(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】食鳥腿肉脱骨装置及び食鳥腿肉脱骨方法
(51)【国際特許分類】
A22C 21/00 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
(21)【出願番号】P 2023522769
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2022046406
(87)【国際公開番号】W WO2023120419
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2021206463
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】増渕 健
(72)【発明者】
【氏名】岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】桜井 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 徳幸
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255471(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163148(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01053684(EP,A1)
【文献】特表2013-507101(JP,A)
【文献】国際公開第2012/056793(WO,A1)
【文献】特開2002-10732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉における大腿骨の膝関節側まで肉部の引き剥がしが行われた前記食鳥腿肉に対し、前記大腿骨から前記肉部の分離を行う食鳥腿肉脱骨装置であって、
前記食鳥腿肉の足首を保持する足首保持部と、
前記食鳥腿肉の前記肉部の引き剥がし前の状態において、前記足首保持部よりも大腿骨側で、
前記食鳥腿肉の膝関節よりも前記足首保持部寄りから股関節側の切断部に至る間を測定する腿肉測定部と、
前記大腿骨の前記膝関節側と前記肉部との間で、前記大腿骨を前記大腿骨の延在方向と交差する方向から挟み込むセパレータと、
前記セパレータが挟み込んだ状態を維持したままで前記足首保持部及び前記セパレータの少なくとも一方を他方に対して離間するように移動させ、前記セパレータを前記大腿骨の股関節側における端部まで前記大腿骨に沿って相対的に移動させる移動部と、
前記腿肉測定部による測定結果に基づいて、前記移動部による前記セパレータの前記大腿骨に対する移動量を決定する制御部と、
前記大腿骨の前記端部
を通過し、前記大腿骨から前記肉部を切り離すカッターと、
を備える
食鳥腿肉脱骨装置。
【請求項2】
前記足首保持部は、前記食鳥腿肉を懸吊し、
前記移動部は、前記大腿骨に対して前記セパレータを下方に移動させる
請求項1に記載の食鳥腿肉脱骨装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記セパレータに対して前記足首保持部のみを移動させることにより、前記大腿骨に対して前記セパレータを移動させる
請求項1又は請求項2に記載の食鳥腿肉脱骨装置。
【請求項4】
前記食鳥腿肉の前記大腿骨における前記膝関節側の付け根を、前記付け根との相対位置を変化させることなく保持する補助クランプを備える
請求項1又は請求項2に記載の食鳥腿肉脱骨装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記補助クランプを移動させるときに前記足首保持部と同期して移動させる
請求項4に記載の食鳥腿肉脱骨装置。
【請求項6】
前記カッターは、前記大腿骨の延在方向と交差する方向に移動可能に保持されており、
前記カッターは、前記大腿骨の大腿骨頭とは反対側から前記大腿骨頭側に向かって移動することにより、前記大腿骨から前記肉部を切り離す
請求項1又は請求項2に記載の食鳥腿肉脱骨装置。
【請求項7】
前記セパレータは、
固定セパレータと、
前記固定セパレータに接近、離間可能に設けられた可動セパレータと、
を備え、
前記可動セパレータは、前記大腿骨の前記端部を乗り上げる際にかかる荷重によって、前記固定セパレータから離間可能に設けられており、
前記食鳥腿肉を前記固定セパレータ側から前記可動セパレータ側に向かって押し出すプッシャ本体を有する骨押しプッシャを備え、
前記プッシャ本体は、前記固定セパレータにおける前記足首保持部とは反対側に前記固定セパレータと並んで配置されており、
前記骨押しプッシャは、前記プッシャ本体の前面に前記大腿骨の前記端部が移動したタイミングで前記可動セパレータに向かって前記プッシャ本体を押し出す
請求項1又は請求項2に記載の食鳥腿肉脱骨装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記腿肉測定部の測定結果に基づいて前記プッシャ本体の前面に前記大腿骨の前記端部が移動するタイミングを算出し、
前記骨押しプッシャは、前記制御部の算出結果に基づいて前記プッシャ本体を押し出す
請求項7に記載の食鳥腿肉脱骨装置。
【請求項9】
食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉における大腿骨の膝関節側まで肉部の引き剥がしが行われた前記食鳥腿肉に対し、前記大腿骨から前記肉部の分離を行う食鳥腿肉脱骨方法であって、
足首保持部を用いて前記食鳥腿肉の足首を保持する足首保持工程と、
前記食鳥腿肉の前記肉部の引き剥がし前の状態において、前記足首保持部よりも大腿骨側で、
前記食鳥腿肉の膝関節よりも前記足首保持部寄りから股関節側の切断部に至る間を測定する測定工程と、
前記大腿骨の前記膝関節側と前記肉部との間で、前記大腿骨を前記大腿骨の延在方向と交差する方向からセパレータを挟み込むセパレータ挟み込み工程と、
前記セパレータが挟み込んだ状態を維持したままで前記足首保持部及び前記セパレータの少なくとも一方を他方に対して移動させ、前記セパレータを前記大腿骨の股関節側における端部まで前記大腿骨に沿って相対的に移動させる移動工程と、
前記移動工程の後、
前記大腿骨の前記端部
にカッターを通過させ、前記大腿骨から前記肉部を切り離す切り離し工程と、
を有し、
前記移動工程において、前記測定工程による測定結果に基づいて、前記セパレータの前記大腿骨に対する移動量を決定する
食鳥腿肉脱骨方法。
【請求項10】
前記足首保持工程において、前記食鳥腿肉を懸吊し、
前記移動工程において、前記足首保持部を引き上げることにより、前記セパレータを前記大腿骨の前記端部まで前記大腿骨に沿って移動させる
請求項9に記載の食鳥腿肉脱骨方法。
【請求項11】
前記食鳥腿肉の前記大腿骨における前記膝関節側の付け根を、前記付け根との相対位置を変化させることなく保持する補助クランプを備え、
前記移動工程において、前記補助クランプの移動時に、前記補助クランプは前記足首保持部と同期して移動する
請求項10に記載の食鳥腿肉脱骨方法。
【請求項12】
前記切り離し工程において、前記セパレータによって前記大腿骨の大腿骨頭側から前記肉部を前記膝関節とは反対側に向かって引っ張った状態で前記肉部を切り離す
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の食鳥腿肉脱骨方法。
【請求項13】
前記セパレータは、
固定セパレータと、
前記固定セパレータに接近、離間可能に設けられた可動セパレータと、
を備え、
前記可動セパレータは、前記大腿骨の前記端部を乗り上げる際にかかる荷重によって、前記固定セパレータから離間する可能に設けられており、
前記移動工程において、前記大腿骨の前記端部が前記セパレータを通過する直前に、前記大腿骨の前記端部を前記固定セパレータ側から前記可動セパレータ側へと押し出す押し出し工程を有する
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の食鳥腿肉脱骨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食鳥腿肉脱骨装置及び食鳥腿肉脱骨方法に関する。
本願は、2021年12月20日に、日本に出願された特願2021-206463号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉(以下、単に食鳥腿肉と称する)を、自動で脱骨する装置(腿肉分離装置;以下、食鳥腿肉脱骨装置と称する)が知られている。このものは、装置に食鳥腿肉をセットした後、複数の作業ステーションと称する工程を段階的に実施する。複数の作業ステーションとしては、順に食鳥腿肉への筋入れ、食鳥腿肉の足首周りの肉をカット、食鳥腿肉の関節まで肉部を引き剥がし、関節筋、膝軟骨をカットがある。この後のステーションとして、大腿骨から肉部を引き剥がして脱骨し、残った骨を排出する。
【0003】
ステーションでは、具体的に大腿骨の股関節側の端部(大腿骨頭側の端部)まで肉部を引き剥がす。股関節側の端部で大腿骨から肉部を切り離すことにより、食鳥腿肉の脱骨を完了する。以下、大腿骨の股関節側の端部を単に大腿骨頭側の端部という場合がある。
