(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】金属表面上の金属酸化物の選択的堆積
(51)【国際特許分類】
C23C 16/04 20060101AFI20240722BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20240722BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240722BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C23C16/04
C23C16/40
H01L21/316 X
H01L21/31 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020070516
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-03-15
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】イリベリ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ギブンズ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】デン シャオレン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルニ ジュゼッペ アレッシオ
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-011057(JP,A)
【文献】米国特許第09895715(US,B1)
【文献】特表2010-540773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0157409(US,A1)
【文献】特開2018-137435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/04
C23C 16/40
H01L 21/316
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の
第1の金属酸化物表面に対して
よりも前記基材の金属表面上に
第2の金属酸化物を選択的に堆積させる方法であって、
前記金属表面に対して
よりも前記
第1の金属酸化物表面を選択的にパッシベーションすることと、
前記パッシベーションされた
第1の金属酸化物表面に対して
よりも前記金属表面上
に気相反応物質から前記
第2の金属酸化物を選択的に堆積させることと、を含み、
前記金属表面がAl、Nb、Fe、およびMoのうちの一つまたは複数を含み、
前記第1の金属酸化物が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化イットリウム、または酸化ランタンを含み、
前記
第1の金属酸化物表面を選択的にパッシベーショ
ンすることは、前記
第1の金属酸化物表面
のシリル化剤
への曝
露を含
み、
前記第2の金属酸化物が、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、または酸化チタンを含む、
方法。
【請求項2】
前記シリル化剤が、アリルトリメチルシラン(TMS-A)、クロロトリメチルシラン(TMS-Cl)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMS-Im)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、またはN-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリル化剤がアルキルアミノシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルキルアミノシランは、式(R
I)
3Si(NR
IIR
III)を有し、式中、R
Iは直鎖もしくは分岐鎖C1~C5アルキル基であり、R
IIは直鎖もしくは分岐鎖C1~C5アルキル基、または水素であり、およびR
IIIは直鎖もしくは分岐鎖C1~C5アルキル基である、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記シリル化剤がシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シランは、一般式(R
I)
3SiAを有し、式中、R
Iは直鎖もしくは分岐鎖C1~C5アルキル基であり、Aはシリコン含有表面と反応する任意の配位子である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記
第1の金属酸化物表面又は前記第2の金属酸化物を構成する金属酸化物が酸化アルミニウムを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化アルミニウムが、トリメチルアルミニウム(TMA)、塩化ジメチルアルミニウム、三塩化アルミニウム(AlCl
3)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAI)、トリス(tert-ブチル)アルミニウム(TTBA)、トリス(イソプロポキシド)アルミニウム(TIPA)、またはトリエチルアルミニウム(TEA)を含むアルミニウム前駆体を用いて堆積される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化アルミニウムが、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAI)を含むアルミニウム前駆体を用いて堆積される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化アルミニウムが、アルキル基を含むヘテロレプティックアルミニウム化合物、および異なる配位子を含むアルミニウム前駆体を用いて堆積される、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記異なる配位子がハロゲン化物である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化アルミニウムが、二つの異なるアルキル基を配位子として含むアルミニウムアルキル化合物を含むアルミニウム前駆体を用いて堆積される、請求項
7に記載の方法。
【請求項13】
