(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】非成人のヒトに対する抗CD30抗体-薬物コンジュゲートの投与
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240722BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20240722BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240722BHJP
A61K 38/07 20060101ALN20240722BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240722BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K47/65
A61P35/02
A61K38/07
A61K39/395 L
A61K39/395 N
(21)【出願番号】P 2019524395
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 US2017061294
(87)【国際公開番号】W WO2018089890
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-02
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファサンメイド, アデディグボ
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】渕野 留香
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-501800(JP,A)
【文献】国際公開第2015/085289(WO,A1)
【文献】Cancer Chemothera Pharmacol,2016年11月11日,Vol.78,No.6,p.1217-1223
【文献】European Journal of Cancer,2011年,Vol.47,Suppl.1,p.S640,Article No.9201
【文献】病院薬学,1992年,Vol.18,No.3,p.245-251
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-47/69
CAPLUS/REGISTRY/BIOSIS/EMBASE/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非成人のヒト対象の血液癌またはリンパ系癌の治療のための、ブレンツキシマブベドチンを含む組成物であって、ブレンツキシマブベドチンが、
前記対象に、1回当たり48mg/m
2の用量で
、28日間の各サイクル毎に2回投与される
ように用いられることを特徴と
し、ここで、前記対象への投与は各28日間のサイクルの1日目及び15日目である、組成物。
【請求項2】
前記対象が、AVD(アドリアマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)もしくはCHP(ドキソルビシン、シクロホスファミド、プレドニゾン)のような併用化学療法、免疫療法(ニボルマブなど)、HSC(造血幹細胞)移植療法、放射線療法またはこれらを組み合わせた療法を受けている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記対象の正規化薬物暴露量が、前記ADC濃度時間曲線下面積(AUC)によって測定した場合、示されている成人用量における成人AUCと実質的に同程度である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、2サイクル以上投与されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ブレンツキシマブベドチンを含む、非成人のヒト対象を処置する方法における使用のための製品であって、前記方法は、前記製品を、ブレンツキシマブベドチンを1回当たり48mg/m
2の用量で
、前記対象に28日間の各サイクル毎に2回投与することを含み、ここで、前記対象への投与は各28日間のサイクルの1日目及び15日目である、製品。
【請求項6】
前記製品が、前記非成人のヒト対象の血液癌またはリンパ系癌の治療のためのものである、請求項5に記載の
製品。
【請求項7】
前記非成人のヒトが、約13歳未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記非成人のヒトが、約10~2歳である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記対象が、現在AVD(アドリアマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)療法を受けているところである、請求項2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願
本願は、2016年11月14日に出願した米国特許仮出願第62/421,527号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の教示全体は、参照により、本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、特に非成人(小児)のヒト対象の特定の固形悪性腫瘍、血液悪性腫瘍及びリンパ系悪性腫瘍におけるようなCD30+細胞の病理学的活性によって特徴付けられる障害の治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の低分子薬では典型的に、確立された方法(非成人のヒト対象の、一般的に高めの代謝に合わせて調節する方法)を用いて、非成人のヒト対象用に用量を調節する。しかしながら、生体分子では、用量を非成人の対象用に容易には調節できない。とりわけ、その薬物動態が、低分子よりもかなり予測不能であるからである。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、生体分子成分と低分子成分の両方を典型的に含む療法剤であるので、さらに予測不能な薬物動態を示すことがある。ブレンツキシマブベドチン(BV、商品名ADCETRIS(登録商標))のような抗CD30 ADCは、例えば特定の固形癌、血液癌及びリンパ系癌を治療すると、成人対象に多くの利益をもたらす。ブレンツキシマブベドチンは現在、米国において、自家造血幹細胞移植(auto-HSCT)が失敗した後、またはauto-HSCT候補ではない患者であって、以前に少なくとも2つの多剤併用化学療法レジメンが失敗した後の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)患者の治療用として、古典的HLの再発または進行リスクの高い患者においてauto-HSCT後の地固め療法として、以前に少なくとも1つの多剤併用化学療法レジメンが失敗した後の全身性未分化大細胞型リンパ腫(sALCL)患者の治療用として、及び以前に全身療法を受けたことがある原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫(pcALCL)またはCD30発現菌状息肉腫(MF)患者の治療用として承認されており、30分にわたる静脈内注入で、3週間おきに、成人ヒト対象における体重に基づく用量で投与されている。しかし、ブレンツキシマブベドチンのようなADCの薬物動態が予測不能であることを踏まえ、非成人のヒト対象を治療する、対応する方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、とりわけ、非成人のヒト対象に、抗CD30 ADCを有効量投与することによって、その対象において、特定の固形癌、血液癌及びリンパ系癌におけるようなCD30+細胞の病理学的活性によって特徴付けられる障害を治療する方法を提供する。体表面積(BSA)換算用量の抗CD30 ADCでは、曲線下面積(AUC)によって評価した場合に、体重換算用量の抗CD30 ADCよりも着実に、非成人のヒト対象の全身にわたって、ADCへの暴露が行われるという本出願者の発見に、本発明は少なくとも部分的に基づいている。
【0005】
したがって、一態様では、本発明は、非成人のヒト対象の血液癌、リンパ系癌または固形癌の治療方法を提供する。この方法は、1用量以上の抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を体表面積換算用量で投与することを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、例えば3週間おきに、約32~78mg/m2、例えば、約64~78mg/m2、例えば、約66~76mg/m2、68~74mg/m2、70~72mg/m2もしくは約71.5mg/m2、例えば2週間おきに、約43~53mg/m2、例えば、約45~51mg/m2、47~49mg/m2もしくは約48mg/m2、または例えば約2週間おきに、約32~40mg/m2、例えば、約34~38mg/m2、35~37mg/m2もしくは約36mg/m2の用量で投与する。いくつかの特定的な実施形態では、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、3週間おきに、約70~72mg/m2、71~72mg/m2または約71.5mg/m2の用量で投与する。いくつかの特定的な実施形態では、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、2週間おきに、約45~51mg/m2、47~49mg/m2または約48mg/m2の用量で投与する。いくつかの特定的な実施形態では、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、2週間おきに、約34~38mg/m2、35~37mg/m2または約36mg/m2の用量で投与する。一定の特定的な実施形態では、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、約71.5mg/m2または約78mg/m2の用量で投与する。別の一定の実施形態では、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、約43mg/m2または約48mg/m2の用量で投与する。さらに別の一定の実施形態では、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、約36mg/m2の用量で投与する。
