(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】プリプレグ、繊維強化複合樹脂成形体、管状成形体の製造方法、エポキシ樹脂組成物、および管状成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20240723BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240723BHJP
C08K 5/21 20060101ALI20240723BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240723BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
C08K5/17
C08K5/21
C08K7/06
C08L63/00 Z
(21)【出願番号】P 2020553296
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040933
(87)【国際公開番号】W WO2020080474
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018195636
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】河村 奈緒
(72)【発明者】
【氏名】寺西 拓也
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110194(JP,A)
【文献】特開2016-222935(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04-5/10、5/24
B29B 11/16、15/08-15/14
C08G 59/00-59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含むプリプレグであって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含み、
前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量に対して、前記成分(A)の含有量が40~70質量%であり、前記成分(B)の含有量が15~40質量%であり、前記エポキシ樹脂組成物がビスフェノールF型エポキシ樹脂を含
み、前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有量が前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量に対して20~35質量%である、プリプレグ。
成分(A):オキサゾリドン型エポキシ樹脂
成分(B):ノボラック型エポキシ樹脂
成分(C):フェニルジメチルウレア
成分(D):
アミン型の硬化剤
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量に対して、前記成分(A)の含有量が45~70質量%である、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂組成物中における前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量の質量比(成分(A)の含有量/成分(B)含有量)が1.2以上である、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記成分(B)が下記式(2)で示される構造に由来する構造単位を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【化1】
(式(2)中、nは1~30の整数を表す。)
【請求項5】
前記強化繊維が炭素繊維である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対して、前記成分(C)の含有量が1~10質量部である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対して、前記成分(D)の含有量が2~15質量部である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のプリプレグの2枚以上が積層された積層体の硬化物である、繊維強化複合樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、繊維強化複合樹脂成形体、管状成形体の製造方法、エポキシ樹脂組成物、および管状成形体に関する。
本願は、2018年10月17日に、日本に出願された特願2018-195636号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料の1つである繊維強化複合樹脂成形体は、軽量で、高強度、高剛性であることから、スポーツ・レジャー用途から、自動車や航空機等の産業用途まで、幅広く用いられている。繊維強化複合樹脂成形体の中でも、繊維強化複合樹脂管状体は、例えば、釣り竿、ゴルフクラブ用シャフト、スキーポール、自転車フレーム等のスポーツ・レジャー用途に多用されている。
【0003】
繊維強化複合樹脂成形体の製造方法としては、強化繊維等の長繊維からなる補強材にマトリクス樹脂を含浸させた中間材料、すなわちプリプレグを使用する方法がある。この方法によれば、繊維強化複合樹脂成形体中の強化繊維の含有量を管理しやすいとともに、その含有量を高めに設計することが可能であるという利点がある。
【0004】
プリプレグから繊維強化複合樹脂成形体を得る具体的な方法としては、例えば、オートクレーブを用いた成形方法、プレス成形、内圧成形、オーブン成形等が挙げられる。これらのいずれの方法においても、通常は、プリプレグを2枚以上積層し、目的の型状に賦型後、加熱硬化する際、硬化までに約160℃以上の条件で約2~6時間程度の時間が必要である。すなわち、繊維強化複合樹脂成形体の製造には、高温および長時間の処理が必要とされている。
成形サイクルを向上するためには、100~140℃程度の比較的低温で、数分から数十分程度の短時間で成形できることが求められる。