前記
ヘテロレプティックアルミニウムアルミニウム化合物が、金属有機アルミニウム化合物または有機金属アルミニウム化合物を含むアルミニウム前駆体を使用して堆積される、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化アルミニウムが、前記基材を、トリメチルアルミニウム(TMA)、塩化ジメチルアルミニウム、三塩化アルミニウム(AlCl
3)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAI)、トリス(tert-ブチル)アルミニウム(TTBA)、トリス(イソプロポキシド)アルミニウム(TIPA)、またはトリエチルアルミニウム(TEA)を含む第一の反応物質、および水を含む第二の反応物質と交互に順次接触させることを含む、ALDプロセスによって堆積される、請求項
7に記載の方法。
【請求項15】
前記金属酸化物を原子層堆積(ALD)プロセスによって選択的に堆積させる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ALDプロセスは、前記基材を、第一の金属反応物質および第二の酸素反応物質と交互に順次接触させることを含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸化物表面を選択的にパッシベーションする前に、前記金属表面上にパッシベーション遮断層を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記パッシベーション遮断層は、自己組織化単分子膜(SAM)を含む、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2019年4月12日に出願された米国仮出願第62/833,256号に対する優先権を主張するものであり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
本開示は、一般的に、基材の第二の誘電体表面に対する基材の第一の金属表面または金属製表面上の金属酸化物の選択的堆積に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体製造におけるデバイス寸法の縮小により、新しい革新的な加工方法が求められている。従来、半導体加工におけるパターニングは、ブランケット層を堆積させ、フォトリソグラフィー技術によってマスクし、マスクの中の開口部を通ってエッチングする、サブトラクティブ法を伴う。リフトオフ技術またはダマシンプロセスを使用するパターニングなど、マスキングステップが対象の材料の堆積に先行する、さらなるパターニングも知られている。ほとんどの場合、パターニングには高価な複数ステップのリソグラフィー技術が採用される。
【0004】
パターニングは、選択的堆積によって単純化し得るため、半導体製造業者の間で選択的堆積への関心が高まっている。選択的堆積は、様々な点で非常に有益であろう。意義深いことに、選択的堆積によって、リソグラフィーステップを減少することが可能となり、加工費用を削減し得る。選択的堆積はまた、狭い構造においてスケーリングを強化することを可能にし得る。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの態様では、酸化物表面などの誘電体表面と比較して基材の金属表面上に金属酸化物を選択的に堆積させる方法が提供される。いくつかの実施形態では、誘電体表面は、金属表面に対して選択的にパッシベーションされ、金属酸化物は、気相反応物質からパッシベーションされた誘電体表面に対して金属表面上に選択的に堆積される。いくつかの実施形態では、金属表面は、Al、Cu、Co、Ni、W、Nb、FeまたはMoを含む。いくつかの実施形態では、誘電体表面は、誘電性遷移金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、誘電体表面は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化イットリウム、または酸化ランタンを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、酸化物表面などの誘電体表面を選択的にパッシベーションすることは、誘電体表面をシリル化剤に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、シリル化剤はアルキルアミノシランである。いくつかの実施形態では、シリル化剤はシランである。いくつかの実施形態では、シリル化剤は、アリルトリメチルシラン(TMS-A)、クロロトリメチルシラン(TMS-Cl)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMS-Im)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、またはN-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、誘電体表面は酸化アルミニウムを含む。酸化アルミニウムは、トリメチルアルミニウム(TMA)、塩化ジメチルアルミニウム、三塩化アルミニウム(AlCl3)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAI)、トリス(tert-ブチル)アルミニウム(TTBA)、トリス(イソプロポキシド)アルミニウム(TIPA)、またはトリエチルアルミニウム(TEA)を含むアルミニウム前駆体を用いて堆積され得る。いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムは、アルキル基およびハロゲン化物などの異なる配位子を含むヘテロレプティックアルミニウム化合物を用いて堆積される。いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムは、アルミニウム前駆体および水を使用してALDによって堆積される。
【0008】
いくつかの実施形態では、パッシベーション遮断層は、誘電体表面を選択的にパッシベーションする前に、金属表面上に形成される。こうしたパッシベーション遮断層は、例えば、自己組織化単分子膜(SAM)を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、第一実施形態による、第一の金属表面および第二の隣接する酸化物表面を有する、基材の一部分の断面図である。
図1Bは、酸化物表面の選択的パッシベーション後の、
図1Aの基材の断面図である。