食鳥腿肉脱骨装置には、各ステーションに対応した複数の装置が設けられている。ステーションの装置としては、脱骨歩留まりを向上させるためのさまざまな装置が提案されている。
【0004】
例えば、ステーションの装置として、昇降可能の補助クランプ(膝関節上下把持部)と、固定セパレータと可動セパレータとよりなるセパレータ(ミートセパレータ)と、腿肉引き剥がし終了位置検出センサと、大腿骨と肉部とを切り離すカッター(筋切断カッター)と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
このものは、腿肉引き剥がし終了位置検出センサにより可動セパレータの動作を検出する。検出したタイミングで大腿骨に対する肉部の引き剥がし作業を終了したと判断する。肉部と可動セパレータとの相対移動を停止しした後、カッターにより大腿骨と肉部とを切り離す。
【0005】
ステーションの装置として、足首保持部(クランパ)と、足首保持部の走行ラインの上流側より下流側に向け開放端をそれぞれ足首保持部の走行方向に向け配設した溝付きY型誘導ガイドと、カッター付きY型誘導ガイドと、を備えたものがある(例えば、特許文献2参照)。
このものは、Y型誘導ガイドの開放端に食鳥腿肉が導入され、食鳥腿肉が足首保持部の走行方向に向け進行するにつれ、Y型誘導ガイドによって大腿骨頭側の端部と肉部とが互いに引き離れる方向へと移行する。この後、カッター付きY型誘導ガイドのカッターによって、大腿骨と肉部とが切り離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特許第4190705号公報
【文献】日本国特許第4367952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、食鳥屠体は、鶏種、日令、農場の飼育方法の違い等により食鳥腿肉(骨)の大きさが異なる。しかしながら上述の特許文献1にあっては、可動セパレータの動作を検出することでカッターの切断位置を判断することになる。このため、大腿骨の長さを認識する精度にバラつきがある。したがって、カッターによって大腿骨頭側の端部を切断してしまう場合がある。この衝撃でカッターの刃が欠けたりする等、装置の故障が多くなる可能性があった。食鳥腿肉に合わせてセパレータや補助クランプの組み付け位置調整を行いづらく、組み付け作業性が悪いという課題があった。
【0008】
上述の特許文献2にあっては、ガイドに引きずられる肉部の姿勢を適正に維持しにくい。このため、肉部のカッターによる切断抵抗によって、肉部が足首保持部の走行方向後方に押し戻されるような形になって所望の位置で大腿骨と肉部とを切り離すことが困難である。結果的に大腿骨側に残肉が多く残って脱骨歩留まりが低下するという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、装置の故障発生を抑えるとともに装置の組み付け性を向上でき、かつ脱骨歩留まりを向上できる食鳥腿肉脱骨装置及び食鳥腿肉脱骨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る食鳥腿肉脱骨装置は、食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉における大腿骨の膝関節側まで肉部の引き剥がしが行われた前記食鳥腿肉に対し、前記大腿骨から前記肉部の分離を行う食鳥腿肉脱骨装置であって、前記食鳥腿肉の足首を保持する足首保持部と、前記食鳥腿肉の前記肉部の引き剥がし前の状態において、前記足首保持部よりも大腿骨側で、前記食鳥腿肉の膝関節よりも前記足首保持部寄りから股関節側の切断部に至る間を測定する腿肉測定部と、前記大腿骨の前記膝関節側と前記肉部との間で、前記大腿骨を前記大腿骨の延在方向と交差する方向から挟み込むセパレータと、前記セパレータが挟み込んだ状態を維持したままで前記足首保持部及び前記セパレータの少なくとも一方を他方に対して離間するように移動させ、前記セパレータを前記大腿骨の股関節側における端部まで前記大腿骨に沿って相対的に移動させる移動部と、前記腿肉測定部による測定結果に基づいて、前記移動部による前記セパレータの前記大腿骨に対する移動量を決定する制御部と、前記大腿骨の前記端部を通過し、前記大腿骨から前記肉部を切り離すカッターと、を備える。
【0011】
このように、腿肉測定部及び制御部によって、大腿骨頭側の端部における位置認識の精度を向上できる。このため、セパレータによって肉部を引き剥がされた大腿骨頭側の端部における際を狙ってカッターを侵入しやすくできる。この際、カッターによって大腿骨頭側の端部を切断してしまう可能性を減少できる。このため、カッターの刃が欠けたりする等を抑制でき、食鳥腿肉脱骨装置の故障の発生を抑制できる。食鳥腿肉に合わせてセパレータの組み付け位置を調整する必要がなくなる。このため、食鳥腿肉脱骨装置の組み付け作業性を向上できる。大腿骨側への残肉を減らしつつ大腿骨から肉部を切り離すことができるので、脱骨歩留まりを向上できる。
【0012】
上記構成において、前記足首保持部は、前記食鳥腿肉を懸吊し、前記移動部は、前記大腿骨に対して前記セパレータを下方に移動させてもよい。
【0013】
このように構成することで、重力を利用して食鳥腿肉の姿勢を制御しやすくできる。食鳥腿肉の姿勢を維持したままセパレータによって大腿骨から肉部を引き剥がしやすくできる。
【0014】
上記構成において、前記移動部は、前記セパレータに対して前記足首保持部のみを移動させることにより、前記大腿骨に対して前記セパレータを移動させてもよい。
【0015】
このように構成することで、足首保持部のみを移動可能に構成すればよいので、食鳥腿肉脱骨装置の構成を簡素化できる。
【0016】
上記構成において、前記食鳥腿肉の前記大腿骨における前記膝関節側の付け根を、前記付け根との相対位置を変化させることなく保持する補助クランプを備えてもよい。
【0017】
このように構成することで、セパレータによる大腿骨からの肉部の引き剥がし荷重によって、脛骨と大腿骨との間が引き延ばされてしまうことを防止できる。このため、セパレータによる大腿骨からの肉部の引き剥がしによって、大腿骨頭側の端部の位置がずれてしまうことを防止できる。
【0018】
上記構成において、前記制御部は、前記補助クランプを移動させるときに前記足首保持部と同期して移動させてもよい。
【0019】
このように構成することで、大腿骨から肉部を引き剥がす際の荷重を足首保持部と補助クランプとに分散させることができる。このため、大腿骨から肉部を引き剥がす際の荷重によって骨が切断されてしまうことを抑制できる。よって、さらに脱骨歩留まりを向上できる。
【0020】
上記構成において、前記カッターは、前記大腿骨の延在方向と交差する方向に移動可能に保持されており、前記カッターは、前記大腿骨の大腿骨頭とは反対側から前記大腿骨頭側に向かって移動することにより、前記大腿骨から前記肉部を切り離してもよい。
【0021】
大腿骨頭側の端部において、大腿骨頭とは反対側は、筋を介して食鳥腿肉が張り付いている。このため、大腿骨頭とは反対側から大腿骨頭側に向けてカッターを移動させることにより、確実に筋を切断できる。すなわち、例えば大腿骨頭側から大腿骨頭とは反対側に向けてカッターを移動させると、筋が外側に逃げて筋を確実に切断しにくい。このため、大腿骨側に残肉が多く残って脱骨歩留まりが低下してしまう。これに対し、大腿骨頭とは反対側から大腿骨頭側に向けてカッターを移動させると、大腿骨が邪魔になって筋が逃げるのが防止され、カッターによって筋を確実に切断できる。このため、脱骨歩留まりを向上できる。
【0022】
上記構成において、前記セパレータは、固定セパレータと、前記固定セパレータに接近、離間可能に設けられた可動セパレータと、を備え、前記可動セパレータは、前記大腿骨の前記端部を乗り上げる際にかかる荷重によって、前記固定セパレータから離間可能に設けられており、前記食鳥腿肉を前記固定セパレータ側から前記可動セパレータ側に向かって押し出すプッシャ本体を有する骨押しプッシャを備え、前記プッシャ本体は、前記固定セパレータにおける前記足首保持部とは反対側に前記固定セパレータと並んで配置されており、前記骨押しプッシャは、前記プッシャ本体の前面に前記大腿骨の前記端部が移動したタイミングで前記可動セパレータに向かって前記プッシャ本体を押し出してもよい。
【0023】
セパレータによって肉部を引き剥がすにあたり、足首保持部に対してセパレータを移動させると、最終的にセパレータは、大腿骨頭側の端部を乗り上げる形になる。この際、セパレータに大腿骨頭側の端部が引っ掛かってしまう可能性があった。このため、セパレータによって大腿骨頭側の端部が削ぎ落されるように損傷してしまう可能性があった。
そこで、骨押しプッシャを設けることにより、セパレータが大腿骨頭側の端部を乗り上げる直前にこの端部を固定セパレータから離間させる。これにより、固定セパレータによって大腿骨頭側の端部が削ぎ落されるようなことを防止できる。可動セパレータは、大腿骨頭側の端部を乗り上げる際にかかる荷重によって、固定セパレータから離間可能に設けられている。このため、可動セパレータによって大腿骨頭側の端部が削ぎ落されるようなことを防止できる。よって、切り離した肉部に骨の欠片等が付着してしまうことを防止でき、切り離した肉部の品質を向上できる。
