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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20240722BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240722BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B24B27/06 M
B24B49/12
B24B53/00 K
H01L21/78 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020166710
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059155
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】竹村 優汰
(72)【発明者】
【氏名】ファン チュック リン
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113635(JP,A)
【文献】特開2020-077668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06,49/12,53/00;
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削装置であって、
被加工物を保持するチャックテーブルと、
スピンドルを有し、該チャックテーブルで保持された該被加工物を、該被加工物に設定された分割予定ラインに沿って該スピンドルに装着された切削ブレードで切削する切削ユニットと、
該チャックテーブルで保持された該被加工物を撮影するカメラユニットと、
該切削ブレードをドレスするためのドレスボードを保持するサブチャックテーブルと、
メモリ及びプロセッサを有する制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
該切削ユニットで切削された該被加工物の第1の切削痕を該カメラユニットに撮影させ切削結果画像を取得させる撮影指示部と、
該切削結果画像の該第1の切削痕に基づいて、切削痕に関して予め定められ各々許容範囲を有する複数の測定項目の測定値を得る測定部と、
該第1の切削痕の該複数の測定項目のうち少なくとも1つの測定項目の測定値が許容範囲を超えた場合に、警報を出すことなく自動的に、該サブチャックテーブルで保持された該ドレスボードで該切削ブレードをドレスさせるドレス指示部と、
該切削ブレードのドレスのにおいて切削痕に問題がないかを確認するために、該第1の切削痕とは割り出し送り方向において異なる位置に又は直前に切削を施した該被加工物とは異なる被加工物に形成された第2の切削痕の該複数の測定項目のうち少なくとも1つの測定項目の測定値が該許容範囲を超えた場合に、該切削装置に警報を出させる報知部と、
を有することを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該複数の測定項目は、
カーフの幅と、
欠けのサイズと、
欠けの面積と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルで保持された被加工物を切削する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ、サファイア基板、炭化ケイ素基板、ガラス基板、樹脂パッケージ基板等の各種の板状の被加工物を、被加工物の表面に設定された分割予定ラインに沿って切削ブレードで切削することにより、被加工物に切削溝(切削痕)を形成する切削装置が知られている。
【0003】
切削後の被加工物の切削痕をカメラユニットで観察すると、通常、微細な欠け(チッピング)が観察される。しかし、切削中に何らかの原因で切削不良が発生すると、欠けのサイズが異常に大きくなることがある。
【0004】
そこで、切削中の適切なタイミングで切削痕を撮影し、予め定められた複数の測定項目(例えば、切削痕の幅、欠けのサイズ等)について測定を行い、切削不良が発生していないかを自動的に判定する所謂カーフチェックが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-74198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カーフチェックの結果、切削不良の発生が判明した場合、切削不良の原因を解消することが求められるが、経験の浅いオペレータは、切削不良の原因を解消することなく、切削装置に対して切削の続行を指示する場合がある。しかし、この状態のまま切削を続行すると、以降の全ての被加工物に切削不良が生じる恐れがある。