また、繊維強化複合樹脂成形体を金型から取り出す際の変形を避けるため、繊維強化複合樹脂成形体には耐熱性が求められる。具体的には、硬化後のプリプレグ、すなわち繊維強化複合樹脂成形体のガラス転移温度が、成形時の金型の温度よりも高いことが望まれる。
【0005】
プリプレグに用いられるマトリクス樹脂としては、機械物性、耐熱性、取り扱い性に優れるエポキシ樹脂組成物が広く用いられる。特に、スポーツ・レジャー用途や産業用途等に使用されるエポキシ樹脂組成物は、破断歪と耐熱性の両立が求められている。エポキシ樹脂組成物の破断歪を向上させるには、例えばエポキシ樹脂組成物の架橋密度を低くすることが有効である。しかし、エポキシ樹脂組成物の架橋密度を低くすると、硬化物のガラス転移温度が低くなり、耐熱性が低下しやすくなる。エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が低くなると、繊維強化複合樹脂成形体のガラス転移温度も低くなる。そのため、繊維強化複合樹脂成形体の破断歪と耐熱性の両立は困難である。
従って、低温でも短時間で硬化が完了してハイサイクル成形が可能であり、かつ優れた機械物性、とりわけ優れた破断歪と、耐熱性とを備えた繊維強化複合樹脂成形体が得られるエポキシ樹脂組成物やプリプレグが求められている。
【0006】
強度に優れるゴルフシャフト用プリプレグとして、特許文献1には、破断歪に優れる潜在性硬化剤としてジシアンジアミドを用い、熱可塑性樹脂エラストマーとしてポリビニルホルマールを用いたエポキシ樹脂組成物をマトリクス樹脂とするプリプレグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物が強化繊維に含浸したプリプレグは、130℃において2時間の硬化時間を必要とし、上述の要求に合致するものではない。
【0009】
本発明は、低温でも短時間で硬化が完了し、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる繊維強化複合樹脂成形体を得ることができるプリプレグと、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる繊維強化複合樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を有する。
【0011】
[1]エポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含むプリプレグであって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含み、
前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量に対して、前記成分(A)の含有量が40~70質量%であり、前記成分(B)の含有量が15~40質量%である、プリプレグ。
成分(A):オキサゾリドン型エポキシ樹脂
成分(B):ノボラック型エポキシ樹脂
成分(C):尿素化合物
成分(D):硬化剤
[2]前記エポキシ樹脂組成物中における前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量の質量比(成分(A)の含有量/成分(B)含有量)が1.2以上である、[1]に記載のプリプレグ。
[3]前記成分(B)が下記式(2)で示される構造に由来する構造単位を有する、[1]または[2]に記載のプリプレグ。
【0012】
【0013】
(式(2)中、nは1~30の整数を表す。)
[4]前記強化繊維が炭素繊維である、[1]~[3]のいずれかに記載のプリプレグ。
[5]前記成分(D)がアミン型の硬化剤である、[1]~[4]のいずれかに記載のプリプレグ。
[6]前記成分(C)がフェニルジメチルウレアである、[1]~[5]のいずれかに記載のプリプレグ。
[7]前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対して、前記成分(C)の含有量が1~10質量部である、[1]~[6]のいずれかに記載のプリプレグ。
[8]前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対して、前記成分(D)の含有量が2~15質量部である、[1]~[7]のいずれかに記載のプリプレグ。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のプリプレグの2枚以上が積層された積層体の硬化物である、繊維強化複合樹脂成形体。
[10]管状成形体の製造方法であって、
樹脂組成物と強化繊維とを含む管状のプリプレグを金型に配置する工程、
130℃以上で前記管状のプリプレグを加熱する工程、
前記管状のプリプレグ内部から媒体が膨張することにより前記管状のプリプレグを金型に押し付けて成形する工程、を含み、
前記樹脂組成物は、下記成分(A)、成分(B)、および成分(D)を含む、管状成形体の製造方法。
成分(A):オキサゾリドン型エポキシ樹脂
成分(B):ノボラック型エポキシ樹脂
成分(D):硬化剤
[11]前記管状成形体は環状の湾曲部を有し、
前記管状のプリプレグを環状に湾曲させる工程を含む、[10]に記載の管状成形体の製造方法。
[12]エポキシ樹脂および硬化剤を含み、ガラス転移点が140℃以上であるエポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物を130℃~150℃で加熱して硬化樹脂板としたときの、以下の測定方法における硬化完了時間が12分以下であり、
前記硬化樹脂板は、曲げ強度が174MPa以上、曲げ弾性率が3.6GPa以上、破断歪が9%以上である、エポキシ樹脂組成物。
(測定方法)
JIS K 6300に準じ、ダイ温度140℃でのトルク値(N・m)の変化を測定し、トルク-時間曲線を得る。得られたトルク-時間曲線の接線の傾きが最大値となった後、その傾きが最大値の1/30となるときの時間を硬化完了時間とする。
[13]前記エポキシ樹脂が環構造を有する、[12]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[14]前記エポキシ樹脂が下記式(2)で示される構造に由来する構造単位を有する、[12]または[13]に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0014】