【0007】
一定の実施形態では、対象は、AVD(アドリアマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)、CHP(ドキソルビシン、シクロホスファミド、プレドニゾン)、RCHOP(ドキソルビシン、シクロホスファミド、プレドニゾン、ビンクリスチン)、リツキシマブ+ベンダムスチンのような併用化学療法、免疫療法(ニボルマブのような1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む)、HSC(造血幹細胞)移植療法、放射線療法またはこれらを組み合わせた療法を受けている。
【0008】
いくつかの実施形態では、ADC濃度時間曲線下面積(AUC)によって測定した場合の対象の正規化薬物暴露量は、示されている成人用量における成人のAUCと実質的に同程度である。
【0009】
一定の実施形態では、ADCは、cAC10の相補性決定領域(CDR)を含む抗CD30抗体を含む。さらに特定的な実施形態では、ADCは、抗CD30抗体cAC10を含む。一定の特定的な実施形態では、ADCは、オーリスタチンを含む。さらに特定的な実施形態では、オーリスタチンは、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)である。いくつかの実施形態では、ADCは、カテプシン切断リンカーを含み、任意にスペーサーを含む。さらに特定的な実施形態では、カテプシン切断リンカーは、バリン-シトルリンリンカーである。さらに特定的な実施形態では、ADCは、ブレンツキシマブベドチンである。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、ADCは、2サイクル以上、例えば2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクル、6サイクル、7サイクル、8サイクル、9サイクル、10サイクル、11サイクル、12サイクル、13サイクル、14サイクル、15サイクル、16サイクル、17サイクル、18サイクル、19サイクル、20サイクル、またはこれを超えるサイクルで、例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回または6週間に1回、例えば、2週間または3週間に1回投与する。
【0011】
関連する態様では、本発明は、非成人のヒト対象の治療、例えば、血液癌、リンパ系癌または固形癌の治療に適する体表面積換算用量で、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、非成人のヒト対象に、例えば3週間おきに、約32~78mg/m2、例えば、約64~78mg/m2、例えば、約66~76mg/m2、68~74mg/m2、70~72mg/m2もしくは約71.5mg/m2、例えば2週間おきに、約43~53mg/m2、例えば、約45~51mg/m2、47~49mg/m2もしくは約48mg/m2、または例えば2週間おきに、約32~40mg/m2、例えば、約34~38、35~37もしくは約36mg/m2の用量で、1用量以上のブレンツキシマブベドチンを投与することによって、その対象の血液癌、リンパ系癌または固形癌を治療する方法を提供する。
【0013】
さらに別の実施形態では、本発明は、非成人のヒト対象の血液癌またはリンパ系癌を治療するためのブレンツキシマブベドチンであって、例えば3週間おきに、約32~78mg/m2、例えば、約64~78mg/m2、例えば、約66~76mg/m2、68~74mg/m2、70~72mg/m2もしくは約71.5mg/m2、例えば2週間おきに、例えば、約43~53mg/m2、例えば、約45~51mg/m2、47~49mg/m2もしくは約48mg/m2、または例えば2週間おきに、約32~40mg/m2、例えば、約34~38、35~37もしくは約36mg/m2の用量で提供されるブレンツキシマブベドチンを提供する。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
非成人のヒト対象の血液癌またはリンパ系癌の治療方法であって、1用量以上の抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を体表面積換算用量で投与することを含む前記方法。
(項目2)
前記抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を約32~78mg/m
2
、
例えば約3週間おきに、例えば約64~78mg/m
2
、例えば、約66~76、68~74、70~72もしくは約71.5mg/m
2
、
例えば約2週間おきに、例えば約43~53mg/m
2
、例えば、約45~51、47~49もしくは約48mg/m
2
、または
例えば約2週間おきに、例えば約32~40mg/m
2
、例えば約34~38、35~37もしくは約36mg/m
2
の用量で投与する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を約71.5mg/m
2
、約48mg/m
2
または約36mg/m
2
の用量で投与する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目4)
前記対象が、AVD(アドリアマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)もしくはCHP(ドキソルビシン、シクロホスファミド、プレドニゾン)のような併用化学療法、免疫療法(ニボルマブなど)、HSC(造血幹細胞)移植療法、放射線療法またはこれらを組み合わせた療法を受けている、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記対象の正規化薬物暴露量が、前記ADC濃度時間曲線下面積(AUC)によって測定した場合、示されている成人用量における成人AUCと実質的に同程度である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記ADCが、cAC10の相補性決定領域(CDR)を含む抗CD30抗体を含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記ADCが、前記抗CD30抗体cAC10を含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記ADCが、オーリスタチンを含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記オーリスタチンが、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記ADCが、カテプシン切断リンカーを含み、任意にスペーサーを含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記カテプシン切断リンカーが、バリン-シトルリンリンカーである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記ADCが、ブレンツキシマブベドチンである、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記ADCを2サイクル以上、例えば、2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクル、6サイクル、7サイクル、8サイクル、9サイクル、10サイクル、11サイクル、12サイクル、13サイクル、14サイクル、15サイクル、16サイクル、17サイクル、18サイクル、19サイクル、20サイクル、またはこれを超えるサイクル、例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回または6週間に1回、例えば2週間または3週間に1回投与する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
非成人のヒト対象の治療、例えば、血液癌またはリンパ系癌の治療に適する体表面積換算用量で、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を含む製品。
(項目15)
非成人のヒト対象の血液癌またはリンパ系癌の治療方法であって、1用量以上のブレンツキシマブベドチンを前記対象に、約32~78mg/m
2
、
例えば3週間おきに、例えば約64~78mg/m
2
、例えば、約66~76mg/m
2
、68~74mg/m
2
、70~72mg/m
2
もしくは約71.5mg/m