【0007】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、切削不良が一旦発生したとしても、以降の切削工程で、切削不良が発生する可能性を低減可能な切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、切削装置であって、被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルを有し、該チャックテーブルで保持された該被加工物を、該被加工物に設定された分割予定ラインに沿って該スピンドルに装着された切削ブレードで切削する切削ユニットと、該チャックテーブルで保持された該被加工物を撮影するカメラユニットと、該切削ブレードをドレスするためのドレスボードを保持するサブチャックテーブルと、メモリ及びプロセッサを有する制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該切削ユニットで切削された該被加工物の第1の切削痕を該カメラユニットに撮影させ切削結果画像を取得させる撮影指示部と、該切削結果画像の該第1の切削痕に基づいて、切削痕に関して予め定められ各々許容範囲を有する複数の測定項目の測定値を得る測定部と、該第1の切削痕の該複数の測定項目のうち少なくとも1つの測定項目の測定値が許容範囲を超えた場合に、警報を出すことなく自動的に、該サブチャックテーブルで保持された該ドレスボードで該切削ブレードをドレスさせるドレス指示部と、該切削ブレードのドレスのにおいて切削痕に問題がないかを確認するために、該第1の切削痕とは割り出し送り方向において異なる位置に又は直前に切削を施した該被加工物とは異なる被加工物に形成された第2の切削痕の該複数の測定項目のうち少なくとも1つの測定項目の測定値が該許容範囲を超えた場合に、該切削装置に警報を出させる報知部と、を有する切削装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該複数の測定項目は、カーフの幅と、欠けのサイズと、欠けの面積と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る切削装置のドレス指示部は、第1の切削痕の複数の測定項目のうち少なくとも1つの測定項目の測定値が許容範囲を超えた場合に、サブチャックテーブルで保持されたドレスボードで切削ブレードをドレスさせる。
【0011】
この様に、切削不良が一旦発生したとしても、切削装置が自動的に切削ブレードをドレスすることで切削不良の解消を試みるので、以降の切削工程では、切削不良が発生する可能性を低減できる。
【0012】
更に、切削ブレードのドレスの後、被加工物の切削が再開され、第1の切削痕とは異なる場所に、第2の切削痕が自動的に形成される。そして、この第2の切削痕の複数の測定項目のうち少なくとも1つの測定項目の測定値が許容範囲を超えた場合に、報知部は、切削装置に警報を出させる。
【0013】
この様に、切削装置がドレスを行っても切削不良を解消できない場合には、切削装置が警報を出すことで、切削不良の原因解消をオペレータに促すことができる。それゆえ、例えば、経験の浅いオペレータであっても、経験豊富なオペレータを呼ぶなどして切削不良を解消できる。従って、以降の切削工程で、切削不良が発生する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】切削装置の斜視図である。
図2】被加工物を切削する様子を示す一部断面側面図である。
図3】切削結果画像の一例を示す図である。
図4】複数の測定項目を示す画像の一例を示す図である。
図5】測定値を説明するための図である。
図6】切削装置を用いた切削方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、切削装置2の斜視図である。なお、図1では、切削装置2の構成要素の一部を機能ブロックで示している。また、以下の説明におけるX軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)及びZ軸方向(上下方向、高さ方向)は、互いに垂直である。
【0016】
