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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240722BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20240722BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240722BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240722BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K5/3415
C08G59/40
C09J163/00
C09J11/06
H01L23/30 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021126422
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021515
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】串原 直行
(72)【発明者】
【氏名】笹原 梨那
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-210408(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004316(WO,A1)
【文献】特開2022-001615(JP,A)
【文献】国際公開第2020/045408(WO,A1)
【文献】特表平05-500377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/10
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
H01L 23/28-23/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含む熱硬化性樹脂組成物。
(A)下記式(1)で表されるシトラコンイミド化合物
【化1】
(式(1)中、Aは下記構造で示される基から選ばれる2価の有機基である。)
【化2】
(*はシトラコンイミド基中の窒素原子との結合を意味する。nは1~20である。)
(B)エポキシ樹脂
(C)アミン化合物、フェノール化合物、酸無水物化合物及び活性エステル化合物から選ばれる1種以上エポキシ樹脂硬化剤
(D)硬化促進剤
【請求項2】
(D)硬化促進剤がイミダゾール系硬化促進剤、有機リン系硬化促進剤、及び第3級アミン系硬化促進剤から選ばれる1種以上を含むものである請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)エポキシ樹脂が1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものである請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分を100質量部としたときの(B)成分の質量部数が1~900質量部、
(B)エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基1モル当量に対して、(C)成分の硬化剤に含まれるエポキシ基と反応する官能基のモル当量比が0.1~4.0、
(A)成分を100質量部としたときの(D)成分の質量部数が0.01~20質量部である請求項1~のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)シトラコンイミド化合物の数平均分子量が200~10,000である請求項1~のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる半導体封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シトラコンイミド化合物を用いた熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー及びルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータ等の電子機器では、使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板には20GHz領域といった高周波化対応が必要となり、伝送損失の低減を可能とする低比誘電率及び低誘電正接の基板材料が求められている。上述した電子機器のほかに、ITS分野(自動車、交通システム関連)及び室内の近距離通信分野でも高周波無線信号を扱う新規システムの実用化及び実用計画が進んでおり、これらの機器に搭載するプリント配線板に対しても、低伝送損失基板材料が要求されている。
【0003】
低比誘電率及び低誘電正接の材料としては、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、フッ素樹脂、スチレン樹脂、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂等が知られている(特許文献1~6)。しかしながら、これらの材料はいずれも溶融粘度が高く、得られる硬化物は硬く脆いため、プリント配線板等の用途には適しているが、接着剤や半導体封止材等に使用することは困難であった。また、高温環境下では基材との接着力が低下し、接着不良が発生することが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-1965号公報
【文献】特開2019-99710号公報
【文献】特開2018-28044号公報
【文献】特開2018-177931号公報
【文献】特開2018-135506号公報
【文献】特開2011-32463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、粘度が低く取り扱い性に優れ、低比誘電率及び低誘電正接であり、接着性に優れ、高耐熱性を有する硬化物となる熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記熱硬化性樹脂組成物が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記の熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0007】
[1]
下記の(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含む熱硬化性樹脂組成物。
(A)シトラコンイミド化合物
(B)エポキシ樹脂
(C)エポキシ樹脂硬化剤
(D)硬化促進剤

[2]