【0015】
(式(2)中、nは1~30の整数を表す。)
[15]前記エポキシ樹脂が尿素化合物を含む、[12]~[14]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[16]湾曲部を有する管状成形体であって、
樹脂組成物の硬化物と炭素繊維とを含み、
前記樹脂組成物は、下記成分(A)、成分(B)、および成分(D)を含む、管状成形体。
成分(A):オキサゾリドン型エポキシ樹脂
成分(B):ノボラック型エポキシ樹脂
成分(D):硬化剤
【発明の効果】
【0016】
本発明のプリプレグは、低温でも短時間で硬化が完了し、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる繊維強化複合樹脂成形体を得ることができる。
本発明の繊維強化複合樹脂成形体は、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、エポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含む。
【0018】
<エポキシ樹脂組成物>
エポキシ樹脂組成物は、以下に示す成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)を含む。また、エポキシ樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)以外の成分(任意成分)を含んでいてもよい。
【0019】
(成分(A))
成分(A)は、オキサゾリドン型エポキシ樹脂である。オキサゾリドン型エポキシ樹脂は、オキサゾリドン環構造を有するエポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂組成物が成分(A)を含むことで、プリプレグの常温での作業性が良好となる。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物(以下、「樹脂硬化物」ともいう。)の耐熱性、破断歪、および強化繊維との接着性が高まり、耐熱性および破断歪に優れる繊維強化複合樹脂成形体が得られる。
なお、本明細書において「常温」とは、30℃を意味する。
【0020】
オキサゾリドン環構造は、イソシアネート基とエポキシ基の付加反応により生成する。
オキサゾリドン型エポキシ樹脂の製造方法としては特に限定されず、例えば、イソシアネート化合物とエポキシ樹脂とを、オキサゾリドン環形成に用いられる触媒の存在下で反応させることにより、ほぼ理論量で得ることができる。イソシアネート化合物とエポキシ樹脂は、当量比(イソシアネート化合物:エポキシ樹脂)1:2~1:10の範囲で反応させることが好ましい。イソシアネート化合物とエポキシ樹脂の当量比が上記範囲であれば、樹脂硬化物の耐熱性および耐水性がより良好となる傾向にある。
【0021】
成分(A)の原料となるイソシアネート化合物としては特に限定されないが、オキサゾリドン環構造をエポキシ樹脂の骨格に組み込むためには、複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物が好ましい。また、樹脂硬化物が高い耐熱性を有するためには、剛直な構造を持つジイソシアネートが好ましい。
イソシアネート化合物の具体例としては、メタンジイソシアネート、ブタン-1,1-ジイソシアネート、エタン-1,2-ジイソシアネート、ブタン-1,2-ジイソシアネート、トランスビニレンジイソシアネート、プロパン-1,3-ジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、2-ブテン-1,4-ジイソシアネート、2-メチルブテン-1,4-ジイソシアネート、2-メチルブタン-1,4-ジイソシアネート、ペンタン-1,5-ジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサン-1,6-ジイソシアネート、ヘプタン-1,7-ジイソシアネート、オクタン-1,8-ジイソシアネート、ノナン-1,9-ジイソシアネート、デカン-1,10-ジイソシアネート、ジメチルシランジイソシアネート、ジフェニルシランジイソシアネート、ω,ω’-1,3-ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω’-1,4-ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω’-1,3-ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω’-1,4-ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω’-1,4-ジメチルナフタレンジイソシアネート、ω,ω’-1,5-ジメチルナフタレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,5-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,6-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-3,5-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-2,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,3’-ジメトキシビスフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジメトキシジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジフェニルサルファイト-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルフォン-4,4’-ジイソシアネート等の2官能イソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の3官能以上のイソシアネート化合物;前記イソシアネート化合物の2量体や3量体等の多量体、アルコールやフェノールによりマスクされたブロックイソシアネートおよびビスウレタン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのイソシアネート化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記イソシアネート化合物の中でも、樹脂硬化物の耐熱性がより向上する傾向にある観点から、2官能イソシアネート化合物または3官能イソシアネート化合物が好ましく、2官能イソシアネート化合物がより好ましく、イソホロン、ベンゼン、トルエン、ジフェニルメタン、ナフタレン、ノルボルネンポリメチレンポリフェニレンポリフェニル、ヘキサメチレンから選ばれる骨格を有する2官能イソシアネート化合物がさらに好ましい。