切削装置2は、各構成要素を支持又は収容する基台4を備える。基台4の前方の角部には、開口4aが形成されており、この開口4a内には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセットエレベータ6が設けられている。
【0017】
カセットエレベータ6の上面には、複数の被加工物11を収容するためのカセット8が載せられる。ここで、図2及び図3を参照し、被加工物11について説明する。被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料で形成された円盤状のウェーハである。
【0018】
被加工物11の表面11a(図2参照)側には、互いに直交する複数の分割予定ライン13(ストリートとも称される。図3参照)が設定されている。複数の分割予定ライン13で区画される各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15(図3参照)が形成されている。
【0019】
被加工物11の裏面11b(図2参照)側には、被加工物11よりも面積の大きいダイシングテープ17が貼り付けられている。また、ダイシングテープ17の外周部分には、金属で形成された環状のフレーム19が貼り付けられている。
【0020】
図1に示す様に、被加工物11は、ダイシングテープ17を介してフレーム19に支持された被加工物ユニット21の状態でカセット8に収容されている。なお、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。
【0021】
カセットエレベータ6の側方には、X軸方向に沿う長辺を有する矩形状の開口4bが形成されている。開口4bの下部には、ボールネジ式のX軸移動機構(加工送りユニット)(不図示)が配置されている。
【0022】
X軸移動機構の上部には、矩形状のテーブルカバー12が配置されており、テーブルカバー12のX軸方向の両側には、蛇腹状カバー14が配置されている。テーブルカバー12上には、被加工物11を保持するチャックテーブル16が配置されている。
【0023】
チャックテーブル16の下部には、モータ等の回転駆動源を有するθテーブル(不図示)が連結されている。θテーブルは、Z軸方向に略平行な回転軸の周りにおいて、チャックテーブル16を所定の角度範囲で回転させる。
【0024】
チャックテーブル16の内部には、吸引路(不図示)が形成されており、吸引路の一端は、真空ポンプ等の吸引源(不図示)に接続されている。吸引源で生じた負圧は、チャックテーブル16の上面に伝達される。
【0025】
チャックテーブル16の上面は、X‐Y平面に対して略平行であり、被加工物11を吸引保持するための保持面16aとして機能する。なお、チャックテーブル16の周囲には、フレーム19を四方から固定するための4個のクランプ16bが設けられている。
【0026】
テーブルカバー12の角部にはサブチャックテーブル18が配置される。図1では、テーブルカバー12のX軸方向の一方側の2つの角部においてY軸方向に沿って離れた態様で、2つのサブチャックテーブル18が配置される。
【0027】
各サブチャックテーブル18は、チャックテーブル16よりも小型であり、上面視で矩形状である。サブチャックテーブル18内に形成されている流路は、上述の吸引源に接続されており、サブチャックテーブル18の上面は、矩形板状のドレスボード18aを吸引保持するための保持面となる。
【0028】
ドレスボード18aは、例えば、ビトリファイド、レジノイド等の結合材にホワイトアランダム(WA)、グリーンカーボン(GC)等の砥粒が混合された混合材料を用いて形成されている。ドレスボード18aは、後述する切削ブレード44のドレス(目立て)に使用される。
【0029】
開口4bの上方には、被加工物ユニット21をチャックテーブル16へ搬送する第1の搬送ユニット(不図示)が配置されている。開口4bの側方及び上方には、開口4bを跨ぐ様に、門型の支持構造20が配置されている。
【0030】
支持構造20の前面上部には、割り出し送りユニットと、切り込み送りユニットと、をそれぞれ含む、2つの切削ユニット移動機構22が設けられている。各切削ユニット移動機構22は、支持構造20の前面に配置されY軸方向に略平行な一対のY軸ガイドレール24を共有している。
【0031】
Y軸ガイドレール24には、Y軸移動プレート26がスライド可能に取り付けられている。1つのY軸移動プレート26の裏面(後面)側には、1つのナット部(不図示)が設けられており、1つのナット部には、Y軸方向に略平行な1つのY軸ボールネジ28が回転可能に結合されている。
