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特許7524406半導体装置の製造方法、プログラム、基板処理装置および基板処理方法
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  • 特許-半導体装置の製造方法、プログラム、基板処理装置および基板処理方法 図1
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  • 特許-半導体装置の製造方法、プログラム、基板処理装置および基板処理方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、プログラム、基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20240722BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/31 B
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023082022
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2020196816の分割
【原出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2023101578
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】花島 建夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 和宏
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-160704(JP,A)
【文献】国際公開第2019/186637(WO,A1)
【文献】特開2019-050246(JP,A)
【文献】特開2010-090413(JP,A)
【文献】特開2014-168070(JP,A)
【文献】特開2014-208883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
H01L 21/31
H01L 21/316
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面に凹部が設けられた基板に原料ガス供給ラインから原料ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に反応ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
(a)では、前記基板に対して前記原料ガスを複数回に分割して供給し、最初に前記原料ガスを供給する際は、2回目以降の前記原料ガスの供給時の分圧よりも高い分圧で供給し、最初に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間を、2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間よりも短くし、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記基板が配置される空間内を排気する基板処理方法。
【請求項2】
前記原料ガスとして、少なくとも、未結合手を複数有する第1中間体、および、未結合手を1つ有するか未結合手を有さない第2中間体を、前記空間内にて発生させるガスを用い、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記原料ガス供給ラインに設けられた貯留部内に予め充填し、充填する前記原料ガスの量を、前記基板の表面全域に前記第1中間体を吸着させるのに必要となる量以上の量とする
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記サイクルを2回以上行い、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記原料ガス供給ラインに設けられた貯留部内に予め充填し、充填する前記原料ガスの量を、前記サイクル毎に一定な量とする
請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記原料ガスとして、少なくとも、未結合手を複数有する第1中間体、および、未結合手を1つ有するか未結合手を有さない第2中間体を、前記空間内にて発生させるガスを用い、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記空間内の圧力を、前記基板の表面全域に前記第1中間体を吸着させるのに必要となる圧力以上の所定の圧力とする
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
(a)では、前記空間内の圧力が所定の圧力に到達した後、前記空間内への前記原料ガスの供給を終了し、前記空間内の排気を開始する
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記空間内の雰囲気を排気する排気系を全閉とした状態で、前記空間内へ前記原料ガスを供給する
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記空間内の雰囲気を排気する排気系を全開とした状態で、前記空間内へ前記原料ガスを供給する
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記空間内の雰囲気を排気する排気系を、全開と全閉との間の状態にする
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(a)では、2回目以降に前記原料ガスを供給する際に、前記原料ガスを、前記原料ガス供給ラインに設けられた貯留部内に予め充填することなく前記空間内へ供給する
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(a)表面に凹部が設けられた基板に原料ガス供給ラインから原料ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に反応ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
(a)では、
前記空間内へ前記原料ガスを供給する工程と、前記空間内を排気する工程と、を交互に複数回繰り返し、
初に前記原料ガスを供給する際は、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記基板が配置される空間内を排気し、
2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給を、前記原料ガスの前記基板への吸着が飽和状態に達する前に終了し、
前記空間内を排気する工程のうち、最後に前記空間内を排気する工程の実施時間を最も長くする
基板処理方法。
【請求項11】
前記原料ガスとして、少なくとも、未結合手を複数有する第1中間体、および、未結合手を1つ有するか未結合手を有さない第2中間体を、前記空間内にて発生させるガスを用いる
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記原料ガス供給ラインに設けられた貯留部内に予め充填し、
前記サイクルを2回以上行い、
2回目以降のサイクルでは、前記貯留部内への前記原料ガスの充填を、(b)における前記反応ガスの供給と並行して行う
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記原料ガス供給ラインに設けられた貯留部内に予め充填し、
前記サイクルを2回以上行い、
2回目以降のサイクルでは、前記貯留部内への前記原料ガスの充填を、前記(a)における最後の前記原料ガスの供給後であって、前記(b)における前記反応ガスの供給前に開始する
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
(a)では、前記空間内を排気する工程のうち、最後に前記空間内を排気する工程を行う際に、前記空間内へ不活性ガスを供給する
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項15】
(a)表面に凹部が設けられた基板に原料ガス供給ラインから原料ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に反応ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
(a)では、前記基板に対して前記原料ガスを複数回に分割して供給し、最初に前記原料ガスを供給する際は、2回目以降の前記原料ガスの供給時の分圧よりも高い分圧で供給し、最初に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間を、2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間よりも短くし、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記基板が配置される空間内を排気する半導体装置の製造方法。
【請求項16】
(a)表面に凹部が設けられた基板に原料ガス供給ラインから原料ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に反応ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
(a)では、
