(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】シールドケース
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
H05K9/00 C
(21)【出願番号】P 2020057113
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 茂樹
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-034442(JP,A)
【文献】特開2014-033025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0109637(US,A1)
【文献】特開2005-322692(JP,A)
【文献】特開2012-060019(JP,A)
【文献】特開2004-095973(JP,A)
【文献】特開2009-088754(JP,A)
【文献】特開2007-201376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を覆うシールドケースであって、
金属板からなる天板部と、
前記天板部の周縁部から前記天板部と交叉する方向に突出して形成された複数の端子脚部と、
前記複数の端子脚部以外の前記天板部の周縁部から前記天板部と交叉する前記方向に突出して形成された側板部と、を有し、
前記複数の端子脚部の各々は、
端子部を構成し、
前記端子部は、前記天板部から伸張する脚部と、前記脚部の先端から
外側に折り曲げて形成された前記脚部と交叉する方向に延在する接合部
と、前記接合部の先端から前記脚部に当接している突支部
と、を有する
縦断面が環状形の端子部
であることを特徴とするシールドケース。
【請求項2】
前記端子部の前記接合部は半田接合される部位であることを特徴とする請求項1に記載のシールドケース。
【請求項3】
前記複数の端子脚部の各々は前記シールドケースの隅部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシールドケース。
【請求項4】
前記複数の端子脚部の一部は前記シールドケースの前記隅部の間の中間部に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシールドケース。
【請求項5】
前記端子部の前記接合部に凹部を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のシールドケース。
【請求項6】
前記端子部の前記接合部に貫通孔を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のシールドケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に取り付けるシールドケースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信機器に対し、あらゆる環境条件下で使用できることが求められ、また、小型で手軽に持ち運べて使用できるような小型化の要求が増えてきている。
【0003】
さらに各国において、無線通信機器内部に搭載される無線モジュール等の電子回路モジュールに対し、電波認証等でメタルケース等のシールドケースによりシールドされることが適合条件として求められている。また、電子回路モジュールの内部回路保護やノイズ対策等のためにプリント基板(以下、基板ともいう)に取り付ける電子部品を覆うシールドケースが求められている。例えば、シールドケースは、半田接続用端子がない立方体の箱構造であって、基板に搭載してシールドケースの4辺の側面を基板に半田付けで取り付ける構造としている(特許文献1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信機器の使用において、例えば、環境温度変化が激しい場合、基板の収縮や反りが発生する、または、持ち運び中に機器を落下させたときにあたえる衝撃や、ゆとりのない空間に電子回路モジュールを入れたときにあたえる曲げ反り等が、そのシールドケースの半田接合箇所に大きな応力ストレスをあたえ、接合箇所が剥がれるという不具合が発生する場合がある。
【0006】
従来技術では、上記剥がれの不具合を解決するため、シールドケースの半田付箇所を増やし接続強度をあげる対策をとっている。半田付箇所を増加のため、基板上の部品エリアが減らし、もしくは、基板外形寸法を大きくする必要が生じる。さらに、シールドケースを取り付けるための半田の使用量の増加や、半田接合箇所の半田状態検査の時間の増加等のデメリットが発生している。
【0007】
また、半田接合箇所を増やし過ぎたことで逆に基板が反ったときに応力が逃げる箇所がなくなり、シールドケースが基板から剥がれるいわゆるシールドケース剥がれも発生している。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みなされたものであり、従来技術のデメリットを低減し、かつ、基板からのシールドケース剥がれの不具合を改善するシールドケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシールドケースは、電子部品を覆うシールドケースであって、
金属板からなる天板部と、
前記天板部の周縁部から前記天板部と交叉する方向に突出して形成された複数の端子脚部と、
前記複数の端子脚部以外の前記天板部の周縁部から前記天板部と交叉する前記方向に突出して形成された側板部と、を有し、