【0032】
1つのY軸ボールネジ28の一端部には、1つのY軸パルスモータ30が連結されている。Y軸パルスモータ30でY軸ボールネジ28を回転させれば、Y軸ガイドレール24に沿って1つのY軸移動プレート26が移動する。
【0033】
各Y軸移動プレート26の表面(前面)には、Z軸方向に略平行な一対のZ軸ガイドレール32が設けられている。Z軸ガイドレール32には、Z軸移動プレート34がスライド可能に取り付けられている。
【0034】
Z軸移動プレート34の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸方向に略平行なZ軸ボールネジ36が回転可能に結合されている。Z軸ボールネジ36の上端部には、Z軸パルスモータ38が連結されている。
【0035】
Z軸パルスモータ38でZ軸ボールネジ36を回転させれば、Z軸方向に沿ってZ軸移動プレート34が移動する。Z軸移動プレート34の下部には、切削ユニット40が連結されている。切削ユニット40は、角筒状のスピンドルハウジングを有する。
【0036】
スピンドルハウジングには、回転可能な態様で円柱状のスピンドル42(図2参照)の一部が収容されている。スピンドル42の一端部には、サーボモータ等の回転駆動源(不図示)が接続されている。
【0037】
スピンドル42の他端部には、円環状の切削ブレード44が装着されている。図2に示す切削ブレード44は、所謂ハブレス型(ワッシャー型とも呼ばれる)であるが、切削ブレード44は、所謂ハブ型であってもよい。
【0038】
再び、図1に戻る。各切削ユニット40に隣接する位置には、カメラユニット46が設けられている。カメラユニット46は、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)、CCD(Charge-Coupled Device)等のイメージセンサと、所定の光学系と、レンズと、を有する顕微鏡カメラを備える。
【0039】
カメラユニット46は、裏面11b側が保持面16aで保持された被加工物11の表面11a側を撮影する。カメラユニット46で撮影された表面11a側の画像は、例えば、被加工物11のアライメント、被加工物11の切削結果の解析等に利用される。
【0040】
開口4bに対して開口4aと反対側の位置には、円形の開口4cが設けられている。開口4c内には、切削後の被加工物11を洗浄するための洗浄ユニット48が配置されている。切削後の被加工物11は、第2の搬送ユニット(不図示)により、チャックテーブル16から洗浄ユニット48に搬送される。
【0041】
ここで、被加工物11を切削する手順について簡単に説明する。図2は、被加工物11を切削する様子を示す一部断面側面図である。被加工物11を切削する際には、まず、カセット8から1つの被加工物ユニット21を取り出し、被加工物11の裏面11b側を保持面16aで保持する。
【0042】
次いで、1つのカメラユニット46で表面11a側を撮影し、得られた表面11a側の画像に基づいて、分割予定ライン13がX軸方向と略平行になる様に、θテーブルでチャックテーブル16の向きを調整する。
【0043】
そして、高速で回転させた切削ブレード44を1つの分割予定ライン13の延長線上に位置付けると共に、保持面16aと裏面11bとの間に切削ブレード44の下端を位置付ける。
【0044】
この状態で、切削ブレード44とチャックテーブル16とをX軸移動機構により相対的にX軸方向に移動させると、被加工物11は1つの分割予定ライン13に沿って切削され、切削痕(切削溝)13aが形成される。
【0045】
一の方向に沿う全ての分割予定ライン13に沿って切削痕13aを形成した後、チャックテーブル16を90度回転させて、他の方向に沿う分割予定ライン13をX軸方向と略平行にする。その後、他の方向に沿う全ての分割予定ライン13に沿って切削痕13aを形成する。
【0046】
この様に、被加工物11の切削を進める過程において、例えば、切削ブレード44で切削した長さが後述するカーフチェック条件に達した場合、カーフチェックを行うために、まず、カメラユニット46が切削痕13aを撮影する。これにより、被加工物11の切削結果画像50が得られる(図3参照)。
【0047】
図3は、切削結果画像50の一例を示す図である。切削結果画像50は、チッピング(欠け)23のサイズ等の予め定められた複数の測定項目における切削痕13a(カーフ25)の測定値を得る際に利用される。
【0048】
