(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/16 20060101AFI20240723BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240723BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240723BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B32B27/16 101
B32B27/30 A
B32B27/36
G02B5/02 C
(21)【出願番号】P 2020099944
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】教海 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉秀
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/041239(WO,A1)
【文献】特開2013-001717(JP,A)
【文献】特開2010-157438(JP,A)
【文献】特開2013-152396(JP,A)
【文献】特表2019-502163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0051889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C08K
C08L
G02B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの少なくとも片面側に硬化層を備え、
当該硬化層は
、粒子を含有せず、
紫外線活性基を有する重合体を含有する硬化性重合体組成物の硬化物を含み、該硬化層の表層に該重合体が偏在しており、前記紫外線活性基を有する重合体は、異なる2種の活性基を有する重合体であり、前記異なる2つの活性基の一方がベンゾフェノン基であり、他方がα-ヒドロキシケトン基であり、
硬化層側表面の最大高さ(Sz、ISO25178)が100nm以上であり、ヘーズ値が5.0%以下であり、かつ、透明度が70%以上である、積層フィルム。
【請求項2】
全光線透過率が80%以上である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
硬化層側表面の算術平均高さ(Sa、ISO25178)が50nm以下である請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記硬化性重合体組成物は、さらに、多官能(メタ)アクリレート及び有機溶媒を含有する、請求項
1~3の何れか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記多官能(メタ)アクリレートとして、異なる2種の多官能(メタ)アクリレートを含む請求項
4に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、画像表示装置を構成する光学フィルムとして好適に使用することができる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等のディスプレイ画面において、ディスプレイパネルと他の部材を密着して配置すると、干渉縞(ニュートンリング)が発生し、視認性を低下させることがある。
このような干渉縞(ニュートンリング)は、平滑面同士が重なることにより生じるため、ディスプレイパネルと他の部材との間に一定以上の隙間を確保することによって、その発生を抑制することができる。
そのため、ディスプレイパネルと他の部材との間に、表面に凹凸を形成したニュートンリング防止シートを介在させる技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、透明なフィルム上に微粒子を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化皮膜からなる微細な凹凸を有する層を設けたニュートンリング防止シートであって、該干渉縞解消シートのヘーズ値が1~5%でかつ写像性測定器における光学くし幅0.05mmにおける透過像鮮明度が40%以上であることを特徴とするニュートンリング防止シートが開示されている。
【0004】
しかし、フラットパネルディスプレイ等のカラー化が進むと共に、各種ディスプレイのカラーの高精細化が進んだ結果、従来のニュートンリング防止シートをタッチパネルに使用すると、ニュートンリング防止層に含有されている微粒子が輝点となってギラつき現象が発生し、高精細化されたカラー画面がギラついて視認性が低下するという問題が生じることが分かった。
【0005】
そこで、特許文献2には、ニュートンリング防止性に優れ、かつ高精細化されたカラーディスプレイを用いたタッチパネルに使用した際にも、スパークル(ギラつき現象)が発生しにくいニュートンリング防止シートとして、透明支持体の一方の面に電離放射線硬化型樹脂組成物および平均粒子径が0.5μm~3.0μm、粒子径分布の変動係数が20%~80%である微粒子から形成されてなるニュートンリング防止層を有するニュートンリング防止シートが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、前記アンチニュートンリング層が、表面に凹凸構造を有しており、入射光を等方的に透過して散乱し、かつ散乱光強度の極大値を示す散乱角が0.1~10°であるとともに、全光線透過率が70~100%であるニュートンリング防止フィルムが開示されていると共に、その製造方法として、1又は複数のポリマーと1又は複数の硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む液相から、前記溶媒の蒸発に伴うスピノーダル分解により、複数のポリマー同士、ポリマーと硬化性樹脂前駆体、又は複数の硬化性樹脂前駆体同士が相分離構造を形成し、前記樹脂前駆体を硬化させてアンチニュートンリング層を形成することにより、ニュートンリング防止フィルムを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-282312号公報
【文献】特開2005-265864号公報
【文献】特開2011-2820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば上記特許文献2に記載されているように、粒子を含有させて硬化層(ニュートンリング防止層)を形成した場合、積層フィルムの製造工程や、光学フィルムとして画像表示装置に組み込む際などにおいて、粒子が脱落する可能性があった。
また、他の光学フィルムと積層した際、干渉縞(ニュートンリング)が発生したり、透過光が歪んで、滲みやぼやけの原因となったりすることがあった。
【0009】