(A)シトラコンイミド化合物が下記式(1)で表されるビスシトラコンイミド化合物である[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Aは2価の有機基である。)

[3]
式(1)中のAが下記構造で示される基及びダイマー酸骨格由来の炭化水素基から選ばれるものである[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】
(*はシトラコンイミド基中の窒素原子との結合を意味する。nは1~20である。)

[4]
(C)エポキシ樹脂硬化剤が、アミン化合物、フェノール化合物、酸無水物化合物及び活性エステル化合物から選ばれる1種以上である[1]~[3]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。

[5]
(D)硬化促進剤がイミダゾール系硬化促進剤、有機リン系硬化促進剤、及び第3級アミン系硬化促進剤から選ばれる1種以上を含むものである[1]~[4]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。

[6]
(B)エポキシ樹脂が1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものである[1]~[5]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。

[7]
(A)成分を100質量部としたときの(B)成分の質量部数が1~900質量部、
(B)エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基1モル当量に対して、(C)成分の硬化剤に含まれるエポキシ基と反応する官能基のモル当量比が0.1~4.0、
(A)成分を100質量部としたときの(D)成分の質量部数が0.01~20質量部である[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。

[8]
(A)シトラコンイミド化合物の数平均分子量が200~10,000である[1]~[7]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。

[9]
[1]~[8]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる接着剤。

[10]
[1]~[8]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる半導体封止材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は低比誘電率及び低誘電正接でありながら高接着性、高耐熱性を兼備する。したがって、本発明の組成物は、接着剤、半導体封止材等の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
(A)シトラコンイミド化合物
本発明で用いる(A)成分は、シトラコンイミド化合物である。シトラコンイミド基はマレイミド基中の一つの水素原子がメチル基に置換しているものである。このメチル基の効果により、同骨格のマレイミド化合物と比較して、低誘電率、低誘電正接を示すだけでなく、低融点であり他の成分との相溶性も改善する。
【0011】
(A)成分のシトラコンイミド化合物は室温での性状や数平均分子量は特に制限はないが、該数平均分子量が200~10,000が好ましく、200~5,000がより好ましく、200~2,000がさらに好ましい。
本明細書において、数平均分子量は、下記測定条件を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン標準で換算した数平均分子量である。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperHZ4000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ3000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ2000(4.6mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL(濃度0.2質量%のTHF溶液)
【0012】
(A)成分のシトラコンイミド化合物は、原料となるアミン化合物の調達のしやすさやシトラコンイミド化合物の溶剤への溶解性、合成のしやすさの観点から、1分子中に2個のシトラコンイミド基を有するビスシトラコンイミド化合物であることが好ましく、特に下記式(1)で表されるビスシトラコンイミド化合物が好ましい。
【0013】
【化3】
(式(1)中、Aは2価の有機基を有する。)
【0014】
また、硬化後の低弾性や優れた誘電特性を得る(低比誘電率かつ低誘電正接である)ために、シトラコンイミド化合物中のAで示される2価の有機基は、下記構造で示される基及びダイマー酸骨格由来の炭化水素基から選ばれるものがより好ましい。
【0015】
【化4】
(*はシトラコンイミド基中の窒素原子との結合を意味する。nは1~20である。)
【0016】
Aで表される2価の有機基のうち、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン及び2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等のジアミンから誘導される基(すなわち、前記ジアミンの2つのアミノ基を除いた基)のように、芳香族環を3個以上有する基は、誘電特性及び硬化物の柔軟性の観点から特に好ましい。
【0017】
ダイマー酸とは、植物系油脂などの天然物を原料とする炭素数18の不飽和脂肪酸の二量化によって生成された、炭素数36のジカルボン酸を主成分とする液状の二塩基酸である。ダイマー酸骨格は単一の骨格ではなく、複数の構造を有し、何種類かの異性体が存在する。ダイマー酸の代表的なものは直鎖型(a)、単環型(b)、芳香族環型(c)、多環型(d)という名称で分類される。
本明細書において、ダイマー酸骨格とは、このようなダイマー酸のカルボキシ基を1級アミノメチル基で置換した構造を有するダイマージアミンから誘導される基をいう。
すなわち、(A)成分のシトラコンイミド化合物が有するダイマー酸骨格由来の炭化水素基として、下記(a)~(d)で示される各ダイマー酸において、2つのカルボキシ基がメチレン基で置換された分岐状2価炭化水素基が好ましい。
また、(A)成分のシトラコンイミド化合物がダイマー酸骨格由来の炭化水素基を有する場合、該ダイマー酸骨格由来の炭化水素基は、水添反応により、該ダイマー酸骨格由来の炭化水素基中の炭素-炭素二重結合が低減した構造を有するものが、硬化物の耐熱性や信頼性の観点からより好ましい。
【0018】
【化5】
【0019】