【0024】
上記構成において、前記制御部は、前記腿肉測定部の測定結果に基づいて前記プッシャ本体の前面に前記大腿骨の前記端部が移動するタイミングを算出し、前記骨押しプッシャは、前記制御部の算出結果に基づいて前記プッシャ本体を押し出してもよい。
【0025】
このように構成することで、骨押しプッシャ用に別途センサを設けることなく、腿肉測定部の測定結果を利用してプッシャ本体の前面に大腿骨頭側の端部が移動したか否かを判断できる。このため、高精度に骨押しプッシャの駆動制御を行うことができる。
【0026】
本発明に係る食鳥腿肉脱骨方法は、食鳥屠体の大腿骨から切断された骨付きの食鳥腿肉における大腿骨の膝関節側まで肉部の引き剥がしが行われた前記食鳥腿肉に対し、前記大腿骨から前記肉部の分離を行う食鳥腿肉脱骨方法であって、足首保持部を用いて前記食鳥腿肉の足首を保持する足首保持工程と、前記食鳥腿肉の前記肉部の引き剥がし前の状態において、前記足首保持部よりも大腿骨側で、前記食鳥腿肉の膝関節よりも前記足首保持部寄りから股関節側の切断部に至る間を測定する測定工程と、前記大腿骨の前記膝関節側と前記肉部との間で、前記大腿骨を前記大腿骨の延在方向と交差する方向からセパレータを挟み込むセパレータ挟み込み工程と、前記セパレータが挟み込んだ状態を維持したままで前記足首保持部及び前記セパレータの少なくとも一方を他方に対して移動させ、前記セパレータを前記大腿骨の股関節側における端部まで前記大腿骨に沿って相対的に移動させる移動工程と、前記移動工程の後、前記大腿骨の前記端部にカッターを通過させ、前記大腿骨から前記肉部を切り離す切り離し工程と、を有し、前記移動工程において、前記測定工程による測定結果に基づいて、前記セパレータの前記大腿骨に対する移動量を決定する。
【0027】
このように測定工程を経ることにより、大腿骨頭側の端部の位置認識の精度を向上できる。このため、セパレータによって肉部を引き剥がされた大腿骨頭側の端部の際を狙ってカッターを侵入しやすくできる。この際、カッターによって大腿骨頭側の端部を切断してしまう可能性を減少できる。このため、カッターの刃が欠けたりする等を抑制でき、食鳥腿肉脱骨装置の故障の発生を抑制できる。食鳥腿肉に合わせてセパレータの組み付け位置を調整する必要がなくなる。このため、食鳥腿肉脱骨装置の組み付け作業性を向上できる。大腿骨側への残肉を減らしつつ大腿骨から肉部を切り離すことができるので、脱骨歩留まりを向上できる。
【0028】
上記方法では、前記足首保持工程において、前記食鳥腿肉を懸吊し、前記移動工程において、前記足首保持部を引き上げることにより、前記セパレータを前記大腿骨の前記端部まで前記大腿骨に沿って移動させてもよい。
【0029】
このような方法とすることで、重力を利用して食鳥腿肉の姿勢を制御しやすくできる。食鳥腿肉の姿勢を維持したままセパレータによって大腿骨から肉部を引き剥がしやすくできる。
【0030】
上記方法において、前記食鳥腿肉の前記大腿骨における前記膝関節側の付け根を、前記付け根との相対位置を変化させることなく保持する補助クランプを備え、前記移動工程において、前記補助クランプの移動時に、前記補助クランプは前記足首保持部と同期して移動してもよい。
【0031】
このような方法とすることで、セパレータによる大腿骨からの肉部の引き剥がし荷重によって、脛骨と大腿骨との間が引き延ばされてしまうことを防止できる。このため、セパレータによる大腿骨からの肉部の引き剥がしによって、大腿骨頭側の端部の位置がずれてしまうことを防止できる。
【0032】
上記方法では、前記切り離し工程において、前記セパレータによって前記大腿骨の股関節側における端部から前記肉部を前記膝関節とは反対側に向かって引っ張った状態で前記肉部を切り離してもよい。
【0033】
このような方法とすることで、肉部に張力を掛けた状態でカッターによって大腿骨から肉部を切り離すことができる。このため、カッターによって良好に肉部を切断できる。大腿骨側への残肉も極力減少できる。よって、脱骨歩留まりをさらに向上できる。
【0034】
上記方法では、前記切り離し工程において、前記セパレータによって前記大腿骨の大腿骨頭側から前記肉部を前記膝関節とは反対側に向かって引っ張った状態で前記肉部を切り離してもよい。
【0035】
このような方法とすることで、確実に大腿骨から肉部を切り離すことができる。
【0036】
上記方法では、前記制御部は、前記腿肉測定部の測定結果に基づいて前記プッシャ本体の前面に前記大腿骨の前記端部が移動するタイミングを算出し、前記骨押しプッシャは、前記制御部の算出結果に基づいて前記プッシャ本体を押し出してもよい。
【0037】
このような方法とすることで、セパレータが大腿骨頭側の端部を乗り上げる際、大腿骨頭側の端部にセパレータが引っ掛かってしまうようなことを防止できる。このため、セパレータによって大腿骨頭側の端部が削ぎ落されるようなことを防止できる。よって、切り離した肉部に骨の欠片等が付着してしまうことを防止でき、切り離した肉部の品質を向上できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、カッターによって大腿骨頭側の端部を切断してしまう可能性を減少できる。このため、カッターの刃が欠けたりする等を抑制でき、食鳥腿肉脱骨装置の故障の発生を抑制できる。食鳥腿肉に合わせてセパレータの組み付け位置を調整する必要がなくなる。このため、食鳥腿肉脱骨装置の組み付け作業性を向上できる。大腿骨側への残肉を減らしつつ大腿骨から肉部を切り離すことができるので、脱骨歩留まりを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態における分離装置の拡大斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態における腿肉測定部の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態における分離ステーションに食鳥腿肉が搬送された直後の状態を示す分離装置の斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態におけるセパレータが挟み込み位置にある状態を示す分離装置の斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態におけるセパレータが挟み込み位置にあり、補助クランプがクランプ開位置にある状態を示す分離装置の斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態における足首保持部及び補助クランプを引き上げた状態を示す分離装置の斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態におけるカッターユニットが前進位置にある状態を示す分離装置の斜視図である。
【
図9】本発明の変形例における分離装置の一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0041】
<自動脱骨装置>
図1は、分離装置1の拡大斜視図である。
分離装置1は、食鳥腿肉M(
図4参照)から自動で骨を脱骨する自動脱骨装置110内に設けられる。自動脱骨装置110は、分離装置1の他に、自動脱骨装置110の駆動制御を総括的に行う制御部130を備える。以下、図示しないフロア上に自動脱骨装置110を載置した状態での上下方向を単に上下方向、水平方向を単に水平方向と称する。
【0042】
図1に示すように、自動脱骨装置110には、例えば水平方向の中央に設けられたセンター支柱114の周囲に周方向に沿って、複数の作業ステーションが設定されている。複数の作業ステーションとは、食鳥腿肉に、段階的に加工を施す工程ごとに設定された作業スペースである。例えば、自動脱骨装置110では、装置に食鳥腿肉を投入するステーション、投入された食鳥腿肉に筋入れを施すステーション(以下、筋入れステーションと称する)、食鳥腿肉の足首周りの肉をカットするステーション、食鳥腿肉の関節まで肉部を引き剥がすステーション、関節筋、膝軟骨をカットするステーション、大腿骨F(
図4参照)から肉部を引き剥がして脱骨するステーション(以下、分離ステーションと称する)、足首保持部に残った骨を排出するステーションが、これらの順で周方向に設定されている。以下、単に径方向、周方向と称する場合は、センター支柱114の径方向及びセンター支柱114の周方向を称するものとする。
【0043】
各ステーションに、各々の機能を有する装置が設けられている。各ステーションに、順に食鳥腿肉M(
図4参照)が搬送されることにより、食鳥腿肉Mに段階的に加工が施される。分離装置1は、分離ステーションに設けられている。分離装置1の一部の構成は、筋入れステーションに設けられている(詳細は後述する)。自動脱骨装置110には、各装置を駆動させるための動力部120が設けられている。動力部120は、例えば後述する足首保持部2を各ステーションに順に搬送する図示しない回転テーブルを備えていたり、分離装置1の一部を構成(詳細は後述する)したりしている。
図1では、分離装置1以外の他のステーションに設けられた装置の図示を省略している。
