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▶ ハウス食品株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】容器入り冷凍食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/37 20060101AFI20240722BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20240722BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20240722BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240722BHJP
   A23B 7/05 20060101ALN20240722BHJP
   A23L 3/365 20060101ALN20240722BHJP
   A23L 27/40 20160101ALN20240722BHJP
   A23L 19/00 20160101ALN20240722BHJP
【FI】
A23L3/37 A
A23L35/00
A23D7/00 510
A23L27/00 D
A23B7/05
A23L3/365 Z
A23L27/40
A23L19/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022140276
(22)【出願日】2022-09-02
(65)【公開番号】P2024035673
(43)【公開日】2024-03-14
【審査請求日】2022-10-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】根岸 剛大
(72)【発明者】
【氏名】里見 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】平井 弘子
(72)【発明者】
【氏名】岩畑 慎一
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-052689(JP,A)
【文献】特開2020-005627(JP,A)
【文献】特表平08-504566(JP,A)
【文献】特開2020-156325(JP,A)
【文献】特開平11-289971(JP,A)
【文献】特開2000-106850(JP,A)
【文献】特開昭63-279770(JP,A)
【文献】特許第6960560(JP,B1)
【文献】特開2020-043819(JP,A)
【文献】特開2006-197817(JP,A)
【文献】米国特許第04328253(US,A)
【文献】特開2000-184851(JP,A)
【文献】特開2015-154749(JP,A)
【文献】特許第6785357(JP,B1)
【文献】国際公開第2013/172118(WO,A1)
【文献】特開平10-042799(JP,A)
【文献】特開2019-118285(JP,A)
【文献】特開2016-007187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
A23D 7/00 - 9/06
A23B 4/00 - 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍食品組成物が容器に収納されている、容器入り冷凍食品組成物であって、
前記冷凍食品組成物は、冷凍食材とそれと混合、付着させた、常温のときに液体である液部を含み、
前記液部が、前記液部100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを含み(ただし、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナンは含まない)、25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超であり、
前記液部が、食材100gに対して、2~100gとなる混合比にて含まれ、
前記食材が複数個からなり、野菜類、肉類、魚類、豆類、穀類、卵類(魚卵は除く)の一又は複数を含み、
前記冷凍食品組成物は、加熱処理に付して用いられる、容器入り冷凍食品組成物。
【請求項2】
前記油脂が、極度硬化油脂を含み、前記極度硬化油脂を前記液部100質量%に対して2質量%超の量で含む、請求項1に記載の容器入り冷凍食品組成物。
【請求項3】
前記液部100質量%に対して、前記調味料が4質量%超の量で含まれる、請求項1に記載の容器入り冷凍食品組成物。
【請求項4】
冷凍食材用調味料組成物であって、前記組成物100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを含み(ただし、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナンは含まない)
25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超であり、
前記食材が複数個からなり、野菜類、肉類、魚類、豆類、穀類、卵類(魚卵は除く)の一又は複数を含み、前記冷凍食材は、加熱処理に付して用いられ、
冷凍された食材又は冷凍される前の食材100gに対して、2~100gとなる混合比にて混合、付着させて用いられる、冷凍食材用調味料組成物。
【請求項5】
前記油脂が、極度硬化油脂を含み、前記極度硬化油脂を前記組成物100質量%に対して2質量%超の量で含む、請求項に記載の冷凍食材用調味料組成物。
【請求項6】
前記組成物100質量%に対して、前記調味料が4質量%超の量で含まれる、請求項に記載の冷凍食材用調味料組成物。
【請求項7】
冷凍食材用調味料組成物の製造方法であって、前記組成物100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを混合すること、ならびに、
前記組成物の25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超とすること、
を含み、
前記食材が複数個からなり、野菜類、肉類、魚類、豆類、穀類、卵類(魚卵は除く)の一又は複数を含み、前記冷凍食材は、加熱処理に付して用いられ、
前記組成物が冷凍された食材又は冷凍される前の食材100gに対して、2~100gとなる混合比にて混合、付着させて用いられる(ただし、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナンは含まない)
製造方法。
【請求項8】
前記油脂が、極度硬化油脂を含み、前記極度硬化油脂を前記組成物100質量%に対して2質量%超の量で含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記組成物100質量%に対して、前記調味料を4質量%超の量で混合する、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
容器入り冷凍食品組成物の製造方法であって、食材と冷凍食材用調味料組成物を混合し、付着させ、得られた混合物を冷凍する工程を含み、