(A)成分のシトラコンイミド化合物は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計に対する(A)成分の割合は、20~95質量%であることが好ましく、30~92質量%であることがより好ましく、40~90質量%であることが更に好ましい。
【0020】
(B)エポキシ樹脂
(B)エポキシ樹脂は、(A)シトラコンイミド化合物の反応を促進する目的で添加される。
【0021】
該エポキシ樹脂はエポキシ基を1分子中に2個以上有するものが好ましく、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂;レゾルシノール型エポキシ樹脂、レゾルシノールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能フェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物、並びにこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(B)エポキシ樹脂の配合量は、(A)成分100質量部に対して1~900質量部であることが好ましく、2~450質量部であることがより好ましく、3~200質量部であることが更に好ましい。(B)エポキシ樹脂の配合量がこの範囲であると、低誘電特性を有する(低誘電率かつ低誘電正接である)硬化物を得ることができる。
【0023】
(C)エポキシ樹脂硬化剤
(C)エポキシ樹脂硬化剤は、(B)エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基と反応させる目的で添加される。エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ基と反応する官能基を有していればよく、中でもアミン化合物、フェノール化合物、酸無水物化合物及び活性エステル化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0024】
アミン化合物は、一般的に公知のものを使用できる。ハンドリング性や耐湿信頼性の観点から芳香族アミン化合物が好ましい。例えば、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミノジフェニルメタン化合物;2,4-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン等が好ましいものとして挙げられ、より好ましくは、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミノジフェニルメタン化合物である。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0025】
上記アミン化合物は常温(20~30℃)で液体のものであっても固体のものであってもよい。常温で液体のものはそのまま配合しても問題ないが、固体のものはそのまま配合すると樹脂組成物の粘度が上昇し、作業性が著しく悪くなるため、予め上記エポキシ樹脂と溶融混合することが好ましく、後述する特定の配合割合で、70~150℃の温度範囲で1~2時間溶融混合することが好ましい。混合温度が70℃未満であるとアミン化合物が十分に相溶しないおそれがあり、150℃を超える温度であるとエポキシ樹脂と反応して粘度上昇するおそれがある。また、混合時間が1時間未満であるとアミン化合物が十分に相溶せず、粘度上昇を招くおそれがあり、2時間を超えるとエポキシ樹脂と反応し、粘度上昇するおそれがある。
【0026】
フェノール化合物は、一般的に公知のものを使用できる。例えば、フェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、レゾルシノール型フェノール樹脂、ノボラック型アリルフェノール樹脂等のアリル基含有フェノール樹脂、ビスフェノールA型樹脂及びビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
酸無水物化合物は、一般的に公知のものを使用できる。例えば、4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,4-ジメチル-6-(2-メチル-1-プロペニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ピロメリット酸二無水物、マレイン化アロオシメン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラビスベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、(3、4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
活性エステル化合物は、一般的に公知のものを使用できる。例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラック構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン環構造を含む活性エステル化合物、アラルキル型フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、ビフェニル型フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、脂環式フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、複素環型フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン環含有フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、レゾルシノール型フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、アリル基含有フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物、ビスフェノールA型樹脂構造を含む活性エステル化合物、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、(B)成分中のエポキシ基1モル当量に対するエポキシ樹脂硬化剤中の官能基のモル当量比が0.1~4.0となる量が好ましく、より好ましくは0.2~2.0、特に好ましくは0.4~1.0となる量である。該モル当量比が0.1未満では未反応のエポキシ基が残存し、密着性が低下するおそれがあり、4.0を超えると硬化物の吸湿率が大きくなり、リフロー時又は温度サイクル時にクラックが発生するおそれがある。尚、本発明において当量とは官能基一個当たりの分子量である。
【0030】
(D)硬化促進剤