【0044】
<分離装置>
分離装置1は、食鳥腿肉Mの足首A(
図4参照)を保持する足首保持部2と、足首保持部2を上下方向に移動させる移動部3と、足首保持部2の下方に設けられたセパレータ4と、足首保持部2とセパレータ4との間に設けられた補助クランプ5と、足首保持部2の径方向外側に設けられたカッターユニット6と、筋入れステーションに設けられた腿肉測定部7と、を備える。移動部3が、動力部120を構成している。
【0045】
<足首保持部>
足首保持部2は、上下方向に延びる円柱状の支持バー11と、支持バー11の下端11aに設けられたハンガー12と、を備える。以下の説明では、分離ステーションに足首保持部2が搬送された状態について説明するものとする。
ハンガー12は、周方向からみて径方向外側が開口されたC字状に形成されている。ハンガー12の上端12aが支持バー11の下端11aに取り付けられている。
【0046】
ハンガー12の上下方向中央から下部に至る間には、二又状の爪部13が形成されている。爪部13の先端13aは、径方向外側を向いた形である。爪部13の先端13aには、ストッパ凸部19が上方に向かって突出して設けられている。このような爪部13に、ストッパ凸部19を乗り越えるようにして食鳥腿肉Mの足首Aを引っ掛ける。これにより、ハンガー12(足首保持部2)に食鳥腿肉Mの足首Aが保持され、ハンガー12に食鳥腿肉Mが懸吊される。ストッパ凸部19は、爪部13から食鳥腿肉Mの足首Aが滑り落ちてしまうことを防止する。
【0047】
ハンガー12の開口とは反対側(径方向内側)の背面12bには、排出機構10が設けられている。排出機構10は、骨を排出するステーションにおいてハンガー12からストッパ凸部19を乗り越えて骨を排出させる。
支持バー11の図示しない上端に、移動部3が着脱可能に連結されている。支持バー11の上端に、図示しない回転テーブルが連結されている。これにより、軸心C1を中心に足首保持部2が周回される。
【0048】
移動部3は、例えば図示しないサーボモータが用いられた電動リニアアクチュエータである。電動リニアアクチュエータは、図示しないスライダが上下方向に移動するように設けられている。分離ステーションに搬送された足首保持部2は、移動部3の例えば図示しないスライダに支持バー11の上端が着脱可能に連結される。これにより、移動部3が駆動されると、足首保持部2が上方に向かって引き上げられる。
【0049】
移動部3による足首保持部2の引き上げ量(請求項における移動量の一例)は、移動部3に設けられた図示しないセンサによって検出される。この検出結果は、信号として制御部130に出力される。制御部130では、腿肉測定部7の検出結果に基づいて、足首保持部2の引き上げ量を決定する。分離ステーションにおける足首保持部2の引き上げ量は、足首保持部2を完全に引き上げた状態において、大腿骨Fにおける大腿骨頭Fh側の端部E(
図4参照)の直下にセパレータ4が位置される量である。制御部130は、決定された引き上げ量と、移動部3からの検出結果とを参照しながら駆動制御を行う。
【0050】
<セパレータ>
セパレータ4は、径方向両側から食鳥腿肉Mの大腿骨Fを挟む。セパレータ4は、センター支柱114の外周面に設けられた固定部14及び可動部15を備える。固定部14は、センター支柱114の外周面に固定された支持バー16と、支持バー16の径方向外側端(先端)に設けられた固定セパレータ17と、を備える。
支持バー16は、丸棒により形成されている。支持バー16は、径方向外側に向かってクランク状に形成されている。すなわち、支持バー16は、センター支柱114の外周面から水平延びた後、下方に向かって屈曲延出され、再び径方向外側に向かって屈曲延出されている。
【0051】
固定セパレータ17は、支持バー16の先端に嵌合固定された円筒状の固定部21と、固定部21の径方向外側端に一体的に設けられた固定セパレータ本体22と、を備える。固定セパレータ本体22は水平方向に延びる板状の部材である。固定セパレータ本体22の径方向外側辺22aには、上下方向からみてV溝状の凹部22bが形成されている。
【0052】
可動部15は、センター支柱114の外周面で、固定部14の支持バー16よりも下方に固定された駆動部23と、駆動部23に連結されたアーム部24と、アーム部24の駆動部23とは反対側端に設けられた可動セパレータ25と、を備える。駆動部23は、センター支柱114にブラケット26を介して固定された防水ケース27と、防水ケース27内に収納されたセパレータアクチュエータ28と、を備える。
【0053】
防水ケース27には、径方向外側面27aに、ガイドプレート27bが設けられている。ガイドプレート27bは、一面の法線方向が上下方向に対して若干斜めに向くように傾斜して配置されている。ガイドプレート27bは、分離ステーションに搬送された食鳥腿肉Mの下部をガイドしており、直接防水ケース27に食鳥腿肉Mが接触しない。
【0054】
セパレータアクチュエータ28は、防水ケース27の周方向外側面27cを介して突出された回転シャフト29と、回転シャフト29を所定角度範囲で回動させる図示しないアクチュエータ本体と、を備える。回転シャフト29に、アーム部24が連結されている。アクチュエータ本体は、例えばエアシリンダと、エアシリンダのロッドに連結されるリンク機構(いずれも図示しない)と、により構成される。リンク機構に、回転シャフト29が連結されている。これにより、エアシリンダを動作させると、回転シャフト29が所定角度範囲で回動される。
【0055】
アーム部24は、回転シャフト29に嵌合固定された円筒状の固定部31と、固定部31の外周面から径方向外側に向かって延びる横アーム32と、横アーム32の径方向外側端に設けられている縦アーム33と、を備える。横アーム32及び縦アーム33は、丸棒により形成されている。横アーム32の径方向外側端には、円環状の連結部32aが一体的に設けられている。この連結部32aに縦アーム33の下端部が挿通されて固定されることにより、横アーム32と縦アーム33とが一体化される。縦アーム33は、上下方向にほぼ沿うように延びている。縦アーム33の上端に、可動セパレータ25が設けられている。
【0056】
可動セパレータ25は、縦アーム33に嵌合固定された円筒状の固定部34と、固定部34の上端に一体的に設けられた可動セパレータ本体35と、を備える。可動セパレータ本体35は、縦アーム33とほぼ直交する方向で、かつ固定セパレータ本体22に向かって延出された板状の部材である。可動セパレータ本体35の板厚方向は、縦アーム33の延在方向とほぼ一致している。可動セパレータ本体35の径方向内側辺35aは、固定セパレータ本体22の径方向外側辺22aと径方向で対向している。可動セパレータ本体35の径方向内側辺35aには、上下方向からみてV溝状の凹部35bが形成されている。この凹部35bも固定セパレータ本体22の凹部22bと径方向で対向している。
【0057】
このような構成のもと、駆動部23を駆動させることにより回転シャフト29が回動されると、この回転シャフト29と一体となってアーム部24及び可動セパレータ25が揺動される。すると、固定セパレータ本体22に対して可動セパレータ本体35が接近、離間される。固定セパレータ本体22に対して可動セパレータ本体35が接近した状態で、食鳥腿肉Mの大腿骨Fを挟み込む。
【0058】
この際、各セパレータ本体22,35の凹部22b,35bに大腿骨Fが収納される形になる。このため、大腿骨Fの径方向両側から各セパレータ本体22,35によって挟み込まれた状態では、これらセパレータ本体22,35によって大腿骨Fの全周が取り囲まれた状態になる。
以下の説明では、セパレータ4において、可動セパレータ本体35が前進して固定セパレータ本体22に対して可動セパレータ本体35が最も接近した位置を挟み込み位置と称する。可動セパレータ本体35が後退して固定セパレータ本体22に対して可動セパレータ本体35が最も離間した位置を退避位置と称する。
【0059】
<補助クランプ>
補助クランプ5は、周方向両側から食鳥腿肉Mの大腿骨Fにおける膝関節K(
図4参照)側の付け根Fr(以下、単に付け根Frと称する)を保持する。補助クランプ5は、センター支柱114の外周面にブラケット36を介して固定された防水ケース37と、防水ケース37内に収納された補助アクチュエータ38と、補助アクチュエータ38の複数(例えば2本)のロッド38aに取り付けられた補助クランプユニット39と、を備える。
【0060】
補助アクチュエータ38の複数のロッド38aは、防水ケース37を介して下方に向かって突出されている。補助アクチュエータ38は、複数のロッド38aを上下方向に伸縮させる。補助アクチュエータ38としては、例えばエアシリンダが用いられる。
補助クランプユニット39は、各ロッド38aの先端(下端)に取付ベース41を介して固定されたクランプアクチュエータ42と、クランプアクチュエータ42に取り付けられている2つのクランプ部43と、を備える。
【0061】
クランプアクチュエータ42は、例えば図示しないエアシリンダとリンク機構とにより構成される。クランプアクチュエータ42は、径方向が長くなるように配置されており、例えばエアシリンダの図示しないロッドが径方向にスライド移動する。クランプアクチュエータ42の径方向外側端に、上下方向を回転軸線とするように2つのクランプ部43が取り付けられている。ロッドのスライド移動によって、2つのクランプ部43が開閉(接近、離間)される。