図1Cは、金属表面上への金属酸化物の選択的堆積後の、
図1Bの基材の断面図である。
図1Dは、酸化物表面からパッシベーション材料を除去した後の、
図1Cの基材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
金属酸化物は、酸化物表面などの第二の誘電体表面に対して、第一の金属(または金属)表面上に選択的に堆積することができる。いくつかの実施形態では、酸化物表面は金属表面に隣接している。本明細書に記載される実施形態では、酸化物表面は、例えばシリル化によって、金属表面に対して選択的にパッシベーションされてもよい。続いて、金属酸化物層は、パッシベーションされた酸化物表面に対して金属表面上に選択的に堆積される。金属酸化物層は、原子層堆積プロセスなどの蒸着プロセスによって堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、基材上の酸化物表面は、アリルトリメチルシラン(TMS-A)、クロロトリメチルシラン(TMS-Cl)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMS-Im)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、またはN-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)などのシリル化剤でシリル化され、その後金属酸化物は、パッシベーションされた酸化物表面に対して基材の金属表面上に選択的に堆積される。いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、Al2O3層などの酸化アルミニウム層であってもよい。例えば、酸化アルミニウム層は、トリメチルアルミニウム(TMA)、塩化ジメチルアルミニウム、三塩化アルミニウム(AlCl3)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAI)、トリス(tert-ブチル)アルミニウム(TTBA)、トリス(イソプロポキシド)アルミニウム(TIPA)、またはトリエチルアルミニウム(TEA)などのアルミニウム反応物質および反応物質として水を使用するなどして、ALDプロセスによって選択的に堆積され得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、基材の金属表面または金属製表面は、元素金属または金属合金を含み、一方で基材の第二の異なる表面は、酸化物などの誘電体材料を含む。材料の例は、成長または堆積二酸化シリコン、ドープおよび/または多孔性酸化物、シリコン上の自然酸化物等など含む、酸化シリコン系材料を含む。誘電層の表面は、選択的シリル化などの金属表面または金属製表面に対して選択的にパッシベーションされる。続いて、金属酸化物層は、パッシベーションされた誘電体表面に対して金属表面または金属製表面上に選択的に堆積される。堆積され得る金属酸化物の例は、酸化ジルコニウム(例えば、ZrO2)、酸化ハフニウム(例えば、HfO2)、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)、窒化チタン(例えば、TiN)、および酸化チタン(例えば、TiO2)などの誘電体を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物が選択的に堆積される金属表面または金属製表面は、選択的にパッシベーションされる誘電体表面に少なくとも部分的に隣接する。例えば、金属表面または金属製表面の少なくとも一部分は、酸化物表面に隣接してもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、酸化物表面などの誘電体表面上にパッシベーション層を形成する前に、金属表面または金属製表面には、自己組織化単分子膜(SAM)などのパッシベーション遮断層が提供され得る。パッシベーション遮断層は、誘電体表面のシリル化の選択性を容易にし、その後除去されて、シリル化誘電体表面に対する金属または金属製表面上に金属酸化物の選択的堆積を許容することができる。
【0013】
金属表面または金属製表面上の金属酸化物層の選択的堆積後に、パッシベーション層(シリル化)を、酸化物表面などの誘電体表面から除去することができる。基材上の周囲の材料への損傷を避けるように、条件を選ぶことができる。
【0014】
本明細書に記載の選択的堆積プロセスで使用され得る適切な反応器の例は、市販のALD装置を含む。ALD反応器に加えて、CVD反応器、VDP反応器およびMLD反応器を含む、有機パッシベーション層の成長を可能にする多くの他の種類の反応器を用いることができる。
【0015】
基材表面
本開示のいくつかの態様により、選択的堆積は、酸化物表面または他の誘電体表面に対して優先的に、金属酸化物膜などの対象の膜を、金属表面または金属製表面上に堆積させるように使用することができる。いくつかの実施形態では、二つの表面が、基材上で互いに少なくとも部分的に隣接している。金属表面または金属製表面に対する酸化物表面の選択的シリル化などの酸化物表面の選択的パッシベーションは、シリル化酸化物表面に対する金属表面または金属製表面上の金属酸化物層などの対象となる層のその後の選択的堆積を促進する。
【0016】
例えば、表面の一方は、基材の導電性金属または金属製表面であり得る一方、他方の表面は、基材の非導電性酸化物表面であり得る。いくつかの実施形態では、非導電性表面は、酸化シリコン系表面(例えば、成長および堆積酸化シリコン材料、ならびにシリコンの上の自然酸化物を含む、low-k材料)などの-OH基を含む。酸化物表面は、シリル化剤への曝露によって金属表面または金属製表面に対して選択的にパッシベーションすることができ、またその後、シリル化酸化物表面に対して金属表面または金属製表面上に金属酸化物を選択的に堆積させることができる。
【0017】