そこで本発明は、粒子の脱落がなく、他の光学フィルムと積層した際に、干渉縞(ニュートンリング)が発生したり、透過光が歪んだりするのを抑えることができる新たな積層フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、樹脂フィルムの少なくとも片面側に硬化層を備え、当該硬化層は粒子を含有せず、硬化層側表面の最大高さ(Sz、ISO25178)が100nm以上であり、ヘーズ値が5.0%以下であり、かつ、透明度が70%以上である積層フィルムを提案する。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提案する積層フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも片面側に硬化層を備えた積層フィルムにおいて、当該硬化層について、粒子を含有しない構成とすると共にその表面の最大高さ(Sz)を限定し、さらに、該積層フィルムの透明度を限定することにより、粒子の脱落がなく、他の光学フィルムと積層した際に、干渉縞(ニュートンリング)が発生したり、透過光が歪んだりするのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1の(a)は、非接触表面・層断面形状計測システムにより計測されたスムージング前の2次元断面図グラフの一例である。
図1の(b)は、当該グラフを移動平均処理によるスムージング後のグラフの一例である。
図1の(c)は、スムージング後のグラフに基づき、当該中心線との交点をカウントする方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<<本積層フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルム(「本積層フィルム」)は、樹脂フィルム(「基材フィルム」とも称する)の少なくとも片面側に硬化層を備えた積層フィルムである。
【0015】
(最大高さ(Sz))
本積層フィルムの硬化層側表面、例えば視認側表面の最大高さ(Sz、ISO25178表面性状)は100nm以上であるのが好ましい。
本積層フィルムの硬化層側表面の最大高さ(Sz)が100nm以上であれば、アンチニュートンリング性をより一層発現することができる。かかる観点から、本積層フィルムの硬化層側表面の最大高さ(Sz)は、100nm以上であるのが好ましく、中でも110nm以上であるのがさらに好ましい。
但し、透明性の保持の観点から、500nm以下であるのが好ましく、中でも250nm以下、その中でも150nm以下であるのがさらに好ましい。
【0016】
本積層フィルムにおいて、硬化層側表面の最大高さ(Sz)を上記範囲に調整するには、例えば、後述する硬化層の形成方法において、多官能(メタ)アクリレートの組成、乾燥時間、光照射量、硬化時間、又は、紫外線活性基を有する重合体の組成などを調整すればよい。但し、これらの方法に限定するものではない。
なお、最大高さ(Sz、ISO25178表面性状)は、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を示す。線粗さのパラメータであるRz(最大高さ)を三次元(面)に拡張したパラメータであり、基準領域における最大山高さSpと最大谷深さSyの和として算出される。
【0017】
(算術平均高さ(Sa))
本積層フィルムの硬化層側表面、例えば視認側表面の算術平均高さ(Sa)は50nm以下であるのが好ましい。
本積層フィルムの硬化層側表面の算術平均高さ(Sa)が50nm以下であれば、透明性をより一層保持することができる。かかる観点から、本積層フィルムの硬化層側表面の算術平均高さ(Sa)は、50nm以下であるのが好ましく、中でも30nm以下、その中でも15nm以下であるのがさらに好ましい。
他方、硬化層側表面の算術平均高さ(Sa)が5nm以上であれば、アンチニュートンリング性をより一層発現することができる。かかる観点から、本積層フィルムの硬化層側表面の算術平均高さ(Sa)は、5nm以上であるのが好ましい。
【0018】
本積層フィルムにおいて、算術平均高さ(Sa)を上記範囲に調整するには、例えば、後述する硬化層の形成方法において、多官能(メタ)アクリレートの組成、乾燥時間、光照射量、硬化時間、又は、紫外線活性基を有する重合体の組成などを調整すればよい。但し、これらの方法に限定するものではない。
なお、算術平均高さ(Sa、ISO25178表面性状)は、線の算術平均高さRaを三次元すなわち面に拡張したパラメータであり、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表す数値である。
【0019】
(要素の平均長さ(R’Sm))
本積層フィルムの硬化層側表面、例えば視認側表面の要素の平均長さは1~30μmであるのが好ましい。
本積層フィルムの硬化層側表面の要素の平均長さが1μm以上であれば、光の拡散をより一層防止することができる。かかる観点から、本積層フィルムの硬化層側表面の要素の平均長さは、1μm以上であるのが好ましく、中でも3μm以上、その中でも5μm以上であるのがさらに好ましい。
他方、要素の平均長さが30μm以下であれば、透明性をより一層保持することができる。かかる観点から、本積層フィルムの硬化層側表面の要素の平均長さ(R’Sm)は、30μm以下であるのが好ましく、中でも20μm以下、その中でも10μm以下であるのがさらに好ましい。
【0020】
本積層フィルムにおいて、要素の平均長さ(R’Sm)を上記範囲に調整するには、例えば、後述する硬化層の形成方法において、多官能(メタ)アクリレートの組成、乾燥時間、光照射量、硬化時間、又は、紫外線活性基を有する重合体の組成などを調整すればよい。但し、これらの方法に限定するものではない。
なお、要素の平均長さは、基準長さに輪郭曲線要素の長さの平均を表したパラメータであり、表面凹凸の周期を示すパラメータでもある。
【0021】
前記要素の平均長さ(R’
Sm)は、次の手順(1)~(4)により測定・算出される、疑似R
Smである。
(1)非接触表面・層断面形状計測システム(菱化システム社製「Vert
Scan」)による3次元俯瞰図の高さデータを抽出して、2次元断面図グラフ(X軸;幅方向の位置、Y軸;高さ変位量)を作成する(
図1の(a)参照)。
(2)次に、連続する3点の2番目のデータ(項)の3項移動平均処理により、当該2次元断面図をスムージングする(
図1の(b)参照)。
(3)次に、スムージングされた前記グラフおけるY軸の0を中心線とし、当該中心線との交点をカウントする(
図1の(c)参照)。
(4)最後に、下式から、R’
sm(μm)を算出する。
なお、式中、「最大距離」とは、前記計測システムにより、倍率20倍で測定した際の測定範囲における、X方向の最大距離をいい、ピクセル表示をμmに換算したものをいう。
また、「交点カウント数」とは、前記(3)でカウントされた数をいう。
さらに、行ごとの周期の平均をR'
Sm(要素の平均長さ)とする。
【0022】
【0023】
(ヘーズ値)
本積層フィルムのヘーズ値は、透明性の保持の観点から、5.0%以下であるのが好ましい。中でも3.0%以下であるのがさらに好ましい。
【0024】
本積層フィルムにおいて、ヘーズ値を上記範囲に調整するには、例えば、硬化層に粒子を含有させないと共に、表面の凹凸構造を大きくしないするようにすればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0025】