イソシアネート化合物の官能基数が適度に多ければ、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性が低下しにくくなる。イソシアネート化合物の官能基数が適度に少なければ、樹脂硬化物の耐熱性が低下しにくくなる。
【0023】
成分(A)の原料となるエポキシ樹脂としては、各種のエポキシ樹脂を用いることができるが、オキサゾリドン環構造を効率的にエポキシ樹脂の骨格に組み込むためには、分子の両末端にエポキシ基を持つエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、テトラメチルビスフェノールA型、テトラメチルビスフェノールF型、テトラメチルビスフェノールAD型、テトラメチルビスフェノールS型、テトラブロモビスフェノールA型、ビフェニル型等の2価フェノール類由来のエポキシ樹脂;1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4-〔1-〔4-〔1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール等のトリス(グリシジルオキシフェニル)アルカン類等に由来するエポキシ樹脂;フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型等のノボラック由来のエポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂としては、成分(A)の粘度が過度に上昇するのを抑制できる観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
イソシアネート化合物として、トリレンジイソシアネートのようなトルエン骨格を有する2官能イソシアネート(例えば、1-メチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,5-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,6-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-3,5-ジイソシアネート)1分子と、エポキシ樹脂としてビスフェノールAジグリシジルエーテル2分子とを、混合反応させて得られる付加反応物は、プリプレグの常温での作業性と樹脂硬化物の耐熱性を良好なものとするために特に好ましい。
【0025】
成分(A)の市販品としては、例えば、AER4152、AER4151、LSA3301、LSA2102(いずれも商品名、旭化成イーマテリアルズ株式会社製);ACR1348(商品名、株式会社ADEKA製);DER(登録商標。以下同様。)の852、858(いずれも商品名、ダウ・ケミカル日本株式会社製);TSR-400(商品名、DIC株式会社製);YD-952(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)等が挙げられる。いずれも本発明に好ましく用いられるが、AER4152やTSR-400が特に好ましい。
成分(A)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(A)の含有量は40質量%以上であり、41質量%以上が好ましく、42質量%以上がより好ましい。また、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(A)の含有量は70質量%以下であり、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下が特に好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(A)の含有量は、例えば、40~70質量%が好ましく、40~65質量%がより好ましく、41~60質量%がさらに好ましく、42~55質量%がことさら好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(A)の含有量が上記下限値以上であれば、樹脂硬化物の耐熱性や炭素繊維への接着性、機械物性が向上する傾向にあり、耐熱性と機械物性を両立した繊維強化複合樹脂成形体が得られる。エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(A)の含有量が上記上限値以下であれば、タックやドレープ性に優れたプリプレグを得ることができるとともに、破断歪が高くボイドの無い樹脂硬化物を得ることができる傾向にある。
【0027】
(成分(B))
成分(B)は、ノボラック型エポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂組成物が成分(B)を含むことで、樹脂硬化物の耐熱性を良好に維持することが可能となる。加えて、エポキシ樹脂組成物の速硬化性が向上し、低温でも短時間で硬化が完了するプリプレグが得られる。
【0028】
成分(B)としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
成分(B)が下記式(1)で示される構造に由来する構造単位を有することが好ましく、下記式(2)で示される構造に由来する構造単位を有することが耐熱性の観点からより好ましい。
【0029】