前記冷凍食材用調味料組成物が食材100gに対して、2~100gとなる混合比にて混合、付着させて用いられ、
前記冷凍食材用調味料組成物が、前記冷凍食材用調味料組成物100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを含み(ただし、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナンは含まない)、25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超であり、
前記食材が複数個からなり、野菜類、肉類、魚類、豆類、穀類、卵類(魚卵は除く)の一又は複数を含み、
前記冷凍食品組成物は、加熱処理に付して用いられる、製造方法。
【請求項11】
前記油脂が、極度硬化油脂を含み、前記極度硬化油脂を前記組成物100質量%に対して2質量%超の量で含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記冷凍食材用調味料組成物100質量%に対して、前記調味料が4質量%超の量で含まれる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記得られた混合物を、容器に収納した後に冷凍する、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り冷凍食品組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品は、食材の長期保存を可能とするとともに、電子レンジ等を用いた加熱処理により簡単に喫食可能となるものであり、今日では様々な食材について冷凍食品が開発されており、人気を博している。
【0003】
従来、様々な冷凍食品が開発され、報告されている。
特許文献1には、容器の下部に米飯及び/又は麺類が置かれ、米飯及び/又は麺類の上に肉及び/又は野菜が置かれ、25℃における粘度が5~75mPa・sであるソースが、肉及び/又は野菜を実質上覆っている耐熱容器に入れられた冷凍食品が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ポリグリセリン脂肪酸エステルとレシチンを含む乳化剤を添加してなる油脂を食品の表面に接触処理した後、該食品を冷凍することを特徴とする冷凍食品の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、冷凍保存に耐え得る、食品素材を融点33℃以上の食用油脂と共に加熱して得られる加熱調理臭のある食品素材および前記加熱に用いた食用油脂を含んでなり、粉粒体状の前記食品素材をペースト状の前記食用油脂に分散状態に保持させてなるペースト状オイル調味料が開示されている。
【0006】
特許文献4には、冷凍耐性を有する、煮汁を含む具材入り惣菜または、ペースト状惣菜に、ジェランガム0.3~1.5%(重量)及び澱粉1.0~5.0%(重量)を添加、分散、加熱、溶解してゲル化したことを特徴とするゲル化食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-171号公報
【文献】特許第4933719号公報
【文献】特開2001-008620号公報
【文献】特開平10-215797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の冷凍食品の多くは、冷凍により硬化してしまい、容器より当該食品を取り出すこと、特に、必要な分を取り分け、取り出すことは、非常に困難である場合があった。また、完全に硬化した冷凍食品は加熱処理に付した場合に加熱ムラを生じやすく、均一な食感が得られない場合があった。
【0009】
さらに、従来の冷凍食品の多くは、加熱処理した場合に、冷凍された食品特有のいやな臭いや、ドリップを生じる場合があり、これらは味や品質の低下等を引き起こす要因となっていた。
【0010】
そこで本発明は、冷凍により完全に硬化することなく、手で容易にほぐすことが可能な冷凍食品を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、加熱処理した場合における、冷凍された食品特有のいやな臭いや、ドリップの発生が低減され、味や品質の低下等を抑制することが可能な冷凍食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、全量100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満の水、及び調味料とを含み、25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超である、冷凍食材用調味料組成物を、食材と混合して冷凍して得られた冷凍食品が、冷凍により完全に硬化することなく、手で容易にほぐすことが可能であり、それによって加熱ムラを低減して、加熱処理できることを見出した。
【0013】
また、当該冷凍食材用調味料組成物と混合して得られた冷凍食品、又は当該冷凍食材用調味料組成物と混合した冷凍食材は、加熱処理に付すことにより、調味料に由来する良好な風味や味が感じられ、冷凍された食品特有のいやな臭いが低減されており、またドリップの発生も抑制されていることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 冷凍食品組成物が容器に収納されている、容器入り冷凍食品組成物であって、
前記冷凍食品組成物は、常温のときに液体である液部を含み、
前記液部が、前記液部100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを含み、25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超である、容器入り冷凍食品組成物。
[2] 前記油脂が、極度硬化油脂を含み、前記極度硬化油脂を前記液部100質量%に対して2質量%超の量で含む、[1]の容器入り冷凍食品組成物。
[3] 前記液部100質量%に対して、前記調味料が4質量%超の量で含まれる、[1]又は[2]の容器入り冷凍食品組成物。
[4]前記液部が、食材100gに対して、2~100gとなる混合比にて含まれる、[1]~[3]のいずれかの容器入り冷凍食品組成物。
[5] 冷凍食材用調味料組成物であって、前記組成物100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを含み、
25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超である、冷凍食材用調味料組成物。
[6] 前記油脂が、極度硬化油脂を含み、前記極度硬化油脂を前記組成物100質量%に対して2質量%超の量で含む、[5]の冷凍食材用調味料組成物。
[7] 前記組成物100質量%に対して、前記調味料が4質量%超の量で含まれる、[5]又は[6]の冷凍食材用調味料組成物。
[8] 冷凍食材用調味料組成物の製造方法であって、前記組成物100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを混合すること、ならびに、
