具体的には、様々な光電子装置(optoelectronic device)、例えば、太陽電池で素子をカプセル化する封止材(encapsulant)として使用されることができ、例えば、昇温ラミネーション工程などに適用される産業用素材としても使用されることができるが、用途がこれに制限されるものではない。
【0089】
実施例
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0090】
[遷移金属化合物の製造]
製造例1
(1)リガンド化合物の製造
<N-N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-ジメチルシランアミン(N-tert-butyl-1-(1,2-dimethyl-3H-benzo[b]cyclopenta[d]thiophen-3-yl)-1,1-dimethylsilanamine)の合成>
100mlシュレンクフラスコに化学式3の化合物4.65g(15.88mmol)を定量して添加した後、これにTHF80mlを投入した。常温でtBuNH(4eq、6.68ml)を投入した後、常温で3日間反応させた。反応後、THFを除去した後、ヘキサンで濾過した。溶媒乾燥後、黄色の液体を4.50g(86%)の収率で得た。
【0091】
1H-NMR(in CDCl3, 500 MHz): 7.99(d, 1H), 7.83(d, 1H), 7.35(dd, 1H), 7.24(dd, 1H), 3.49(s, 1H), 2.37(s, 3H), 2.17(s, 3H), 1.27(s, 9H), 0.19(s, 3H), -0.17(s, 3H).
【0092】
(2)遷移金属化合物の製造
【化19】
50mlシュレンクフラスコに前記リガンド化合物(1.06g、3.22mmol/1.0eq)およびMTBE16.0ml(0.2M)を入れて先に撹拌した。-40℃でn-BuLi(2.64ml、6.60mmol/2.05eq、2.5M in THF)を入れて、常温で一晩中反応させた。次に、、-40℃でMeMgBr(2.68ml、8.05mmol/2.5eq、3.0M in diethyl ether)を徐々に滴加した後、TiCl(2.68ml、3.22mmol/1.0eq、1.0M in toluene)を順に入れて常温で一晩中反応させた。次に、反応混合物をヘキサンを用いてセライト(Celite)を通して濾過した。溶媒乾燥後、褐色の固体を1.07g(82%)の収率で得た。
【0093】
1H-NMR(in CDCl3, 500 MHz): 7.99(d, 1H), 7.68(d, 1H), 7.40(dd, 1H), 7.30(dd, 1H), 3.22(s, 1H), 2.67(s, 3H), 2.05(s, 3H), 1.54(s, 9H), 0.58(s, 3H), 0.57(s, 3H), 0.40(s, 3H), -0.45(s, 3H).
【0094】
製造例2-1
(1)リガンド化合物の製造
<N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(2-メチルフェニル)シランアミンの合成>
(i)クロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(2-メチルフェニル)シランの製造
250mLシュレンクフラスコに1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン2.0g(1.0eq、9.985mmol)とTHF50mLを入れて、n-BuLi4.2mL(1.05eq、10.484mmol、2.5M in ヘキサン)を-30℃で滴加した後、常温で一晩中撹拌した。撹拌したLi-complex THF溶液をジクロロ(O-トリルメチル)シラン2.46g(1.2eq、11.982mmol)とTHF30mLで満たされたシュレンクフラスコに-78℃でカニュレーションした後、常温で一晩中撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン100mLで抽出した。
【0095】
(ii)N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(2-メチルフェニル)シランアミンの製造
抽出したクロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(2-メチルフェニル)シラン4.0g(1.0eq、10.0mmol)をヘキサン10mLで撹拌した後、t-BuNH4.2mL(4.0eq、40.0mmol)を常温で投入した後、常温で一晩中撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出した。溶媒乾燥後、粘性の液体4.26g(99%、dr=1:0.83)を得た。
【0096】
1H-NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.95(t, 2H), 7.70(d, 1H), 7.52(d, 1H), 7.47-7.44(m, 2H), 7.24-7.02(m, 9H), 6.97(t, 1H), 3.59(s, 1H), 3.58(s, 1H), 2.50(s, 3H), 2.44(s, 3H), 2.25(s, 3H), 2.16(s, 3H), 2.06(s, 3H), 1.56(s, 3H), 1.02(s, 9H), 0.95(s, 9H), -0.03(s, 3H), -0.11(s, 3H)
【0097】
(2)遷移金属化合物の製造
【化20】
250mL丸底フラスコに前記化学式2-3のリガンド化合物(4.26g、10.501mmol)をMTBE53mL(0.2M)に入れて撹拌した。-40℃でn-BuLi(8.6ml、21.52mmol、2.05eq、2.5M in ヘキサン)を入れて、常温で一晩中撹拌した。
【0098】