2
、
例えば2週間おきに、例えば約43~53mg/m
2
、例えば、約45~51mg/m
2
、47~49mg/m
2
もしくは約48mg/m
2
、または
例えば約2週間おきに、例えば約32~40mg/m
2
、例えば約34~38、35~37もしくは約36mg/m
2
の用量で投与することを含む前記方法。
(項目16)
非成人のヒト対象の血液癌またはリンパ系癌を治療するためのブレンツキシマブベドチンであって、約32~78mg/m
2
、
例えば3週間おきに、例えば約64~78mg/m
2
、例えば、約66~76mg/m
2
、68~74mg/m
2
、70~72mg/m
2
もしくは約71.5mg/m
2
、
例えば2週間おきに、例えば約43~53mg/m
2
、例えば、約45~51mg/m
2
、47~49mg/m
2
もしくは約48mg/m
2
、または
例えば約2週間おきに、例えば約32~40mg/m
2
、例えば約34~38、35~37もしくは約36mg/m
2
の用量で提供する前記ブレンツキシマブベドチン。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aは、BVの曲線下面積(AUC)と対象の年齢との関係を示す散布図である。
図1Bは、BVの曲線下面積(AUC)と対象の年齢との関係を示す散布図である。AUCの単位は、マイクログラム/mL×日数である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、とりわけ、非成人のヒト対象において、特定の固形癌、血液癌及びリンパ系癌におけるようなCD30+細胞の病理学的活性によって特徴付けられる障害を治療する方法を提供する。これらの方法は、1用量以上の抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を体表面積換算用量で、その対象に投与する工程を含む。関連する態様では、本発明は、特定の固形癌、血液癌及びリンパ系癌におけるようなCD30+細胞の病理学的活性によって特徴付けられる障害の治療で、体表面積換算用量を提供するために、抗CD30抗体-薬物コンジュゲートの標的用途(二次的な医療用途を含む)も提供する。これらの方法、標的用途及び二次的な医療用途は、「本発明によって提供する方法」または「本発明の方法」と総称する。別の関連する態様では、本発明は、例えば、本発明が提供する方法に従って、すなわち、例えば、固形癌、血液癌またはリンパ系癌に関して、非成人のヒト対象を治療するのに適する体表面積換算用量で、非成人のヒト対象を治療するように適合させたキットと製品(単位剤形またはサイクル剤形など)を提供する。このキットと製品は、いくつかの実施形態では、本発明が提供する方法のいずれかに従って使用するための説明及び/またはラベルを含む。これらは併せて、「本発明が提供するキット」であり、本発明が提供する方法と併せると、「本発明によって提供するキットと方法」である。
【0016】
「抗CD30」は、抗原のCD30と特異的に結合する免疫グロブリン(抗体)または抗原結合ドメインを含むその断片である。「特異的結合」及び「特異的に結合する」という用語は、抗CD30抗体が、その対応する標的であるCD30と高選択的に反応し、多くの他の抗原とは反応しないことを意味する。典型的には、抗CD30抗体は、少なくとも約1×10-7M、好ましくは10-8M~10-9M、10-10M、10-11Mまたは10-12Mの親和性で結合する。本発明が提供する方法で有用なADCに有用である特定的な抗体の1つは、キメラ抗体cAC10(ブレンツキシマブベドチンの抗体主鎖である)または関連する抗体である。基準抗体の「関連する抗体」(「関連する抗原結合断片」を含む)である抗体には、標的抗原との結合に対して、基準抗体と競合する抗体(及びその抗原結合断片)(例えば、いくつかの実施形態では、同じエピトープ、重複エピトープまたは隣接するエピトープに対する競合)、基準抗体のエピトープ特異性を有する抗体、基準抗体の相補性決定領域(CDR)を含む抗体(いくつかの実施形態では、CDR全体に最大で1個、2個、3個、4個もしくは5個の保存的アミノ酸置換が存在するか、または各CDRに最大で1個もしくは2個の保存的置換が存在してよい)、あるいは、基準抗体の重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインを含む抗体(またはこの可変ドメインに対するアミノ酸同一率が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはこれを上回る程度であってよく、その場合、いずれかのアミノ酸変化がフレームワーク領域に存在し、その変化は、保存的であっても非保存的であってもよい)が含まれる。いくつかの実施形態では、保存的置換は、BLASTpのデフォルトパラメーターによって割り出し、その一方で、別の実施形態では、保存的変異は、クラス置換内であり、そのクラスは、脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)、ヒドロキシルまたは硫黄/セレンを含むクラス(セリン、システイン、セレノシステイン、トレオニン、メチオニン)、環状(プロリン)、芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、塩基性(ヒスチジン、リシン、アルギニン)、ならびに酸性及びアミド(アスパルテート、グルタメート、アスパラギン、グルタミン)である。概して、ポリペプチドの非必須領域における1つのアミノ酸置換によっては、生物学的活性は実質的に変化しないことを当業者は認識する(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照されたい)。加えて、構造的または機能的に類似のアミノ酸の置換によっては、生物学的活性が損なわれる可能性は低い。
【0017】
CD30(TNFRSF8、ヒトGeneID943としても知られている。例えば、基準タンパク質配列と注釈付きドメインについては、NP_001234.3を参照されたい。ホモログの説明については、Homologene949を参照されたい)は、腫瘍壊死因子レセプターファミリーの分子量120kDaの膜貫通糖タンパク質であり、腫瘍マーカーである。このレセプターは、活性化T細胞と活性化B細胞によって発現するが、休止T細胞と休止B細胞によっては発現しない。CD30は、アポトーシスの正のレギュレーターであり、自己反応性CD8エフェクターT細胞の増殖能を制限するとともに、体を自己免疫から保護することも示されている。CD30は、様々なリンパ腫と関連付けられている。CD30は、未分化大細胞型リンパ腫と関連付けられている。CD30は、古典的ホジキンリンパ腫リード-シュテルンベルク細胞でも発現する。
【0018】
抗CD30抗体-薬物コンジュゲートのような「抗体-薬物コンジュゲート」またはADCは、免疫グロブリンまたは抗原結合ドメインを含むその断片と、抗腫瘍剤のような薬物との巨大分子複合体であり、その免疫グロブリン部分は、リンカー部分によって薬物に連結しており、そのリンカー部分は、一定の実施形態では、免疫グロブリン領域と薬物の両方に共有結合していてよく、例えば、好適な時点に薬物をADCから放出するように、切断可能な結合を含む。本発明が提供する方法で有用な特定的な抗CD30 ADCの1つは、ブレンツキシマブベドチンである。
【0019】
「体表面積換算用量」、場合によっては、非成人(または小児)BSA換算用量のような「BSA換算用量」という略語は、典型的にはmg/m2で表される薬物用量であって、例えば標準的な基準成人用量(承認された投与量など)を基準として、対象のおおよその表面積に応じて調節した薬物用量であり、体重換算用量(例えばmg/kgで表される)よりも正確である。体表面積は、0.20247×身長(m)0.725×体重(kg)0.425という式を用いて推定できる。例えば、Du Bois D,Du Bois EF(Jun 1916).“A formula to estimate the approximate surface area if height and weight be known”.Archives of Internal Medicine 17 (6):863-71.doi:10.1001/archinte.1916.00080130010002及びVerbraecken,J;Van de Heyning P;De Backer W;Van Gaal L(Apr 2006).“Body surface area in normal-weight,overweight,and obese adults.A comparison study”.Metabolism-Clinical and Experimental 55(4):515-24を参照されたい。
【0020】