【0030】
(式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表し、nは1~30の整数を表す。)
【0031】
式(1)のRにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
式(1)のRにおけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基が挙げられ、メトキシ基が好ましい。
式(1)のRにおけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0032】
【0033】
(式(2)中、nは1~30の整数を表す。)
【0034】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER(登録商標。以下同様。)の152、154(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);エピクロン(登録商標。以下同様。)のN-740、N-775(いずれも商品名、DIC株式会社製)等が挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロンのN-660、N-665(いずれも商品名、DIC株式会社製);EOCN-1020、EOCN-102S(いずれも商品名、日本化薬株式会社製);YDCN-700、YDCN-701(いずれも商品名、新日鉄住金化学株式会社製)等が挙げられる。
成分(B)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(B)の含有量は15質量%以上であり、20質量%以上が好ましい。また、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(B)の含有量は40質量%以下であり、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(B)の含有量は、例えば、15~40質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましく、20~35質量%がさらに好ましく、20~30質量%がことさら好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(B)の含有量が上記下限値以上であれば、樹脂硬化物の耐熱性が向上する傾向にあり、耐熱性に優れた繊維強化複合樹脂成形体が得られる。加えて、エポキシ樹脂組成物の速硬化性が向上し、低温でも短時間で硬化が完了するプリプレグが得られる。エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量%)に対する成分(B)の含有量が上記上限値以下であれば、樹脂硬化物の機械物性が向上する傾向にあり、機械物性に優れた繊維強化複合樹脂成形体が得られる。加えて、破断歪が高くボイドの無い樹脂硬化物を得ることができる傾向にある。また、エポキシ樹脂組成物の粘度が過度に上昇するのを抑制でき、エポキシ樹脂組成物の調製が容易となる。
【0036】
耐熱性の観点から、エポキシ樹脂組成物中における成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)は1.2以上が好ましく、1.6以上がより好ましい。
靭性及び強度の観点から、エポキシ樹脂組成物中における成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)は5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。
【0037】
(成分(C))
成分(C)は、尿素化合物である。
エポキシ樹脂組成物が成分(C)を含むことで、エポキシ樹脂組成物の速硬化性が向上し、低温でも短時間で硬化が完了するプリプレグが得られる。加えて、樹脂硬化物の破断歪を含む機械物性の低下を抑制できる。
【0038】
尿素化合物としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(DCMU)、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、2,4-ビス(3,3-ジメチルウレイド)トルエン等が挙げられる。
靭性と強度を両立する観点から、尿素化合物としてはフェニルジメチルウレア(PDMU)であることが好ましい。
【0039】
尿素化合物の市販品としては、例えば、2,4-ビス(3,3-ジメチルウレイド)トルエン(TBDMU)は、オミキュア(登録商標。以下同様。)24(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製)等が挙げられ、フェニルジメチルウレア(PDMU)は、オミキュア94(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製)等が挙げられ、4,4’-メチレンビス(フェニルジメチルウレア)(MDMU)は、オミキュア52、オミキュア54(以上、ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製)等が挙げられ、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素は、DCMU99(保土ヶ谷化学株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対する成分(C)の含有量は1~10質量部が好ましく、2~8質量部がより好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対する成分(C)の含有量が上記下限値以上であれば、硬化促進機能が充分に得られる。エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対する成分(C)の含有量が上記上限値以下であれば、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性が高まる。
【0041】
(成分(D))
成分(D)は、硬化剤である。