【0062】
2つのクランプ部43は、径方向からみてクランプアクチュエータ42を中心に線対称に設けられている。このため、以下の説明では2つのクランプ部43のうちの一方のクランプ部43のみについて説明し、他方のクランプ部43の説明は省略する。以下の説明では、2つのクランプ部43が開位置にある場合をクランプ開位置と称し、2つのクランプ部43が閉位置にある場合をクランプ閉位置と称する。クランプ閉位置では、2つのクランプ部43は周方向で対向する。
【0063】
クランプ部43は、水平方向に延びるアーム44と、アーム44に取り付けられるクランプ本体45と、を備える。クランプ本体45は、上下方向に沿う断面でL字状に形成されている。すなわち、クランプ本体45は、上下方向に延在する縦壁部45aと、縦壁部45aの下端から水平方向に屈曲延出された横壁部45bと、により構成される。横壁部45bは、クランプ閉位置において縦壁部45aから2つのクランプ部43の対向方向に向かって延出されている。縦壁部45aには、複数の突起45cが横壁部45bの延出方向と同じ方向に突出形成されている。横壁部45bには、水平方向先端の側辺に、上下方向からみてV溝状の凹部45dが形成されている。
【0064】
このような構成のもと、クランプアクチュエータ42を駆動してクランプ閉位置とすると、2つのクランプ部43によって、食鳥腿肉Mにおける大腿骨Fの付け根Frが周方向両側から保持される。この際、各横壁部45bの凹部45dに付け根Frが収納される形になる。このため、大腿骨Fの付け根Frの周方向両側から各クランプ部43によって保持された状態では、各横壁部45bによって付け根Frの全周が取り囲まれた状態になる。クランプ閉位置では、膝関節Kの周方向両側に、各横壁部45bから立ち上がる縦壁部45aが立ちはだかる。クランプ閉位置では、膝関節Kに、縦壁部45aに形成された突起45cが押し当てられる。
【0065】
<カッターユニット>
カッターユニット6は、図示しないフレームに固定され、足首保持部2の径方向外側に配置され上下方向に延びる支持パイプ51と、支持パイプ51に挿通されてこの支持パイプ51の上下から突出された円柱状の駆動バー52と、駆動バー52の下端52bに取付けブロック53を介して取り付けられたユニット本体54と、を備える。駆動バー52は、図示しないユニット駆動部によって、軸心C2回りに所定の範囲で回動される。
【0066】
駆動バー52の下端52bに設けられた取付けブロック53には、上下方向に貫通する貫通孔53aが形成されている。この貫通孔53aに駆動バー52が挿通されて固定されている。取付けブロック53の下端に、ユニット本体54が取り付けられている。
【0067】
<ユニット本体>
ユニット本体54は、取付けブロック53の下端に取り付けられるベース部61と、ベース部61の上面61aに設けられたカッター駆動部62と、ベース部61の下面61bに設けられた揺動ユニット63と、を備える。ベース部61は、取付けブロック53の下端からほぼ周方向に沿って延びている。ベース部61の取付けブロック53とは反対側に、カッター駆動部62が設けられている。
【0068】
カッター駆動部62は、防水ケース64と、防水ケース64内に収納された電動モータ65と、を備える。電動モータ65としては、例えばブラシレスモータ等が用いられる。電動モータ65の図示しない回転シャフトが、ベース部61を介して下方に突出されている。回転シャフトは、駆動バー52の軸心C2と平行に延びている。このように回転シャフトは、ベース部61を介して駆動バー52からオフセットされる。このため、駆動バー52の回動によって、軸心C2を中心に回転シャフト(カッター駆動部62)が足首保持部2に対して接近、離間するように揺動される(
図1における矢印Y1参照)。
【0069】
図2は、
図1のA矢視図である。
図1、
図2に示すように、揺動ユニット63は、ベース部61の下面61bに取り付けられた支持部66と、支持部66に回転自在に設けられたカッター保持部67と、カッター保持部67に保持された丸刃カッター(請求項におけるカッターの一例)68と、カッター保持部67を足首保持部2側に向かって弾性的に付勢する付勢部69と、を備える。
【0070】
支持部66は、上下方向に延びる支持パイプ71と、支持パイプ71の下端71aに一体的に設けられた下部支持部72と、を備える。支持パイプ71の上端71bがベース部61の下面61bに固定されている。支持パイプ71の軸心C3は、電動モータ65の図示しない回転シャフトと同軸上に配置されている。支持パイプ71には、図示しない中間シャフトが挿入されている。この中間シャフトは、回転シャフトに連結されている。中間シャフトは、丸刃カッター68に回転シャフトの回転を伝達する。
【0071】
下部支持部72は、支持パイプ71の径方向からみてC字状に形成されている。すなわち、下部支持部72は、支持パイプ71の下端71aから水平方向に延出する上横壁72aと、上横壁72aの支持パイプ71とは反対側端から下方に向かって延出する縦壁72bと、縦壁72bの下端から水平方向に延出する下横壁72cと、により構成される。上横壁72aと下横壁72cとは、上下方向で対向配置されている。これら上横壁72aと下横壁72cとに、カッター保持部67が回転自在に支持されている。
【0072】
カッター保持部67は、ハウジング73と、ハウジング73に設けられて図示しない動力伝達機構と、を備える。ハウジング73は、両端が上横壁72aと下横壁72cとに回転自在に支持された円筒状の縦支持部74と、縦支持部74の外周面から水平方向に突出する中空状の横支持部75と、横支持部75の縦支持部74とは反対側に一体的に設けられた円筒状のカッターシャフト支持部76と、を備える。
カッターシャフト支持部76の軸心C4は、支持パイプ71の軸心C3と平行である。支持パイプ71の軸心C3を中心に、カッターシャフト支持部76が足首保持部2に対して接近、離間するように揺動される(
図2における矢印Y2参照)。
【0073】
これら縦支持部74、横支持部75及びカッターシャフト支持部76は、互いに内部が連通されている。縦支持部74、横支持部75及びカッターシャフト支持部76に、図示しない動力伝達部が設けられている。カッターシャフト支持部76に、丸刃カッター68が支持される。図示しない動力伝達部は、電動モータ65の回転シャフトに連結された中間シャフトの回転を丸刃カッター68に伝達する。動力伝達部は、カッター保持部67の揺動時においても常時電動モータ65の回転シャフト(中間シャフト)の回転を丸刃カッター68に伝達する。
【0074】
丸刃カッター68は、カッターシャフト支持部76に回転自在に支持されたカッターシャフト77と、カッターシャフト77にアタッチ79を介して着脱自在に取り付けられた丸刃本体(請求項におけるカッターの一例)78と、を備える。カッターシャフト77に、図示しない中間シャフト及び動力伝達部を介して電動モータ65の回転シャフトの回転が伝達される。カッターシャフト77の下部は、カッターシャフト支持部76の下端から下方に向かって突出されている。この突出された箇所に、アタッチ79が設けられている。これにより、カッターシャフト77の下端に丸刃本体78が着脱自在に取り付けられる。丸刃本体78は、円板状に形成された刃である。丸刃本体78は、カッターシャフト77と一体となって回転する。
【0075】
付勢部69は、下部支持部72における下横壁72cの上面に立設された第1支持ピン83と、カッター保持部67における縦支持部74に一体成形された第2支持ピン84と、第1支持ピン83と第2支持ピン84とに係合される引っ張りばね85と、を備える。第2支持ピン84は、縦支持部74の外周面で、かつ横支持部75とは反対側に配置されている。引っ張りばね85によって、第1支持ピン83側に向かって第2支持ピン84が引っ張られる。これにより、足首保持部2に向かってカッターシャフト支持部76(丸刃カッター68)が弾性的に付勢される(
図2における矢印Y3参照)。
【0076】
下部支持部72の縦壁72bには、第2支持ピン84と水平方向で対向する調整ねじ86が設けられている。調整ねじ86の先端に、第2支持ピン84が当接される。第2支持ピン84は、引っ張りばね85によって常時第1支持ピン83側に向かって引っ張れている。このため、初期姿勢では常に調整ねじ86の先端に当接することになる。したがって、調整ねじ86のねじ込み量によって、カッター保持部67の初期姿勢が調整される。
【0077】
このような構成のもと、カッターユニット6は、カッター駆動部62によって丸刃カッター68を回転させつつ、図示しないユニット駆動部によって軸心C2回りに所定の範囲で駆動バー52を回動させる。駆動バー52を回動させると、ユニット本体54(カッター駆動部62、揺動ユニット63)が足首保持部2に対して接近、離間するように揺動される。以下の説明では、カッターユニット6において、足首保持部2にユニット本体54の丸刃カッター68が最も接近した位置を前進位置と称する。足首保持部2からユニット本体54の丸刃カッター68が最も離間した位置を退避位置と称する。カッターユニット6の前進位置では、丸刃カッター68は、固定セパレータ17の真上に位置している。