(透明度)
本積層フィルムの透明度は、70%以上であるのが好ましい。
本積層フィルムの透明度が70%以上であればフィルムを通して見る像がぼやけないから好ましい。
かかる観点から、本積層フィルムの透明度は70%以上であるのが好ましく、中でも75%以上、その中でも80%以上であるのがさらに好ましい。
【0026】
本積層フィルムにおいて、透明度を上記範囲に調整するには、例えば多官能(メタ)アクリレートの組成、乾燥時間、光照射量、硬化時間、又は、紫外線活性基を有する重合体の組成を調整するようにすればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
なお、透明度は、直線光として透過する割合を示すパラメータであり、詳しくは実施例での測定方法によって測定される値である。
【0027】
(全光線透過率)
本積層フィルムの全光線透過率は、80%以上であるのが好ましい。
本積層フィルムの全光線透過率が80%以上であれば、光源の光のロスを少なく使用できるから好ましい。
かかる観点から、本積層フィルムの全光線透過率は80%以上であるのが好ましく、中でも83%以上、その中でも86%以上であるのがさらに好ましい。
【0028】
本積層フィルムにおいて、全光線透過率を上記範囲に調整するには、例えば、硬化層の屈折率、基材フィルムの屈折率・添加物量を調整すればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0029】
<基材フィルム>
基材フィルムとしての樹脂フィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチレンセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリメチルペンテン、(メタ)アクリルニトリルフィルム、シクロオレフィン等の各種樹脂を主成分樹脂とする樹脂フィルムを挙げることができる。
ここで、主成分樹脂とは、樹脂フィルムを構成する樹脂の中で最も質量割合の高い樹脂の意味である。
【0030】
基材フィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。
【0031】
基材フィルムは、単層構成のものであってもよいし、同種又は異種の樹脂を主成分とする2層以上の複層構成のものであってもよい。
【0032】
基材フィルムの厚さは、用途に応じて適時選択するのが好ましい。一般的には5μm~500μmであるのが好ましく、中でも10μm以上或いは300μm以下、その中でも15μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
基材フィルムとして樹脂フィルムを用いる場合、易滑性の付与を主たる目的として、粒子を含有してもよい。
基材フィルムに含有させる粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子のほか、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。
【0034】
当該粒子の形状に関しても特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。
また、当該粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0035】
上記粒子の平均粒径は、0.1~3.0μmであるのが好ましく、中でも2.0μm以下、その中でも1.0μm以下であるのがさらに好ましい。
上記粒子の平均粒径が当該範囲であれば、ヘーズ値及び全光線透過率を上記範囲としながら、基材フィルムに適度な表面粗度を与えることができ、良好な滑り性と平滑性を付与することができる。
【0036】
また、上記基材フィルムは、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、軟化剤、結晶核剤、染料、顔料等を含有してもよい。
【0037】
(機能層)
基材フィルムは、本積層フィルムのヘーズ値乃至全光線透過率を上記範囲とすることができるという条件の下、必用に応じて各種機能を備えた層(「機能層」と称する)を備えていてもよい。例えば上記基材フィルムと硬化層との間に機能層を設けることができる。或いは、硬化層の反対面に機能層を設けることもできる。
当該機能層としては、例えば易接着層、帯電防止層、易滑層、水蒸気等の気体バリア層、基材フィルム含有物の析出防止層、紫外線吸収層、傷つき防止層、防汚層、抗菌層、反射防止層、光沢層、マット層、インク受容層、着色層、印刷層等の各種機能を備えた層を挙げることができる。
【0038】
<硬化層>
本積層フィルムにおける硬化層は、重合体を含有する、硬化可能な組成物(「硬化性重合体組成物」と称する)が硬化してなる層であって、該硬化性重合体組成物の硬化物を含むものであるのが好ましい。
硬化層は、裏面平滑な光学シート乃至部材の裏面側すなわち光源側に本積層フィルムを積層しても、干渉縞(ニュートンリング)の発生を抑制でき、かつ、透過光が歪むのを抑えることができるように、その表面に適当な微細な凹凸を備えているのが好ましい。また、傷つき防止のため、硬化層としてある程度硬いことが好ましい。
【0039】
硬化層は、紫外線活性基を有する重合体を含有する硬化性重合体組成物の硬化物を含み、該硬化層の表層に該重合体が偏在していることが好ましい。この点については後述する。
【0040】
硬化層は、粒子の脱落防止のため、粒子を含有しないことが好ましい。
但し、この際の粒子とは、有機物及び無機物を問わず、粒径(非球径の場合は最長径)が0.1μm以上の固形物の意味である。
また、製造過程で不可避的に含有される場合は許容するものである。かかる観点から、粒子の含有量が0.1質量%未満の場合は許容するものである。
【0041】
(厚さ)
硬化層の厚さは、硬化性の観点から、0.5μm以上であるのが好ましく、中でも1.0μm以上、その中でも1.5μm以上であるのがさらに好ましい。その一方、塗工厚み均一性の観点から、10μm以下であるのが好ましく、中でも7μm以下、その中でも5μm以下であるのがさらに好ましい。
【0042】
(形成方法)
前記硬化層は、紫外線活性基を有する重合体Aを含有する硬化性重合体組成物を硬化させることにより、上述した特徴を持たせるように形成するのが好ましい。
また、硬化性重合体組成物は、重合体A以外にさらに、多官能(メタ)アクリレートB及び有機溶媒Cを含有することが好ましい。
【0043】
(硬化性重合体組成物)
上記硬化性重合体組成物は、例えば紫外線活性基を有する重合体Aを含む組成物であることが好ましい。
また、上記硬化性重合体組成物は、さらに、多官能(メタ)アクリレートB、有機溶媒C及びその他の成分を含む組成物であることが好ましい。
上記硬化性重合体組成物がこのような組成であれば、紫外線の照射により、ラジカルを発生する紫外線活性基を有する重合体A及び/又は多官能(メタ)アクリレートBが反応して該組成物を硬化させることができる。
【0044】
(重合体A)
前記重合体Aは、紫外線活性基を有する重合体であるのが好ましい。