成分(D)としては、アミン型の硬化剤が好ましい。アミン型の硬化剤は、粒子状の熱活性型の潜在性硬化剤であり、他の成分と組み合わせることにより、比較的低温での硬化が可能となる。また、アミン型の硬化剤は分散性に優れるため、硬化反応の速度が速まる。
【0042】
アミン型の硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、およびこれらの異性体、変成体等が挙げられる。アミン型の硬化剤としては、プリプレグの保存性に優れる観点から、ジシアンジアミドが特に好ましい。
これらのアミン型の硬化剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
成分(D)の市販品としては、例えば、DICYANEX(登録商標。以下同様。)1400F(商品名、エボニック ジャパン株式会社製);jERキュア(登録商標)のDICY7、DICY15(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0044】
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対する成分(D)の含有量は2~15質量部が好ましく、5~9質量部がより好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対する成分(D)の含有量が上記下限値以上であれば、硬化反応が充分に進行する。エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂の総質量(100質量部)に対する成分(D)の含有量が上記上限値以下であれば、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性が高まるとともに、樹脂硬化物の物性を良好に維持できる。
【0045】
反応性の観点から、エポキシ樹脂組成物中における成分(D)の含有量に対する成分(C)の含有量の質量比(成分(C)の含有量/成分(D)の含有量)は0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。
貯蔵安定性の観点から、エポキシ樹脂組成物中における成分(D)の含有量に対する成分(C)の含有量の質量比(成分(C)の含有量/成分(D)の含有量)は1.0以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。
【0046】
(任意成分)
任意成分としては、成分(A)および成分(B)以外のエポキシ樹脂(以下、「他のエポキシ樹脂」ともいう。)、熱可塑性樹脂、添加剤等が挙げられる。
【0047】
他のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、これらを変性したエポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂を変性したエポキシ樹脂等の3官能以上のエポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定はされない。
これらの他のエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0048】
2官能エポキシ樹脂の市販品としては、以下に示すものが挙げられる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jERの825、826、827、828、834、1001(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);エピクロン850(商品名、DIC株式会社製);エポトート(登録商標。以下同様。)YD-128(商品名、新日鉄住金化学株式会社製);DERの331、332(いずれも商品名、ダウ・ケミカル日本株式会社製);Bakelite(登録商標。以下同様。)のEPR154、EPR162、EPR172、EPR173、EPR174(いずれも商品名、Bakelite AG社製)等が挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jERの806、807、1750(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);エピクロン830(商品名、DIC株式会社製);エポトートのYD-170、YD-175(いずれも商品名、新日鉄住金化学株式会社製);BakeliteEPR169(商品名、Bakelite AG社製);GY281、GY282、GY285(いずれも商品名、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)等が挙げられる。
【0049】
3官能以上のエポキシ樹脂の市販品としては、以下に示すものが挙げられる。
ナフタレン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、HP-4032、HP-4700(いずれも商品名、DIC株式会社製);NC-7300(商品名、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER630(商品名、三菱ケミカル株式会社製)、アラルダイト(登録商標)のMY0500、MY0510、MY0600(いずれも商品名、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)等が挙げられる。
【0050】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリオレフィン、液晶ポリマー、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリビニルホルマール、フェノキシ樹脂、ブロックポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの熱可塑性樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記熱可塑性樹脂の中でも、樹脂フロー制御性等に優れる観点から、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリビニルホルマール、ブロックポリマーが好ましい。