「血液癌またはリンパ系癌」は、主に血液、骨髄、リンパまたはリンパ系に存在する非固形腫瘍である。特定的な実施形態では、この癌は、ホジキンリンパ腫(HL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、全身性未分化大細胞型リンパ腫(sALCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)またはマントル細胞リンパ腫(MTCL)である。いくつかの実施形態では、血液癌またはリンパ系癌は、リンパ腫である。リンパ腫の非限定的な例としては、ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ナチュラルキラー(NK)細胞腫瘍及び免疫不全関連リンパ球増殖障害が挙げられる。ホジキンリンパ腫(HL)の非限定例としては、結節硬化型HL、混合細胞型HL、リンパ球豊富型HL及びリンパ球減少型または非減少型HLが挙げられる。ホジキンリンパ腫以外のリンパ腫の非限定的な例としては、例えば、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、T細胞またはB細胞前リンパ球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、非特定型PTCL(PTCL-NOS)、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、成熟T細胞リンパ腫、B細胞またはT細胞リンパ芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、原発性甲状腺リンパ腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、リンパ形質細胞性リンパ腫、菌状息肉腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、血管免疫芽球性リンパ腫(AITL)、腸管症型T細胞リンパ腫(EATL)及び未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)が挙げられる。これらの病理学的状態は、分類システムの違い/変更により、異なる名称である場合が多くなり得ることは、当業者には明らかであるはずである。
【0021】
本発明が提供するキットと方法は、血液癌またはリンパ系癌を考慮していないが、菌状息肉腫または全身性ループスエリテマトーデス(SLE)の非成人のヒト対象を治療するのにも用いることができる。
【0022】
「固形腫瘍」は、嚢胞または液状領域を通常は含まない組織の異常な塊であり、特定的な実施形態では、良性の腫瘍とは対照的な腫瘍を指す。一定の実施形態では、固形腫瘍は、上で定義したような血液癌またはリンパ系癌を除く腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍である。固形腫瘍の非限定的な例としては、卵巣癌(例えば上皮性卵巣癌または卵巣漿液性癌)、皮膚癌(例えばメラノーマ及び/または皮膚扁平上皮癌)、乳癌(例えばトリプルネガティブ乳癌)、甲状腺癌(例えば未分化甲状腺癌)、膵臓癌(例えば未分化膵臓癌または膵臓腺癌)、肺癌(例えば小細胞肺癌または肺扁平上皮癌)、胸腺癌(例えば胸腺癌)、肛門癌(例えば肛門扁平上皮癌)、子宮体癌、子宮癌、婦人科系癌肉腫、尿道癌、泌尿生殖器扁平上皮癌、原発不明癌、セルトリ細胞腫及びライティッヒ細胞腫が挙げられる。固形腫瘍は、原発腫瘍であることも、転移性腫瘍であることもできる。
【0023】
いくつかの実施形態では、CD30+細胞の病理学的活性によって特徴付けられる障害のうち、本発明が提供するキットと方法によって治療可能な障害は、卵巣癌、皮膚癌、乳癌、甲状腺癌、膵臓癌、肺癌、肺扁平上皮癌、肛門癌、子宮癌、尿道癌、子宮体癌、原発不明癌、胸腺癌、泌尿生殖器扁平上皮癌、婦人科系癌肉腫、セルトリ細胞腫、ライティッヒ細胞腫及び膵臓腺癌のようながんである。いくつかの実施形態では、その卵巣癌は卵巣漿液性癌であり、皮膚癌はメラノーマもしくは皮膚扁平上皮癌であり、乳癌はトリプルネガティブ乳癌であり、肺癌は小細胞肺癌もしくは肺扁平上皮癌であり、甲状腺癌は未分化甲状腺癌であり、膵臓癌は腺癌もしくは未分化膵臓癌であり、または肛門癌は肛門扁平上皮癌である。
【0024】
「非成人のヒト」対象(非成人の対象または小児の対象ということもある)は、18歳未満である。特定的な実施形態では、対象は、17歳以下、2歳以上、例えば、17~4または5歳である。いくつかの実施形態では、対象は、青年、すなわち、約17~13歳、例えば、約17~12歳、16~12歳、16~13歳、15~12歳などである。別の実施形態では、対象は、青年期前、例えば約13歳未満、例えば、約12~2歳、12~6歳、11~2歳、11~6歳、10~2歳、10~6歳などである。いくつかの実施形態では、対象は、6歳以下、例えば約6~2歳、6~3歳、6~4歳、6~5歳、5~2歳、4~2歳または3~2歳である。一定の実施形態では、非成人のヒト対象の体重は、約50kg未満、例えば、約50kg未満、約49kg未満、約48kg未満、約47kg未満、約46kg未満または約45kg未満である。いくつかの実施形態では、非成人のヒト対象は、約50~12.5kg、約50~16kg、約45~12.5kg、約45~16kgなどである。
【0025】
本発明が提供する方法は、ADCを最前線療法として単独で、または別の治療もしくは治療レジメンと組み合わせて用いて、あるいは、対象を少なくとも1つの治療法または治療レジメンで治療した後、その事前の治療または治療レジメンが成功しする可能性がある場合、または成功しない可能性がある場合(例えば、再発であるか、難治性であるか、もしくは有意な初期応答が見られない可能性がある場合)、後続療法として(例えば、二次療法、三次療法、再治療療法、地固め療法もしくはサルベージ療法として)実施できる。本発明が提供する方法において、ADCは、最前線療法、二次療法、三次療法、再治療療法、地固め療法、サルベージ療法または再治療療法として実施する場合、単独療法または併用療法(例えば1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ以上の追加の薬剤との併用)のいずれかで用いることができる。本発明が提供する方法によって治療する対象は、いくつかの実施形態では、骨髄またはその画分(拡大培養及び/または集積培養を行ったものであっても、行っていないものであってもよい)のような造血幹細胞(HSC、自己細胞または同種異系細胞のいずれか)を含む組成物による治療を受けていることもできる。一定の実施形態では、対象は、以前にHSC療法を受けたことがあってもよい。
【0026】
本発明が提供する方法では、抗CD30抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、非成人のヒト対象に、いずれかの有効な成人用量(例えば体重換算用量)に対する体表面積換算用量で投与できる。いくつかの実施形態では、非成人の対象の正規化薬物暴露量は、ADC濃度時間曲線(AUC)下面積によって測定した場合、示されている成人用量における成人AUCと実質的に同程度である。一定の実施形態では、ADCは、約32~78mg/m2の用量で投与する。一定の特定的な実施形態では、この用量は、約64~78mg/m2、例えば、約66~76mg/m2、68~74mg/m2、70~72mg/m2または約71.5mg/m2である。さらに特定的な実施形態では、ADCは、約70~72mg/m2、71~72mg/m2または約71.5mg/m2の用量で投与する。別の特定的な実施形態では、ADCは、約43~53mg/m2、例えば、約45~51mg/m2、47~49mg/m2または約48mg/m2の用量で投与する。さらに別の特定的な実施形態では、ADCは、約32~40mg/m2、例えば、約34~38mg/m2、35~37mg/m2または約36mg/m2の用量で投与する。これらの用量を用いる多くのレジメンは、本発明が提供する方法に含まれ、とりわけ、下に説明されている。例えば、いくつかの実施形態では、これらの用量を2週間おきに(例えば2週間おきに、約43~53mg/m2(例えば、約45~51mg/m2、47~49mg/m2もしくは約48mg/m2)または約32~40mg/m2(例えば、約34~38mg/m2、35~37mg/m2もしくは約36mg/m2))、あるいは3週間おきに(例えば3週間おきに、約64~78mg/m2(例えば、約66~76mg/m2、68~74mg/m2、70~72mg/m2または約71.5mg/m2))投与してよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明が提供する方法によって治療する対象は、併用化学療法(AVD(アドリアマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)、CHP(ドキソルビシン、シクロホスファミド、プレドニゾン)、RCHOP(ドキソルビシン、シクロホスファミド、プレドニゾン、ビンクリスチン)、リツキシマブ+ベンダムスチンなど)、ニボルマブ、放射線療法、HSC療法または上記をいずれかに組み合わせたものを受けている。これらの併用療法は、実質的に同時であっても順次的であってもよく、順次的な場合には、ADC治療は、追加療法の前または後に行ってよい。AVD化学療法レジメンは、当該技術分野において知られており、いくつかの実施形態では、アドリアマイシン(例えば静脈内ボーラスによって25mg/m2)、ビンブラスチン(例えば静脈内注入によって6mg/m2)、ダカルバジン(例えば静脈内注入によって375mg/m2)という用量が含まれる。