前記空間内へ前記原料ガスを供給する工程と、前記空間内を排気する工程と、を交互に複数回繰り返し、
初に前記原料ガスを供給する際は、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記基板が配置される空間内を排気し、
2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給を、前記原料ガスの前記基板への吸着が飽和状態に達する前に終了し、
前記空間内を排気する工程のうち、最後に前記空間内を排気する工程の実施時間を最も長くする
半導体装置の製造方法。
【請求項17】
(a)表面に凹部が設けられた基板に原料ガス供給ラインから原料ガスを供給させる手順と、
(b)前記基板に反応ガスを供給させる手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成させる手順を有し、
(a)では、前記基板に対して前記原料ガスを複数回に分割して供給し、最初に前記原料ガスを供給する際は、2回目以降の前記原料ガスの供給時の分圧よりも高い分圧で供給し、最初に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間を、2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間よりも短くし、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記基板が配置される空間内を排気させる手順を
コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項18】
(a)表面に凹部が設けられた基板に原料ガス供給ラインから原料ガスを供給させる手順と、
(b)前記基板に反応ガスを供給させる手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成させる手順を有し、
(a)では、
前記空間内へ前記原料ガスを供給する手順と、前記空間内を排気する手順と、を交互に複数回繰り返し、
初に前記原料ガスを供給する際は、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記基板が配置される空間内を排気し、
2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給を、前記原料ガスの前記基板への吸着が飽和状態に達する前に終了させ
前記空間内を排気する手順のうち、最後に前記空間内を排気する手順の実施時間を最も長くする手順を
コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項19】
基板に対して原料ガスを供給する原料ガス供給ラインと、
前記基板に対して反応ガスを供給する反応ガス供給ラインと、
前記基板が配置される空間内を排気する排気系と、
(a)表面に凹部が設けられた基板に前記原料ガスを供給する処理と、(b)前記基板に前記反応ガスを供給する処理と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する処理を行わせ、(a)では、前記基板に対して前記原料ガスを複数回に分割して供給し、最初に前記原料ガスを供給する際は、2回目以降の前記原料ガスの供給時の分圧よりも高い分圧で供給し、最初に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間を、2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間よりも短くし、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記空間内を排気するように、前記原料ガス供給ライン、前記反応ガス供給ラインおよび前記排気系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項20】
基板に対して原料ガスを供給する原料ガス供給ラインと、
前記基板に対して反応ガスを供給する反応ガス供給ラインと、
前記基板が配置される空間内を排気する排気系と、
(a)表面に凹部が設けられた基板に前記原料ガスを供給する処理と、
(b)前記基板に前記反応ガスを供給する処理と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する処理を行わせ、
(a)では、
前記空間内へ前記原料ガスを供給する処理と、前記空間内を排気する処理と、を交互に複数回繰り返し、
初に前記原料ガスを供給する際は、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記空間内を排気し、
2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給を、前記原料ガスの前記基板への吸着が飽和状態に達する前に終了し、
前記空間内を排気する処理のうち、最後に前記空間内を排気する処理の実施時間を最も長くするように、
前記原料ガス供給ライン、前記反応ガス供給ラインおよび前記排気系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、プログラム、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板に対して原料ガスや反応ガスを供給し、基板上に膜を形成する基板処理工程が行われる場合がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-208883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上に形成される膜の段差被覆性(ステップカバレッジ)や基板面内膜厚均一性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)表面に凹部が設けられた基板が収容された処理室内へ原料ガス供給ラインから原料ガスを供給する工程と、
(b)前記基板が収容された前記処理室内へ反応ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
(a)では、前記基板に対して前記原料ガスを複数回に分割して供給し、最初に前記原料ガスを供給する際は、前記原料ガスを、前記原料ガス供給ラインに設けられた貯留部内に予め充填してから前記処理室内へ供給し、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記処理室内を排気する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成される膜の段差被覆性や基板面内膜厚均一性を向上させることが可能な技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
図4図4は、本開示の一態様における成膜シーケンスを示すフロー図であり、原料ガス、反応ガス、および不活性ガスの供給タイミングとAPCバルブ244の開閉状態と原料ガス分圧の推移を示す図である。
図5図5(a)は、本開示の一態様における成膜シーケンスのステップAの初期段階において、凹部内に初期層が形成された後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図5(b)は、本開示の一態様における成膜シーケンスのステップAにおいて、凹部内に第1層が形成された後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249b,249cのそれぞれは、ノズル249aに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232aには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、開閉弁である第1バルブとしてのバルブ243a、ガスを一時的に貯留することが可能なように構成された貯留部(ガス溜り)240a、第2バルブとしてのバルブ242a、および第3バルブとしてのバルブ247aが設けられている。ガス供給管232aのバルブ247aよりも下流側には、ガス供給管232dが接続されている。ガス供給管232dには、ガス流の上流側から順に、MFC241dおよびバルブ243dが設けられている。ガス供給管232a,232dおよび貯留部240aは、例えばSUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
貯留部240aは、例えば、通常の配管よりもガス容量の大きなガスタンク又は螺旋配管として構成されている。貯留部240aよりも上流側のバルブ243aおよび下流側のバルブ242aを開閉することにより、ガス供給管232aから供給されるガスの貯留部240a内への充填や、貯留部240a内に充填したガスの処理室201内への供給を行うことができるように構成されている。貯留部240aと処理室201との間のコンダクタンスは、例えば1.5×10-3/s以上になるように構成することが好ましい。また、処理室201の容積と貯留部240aの容積との比として考えると、処理室201の容積が100L(リットル)の場合においては、貯留部240aの容積は例えば100~300ccとすることが好ましく、処理室201の容積の例えば1/1000~3/1000倍の大きさとすることが好ましい。
【0014】
バルブ242a,247aを閉じ、バルブ243aを開くことにより、MFC241aで流量調整されたガスを、貯留部240a内に充填することができる。貯留部240a内に所定量のガスが充填され、貯留部240a内の圧力が所定の圧力に到達したら、バルブ243aを閉じ、バルブ242a,247aを開くことにより、貯留部240a内に充填された高圧のガスを、ガス供給管232aおよびノズル249aを介して処理室201内に一気に(短時間で)供給(フラッシュ供給)することができる。なお、フラッシュ供給の際には、バルブ243aは開いていてもよい。