前記組成物の25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超とすること、
を含む、製造方法。
[9] 前記油脂が、極度硬化油脂を含み、前記極度硬化油脂を前記組成物100質量%に対して2質量%超の量で含む、[8]の製造方法。
[10] 前記組成物100質量%に対して、前記調味料を4質量%超の量で混合する、[8]又は[9]の製造方法。
[11] 容器入り冷凍食品組成物の製造方法であって、食材と冷凍食材用調味料組成物を混合し、得られた混合物を冷凍する工程を含み、
前記冷凍食材用調味料組成物が、前記冷凍食材用調味料組成物100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを含み、25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超である、製造方法。
[12] 前記油脂が、極度硬化油脂を含み、前記極度硬化油脂を前記組成物100質量%に対して2質量%超の量で含む、[11]の製造方法。
[13] 前記冷凍食材用調味料組成物100質量%に対して、前記調味料が4質量%超の量で含まれる、[11]又は[12]の製造方法。
[14] 前記得られた混合物を、容器に収納した後に冷凍する、[11]~[13]のいずれかの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷凍により完全に硬化することなく、手で容易にほぐすことが可能な冷凍食品を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、加熱処理した場合に、冷凍された食品特有のいやな臭いや、ドリップの発生が低減され、味や品質の低下等を抑制することが可能な冷凍食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.容器入り冷凍食品組成物
本発明は、冷凍食品組成物が容器に収納されてなる、容器入り冷凍食品組成物に関するものである。
【0017】
本発明における冷凍食品組成物には食材と共に、常温のときに液体である液部が含まれ、当該液部は食材に満遍なく行き渡り付着し、食材と共に冷凍されている。
【0018】
本発明において「液部」は、油脂、調味料、必要に応じて水を含んでなり、25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超であることを特徴とするものである。本発明において「常温のときに液体である」とは、上記所定の粘度を有する限り、常温のときに液体の形態、あるいは、ゾル及びゲル等の半固体/半液体の形態が含まれる。「液部」が、上記所定の粘度及び形態を有することによって、食材と混合させた場合に、当該液部を当該食材に満遍なく行き渡らせ、付着させることができる。
【0019】
なお、本明細書中、前記「液部」のことを「冷凍食材用調味料組成物」と記載する場合があるが、本明細書中これらの用語は相互互換的に用いることができる。
【0020】
本発明において「油脂」とは食用油脂であり、例えば、植物由来の油脂(例えば、キャノーラ油、菜種白絞油、菜種サラダ油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、パーム油、茶油、ヤシ油、アボガド油、ククイナッツ油、グレープシード油、ココアバター、ココナッツ油、小麦胚芽油、アーモンド油、月見草油、ひまし油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ローズヒップ油、ブドウ油、カカオ油、ホホバ油、パーム核油、モクロウ、キャンデリラロウ、カルナバロウ等)、動物由来の油脂(牛脂、豚油、豚脂、ラノリン、スクワレン、スクワラン、ミツロウ、鯨ロウ等)、及びこれらの極度硬化油脂、エステル交換油脂等を挙げることができる(これらに限定はされない)。好ましくは、上昇融点が30℃未満の液状油脂を用いる。
【0021】
本発明において、油脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる油脂を組み合わせて用いてもよい。異なる油脂を組み合わせる場合はそれぞれの油脂を任意の量で含めることができ、その量は本発明の冷凍食品組成物に含まれる液部の粘度が後述する所望の値となる範囲になるように適宜調整することができる。
【0022】
本発明において、油脂は前記液部100質量%(常温時)に対して、15質量%超の量で含まれる。油脂を前記液部に対して15質量%超の量で含めることによって、冷凍前の前記液部に滑らかさを付与することができ、食材と混合した際に、食材に満遍なく行き渡らせることができる。油脂は前記液部100質量%に対して、15質量%超、例えば、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、又は85質量%以上の量で含まれ、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。本発明における油脂の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、油脂は前記液部100質量%に対して、15質量%超~95質量%以下、20質量%以上~90質量%以下、25質量%以上~85質量%以下、30質量%以上~80質量%以下の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。
【0023】
本発明に利用する油脂には、極度硬化油脂を含めることができる。「極度硬化油脂」とは、不飽和脂肪酸がほとんど存在しなくなるまで、すなわちヨウ素価が実質的に0(通常は2~3以下)になるまで水素添加を施した油脂であって、硬度が高く、融点も50~70℃と高い固形油脂を意味する。このような極度硬化油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油、米ぬか油、綿実油、パーム油、パーム分別油、からし油、ラード、牛脂等(これらに限定はされない)から選択される油脂から調製された極度硬化油脂が挙げられる。
【0024】
本発明において、極度硬化油脂は前記液部の粘度が上記所定の範囲内となる限りにおいて、任意の量で含むことができ、用いる油脂の種類に応じて適宜選択し得るが、例えば、前記液部100質量%(常温時)に対して、2質量%超、3質量%以上、好ましくは4質量%以上(例えば、5質量%以上)、より好ましくは6質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下とすることができる。本発明における極度硬化油脂の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、極度硬化油脂は前記液部100質量%に対して、2質量%超~90質量%以下、3質量%以上~90質量%以下、好ましくは4質量%以上~80質量%以下、より好ましくは6質量%以上~70質量%以下の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。本発明において、極度硬化油脂を含めることによって、前記液部の粘度を調整することができる。
【0025】