同様に、CHP(ドキソルビシンを例えば50mg/m2、3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル投与し、プレドニゾンを例えば100mg、3週間の各サイクルの1~5日目に6~8サイクル、経口投与し、シクロホスファミドを例えば750mg/m2、3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル投与する)、RCHOP(ドキソルビシンを例えば50mg/m2、3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル投与し、プレドニゾンを例えば100mg、3週間の各サイクルの1~5日目に6~8サイクル、経口投与し、ビンクリスチンを例えば1.4mg/m2(最大2mg)、3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル投与し、シクロホスファミドを例えば750mg/m2、3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル投与する)、リツキシマブ+ベンダムスチン(例えば、リツキシマブを21日間の各サイクルの1日目または2日目に静脈内注入し、ベンダムスチンを21日間の各サイクルの1日目と2日目の両方に投与し、例えば、21日間の各サイクルの1日目に、ブレンツキシマブベドチンを静脈内注入してから、ベンダムスチンを投与し、21日間の各サイクルの2日目に、リツキシマブの後に、ベンダムスチンを投与する)及びニボルマブ(例えば3mg/kgを静脈内(IV)注入によって、例えば14日おきに、例えば最大で4サイクル、10サイクル、14サイクル、15サイクル、20サイクル、25サイクルまたは30サイクル投与する)による治療が知られている(上記の用量は、例示に過ぎない)。これらの用量は、いくつかの実施形態では、1週間おき、2週間おきまたは3週間おきに(特定的な実施形態では、2週間おきに)、例えば28日間のサイクル当たり2回の治療で投与する。例えば、AVD、CHP、RCHOP、リツキシマブ+ベンダムスチンまたはニボルマブ療法によって治療する対象には、1サイクル、2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクル、6サイクル、7サイクル、8サイクル、9サイクル、10サイクルまたは11サイクル以上を行ってよい。本発明が提供する方法に従って、すなわちBSA換算用量に適合できる追加の併用療法としては、WO/2015/085289(参照により、その全体が本明細書に援用される)に記載されているような抗CD30 ADCとオーロラキナーゼインヒビターとの組み合わせが挙げられる。
【0028】
一定の実施形態では、上述のように、本発明が提供するキットと方法用のADCは、cAC10(ブレンツキシマブベドチンの抗体主鎖)またはcAC10の関連する抗体と実質的に類似のものである抗CD30抗体を含む。cAC10は、CD30タンパク質(ヒトGeneID943、タンパク質基準配列NP_001234.3)と結合するキメラ抗体である。cAC10は、WO2002/043661に記載されており(米国特許第7,090,843号も参照されたい)、cAC10によって作製できる一定の特定的なコンジュゲートは、WO2004/010957に記載されている(米国特許第7659241号も参照されたい)。ブレンツキシマブベドチンの構造と、その特定的な投与レジメンは、WO2010081004に記載されている(US20110268751A1としても公開されており、クレーム17を参照されたい。US9211319も参照されたい)。上記の参照文献は、とりわけ、cAC10、cAC10を含むADC(例えば、ブレンツキシマブベドチンにおけるように、オーリスタチンとともに含むADC)と、その製剤及び投与方法の説明について、参照により援用される。特定的な実施形態では、抗CD30抗体は、cAC10の相補性決定領域(CDR)を含み、いくつかのさらに特定的な実施形態では、抗CD30抗体は、cAC10である。本発明が提供するキットと方法で用いるADCには、様々な毒性のペイロードが存在しうるが、いくつかの実施形態では、ADCは、オーリスタチンを含む。いくつかのさらに特定的な実施形態では、オーリスタチンは、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)である。別の実施形態では、薬物部分は、ドバリン-バリン-ドライソロイン-ドラプロイン-フェニルアラニン(MMAF)である。薬物と抗CD30抗体は、いずれかの好適な手段によってコンジュゲーションできる。一定の実施形態では、ADCは、カテプシン切断リンカーを含み、任意にスペーサーを含む。さらに特定的な実施形態では、カテプシン切断リンカーは、バリン-シトルリンリンカーである。さらに特定的な実施形態では、ADCは、ブレンツキシマブベドチンである。
【0029】
本発明が提供するキットと方法は、成人対象用の治療スケジュールに従って、BSA換算用量で、非成人のヒト対象を治療するのに適合されている。したがって、本発明が提供する方法のいくつかの実施形態では、ADCは、2サイクル(用量)以上で、例えば、2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクル、6サイクル、7サイクル、8サイクル、9サイクル、10サイクル、11サイクル、12サイクル、13サイクル、14サイクル、15サイクル、16サイクル、17サイクル、18サイクル、19サイクル、20サイクル、またはこれを上回るサイクル数で、例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回または6週間に1回、例えば2週間または3週間に1回投与する。したがって、一定の実施形態では、治療サイクルには、14日おきに、例えば、1サイクル、2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクル、6サイクル、7サイクル、8サイクル、9サイクル、10サイクルまたは11サイクル以上で、ある用量を投与することが含まれる。別の実施形態では、治療サイクルには、21日おきに、例えば、1サイクル、2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクル、6サイクル、7サイクル、8サイクル、9サイクル、10サイクルまたは11サイクル以上で、ある用量を投与することが含まれる。
【0030】
本発明は、ADCを1治療サイクル以上、例えば、1治療サイクル、2治療サイクル、3治療サイクル、4治療サイクル、5治療サイクル、6治療サイクル、7治療サイクル、8治療サイクル、9治療サイクル、10治療サイクル、11治療サイクル、12治療サイクル、13治療サイクル、14治療サイクル、15治療サイクル、16治療サイクル、17治療サイクル、18治療サイクル、19治療サイクル、20治療サイクルまたは21治療サイクル以上で投与することを想定している。いくつかの実施形態では、1治療サイクル以上の間に、休止期間が存在することになる。例えば、いくつかの実施形態では、2回目の治療サイクルと3回目の治療サイクルの間に休止期間が存在することになるが、1回目の治療サイクルと2回目の治療サイクルの間には存在しない。別の実施形態では、休止期間が1回目の治療サイクルと2回目の治療サイクルの間に休止期間が存在してよいが、2回目の治療サイクルと3回目の治療サイクルの間には存在しなくてよい。投与スケジュールには、例えば、治療スケジュール中に1回、例えば21日間のサイクルの1日目目、治療サイクル中に2回、例えば21日間のサイクルの1日目と15日目または28日間のサイクルの1日目と15日目、及び治療サイクル中に3回、例えば21日間のサイクルの1日目と8日目と15日目または28日間のサイクルの1日目と8日目と15日目に、抗体-薬物コンジュゲートを投与することが含まれる。他の投与スケジュールも本発明に含まれる。
【0031】
本発明には、抗体-薬物コンジュゲートを治療サイクル、例えば、1週間、2週間、3週間または4週間の期間中に1回投与する治療スケジュールが含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、2週間、3週間または4週間の治療サイクルの初日、例えば、3週間または4週間のサイクルの1日目に投与することになる。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、3週間もしくは4週間の治療サイクルの1日目、または2週間、3週間もしくは4週間の治療サイクルのいずれかの別の日程に投与することになる。
【0032】
別の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、治療サイクル中に2回以上投与することになる。例えば、いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、3週間または4週間の治療サイクルにおいて、3週間連続で、週に1回投与することになる。例えば、いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、21日間の各治療サイクルの1日目と8日目と15日目に投与することになる。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、28日間の各治療サイクルの1日目と8日目と15日目に投与することになる。
【0033】
さらに別の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、4週間の治療サイクルにおいて、2週間おきに投与することになる。例えば、いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲート化合物は、28日間の各治療サイクルの1日目と15日目に投与することになる。
【0034】
患者に投与する抗体-薬物コンジュゲートの用量は、投与頻度によって決まることにもなる。本発明は、抗体-薬物コンジュゲートを治療サイクル中に1回または分割送達によって送達することを想定している。
【0035】