【0015】
ガス供給管232b,232cには、ガス流の上流側から順に、MFC241b,241cおよび開閉弁であるバルブ243b,243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232eが接続されている。ガス供給管232eには、ガス流の上流側から順に、MFC241eおよびバルブ243eが設けられている。ガス供給管232b,241c,232eは、例えばSUS等の金属材料により構成されている。
【0016】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249aは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249b,249cは、ノズル249aと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249aとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249bと反対側に設けられているということもできる。ノズル249b,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0017】
ガス供給管232aからは、原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、貯留部240a、バルブ242a,247a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
ガス供給管232bからは、反応ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。なお、反応ガスは、原料ガスとは分子構造(化学構造)が異なる物質である。
【0019】
ガス供給管232d,232eからは、不活性ガスが、それぞれMFC241d,241e、バルブ243d,243e、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。また、ガス供給管232cからは、不活性ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0020】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243a,242a,247a、貯留部240aにより、原料ガス供給系(原料ガス供給ライン)が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応ガス供給系(反応ガス供給ライン)が構成される。主に、ガス供給管232c~232e、MFC241c~241e、バルブ243c~243eにより、不活性ガス供給系(不活性ガス供給ライン)が構成される。なお、原料ガス供給ラインは、バルブ247aを設けない構成としても良い。
【0021】
なお、原料ガスおよび反応ガスのそれぞれ或いは両方を、成膜ガスとも称し、原料ガス供給系および反応ガス供給系のそれぞれ或いは両方を、成膜ガス供給系(成膜ガス供給ライン)とも称する。
【0022】
上述の各種ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系は、バルブ243a,242a,247a,243b~243e、貯留部240a、MFC241a~241e等が集積された、集積型ガス供給システム248として構成されていてもよい。集積型ガス供給システム248は、ガス供給管232a~232eのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232e内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a,242a,247a,243b~243eの開閉動作やMFC241a~241eによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型ガス供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232e等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型ガス供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0023】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231は、例えばSUS等の金属材料により構成されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0024】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、例えばSUS等の金属材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0025】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0026】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0027】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0029】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241e、バルブ243a,242a,247a,243b~243e、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241eによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a,242a,247a,バルブ243b~243eの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0033】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200に対し処理を行うシーケンス例、すなわち、ウエハ200上に膜を形成する成膜シーケンス例について、主に、図4を用いて説明する。なお、本態様では、ウエハ200として、その表面にトレンチやホール等の凹部が設けられたシリコン基板(シリコンウエハ)を用いる例について説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御することが可能なように構成される。
【0034】
本態様における成膜シーケンスでは、
表面に凹部が設けられたウエハ200が収容された処理室201内へ原料ガス供給ラインから原料ガスを供給するステップAと、
ウエハ200が収容された処理室201内へ反応ガスを供給するステップBと、
を含むサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上に膜を形成する。
【0035】
なお、本態様における成膜シーケンスでは、
ステップAにおいて、ウエハ200に対して原料ガスを複数回(m回、mは2以上の整数)に分割して供給し、最初に原料ガスを供給する際は、原料ガスを、原料ガス供給ラインに設けられた貯留部240a内に予め充填してから処理室201内へ供給し、2回目以降の原料ガスの供給前に、処理室201内を排気する。なお、図4は、一例として、ステップAにおいて、ウエハ200に対して原料ガスを3回に分割して断続的に供給する場合(m=3とする場合)を示している。
【0036】
本明細書では、上述の成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様の説明においても、同様の表記を用いる。
【0037】
(原料ガス×m→反応ガス)×n
【0038】
なお、図4に示すように、ステップAと、ステップBと、を交互にn回(nは1以上の整数)行う際、それらの間に処理室201内をパージするステップを挟むようにすることが好ましい。また、図4に示すように、原料ガスをm回(mは1以上の整数)に分割して間欠供給する際、1回目~m-1回目に原料ガスを供給した後は、処理室201内をパージするステップは行わず、排気のみで処理室201内に残留するガス等を排除することが好ましい。この場合の成膜シーケンスは、以下のように示すことができる。なお、ここで、「パージ」とは、処理室201内に不活性ガスを供給することによる処理室201内に存在する原料ガスや中間体の除去を意味する。「排気」は、処理室201内に不活性ガスを供給することなく処理室201内に存在する原料ガスや中間体を除去することを意味する。また、「排気」における「不活性ガスを供給することなく」は、パージガスを供給しないことを意味し、キャリアガスの供給や、微小な不活性ガスの供給は行われていても良い。
【0039】
[(原料ガス→排気)×(m-1)→原料ガス→パージ→反応ガス→パージ]×n
【0040】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0041】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)された後、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0042】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0043】
(成膜処理)
その後、以下のステップA,Bを順次行う。
【0044】
[ステップA]