「調味料」とは、飲食品の製造において、食材の風味付けや味付けに用いられる一般的な材料を意味し、本発明においては、冷凍食品組成物の所望の形態(風味付けや味付け)に応じて、適当な調味料を適宜選択することができる。「調味料」としては例えば、食塩、水溶性デキストリン、グルタミン酸ソーダ、ブドウ糖、グラニュー糖、上白糖、クエン酸、造粒塩、岩塩、イノシン酸、グアニル酸、味噌、醤油、酢、香辛料(例えば、アジョワン、アニス、エシャロット、オールスパイス、オニオン、オレガノ、カファライム、カホクザンショウ(花椒)、カルダモン、カレーリーフ、キャラウェイ、クミン、グリーンペッパー、クローブ、ゴマ、コショウ、コリアンダー(パクチー)、サフラン、山椒、シソ、シナモン、生姜、スターアニス、セージ、タイム、ターメリック、タデ、タラゴン、チンピ、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニラ、ニンニク、ネギ、バジル、パセリ、バニラ、パプリカ、ハラペーニョ、フェヌグリーク、フェンネル、ホースラディッシュ、マージョラム、マスタード、ミカン、ミント、ラディッシュ、レモン、レモングラス、ローズマリー、ローリエ、ワサビ、五香粉、ガラムマサラ、カレー粉、七味唐辛子、柚子胡椒(柚子唐辛子))、甘味料(例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、カンゾウ抽出物、キシリトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、D-ソルビトール等)、酸味料(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、氷酢酸、酢酸ナトリウム、酒石酸、フマル酸、フマル酸ナトリウム等)、苦味料(カフェイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物)等が挙げられるが、これらに限定はされない。調味料はいずれか単独で用いてもよいし、異なる調味料を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明において「調味料」は、食材へ所望の風味付けや味付けを行うことが可能な任意の量で含むことができ、利用する食材や調味料の種類等の要因に応じて適宜選択し得るものであり、特に限定されるものではないが、例えば、前記液部100質量%(常温時)に対して、4質量%超、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、又は60質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。本発明における調味料の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、調味料は前記液部100質量%に対して、4質量%超~90質量%以下、好ましくは5質量%以上~90質量%以下、より好ましくは6質量%以上~90質量%以下、例えば、10質量%以上~80質量%以下、又は20質量%以上~70質量%以下の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。
【0027】
本発明において、「水」は前記液部の粘度が上記所定の範囲内となる限りにおいて、任意の量で含むことができ、例えば、前記液部100質量%(常温時)に対して、15質量%未満、例えば、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、又は6質量%以下の量で含み、その下限は特に限定されるものではないが、例えば、0質量%以上(「0質量%又はそれを超える量」を意味し、「0質量%」の場合は、水を含まないことを意味する)、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上とすることができる。本発明における水の量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、水は前記液部100質量%に対して、0質量%以上~15質量%未満、0質量%以上~10質量%以下、0質量%以上~8質量%以下、0質量%以上~6質量%以下、1質量%以上~10質量%以下、2質量%以上~9質量%以下、又は3質量%以上~8質量%以下の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。水を前記液部100質量%に対して、15質量%以上の量で含む場合には、前記液部について、上記所望の粘度を得ることができない場合があり、また油脂と水の分離を生じ、食材との混合において当該食材に満遍なく行き渡らせ付着させることが困難となる場合がある。
【0028】
本発明において、前記液部の粘度は、25℃及びせん断速度1(1/s)における値が120mPa・s超、例えば、200mPa以上、300mPa以上、400mPa以上、500mPa以上、又は600mPa以上、好ましくは700mPa以上、より好ましくは800mPa・s以上(例えば、900mPa以上)、さらに好ましくは1Pa・s以上(例えば、1.2Pa・s以上、1.4Pa・s以上、1.6Pa・s以上、1.8Pa・s以上、2Pa・s以上、4Pa・s以上、6Pa・s以上、又は8Pa・s以上)、よりさらに好ましくは10Pa・s以上(例えば、15Pa・s以上、20Pa・s以上、25Pa・s以上、又は30Pa・s以上)であり、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、800Pa・s以下、700Pa・s以下、600Pa・s以下、500Pa・s以下、400Pa・s以下、300Pa・s以下、又は200Pa・s以下とすることができる。前記条件における前記液部の粘度は、前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、120mPa・s超~800Pa・s以下、好ましくは700mPa・s超~800Pa・s以下、より好ましくは800mPa・s以上~700Pa・s以下、さらに好ましくは1Pa・s以上~600Pa・s以下、よりさらに好ましくは10Pa・s以上~400Pa・s以下の範囲より適宜選択される値とすることができる。前記液部に一定の粘性を付与する事で、食材と混合させた場合に、当該食材に前記液部を満遍なく行き渡らせることができ、これにより凍結後の冷凍食品組成物を手で容易にほぐすことを可能とし、また冷凍食品組成物を加熱処理した場合に、冷凍焼け(乾燥)を防ぐことができ、またドリップの発生を抑えることができ、また食材にムラなく風味付けや味付けをすることができ、また冷凍された食品特有のいやな臭いを低減することができる。
【0029】
前記粘度は、直径1mmの粒子を超えるサイズを有する固体を取り除いたサンプルを、回転式粘弾性測定装置(Anton Paar社製MCR102)を用いCYLINDER B-CC25のボブシリンダー、25℃にて、ずり速度0.1s-1から31s-1までの間を低ずり速度側から測定することにより測定することができる。
【0030】