本発明には、1回の投与につき対象の体重1kg当たり0.1mg~2.7mg、1回の投与につき対象の体重1kg当たり0.5mg~2.0mg、1回の投与につき対象の体重1kg当たり0.9mg~2.0mg及び1回の投与につき対象の体重1kg当たり0.9mg~1.8mgという成人における用量範囲に対する、非成人のヒト(小児)のBSA換算用量で、抗体-薬物コンジュゲート化合物を投与する実施形態が含まれる。所望の結果が得られる限りは、他の範囲も本発明に含まれる。一実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、1回の投与につき対象の体重1kg当たり約1.2mgという成人における用量範囲に対する、非成人のヒトのBSA換算用量で投与することになる。別の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲート化合物は、1回の投与につき対象の体重1kg当たり約1.8mgという成人における用量範囲に対する、非成人のヒトのBSA換算用量で投与することになる。さらに別の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲート化合物は、1回の投与につき対象の体重1kg当たり約0.9mgという成人における用量範囲に対する、非成人のヒトのBSA換算用量で投与することになる。
【0036】
本発明には、抗体-薬物コンジュゲートの全投与量を治療サイクル、例えば3週間または4週間の期間にわたって、例えば、対象の体重1kg当たり0.1mg~5mg、0.1mg~4mg、0.1mg~3.2mgまたは0.1mg~2.7mgという成人における用量範囲に対する、非成人のヒトのBSA換算用量で投与する治療スケジュールが含まれる。いくつかの実施形態では、非成人のヒトのBSA換算用量で投与する抗体-薬物コンジュゲートの全投与量は、治療サイクル、例えば3週間または4週間の期間にわたって、例えば、約0.6mg/kg~約5mg/kg、約0.6mg/kg~約4mg/kg、約0.6mg/kg~約3.2mg/kg、約0.6mg/kg~約2.7mg/kgまたはさらには約0.9mg/kg~約3.0mg/kgという成人における用量範囲に対するものである。いくつかの実施形態では、非成人のヒトのBSA換算用量での投与量は、治療サイクル、例えば3週間または4週間の期間にわたって、対象の体重1kg当たり約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1.0mg、約1.1mg、約1.2mg、約1.3mg、約1.4mg、約1.5mg、約1.6mg、約1.7mg、約1.8mg、約1.9mg、約2mg、約2.1mg、約2.2mg、約2.3mg、約2.4mg、約2.5mg、約2.6mg、約2.7mg、約2.8mg、約2.9mg、約3mg、約3.1mg、約3.2mg、約3.3mg、約3.4mg、約3.5mg、約3.6mg、約3.7mgまたは約3.8mgという成人における用量範囲に対するものである。いくつかの実施形態では、非成人のヒトのBSA換算用量で投与する抗体-薬物コンジュゲートの全投与量は、治療サイクル、例えば3週間または4週間の期間にわたって、対象の体重1kg当たり1.8mgという成人における用量範囲に対するものである。いくつかの実施形態では、患者に投与する抗体-薬物コンジュゲート化合物の全投与量は、治療サイクル、例えば3週間または4週間の期間にわたって、対象の体重1kg当たり2.4mgとなる。いくつかの実施形態では、非成人のヒトのBSA換算用量で投与する抗体-薬物コンジュゲート化合物の全投与量は、治療サイクル、例えば3週間または4週間の期間にわたって、対象の体重1kg当たり3.6mgという成人における用量範囲に対するものである。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、治療サイクル、例えば3週間または4週間の期間にわたって、対象の体重1kg当たり1.2mgという成人における用量範囲に対する、非成人のヒトのBSA換算用量で投与することになる。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲート化合物は、治療サイクル、例えば3週間または4週間の期間にわたって、対象の体重1kg当たり1.8mgという成人における用量範囲に対する、非成人のヒトのBSA換算用量で投与することになる。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲート化合物は、治療サイクル、例えば3週間または4週間の期間にわたって、対象の体重1kg当たり0.9mgという成人における用量範囲に対する、非成人のヒトのBSA換算用量で投与することになる。
【0037】
上記の成人用量は、0.9mg/kg(36mg/m2)、1.2mg/kg(48mg/m2)または1.8mg/kg(71.5mg/m2)という基準値の1つまたは両方を用いて、補間法によって、BSA換算のヒト小児用量に容易に変換できる。
【0038】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、当業者に知られているいずれかの方法によって投与できる。例えば、本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、組成物の形態、いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートと製薬学的に許容可能な担体(本明細書に記載されているものなど)との医薬組成物の形態で投与できる。いくつかの実施形態では、この医薬組成物は、再構成すると、静脈内経路(静脈内注射または静脈内注入など)を介して投与できる凍結乾燥粉末である。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、静脈内注射を介して投与する。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、静脈内注入を介して投与する。別の実施形態では、静脈内注入を介して、ブレンツキシマブベドチンを投与する。
【0039】
「製薬学的に許容可能な担体」という用語は、本明細書では、レシピエント対象、好ましくは哺乳類動物、より好ましくはヒトに適合しており、活性薬剤の活性を喪失させずに、その薬剤を標的部位に送達するのに適している物質を指す目的で使用する。担体と関連する毒性または有害作用がある場合には、その毒性または有害作用は、活性薬剤の意図する用途に関して、合理的なリスク対効果比に釣り合うのが好ましい。
【0040】
「担体」、「アジュバント」または「ビヒクル」という用語は、本明細書では同義的に用いられており、所望の特定的な剤形に適しているようなあらゆる溶媒、希釈剤及びその他の液体ビヒクル、分散補助剤、懸濁補助剤、表面活性剤、等張化剤、増粘剤、乳化剤、保存剤、固形結合剤、潤沢剤などが挙げられる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,ed.A.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000には、製薬学的に許容可能な組成物の調合の際に用いる様々な担体と、その組成物を調製するための既知の技法が開示されている。いずれの従来の担体媒体も、いずれかの望ましくない生体作用を生じるか、または別段に、製薬学的に許容可能な組成物のいずれかの他の成分(複数可)と有害な形で相互作用することによるなどして、本発明の化合物と適合しない場合を除き、その使用は、本発明の範囲内であることが想定されている。製薬学的に許容可能な担体として機能できる物質のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウムなど)、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、パイロジェンフリー水、塩または電解質(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム及び亜鉛塩など)、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、糖(ラクトース、グルコース、スクロースなど)、デンプン(コーンスターチ及びバレイショデンプンなど)、セルロースとその誘導体(ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロースなど)、トラガント末、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤(ココアバター及び座薬ワックスなど)、油(ラッカセイ油、綿実油、べに花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油など)、グリコール(プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなど)、エステル(オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなど)、寒天、アルギン酸、等張食塩水、リンゲル液、アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール及びグリセロールなど)、シクロデキストリン、潤沢剤(ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなど)、石油系炭化水素(鉱油及びワセリンなど)が挙げられるが、これらに限らない。本発明の組成物には、製剤者の判断に従って、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、矯味剤、矯臭剤、保存剤及び抗酸化剤も存在できる。
【0041】