次に、-40℃でMeMgBr(8.8ml、26.25mmol、2.5eq、3.0M in ジエチルエーテル)を徐々に滴加した後、TiCl(10.50mL、10.50mmol)を順に入れて、常温で一晩中撹拌した。次に、反応混合物をヘキサンを用いて濾過した。濾過液にDME(3.3ml、31.50mmol)を入れて溶液をヘキサンで濾過、濃縮し、黄色の固体3.42g(68%、dr=1:0.68)を得た。
【0099】
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.83(d, 1H), 7.80(d, 1H), 7.74(d, 1H), 7.71(d, 1H), 7.68(d, 1H), 7.37(d, 1H), 7.31-6.90(m, 9H), 6.84(t, 1H), 2.54(s, 3H), 2.47(s, 3H), 2.31(s, 3H), 2.20(s, 3H), 1.65(s, 9H), 1.63(s, 9H), 1.34(s, 3H), 1.00(s, 3H), 0.98(s, 3H), 0.81(s, 3H), 0.79(s, 3H), 0.68(s, 3H), 0.14(s, 3H), -0.03(s, 3H)
【0100】
製造例2-2
(1)リガンド化合物の製造
<N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランアミンの合成>
(i)クロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランの製造
250mLシュレンクフラスコに1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン10g(1.0eq、49.925mmol)とTHF100mLを入れて、n-BuLi22mL(1.1eq、54.918mmol、2.5M in ヘキサン)を-30℃で滴加した後、常温で3時間撹拌した。撹拌したLi-complex THF溶液をジクロロ(メチル)(フェニル)シラン8.1mL(1.0eq、49.925mmol)とTHF70mLで満たされたシュレンクフラスコに-78℃でカニュレーションした後、常温で一晩中撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン100mLで抽出した。
【0101】
(ii)N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランアミンの製造
抽出したクロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランヘキサン溶液100mLにt-BuNH42mL(8eq、399.4mmol)を常温で投入した後、常温で一晩中撹拌した。撹拌後真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出した。溶媒乾燥後黄色の固体13.36g(68%、dr=1:1)を得た。
【0102】
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.93(t, 2H), 7.79(d,1H), 7.71(d,1H), 7.60(d, 2H), 7.48(d, 2H), 7.40~7.10(m, 10H, aromatic), 3.62(s, 1H), 3.60(s, 1H), 2.28(s, 6H), 2.09(s, 3H), 1.76(s, 3H), 1.12(s, 18H), 0.23(s, 3H), 0.13(s, 3H)
【0103】
(2)遷移金属化合物の製造
【化21】
100mLシュレンクフラスコに前記化学式2-4のリガンド化合物4.93g(12.575mmol、1.0eq)とトルエン50mL(0.2M)を入れて、n-BuLi10.3mL(25.779mmol、2.05eq、2.5M in ヘキサン)を-30℃で滴加した後、常温で一晩中撹拌した。撹拌後に、MeMgBr 12.6mL(37.725mmol、3.0eq、3.0M in ジエチルエーテル)を滴加した後、TiCl13.2mL(13.204mmol、1.05eq、1.0M in トルエン)を順に入れて常温で一晩中撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出し、50mLまで溶媒を除去した後、DME4mL(37.725mmol、3.0eq)を滴加した後、常温で一晩中撹拌した。再度真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出した。溶媒乾燥後、褐色の固体2.23g(38%、dr=1:0.5)を得た。
【0104】
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.98(d, 1H), 7.94(d, 1H), 7.71(t, 6H), 7.50~7.30(10H), 2.66(s, 3H), 2.61(s, 3H), 2.15(s, 3H), 1.62(s, 9H), 1.56(s, 9H), 1.53(s, 3H), 0.93(s, 3H), 0.31(s, 3H), 0.58(s, 3H), 0.51(s, 3H), -0.26(s, 3H), -0.39(s, 3H)
【0105】
製造例2-3
(1)リガンド化合物の製造
<N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(2-エチルフェニル)(メチル)シランアミンの合成>
(i)クロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(2-エチルフェニル)(メチル)シランの製造
100mLシュレンクフラスコに1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン2g(1eq、9.99mmol)とTHF50mLを入れて、n-BuLi4mL(1eq、9.99mmol、2.5M in ヘキサン)を-30℃で滴加した後、常温で一晩中撹拌した。撹拌したLi-complex THF溶液をジクロロ(2-エチルフェニル)(メチル)シラン2.19mL(1.0eq、9.99mmol)とTHF50mLで満たされたシュレンクフラスコに-78℃でカニュレーションした後、常温で一晩中撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン60mLで抽出し、再度真空乾燥した後、ヘキサンで洗浄し、象牙色の固体3.83g(99%、dr=1:1)を得た。