本ステップでは、処理室201内のウエハ200に対して原料ガスを複数回に分割して供給する。具体的には、処理室201内へ原料ガスを供給するステップa1と、処理室201内を排気するステップa2と、を交互に複数回(m回、mは2以上の整数)繰り返す。
【0045】
最初のステップa1の前においては、バルブ242a,247aは閉じた状態にして、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、貯留部240a内に供給される。これにより、貯留部240a内に原料ガスが充填される。貯留部240a内に、所定量の原料ガスが充填されたら、バルブ243aを閉じ、貯留部240a内に原料ガスが充填された状態を維持する。
【0046】
最初のステップa1においては、バルブ247a,242aを、この順に、或いは、同時に開き、貯留部240a内に充填された高圧の原料ガスを処理室201内へ一気に流す。これにより、ウエハ200に対して、原料ガスが一気に供給されることとなる(原料ガスのフラッシュ供給)。フラッシュ供給においては、貯留部240a内と処理室201内との圧力差により、ノズル249aから処理室201内へ噴出される原料ガスは例えば音速(340m/sec)程度にまで加速され、ウエハ200上における原料ガスの速度も数十m/sec程度に達することとなる。図4に示すように、フラッシュ供給の供給時間は、後述する2回目以降のステップa1における非フラッシュ供給の供給時間よりも短くすることが好ましい。なお、このとき、バルブ243aは開けておく。このとき、バルブ243c~243eを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して、処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。また、図4に示すように、本ステップは、排気系を実質的に全閉(APCバルブ244を実質的に全閉)の状態として実施することが好ましい。ここで実質的に閉塞(実質的に全閉)とは、APCバルブ244が0.1~数%程度空いている状態や、APCバルブ244の性能上、100%閉めるように制御したとしても、排気系に、排気されてしまう状態を含む。
【0047】
最初のステップa1の後であって、2回目以降のステップa1の前においては、バルブ243a,242a,247aを閉じた状態とする。このようにバルブを閉じておくことにより、貯留部240a内に、原料ガスが供給されない様にする。
【0048】
2回目以降のステップa1においては、バルブ243a,242a,247aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、バルブ243a、貯留部240a、バルブ242a、バルブ247a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。これにより、ウエハ200に対して原料ガスが供給されることとなる(原料ガスの非フラッシュ供給)。このように、本ステップでは、貯留部240a内に予め充填することなく、原料ガスを処理室201内へ供給することが好ましい。この場合、ウエハ200上における原料ガスの速度も、フラッシュ供給の場合よりも小さなものとなる。このとき、バルブ243c~243eを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して、処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。なお、2回目以降のステップa1は、処理室201内が所定の圧力になるよう、APCバルブ244を全閉の状態とするのではなく、例えば、全開と全閉との間の状態として実施する。
【0049】
ステップa2においては、バルブ243a,242a,247aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。そして、APCバルブ244を例えば全開として、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。なお、図4に示すように、複数回行うステップa2のうち、最後のステップa2においては、処理室201内へ不活性ガスを供給して、処理室201内を不活性ガスでパージする(パージ)ことが好ましい。図4に示すように、複数回行うステップa2のうち、最後にステップa2を行う際の実施時間を最も長くすることが好ましい。また、複数回行うステップa2のうち、最後のステップa2において、処理室201内へ供給する不活性ガスの流量を、他のステップa2において供給する不活性ガスの流量よりも大きくすることが好ましい。
【0050】
原料ガスとして、例えば、後述するクロロシランガスを用いる場合、後述する処理条件下でステップa1,a2を交互に所定回数繰り返し、ウエハ200に対してクロロシランガスを複数回に分割して供給することにより、下地としてのウエハ200の最表面上に、第1層として、所定の厚さの塩素(Cl)を含むシリコン(Si)含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、ウエハ200の最表面への、クロロシランガスの分子の物理吸着や化学吸着、クロロシランガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着、クロロシランガスの熱分解によるSiの堆積等により形成される。Clを含むSi含有層は、クロロシランガスの分子やクロロシランガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSiの堆積層であってもよい。ウエハ200の最表面に上述の化学吸着層や上述の堆積層が形成される場合、ウエハ200の最表面には、クロロシランガスに含まれるSiが吸着することとなる。本明細書では、Clを含むSi含有層を、単に、Si含有層とも称する。
【0051】
原料ガスとしては、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのSiを含むシラン系ガスを用いることができる。シラン系ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲンを含むガス、すなわち、ハロシランガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシランガスとしては、例えば、SiおよびClを含むクロロシランガスを用いることができる。
【0052】
原料ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシランガス(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等のクロロシランガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0053】
原料ガスとしては、クロロシランガスの他、例えば、テトラフルオロシラン(SiF)ガス、ジフルオロシラン(SiH)ガス等のフルオロシランガスや、テトラブロモシラン(SiBr)ガス、ジブロモシラン(SiHBr)ガス等のブロモシランガスや、テトラヨードシラン(SiI)ガス、ジヨードシラン(SiH)ガス等のヨードシランガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0054】
原料ガスとしては、これらの他、例えば、Siおよびアミノ基を含むガス、すなわち、アミノシランガスを用いることもできる。アミノ基とは、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンから水素(H)を除去した1価の官能基のことであり、-NH,-NHR,-NRのように表すことができる。なお、Rはアルキル基を示し、-NRの2つのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0055】
原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH[N(C]、略称:DIPAS)ガス等のアミノシランガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0056】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることがでる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0057】
[ステップB]
ステップAが終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層としてのSi含有層に対して反応ガスを供給する。
【0058】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ反応ガスを流す。反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して反応ガスが供給される(反応ガス供給)。このとき、バルブ243c~243eを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。なお、以下に示すいくつかの方法においては、処理室201内への不活性ガスの供給を不実施とするようにしてもよい。
【0059】