二つの基材表面の材料の差異は、蒸着方法が金属表面または金属製表面に対して酸化物表面を選択的にパッシベーションすることができるようなものである。いくつかの実施形態では、周期的CVDプロセスまたは原子層堆積(ALD)プロセスなどの周期的蒸着を使用する。いくつかの実施形態では、(パッシベーション層のより少ない部分を受け取るように)金属表面または金属製表面上にはパッシベーション/遮断剤なしで、および/またはパッシベーション層のより多くの部分を受け取るように、酸化物層の表面上には触媒剤なしで、パッシベーション層の選択性を実現し得る。例えば、第一の表面が金属製であり、第二の表面が酸化物である実施形態では、酸化物層表面または金属表面もしくは金属製表面の前処理なしに、酸化物層を、金属表面または金属製表面に対して選択的にシリル化することができる。他の実施形態では、金属表面または金属製表面は、まずその表面のパッシベーション(シリル化など)を阻害するように処理される。例えば、最初にパッシベーションを遮断する自己組織化単分子膜(SAM)を酸化物表面に対して金属表面または金属製表面上に形成して、SAMで覆われた金属製表面に対して酸化物表面上へのパッシベーション層の選択的堆積を促進し得る。パッシベーション阻害剤は、選択的パッシベーション後かつ金属酸化物の堆積の前に除去することができる。パッシベーション層の選択的堆積を完了した後、金属酸化物などの対象の材料の選択的堆積を、パッシベーションした表面に対して、パッシベーションされていない金属表面または金属製表面上に行うことができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、別途示されない限り、本明細書で表面が金属表面と称される場合、表面は金属表面または金属製表面でありうる。いくつかの実施形態では、金属表面または金属製表面は、表面酸化を含んでもよい。いくつかの実施形態では、金属表面の材料は、表面酸化の有無にかかわらず導電性である。いくつかの実施形態では、金属表面は、一つまたは複数の遷移金属を含む。いくつかの実施形態では、金属表面は、Al、Cu、Co、Ni、W、Nb、FeまたはMoのうちの一つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、金属表面は、Cuを含む。いくつかの実施形態では、金属表面は、銅表面である。いくつかの実施形態では、金属製表面は窒化チタンを含む。いくつかの実施形態では、金属表面は、Ruなど、一つまたは複数の貴金属を含む。いくつかの実施形態では、金属表面は、導電性金属酸化物、窒化金属、炭化物、ホウ化物またはそれらの組み合わせなどの金属酸化物を含む。例えば、金属表面または金属製表面は、RuOx、NbCx、NbBx、NiOx、CoOx、NbOx、MoOx、WOx、WNCx、TaNまたはTiNのうちの一つまたは複数を含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、金属表面または金属製表面は、本明細書に記載されるように、金属酸化物などの対象の層の選択的堆積プロセスで利用される前駆体を受容または調整できる表面である。
【0020】
上述のように、いくつかの実施形態では、金属表面または金属製表面は、その上にパッシベーション遮断層を含んでもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、金属表面または金属製表面は、例えば、自己組織化単分子膜(SAM)など、金属表面または金属製表面上へのパッシベーション層の形成を阻害する材料を含み得る。いくつかの実施形態では、堆積プロセスは、金属表面または金属製表面上にパッシベーション遮断層を形成するが、パッシベーションされる表面上には形成しないことを含む。
【0021】
基材表面のパッシベーション
いくつかの実施形態では、酸化物(またはその他の誘電体)表面は、パッシベーションされてもよい。いくつかの実施形態では、パッシベーションは、同じ基材上の金属表面または金属製表面などの別の表面に対して酸化物表面に対して選択的である。いくつかの実施形態では、酸化物表面は、気相シリル化剤に一回または複数回曝露することによってシリル化される。例えば、パッシベーション工程では、シリル化剤を反応空間に導入し、酸化物表面と接触させてもよい。シリル化剤は、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、ハロゲン化シリル、シリルシアネート、シリルアジド、シリルイソシアネート、シリルイソチオシアネート、シリルスルホネート、シリルアセトアミド、シリルカルボジイミド、アリシラン、またはシラザン、イミダゾールもしくはアミンなどの窒素含有シランであってもよい。いくつかの実施形態では、シリル化剤は、アリルトリメチルシラン(TMS-A)、クロロトリメチルシラン(TMS-Cl)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMS-Im)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、またはN-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)であり、シリル化は基材をシリル化剤の一つまたは複数のパルスに曝露することを含む。いくつかの実施形態では、金属表面または金属製表面および酸化物表面の両方は、アリルトリメチルシラン(TMS-A)、クロロトリメチルシラン(TMS-Cl)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMS-Im)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、またはN-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)などのシリル化剤と接触している。いくつかの実施形態では、基材の酸化物表面は、基材の金属表面または金属製表面に対して選択的にシリル化される。
【0022】
いくつかの実施形態では、シリル化剤はアルキルアミノシランである。例えば、基材の酸化物表面は、式(RI)3Si(NRIIRIII)を有するアルキルアミノシランと接触する場合があり、式中、RIは直鎖もしくは分岐鎖C1~C5アルキル基であるか、または直鎖もしくは分岐鎖C1~C4アルキル基であり、RIIは直鎖もしくは分岐鎖C1~C5アルキル基、直鎖もしくは分岐鎖C1~C4アルキル基、または水素であり、およびRIIIは直鎖もしくは分岐鎖C1~C5アルキル基であるか、または直鎖もしくは分岐鎖C1~C4アルキル基である。
【0023】
いくつかの実施形態では、シリル化剤はシランである。例えば、酸化物表面は、一般式 (RI)3SiAを有するシランと接触する場合があり、式中、RIは直鎖もしくは分岐鎖C1~C5アルキル基であり、または直鎖もしくは分岐鎖C1~C4アルキル基であり、Aはシリコン含有表面と反応する任意の配位子である。
【0024】