【0106】
(ii)N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(2-エチルフェニル)(メチル)シランアミンの製造
100mL丸底フラスコにクロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(2-エチルフェニル)(メチル)シラン3.87g(10.1mmol)を定量して添加した後、これにヘキサン40mLを投入した。常温でt-BuNH(10eq、10.5mL)を投入した後、常温で2日間反応させた。反応後、ヘキサンを除去した後、ヘキサンで濾過した。溶媒乾燥後、黄色の固体3.58g(84.4%、dr=1:0.8)を得た。
【0107】
1H-NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.98(t, 2H), 7.71(d, 1H), 7.55(d, 1H), 7.52(d, 1H), 7.48(d, 1H), 7.30(t, 1H), 7.26-7.22(m, 3H), 7.19(dd, 2H), 7.12-7.06(m, 3H), 7.00(t, 1H), 3.08-2.84(m, 4H) 3.05-2.84(m, 2H), 2.28(s, 3H), 2.20(s, 3H), 2.08(s, 3H), 1.62(s, 3H), 1.26-1.22(m, 6H), 1.06(s, 9H), 0.99(s, 9H), 0.05(s, 3H), -0.02(s, 3H)
【0108】
(2)遷移金属化合物の製造
【化22】
50mLバイアルに前記リガンド化合物(1.74g、4.14mmol/1.0eq)およびトルエン20.7mL(0.2M)を入れて撹拌した。-40℃でn-BuLi(3.48ml、8.7mmol/2.1eq、2.5M in ヘキサン)を入れて、常温で一晩中撹拌した。次に、-40℃でMeMgBr(4.14ml、12.42mmol/3.0eq、3.0M in ジエチルエーテル)を徐々に滴加した後、TiClDME(1.1g、4.14mmol/1.0eq)を順に入れて、常温で一晩中撹拌した。溶媒乾燥後、反応混合物をヘキサンを用いて濾過した。次に、濾過液にDME(1.29ml、12.42mmol/3eq)を入れて、常温で一晩中撹拌した。溶媒乾燥後、ヘキサンを用いて濾過し、黄色の固体335mg(16.3%、dr=1:0.8)を得た。
【0109】
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.90(d, 1H), 7.85(d, 1H), 7.74(d, 1H), 7.71(d, 1H), 7.40(d, 1H), 7.37(d, 1H), 7.27(d, 1H), 7.23(t, 2H), 7.17(t, 2H), 7.13(t, 2H), 7.06(t, 1H), 7.01(t, 1H), 6.86(t, 1H), 2.97-2.91(m, 2H), 2.90-2.82(m, 2H), 2.33(s, 3H), 2.22(s, 3H), 1.96(s, 3H), 1.68(s, 9H), 1.66(s, 9H), 1.38(s, 3H), 1.32(t, 3H), 1.24(t, 3H), 1.07(s, 3H), 0.88(s, 3H), 0.85(s, 3H), 0.72(s, 3H), 0.19(s, 3H), 0.01(s, 3H)
【0110】
比較製造例1
【化23】
【0111】
前記化合物は、韓国公開特許第2015-0034653号に記載の方法にしたがって合成し使用した。
【0112】
[エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の製造]
実施例1
1.5L連続工程反応器にヘキサン溶媒を5.0kg/h、1-ブテンを0.95kg/h投入しながら130℃で予熱した。トリイソブチルアルミニウム化合物(0.050mmol/分)、前記製造例1および製造例2-1で得た遷移金属化合物を3:7のモル比で混合した混合物(0.120μmol/分)、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート助触媒(0.144μmol/分)を同時に反応器に投入した。次いで、前記反応器の中にエチレン(0.87kg/h)および水素ガス(23cc/分)を投入し、89barの圧力で、連続工程で130℃で60分以上維持して共重合反応を行い、共重合体を得た。次に、真空オーブンで12時間以上乾燥した後、物性を測定した。
【0113】
実施例2~4、比較例1~6
重合条件を下記表1のように変更した以外は、実施例1と同様にエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を製造した。
【0114】
【表1】
【0115】
[エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の分析]
実験例1
前記実施例および比較例で製造したエチレン/アルファ-オレフィン共重合体に対して、下記の方法で物性を測定し、表2に示した。
【0116】
(1)密度(Density)
ASTM D-792に準じて測定した。
【0117】
(2)溶融指数(MI2.16、Melt Index)
ASTM D-1238(条件E、190℃、2.16Kg荷重)に準じて測定した。
【0118】
(3)溶融温度(Tm、Melting Temperature)
PerkinElmer社製の示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC 6000)を用いて、窒素雰囲気下で、共重合体に対して温度を150℃まで増加させて5分間維持した後、-100℃まで冷却し、また温度を増加させて、DSC曲線を観察した。この際、昇温速度および冷却速度は、それぞれ、10℃/分にした。測定されたDSC曲線で、溶融温度は、二回目の昇温時に吸熱ピークの最大地点とした。