反応ガスとして、例えば、後述する窒化ガスを用いる場合、後述する処理条件下でウエハ200に対して窒化ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が窒化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、第2層として、Si含有層が窒化されてなる層、すなわち、SiおよびNを含む層として、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。SiN層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、窒化ガスによるSi含有層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiN層は、ステップAで形成されたSi含有層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0060】
第2層としてのSiN層が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への窒化ガスの供給を停止する。そして、ステップAにおけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0061】
反応ガスとしては、例えば、窒化ガス(窒化剤)である窒素(N)及び水素(H)含有ガスを用いることができる。N及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、H含有ガスでもある。N及びH含有ガスは、N-H結合を有することが好ましい。
【0062】
反応ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0063】
反応ガスとしては、これらの他、例えば、窒素(N)、炭素(C)及び水素(H)含有
ガスを用いることもできる。N,C及びH含有ガスとしては、例えば、アミン系ガスや有
機ヒドラジン系ガスを用いることができる。N,C及びH含有ガスは、N含有ガスでもあ
り、C含有ガスでもあり、H含有ガスでもあり、N及びC含有ガスでもある。
【0064】
反応ガスとしては、例えば、モノエチルアミン(CNH、略称:MEA)ガス、ジエチルアミン((CNH、略称:DEA)ガス、トリエチルアミン((CN、略称:TEA)ガス等のエチルアミン系ガスや、モノメチルアミン(CHNH、略称:MMA)ガス、ジメチルアミン((CHNH、略称:DMA)ガス、トリメチルアミン((CHN、略称:TMA)ガス等のメチルアミン系ガスや、モノメチルヒドラジン((CH)HN、略称:MMH)ガス、ジメチルヒドラジン((CH、略称:DMH)ガス、トリメチルヒドラジン((CH(CH)H、略称:TMH)ガス等の有機ヒドラジン系ガス等を用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0065】
[所定回数実施]
上述のステップA,Bを含むサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面上に、膜として、例えば、シリコン窒化膜(SiN膜)を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiN層を積層することで形成されるSiN膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。このとき、ステップAでは、貯留部240a内に予め充填する原料ガスの量を、サイクル毎に一定な量とすることが好ましい。また、2回目以降のサイクルでは、ステップAにおける貯留部240a内への原料ガスの充填を、1サイクル前のステップBにおける反応ガスの供給と並行して行うことが好ましい。なお、反応ガスとして、N,C及びH含有ガスを用いる場合、第2層として、例えば、シリコン炭窒化層(SiCN層)を形成することもでき、上述のサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200の表面上に、膜として、例えば、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成することもできる。
【0066】
以下に、原料ガスとして、例えば、クロロシランガスを用い、反応ガスとして、例えば、N及びH含有ガスを用いる場合の上述の各ステップにおける処理条件を例示する。なお、本明細書における「1~100Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~100Pa」とは「1Pa以上100Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。
【0067】
ステップAにおいて1回目にステップa1を行う際の処理条件としては、
クロロシランガス供給流量:1~5000sccm、好ましくは100~5000sc
cm
クロロシランガス供給継続時間:0.1~20秒、好ましくは0.5~5秒
不活性ガス供給流量:0~30000sccm、好ましくは500~20000sccm
処理温度:250~800℃、好ましくは600~700℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは1~1333Pa
クロロシランガス分圧:0.00005~3999Pa、好ましくは0.06~1333Pa
が例示される。
【0068】
ステップAにおいて2回目以降にステップa1を行う際の処理条件としては、
クロロシランガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは10~1000sccm
クロロシランガス供給継続時間:5~40秒、好ましくは10~30秒
不活性ガス供給流量:0~20000sccm、好ましくは500~10000sccm
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは67~1333Pa
クロロシランガス分圧:0.00005~2666Pa、好ましくは0.06~899Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップAにおいて1回目のステップa1を行う際の処理条件と同様な処理条件とすることができる。
【0069】
ステップAにおいて1回目~m-1回目にステップa2を行う際の処理条件としては、
不活性ガス供給流量:1000~20000sccm
不活性ガス供給継続時間:1~20秒、好ましくは1~10秒
が例示される。他の処理条件は、ステップAにおいて1回目のステップa1を行う際の処理条件と同様な処理条件とすることができる。
【0070】
ステップAにおいて最後(m回目)にステップa2を行う際の処理条件としては、
不活性ガス供給流量:1000~30000sccm
不活性ガス供給継続時間:1~60秒、好ましくは1~10秒
が例示される。他の処理条件は、ステップAにおいて1回目のステップa1を行う際の処理条件と同様な処理条件とすることができる。
【0071】
なお、ステップAにおいて最後(m回目)にステップa2を行う際は、処理室201内への不活性ガスの供給と、処理室201内への不活性ガスの供給を停止した状態での処理室201内の排気と、を複数回繰り返すようにしてもよい。すなわち、ステップAにおいて最後(m回目)にステップa2を行う際は、サイクルパージを行うようにしてもよい。
【0072】
ステップBにおける処理条件としては、
N及びH含有ガス供給流量:1~20000sccm、好ましくは1000~10000sccm
N及びH含有ガス供給継続時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量:0~20000sccm、好ましくは500~10000sccm
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~30000Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップAにおいて1回目のステップa1を行う際の処理条件と同様とすることができる。
【0073】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上への所望の厚さの膜の形成が完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれから、パージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0074】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0075】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0076】
(a)ステップAでは、ウエハ200に対して原料ガスを複数回に分割して供給し、最初に原料ガスを供給する際は、原料ガスを、原料ガス供給ラインに設けられた貯留部240a内に予め充填してから処理室201内へ供給し、2回目以降の原料ガスの供給前に処理室201内を排気する。これにより、ウエハ200上に形成される膜の段差被覆性や基板面内膜厚均一性を向上させることが可能となる。
【0077】
というのも、原料ガスは、加熱された処理室201内へ供給された後に分解し、様々な中間体を発生させることとなる。例えば、原料ガスが分解することにより、未結合手を複数有する第1中間体(原料ガスがHCDSガスである場合には例えばSiCl2)や、未結合手を1つ有するか未結合手を有さない第2中間体(原料ガスがHCDSガスである場合には例えばSiCl4)等が発生することとなる。そして、これらの中間体が、ウエハ200の表面へと供給されることとなる。
【0078】
ここで、第1中間体は、未結合手を複数有することから、未結合手を1つ有するか未結合手を有さない第2中間体に比べて、ウエハ200の表面に吸着しやすい特性、すなわち、ウエハ200の表面への吸着反応に要する時間が短いという特性を有している。また、未結合手を複数有する第1中間体は、ウエハ200の表面に吸着した後、ウエハ200の表面に未結合手を残すことができ、その後のウエハ200の表面への中間体等のさらなる吸着を阻害しにくい、という特性を有している。