ここで再び、図1に戻る。切削装置2には、カメラユニット46で撮影された画像や、上述の測定値などを表示するための表示装置52が設けられている。本例の表示装置52は、例えば、表示部と入力部として機能するタッチパネルである。
【0049】
切削装置2は、切削工程で問題が起きた場合、表示装置52に、エラーが生じた旨の警報を表示させることができる。切削装置2の上部には、切削装置2の状況を視覚的に示すための表示灯54が設けられている。
【0050】
表示灯54は、問題無く切削工程が進行中である場合、例えば、緑色で点灯し、切削工程で問題が起きた場合、例えば、赤色で点灯する。この赤色での点灯は、切削装置2がオペレータ等に向けて発する警報となる。更に、切削装置2には、切削工程で問題が起きた場合、所定の警告音(警報)を発生するスピーカ(不図示)が設けられてもよい。
【0051】
表示装置52、表示灯54及びスピーカは、切削工程で問題が起きたことをオペレータに知らせる報知ユニットとして機能し得る。切削装置2には、各構成要素の動作を制御する制御ユニット56が設けられている。
【0052】
制御ユニット56は、カセットエレベータ6、X軸移動機構、チャックテーブル16、第1及び第2の搬送ユニット、切削ユニット移動機構22、切削ユニット40、カメラユニット46、洗浄ユニット48、表示装置52、表示灯54、スピーカ等の動作を制御する。
【0053】
制御ユニット56は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ58と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置、及び、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置、を含むメモリ60と、を有するコンピュータによって構成されている。
【0054】
メモリ60の補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従いプロセッサ58を動作させることによって、制御ユニット56の機能が実現される。
【0055】
メモリ60には、表示装置52を介してオペレータにより入力された、又は、被加工物11の種類等に応じて予め定められた、所定の条件が記憶されている。所定の条件は、切削ブレード44の回転数、チャックテーブル16の加工送り速度等の切削条件を含む。
【0056】
所定の条件は、カーフチェック条件を更に含む。カーフチェック条件とは、切削痕13aに問題が無いか等の確認を行うための条件であり、例えば、所定の切削長さだけ被加工物11を切削した場合にカーフチェックが行われると定められている。
【0057】
なお、所定長さに代えて、所定の枚数だけ被加工物11を切削した場合にカーフチェックが行われるよう定めされていてもよい。カーフチェック条件は、オペレータが表示装置52を介して適宜、設定又は変更できる。
【0058】
メモリ60には、上述の切削及びカーフチェック条件に加えて、切削痕13aに関して予め定められた複数の測定項目の許容範囲も記憶される。図4は、表示装置52の一部に表示される、複数の測定項目を示す画像の一例を示す図である。
【0059】
各測定項目の測定値は、メモリ60に格納されたプログラムにより実現される測定部62が、切削結果画像50に対してエッジ13b(図3図5参照)を検出する画像処理を施したり、画像中の特徴領域のサイズを算出したりすることで得られる。
【0060】
例えば、画像処理により切削痕13aのエッジ13bを検出する場合、測定部62は、切削結果画像50において隣接する画素の輝度の差分を算出する。なお、切削痕13aは、分割予定ライン13中の非切削領域に比べて暗く表示される。
【0061】
切削結果画像50において、1画素は、例えば、1μmに対応しているので、カーフ25やチッピング23を構成する画素数を算出することにより、カーフ25の幅、チッピング23のサイズ等が測定される。
【0062】
複数の測定項目は、コントラスト値58a、センター位置のずれ量58b、チッピング23を除くカーフ25の幅58c、チッピング23を含むカーフ25の幅58d、ヘアラインセンターからチッピング23の外縁までの最大距離58e、最大のチッピング23のサイズ58f、チッピング23の総面積58g、Y軸方向のずれ量58hを含む(図4参照)。
【0063】
コントラスト値58aとは、切削結果画像50における、分割予定ライン13と切削痕13aとのコントラストを示す数値である。図4に示す画像では、コントラスト値58aは、カーフ点数と表示される。
【0064】