【0119】
(4)溶離温度(Te、Elution Temperature)
Polymer Char社製のCFC(クロス分別クロマトグラフィー(Cross-Fractionation Chromatography))装備を使用して、o-ジクロロベンゼンを溶媒として-20~130℃の範囲で測定した。具体的には、130℃で共重合体サンプルをo-ジクロロベンゼン溶媒に対して5.0mg/mLの濃度で溶解させた溶液を、0.50℃/分の速度で-20℃まで冷却した後、-20℃から130℃まで1℃/分の昇温速度で加熱および昇温しながら、溶媒であるo-ジクロロベンゼンを0.5mL/分の流速でカラムに流して各温度別に溶出される重合体の量(重量%)を測定した。溶離温度は、温度に対する溶離分画のグラフを描いた時に、-20℃以降に存在するピークで最高点に該当する温度と定義した。
【0120】
(5)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(MWD)
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、生成された共重合体を下記ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)分析条件下で測定し、分子量分布は、Mw/Mnの比から計算した。
【0121】
-カラム:Agilent Olexis
-溶媒:卜リクロロベンゼン
-流速:1.0ml/分
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器:Agilent High Temperature RI detector
-標準:ポリスチレン(Polystyrene)(三次関数で補正)
-データプロセッシング:Cirrus
【0122】
【表2】
【0123】
前記表2に記載のように、本発明による実施例のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、本発明で定義した密度、Tm、Tm-Teの値をすべて満たすことを確認した。一方、比較例1と2は、Tm-Teの値が65℃以上と大きく、比較例3~5は、35℃以下と小さいため、本発明で定義した式1を満たさず、比較例6は、式1の範囲は満たすが、密度およびTmの値が本発明の定義に該当しないものと示された。
【0124】
[封止材フィルムの製造]
実施例1
前記製造例1のサンプル500gにt-ブチル1-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)1 phr(parts per hundred rubber)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)0.5phr、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)0.2phr、封止材フィルム用組成物を製造した。次に、40℃で1時間Soakingした後、15時間エージングした。
【0125】
次に、マイクロ押出機を用いて、高温架橋されない程度の低温(押出機バレル温度100℃以下の条件)で平均厚さ550μmの封止材フィルムを製造した。
【0126】
実施例2~4、比較例1~6
サンプルとして、それぞれ、製造例2~4、比較製造例1~6の共重合体を使用した以外は、前記実施例1と同様に封止材フィルムを製造した。
【0127】
[封止材フィルムの分析]
実験例2
前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体6gを0.5T正方形の型に入れて、正面および後面を3T鋼板で覆った後、これを高温プレス機に投入した。190℃、25N/cm(240秒)、6回減圧/加圧脱気、190℃、151N/cmで240秒間連続して処理した後、1分当たり15℃下げながら30℃に冷却し、この際、圧力は、151N/cmを維持した。30℃、151N/cmで300秒間維持して試験片の製造を完了した。
【0128】
このように製造した試験片を対象として、下記方法にしたがって体積抵抗および光透過率を測定し、表3に示した。
【0129】
(1)体積抵抗
23±1℃の温度と50±3%の湿度条件でAgilent 4339B High-Resistance meter(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて、1000Vの電圧を60秒間加えながら測定した。
【0130】
(2)光透過率
550nmでの光透過率をShimadzu UV-3600分光光度計を用いて測定した。
【0131】
-測定モード:transmittance
-波長間隔:1nm
-測定速度:medium
【0132】
【表3】
【0133】
前記表に示したように、本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、比較例のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体とは異なり、高い体積抵抗および光透過率をすべて実現することができることを確認した。特に、比較例1および2は、Tm-Teの値が65℃以上と大きいため、低結晶性領域によって実施例に比べて体積抵抗が低下し、高結晶性領域によって光透過率も低く示され、比較例3~5は、Tm-Teの値が35℃以下と小さく、低結晶性領域によって体積抵抗が特に低下したことを確認した。また、比較例6は、式1の範囲は満たすが、密度およびTeの値が大きすぎるため、特に、光透過率が低く示された。
【0134】
このように、本発明で定義した密度、Tm、Tm-Teの値を満たすエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、別の添加剤を使用しなくても優れた水準の体積抵抗および光透過率を実現することができた。