【0079】
これに対し、第2中間体は、未結合手の数が少なく、或いは、未結合手を有さないことから、未結合手を複数有する第1中間体に比べて、ウエハ200の表面に吸着しにくい特性、すなわち、第1中間体に比べてウエハ200の表面への吸着反応に要する時間が長いという特性を有している。また、未結合手を複数有さない第2中間体は、ウエハ200の表面に吸着した後、ウエハ200の表面に未結合手を残すことが難しく、その後のウエハ200の表面へのさらなる中間体等の吸着を阻害しやすい、という特性を有している。
【0080】
これら第1中間体と第2中間体の特性から、ウエハ200の表面には、第1中間体が優先して吸着するが、第1中間体の量が不足した場合に、第2中間体がウエハ200に吸着してしまい、その後の第1中間体の吸着が抑制される。この結果、ウエハ200の表面全域にわたり、第1中間体を均一に吸着させることができなくなる。また、凹凸が形成されたウエハ200に対して処理する場合には、凹部内の表面における初期吸着サイトの全域にわたり、均一に、第1中間体を吸着できなくなる。すなわち、ステップカバレッジ悪化の要因となる。
【0081】
なお、この様な中間体は、処理温度で分解する材料であれば、生じ得る。例えば、上述した原料ガスの材料であれば、生じる可能性がある。特に、ハロゲンを含有するガスであれば、同様の現象が生じ得る。具体的には、HCDSの他には、MCS、DCS、TCS、STC、OCTSがある。
【0082】
ここで、ステップAでは、ウエハ200に対して原料ガスを複数回に分割して供給し、最初に原料ガスを供給する際は、原料ガスを、原料ガス供給ラインに設けられた貯留部240a内に予め充填してから処理室201内へ供給している。すなわち、大量の原料ガスをごく短時間で一気に供給(フラッシュ供給)している。この場合、原料ガスを貯留部240a内に予め充填することなく処理室201内へ供給する場合(非フラッシュ供給)に比べ、ウエハ200の表面へ、第1中間体を多量に供給することが可能となる。結果として、ウエハ200の表面全域にわたり、第1中間体を均一に吸着させることが可能となる。このように、原料ガス供給初期に、凹部内の最表面における初期吸着サイトの全域にわたり、均一に、第1中間体を吸着させることが可能となる。これにより、図5(a)に示すように、凹部内の最表面に、初期層として、凹部内の全域にわたり均一な厚さを有するSi含有層、すなわち、高い段差被覆性を有するSi含有層を形成することが可能となる。この層は、連続層となることもあり、不連続層となることもある。いずれの場合においても、高い段差被覆性を有する層となる。
【0083】
また、本態様のように、2回目以降の原料ガスの供給前に処理室201内を排気することにより、原料ガスが供給されることで処理室201内にて発生した第2中間体を、ウエハ200の表面へ吸着する前に処理室201外へと排出し、ウエハ200の表面へ吸着することを抑制することが可能となる。結果として、図5(b)に示すように、ウエハ200の表面に設けられた凹部内の全域にわたり均一でコンフォーマルな第1層(Si含有層)を形成することが可能となる。
【0084】
これらの結果、基板上に形成される膜の段差被覆性や基板面内膜厚均一性を向上させる
ことが可能となる。
【0085】
(b)ステップAでは、最初に原料ガスを供給する際に、貯留部240a内に予め充填する原料ガスの量を、ウエハ200の表面全域に第1中間体を吸着させるのに必要となる量以上の量とすることが好ましい。これにより、ウエハ200の表面全域にわたり第1中間体を均一に吸着させ、また、ウエハ200の表面への第2中間体の吸着を抑制することが可能となる。これらの結果、ウエハ200上に形成される膜の段差被覆性や基板面内膜厚均一性を向上させることが可能となる。
【0086】
(c)ステップAでは、貯留部240a内に予め充填する原料ガスの量を、サイクル毎に一定な量とする。これにより、1サイクルあたりにウエハ200上に形成される膜の厚さ、すなわち、サイクルレートを、均一にすることが可能となる。これにより、ウエハ200上に形成される膜の厚さの制御性等を向上させることが可能となる。
【0087】
(d)ステップAでは、最初に原料ガスを供給する際に、処理室201内の圧力を、ウエハ200の表面全域に第1中間体を吸着させるのに必要となる圧力以上の大きさ(所定の圧力)、とすることが好ましい。これにより、ウエハ200の表面全域にわたり第1中間体を均一に吸着させ、また、ウエハ200の表面への第2中間体の吸着を抑制することが可能となる。これらの結果、ウエハ200上に形成される膜の段差被覆性や基板面内膜厚均一性を向上させることが可能となる。
【0088】
(e)ステップAでは、最初に原料ガスを供給する際に、処理室201内の圧力が、上述した所定の圧力に到達した後、処理室201内への原料ガスの供給を終了し、処理室201内の排気を開始することが好ましい。これにより、処理室201内の圧力が比較的高い圧力の状態の時間を短くすることができ、ウエハ200の表面への第2中間体の吸着を抑制することが可能となる。この結果、ウエハ200上に形成される膜の段差被覆性や基板面内膜厚均一性を向上させることが可能となる。
【0089】
(f)ステップAでは、最初に原料ガスを供給する際における原料ガスの供給時間を、2回目以降に原料ガスを供給する際における原料ガスの供給時間よりも短くなっている。これにより、ウエハ200の表面への第2中間体の吸着を抑制することが可能となる。この結果、ウエハ200上に形成される膜の段差被覆性や基板面内膜厚均一性を向上させることが可能となる。
【0090】
(g)ステップAでは、最初に原料ガスを供給する際に、処理室201内の雰囲気を排気する排気系を実質的に閉塞した状態、すなわち、排気系を実質的に全閉とした状態で、処理室201内へ原料ガスを供給する。これにより、処理室201内の圧力を速やかに高め、ウエハ200の表面全域に第1中間体を吸着させるのに必要となる所定の圧力へと短時間で上昇させることが可能となる。これにより、サイクルタイムを短縮させ、成膜処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0091】
(h)ステップAでは、2回目以降に原料ガスを供給する際に、原料ガスを、貯留部240a内に予め充填することなく処理室201内へ供給(非フラッシュ供給)する。これにより、2回目以降の原料ガスの供給において、貯留部240a内への原料ガスの充填が不要となる。これにより、原料ガスを供給するたびに貯留部240a内への原料ガスの充填を行う場合に比べて、原料ガスの充填に伴う待ち時間を減らすことができ、結果として、サイクルタイムを短縮させ、成膜処理の生産性を向上させることが可能となる。また、最初に原料ガスを供給する際に貯留された原料ガスが、貯留部240a内に滞留することを抑制することができる。結果として、貯留部240a内でのパーティクルの発生を抑制することが可能となる。例えば最初に原料ガスを供給する際に貯留された原料ガスが、貯留部240a内に残り続けた場合、原料ガスが分解,凝集、等により、パーティクルが発生する可能性がある。2回目以降に原料ガスを供給する際に、貯留部240a内に、充填しないことで、原料ガスが、貯留部240a内で滞留することを抑制することが可能となる。
【0092】
(i)ステップAでは、2回目以降に原料ガスを供給する際における原料ガスの供給を、原料ガスのウエハ200への吸着が飽和状態に達する前に終了することが好ましい。これにより、ウエハ200の表面への第2中間体の吸着を抑制し、ウエハ200の表面に未結合手を残すことが可能となる。これにより、その後のウエハ200の表面への中間体等のさらなる吸着を阻害しないようにすることができ、ウエハ200上に形成される膜の段差被覆性や基板面内膜厚均一性の低下等を回避することが可能となる。
【0093】
なお、2回目以降に原料ガスを供給する際において、原料ガスの供給を、原料ガスのウエハ200への吸着が飽和状態に達するまで継続すると、ウエハ200の表面に第2中間体が吸着する等し、ウエハ200の表面に未結合手を残すことが難しくなる。その結果、その後のウエハ200の表面へのさらなる中間体等の吸着が阻害され、これにより、ウエハ200上に形成される膜の段差被覆性や基板面内膜厚均一性が低下する場合がある。
【0094】
(j)2回目以降のサイクルでは、ステップAにおける貯留部240a内への原料ガスの充填を、ステップBと並行して行う。このようにすることで、貯留部240a内への原料ガスの充填を、ステップBと非並行で行う場合に比べて、サイクルタイムを短縮させ、成膜処理の生産性を向上させることが可能となる。なお、1回目のサイクルにおいて、貯留部240a内への原料ガスの充填を、成膜処理を開始する前、例えば、上述の圧力調整および温度調整の実施中に並行して行うことによっても、同様の効果が得られる。
【0095】
(k)ステップAでは、処理室201内へ原料ガスを供給するステップa1と、処理室201内を排気するステップa2と、を交互に複数回繰り返すことにより、処理室201内にて発生した第2中間体やパーティクル等を、ウエハ200の表面へ吸着する前に処理室201外へと排出することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成される膜の段差被覆性、基板面内膜厚均一性、膜質をそれぞれ向上させることが可能となる。
【0096】
(l)ステップAでは、処理室201内を排気するステップa2のうち、最後(m回目)にステップa2を行う際に、処理室201内へ不活性ガスを供給する。これにより、ステップBにおいて反応ガスを供給する前に処理室201内から未分解の原料ガス等を確実に排出させ、処理室201内におけるパーティクルの発生を確実に抑制することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成される膜の膜質を向上させることが可能となる。なお、図4に示すように、複数のステップa2の全てで不活性ガスを流す場合は、最後にステップa2を行う際の不活性ガスの流量を最も大きくすることによって、上述の効果を確実に得ることが可能となる。