当該紫外線活性基とは、紫外線により分子内開裂反応、水素引き抜き反応、電子移動反応等が起こりラジカルを発生するものであり、発生したラジカルが、例えば多官能(メタ)アクリレートBと反応し架橋構造を形成することができる。
【0045】
前記紫外線活性基としては、例えばベンゾフェノン基、アセトフェノン基、ベンゾイン基、α-ヒドロキシケトン基、α-アミノケトン基、α-ジケトン基、α-ジケトンジアルキルアセタール基、アントラキノン基、チオキサントン基、ホスフィンオキシド基、1-「4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル」-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)基などを挙げることができる。
中でも、硬化性重合体組成物の硬化時に酸素阻害を受けにくく、表面硬化性が良好となる点で、ベンゾフェノン基、アセトフェノン基、α-ヒドロキシケトン基が好ましい。
中でも、前記紫外線活性基を有する重合体は、硬化性向上の観点から、異なる2種の活性基を有するのが好ましい。例えば、前記異なる2つの活性基の一方がベンゾフェノン基であり、他方がα-ヒドロキシケトン基である重合体は、酸素による重合阻害を抑制し、重合体の架橋速度を向上の点で特に好ましい。
【0046】
紫外線活性基を有する重合体Aは、分子中に複数個の紫外線活性基を導入する観点から、紫外線活性基を有する単量体に基づく単位を有する重合体であることが好ましく、該重合体は、前記紫外線活性基を有する単量体を含む単量体混合物を共重合することで得ることができる。
さらに、紫外線活性基を有する重合体Aは、紫外線活性基を有する単量体及び紫外線活性基を有さない単量体に基づく単位を有する重合体であることが好ましく、とりわけ、異なる2種の紫外線活性基を有する単量体及び炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル単量体に基づく単位を有する重合体であることが特に好ましい。
【0047】
紫外線活性基を有する重合体Aを使用することで、硬化層の表層に該重合体を偏在させることができ、これにより凹凸構造を形成して所定の表面特性を発現させることができる。
【0048】
なお、偏在していることは、アルゴンなどを用いたエッチング処理によるTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)やESCA(X線光電子分光法)、あるいはオスミウムやルテニウム等による染色あるいはプラズマ等による灰化処理などと走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により確かめることができる。
【0049】
硬化物をTOF-SIMSで測定する場合、例えば深さ50nmのエッチング表面に観察される重合体Aに由来する二次イオンピーク種の検出強度(I)を、深さ1μmのエッチング表面に観察される重合体Aに由来する二次イオンピーク種の検出強度(II)で除した値(検出強度比:I/II)が1.0超となれば、表層近傍に重合体Aが偏在しているといえる。
なお、硬化物の膜厚が1μm未満の場合は、深さが膜厚の1/10の箇所のエッチング表面に観察される重合体Aに由来する二次イオンピーク種の検出強度(I)と、深さが膜厚の9/10の箇所のエッチング表面に観察される重合体Aに由来する二次イオンピーク種の検出強度(II)で除した値で評価することができる。
検出強度比:I/IIの値は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.5以上である。I/IIの値は、硬化物中の重合体Aの厚さ方向への分布を示すものであり、I/IIの値が大きいほど重合体Aが硬化物の表面に偏析している。
【0050】
また、検出強度比の比較において、汚染の影響等も考えられるが、より正確な考察のために、最表層(エッチングしない表面)に関しても同様に、最表層(エッチングしない表面)に観察される重合体Aに由来する二次イオンピーク種の検出強度(III)を、深さ1μmのエッチング表面に観察される重合体Aに由来する二次イオンピーク種の検出強度(II)で除した値(検出強度比:III/II)が1.0を超えることが好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上、特に好ましくは1.5以上である。
なお、硬化物の膜厚が1μm未満の場合は、最表層(エッチングしない表面)に観察される重合体Aに由来する二次イオンピーク種の検出強度(III)と、深さが膜厚の9/10の箇所のエッチング表面に観察される重合体Aに由来する二次イオンピーク種の検出強度(II)で除した値で評価することができる。
類似のイオン種において、正イオンおよび負イオンともに1.0を超えることが好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上、特に好ましくは1.5以上である。
なお、化合物によってイオン化されやすいものと、されにくいものがあり、上記検出強度比はイオン化されやすいもので確認することが好ましい。イオン化されやすいものとして、フッ素系化合物、アミノ基、アルキル基を挙げることができる。
【0051】
硬化物をESCAで測定する場合、上述したTOF-SIMSと同様な手法を用いることができる。すなわち、表面をエッチングし、表層近傍および深層の測定より判明する元素や化学状態を比較することで偏在しているかどうかを確かめることができる。
【0052】
硬化物をSEMやTEMで測定する場合、使用した化合物の電子密度の差が小さい場合など未処理で観察できない場合には、オスミウムやルテニウム等による染色、あるいはプラズマ等による灰化処理などを組み合わせることができる。硬化層を断面観察したときに、硬化物の膜厚の半分以上の表面側の箇所において、他の場所と観察画像の濃さが異なるかどうかで確かめることができる。
【0053】
前記紫外線活性基を有する単量体としては、例えばベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、α-ヒドロキシケトン類、α-アミノケトン類、α-ジケトン類、α-ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、ホスフィンオキシド類に不飽和二重結合が付与された化合物を挙げることができる。
【0054】
より具体的には、紫外線活性基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含むことが好ましく、とりわけ、異なる2種の紫外線活性基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含むことで、硬化性重合体組成物を基材に塗布し硬化する際に、塗膜表面側の前記重合体Aの濃度が高くなり、硬化物の表面に微細な凹凸を発現しやすくなる。
前記重合体Aは、単量体として前記紫外線活性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体混合物を共重合することで得られる。