コントラスト値58aの下限値は、カーフ点数の文字の右に表示される。コントラスト値58aの数値が高いほど、分割予定ライン13と、切削痕13aとの画像上の濃度さが大きいので、より正確な測定が可能になる。
【0065】
センター位置のずれ量58bとは、切削結果画像50における、ヘアライン(カメラユニット46のカメラにおける基準線)の中心線(不図示)と、切削痕13aの中心線13c(図5参照)との、位置ずれを意味する。
【0066】
ずれ量58bが、(コール)の文字の右に示す上限値を超えた場合に、制御ユニット56は、オペレータにエラーを通知する。なお、(コール)の文字の右に示す上限値は、(アジャスト)の文字の右に示す上限値よりも大きい。
【0067】
ずれ量58bが、(アジャスト)の文字の右に示す上限値を超え、且つ、(コール)の文字の右に示す上限値以下である場合に、制御ユニット56は、自動でヘアライン合わせを実行し、切削位置を補正する。
【0068】
チッピング23を除くカーフ25の幅58c(図5参照)とは、切削結果画像50における、カーフ25の両側に形成された複数のチッピング23を除くカーフ25の幅を意味する。なお、幅58cの上限値及び下限値は、それぞれ、上限及び下限の文字の右に表示される。
【0069】
チッピング23を含むカーフ25の幅58dと(図5参照)は、切削結果画像50における、カーフ25の両側に形成された複数のチッピング23のうち、カーフ25の幅方向において最大のチッピング23のサイズ(長さ)を含む、切削痕13a及びチッピング23の幅の合計を意味する。幅58dの上限値は、(含チッピング)の文字の右に表示される。
【0070】
ヘアラインセンターからチッピング23の外縁までの最大距離58eとは、切削結果画像50における、ヘアラインの中心線から、カーフ25の幅方向に最大のチッピング23の外側端部まで、の距離を意味する。最大距離58eの上限値は、(センター~チッピング)の文字の右に表示される。
【0071】
最大のチッピング23のサイズ58fとは(図5参照)、切削結果画像50における、カーフ25の幅方向に最大のチッピング23のサイズ(長さ)を意味する。サイズ58fの上限値は、チッピング許容値の文字の右に表示される。
【0072】
チッピング23の総面積58gは、切削結果画像50において、幅58cよりも外側に突出している各チッピング23の外縁と、カーフ25を規定する2本の仮想的な直線と、で囲まれる、チッピング23の面積(図5で黒塗された領域)の総和を意味する。総面積58gの上限値は、チッピング面積の文字の右に表示される。
【0073】
Y軸方向のずれ量58hは、切削結果画像50における、実際の画像上のターゲットの位置と、デバイスデータにより設定したインデックスに基づいて算出されたターゲットの位置との、割り出し送り方向の位置ずれを意味する。
【0074】
ターゲットとは、アライメント等に利用されるターゲットパターンであり、キーパターン、アライメントマーク等とも称される。Y軸方向のずれ量58hの上限値は、画像では、Y許容値(byターゲット)の文字の右に表示される。
【0075】
なお、図4では、1つのカメラユニット46で得られた切削結果画像50を測定部62が処理する場合の許容値が、Z1軸の列に表示されている。また、他の1つのカメラユニット46で得られた切削結果画像50を測定部62が処理する場合の許容値が、Z2軸の列に表示されている。
【0076】
各測定値は、メモリ60に記憶されると共に、制御ユニット56により許容範囲を超えているか否か検査される。測定値が許容範囲を超えた場合(即ち、エラー時)の処理は、「CALL」、「DRESS」及び「RETRY」の内からオペレータにより予め選択される。
【0077】
「CALL」は、表示装置52、表示灯54、スピーカ等を通じて、アラームを出すことにより、切削装置2のエラーをオペレータに通知することを意味する。「DRESS」は、ドレスボード18aを使用して切削ブレード44をドレスすることを意味する。
【0078】
「RETRY」は、測定部62が、再度、カメラユニット46で取得した切削結果画像50に対して、画像処理、画像中の特徴領域のサイズの算出等を行うことを意味する。図4に示す例では、コントラスト値58aが下限値よりも小さい場合、「CALL」の処理が行われる。また、幅58cが下限値よりも小さい場合、「RETRY」の処理が行われる。
【0079】
これに対して、幅58c,58d、最大距離58e、サイズ58f、及び、総面積58gが、それぞれの上限値よりも大きい場合「DRESS」の処理が行われる。なお、各測定項目に対する「CALL」、「DRESS」及び「RETRY」の選択は、図4に示す例に限定されるものではない。