シリル化剤は、基材を保持する反応チャンバに単一のパルスまたは一連の複数のパルスで提供されてもよい。いくつかの実施形態では、シリル化剤は、単一の長いパルスで、または複数の短いパルスで提供される。パルスは連続的に提供されうる。いくつかの実施形態では、シリル化剤は、約0.1~約60秒の1~25パルスで提供される。パルス間では、シリル化剤は反応空間から除去されてもよい。例えば、反応チャンバは、不活性ガスで排気および/またはパージされてもよい。パージは、例えば、約1~30秒以上としてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、シリル化プロセスの温度は、例えば、約50~500℃、または約100~約300℃であってもよい。シリル化プロセスの間の圧力は、例えば、約10-5~約760Torrであってもよく、またはいくつかの実施形態では、約1~10Torr、または約0.1~約10Torrであってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、シリル化プロセスは、その場、つまり、例えば、酸化アルミニウムなどの金属酸化物のシリル化表面に対して非シリル化表面上への選択的堆積など、その後の堆積プロセスと同じ反応チャンバ内で実施してもよい。しかし、いくつかの実施形態では、シリル化は、別個の反応チャンバ内で実施され得る。いくつかの実施形態では、シリル化が実行される反応チャンバは、一つまたは複数の追加的反応チャンバを含むクラスターツールの一部である。例えば、こうしたクラスターツールは、金属酸化物の堆積および/または一つまたは複数の層のエッチングのための追加的反応チャンバを含み得る。いくつかの実施形態では、クラスターツールには、前処理のための別個のモジュール、酸化物表面のシリル化、金属酸化物の選択的堆積、ならびにエッチングまたはプラズマ堆積後洗浄などのその後の堆積後処理が含まれる。いくつかの実施形態では、同一のモジュールを、二つ以上のプロセスに使用することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、パッシベーションプロセスおよび/または選択的堆積プロセスの前に、またはその最初に、基材を前処理してもよく、または洗浄してもよい。いくつかの実施形態では、パッシベーションプロセスおよび/または選択的堆積プロセスの前に、またはその最初に、基材をプラズマ洗浄プロセスにさらしてもよい。いくつかの実施形態では、プラズマ洗浄プロセスは、イオン衝撃を含まなくてもよく、または比較的小さいイオン衝撃を含んでもよい。いくつかの実施形態では、パッシベーションプロセスおよび/または選択的金属酸化物堆積プロセスの前に、またはその最初に、基材表面をプラズマ、ラジカル、励起種および/または原子種に曝露してもよい。いくつかの実施形態では、選択的なパッシベーションプロセスおよび/または選択的金属酸化物堆積プロセスの前に、またはその最初に、基材表面を水素プラズマ、ラジカルまたは原子種に曝露してもよい。
【0028】
パッシベーションされた酸化物表面に対する金属表面または金属製表面上の金属酸化物の選択的堆積
金属酸化物は、基材のパッシベーションされた酸化物表面に対して基材の金属表面または金属製表面上に選択的に堆積することができる。酸化物表面上にパッシベーション層を選択的に形成した後、いくつかの実施形態では、金属酸化物の金属を含む第一の反応物質、および酸素を含む第二の反応物質と基材を、交互に順次接触させることによって、金属酸化物を第二の表面上に選択的に堆積させる。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は水である。いくつかの実施形態では、金属酸化物を金属表面または金属製表面上またはその上方に選択的に堆積させるように、基材を第一および第二の反応物質と順次接触させる(例えば、
図1A~1Dを参照)。
【0029】
いくつかの実施形態では、金属反応物質は、一つまたは複数の疎水性配位子を含む、疎水性反応物質である。いくつかの実施形態では、疎水性反応物質は、二つから四つの疎水性配位子を含む。原子価/酸化状態nの金属を含む疎水性反応物質の場合、いくつかの実施形態では、疎水性前駆体はn-1またはn-2の疎水性配位子を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、少なくとも一つの疎水性配位子はCおよびHのみを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの疎水性配位子は、C、HおよびSiまたはGeを含むが、追加の元素は含まない。
【0031】
いくつかの実施形態では、炭化水素配位子は以下のうちの一つまたは複数を含む。
■ C1~C10の炭化水素(単結合、二重結合または三重結合)
○ アルキル
・ C1~C5のアルキル
・ Me、Et、Pr、iPr、Bu、tBu
○ アルケニル
・ C1~C6のアルケニル
○ 環状炭化水素
・ C3~C8
・ シクロペンタジエニル
・ シクロヘプタジエニル
・ シクロヘプタトリエニル
・ シクロヘキシル
・ それらの誘導体
○ 芳香族
・ C6の芳香環およびそれらの誘導体
【0032】
いくつかの実施形態では、疎水性金属反応物質は親水性配位子を含んでいない。しかし、いくつかの実施形態では、疎水性金属反応物質は、一つまたは二つの親水性配位子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、親水性配位子は、窒素、酸素および/またはハロゲン基を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、親水性配位子はアルキルアミン(各Rはアルキル、水素であり得る、-NR2)である。いくつかの実施形態では、親水性配位子は、-NMe2、-NEtMeまたは-NEt2であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、親水性配位子は、例えば、-OMe、-OEt、-OiPr、-OtBuなどのアルコキシドである。
【0035】
いくつかの実施形態では、親水性配位子は、塩化物、フッ化物または他のハロゲン化物などのハロゲン化物を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、疎水性前駆体は以下の式を含む。
○ LnMXy、式中、
・ いくつかの実施形態では、nは1~6であり、
・ いくつかの実施形態では、nは1~4または3~4である。
・ いくつかの実施形態では、yは0~2であり、
・ いくつかの実施形態では、yは0~1である。
・ Lは疎水性配位子であり、
・ いくつかの実施形態では、LはCpまたはC1~C4のアルキル配位子である。
・ Xは親水性配位子であり、
・ いくつかの実施形態では、Xはアルキルアミン、アルコキシドまたはハロゲン化物配位子である。