前記複数の端子脚部の各々は、前記天板部から伸張する脚部、前記脚部の先端から前記脚部と交叉する方向に延在する接合部、及び前記接合部の先端から前記脚部に当接している突支部を有する断面が環状形の端子部を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板とシールドケースのアセンブリにおける基板とのシールドケース剥がれの不具合を改善することが実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による第1の実施例のシールドケースの上面図である。
【
図2】第1の実施例のシールドケースの側面図である。
【
図3】第1の実施例のシールドケースを基板に取り付けた電子回路モジュールを示す斜視図である。
【
図4】第1の実施例のシールドケースのための板金加工工程を示すその端子脚部の近傍の斜視図である。
【
図5】第1の実施例のシールドケースのための板金加工工程を示すその端子脚部の近傍の斜視図である。
【
図6】第1の実施例のシールドケースのための板金加工工程を示すその端子脚部の近傍の斜視図である。
【
図7】第1の実施例のシールドケースのための板金加工工程を示すその端子脚部の近傍の斜視図である。
【
図8】第1の実施例のシールドケースを取り付ける基板の斜視図である。
【
図9】第1の実施例のシールドケースの端子脚部の近傍の斜視図である。
【
図10】本発明による第1の実施例の変形例のシールドケースの上面図である。
【
図11】第2の実施例のシールドケースの端子脚部の近傍の斜視図である。
【
図12】第3の実施例のシールドケースの端子脚部の近傍の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明による実施例について詳細に説明する。なお、実施例において、実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【実施例1】
【0013】
(第1の実施例)
[構成]
図1は、第1の実施例の銅、鉄、合金などの金属製のシールドケース10の上面図である。
図2は、そのシールドケース10の側面図である。
【0014】
図3は、シールドケース10を備えた無線モジュール等の電子回路モジュール(以下、モジュールともいう)20を示す斜視図である。モジュール20は、電気回路を構成する種々の電子部品(図示せず)が搭載された基板PBと、その電気回路上にそれらを覆うシールドケース10が半田19を介して取り付けられたシールドケース10とから構成される。
【0015】
シールドケース10は、矩形の天板10aと、対向する二辺一組の側壁である側板部11と、その4隅にオフセットされて形成された端子脚部12と、を有する基板PB側が開口した略長方体である。4つの複数の端子脚部の各々は、天板10aからその法線方向に伸張する脚部14と、脚部14の先端から交叉する方向に延在する接合部15と、接合部15の先端から脚部14に当接している突支部16を有し、これらの脚部14と接合部15と突支部16は縦断面が環状形の端子部を構成している。
【0016】
[シールドケース製法]
シールドケース10は、金属平板から板金加工により形成される。
図4~
図7は、シールドケース10のための板金加工工程を示す端子脚部12の近傍を示す斜視図である。
図4に示すように、シールドケース10は、天板10aとこれから張り出す端子脚部となる帯状部分(脚部14と接合部15と突支部16)と、側板部となる帯状部分(側板部11)と、を有する金属平板から、各帯状部分を天板10aと交叉する方向に外側に折り曲げて形成される。
【0017】
側板部11は、
図5に示すように、天板10aに対して外側に山折り線11aで直角に曲げられ、所定高さで形成される。
【0018】
端子脚部12の各々は次のように形成される。例えば、
図5、
図6に示すように、天板10aに対して外側に山折り線14aで直角に曲げられ、その先端は第1の谷折り線15aで直角に曲げられて、所定高さの脚部14の部分が形成される。側板部11と脚部14の所定高さは、シールドケース10が覆う電子部品(図示せず)との間に空間を保つようにそれらの高さよりも高く設定される。ただし、側板部11の所定高さは、脚部14の所定高さ未満とする。
【0019】
次に、
図6、
図7に示すように、第1及び第2の谷折り線15a、16aの間の部分は、更に第2の谷折り線16aで曲げられて、所定の半田接合される平坦な接合面を底に有する接合部15が形成される。そして、突支部16の部分は、更に第2の谷折り線16aで曲げられてその先端が脚部14に当接されて形成される。これら端子脚部12の各々に施されて、脚部14と接合部15と突支部16とから構成される縦断面が三角環状形の三角環状形端子部が形成され、シールドケース10が完成する。
【0020】
[モジュール組立]
図8は、モジュール組立前の基板PBの斜視図である。基板PB上には導体パターンからなる金属パッドMPが、シールドケース10の4隅にある接合部15に対応するように配置されて形成される。金属パッドMP上にシールドケース10が半田を介して取り付けられる。金属パッドMPは、その接合面が接合部15よりも大きい面積で接合部15がはみ出さない位置に設置される。金属パッドMPの寸法は、シールドケース10の製造公差および接合部15の外側と内側に適切な半田フィレットが形成されるためにある程度の金属パッドMPの面積を必要としている。金属パッドMは基板PBの端から例えば、0.3mm程度離して配置されることができる。
図7に示すように、4つの金属パッドMPを4隅を除いたシールドケース10で覆う電子部品搭載エリアEPZを確保することができる。
【0021】