【0080】
図5は、切削結果画像50に対応する画像50aであり、測定値を説明するための図である。画像50aには、分割予定ライン13上に、切削痕13aのエッジ13b、切削痕13aの中心線13c等が、重ねて示されている。なお、デバイス15には、ハッチングが付されている。
【0081】
ここで再び、図1に戻り、制御ユニット56の構成について更に説明する。メモリ60は、カメラユニット46に被加工物11の切削痕13aを撮影させる撮影指示部64を含む。
【0082】
撮影指示部64は、上述したカーフチェック条件に達したときに、切削痕13aをカメラユニット46に撮影させる。撮影で得られた切削結果画像50に対して、測定部62が、各測定項目を算出することで測定値を得る。
【0083】
各測定項目の測定値のうち、少なくとも1つの測定項目の測定値が許容範囲を超えた場合(即ち、切削不良が発生した場合)、制御ユニット56は、切削ユニット40、切削ユニット移動機構22、X軸移動機構、チャックテーブル16等を動作させて、ドレスボード18aで切削ブレード44をドレスさせる。
【0084】
この様に、切削ブレード44のドレスを自動的に実行させる指示は、制御ユニット56におけるドレス指示部66により行われる。ドレス指示部66は、例えば、メモリ60に格納されたプログラムである。
【0085】
切削ブレード44のドレスでは、例えば、回転している切削ブレード44をドレスボード18aのX軸方向の外側に位置付けると共に、切削ブレード44の下端を、ドレスボード18aの上面から所定の深さに位置付ける。この状態で、切削ブレード44とドレスボード18aとをX軸移動機構により相対的にX軸方向に移動させる。
【0086】
ドレスにより、切削ブレード44の切り刃の目つぶれ、目詰まり等が解消されるので、切削時のチッピング23のサイズ、チッピング23の発生頻度を低減できるようになる。なお、ドレスを行う際は、切削ブレード44でドレスボード18aに一本の溝を形成してもよく、複数本の溝を形成してもよい。
【0087】
この様に、本実施形態では、少なくとも1つの測定項目の測定値が許容範囲を超えた場合に、自動的に切削ブレード44をドレスさせるので、切削不良が一旦発生したとしても、切削不良の解消を切削装置2において試みることができる。それゆえ、以降の切削工程では、切削不良が発生する可能性を低減できる。
【0088】
切削ブレード44のドレスの後、被加工物11の切削が再開される。ドレス後の切削再開時には、直前に形成された切削痕13aとは割り出し送り方向において異なる位置や、直前に切削を施した被加工物11とは異なる被加工物11に、所定本数(例えば、1本)の切削痕13aが新たに形成される。
【0089】
なお、1本の分割予定ライン13には、1本の切削痕13aが形成される。そして、撮影指示部64の指示により、新たに形成された切削痕13aの切削結果画像50が取得され、測定部62により、新たに形成された切削痕13aの複数の測定項目について測定値が算出される。
【0090】
このときも、少なくとも1つの測定項目の測定値が許容範囲を超えた場合、制御ユニット56の報知部68は、表示装置52、表示灯54、スピーカ等を通じて警報を出させることにより、切削不良が発生した旨をオペレータに通知する。
【0091】
報知部68は、例えば、メモリ60に格納されたプログラムにより実現される。報知部68が、切削装置2に警報を出させた場合、オペレータは、切削ブレード44の交換、加工送り速度、切削ブレード44の回転数等の切削条件の変更、複数の測定項目の許容範囲の緩和等を行うことにより、警報(アラーム)の解除を行う。
【0092】
この様に、切削装置2が自動的に切削不良を解消できない場合には、切削装置2が警報を出すことで、切削不良の原因解消をオペレータに促すことができる。それゆえ、例えば、経験の浅いオペレータであっても、経験豊富なオペレータを呼ぶなどして切削不良を解消できる。従って、以降の切削工程で、切削不良が発生する可能性を低減できる。
【0093】
次に、図6を参照して、切削装置2を用いた切削方法について説明する。図6は、切削装置2を用いた切削方法のフロー図である。所定枚数の被加工物11の切削を開始する場合、オペレータが表示装置52に表示されている「フルオート開始」のボタンをタッチする。
【0094】
複数の被加工物11の切削が切削装置2で行われるときに、1つ目の被加工物11をする場合(S2でNO)、被加工物11を保持面16aで保持して、アライメントを行い、切削ブレード44で被加工物11を切削する(切削工程S4)。