前記液部の粘度は、油脂(特に、極度硬化油脂)の配合によって調整することができる。ならびに/あるいは、前記液部の粘度は、油系増粘剤をさらに配合することによって調整してもよい。「油系増粘剤」とは、液状の油脂に添加して溶解することにより、当該油脂を増粘、固化、及び/又はゾル・ゲル化することが可能な物質を意味する。このような油系増粘剤としては、脂肪酸とポリグリセリンとを構成成分として含む、ポリグリセリン脂肪酸エステルを好適に用いることができる。
【0031】
油系増粘剤のポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸(以下、「構成脂肪酸」と記載する)については、全構成脂肪酸の内、炭素数16~18の直鎖脂肪酸が分子数として45%以上含まれる場合に高い粘度を得ることができる。この割合は、全構成脂肪酸のモル数に対する炭素数16~18の直鎖脂肪酸のモル数の割合を示す。
【0032】
構成脂肪酸には、炭素数8~14の直鎖脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸のいずれかを含む事が好ましい。
【0033】
構成脂肪酸として、(a)炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸を少なくとも1種以上、(b)炭素数8~14の直鎖飽和脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種以上が挙げられる。構成脂肪酸における脂肪酸(a)と脂肪酸(b)の比率をモル比にして、0.91:0.09~0.99:0.01とするとき、低添加量にて粘度が高く、長期間油脂の分離を抑えることができる。
【0034】
脂肪酸(a)としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。脂肪酸(b)としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エルカ酸、イソステアリン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンについては、水酸基価に基づく平均重合度が10以上のものを用いるのが好ましい。平均重合度が10未満であるポリグリセリンを用いた場合、十分な粘度は得られず、長期間油脂の分離を抑えることができない場合がある。より好ましくは、ポリグリセリンの平均重合度は20以上であり、さらに好ましくは30以上、よりさらに好ましくは40以上であり、平均重合度が高い程、粘度が高くなり、低添加量で固化を達成することができる。
【0036】
ポリグリセリンの水酸基価に基づく平均重合度は、従来公知の手法(特開2018-42550号公報)にしたがって、末端基分析法、水酸基価は社団法人日本油化学会編「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法(I)1996年度版」に準じて算出することができる。
【0037】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、70%以上であることが好ましい。エステル化率が70%未満である場合、十分な粘度は得られず、長期間油脂の分離を抑えることができない場合がある。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、エステル化率が高い程、粘度が高くなり、低添加量で固化を達成することができる。
【0038】
エステル化率は、従来公知の手法(特開2018-42550号公報)にしたがって算出することができる。
【0039】
本発明においてポリグリセリン脂肪酸エステルは常法にしたがって製造されたものを用いることができ、より詳細には、上記の各成分を、上記条件を満たすような組成で仕込み、水酸化ナトリウム等の触媒を加えて、常圧又は減圧下におけるエステル化反応に付すことにより製造されたものを用いることができる。また、本発明においてポリグリセリン脂肪酸エステルは市販品を利用してもよく、例えば、TAISET AD(太陽化学株式会社)、TAISET50(太陽化学株式会社)、リョートーポリグリエステルB-100D(三菱化学フーズ株式会社)等を好適に用いることができる。
【0040】
本発明において、前記液部には必要に応じてさらに、飲食品の製造において通常用いられている、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を含めることができる。
【0041】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、ブドウ糖、コーンスターチ、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0042】
滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル等のシュガーエステル類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、サラシミツロウ等のロウ類、タルク、ケイ酸、ケイ素等が挙げられる。
【0043】
結合剤としては、例えば、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0044】
崩壊剤としては、例えば、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0045】
また、本発明において、前記液部には、必要に応じてさらに、飲食品の製造において通常用いられている、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニン等)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール等)、天然高分子(例えば、レシチン、澱粉、デキストリン等)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群等)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロース等)、界面活性剤(例えばソルビタン脂肪酸エステル等)、希釈剤、安定化剤、等張化剤、pH調製剤、緩衝剤、湿潤剤、溶解補助剤、懸濁化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、香料、酸化防止剤等のその他の成分を適宜含めることができる。
【0046】
本発明において、前記液部には賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤やその他の成分を、前記液部の上記所定の粘度や形態、所望される効果を妨げない範囲の量で適宜配合することができる。
【0047】
本発明の容器入り冷凍食品組成物は、食材と前記液部(又は後述の「冷凍食材用調味料組成物」)を混合し、得られた混合物を冷凍する工程を含む製造方法により得ることができる。
【0048】
「食材」は、冷凍食品組成物の所望の形態に応じて適宜選択することができ、例えば、野菜類、肉類、魚類、豆類、穀類、卵類等の一又は複数を含めることができ、食材は下処理済みのもの、加熱済みのもの、調理済みのものや、加工品等であってもよいし、あるいは未調理、未加熱のもの等であってもよく、あるいはそれらの加熱品、冷凍品等であってもよい。好ましくは「食材」は、前記液部(又は冷凍食材用調味料組成物)により風味付けや味付けが可能な素材又は素材に近いものである。