投与する抗体または断片の調合は、選択した投与経路と製剤(例えば、液剤、乳剤、カプセル剤)に応じて変動することになる。投与する抗体またはその機能的断片を含む適切な医薬組成物は、生理学的に許容可能なビヒクルまたは担体中で調製できる。抗体及び/または断片の混合物を用いることもできる。液剤または乳剤では、好適な担体としては例えば、生理食塩水及び緩衝化媒体を含め、水溶液またはアルコール/水溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲルまたは固定油を挙げることができる。様々な適切な水性担体が当業者に知られており、水、緩衝水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液及びグリシンが挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、様々な添加剤、保存剤、流体、栄養補給液または電解質補液を挙げることができる(概して、Remington’s Pharmaceutical Science,16th Edition,Mack,Ed.1980を参照されたい)。本発明の組成物は任意に、生理的条件に近づけるために必要とされるような製薬学的に許容可能な補助物質(pH調整剤、緩衝剤及び毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウムなど)を含むことができる。本発明の抗体及び断片は、当該技術分野において知られている凍結乾燥技法と再構成技法に従って、保存のために凍結乾燥し、使用前に、好適な担体で再構成することができる。選択した媒体中の活性成分(複数可)の最適な濃度は、当業者に周知の手順に従って、実験に基づいて求めることができ、その濃度は、所望の最終的な医薬製剤によって決まることになる。吸入用では、本発明の抗体または断片を可溶化して、投与用の好適なディスペンサー(例えば、アトマイザー、ネブライザーまたは加圧エアゾールディスペンサー)に充填することができる。
【実施例】
【0042】
実施例1:再発または難治性(R/R)のホジキンリンパ腫(HL)または全身性未分化大細胞型リンパ腫(sALCL)の小児患者におけるブレンツキシマブベドチンの第1/2相試験
標準治療、治癒的治療、延命治療または緩和的治療が存在しないか、または有効ではなくなっている再発または難治性の全身性未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)またはホジキンリンパ腫(HL)の小児患者におけるブレンツキシマブベドチン(BV)の第1/2相オープンラベル単剤多施設用量漸増試験として、小児試験を設計した。この試験には、その目的の1つとして、小児患者におけるBVの薬物動態の評価がある。
【0043】
この試験の第1相部分の目標は、CD30の発現が高い小児血液悪性腫瘍におけるブレンツキシマブベドチンの安全性を確立し、そのMTD(最大耐用量)を定義することであり、HLとALCLの両方をその第1相試験集団に含めた。第2相試験は、この試験の第1相部分でMTD[最大耐用量]として求めたRP2D(第2相における推奨用量)で、ブレンツキシマブベドチンを投与するように設計した。
【0044】
体重1kg当たり1.4mgまたは1.8mgの用量で、3週間おきにBVで治療している間、数回の時点に、血清からBVレベルを求めるための血液試料を採取した。これらの用量は、以前の試験で、成人集団において安全かつ有効であると過去に判断された用量範囲内であった(Younes,et al.,N.Engl J Med 363;19,Nov,2010)。
本明細書に記載されている薬物動態解析には、初期解析のために、30人の小児患者から得た薬物動態データを含めた。
【0045】
この小児集団においてBVへの全身暴露量を解析したところ、濃度-時間曲線下面積(AUC)(マイクログラム/mL×日数)によって測定した場合、約18歳よりも年齢が低くなると、BVへの全身暴露量が減少したことが分かった。
図1Aを参照されたい。この関係は、体重におけるよりも弱く、好転することが分かった。元々の投与スケジュールは体重に基づいており、小児の体格範囲にわたって正規化暴露量を有するようになっていたので、母集団薬物動態に基づくさらなる解析を行って、成人で見られるのと同程度の曝露量を得るには、小児患者にどのように投与すべきかを割り出した。
【0046】
母集団PK(薬物動態)モデリングでは、上記のC25002小児試験と成人患者試験(N.Engl.J.Med 363;19,Nov,2010)のPKデータを用いた。その解析においては、体表面積は、ブレンツキシマブベドチン暴露量の有意な共変量であった。シミュレーション手順によって確立したBSAベースの用量によって、様々な体重、すなわち異なる年齢群の小児におけるBVに対する全身暴露量を正規化することになる(
図1B)。すなわち、例としては、シミュレーション解析によって、71.5mg/m
2でブレンツキシマブベドチンを投与したところ、低体重レンジの小児患者ほど、AUCが、BVを1.8mg/kgで投与した成人集団で見られたAUCと近いことが示された。BVでは、線形の薬物動態が見られているので、1.8mg/kgと71.5mg/m
2との関係から、mg/m
2単位の様々な換算量を推定するのが合理的である。
【0047】
実施例2:体表面積ベースの投与レジメンを用いたブレンツキシマブベドチンによる、再発または難治性(R/R)のホジキンリンパ腫(HL)または全身性未分化大細胞型リンパ腫(sALCL)の小児患者の治療
標準治療、治癒的治療、延命治療または緩和的治療が存在しないか、または有効ではなくなっている再発または難治性(R/R)のホジキンリンパ腫(HL)または全身性未分化大細胞型リンパ腫(sALCL)の小児(非成人のヒト)患者を得て、ブレンツキシマブベドチン(BV)を投与する。ただし、用量は、体重ではなく、体表面積(BSA)に合わせて調整する。小児試験対象に、BVを71.5mg/m2の用量で投与する(静脈内注入による投与、3週間(21日)に1回)。21日間の各治療サイクルは、1日目の試験薬物治療と、その後の20日間のモニタリング期間で構成されている。患者には、BVを最大で16サイクルにわたって投与してよい。独立評価機関(IRF)が、International Working Group(IWG)Revised Response Criteria for Malignant Lymphomaに従って、PET、CT、MRI及び臨床評価を用いて、客観的奏効率(ORR、完全寛解(CR)+部分寛解(PR))を求める。無憎悪期間(試験治療の初回投与時から、進行性疾患が最初に文書化された日までの期間)、奏効までの期間(試験治療の初回投与時から、完全奏効または部分奏効が最初に文書化された日までの期間)、奏効期間(奏効が最初に文書化された日から、進行性疾患の日までの期間)、無イベント生存期間(初回投与時から、治療失敗までの期間)、無増悪生存率(PFS、試験治療の初回投与時から、疾患の増悪または死亡までの期間)及び全生存率(OS、試験治療の初回投与時から、死亡までの期間)も評価する。治療終了(EOT)時の診察から12カ月間、12週間おきに、患者の無増悪生存率(PFS)及び全生存率(OS)を追跡する。その後、OSの評価は、死亡時もしくは試験終了時のうち早い時点、または最後の患者を登録してから最長で2年間の時点まで、6カ月おきに継続する。BVを用いない治療と比べて、BVで治療した小児患者は、CR、PR、PFSまたはOSのうちの1つ以上が改善する。BSA換算用量のBVで治療した小児患者では、体重換算用量の1.8mg/kbのBVで治療した小児の対象と比べても、CR、PR、PFSまたはOSのうちの1つ以上が改善する。
【0048】
実施例3:体表面積ベースの投与レジメンを用いたブレンツキシマブベドチン+AVDによる、進行性古典的ホジキンリンパ腫の小児患者の治療
進行性古典的ホジキンリンパ腫と診断された小児(非成人のヒト)患者を得る。1)ブレンツキシマブベドチン(BV)を48mg/m2の用量で、静脈内注入によって、28日間の各サイクルの1日目と15日目に投与するとともに、AVDを投与する(アドリアマイシン25mg/m2、ビンブラスチン6mg/m2及びダカルバジン(DTIC)375mg/m2をそれぞれ、静脈内注入によって、28日間の各サイクルの1日目と15日目に投与)治療、または2)ABVDによる治療(ドキソルビシン25mg/m2、ブレオマイシン10単位/m2、ビンブラスチン6mg/m2及びダカルバジン(DTIC)375mg/m2をそれぞれ、静脈内注入によって、28日間の各サイクルの1日目と15日目に投与)のうちの1つに、試験対象を無作為に割り付け、その治療を行う。
【0049】
独立評価機関(IRF)が修正無増悪生存率(mPFS)を求める(無作為化を行った日からmPFSイベントまで、およそ3~5年)。全生存率(OS)も評価する(無作為化を行った日から死亡日まで、約5~7年)。ABVDによる治療と比べて、BV+AVDで治療した小児患者では、mPFSまたはOSのうちの1つ以上が改善する。
【0050】
実施例4:体表面積ベースの投与レジメンを用いたブレンツキシマブベドチン+CHPによる、CD30陽性成熟T細胞リンパ腫の小児患者の治療
CD30陽性成熟T細胞リンパ腫(未分化大細胞型リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、T細胞リンパ腫)の小児(非成人のヒト)患者を得る。1)BV(3週間(21日)に1回、IV投与)を71.5mg/m2の用量で6~8サイクルと、CHP(シクロホスファミド750mg/m2を3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル、ドキソルビシン50mg/m2を3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル、プレドニゾン100mgを3週間の各サイクルの1~5日目に、経口によって6~8サイクル)による化学療法との併用、または2)CHOPによる化学療法(ドキソルビシン50mg/m2を3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル、プレドニゾン100mgを3週間の各サイクルの1~5日目に、経口で6~8サイクル、ビンクリスチン1.4mg/m2(最大2mg)を3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル、及びシクロホスファミド750mg/m2を3週間おきに静脈内注入によって6~8サイクル))という治療の1つに、試験対象を無作為に割り付ける。