【0095】
被加工物11を各分割予定ライン13に沿って順次切削し、カーフチェック条件に達していない場合(S6でNO)、切削工程S4に戻る。これに対して、カーフチェック条件に達した場合(S6でYES)、第1のカーフチェック工程S8に進む。
【0096】
第1のカーフチェック工程S8では、撮影指示部64が例えば直前に加工した切削痕(第1の切削痕)13aをカメラユニット46に撮影させることで、切削結果画像50を得ると共に、切削結果画像50に基づいて、測定部62が各測定項目の測定値を得る。
【0097】
切削痕13aについて、全ての測定値が許容範囲内である場合(S10でNO)、S2に戻る。これに対して、切削痕13aについて、少なくとも1つの測定値が許容範囲を超えている場合(S10でYES)、ドレス工程S12に進む。
【0098】
ドレス工程S12では、ドレス指示部66の指示により、切削ブレード44のドレスが自動的に実行される。それゆえ、以降の切削工程S4では、切削不良が発生する可能性を低減できる。
【0099】
ドレス工程S12の後、確認用の切削工程S14が行われる。確認用の切削工程S14では、直前に形成された切削痕13aとは割り出し送り方向において異なる位置や、直前に切削を施した被加工物11とは異なる被加工物11に、所定本数(例えば、1本)の切削痕13aが新たに形成される。
【0100】
そして、撮影指示部64の指示により、新たに形成された切削痕13aの切削結果画像50が取得され、測定部62により、新たに形成された切削痕(第2の切削痕)13aの複数の測定項目について測定値が算出される(第2のカーフチェック工程S16)。
【0101】
そして、全ての測定値が許容範囲内である場合(S18でNO)、S2に戻る。これに対して、少なくとも1つの測定値が許容範囲を超えた場合(S18でYES)、報知部68が、表示装置52、表示灯54、スピーカ等に警報を出させる(報知工程S20)。
【0102】
報知工程S20に進んだ場合、制御ユニット56は、切削装置2での被加工物11の自動切削を一旦停止させる。そして、異常原因を解消してアラームを解除しない限り「フルオート開始」のボタンをタッチしても自動切削は行われなくなる。
【0103】
それゆえ、アラームを解除しない場合(S22でNO)、切削は終了する。これに対して、異常原因を解消してアラームを解除した場合(S22でYES)、制御ユニット56が「フルオート開始」のボタンを有効化するので、オペレータが「フルオート開始」のボタンをタッチすると、自動切削が再開される(S2に戻る)。
【0104】
この様に、切削装置2が自動的に切削不良を解消できない場合には、切削装置2が警報を出すことで、切削不良の原因解消をオペレータに促すことができる。それゆえ、例えば、経験の浅いオペレータであっても、経験豊富なオペレータを呼ぶなどして切削不良を解消できる。従って、以降の切削工程S4で、切削不良が発生する可能性を低減できる。
【0105】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0106】
2:切削装置、4:基台、4a,4b,4c:開口
6:カセットエレベータ、8:カセット、12:テーブルカバー、14:蛇腹状カバー
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面
13:分割予定ライン、13a:切削痕、13b:エッジ、13c:中心線
15:デバイス、17:ダイシングテープ、19:フレーム、21:被加工物ユニット
16:チャックテーブル、16a:保持面、16b:クランプ
18:サブチャックテーブル、18a:ドレスボード
20:支持構造、22:切削ユニット移動機構
23:チッピング、25:カーフ
24:Y軸ガイドレール、26:Y軸移動プレート
28:Y軸ボールネジ、30:Y軸パルスモータ
32:Z軸ガイドレール、34:Z軸移動プレート
36:Z軸ボールネジ、38:Z軸パルスモータ
40:切削ユニット、42:スピンドル、44:切削ブレード
46:カメラユニット、48:洗浄ユニット、52:表示装置、54:表示灯
50:切削結果画像、50a:画像
56:制御ユニット、58:プロセッサ
58a:コントラスト値、58b:ずれ量、58c,58d:幅、58e:最大距離、58f:サイズ、58g:総面積、58h:ずれ量
60:メモリ、62:測定部、64:撮影指示部、66:ドレス指示部、68:報知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6