【0049】
食材と前記液部との混合において、両者の混合比は特に限定されず、すべての食材の全体に前記液部が満遍なく行き渡ることが可能な量であればよく、食材の種類、形態、量等の要因に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の容器入り冷凍食品組成物において、食材100gに対して、前記液部が2~100g、好ましくは5~80g、好ましくは8~60g、より好ましくは10~50gとなる混合比(重量比)にて含まれる量にて、両者を混合することができる(これらに限定はされない)。混合は常温で行ってもよいし、0~10℃の冷蔵条件下、-1℃以下の冷凍条件下で行ってもよい。
【0050】
得られた混合物(すなわち、食品組成物)は容器に充填され密封される。容器としては内容物を取り出し可能なものであれば限定されないが、例えばパウチ状容器、口栓付きパウチ、プラスチック製のカップ容器などを利用することができる。
【0051】
容器に充填された前記食品組成物は、-50℃~-5℃、好ましくは-50℃~-15℃にて冷凍処理を施すことにより、容器入り冷凍食品組成物を得ることができる。得られた容器入り冷凍食品組成物は、冷凍(-30℃~-15℃、好ましくは-30℃~-5℃、更に好ましくは-30℃~-10℃)保管することができる。冷凍保管することによって、本発明の容器入り冷凍食品組成物の変質や変性を防ぐことができ、また、微生物の発育や増殖を阻止することができる。
【0052】
本発明の容器入り冷凍食品組成物は、手等で簡単にほぐすことが可能であり、必要に応じて、容器より必要な分を取り分け、取り出すことが可能である。
また、本発明の容器入り冷凍食品組成物は、手等で簡単にほぐすことが可能であり、それによって加熱ムラを解消し、均一な食感を有する食品を作ることができる。
また、本発明の容器入り冷凍食品組成物は、電子レンジ等で加熱処理することにより、食材は同時に、併存する前記液部により風味付けや味付けがなされ、時間をかけて調理したような味、加熱感、柔らかな食感を有することができ、従来の冷凍食品で見受けられた加熱処理に伴うドリップの発生や冷凍された食品特有のいやな臭いの発生が低減された食品を作ることができる。
【0053】
2.冷凍食材用調味料組成物
また、別の態様において、本発明は、冷凍食材用調味料組成物に関するものである。本発明の冷凍食材用調味料組成物は、冷凍された食材と共に加熱処理に付されることにより、当該食材に風味付けや味付けを行うことを可能とするものであり、このようにして処理して得られた食材は、時間をかけて調理したような味、加熱感、柔らかな食感を有することができ、従来の冷凍食品で見受けられた加熱処理に伴うドリップの発生や冷凍された食品特有のいやな臭いの発生を低減することができる。
【0054】
本発明の冷凍食材用調味料組成物は、油脂、調味料、必要に応じて水を含んでなり、25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超であることを特徴とするものである。本発明の冷凍食材用調味料組成物は、上記粘度を有する限り、常温のときに液体の形態、あるいは、ゾル及びゲル等の半固体/半液体の形態であってもよい。本発明の冷凍食材用調味料組成物が、上記粘度及び形態を有することによって、冷凍された食材又は冷凍される前の食材と混合させることにより、当該食材に満遍なく行き渡り、付着させることができる。
【0055】
本発明の冷凍食材用調味料組成物について、「油脂」、「調味料」、「水」、及び「粘度」は、上記「液部」において定義したとおりであり、本発明の冷凍食材用調味料組成物においても、上記定義及び配合量に従うものである。
【0056】
本発明の冷凍食材用調味料組成物には必要に応じてさらに、飲食品の製造において通常用いられている、上述の添加剤やその他の成分を含めることができる。これらは、本発明の冷凍食材用調味料組成物の上記所定の粘度や形態、所望される効果を妨げない範囲の量で適宜配合することができる。
【0057】
本発明の冷凍食材用調味料組成物は、前記組成物100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを混合すること、ならびに、
前記組成物の25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超とすること、を含む、製造方法により製造することができる。
なお、本方法において、「前記組成物100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを混合すること」、ならびに、「前記組成物の25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超とすること」とはこの順序で記載されることがあるが、これの記載は、これらの工程がこの順序で行われることを意味するものではない。
また、「前記組成物の25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超とすること」について、この調整は、製造される冷凍食材用調味料組成物の粘度を所定の値にする油脂、調味料、水等の量が一度決定されれば、本製造方法を実施する際に毎回行われる必要はなく、当該粘度を達成可能な決定された配合で、油脂、調味料、水等を混合すればよい。
【0058】
本発明の冷凍食材用調味料組成物は、油脂、調味料、及び必要に応じて水、ならびに必要に応じて飲食品の製造において通常用いられている、上述の添加剤やその他の成分を、それぞれ上記の量にて混合することによって製造することができる。各成分は全て一緒に加えて混合してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次加えて(順序は問わない)混合してもよい。混合は常温で行ってもよいし、0~10℃の冷蔵条件下、-1℃以下の冷凍条件下で行ってもよい。
【0059】
得られた混合物(すなわち、冷凍食材用調味料組成物)は容器に充填され密封されてもよい。容器としては内容物を取り出し可能なものであれば限定されないが、例えばパウチ状容器、口栓付きパウチ、プラスチック製のカップ容器、金属缶などを利用することができる。
【0060】
本発明の冷凍食材用調味料組成物は、冷凍された食材と共に加熱処理に付されることにより、当該食材に風味付けや味付けを行うこと等を可能とするものである。
【0061】
「食材」としては、上記のものが挙げられ、冷凍された食材、又は冷凍される前の食材と混合することができる。
【0062】
食材と本発明の冷凍食材用調味料組成物との混合において、両者の混合比は特に限定されず、食材に当該調味料組成物が満遍なく行き渡らせることを可能とする量であればよく、食材の種類や形態等の要因に応じて適宜選択することができる。例えば、食材100gに対して、当該調味料組成物を2~100g、好ましくは5~80g、より好ましくは8~60g、さらに好ましくは10~50gとなる混合比(重量比)にて、両者を混合することができる(これらに限定はされない)。冷凍された食材との混合は常温で行ってもよいし、0~10℃の冷蔵条件下、-1℃以下の冷凍条件下で行ってもよい。