【0097】
なお、ステップAでは、処理室201内を排気するステップa2のうち、1回目~m-1回目にステップa2を行う際に、処理室201内へ不活性ガスを供給せず、排気のみで処理室201内に残留するガス等を排除する。これにより、2回目~m回目のステップa1で供給される原料ガスのウエハ200への吸着、特にウエハ200の凹部への吸着が、不活性ガスにより阻害されることを抑制することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成される膜の膜質を向上させることが可能となる。また、ステップa1で供給した原料ガスの排気が、不活性ガスで阻害されることを抑制することができる。即ち、ステップa1で供給した原料ガスが分解する等で生じた中間体の内、第2中間体が、ウエハ200に吸着する可能性を低減することができる。結果として、ウエハ200上に形成される膜の膜質を向上させることが可能となる。特に、ステップa2のうち1回目のステップa2の際に、処理室201内へ不活性ガスを供給せず、排気のみで処理室201内に残留するガス等を排除することが好ましい。
【0098】
(m)ステップAでは、処理室201内を排気するステップa2のうち、最後にステップa2を行う際の実施時間を最も長くしている。これにより、ステップBにおいて反応ガスを供給する前に処理室201内から未分解の原料ガス等を確実に排出させ、処理室201内におけるパーティクルの発生を確実に抑制することが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成される膜の膜質を向上させることが可能となる。
【0099】
(n)貯留部240a内への原料ガスを充填する際には、高圧となる箇所でパーティクルが発生する可能性がある。バルブ243a,242a,247aを上述のように設け、貯留部240a内への原料ガスの充填を、バルブ243aを開き、バルブ242aを閉じた状態で行うことにより、バルブ247aでのパーティクルの発生を抑制すること、すなわち、パーティクルの発生箇所を処理室から遠ざけることが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成される膜の膜質を向上させることが可能となる。
【0100】
また、貯留部240a内に充填された原料ガスの処理室201内への供給を、バルブ247aを開いた状態で、バルブ242aを開くことで行うことにより、バルブ247aでのパーティクルの発生を抑制すること、すなわち、パーティクルの発生箇所を処理室から遠ざけることが可能となる。
【0101】
ステップAでは、例えば、図4に示すように、最初のステップa1における原料ガスの分圧を、2回目以降のステップa1における原料ガスの分圧よりも高くなっている。これにより、最初のステップa1では、大量の原料ガスがフラッシュ供給されるので、2回目以降のステップa1における非フラッシュ供給に比べ、ウエハ200の表面へ、第1中間体を多量に供給することが可能となる。結果として、ウエハ200の表面全域にわたり、第1中間体を均一に吸着させることが可能となる。
【0102】
(o)上述の効果は、上述の各種原料ガス、上述の反応ガス、上述の各種不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。ただし、上述の効果は、原料ガスとしてハロシランガスを用いる場合に、顕著に得られることになる。また、上述の効果は、原料ガスとしてクロロシランガスを用いる場合に、特に顕著に得られることになる。
【0103】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0104】
上述の態様では、ステップAにおいて、最初に原料ガスを供給する際に、処理室201内の雰囲気を排気する排気系を全閉とした状態で、処理室201内へ原料ガスを供給する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、ステップAでは、最初に原料ガスを供給する際に、処理室201内の雰囲気を排気する排気系を全開とした状態で、処理室201内へ原料ガスを供給してもよい。これにより、処理室201内の圧力が過剰に上昇することを回避し、原料ガスの凝集・分解等によるパーティクルの発生を抑制することができ、ウエハ200上に形成される膜の膜質を向上させることが可能となる。また、原料ガスの供給を停止した後の処理室201内の排気時間を短縮させることができ、成膜処理の生産性を向上させることが可能となる。また、例えば、ステップAでは、最初に原料ガスを供給する際に、処理室201内の雰囲気を排気する排気系に設けられたAPCバルブ244の弁開度を、全開と全閉との間の状態にしてもよい。具体的には、開度が0.1%~99.9%であって、好ましくは約50%~80%の開度である。これにより、処理室201内の雰囲気を排気する排気系を、全開と全閉との間の状態にすることもできる。これにより、排気系を全閉とした場合の上述の効果と、排気系を全開とした場合の上述の効果と、をバランスよく得ることができる。
【0105】
また、上述の態様では、図4に示すように、原料ガスをm回(mは1以上の整数)に分割して間欠供給する際、1回目~m-1回目に原料ガスを供給した後は、処理室201内をパージするステップは行わず、排気のみで処理室201内に残留するガス等を排除する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、原料ガスをm回(mは1以上の整数)に分割して間欠供給する際、1回目~m-1回目に原料ガスを供給した後は、処理室201内に不活性ガスを供給して、パージするステップを行う様にしても良い。この場合の成膜シーケンスは、以下のように示すことができる。
【0106】
[(原料ガス→パージ)×(m-1)→原料ガス→パージ→反応ガス→パージ]×n
【0107】
また、例えば、原料ガスを例えば、原料ガスをm回(mは1以上の整数)に分割して間欠供給する際、1回目~m-1回目に原料ガスを供給した後は、処理室201を排気した後に、不活性ガスを供給して、パージするステップを行う様にしても良い。この場合の成膜シーケンスは、以下の様に示すことができる。
【0108】
[(原料ガス→排気→パージ)×(m-1)→原料ガス→パージ→反応ガス→パージ]×n
【0109】
また、ステップAにおける最後のa2で、排気とパージを組み合わせて行っても良い。
この場合の成膜シーケンスは、以下の様に示すことができる。
【0110】
[(原料ガス→排気→パージ)×(m-1)→原料ガス→排気→パージ→反応ガス→パージ]×n
【0111】
なお、1回目~m-1回目に原料ガスを供給した後は、上述の態様の成膜シーケンスのステップAの様に行っても良い。即ち、原料ガスの供給の後に、排気とパージのいずれか、または、両方を行っても良い。
【0112】
また、ステップBで反応ガスを供給した後に、排気とパージを組み合わせて行っても良い。この場合の成膜シーケンスは、例えば、以下の様に示すことができる。
【0113】
[(原料ガス→パージ)×(m-1)→原料ガス→パージ→反応ガス→排気→パージ]×n
なお、ステップAは、上述の態様の成膜シーケンスのステップAの様に行っても良い。即ち、原料ガスの供給の後に、排気とパージのいずれか、または、両方を行っても良い。
【0114】
また、上述の態様では、2回目以降のサイクルでは、ステップAにおける貯留部240a内への原料ガスの充填を、ステップBと並行して行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、2回目以降のサイクルでは、貯留部240a内への原料ガスの充填を、ステップAにおける最後の原料ガスの供給後であって、ステップBにおける反応ガスの供給前に開始することがより好ましい。このようにすることで、サイクルタイムをさらに短縮させ、成膜処理の生産性をさらに向上させることが可能となる。
【0115】
また、上述の態様では、原料ガスとして、例えば、クロロシランガスを例に挙げて説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む原料ガスを用い、上述の成膜シーケンスにより、基板上に、アルミニウム窒化膜(AlN膜)、チタン窒化膜(TiN膜)、ハフニウム窒化膜(HfN膜)、ジルコニウム窒化膜(ZrN膜)、タンタル窒化膜(TaN膜)、モリブデン窒化膜(MoN)、タングステン窒化膜(WN)、アルミニウム酸化膜(AlO膜)、チタン酸化膜(TiO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、ジルコニウム酸化膜(ZrO膜)、タンタル酸化膜(TaO膜)、モリブデン酸化膜(MoO)、タングステン酸化膜(WO)、チタン酸窒化膜(TiON膜)、チタンアルミニウム炭窒化膜(TiAlCN膜)、チタンアルミニウム炭化膜(TiAlC膜)、チタン炭窒化膜(TiCN膜)等の金属元素を含む膜を形成する場合にも、本開示を適用することができる。これらの場合においても、上述の態様で述べた効果のうち、少なくとも一部の効果が得られる。
【0116】