(D)成分の硬化促進剤は、前記(A)シトラコンイミド化合物の硬化性を促進するものであればよく、一般に公知のもの、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、有機リン系硬化促進剤、第3級アミン系硬化促進剤等が使用できる。(D)成分の硬化促進剤としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等のホスフィン;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等のホスフィン・ボラン錯体;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウムボレート塩;ビス(テトラブチルホスホニウム)ジハイドロジェンピロメリテート等の有機リン系化合物;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等の第3級アミン化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等の第3級アミン化合物の塩;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。中でも、第3級アミン化合物の塩、有機リン系化合物が好ましく、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7の塩、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートがより好ましい。
(D)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
(D)硬化促進剤の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部である。
【0032】
その他の添加剤
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記(A)~(D)成分に加え、その他の添加剤を必要に応じて本発明の目的、効果を損なわない範囲で添加することができる。かかる添加剤としては、無機充填材、難燃剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、接着付与剤、低応力剤、着色剤などが挙げられる。
【0033】
無機充填材は、熱硬化性樹脂組成物の樹脂強度向上や低熱膨張化を目的に配合される。無機充填材としては、例えば、シリカ類(例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、クリストバライト等)、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維、酸化マグネシウム等が挙げられる。これら無機充填材の平均粒径や形状は、用途に応じて選択することができる。
【0034】
無機充填材は、樹脂と無機充填材との結合強度を強くするために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理されたものを用いることが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールとγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応物、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;γ-メルカプトシラン、γ-エピスルフィドキシプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0035】
無機充填材の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、10~20,000質量部であることが好ましく、より好ましくは30~10,000質量部である。
【0036】
難燃剤は、難燃性を付与する目的で添加される。該難燃剤としては特に制限されず公知のものを全て使用することができ、例えば、ホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデンを使用することができる。
【0037】
イオントラップ剤は、樹脂組成物中に含まれるイオン不純物を捕捉し、熱劣化や吸湿劣化を防ぐ目的で添加される。イオントラップ剤としては、特に制限されず公知のものを全て使用することができ、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等を使用してもよい。
【0038】
酸化防止剤としては、特に制限はないが、例えば、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)アセテート、ネオドデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチル-α-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル-α-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル-α-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-(n-オクチルチオ)エチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルアセテート、2-(n-オクタデシルチオ)エチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルアセテート、2-(n-オクタデシルチオ)エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-(2-ステアロイルオキシエチルチオ)エチル-7-(3-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、2-ヒドロキシエチル-7-(3-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤;ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等の硫黄系酸化防止剤;トリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]-N,N-ビス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]-エチル]エタナミン等のリン系酸化防止剤が挙げられる。
【0039】
接着付与剤としては、公知の接着付与剤であれば、本発明の作用効果を奏する限り特に限定されず、接着性あるいは粘着性(感圧接着性)を付与するため、必要に応じて接着性付与剤を含有してよい。接着性付与剤としては、例えば、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、シランカップリング剤等が挙げられる。中でも接着性を付与するにはシランカップリング剤が好ましい。