【0063】
冷凍された食材と本発明の冷凍食材用調味料組成物との混合物を、電子レンジ等で加熱処理することにより、食材は同時に、併存する冷凍食材用調味料組成物により風味付けや味付けがなされ、時間をかけて調理したような味、加熱感、柔らかな食感を有することができ、従来の冷凍食品で見受けられた加熱処理に伴うドリップの発生や冷凍された食品特有のいやな臭いの発生が低減された食品を作ることができる。
【0064】
なお、冷凍される前の食材と本発明の冷凍食材用調味料組成物とを混合した場合には、当該食材と一緒に冷凍されて冷凍食品組成物を形成することができる(冷凍された食材と混合した場合においても、一緒に冷凍されて冷凍食品組成物を形成することができる)。当該冷凍食品組成物は、電子レンジ等で加熱処理することにより、食材は同時に、併存する冷凍食材用調味料組成物により風味付けや味付けがなされ、時間をかけて調理したような味、加熱感、柔らかな食感を有することができ、従来の冷凍食品で見受けられた加熱処理に伴うドリップの発生や冷凍された食品特有のいやな臭いの発生が低減された食品を作ることができる。
【0065】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0066】
実験1:冷凍食材用調味料組成物の調味料含量と粘度の影響
1.冷凍食材用調味料組成物の調製
下記表1の組成にしたがって、各成分を混合して、極度硬化油脂の配合の有無に起因して、粘性付与なし及び粘性付与ありの各冷凍食材用調味料組成物を調製した。粘度は25℃でのせん断速度1(1/s)にて測定した値を示す。得られた調味料組成物を以下の実験に用いた。
【0067】
なお、表中の各成分の量は、得られた調味料組成物の量を100質量%とする、「質量%」の量にて示される。
【0068】
【表1】
【0069】
2.実験方法
各冷凍食材用調味料組成物(5g)と冷凍野菜(50g)とを、金属製のボウルに計量して入れ、ビニール手袋をした手で混合して、冷凍野菜全体に各調味料組成物を混ぜ合わせた。その後、ビニール袋に入れて冷凍し、得られた冷凍食品について以下の評価を行った。冷凍食品の風味や味の評価を行う場合には、冷凍食品を冷凍状態のまま皿にのせ、ラップをかけて600Wの電子レンジで2分間加熱した後に、食した。
【0070】
3.評価・結果
(1)分離
冷凍野菜に各調味料組成物を混ぜ合わせた直後の、冷凍野菜からの調味料組成物の分離の様子を下記の基準にしたがって目視により、訓練された3名のパネラーが評価した。
【0071】
<分離の程度の評価基準>
〇:混ぜ合わせた後に、冷凍野菜からの調味料組成物の分離は認められない
×:混ぜ合わせた後に、冷凍野菜からの調味料組成物の分離が確認される。
<分離の程度の評価結果>
【0072】
【表2】
【0073】
粘性付与なしの冷凍食材用調味料組成物は、冷凍野菜と混ぜ合わせる以前に、既に食塩の沈降が確認され、均一に食塩を含んで計量することが難しかった。冷凍野菜と混ぜ合わせた後においては、調味料組成物(特に油)が冷凍野菜から流れ落ちて、ビニール袋の底に溜まっているのが確認された。
【0074】
一方、粘性付与ありの冷凍食材用調味料組成物においては、食塩の沈降は認められず、均一に計量することができた。また、冷凍野菜と混ぜ合わせた後においては、調味料組成物は冷凍野菜の表面に付着したまま垂れ落ちず、混ぜ合わされた際の均一性を保持していることが確認された。
【0075】
(2)風味のばらつき
冷凍食品における各冷凍食材用調味料組成物による風味のばらつきを下記の基準にしたがって、冷凍食品を実際に加熱し、訓練された3名のパネラーが食して評価した。
【0076】
<風味のばらつきの評価基準>
〇:電子レンジで加熱した冷凍食品を食した場合に、野菜の部位によって風味にばらつきがあるとは認められない(風味にばらつきが無い)
×:電子レンジで加熱した冷凍食品を食した場合に、野菜の部位によって風味にばらつきがあることが確認される(風味にばらつきがある)。
<風味のばらつきの評価結果>
【0077】
【表3】
【0078】
粘性付与なしの冷凍食材用調味料組成物を用いた場合には、加熱した冷凍食品(野菜)に調味料組成物(食塩)が局所的に付着しているところや、全く付着していないところが混在し、風味のばらつきが大きいことが確認された。粘性付与なしの冷凍食材用調味料組成物を用いた場合には、製造される冷凍食品の品質を、均一に安定して保つことは容易ではないことが示唆された。
【0079】
一方、粘性付与ありの冷凍食材用調味料組成物を用いた場合においては、加熱した冷凍食品(野菜)に調味料組成物(食塩)が全体的に、ほぼ均一に付着しており、風味のばらつきが少ないことが確認された。
【0080】
(3)味の付き具合の評価
冷凍野菜に各冷凍食材用調味料組成物を混ぜ合わせたときの、調味料組成物(塩)による味の付き具合を下記の基準にしたがって、冷凍食品を訓練された3名のパネラーが実際に食して評価した。
【0081】
<味の付き具合の評価基準>
〇:電子レンジで加熱した冷凍食品を食した場合に、野菜の全体が調味されていることが確認される
△:電子レンジで加熱した冷凍食品を食した場合に、野菜に薄い塩味が感じられる、及び/又は、味にムラがあることが感じられる
×:電子レンジで加熱した冷凍食品を食した場合に、野菜にごく僅かな塩味のみが感じられる。
<味の付き具合の評価結果>
【0082】
【表4】
【0083】
食塩の配合量が4質量%場合には、粘性付与の有無にかかわらず、加熱した冷凍食品(野菜)における塩味の付き具合が薄く、物足りない味が僅かに感じられるのみであった。ただし、粘性付与なしの冷凍食材用調味料組成物を用いた場合には、調味料組成物(食塩)が局所的に付着している部分があり、その部分については塩味が強く感じられたが、塩が局在しているだけであり、料理としての一体感は感じられなかった。
【0084】
粘性付与なしの冷凍食材用調味料組成物は、食塩の配合量を5質量%及び6質量%とした場合においても、加熱した冷凍食品(野菜)において味にムラが感じられ、塩味が感じられるところとそうではないところの差が大きかった。
【0085】
一方、粘性付与ありの冷凍食材用調味料組成物を用いた場合には、加熱した冷凍食品(野菜)において、食塩の配合量が5質量%である場合には薄い塩味が感じられるのみであったが、食塩の配合量が6質量%である場合には、塩味が全体的に感じられ、はっきりと調味されていることが確認された。調味の面からみても、粘性付与なしの冷凍食材用調味料組成物を用いた場合には、製造される冷凍食品の品質を、均一に安定して保つことは容易ではないことが示唆された。
【0086】
実験2:冷凍食材用調味料組成物の粘度の違いによる影響
1.冷凍食材用調味料組成物の調製
下記表5の組成にしたがって、各成分を混合して、極度硬化油脂の配合量の異なる、粘性付与ありの各冷凍食材用調味料組成物を調製した。粘度は25℃でのせん断速度1(1/s)にて測定した値を示す。得られた調味料組成物を以下の実験に用いた。
【0087】
なお、表中の各成分の量は、得られた調味料組成物の量を100質量%とする、「質量%」の量にて示される。
【0088】
【表5】
【0089】
2.実験方法