【0078】
<腿肉測定部>
図3は、腿肉測定部7の斜視図である。
図3に示すように、筋入れステーションに設けられた腿肉測定部7は、センター支柱114の外周面に取り付け台座121を介して固定された防水ケース91と、防水ケース91内に収納された腿肉測定アクチュエータ92と、腿肉測定アクチュエータ92に設けられた図示しないエンコーダと、腿肉測定アクチュエータ92に連結された測定アーム93と、を備える。腿肉測定部7は、筋入れステーションにおいて、移動部3によって足首保持部2を引き上げる際に食鳥腿肉の外形状を測定する(詳細は後述する)。
【0079】
測定アーム93は、防水ケース91から水平方向に沿って径方向外側に延出した後、上方に折り返すように屈曲形成されている。測定アーム93の先端には、食鳥腿肉に当接する当接板94が設けられている。腿肉測定アクチュエータ92によって、測定アーム93の基端を中心に当接板94が上下方向に移動するように測定アーム93が回動される。この回動位置が、図示しないエンコーダによって検出される。エンコーダによる検出結果は、信号として制御部130に出力される。以下の説明では、腿肉測定部7において、当接板94が上昇した位置を測定位置と称し、当接板94が下降した位置を退避位置と称する。
【0080】
<分離装置の動作>
次に、
図1、
図3、
図4から
図8に基づいて、分離装置1の動作について説明する。
図4は、分離ステーションに食鳥腿肉Mが搬送された直後の状態を示す分離装置1の斜視図である。
図4に示すように分離ステーションへの食鳥腿肉Mの搬送時には、食鳥腿肉Mは、足首保持部2に設けられたハンガー12の爪部13に足首Aが引っ掛かるように懸吊されている。これにより、ハンガー12(足首保持部2)に食鳥腿肉Mの足首Aが保持される(足首保持工程)。
【0081】
このとき、食鳥腿肉Mの姿勢は、上方に脛骨Tが位置され、下方に大腿骨Fが位置された状態である。これら脛骨Tや大腿骨Fが延びる食鳥腿肉Mの身長方向が食鳥腿肉Mの延在方向となる。ハンガー12に懸吊された食鳥腿肉Mの延在方向は、上下方向とほぼ一致する。分離ステーションでは、食鳥腿肉Mは、分離ステーションの前工程において大腿骨Fの膝関節Kまで肉部Mpの引き剥がしが行われた状態で搬送される。
【0082】
図3に示すように、分離ステーションに食鳥腿肉Mが搬送される前に、筋入れステーションにおいて、腿肉測定部7により食鳥腿肉Mの外形状を測定する。
筋入れステーションでは、足首保持部2は、ハンガー12における爪部13の先端13aが径方向外側を向いている。この状態では、食鳥腿肉Mの姿勢は、膝蓋骨Pが径方向外側を向いている。動力部120によって筋入れステーションに足首保持部2が搬送された時点では、腿肉測定部7は退避位置にある。この後、腿肉測定部7を測定位置に移動する。すると、食鳥腿肉Mの膝蓋骨Pよりもやや上側に、腿肉測定部7の当接板94が当接される。
【0083】
続いて、移動部3によって足首保持部2を引き上げる。すると、移動部3による足首保持部2の引き上げ時に、腿肉測定部7の当接板94が食鳥腿肉Mの径方向外側の形状に追随しながら変位する。この当接板94の変位によって、測定アーム93が回動される。この測定アーム93の回動位置を図示しないエンコーダによって検出することにより、食鳥腿肉Mのうちの当接板94が接触されていた箇所の外形状が検出される。この検出結果が信号として制御部130に出力されると、制御部130によって鳥腿肉Mのうちの当接板94が接触されていた箇所の測定情報として記憶される。すなわち、腿肉測定部7による食鳥腿肉Mの膝関節Kよりも足首保持部2寄りから大腿骨Fの股関節側における切断部Dに至る間の測定が完了する(測定工程)。
【0084】
図4に示すように、動力部120によって分離ステーションに足首保持部2が搬送された時点では、足首保持部2は、ハンガー12における爪部13の先端13aが径方向外側を向いている。この状態では、食鳥腿肉Mの姿勢は、膝蓋骨Pが径方向外側を向いており、大腿骨頭Fhが周方向で丸刃カッター68とは反対側(
図4における右側)を向いている。この時点では、セパレータ4は退避位置、補助クランプ5はクランプ開位置、カッターユニット6は退避位置にある。補助クランプ5は、補助アクチュエータ38によって補助クランプユニット39が最下端位置にある。
【0085】
図5は、セパレータ4が挟み込み位置にある状態を示す分離装置1の斜視図である。
図5に示すように、上記工程の後、セパレータ4を挟み込み位置とし、大腿骨Fの径方向両側から各セパレータ本体22,35によって大腿骨Fを挟み込む(セパレータ挟み込み工程)。続いて、移動部3によって足首保持部2の引き上げを開始する。
【0086】
図6は、セパレータ4が挟み込み位置にあり、補助クランプ5がクランプ閉位置にある状態を示す分離装置1の斜視図である。
補助クランプ5の開閉タイミングは制御部130によって制御されている。制御部130には、腿肉測定部7によって検出された結果に基づいて、食鳥腿肉Mの膝関節Kよりも足首保持部2寄りから大腿骨Fの股関節側における切断部Dに至る間の形状が記憶されているので、食鳥腿肉Mの膝関節Kの位置情報も記憶されている。
【0087】
図6に示すように、制御部130は、膝関節Kの位置情報(腿肉測定部7による測定結果)、及び移動部3による足首保持部2の移動量に基づいて、補助クランプ5のクランプタイミングを調整する。すなわち、補助クランプ5は、補助クランプユニット39が上下方向の移動がされずに最下端位置に待機した状態において、膝関節Kの位置情報に基づいて足首保持部2が所望の移動量だけ引き上げられたタイミングでクランプ閉位置となる。これにより、補助クランプ5のクランプ部43によって、周方向両側から食鳥腿肉Mの大腿骨Fにおける膝関節K側の付け根Frが精度よく保持される。
【0088】
クランプ閉位置では、膝関節Kに、クランプ部43に形成された突起45cが押し当てられる。このため、脛骨Tの膝関節K側とともに大腿骨Fの膝関節K側を一体となって確実に保持する。このような補助クランプ5の動作の間、足首保持部2は、移動部3によって停止することなく継続的に引き上げられている。
【0089】
図7は、足首保持部2及び補助クランプ5を引き上げた状態を示す分離装置1の斜視図である。
図7に示すように、補助クランプ5をクランプ閉位置とした後、補助クランプ5は、補助アクチュエータ38によって足首保持部2と同期して引き上げられる。この際、大腿骨Fの移動に補助クランプユニット39が追随する形になる。このため、クランプ部43と大腿骨Fの付け根Frとの相対位置が変化することなく、足首保持部2と補助クランプ5とが引き上げられる(移動工程)。セパレータ4は挟み込み位置を維持している。
【0090】
すると、セパレータ4の上下位置が変化されないので、結果的に食鳥腿肉Mの大腿骨Fに対し、この大腿骨Mに沿ってセパレータ4が下方に移動する形になる。セパレータ4によって、大腿骨から肉部Mpが下方に引き剥がされる。この際、セパレータ4の各セパレータ本体22,35に形成された凹部35bに大腿骨Fが収納されることにより、これらセパレータ本体22,35によって大腿骨Fの全周が取り囲まれる。この状態で肉部Mpが下方に引き剥がされるので、大腿骨Fに肉部Mpが極力残らない形になる。
【0091】
この際、この肉部Mpの引き剥がし時の荷重が足首保持部2のハンガー12と補助クランプ5のクランプ部43とに分散される。このため、肉部Mpの引き剥がし時の荷重によって大腿骨Fや脛骨Tが切断されてしまうことがない。補助クランプ5により、肉部Mpの引き剥がし時の荷重によって脛骨Tと大腿骨Fとの間が引き延ばされてしまうことがない。この際、膝関節Kの周囲がクランプ部43の凹部45dや縦壁部45aによって取り囲まれる。このため、補助クランプ5により膝関節Kが確実に保持されている。したがって、肉部Mpの引き剥がし時の荷重によって脛骨Tと大腿骨Fとの間が引き延ばされてしまうことが確実に防止される。
【0092】
制御部130は、足首保持部2が腿肉測定部7の検出結果に基づく引き上げ量だけ引き上げられると、移動部3の駆動を停止する。このとき、補助クランプ5によって脛骨Tや大腿骨Fが正常に保たれている。このため、移動部3の駆動停止時には、大腿骨頭Fh側の端部Eの直下にセパレータ4が位置されている。大腿骨頭Fh側の端部Eの上下方向の位置は、一定に保たれる。
【0093】
セパレータ4の可動セパレータ25が連結されているセパレータアクチュエータ28は、可動セパレータ本体35が大腿骨頭Fhを乗り上げる際にかかる荷重によって、僅かに固定セパレータ本体22から可動セパレータ本体35が離間する。これにより、大腿骨頭Fhがセパレータ4によって損傷されてしまうことが抑制される。セパレータ4は、挟み込み位置を維持している。このため、足首保持部2を所定の引き上げ量だけ引き上げた状態では、セパレータ4によって、大腿骨頭Fh側から肉部Mpが膝関節Kとは反対側(下側)に向かって引っ張られている。
【0094】
図8は、カッターユニット6が前進位置にある状態を示す分離装置1の斜視図である。
図8に示すように、移動工程の後、カッターユニット6を前進位置に移動する。カッターユニット6における丸刃カッター68の移動方向は、軸心C2回りに移動することから水平方向に沿う。丸刃カッター68の移動方向は、大腿骨Fの延在方向(上下方向)に対してほぼ直交した方向になる。