・ Mは金属であり(群の13元素、BおよびGaを含む)、
・ いくつかの実施形態では、Mは+Iから最大+VIの酸化状態を有する。
○ いくつかの実施形態では、Mは+IVから+Vの酸化状態を有する。
・ いくつかの実施形態では、Mは遷移金属であり得る。
○ いくつかの実施形態では、MはTi、Ta、Nb、W、Mo、Hf、Zr、VまたはCrである。
・ いくつかの実施形態では、MはHf、Zr、TaまたはNbである。
・ いくつかの実施形態では、MはZrである。
○ いくつかの実施形態では、MはCo、Fe、Ni、CuまたはZnである。
○ いくつかの実施形態では、金属はWでもMoでもない。
・ いくつかの実施形態では、Mは希土類金属であり得る。
○ いくつかの実施形態では、MはLa、CeまたはYである。
・ いくつかの実施形態では、Mは2~13の群からの金属であり得る。
○ いくつかの実施形態では、MはBa、Sr、Mg、CaまたはScである。
・ いくつかの実施形態では、Mは貴金属ではない。
【0037】
より大まかには、いくつかの実施形態では、選択的ALDプロセスには金属前駆体を用いる。いくつかの実施形態では、金属前駆体の金属は、Al、Ti、Ta、Nb、W、Mo、Hf、Zr、V、Cr、Co、Fe、Ni、Cu、Zn、La、Ce、Y、Ba、Sr、Mg、CaもしくはSc、またはそれらの混合物を含む群より選択されてもよい。いくつかの実施形態では、金属はAlであってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムが選択的に堆積され、選択的ALDプロセスがAl前駆体を用いる。Al前駆体の例は、トリメチルアルミニウム(TMA)、塩化ジメチルアルミニウム、三塩化アルミニウム(AlCl3)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAI)、トリス(tert-ブチル)アルミニウム(TTBA)、トリス(イソプロポキシド)アルミニウム(TIPA)、またはトリエチルアルミニウム(TEA)を含む。いくつかの実施形態では、アルミニウム前駆体は、ヘテロレプティックアルミニウム化合物である。いくつかの実施形態では、ヘテロレプティックアルミニウム化合物は、アルキル基および例えばClなどのハロゲン化物などの別の配位子を含む。いくつかの実施形態では、アルミニウム化合物は塩化ジメチルアルミニウムである。いくつかの実施形態では、アルミニウム前駆体は、配位子として二つの異なるアルキル基を含むアルキル前駆体である。いくつかの実施形態では、アルミニウム前駆体は金属有機化合物である。いくつかの実施形態では、アルミニウム前駆体は有機金属化合物である。
【0039】
いくつかの実施形態では、酸化ジルコニウムは、ビス(メチルシクロペンタジエニル)メトキシメチルジルコニウム(IV)((CpMe)2-Zr-(OMe)Me)を使用して選択的に堆積される。
【0040】
いくつかの実施形態では、酸化ハフニウムは、ビス(メチルシクロペンタジエニル)メトキシメチルハフニウム(IV)((CpMe)2-Hf-(OMe)Me)を使用して堆積される。
【0041】
いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、選択的に堆積する材料に、一つまたは複数の元素を提供する。例えば、第二の反応物質は、金属酸化物を堆積させるように使用される酸素前駆体であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、第二の反応物質は酸素前駆体を含む。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、H2O、O3、H2O2、酸素プラズマ、酸素イオン、酸素ラジカル、原子のOまたは酸素の励起種を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、O以外の元素を堆積する材料に提供する、他の反応物質を利用し得る。これらの反応物質は、第二の酸素反応物質に加えて使用してもよく、またはそれら自体が第二の反応物質として機能し、堆積された膜に酸素および別の元素を提供してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、窒素反応物質を使用して窒素を提供することができ、硫黄反応物質を使用して硫黄を提供することができ、炭素反応物質を使用して炭素を提供することができ、またはシリコン反応物質を使用してシリコンを提供することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)などの金属酸化物薄膜は、一つまたは複数の酸化物表面に対して、銅、コバルト、窒化チタンまたはタングステン表面などの一つまたは複数の金属表面または金属製表面上に選択的に堆積される。第一の工程では、上述のように、金属表面および酸化物表面を含む基材が処理されて、シリル化によって酸化物表面上にパッシベーション層を形成する。例えば、いくつかの実施形態では、基材表面は、酸化物表面を選択的にシリル化する、アリルトリメチルシラン(TMS-A)、クロロトリメチルシラン(TMS-Cl)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMS-Im)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、またはN-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)などのシリル化剤に曝露されてもよい。酸化物表面上のパッシベーション層の形成後、金属酸化物は、蒸着プロセスによってパッシベーションされた酸化物表面に対して金属表面または金属製表面上に選択的に堆積される。選択的堆積は、本明細書に記載されるようであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムは、基材を、アルミニウム反応物質と酸素前駆体とに交互に順次接触させることによって、選択的に堆積される。アルミニウム反応物質は、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、塩化ジメチルアルミニウム、三塩化アルミニウム(AlCl3)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAI)、トリス(tert-ブチル)アルミニウム(TTBA)、トリス(イソプロポキシド)アルミニウム(TIPA)、またはトリエチルアルミニウム(TEA)を含む。酸素前駆体は、例えば、水を含み得る。いくつかの実施形態では、酸化アルミニウムは、基材がアルミニウム反応物質と水と交互に順次接触している原子層堆積プロセスにより堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、酸化アルミニウム堆積中の反応チャンバ内の温度は、約150~約350℃である。いくつかの実施形態では、反応物質のパルス時間は、約0.1~約10秒であってもよく、反応物質パルス間のパージ時間も約0.1~約10秒であってもよい。いくつかの実施形態では、反応チャンバ圧力は、例えば、約10-5~約760Torr、またはいくつかの実施形態では、約1~10Torrであってもよい。