また、上述の態様では、反応ガスとして、例えば、N及びH含有ガスを例に挙げて説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、エチレン(C)ガス、アセチレン(C)ガス、プロピレン(C)ガス等の炭素(C)含有ガスや、ジボラン(B)ガス、トリクロロボラン(BCl)ガス等の硼素(B)含有ガスや、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、プラズマ励起されたOガス(O )、O2ガス+水素(H)ガス、水蒸気(HOガス)、過酸化水素(H)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス等の酸素(O)含有ガス等を用いることができる。なお、本明細書において「Oガス+Hガス」というような2つのガスの併記記載は、HガスとOガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。これらの場合においても、上述の態様で述べた効果のうち、少なくとも一部の効果が得られる。
【0117】
また、上述の態様では、基板処理においてウエハ200上にSiN膜、SiCN膜が形成される場合を例示した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。SiN膜やSiCN膜の他、例えば、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)等のSiを含む膜を形成する場合にも、本開示を適用することができる。これらの場合においても、上述の態様で述べた効果のうち、少なくとも一部の効果が得られる。
【0118】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0119】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0120】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0121】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例における処理手順、処理条件と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0122】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例における処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0123】
<本開示の好ましい態様>
以下に、本開示の好ましい態様について付記する。
【0124】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)表面に凹部が設けられた基板が収容された処理室内へ原料ガス供給ラインから原料ガスを供給する工程と、
(b)前記基板が収容された前記処理室内へ反応ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に膜を形成する工程を有し、
(a)では、前記基板に対して前記原料ガスを複数回に分割して供給し、最初に前記原料ガスを供給する際は、前記原料ガスを、前記原料ガス供給ラインに設けられた貯留部内に予め充填してから前記処理室内へ供給し、2回目以降の前記原料ガスの供給前に、前記処理室内を排気する半導体装置の製造方法が提供される。
【0125】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
前記原料ガスとして、少なくとも、未結合手を複数有する第1中間体、および、未結合手を1つ有するか未結合手を有さない第2中間体を、前記処理室内にて発生させるガスを用い、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記貯留部内に予め充填する前記原料ガスの量を、前記基板の表面全域に前記第1中間体を吸着させるのに必要となる量以上の量とする。
【0126】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、
前記サイクルを2回以上行い、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記貯留部内に予め充填する前記原料ガスの量を、前記サイクル毎に一定な量とする。
【0127】
(付記4)
付記1から3のいずれかに記載の方法であって、
前記原料ガスとして、少なくとも、未結合手を複数有する第1中間体、および、未結合手を1つ有するか未結合手を有さない第2中間体を、前記処理室内にて発生させるガスを用い、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記処理室内の圧力を、前記基板の表面全域に前記第1中間体を吸着させるのに必要となる圧力以上の所定の圧力とする。
【0128】
(付記5)
付記1から4のいずれかに記載の方法であって、
(a)では、前記処理室内の圧力が前記所定の圧力に到達した後、前記処理室内への前記原料ガスの供給を終了し、前記処理室内の排気を開始する。
【0129】
(付記6)
付記1から5のいずれかに記載の方法であって、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間を、2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給時間よりも、短くする。
【0130】
(付記7)
付記1から6のいずれかに記載の方法であって、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記処理室内の雰囲気を排気する排気系を全閉とした状態で、前記処理室内へ前記原料ガスを供給する。
【0131】
(付記8)
付記1から6のいずれかに記載の方法であって、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記処理室内の雰囲気を排気する排気系を全開とした状態で、前記処理室内へ前記原料ガスを供給する。
【0132】
(付記9)
付記1から6のいずれかに記載の方法であって、
(a)では、最初に前記原料ガスを供給する際に、前記処理室内の雰囲気を排気する排気系を、全開と全閉との間の状態にする。
【0133】
(付記10)
付記1から9のいずれかに記載の方法であって、
(a)では、2回目以降に前記原料ガスを供給する際に、前記原料ガスを、前記貯留部内に予め充填することなく前記処理室内へ供給する。
【0134】
(付記11)
付記1から10のいずれかに記載の方法であって、
(a)では、2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給を、前記原料ガスの前記基板への吸着が飽和状態に達する前に終了する。
【0135】
好ましくは、前記原料ガスとして、少なくとも、未結合手を複数有する第1中間体、および、未結合手を1つ有するか未結合手を有さない第2中間体を、前記処理室内にて発生させるガスを用い、
2回目以降に前記原料ガスを供給する際における前記原料ガスの供給を、前記第1中間体が前記基板へ吸着した後であって、前記第2中間体が前記基板へ吸着する前に終了する。
【0136】
(付記12)
付記1から11のいずれかに記載の方法であって、
前記サイクルを2回以上行い、
2回目以降のサイクルでは、前記貯留部内への前記原料ガスの充填を、(b)における前記反応ガスの供給と並行して行う。
【0137】
(付記13)
付記1から11のいずれかに記載の方法であって、
前記サイクルを2回以上行い、
2回目以降のサイクルでは、前記貯留部内への前記原料ガスの充填を、前記(a)における最後の前記原料ガスの供給後であって、前記(b)における前記反応ガスの供給前に開始する。
【0138】
(付記14)
付記1から13のいずれかに記載の方法であって、
(a)では、前記処理室内へ前記原料ガスを供給する工程と、前記処理室内を排気する工程と、を交互に複数回繰り返す。
【0139】
(付記15)
付記14に記載の半導体装置の製造方法であって、
(a)では、前記処理室内を排気する工程のうち、最後に前記処理室内を排気する工程を行う際に、前記処理室内へ不活性ガスを供給する。
【0140】
(付記16)
付記14または15に記載の半導体装置の製造方法であって、
(a)では、前記処理室内を排気する工程のうち、最後に前記処理室内を排気する工程の実施時間を最も長くする。
【0141】
(付記17)
付記1から16のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記原料ガス供給ラインには、前記貯留部よりもガス流の上流側に第1バルブが、前記貯留部よりもガス流の下流部側(処理室に近い側)に第2バルブが、前記第2バルブよりもガス流の下流側であって前記処理室の近傍には第3バルブが設けられており、
前記貯留部内への前記原料ガスの充填は、前記第1バルブを開き、前記第2バルブを閉じた状態で行い、
前記貯留部内に充填された前記原料ガスの前記処理室内への供給は、前記第3バルブを開いた状態で、前記第2バルブを開くことで行う。
【0142】
(付記18)
本開示の他の態様によれば、
付記1における各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0143】
(付記19)
本開示の更に他の態様によれば、
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対して原料ガスを供給する原料ガス供給ラインと、
前記原料ガス供給ラインに設けられ、前記原料ガスを貯留する貯留部と、
前記処理室内の基板に対して反応ガスを供給する反応ガス供給ラインと、
付記1における各処理(各工程)を行わせるように、前記原料ガス供給ラインおよび前記反応ガス供給ラインを制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0144】
200 ウエハ(基板)
201 処理室
240a 貯留部
図1
図2
図3
図4
図5