具体的には、紫外線活性基を有する単量体としては、例えばMCCユニテック株式会社の4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、ALLNEX社のEBECRYL P36(ベンゾフェノン誘導体、CAS番号85340-63-2)、EBECRYL P37(ベンゾフェノン誘導体);2-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェノキシ]エチルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0055】
また、前記紫外線活性基を有する単量体は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアナートに1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンを付加させる方法や、(メタ)アクリル酸無水物や(メタ)アクリル酸クロリドに1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンを付加させる方法などによって調製することができる。
【0056】
紫外線活性基を有する重合体Aは、紫外線活性基を有する単量体と紫外線活性基を有さない単量体を、溶液重合法、懸濁重合法などの一般的な重合法によって(共)重合することで製造することができる。操作が簡便で生産性が高い点で溶液重合法が好ましい。
【0057】
紫外線活性基を有する重合体Aは、紫外線活性基を有さない炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含むことが好ましい。
重合体Aが、前記紫外線活性基を有さない炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含むことで、硬化性重合体組成物を基材に塗布し硬化する際に、硬化物の表面の前記重合体Aの濃度が高くなり、微細な凹凸を発現しやすくなる。
【0058】
前記繰り返し単位の前記重合体A100質量部中の含有量は、1質量部以上90質量部未満であるのが好ましく、中でも5質量部以上或いは80質量部未満であるのがより好ましく、その中でも10質量部以上或いは60質量部未満であるのがさらに好ましい。
【0059】
前記紫外線活性基を有さない炭素数4以上のアルキル基を有する単量体としては、例えばブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの中でも、硬化物表面の前記重合体Aの濃度が高くなり、微細な凹凸を発現させる点で、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0060】
さらに、紫外線活性基を有する重合体Aは、硬化物表面からの硬化を行う点で、水酸基、メルカプト基、アミノ基、アミド基等の水素供与性官能基を有する単量体由来の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0061】
前記繰り返し単位の前記重合体A100質量部中の含有量は、1質量部以上40質量部未満が好ましく、中でも2質量部以上或いは35質量部未満がより好ましく、その中でも5質量部以上或いは25質量部未満がさらに好ましい。
【0062】
前記水素供与性官能基を有する単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルアセトアミドなどのアミノ基もしくはアミド基を有する単量体などを挙げることができる。これらの中でも、紫外線活性基との併用において硬化促進効果に優れる点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートや、(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0063】
なお、重合体Aは、前記以外のその他の繰り返し単位を含んでいてもよい。例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、フェニルジオキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレートなどの単量体由来の構成単位を含んでいてもよい。
【0064】
重合体Aの紫外線活性基の濃度は、硬化性重合体組成物の硬化物がニュートンリング防止効果を良好に発現できる点で、0.3mmol/g以上3.0mmol/g以下であるのが好ましい。
【0065】
さらに重合体Aの重量平均分子量は1000~500000が好ましい。
硬化性重合体組成物を基材フィルムに塗布して硬化する際に、塗膜表面側の前記重合体Aの濃度が高くなり、硬化物の表面に微細な凹凸を発現しやすくなる点で、2000以上或いは100000以下であるのがより好ましく、中でも3000以上或いは50000以下であるのがさらに好ましい。
【0066】
本発明において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算による値である。
前記重量平均分子量は以下測定条件によって測定することができる。
【0067】
(GPC測定条件)
・カラム:「TSK-gel superHZM-M」、「TSK-gel HZM-M」、「TSK-gel HZ2000」
・溶離液:THF
・流量:0.35mL/min
・注入量:10μL
・カラム温度:40℃
・検出器:UV-8020
【0068】
硬化物の表面の凹凸形成性が良好となる点で、前記重合体Aのガラス転移温度は、-30℃以上130℃以下が好ましく、中でも0℃以上或いは110℃以下がより好ましく、その中でも25℃以上或いは100℃以下がより好ましい。
【0069】
本発明においてガラス転移温度は、以下のFoxの式による共重合体のガラス転移温度Tg(℃)の関係式で計算した値である。
1/(273+Tg)=Σ{Wi/(273+Tgi)}
Wi:単量体iの質量分率
Tgi:単量体iの単独重合体のTg(℃)
なお、単独重合体のガラス転移温度は、「ポリマーハンドブック 第4版 John Wiley & Sons著」に記載の数値を用いた値である。
【0070】
硬化性重合体組成物中の重合体Aの含有量は、硬化物の表面への凹凸形状の付与及び紫外線硬化性を良好とする点で硬化性重合体組成物100質量部中に0.5質量部以上20.0質量部未満が好ましく、中でも0.7質量部以上或いは10.0質量部未満がより好ましく、その中でも1.0質量部以上或いは8.0質量部未満がさらに好ましい。
【0071】
(多官能(メタ)アクリレートB)
多官能(メタ)アクリレートBとは、一分子中に2つ以上の不飽和二重結合を有する化合物である。
多官能(メタ)アクリレートBは、得られる硬化物の硬度や硬化性重合体組成物の硬化性を高める作用がある。
【0072】
前記多官能(メタ)アクリレートBとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、グリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。また、上記化合物のアルキル変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートや、上記以外の脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート、さらに、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーと称される、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物を挙げることができる。
アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物は市販品としてビスコートV#1000、V#5020、STAR-501(何れも大阪有機化学工業社製)などを挙げることができる。前記の多官能アクリレート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記の多官能アクリレート化合物のなかでも、得られる硬化物の硬度や硬化性重合体組成物の硬化性が高くなる点で、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ビスコートV#1000、V#5020、STAR-501などが好ましい。
【0074】
硬化性重合体組成物は、粘度の調整または活性エネルギー線による硬化速度の調整の観点から、異なる2種の多官能(メタ)アクリレートを含むのが好ましい。例えば、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックス(商標登録)M-313」)とペンタエリスリトールアクリレート(PETA)、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックス(商標登録)M-315」)とPETA、ジペンタエリスリトールアクリレート(DPHA)とPETA、DPHAと1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)などの組み合わせを挙げることができる。
【0075】
また、硬化性重合体組成物の硬化性が良好となる点から、前記多官能(メタ)アクリレートBの含有量は、硬化性重合体組成物100質量部に対し30質量部以上99.5質量部未満が好ましく、中でも50質量部以上或いは99.3質量部未満がより好ましく、中でも80質量部以上或いは99.0質量部未満がさらに好ましい。
【0076】
(有機溶媒C)
有機溶媒Cを含むことにより、硬化性重合体組成物を基材に塗布する際の作業性が向上する。
【0077】
前記有機溶媒Cとしては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;等を挙げることができる。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、塗布における作業性が向上する点でエステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒が好ましい。
【0078】
また、前記硬化性重合体組成物中の前記有機溶媒Cの含有量は、塗布操作における操作性が向上する点で、10質量%以上80質量%未満が好ましく、中でも40質量%以上或いは70質量%未満がより好ましい。
【0079】
(その他の成分)
硬化性重合体組成物は、上記重合体A、多官能(メタ)アクリレートB及び有機溶媒C以外の成分として、例えば光重合開始剤、レベリング剤、無機粒子、その他の成分を含んでいてもよい。
【0080】
(光重合開始剤)
硬化性重合体組成物は、硬化性を促進する目的で、光重合開始剤を含有することができる。
【0081】
光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ジベンジル、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、p,p’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ピバロインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1-ジクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、フェニルグリオキシレート、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン等を挙げることができる。
【0082】
前記光重合開始剤は、重合体Aより優先して硬化をしない程度に添加するのが良い。重合体組成物100質量部に対する前記光重合開始剤の添加量は、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0083】
(レベリング剤)
硬化性重合体組成物は、硬化物外観を向上させるため、レベリング剤を添加することができる。
レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等を挙げることができる。また、レベリング剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
(その他の成分)
硬化性重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、チオール基を含有する化合物などの重合促進剤、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
【0085】
(硬化性重合体組成物の調製)
硬化性重合体組成物は、例えば紫外線活性基を有する重合体A、多官能(メタ)アクリレートB及び有機溶媒C、必要に応じてさらにレベリング剤、無機粒子、光重合開始剤、添加剤等を混合することにより調製することができる。
【0086】
<硬化性重合体組成物を用いた硬化層の形成方法>
硬化性重合体組成物の硬化物としての硬化層は、前記硬化性重合体組成物を基材フィルムに塗布した後、得られた硬化物を乾燥し、紫外線を照射することで得ることができる。
前記硬化物に紫外線を照射し硬化させる際に、塗膜表面側の前記硬化性重合体組成物中の紫外線活性基を有する重合体Aの濃度が高くなりやすいため、塗膜の表面が先に硬化し硬化被膜を形成する。
その後、塗膜の内部が硬化する際の収縮応力により、表面の硬化被膜が収縮し皺上の凹凸が発現すると考えられる。
【0087】
塗布の方法は、特段限定するものではない。例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート等の方法により塗布することができる。
【0088】
硬化性重合体組成物の乾燥は、硬化性重合体組成物を硬化させる前に予め加熱乾燥させることが好ましい。
塗布された塗膜を硬化させる前に加熱乾燥する場合は、30~200℃が好ましく、40~150℃がより好ましい。
また、乾燥時間は、0.01~30分間が好ましく、0.1~10分間がより好ましい。予め加熱乾燥させることにより、塗膜中の溶媒を効果的に除去することが可能であり、硬化性重合体組成物を基材フィルムに塗布し硬化する際に、塗膜表面側の前記重合体Aの濃度が高くなり、硬化物の表面に微細な凹凸を発現しやすくなる。
【0089】
紫外線の照射は、生産性の点で積算光量が100mJ/cm2以上20000mJ/cm2以下となるよう照射することが好ましい。