【0045】
金属酸化物の選択的堆積後、基材を堆積後洗浄工程にかけて、上述のように、酸化物表面からパッシベーション層を除去してもよい。いくつかの実施形態では、洗浄工程は、H2 プラズマ処理を含んでもよい。いくつかの実施形態では、洗浄工程は、約室温~約400℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、約25~250Wのプラズマ出力を使用して、流れるH2、例えば、約10~500sccmの流量のプラズマを生成してもよい。金属酸化物層の堆積後の洗浄時間は、例えば、約0.1~600秒またはいくつかの実施形態ではそれ以上であってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)などの薄い金属酸化物膜は、一つまたは複数のパッシベーションされた酸化物表面に対して三次元構造の金属表面または金属製表面上に選択的に堆積される。三次元構造は、例えば、ビアまたはトレンチを含み得る。いくつかの実施形態では、酸化物表面は、金属酸化物膜を堆積する前に選択的にパッシベーションされてもよい。次いで、蒸着は、パッシベーションされていない金属表面上に金属酸化物を堆積させるために実施される。
【0047】
パッシベーション遮断層
パッシベーション遮断層は、パッシベーション遮断層に対する誘電材料上でのパッシベーション層の選択的形成を促進し得る。上述のように、自己組織化単分子膜(SAM)は、金属または金属製表面のシリル化を阻害する役割を果たし、従って誘電体表面の選択的パッシベーションを促進することができる。それゆえ、用語「遮断」は単に標識であり、100%非活性化の有機パッシベーション層の堆積を必ずしも暗示していない。本明細書の他の部分で述べる通り、不完全な選択性でも、エッチバックプロセス後に、完全に選択的な構造を得るのに充分であり得る。
【0048】
選択性
選択的パッシベーションおよび/または選択的堆積は、完全に選択的または部分的に選択的であり得る。部分的に選択的なプロセスに続いて、第二の表面からすべての堆積材料を除去することなく、一つの表面からすべての堆積材料を除去する、堆積後のエッチングを行い、完全に選択的な層を得ることができる。したがって、いくつかの実施形態では、選択的堆積は、望ましい利益を得るために、完全に選択的である必要はない。
【0049】
表面Bと呼ばれる第二の表面に対して、ここで表面Aと呼ばれる第一の表面上の堆積(またはパッシベーション)の選択性は、[(表面A上の堆積)-(表面B上の堆積)]/(表面A上の堆積)により計算される割合で表され得る。堆積は様々な手段のいずれでも測定されうる。例えば、堆積は、測定した堆積材料の厚さで表してもよく、または測定した堆積材料の量で表してもよい。本明細書に記載される実施形態では、酸化物表面(A)は、金属表面または金属製表面(B)に対して選択的にパッシベーションされ得る。パッシベーションに関して、パッシベーションが層の堆積ではなく基材表面の処理から生じる場合、パッシベーションの量は、パッシベーション剤と反応した基材表面上の利用可能な反応性部位の測定値であり得る。続いて、金属酸化物層は、酸化物表面(A)上のパッシベーション層に対して金属表面または金属製表面(B)上に選択的に堆積され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、(金属表面または金属製表面に対して)酸化物表面上のパッシベーション層の選択的形成に対する選択性は、約10%より大きく、約50%より大きく、約75%より大きく、約85%より大きく、約90%より大きく、約93%より大きく、約95%より大きく、約98%より大きく、約99%より大きく、またはさらには約99.5%より大きい。
【0051】
いくつかの実施形態では、(パッシベーションされた酸化物表面に対して)金属表面または金属製表面上の金属酸化物の堆積の選択性は、約10%より大きく、約50%より大きく、約75%より大きく、約85%より大きく、約90%より大きく、約93%より大きく、約95%より大きく、約98%より大きく、約99%より大きく、またはさらには約99.5%より大きい。
【0052】
いくつかの実施形態では、堆積は一方の表面上のみに発生し、他方の表面上には発生しない。
【0053】
いくつかの実施形態では、基材の金属表面または金属製表面に対するシリル化による酸化物表面のパッシベーションは、少なくとも約80%選択的である。いくつかの実施形態では、パッシベーションプロセスは、少なくとも約50%選択的である。いくつかの実施形態では、パッシベーションプロセスは、少なくとも約10%選択的である。当業者は、部分的に選択的なプロセスが、金属表面または金属製表面からの任意のシリル化を除去する堆積後エッチングによる酸化物表面の完全に選択的なパッシベーションをもたらし得ることを理解するであろう。
【0054】
いくつかの実施形態では、基材のシリル化酸化物表面に対する基材の金属表面または金属製表面上の金属酸化物の堆積は、少なくとも約80%選択的である。いくつかの実施形態では、基材のシリル化酸化物表面に対する基材の金属表面または金属製表面上の金属酸化物の堆積は、少なくとも約50%選択的である。いくつかの実施形態では、基材のシリル化酸化物表面に対する基材の金属表面または金属製表面上の金属酸化物の堆積は、少なくとも約10%選択的である。当業者は、部分的に選択的なプロセスの後に、実質的にすべての堆積材料をシリル化酸化物表面上から除去する堆積後エッチング(またはその他の処置)を続けることができることを理解するであろう。さらに、堆積後処理は、選択的に堆積された層の位置および/またはプロファイルを調整することにも役立つことができる。
【0055】
金属表面または金属製表面上の金属酸化物の選択的堆積
図1A~1Dは、第二の金属表面または金属製表面に対して第一の酸化物表面を選択的にパッシベーションし、その後、パッシベーションされた第一の酸化物表面に対して、第二の金属表面または金属製表面上への金属酸化物の選択的堆積が続く一実施形態について、概略的に説明する。