例えば、各金属パッドMP上に半田ペースト(図示せず)を介してシールドケース10の各端子脚部12を置き、半田接合のためのリフローを施せば、
図3に示すシールドケース10を基板PB取り付けたモジュール20を得ることができる。
【0022】
[動作]
図9は、シールドケース10の端子脚部12の近傍の斜視図である。リフロー等の半田加熱時、溶融した半田19は接合部15と金属パッドMPとの間に拡がる。また、接合部15の面積が金属パッドMPの面積よりも小さいので接合部15の周囲に半田フィレット19fが形成される。さらに、三角環状形の構造とすることで、脚部14側の半田フィレット19fのみではなく、反対側の突支部16の外側湾曲側面にも広げられた半田フィレット19fcが形成される。
【0023】
[効果]
本実施例によると、接合部15に続き脚部14へ接する突支部16を設けたので、突支部16に接する半田フィレット19fcにより半田の接合面積が増加する。これにより、シールドケース10の接合強度をより大きくすることができる。
【0024】
例えば、製品出荷の際のモジュール20をモジュール用テストソケット(図示せず)に入れて天板10aが基板PBへ向け押圧される場合、シールドケース10の脚部14の部分近辺に大きな応力ストレスが集中することになる。本実施例によれば、脚部14が折れ曲がるようでも突支部16の先端が脚部14のささえとなって応力ストレスの分散となり、シールドケース10の脚部14の変形を抑える効果がある。
【0025】
このように、シールドケース10の4隅の端子脚部12の端子部構造を環状構造とすることで、機械的強度が増し、シールドケース剥がれを低減できる効果がある。また、基板PBの金属パッドMPも特に特異な形状およびサイズに変更する必要がなくなるというメリットもある。
【0026】
一般に、モジュールの外形寸法を小さくしたい場合、または、特異なシールドケース10の形状にしたい場合、シールドケース10の厚み(素材金属板の厚み)を薄くする必要がでてくるが、シールドケース10の厚みを薄くすると機械強度の耐性が落ちることになる。一方、本実施例の環状形端子部によれば、シールドケース10用の板金の厚みが薄くなるほど、強度の維持の点で有効になる。
【0027】
以上のように、本実施例によると、シールドケース10の脚部の強度と半田接合強度が向上し、シールドケース10を充分保持できる。従って、コストを増加させることなくモジュール20の小型化及び高密度化に寄与できる。
【0028】
[変形例]
本実施例ではシールドケース10の4隅にそれぞれに端子脚部12を設けているが、端子脚部12の設置位置は、これに限られず、本実施例の変形例としては、
図10に示すシールドケースの上面図のように、端子脚部12の一部をシールドケース10の隅部の間の中間部に形成してもよい。
【実施例2】
【0029】
(第2の実施例)
図11は本実施例のシールドケース10の要部の端子脚部12の近傍の斜視図を示している。本実施例のシールドケース10は、
図5に示すような第1の実施例に対してシールドケース10の接合部15の形状が異なっている以外の構成は、第1の実施例と同一である。
【0030】
本実施例のシールドケースにおいて、接合部15の接合面の幅方向に延びる溝すなわち凹部15bが形成されるように、接合部15の中央部には接合面の法線方向に突出する突出部15cが設けられる。
【0031】
本実施例のシールドケースにおいて、半田接合時に、接合部15の周囲の半田フィレット19fに加えて凹部15bに半田が充填される。
【0032】
接合部15の凹部15b内に半田19が充填されるので、第1の実施例の効果に加えて、半田19とシールドケース10(接合部15)との接合面積が増加してシールドケース10の接合強度を更に向上できる。なお、接合部15の凹部15bの数は複数でも構わず、また、凹部15bの伸長方向は任意に設定できる。
【実施例3】
【0033】
(第3の実施例)
図12は本実施例のシールドケース10の要部の端子脚部12の近傍の斜視図を示している(但し、突支部16を透視するために二点鎖線で示している)。本実施例のシールドケース10は、
図5に示すような第1の実施例に対してシールドケース10の接合部15の形状が異なっている以外の構成は、第1の実施例と同一である。本実施例のシールドケースにおいて、接合部15の中央部には貫通孔15dが設けられる。
【0034】
本実施例のシールドケースにおいて、半田接合時に、接合部15の周囲の半田フィレット19fに加えて貫通孔15dに半田が充填される。
【0035】
接合部15の貫通孔15d内に半田19が充填されるので、第1の実施例の効果に加えて、半田19とシールドケース10(接合部15)との接合面積が増加してシールドケース10の接合強度を更に向上できる。すなわち、接合部15に貫通孔15dを設けたので、その内周壁に形成される半田フィレット19fが多くなり、シールドケース10の接合強度をより向上できる。なお、接合部15の貫通孔15dの数は複数でも構わず、また、貫通孔15dが複数の場合の配列方向は任意に設定できる。
【0036】
いずれの実施例においても、上記のシールドケース構造は、リジッド基板に取り付けるシールドケースとしてもフレキシブル基板に取り付けるシールドケースとしても適用可能である。例えば、高周波を遮蔽するシールドケースを備えたモジュール及びそれを用いたスマートフォン、携帯情報端末等の通信装置に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
10 シールドケース
12 端子脚部
14 脚部
15 接合部
15b 凹部
15c 突出部
15d 貫通孔
16 突支部
19 半田
19f、19fc 半田フィレット
20 電子回路モジュール
PB 基板
MP 金属パッド