【0095】
分離ステーションに足首保持部2が搬送された時点では、食鳥腿肉Mの姿勢は、膝蓋骨Pが径方向外側を向いている。大腿骨頭Fhが周方向で丸刃カッター68とは反対側を向いている。このため、カッターユニット6が前進位置に移動される際、丸刃本体78は、大腿骨頭Fhとは反対側から大腿骨頭Fh側に向かって移動される。セパレータ4によって、大腿骨頭Fh側から肉部Mpが膝関節Kとは反対側(下側)に向かって引っ張られた状態が維持されたまま、大腿骨頭Fh側の端部Eの直下(すなわち切断部D)を丸刃本体78が通過される。これにより、大腿骨Fから肉部Mpが切り離される(切り離し工程)。以上により、分離装置1の動作が完了する。
【0096】
測定工程における食鳥腿肉Mの測定結果に基づいて移動工程により食鳥腿肉Mが引き上げられている。このため、切り離し工程を開始する際の大腿骨頭Fh側の端部Eの位置は、ほぼ一定の位置(高さ)に保たれる。このため、丸刃本体78の水平移動位置は一定でありながら、大腿骨頭Fh側の端部Eの際を丸刃本体78の切断位置として狙うことができる。
【0097】
丸刃カッター68を支持するカッターシャフト支持部76は、支持パイプ71の軸心C3を中心に揺動される。このため、仮に大腿骨Fに丸刃保内78が突き当たった場合、付勢部69における引っ張りばね85のばね力に抗して大腿骨Fから丸刃本体78が逃げるように揺動され(
図2における矢印Y4も併せて参照)、衝撃が緩和される。このため、丸刃本体78への負荷が過大で例えば丸刃本体78の刃が欠けてしまうようなことが防止される。
一方、丸刃カッター68が大腿骨頭Fh側の端部Eの直下を適正に移動する場合、付勢部69によってカッター保持部67が足首保持部2側に向かって弾性的に付勢されている。このため、無駄に丸刃カッター68が揺動されることがない。
【0098】
このように上述の分離装置1は、足首保持部2と、腿肉測定部7と、セパレータ4と、移動部3と、制御部8と、丸刃カッター68と、を備える。このため、腿肉測定部7及び制御部8によって、大腿骨頭Fh側の端部Eの位置認識の精度を向上できる。したがって、セパレータ4によって肉部Mpを引き剥がされた大腿骨頭Fh側の端部Eの際を狙って丸刃本体78を侵入しやすくできる。この際、丸刃本体78によって大腿骨頭Fh側の端部Eを切断してしまう可能性を減少できる。この結果、丸刃本体78の刃が欠けたりする等を抑制できる。分離装置1(自動脱骨装置110)の故障の発生を抑制できる。食鳥腿肉Mに合わせてセパレータ4の組み付け位置を調整する必要がなくなる。このため、分離装置1の組み付け作業性を向上できる。大腿骨F側への残肉を減らしつつ大腿骨Fから肉部Mpを切り離すことができる。よって、分離装置1の脱骨歩留まりを向上できる。
【0099】
分離装置1は、足首保持部2によって食鳥腿肉Mを懸吊している。移動部3によって足首保持部2を引き上げることにより、食鳥腿肉Mに対してセパレータ4を下方に向かって移動させている。このため、重力を利用して食鳥腿肉Mの姿勢を制御しやすくできる。食鳥腿肉Mの姿勢を維持したままセパレータ4によって大腿骨Fから肉部Mpを引き剥がしやすくできる。分離装置1は、足首保持部2のみを移動可能に構成すればよいので、分離装置1の構成を簡素化できる。
【0100】
分離装置1は、補助クランプ5を備えている。補助クランプ5は、大腿骨Fの付け根Frとの相対位置を変化させることなく、食鳥腿肉Mの大腿骨Fにおける膝関節K側の付け根Frを保持する。このため、セパレータ4による大腿骨Fからの肉部Mpの引き剥がし荷重によって、脛骨Tと大腿骨Fとの間が引き延ばされてしまうことを防止できる。このため、セパレータ4による大腿骨Fからの肉部Mpの引き剥がしによって、大腿骨頭Fh側の端部Eの位置がずれてしまうことを防止できる。
【0101】
制御部130は、補助クランプユニット39が上下方向の移動がされずに最下端位置に待機した状態において、膝関節Kの位置情報に基づいて足首保持部2が所望の移動量だけ引き上げられたタイミングでクランプ閉位置となるように制御している。このため、補助クランプユニット39の上下方向の移動に複雑な制御を必要とせず、分離装置1を簡素化できる。補助クランプ5のクランプ部43によって、周方向両側から食鳥腿肉Mの大腿骨Fにおける膝関節K側の付け根Frを精度よく保持することができる。
【0102】
制御部130は、補助クランプ5をクランプ閉位置とした後、この補助クランプ5を補助アクチュエータ38によって足首保持部2と同期して引き上げるように制御している。このため、大腿骨Fから肉部Mpの引き剥がし時の荷重を、足首保持部2のハンガー12と補助クランプ5のクランプ部43とに分散できる。したがって、肉部Mpの引き剥がし時の荷重によって大腿骨Fや脛骨Tが切断されてしまうことを防止できる。補助クランプ5により、肉部Mpの引き剥がし時の荷重によって脛骨Tと大腿骨Fとの間が引き延ばされてしまうことを確実に防止できる。
【0103】
切り離し工程において、丸刃カッター68(丸刃本体78)は、大腿骨頭Fhとは反対側から大腿骨頭Fh側に向かって移動することにより、大腿骨Fから肉部Mpを切り離している。
大腿骨頭Fh側の端部Eにおいて、大腿骨頭Fhとは反対側は、筋を介して食鳥腿肉Mが張り付いている。このため、大腿骨頭Fhとは反対側から大腿骨頭Fh側に向けて丸刃カッター68(丸刃本体78)を移動させることにより、確実に筋を切断できる。すなわち、例えば大腿骨頭Fh側から大腿骨頭Fhとは反対側に向けて丸刃カッター68(丸刃本体78)を移動させると、筋が外側に逃げて筋を確実に切断しにくい。このため、大腿骨F側に残肉が多く残って脱骨歩留まりが低下してしまう。これに対し、大腿骨頭Fhとは反対側から大腿骨頭Fh側に向けて丸刃カッター68(丸刃本体78)を移動させると、大腿骨Fが邪魔になって筋が逃げるのが防止され、丸刃カッター68(丸刃本体78)によって筋を確実に切断できる。このため、脱骨歩留まりを向上できる。
【0104】
カッターユニット6は、カッター保持部67と、カッター保持部67を揺動可能に支持する支持部66と、カッター保持部67を付勢する付勢部69と、を備える。このため、仮に大腿骨Fに丸刃本体78が突き当たってしまった場合でも大腿骨Fから丸刃本体78が逃げる。このため、大腿骨Fに突き当たった際に加わる丸刃本体78への衝撃を緩和できる。よって、丸刃本体78の刃が欠ける等のカッターユニット6の損傷を抑制できる。
大腿骨Fに対して丸刃本体78が適正な位置を移動する場合、付勢部69によって丸刃本体78が弾性的に付勢されている。このため、無駄に丸刃本体78が揺動されてしまうことを防止できる。よって、大腿骨Fから肉部Mpを適正に切り離すことができる。
【0105】
移動部3は、足首保持部2を移動している。このため、足首保持部2とセパレータ4との相対移動量を精度よく制御できる。足首保持部2の移動速度も制御できる。腿肉測定部7による測定結果も足首保持部2とセパレータ4との相対移動量に適正に反映させることができる。足首保持部2の動作を安定させることができる。このため、脱骨歩留まりをさらに向上できる。
【0106】
分離を行う方法として、足首保持工程と、測定工程と、セパレータ挟み込み工程と、移動工程と、切り離し工程と、を有している。移動工程において、測定工程による測定結果に基づいて、セパレータ4の大腿骨Fに対する移動量を決定している。このため、腿肉測定部7及び制御部8によって、大腿骨頭Fh側の端部Eにおける位置認識の精度を向上できる。よって、脱骨歩留まりを向上でき、カッターユニット6の損傷を防止でき、さらに分離装置1の組み付け作業性を向上できる。
【0107】
切り離し工程において、セパレータ4によって、大腿骨頭Fh側から肉部Mpが膝関節Kとは反対側(下側)に向かって引っ張られた状態が維持されたまま、大腿骨頭Fh側の端部Eの直下を丸刃本体78が通過するようにしている。これにより、大腿骨Fから肉部Mpを切り離している。このため、肉部Mpに張力を掛けた状態で丸刃本体78によって大腿骨Fから肉部Mpを切り離すことができる。よって、丸刃本体78によって良好に肉部Mpを切断できる。大腿骨F側への残肉も極力減少でき、脱骨歩留まりをさらに向上できる。
【0108】
[変形例]
<骨押しプッシャ>
次に、
図9に基づいて、分離装置1の変形例について説明する。
図9は、分離装置1の変形例を示す一部拡大斜視図である。
図9に示すように、分離装置1は、支持バー16及び固定セパレータ17の直下に配置された骨押しプッシャ101を備えてもよい。
【0109】
ところで、セパレータ4によって大腿骨から肉部Mpを引き剥がすにあたり、特に固定セパレータ本体22に大腿骨頭Fh側の端部Eが引っ掛かってしまう可能性があった。このため、セパレータ4によって大腿骨頭Fh側の端部が削ぎ落されるように損傷してしまう可能性があった。そこで、骨押しプッシャ101を設けた。
【0110】
骨押しプッシャ101は、センター支柱114の外周面に固定された防水ケース102と、防水ケース102内に収納された骨押しアクチュエータ103と、骨押しアクチュエータ103におけるロッド103aの先端に取り付けられたプッシャ本体104と、を備える。骨押しプッシャ101は、移動工程中において、可動セパレータ本体35が大腿骨頭Fhを乗り上げる直前に固定セパレータ17側から可動セパレータ25側に向かって食鳥腿肉Mを押し出す(詳細は後述する)。