【0056】
図1Aは、著しく異なる表面を曝露した基材について説明する。例えば、第一の表面は、コバルト(Co)、銅(Cu)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)などの金属を含むことができ、または金属によって画定され得る。第二の表面は、酸化シリコン系層、または表面上に形成される自然酸化物を有するシリコン表面などの酸化物を含むことができ、または酸化物によって画定され得る。
【0057】
図1Bは、シリル化などの酸化物表面の選択的パッシベーション後の
図1Aの基材を示す。例えば、パッシベーション層は、基材が、アリルトリメチルシラン(TMS-A)、クロロトリメチルシラン(TMS-Cl)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMS-Im)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、またはN-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)などのシリル化剤に曝露されることによって、酸化物表面上に選択的に形成され得る。
【0058】
図1Cは、酸化物表面上のパッシベーション層に対する金属表面上の金属酸化物の選択的堆積後の
図1Bの基材を示す。金属酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ランタン、またはその他の遷移金属酸化物またはそれらの混合物などの金属酸化物であり得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物は酸化アルミニウムである。いくつかの実施形態では、金属酸化物は、原子層堆積プロセスなどの蒸着プロセスによって選択的に堆積される。金属酸化物の選択的堆積のためのいくつかのALDプロセスでは、基材は、金属反応物質および酸素反応物質と交互に順次接触する。例えば、酸化アルミニウムは、基材を、トリメチルアルミニウム(TMA)、塩化ジメチルアルミニウム、三塩化アルミニウム(AlCl
3)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAI)、トリス(tert-ブチル)アルミニウム(TTBA)、トリス(イソプロポキシド)アルミニウム(TIPA)、またはトリエチルアルミニウム(TEA)などのアルミニウム反応物質、および水などの酸素反応物質と交互に順次接触させることを含むALDプロセスによってパッシベーションされた表面に対して金属表面または金属製表面上に選択的に堆積され得る。
【0059】
上述のように、パッシベーション層上に堆積した任意の金属酸化物を、エッチバックプロセスなどの堆積後処理によって除去することができる。金属酸化物は金属表面上に選択的に堆積されるため、パッシベーション表面上に残された任意の金属酸化物は、金属表面上に形成された金属酸化物よりも薄くなる。したがって、堆積後処理を制御して、金属表面上から全ての金属酸化物を除去することなく、パッシベーション層を含む表面上の全ての金属酸化物を除去することができる。このように選択的堆積およびエッチバックを繰り返すことで、堆積およびエッチングのサイクルごとに、金属表面上の金属酸化物の厚さの増大がもたらされ得る。また、堆積およびエッチングのサイクルごとに、選択的な金属酸化物の堆積による不充分な核形成がなされる、きれいなパッシベーション層が残されるため、このように選択的堆積およびエッチバックを繰り返すことで、金属表面または金属製表面上の金属酸化物の全体的な選択性の増大ももたらされ得る。他の実施形態では、金属酸化物材料は、その後のパッシベーション層の除去中に除去することができる。例えば、直接的なエッチングまたはリフトオフ方法のいずれかを使用して、周期的選択的堆積および除去のパッシベーション層表面から金属酸化物を除去することができる。
【0060】
図1Dは、エッチングプロセスなどの酸化物表面からパッシベーション層を除去するための堆積後処理後の
図1Cの基材を示す。いくつかの実施形態では、エッチングプロセスは、基材をプラズマに曝露することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、プラズマは、酸素原子、酸素ラジカル、酸素プラズマまたはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、プラズマは、例えば水素原子、水素ラジカル、水素プラズマ、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、プラズマは、例えば、Ar種またはHe種といった、希ガス種を含んでもよい。いくつかの実施形態では、プラズマは、本質的に希ガス種から成ってもよい。いくつかの例では、プラズマは、例えば、窒素原子、窒素ラジカル、窒素プラズマまたはそれらの組み合わせといった他の種を含んでもよい。いくつかの実施形態では、エッチングプロセスは、例えば、O
3といった酸素を含むエッチング液に、基材を曝露することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、約30℃から約500℃の間、または約100℃から約400℃の間の温度のエッチング液に基材を曝露してもよい。いくつかの実施形態では、エッチング液は、一つの連続パルスの中で供給されてもよく、または複数のパルスの中で供給されてもよい。上で述べた通り、パッシベーション層の除去を使用して、パッシベーション層の完全な除去、または周期的な選択的堆積および除去におけるパッシベーション層の一部除去のどちらかにおいて、残留するいかなる金属酸化物も酸化物層の上からリフトオフすることができる。
【0061】
前述のプロセスの前、後、または間に、熱処理または化学的処理などの追加処理を行い得る。例えば、処理によって、表面を改変してもよく、またはプロセスの様々な段階で曝露される金属表面、酸化シリコン表面、パッシベーション表面および金属酸化物表面の複数部分を除去してもよい。いくつかの実施形態では、プロセスの前に、またはその最初に、基材を前処理してもよく、または洗浄してもよい。いくつかの実施形態では、上述の通り、基材をプラズマ洗浄プロセスにかけることができる。
【0062】
特定の実施形態および実施例について議論してきたが、請求項の範囲は、具体的に開示する実施形態を超えて、他の代替の実施形態および/または使用および明らかな変形例、ならびにそれらの均等物にまで拡大することを当業者は理解するであろう。