各調味料組成物(5g)と冷凍野菜(50g)とを、上記実験1の「2.実験方法」に記載のとおり混合、冷凍し、得られた冷凍食品について以下の評価を行った。加熱は、冷凍食品を冷凍状態のまま皿にのせ、ラップをかけて600Wの電子レンジで2分間加熱することにより行った。
【0090】
3.評価・結果
(1)冷凍後のほぐしやすさ、加熱後のドリップ発生の程度
冷凍後の冷凍食品のほぐしやすさ、ならびに、加熱後のドリップの発生の程度について、下記の基準にしたがって、訓練された3名のパネラーがそれぞれ評価した。
【0091】
<ほぐしやすさの評価基準>
〇:冷凍食品を冷凍したまま、手で難なく、ほぐすことができる
△:冷凍食品を冷凍したまま、手で難なく、ほぐすことができるが、一部に硬化して手ではほぐせない部分がある
×:冷凍食品が硬化しており、手ではほぐすことができない
【0092】
<加熱後のドリップ発生の評価基準>
〇:冷凍食品の加熱後に発生したドリップの量が少ない(ドリップの量が12g以下)
△:冷凍食品の加熱後に発生したドリップの量がやや多い(ドリップの量が14g未満)
×:冷凍食品の加熱後に発生したドリップの量が多い(ドリップの量が14g以上)
(評価結果)
【0093】
【表6】
【0094】
冷凍食品のほぐしやすさについて、極度硬化油脂の配合量の違いに起因して、大きな差は認められなかった。
【0095】
極度硬化油脂の配合量が2質量%の調味料組成物を用いた場合には、冷凍野菜と混合した際にビニール袋の底に、油脂が溜まっているのが確認されたが、凍結後の冷凍食品のほぐしやすさへ大きく影響をもたらすものではなかった。これは、冷凍野菜と金属製のボウルで混合した際に、必要最低限の油脂が、冷凍野菜の表面に付着したものと考えられる。実際、極度硬化油脂の配合量が2質量%の調味料組成物では、凍結後の冷凍食品において、油脂をまとっていない部分が所々で見受けられ、その部分同士が固まって凍結していることが確認されたが、そのような箇所は部分的であったため、冷凍食品を手でほぐすことに問題はなかった。
【0096】
一方、極度硬化油脂の配合量が3質量%、4質量%、及び6質量%の調味料組成物を用いた場合には、冷凍後の冷凍野菜は、難なくほぐすことができた。また、冷凍野菜と混合した際にビニール袋の底への油脂溜まりも認められなかった。
【0097】
冷凍食品の加熱後のドリップ発生の程度については、極度硬化油脂の配合量の違いに起因して、大きな差が認められた。
【0098】
極度硬化油脂の配合量が2質量%の調味料組成物を用いた場合には、凍結後の冷凍食品をレンジ加熱すると、大量のドリップが発生した。一方、極度硬化油脂の配合量が3質量%、4質量%、及び6質量%の調味料組成物を用いた場合には、当該レンジ加熱後に発生するドリップの量を大きく低減することができた。
【0099】
実験3:冷凍食材用調味料組成物が油系か水系かの違いによる影響
1.冷凍食材用調味料組成物の調製
下記表7の組成にしたがって、各成分を混合して、油脂及び水の配合量が異なる、粘性付与ありの各冷凍食材用調味料組成物を調製した。
【0100】
なお、表中の各成分の量は、得られた調味料組成物の量を100質量%とする、「質量%」の量にて示される。
【0101】
【表7】
【0102】
2.評価・結果
(1)均一性、滑らかさ
調製直後の各種冷凍食材用調味料組成物について、その均一性及び滑らかさの様子を、常温において下記の基準にしたがって目視により、訓練された3名のパネラーが評価した。
【0103】
<均一性の評価基準>
〇:水又は油脂の分離が認められない
×:水又は油脂の分離が確認される
<滑らかさの評価基準>
〇:滑らかなペースト状である
×:滑らかでなくペースト状でない
<均一性、滑らかさの評価結果>
【0104】
【表8】
【0105】
【表9】
【0106】
水の配合量が15質量%以上となると、水と油脂が分離してしまい均一性が保てず、安定したペースト状態を保てないことが分かった。
【0107】
一方、油脂の量を減らしていくと15質量%以下となったところで滑らかさが失われ、ぼそぼそとした物性になることが確認された。このぼそぼそした状態でムラなく野菜などの食材に付着させることは難しく、上記所望の特性を有する、すなわち、ほぐれやすく、風味及び味の付き具合が良好な冷凍食品を得ることは容易ではないことが示唆される。
【0108】
実験4:冷凍食材用調味料組成物の粘性付与手段の違いによる影響
1.冷凍食材用調味料組成物の調製
下記表10の組成にしたがって、各成分を混合して、粘性付与手段が異なる、粘性付与ありの各冷凍食材用調味料組成物を調製した。油系増粘剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル(TAISET AD(太陽化学株式会社))を用いた。
【0109】
なお、表中の各成分の量は、得られた調味料組成物の量を100質量%とする、「質量%」の量にて示される。
【0110】
【表10】
【0111】
2.実験方法
各調味料組成物(5g)と冷凍野菜(50g)とを、上記実験1の「2.実験方法」に記載のとおり混合、冷凍し、得られた冷凍食品について、訓練された3名のパネラーが以下の評価を行った。加熱は、冷凍食品を冷凍状態のまま皿にのせ、ラップをかけて600Wの電子レンジで2分間加熱することにより行った。
【0112】
3.評価・結果
(1)風味のばらつき
冷凍食品を実際に加熱し、食して、冷凍食品における各冷凍食材用調味料組成物による風味のばらつきを上記実験1の「3.評価・結果」に記載のとおり評価した。
【0113】
<風味のばらつきの評価結果>
【0114】
【表11】
【0115】
粘性付与手段として、ラードを用いた場合、油系増粘剤を用いた場合、ラード及び油系増粘剤を用いた場合、いずれの粘性付与手段でも所定の粘性を付与することができるため、調味料組成物(食塩)が沈降せずバラつきの無い風味になり、製造される冷凍食品の品質を、均一に安定して保つことができることが示唆された。
【0116】
(2)冷凍後のほぐしやすさ、加熱後のドリップ発生の程度
冷凍後の冷凍食品のほぐしやすさ、ならびに、加熱後のドリップの発生の程度について、上記実験2の「3.評価・結果」に記載のとおりそれぞれ評価した。
<ほぐしさすさ、ドリップ発生の評価結果>
【0117】
【表12】
【0118】
冷凍食品のほぐしやすさについて、粘性付与手段の違いに起因して、大きな差は認められなかった。
【0119】
冷凍食品の加熱後のドリップ発生の程度についても、粘性付与手段の違いに起因して、大きな差は認められなかった。このことから、いずれの粘性付与手段でもむらなく野菜表面に冷凍食材用調味料組成物が付着し、付着後も均一に野菜表面にコーティングされている状態を維持できていたためであることが示唆された。
【0120】
以上の結果より、冷凍食材用調味料組成物であって、前記組成物100質量%に対して15質量%超の油脂と15質量%未満~0質量%以上の水、及び調味料とを含み、25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が120mPa・s超である、冷凍食材用調味料組成物を用いることによって、冷凍により完全に硬化することなく、手で容易にほぐすことができ、また、電子レンジ等で加熱処理した場合に、冷凍された食品特有のいやな臭いや、ドリップの発生を低減し、味や品質の低下等を抑制することが可能な冷凍食品が得られることが確認された。