【0040】
シランカップリング剤としては、特に制限はないが、例えば、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-トリメトキシシラン、メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
【0041】
その他の添加剤の配合量は組成物の目的により相違するが、通常は、無機充填材を除く組成物全体の5質量%以下の量である。
【0042】
[組成物の製造方法]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、次に示されるような方法で製造することができる。
例えば(A)~(D)成分を、同時に又は別々に必要により加熱処理を行いながら混合し、撹拌、溶解及び/又は分散させることにより、(A)~(D)成分の混合物を得る。好ましくは、(A)~(C)成分の混合物に(D)硬化促進剤を添加し、撹拌、溶解及び/又は分散させることにより(A)~(D)成分の混合物を得てもよい。また、使用用途によって、(A)~(D)成分の混合物に、無機充填材、難燃剤、重合開始剤及びイオントラップ剤のうち少なくとも1種類を添加して混合してもよい。各成分は単一種類で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0043】
組成物の製造方法では、混合、撹拌及び分散を行う装置について、特に限定されない。具体的には、例えば、撹拌及び加熱装置を備えたライカイ機、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、又はマスコロイダーを用いることができ、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0044】
[用途]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、粘度が低く取り扱い性に優れ、低比誘電率及び低誘電正接であり、接着性に優れ、高耐熱性を有する硬化物となるため、接着剤及び半導体封止材として好適に使用することができる。
接着剤として用いる場合は、上述のように各成分を所定の組成比で配合し、プラネタリーミキサー等の混合機を用いて混合後、必要に応じて分散性を高めるために3本ロールミルを使用し混練し、混合することが好ましい。
また、半導体封止材として用いる場合は、上述のように各成分を所定の組成比で配合し、ミキサー等によって十分に均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合し、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕することが好ましい。
半導体封止材を用いた一般的な成形方法としては、トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5~20N/mm2、成形温度120~190℃で成形時間30~500秒、好ましくは成形温度150~185℃で成形時間30~180秒で行う。また、圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120~190℃で成形時間30~600秒、好ましくは成形温度130~160℃で成形時間120~300秒で行う。更に、いずれの成形法においても、後硬化を150~225℃で0.5~20時間行ってもよい。
【実施例
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、表1~3中、配合量は質量部を示す。
【0046】
実施例及び比較例で使用した各成分を以下に示す。なお、以下において数平均分子量(Mn)はポリスチレンを基準として、下記測定条件によりゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されたものである。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperHZ4000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ3000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ2000(4.6mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL(濃度0.2質量%のTHF溶液)
【0047】
(A)シトラコンイミド化合物
合成例1(シトラコンイミド化合物の製造、式(2))
攪拌機、ディーンスターク管、冷却コンデンサー及び温度計を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに、2-メチルペンタンジアミン52.29g(0.45モル)、無水シトラコン酸111.0g(0.99モル)及びトルエン150gを加えて反応液を調製し、80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液にメタンスルホン酸40gを加えたのち、110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら16時間撹拌した後、反応液を200gのイオン交換水を用いて5回水洗した。その後、60℃の減圧ストリップにより室温で褐色液状の目的物(式(2)、(A1)、Mn510)を130.1g(収率95%)得た。
【化6】
【0048】
合成例2(シトラコンイミド化合物の製造、式(3))
攪拌機、ディーンスターク管、冷却コンデンサー及び温度計を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに、2,2,4-トリメチルヘキサンジアミン71.2g(0.45モル)、無水シトラコン酸111.0g(0.99モル)及びトルエン150gを加えて反応液を調製し、80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液にメタンスルホン酸40gを加えたのち、110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら16時間撹拌した後、反応液を200gのイオン交換水を用いて5回水洗した。その後、60℃の減圧ストリップにより室温で褐色液状の目的物(式(3)、(A2)、Mn590)を149.7g(収率96%)得た。
【化7】
【0049】
合成例3(シトラコンイミド化合物の製造、式(4))