光源としては、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、あるいは走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等高圧水銀灯、超高圧水銀灯等、低圧水銀灯などを用いることができる。
【0090】
<積層構成>
本積層フィルムは、本積層フィルムのヘーズ値乃至全光線透過率を上記範囲とすることができるという条件の下、前記基材フィルム及び硬化層以外の層を備えていてもよい。例えば基材フィルムの裏面側に、易接着剤層、帯電防止層、易滑層、水蒸気等の気体バリア層、基材フィルム含有物の析出防止層、紫外線吸収層、傷つき防止層、防汚層、抗菌層、反射防止層、光沢層、マット層、インク受容層、着色層、印刷層等の各種機能を備えた層を備えていてもよい。
また、上記基材フィルムと硬化層との間に機能層を設けることができる。例えば易接着層、帯電防止層、易滑層、水蒸気等の気体バリア層、基材フィルム含有物の析出防止層、紫外線吸収層、傷つき防止層、防汚層、抗菌層、反射防止層、光沢層、マット層、インク受容層、着色層、印刷層等の各種機能を備えた層を設けることができる。この際、当該機能層は、上述したように、基材フィルムを構成する一部の層として設けてもよい。
【0091】
<用途>
本積層フィルムは、例えば液晶表示装置などの画像表示装置を構成するの光学フィルムとして使用することができる。特に他の光学用パネル乃至シートと積層することによって、干渉縞(ニュートンリング)の発生を効果的に抑制することができる。
【0092】
<<語句の説明>>
本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0093】
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例】
【0094】
以下の実施例により更に本発明について説明する。但し、実施例はいかなる方法でも本発明を限定することを意図するものではない。
【0095】
<基材フィルムの原料>
基材フィルムの形成に用いた原料は次のものである。
【0096】
ポリエステルA:ポリエチレンテレフタレートホモポリマーのチップ(固有粘度:0.66dl/g)
ポリエステルB:平均粒径2.0μmの非晶質シリカを1000ppm含有するポリエチレンテレフタレートホモポリマーのチップ(固有粘度:0.62dl/g)
【0097】
機能層用塗布液の原料:カルボキシル基を有する水分散型ポリカーボネートポリウレタン樹脂(Tg:35℃)を60質量部、オキサゾリン基がアクリル系樹脂にブランチされたポリマー型架橋剤を30質量部、シリカゾル水分散体(平均粒径:0.07μm)を6質量部混合して機能層用塗布液とした。
【0098】
<硬化層の原料>
硬化層の形成に用いた原料は次のものである。
【0099】
[2-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェノキシ]エチルメタクリレート]
メタクリル酸無水物(東京化成工業株式会社製)を減圧蒸留し、純度99.8%以上となる留分を回収してメタクリル酸無水物の蒸留物を得た。減圧蒸留は、圧力30paで室温から90℃まで徐々に昇温する方法で実施した。
これとは別に、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン(東京化成工業株式会社製)22.4g(0.1mol)、及びトリエチルアミン(東京化成工業株式会社製)30.4g(0.3mol)を、塩化メチレン東京化成工業株式会社製)500mLに溶解した。ここに上記メタクリル酸無水物の蒸留物23.1g(0.15mol)を室温で滴下し、12時間撹拌した。
得られた反応液をイオン交換水500mLで3回洗浄した後、有機相を濃縮し、溶媒を留去した。残さをカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=10/90(体積比))で精製して、目的の化合物21.6gを得た(収率74%)。
1H-NMR分析により、得られた化合物が2-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェノキシ]エチルメタクリレートであることを確認した。
1H-NMR(300MHz,chloroform‐d):δ8.06(d,J=9.0Hz,2H),6.96(d,J=9.0Hz,2H),6.13(d,J=0.6Hz,1H),5.59(s,1H),4.50(d,J=5.1Hz,2H),4.29(dd,J=5.5,4.1Hz,3H),1.94(dd,J=1.6,1.0Hz,3H),1.61(s,6H)。
【0100】
[紫外線活性基を有する重合体A]
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKという)70部を入れ、次いで、フラスコ内を窒素置換し65℃に昇温して、2-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェノキシ]エチルメタクリレート25質量部、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン25質量部、ステアリルメタクリレート10質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート30質量部、ジエチルアミノエチルメタクリレート10質量部、重合開始剤(k-1)0.8質量部、及びMIBK78質量部の混合溶液を2時間かけて滴下した。さらに2時間後、重合率を上げるため、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5質量部とMIBK0.6質量部の混合液を投入し、5時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却することで、共重合体のMIBK溶液を得た。以下、前記溶液中の固形分を、紫外線活性基を有する重合体Aという。
前記溶液の固形分(不揮発分)は40質量%であった。
紫外線活性基を有する重合体Aの重量平均分子量(Mw)は19,800、共重合体(A-1)の1g当たりの活性基の含有量(濃度)は1.78mmol/gであった。
【0101】
[多官能(メタ)アクリレートB1(DPHA)]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)
[多官能(メタ)アクリレートB2(PETA)]
ペンタエリスリトール、アクリル酸の縮合物であるペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業 V#300)
【0102】
[アクリル系ポリマーD1]
アクリル系ポリマーD1:グリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート及びエチルアクリレートを98:1:1のモル比率で共重合してなるアクリル酸変性物(質量平均分子量(Mw):20,000、SP値:12.6、Tg:32℃)
[アクリル系ポリマーD2]
アクリル系ポリマーD2:メチルメタクリレート及びメチルアクリレートを99:1のモル比率で共重合してなる共重合体(質量平均分子量(Mw):95,000、SP値:9.9、Tg:105℃)