【0051】
独立評価機関(IRF)が無増悪生存率を求める(疾患の増悪、その後の抗がん化学療法、死亡、または試験の終了まで、治療から最長で5年後)。完全寛解(CR)、全生存率(OS)及び客観的奏効率(ORR)もそれぞれIRFが評価する。
【0052】
CHOPによる治療と比べて、BV+CHPで治療した患者では、PFS、OSまたはORRのうちの1つ以上が改善する。
【0053】
実施例5:体表面積ベースの投与レジメンを用いたブレンツキシマブベドチンによる、CD30陽性皮膚T細胞性リンパ腫の小児患者の治療
CD30陽性皮膚T細胞性リンパ腫(原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫、菌状息肉腫、皮膚T細胞性リンパ腫)の小児(非成人のヒト)患者を得る。1)BV(3週間(21日)に1回、IV投与)を71.5mg/m2の用量で、単独療法として、最大で合計16サイクル、または2)医師の選択によりメトトレキセートまたはベキサロテン(メトトレキセートを週に1回、経口投与し(5~50mg)、用量の調整を患者の奏効と毒性に応じて行うか、または、ベキサロテンを飲食時に1日1回、経口投与する(300mg/m2))という治療の1つに、試験対象を無作為に割り付ける。
【0054】
客観的奏効(ORR、完全寛解(CR)+部分寛解(PR))が少なくとも4カ月継続している患者の割合を評価する。完全奏効(CR)と無増悪生存率(PFS)が見られた患者の割合も評価する。
【0055】
メトトレキセートまたはベキサロテンのいずれかによる治療と比べて、BVで治療した患者では、ORR、CRまたはPFSのうちの1つ以上が改善する。
【0056】
実施例6:体表面積ベースの投与レジメンのブレンツキシマブベドチンと、アドリアマイシン、ビンブラスチン及びダカルバジンとの併用による、進行期ホジキンリンパ腫と新たに診断された小児参加者の治療
ブレンツキシマブベドチン(BV)と、新たに診断されたHLに対する最新の標準ケア(SOC)の一次治療レジメンに基づいている多剤併用化学療法レジメンとを組み合わせた場合の安全性と利用可能性を評価するとともに、この組み合わせの抗腫瘍活性を評価する試験において、進行期(ステージIII及びステージIVの疾患)ホジキンリンパ腫(HL、組織学的に確認したCD30+古典的HL、未治療)と新たに診断された小児の対象を得る。
【0057】
この試験は、2相(第1相と第2相)で行う。第1相では、ブレンツキシマブベドチン(BV)を対象に、1平方メートル当たり48ミリグラム(48mg/m2)または36mg/m2の用量で、静脈内注入によって、28日間の各サイクルの1日目と15日目に1回投与する。この投与は、ドキソルビシン25mg/m2、ビンブラスチン6mg/m2及びダカルバジン375mg/m2のおよそ1時間後に、対象に静脈内注入によって、28日間の各サイクルの1日目と15日目に1回、最大で6サイクル行う。
【0058】
最初の6人の対象で、用量制限毒性(DLT)の観察を終えて、0人または1人の対象でDLTが見られた場合、48mg/m2をこの試験の第2相用のBV推奨用量とする。いずれかの時点に、DLTを評価可能な最大で6人の対象のうち2人以上の対象でDLTが見られた場合、上記と同じ投与スケジュールを用いて、BV用量を36mg/m2まで減少させる。第2相では、第1相と同じ投与スケジュールを用いて、定めた第2相用推奨用量で、BVを投与する。
【0059】
対象を評価して、とりわけ、小児集団において、ドキソルビシン、ビンブラスチン及びダカルバジンと組み合わせるBV推奨用量、有害イベント(AE)が見られる対象の割合(例えば、プロトコール療法の初回投与時から、プロトコール療法の最終用量の投与の30日後まで)、重大な有害イベント(SAE)が見られる対象の割合(例えば、プロトコール療法の初回投与時から、プロトコール療法の最終用量の投与の30日後まで)、完全寛解(CR)が見られる対象の割合(例えば、International Working Group(IWG)の基準に従って、治療終了時(EOT)に独立評価機関(IRF)が行った評価による)、2サイクルのプロトコール療法後、その疾患がポジトロン断層撮影法(PET)で陰性である対象の割合(例えば、IRFの評価による)、部分寛解(PR)が見られる対象の割合(例えば、IWGの基準に従って、EOTにIRFが行った評価による)、全奏効(OR)が見られる対象の割合(例えば、IWGの基準に従って、EOTにIRFが行った評価による)、奏効を評価可能な集団の対象のうち、推奨用量での28日間の治療サイクルを6サイクル完了できる対象の割合のうちの1つ以上を求める。
【0060】
アドリアマイシン、ビンブラスチン及びダカルバジンと組み合わせたBVで治療した対象では、AE及びSAEが見られる対象の割合が許容可能であること、CR、PET陰性疾患、PR、OR及び6治療サイクルの完了を示した対象が有意な割合であることのうちの1つ以上が見られる。
【0061】
本願におけるいくつかのパラメーターを記載しているすべて境界数値(「約」、「少なくとも」、「未満」及び「超」など)では、その記載には必然的に、示されている値を境界とするいずれの範囲も含まれることを理解されたい。したがって、例えば、「少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5」という記載は、とりわけ、1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5及び4~5などの範囲も示す。
【0062】
本明細書に引用されているすべての特許、出願またはその他の参照文献(非特許文献及び基準配列情報など)に関しては、あらゆる目的のために、また、示されている陳述について、参照により、その全体が援用されることを理解されたい。本明細書に援用されている文書と本願との間にいずれかの矛盾がある場合には、本願が優先される。GeneIDまたはその他のアクセッション番号(典型的にはNational Center for Biotechnology Information(NCBI)アクセッション番号を参照する)など、本願に開示されている基準遺伝子配列と関連するすべての情報(例えば、ゲノム遺伝子座、ゲノム配列、機能注釈、アレルバリアント及び基準mRNA(例えば、エキソン境界または応答エレメントを含む)、タンパク質配列(保存ドメイン構造など)を含む)、Homologene、OMIM、化学の参照文献(例えば、PubChem Compound、PubChem SubstanceまたはPubChem Bioassayエントリー(構造及びアッセイのようなその注釈などを含む)は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0063】
本願で用いられている見出しは、便宜上のものに過ぎず、本願の解釈には影響を及ぼさない。
【0064】
本発明が提供する各態様の好ましい特徴は、本発明の他のすべての態様に準用可能であり、限定されることなく、従属クレームによって例示され、本発明の特定的な実施形態と態様(実施例を含む)の個々の特徴(例えば要素(数値範囲及び例示的な実施形態を含む))を組み合わせたものと入れ替えたものも含む。例えば、実施例に例示されている特定的な実験パラメーターは、本発明から逸脱することなく、断片的に、特許請求されている本発明での使用に適合させることができる。例えば、開示されている材料に関しては、これらの化合物を個別的及び集合的に様々に組み合わせたものと入れ替えたものののそれぞれの具体的言及が明示的に開示されていなくても、それらはそれぞれ、具体的に想定されているとともに、本明細書に記載されている。したがって、要素A、B及びCの群と、D、E及びFの群が開示されており、要素A~Dを組み合わせた例が開示されている場合には、それぞれは、個別に示されていなくても、個別かつ集合的に想定されている。したがって、この例では、A、B及びC、D、E及びF、ならびにA~Dの組み合わせの例の開示から、A~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~E及びC~Fを組み合わせたものがそれぞれ具体的に想定されており、そのそれぞれの組み合わせが開示されているとみなすものとする。同様に、これらのいずれかのサブセットまたは組み合わせも具体的に想定されているとともに、開示されている。したがって、例えば、A、B及びC、D、E及びF、ならびにA~Dの組み合わせの例の開示から、A~E、B~F及びC~Eというサブグループが具体的に想定されており、そのサブグループが開示されているとみなすものとする。この概念は、組成物の要素と、その組成物の作製方法または使用方法の工程を含め、本願のすべての態様に適用される。
【0065】
本発明の上記態様は、本明細書の教示に従えば当業者に認識されるように、いずれかに組み合わせるかまたは入れ替えた形が新規であり、先行技術に対して自明でない限りは、いずれかに組み合わせるかまたは入れ替えた形で請求でき、すなわち、ある要素が、当業者に知られている1つ以上の参照文献に記載されている限りは、それらは、とりわけ、特徴または特徴の組み合わせの否定的な但し書きまたは放棄によって、特許請求する本発明から除外できる。