攪拌機、ディーンスターク管、冷却コンデンサー及び温度計を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに、BAPP184.7g(0.45モル)、無水シトラコン酸111.0g(0.99モル)及びトルエン150gを加えて反応液を調製し、80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液にメタンスルホン酸40gを加えたのち、110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら16時間撹拌した後、反応液を200gのイオン交換水を用いて5回水洗した。その後、水洗した反応液をヘプタンに投入し沈殿物を濾過により回収することで、黄色粉末状の目的物(式(4)、(A3)、Mn600)を257.1g(収率95%)得た。
【化8】
【0050】
合成例4(シトラコンイミド化合物の製造、式(5))
攪拌機、ディーンスターク管、冷却コンデンサー及び温度計を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに、ビスアニリンM155.0g(0.45モル)、無水シトラコン酸111.0g(0.99モル)及びトルエン150gを加えて反応液を調製し、80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液にメタンスルホン酸40gを加えたのち、110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら16時間撹拌した後、反応液を200gのイオン交換水を用いて5回水洗した。その後、60℃の減圧ストリップにより室温で黄色液状の目的物(式(5)、(A4)、Mn530)を229.7g(収率96%)得た。
【化9】
【0051】
(B)エポキシ樹脂
(B1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828EL:三菱ケミカル(株)製、25℃で液状、エポキシ基当量189)
(B2)ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000:日本化薬(株)製、軟化点56℃、エポキシ基当量273)
(B3)ナフタレン型エポキシ樹脂(ESN-475V:新日鉄住金化学(株)製、軟化点80℃、エポキシ基当量330)
【0052】
(C)エポキシ樹脂硬化剤
(C1)3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(カヤハードAA、日本化薬(株)製、アミノ基当量63.5)
(C2)ノボラック型アリルフェノール樹脂(MEH-8000H:明和化成(株)製、フェノール水酸基当量141)
(C3)4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(リカシッドMH:新日本理化(株)製、酸無水物当量168)
(C4)ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂構造を含む活性エステル化合物(HPC-8000-65T:DIC(株)製、活性エステル基当量223、トルエンワニス/固形分65%)表1~3は固形分量で表記
【0053】
(D)硬化促進剤
(D1)2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成(株)製)
(D2)ビス(テトラブチルホスホニウム)ジハイドロジェンピロメリテート(BTBP-ピロメリット酸:北興化学(株)製))
【0054】
(E)マレイミド化合物
(E1)ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド(商品名:BMI-4000、大和化成(株)製)
(E2)1,6-ビスマレイミド―(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(商品名:BMI-TMH、大和化成(株)製)
上記の(E)マレイミド化合物は、シトラコンイミド化合物の優位性を示すため、比較例で用いたものである。
【0055】
上記各成分を表1~3に記載の配合量(質量部)にて混合して、熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、表1~3に記載の「当量比」とは、(B)成分のエポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モル当量に対する(C)成分中のエポキシ樹脂硬化剤の官能基のモル当量(活性水素当量)の比である。
【0056】
1.粘度
調製した熱硬化性樹脂組成物を120℃に設定したレオメーター(プレート直径25mm、測定周波数1Hz)を用いて測定を行い、粘度が10Pa・s以下のものを○、10Pa・s以上のものを×とし、表1に記載した。
【0057】
2.比誘電率、誘電正接
直径200mm、150μm厚の枠を用意し、実施例及び比較例の各熱硬化性樹脂組成物を厚さ50μmの離型処理されたPETフィルム(E7006、東洋紡製)で挟み込んで、真空プレス機(ニッコーマテリアルズ製)を用いて180℃で20分の条件で成形し、硬化物を得た。PETフィルムから硬化物を取り出し、さらに180℃で2時間の条件で本硬化させることで硬化樹脂フィルムを得た。
前記硬化樹脂フィルムを用いて、ネットワークアナライザ(キーサイト社製 E5063-2D5)とストリップライン(キーコム株式会社製)を接続し、上記硬化樹脂フィルムの周波数10GHzにおける比誘電率と誘電正接を測定した。結果を表1~3に示す。
【0058】
3.Cuへの接着力
実施例及び比較例の各熱硬化性樹脂組成物を型に流し込み、上面の直径2mm、下面の直径5mm、高さ3mmの円錐台形状の試験片を得た。該試験片をCu板上に載せ、該試験片を180℃で3時間加熱して硬化させた。硬化後、得られた試験片を150℃で剪断接着力を測定し、その測定結果を表1~3に示す。
【0059】
4.ヒートサイクル試験(耐熱性)
50×70mmの大きさのPPSの枠がついたCuリードフレームを用いて、実施例及び比較例において作製した組成物を80℃で厚さが2mmになるように注入し、さらに180℃で3時間成形し、成形品を得た。成形後、ヒートサイクル試験(-65℃で30分間保持、200℃で30分間保持を10サイクル繰り返す)に供し、ヒートサイクル試験後の樹脂とCuリードフレームとの剥離状態を、超音波探査装置を用いて確認した。合計10つの成形品中の、剥離が認められた成形品数を数えた。その結果を表1~3に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
実施例1~20の組成物はいずれも粘度が低く取り扱い性に優れるものであった。また、表1~3の結果から、シトラコンイミド化合物、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及び硬化促進剤を含む組成物の硬化物は、低誘電特性を示しつつ、基材への接着性及び耐熱性に優れることが明らかとなった。