【0103】
[光架橋開始剤E1]
光架橋開始剤E1:IGMレジン社製、Omnirad127
【0104】
[溶剤X(MEK)]
メチルエチルケトン(以下、MEK):ナカライテスク社製、 商品名:2-ブタノン
【0105】
[溶剤Y(PGM)]
プロピレングリコールα-モノメチルエーテル(以下、PGM):ナカライテスク社製、商品名:プロピレングリコールα-モノメチルエーテル
【0106】
<実施例1>
(基材フィルムの作製)
前記ポリエステルAを中間層用の原料とし、前記ポリエステルBを表層用の原料とし、各原料をそれぞれ別個の溶融押出機により溶融押出して、表層/中間層/表層の2種3層積層の無定形シートを冷却したキャスティングドラム上に、冷却固化させて無配向シートを得た。
次いで、機械方向(縦方向)に90℃で3.5倍に延伸した。その後、前記機能層用塗布液を乾燥後の厚みが0.05μmとなるように塗布した後にテンターへ導き、さらにテンター内で予熱工程を経て120℃で横方向に4.3倍に延伸を行い、230℃で2秒間の熱処理を行い、基材フィルムとしてのポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの厚さは50μmであり、機能層/表層/中間層/表層の厚み構成は0.05μm/5μm/40μm/5μmであった。
【0107】
(硬化性コート組成物(硬化性重合体組成物)の調製)
硬化層の形成に用いる塗布液として、紫外線活性基を有する重合体Aを7.5質量部と、多官能アクリレートB1を88質量部と、多官能アクリレートB2を12質量部とを含むアクリル系ポリマー混合物を、溶剤Xとしてのメチルエチルケトンと溶剤Yとしてのプロピレングリコールα-モノメチルエーテルを50:50の質量割合で混合して得た混合溶媒Zに溶解させて、アクリル系ポリマー混合物濃度が40質量%である硬化性コート組成物を調製した。
【0108】
(硬化層の形成)
前記基材フィルムとしてのポリエステルフィルムの機能層表面に、前記硬化性コート組成物をマイヤーバーにより塗布し、80℃を20秒間保持するように加熱して溶剤Xおよび溶剤Yを揮発させた後、紫外線照射装置(セリテック社製 「EUV482A-30型」)で紫外線を200mJ/cm2で照射して光硬化させて、基材フィルムの一方の表面側に、凹凸構造を表面に有する厚さ3.6μmの硬化層を形成し、積層フィルム(サンプル)を作製した。
【0109】
<実施例2>
実施例1において、B1を90質量部とB2を10質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルム(サンプル)を作製した。
【0110】
<比較例1>
実施例1において、B1を94質量部とB2を6質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルム(サンプル)を作製した。
【0111】
<比較例2>
特開2019-183108号公報に記載の方法を参考にし、異なるポリマー間の相分離性を利用した凹凸構造の形成を実施した。
具体的には、硬化層の形成に用いる塗布液として、上記アクリル系ポリマーD1と上記アクリル系ポリマーD2と上記多官能(メタ)アクリレートB1と光架橋開始剤E1との混合比を質量部が27.3:16.7:56.0:5で混合させたアクリル系ポリマー混合物を、メチルエチルケトンと、メトキシプロパノールとを43.6:56.4の質量割合で混合して得た混合溶媒に溶解させて、アクリル系ポリマー混合物濃度が30質量%である硬化性コート組成物を調製した。
実施例1で作製したポリエステルフィルムの機能層表面に、前記硬化性コート組成物をマイヤーバーにより塗布し、90℃で溶媒であるメチルエチルケトン及びメトキシプロパノールを揮発させた後、紫外線照射装置で紫外線を照射して光硬化させて、積層フィルム(サンプル)を作製した。
【0112】
<評価>
実施例及び比較例で示した各物性値の測定方法及び評価の評価方法について説明する。
【0113】
(ヘーズ、全光線透過率)
JIS K 7136に準拠し、村上色彩技術研究所製ヘーズ値メーターHM-150を使用して、積層フィルム(サンプル)のヘーズ、全光線透過率を測定した。
【0114】
(Sa(算術平均高さ)、Sz(最大断面高さ))
Sa(算術平均高さ)、Sz(最大断面高さ)は、ISO25178に準拠し、表面形状計測システム(株式会社日立ハイテクサイエンスの「VertScan」(登録商標)R5500)を用いて、倍率20倍で、積層フィルム(サンプル)表面を光干渉法にて測定した。また、以下の条件で補正およびベースライン補正を行い、データを読み取った。
【0115】
=補正条件=
・補完補正:完全
・ベースライン補正:面補正(多項式近似4次)
【0116】
(R'Sm(要素の平均長さ))
要素の平均長さは、以下のように測定した。
サンプルを、表面形状計測システム(株式会社日立ハイテクサイエンスの「VertScan」を用いて倍率20倍で測定して、2次元断面図グラフを作成させ、高さのプロファイルデータを得た。
プロファイルデータに対して、行ごとに3項における移動平均を計算(すなわち、連続する3点の2番目のデータ(項)の3項移動平均処理)し、0を中心線として、中心線との交点をカウントし、次の式に基づいて周期を計算した。
周期=237.65[μm]/(交点のカウント数/2)
ここで、237.65μmとは、「VertScan」における倍率20倍時のX方向の最大距離とする。
また、行ごとの周期の平均をR'Sm(要素の平均長さ)とした。
【0117】
(透明度)
透明度計(株式会社村上色彩技術研究所「透明度測定器 TM-1D」)を用いて、積層フィルム(サンプル)の透明度を測定した。
【0118】
(ニュートンリング防止効果(ANR性)の評価)
PETフィルム(三菱ケミカル社製、「T100-50」)の上に、塗工面すなわち硬化層が下向きになるように、5cm角に切った積層フィルム(サンプル)を置き、カールを防ぐため、両端にカバーガラスを置いた。3波長蛍光灯の光を積層フィルム(サンプル)に当てて、3波長蛍光灯の反対側から、PETフィルムとサンプル間での光の干渉の有無を目視により観察し、次の基準で評価した。
〇:PETフィルムとサンプル間での光の干渉なし。
×:PETフィルムとサンプル間での光の干渉あり。
〇の場合ANR性あり、×の場合ANR性なし、とした。
【0119】
(光拡散性の評価)
3波長ライトから3cm離れた位置に積層フィルム(サンプル)を置き、サンプルを通して3波長ライトを目視により観察し、次の基準で評価した。
〇:ライトがはっきりと見える。
×:ライトがぼやけて見える。
【0120】
【0121】
(考察)
上記実施例及びこれまで本発明者が行ってきた試験結果から、樹脂フィルムの片面側に硬化層を備えた積層フィルムに関しては、当該硬化層に粒子を含有させず、且つ、硬化層側表面の最大高さ(Sz、ISO25178)を100nm以上に調製し、かつ、ヘーズ値を5.0%以下とし、さらに透明度を70%以上とすることにより、粒子の脱落がなく、他の光学フィルムと積層した際に、干渉縞(ニュートンリング)が発生したり、透過光が歪んだりするのを抑えることができることが分かった。