【0111】
骨押しアクチュエータ103のロッド103aは、防水ケース102に形成された図示しないロッド挿通孔を介して防水ケース102の外側に突き出ている。この突き出た先端に取り付けられたプッシャ本体104は、径方向からみてL字状に形成されている。すなわち、プッシャ本体104は、ロッド103aに取り付けられたベース部104aと、ベース部104aの上端に一体成形された上板104bと、により構成される。
【0112】
上板104bは、ベース部104aの上端から径方向外側に向かって、かつ水平方向に沿って延出している。上板104bが、固定セパレータ17のうちの固定セパレータ本体22の直下に配置されている。換言すれば、上板104bは、固定セパレータ本体22と上下方向で並んで配置されている。
【0113】
骨押しプッシャ101は、骨押しアクチュエータ103によってプッシャ本体104が前進(
図9における矢印Y5参照)しきった状態では、上板104bにおける径方向外側の先端面104cの位置が以下の位置となる。すなわち、上下方向からみて、固定セパレータ本体22の凹部22b(
図1も併せて参照)のうち、最も凹んだ箇所よりも僅かに径方向外側に、上板104bの先端面104cが位置される。
【0114】
骨押しプッシャ101は、骨押しアクチュエータ103によってプッシャ本体104が後退(
図9における矢印Y6参照)しきった状態では、上板104bの先端面104cの位置が以下の位置となる。すなわち、上下方向からみて、固定セパレータ本体22の凹部22bのうち、最も凹んだ箇所よりも僅かに径方向内側に、上板104bの先端面104cが位置される。
以下の説明では、骨押しプッシャ101において、プッシャ本体104が前進しきった位置を前進位置と称し、プッシャ本体104が後退しきった位置を後退位置と称する。
【0115】
<骨押しプッシャの動作>
次に骨押しプッシャ101の動作について説明する。
移動工程の初動では、骨押しプッシャ101は後退位置にある。足首保持部2と補助クランプ5とが引き上げられると、セパレータ4によって大腿骨から肉部Mpが引き剥がされる。同時に、大腿骨頭Fh側の端部Eが上方に移動される。
【0116】
プッシャ本体104の上板104bにおける先端面104cの前面に大腿骨頭Fh側の端部Eが移動されると、このタイミングで制御部130は骨押しプッシャ101を前進位置とする。このタイミングは、腿肉測定部7の検出結果に基づいて決定される。すなわち、制御部130では、腿肉測定部7の検出結果に基づいて、上板104bの先端面104cの前面に大腿骨頭Fh側の端部Eが位置されるときの足首保持部2の引き上げ量が算出される。この算出結果に基づいて、骨押しプッシャ101を前進位置とするタイミングが決定される。
【0117】
骨押しプッシャ101が前進位置にある状態では、プッシャ本体104によって、固定セパレータ17側から可動セパレータ25側に向かって大腿骨頭Fh側の端部Eが僅かに押し出される。この状態で、大腿骨頭Fh側の端部Eが固定セパレータ本体22を通過していくと、固定セパレータ本体22の凹部22bに大腿骨頭Fh側の端部Eが引っ掛かってしまうことを防止できる。
【0118】
一方、可動セパレータ本体35は、大腿骨頭Fhを乗り上げる際にかかる荷重によって、僅かに固定セパレータ本体22から可動セパレータ本体35が離間する。このため、固定セパレータ17側から可動セパレータ25側に向かって大腿骨頭Fh側の端部Eが僅かに押し出された場合であっても、可動セパレータ本体35の凹部35bに大腿骨頭Fh側の端部Eが引っ掛かってしまうことを防止できる。
【0119】
したがって、上述の変形例によれば、固定セパレータ本体22や可動セパレータ本体35が大腿骨頭Fh側の端部Eを乗り上げる直前に、この端部Eを固定セパレータ本体22から僅かに離間させることができる。これにより、固定セパレータ本体22によって大腿骨頭Fh側の端部Eが削ぎ落されるようなことを防止できる。このため、大腿骨から切り離した肉部Mpに骨の欠片等が付着してしまうことを防止できる。切り離した肉部Mpの品質を向上できる。
【0120】
上板104bにおける先端面104cの前面に大腿骨頭Fh側の端部Eが移動されるタイミングを決定するために、以下の構成を採用している。すなわち、制御部130では、腿肉測定部7の検出結果に基づいて、上板104bにおける先端面104cの前面に大腿骨頭Fh側の端部Eが位置されるときの足首保持部2の引き上げ量を算出している。このように構成することで、骨押しプッシャ101用に別途センサを設ける必要がない。このため、骨押しプッシャ101の製造コストを低減できるとともに、高精度に骨押しプッシャ101の駆動制御を行うことができる。
【0121】
上述の変形例では、腿肉測定部7の検出結果に基づいて、骨押しプッシャ101の駆動制御を行う場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、上板104bにおける先端面104cの前面に大腿骨頭Fh側の端部Eが移動されたか否かを検出するためのセンサを設けてもよい。
【0122】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0123】
例えば、上述の実施形態では、足首保持部2によって食鳥腿肉Mを懸吊する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、足首保持部2は、食鳥腿肉Mの足首Aを保持すればよい。例えば図示しない作業台の上に食鳥腿肉Mを寝かせるように載置してもよい。この載置された食鳥腿肉Mの足首Aを保持するように構成してもよい。この場合、食鳥腿肉Mの姿勢に応じて足首保持部2を例えば水平方向に移動ように構成すればよい。セパレータ4も食鳥腿肉Mの姿勢に応じて設ければよい。
【0124】
上述の実施形態では、移動部3によって足首保持部2を移動することにより、セパレータ4を大腿骨頭Fh側の端部Eまで大腿骨Fに沿って相対的に移動させる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、移動部3は、足首保持部2及びセパレータ4の少なくともいずれか一方を他方に対して移動させ、セパレータ4を大腿骨頭Fh側の端部Eまで大腿骨Fに沿って相対的に移動させればよい。
【0125】
上述の実施形態では、付勢部69は、引っ張りばね85を備える場合について説明した。この引っ張りばね85によって、カッター保持部67を足首保持部2側に向かって弾性的に付勢する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、付勢部として、カッター保持部67を足首保持部2側に向かって弾性的に付勢する部材であればよい。例えば引っ張りばね85に代わってゴムやスポンジ等を使用してもよい。
【0126】
上述の実施形態では、セパレータ4は、径方向両側から食鳥腿肉Mの大腿骨Fを挟む場合について説明した。セパレータ4は、固定セパレータ本体22に対して可動セパレータ本体35が移動することにより、大腿骨Fを挟む場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、セパレータ4は、大腿骨Fの膝関節K側と肉部Mpとの間で、大腿骨Fを大腿骨Fの延在方向と交差する方向から挟み込むように構成されていればよい。例えばセパレータ4は、周方向両側から大腿骨Fを挟んでもよい。2つの可動セパレータ本体35(可動部15)によりセパレータ4を構成してもよい。
【0127】
上述の実施形態では、腿肉測定部7は、食鳥腿肉Mの膝関節Kよりも足首保持部2寄りから大腿骨Fの股関節側における切断部Dに至る間の測定を行う場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、腿肉測定部7は、少なくとも食鳥腿肉Mの膝関節Kよりも足首保持部2寄りから大腿骨Fの股関節側における切断部Dに至る間を測定すればよい。例えば、腿肉測定部7によって足首Aより下方の食鳥腿肉Mの全体を測定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
上述の食鳥腿肉脱骨装置によれば、カッターによって大腿骨頭側の端部を切断してしまう可能性を減少できる。このため、カッターの刃が欠けたりする等を抑制でき、食鳥腿肉脱骨装置の故障の発生を抑制できる。食鳥腿肉に合わせてセパレータの組み付け位置を調整する必要がなくなる。このため、食鳥腿肉脱骨装置の組み付け作業性を向上できる。大腿骨側への残肉を減らしつつ大腿骨から肉部を切り離すことができるので、脱骨歩留まりを向上できる。
【符号の説明】
【0129】
1…分離装置(食鳥腿肉脱骨装置)、2…足首保持部、3…移動部、4…セパレータ、5…補助クランプ、6…カッターユニット、7…腿肉測定部、66…支持部、67…カッター保持部、68…丸刃カッター(カッター)、69…付勢部、78…丸刃本体(カッター)、101…骨押しプッシャ、104…プッシャ本体、110…自動脱骨装置(食鳥腿肉脱骨装置)、130…制御部、A…足首、D…切断部、E…端部、F…大腿骨、Fh…大腿骨頭、Fr…付け根、T…脛骨