特に、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドを用いれば、樹脂硬化物の耐熱性や難燃性がより高まる。ポリビニルホルマールを用いれば、樹脂硬化物の耐熱性を損なうことなく、得られるプリプレグのタックを適切な範囲に容易に制御できる。加えて、強化繊維と樹脂硬化物の接着性がより高まる。ブロックポリマーを用いれば、樹脂硬化物の靱性や耐衝撃性が向上する。
【0052】
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、YP-50、YP-50S、YP70、ZX-1356-2、FX-316(いずれも商品名、新日鉄住金化学株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリビニルホルマールの市販品としては、例えば、ビニレック(登録商標)のK(平均分子量:59,000)、L(平均分子量:66,000)、H(平均分子量:73,000)、E(平均分子量:126,000)(いずれも商品名、JNC株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
樹脂硬化物に180℃を超える耐熱性が必要とされる場合、熱可塑性樹脂としてはポリエーテルスルホンやポリエーテルイミドが好ましく用いられる。
ポリエーテルスルホンの市販品としては、例えば、スミカエクセル(登録商標)の3600P(平均分子量:16,400)、5003P(平均分子量:30,000)、5200P(平均分子量:35,000)、7600P(平均分子量:45,300)(いずれも商品名、住友化学株式会社製)等が挙げられる。
ポリエーテルイミドの市販品としては、例えば、ULTEM(登録商標)の1000(平均分子量:32,000)、1010(平均分子量:32,000)、1040(平均分子量:20,000)(いずれも商品名、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
ブロックポリマーの市販品としては、例えば、Nanostrength(登録商標)のM52、M52N、M22、M22N、123、250、012、E20、E40(いずれも商品名、ARKEMA社製)、TPAE-8、TPAE-10、TPAE-12、TPAE-23、TPAE-31、TPAE-38、TPAE-63、TPAE-100、PA-260(いずれも商品名、株式会社T&K TOKA製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
添加剤としては、例えば、エポキシ樹脂の硬化促進剤、無機質充填材、内部離型剤、有機顔料、無機顔料等が挙げられる。
【0056】
(エポキシ樹脂組成物の製造方法)
エポキシ樹脂組成物は、例えば、上述した各成分を混合することにより得られる。
各成分の混合方法としては、三本ロールミル、プラネタリミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、ホモディスパー等の混合機を用いる方法が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物は、例えば、後述するように、強化繊維の集合体に含浸させてプリプレグの製造に用いることができる。他にも、エポキシ樹脂組成物を離型紙等に塗布して硬化することで、エポキシ樹脂組成物のフィルムを得ることができる。
【0057】
こうして得られるエポキシ樹脂組成物は、低温でも短時間で硬化が完了する。具体的には、エポキシ樹脂組成物の完全硬化時間は12分以内となりやすい。
また、30℃におけるエポキシ樹脂組成物の粘度は、100~1,000,000Pa・sとなりやすく、プリプレグ表面のタックの調整や作業性に優れる。
また、エポキシ樹脂組成物の硬化物(樹脂硬化物)は、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる。例えば、140℃、30分で硬化して得られたエポキシ樹脂組成物の硬化物の曲げ弾性率は3.6GPa以上となりやすく、曲げ強度は174MPa以上となりやすく、破断歪は9%以上となりやすい。また、同条件で得られたエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性の指標となるガラス転移温度は140℃以上となりやすい。
なお、本発明の1つの態様において、「低温」とは、100~140℃の温度のことを意味する。また、「短時間」とは、10~30分間のことを意味する。
【0058】
<強化繊維>
強化繊維は、プリプレグ中で強化繊維基材(強化繊維の集合体)として存在し、シート状であることが好ましい。
強化繊維は、強化繊維が単一方向に配列したものであってもよく、ランダム方向に配列したものであってもよい。
強化繊維の形態としては強化繊維の織物、強化繊維の不織布、強化繊維の長繊維が一方向に引き揃えられたシート等が挙げられる。強化繊維は、比強度や比弾性率が高い繊維強化複合材料を成形することができるという観点からは、長繊維が単一方向に引き揃えられた強化繊維の束からなるシートであることが好ましく、取り扱いが容易であるという観点からは、強化繊維の織物であることが好ましい。
【0059】
強化繊維の材質としては、ガラス繊維、炭素繊維(黒鉛繊維を含む。)、アラミド繊維、ボロン繊維等が挙げられる。
繊維強化複合樹脂成形体の機械物性および軽量化の観点から、強化繊維としては炭素繊維が好ましい。すなわち、強化繊維は炭素繊維を含む強化繊維基材が好ましい。
【0060】
炭素繊維の繊維径は、3~12μmが好ましい。
炭素繊維の繊維径が上記下限値以上であれば、炭素繊維を加工するためのプロセス、例えば、コーム、ロール等のプロセスにおいて、炭素繊維が横移動して炭素繊維同士が擦れたり、炭素繊維とロール表面等とが擦れたりするときに、炭素繊維が切断したり、毛羽だまりが生じたりしにくい。このため、安定した強度の繊維強化複合材料を好適に製造することができる。炭素繊維の繊維径が上記上限値以下であれば、通常の方法で炭素繊維を製造することができる。
炭素繊維束における炭素繊維の本数は、1,000~70,000本が好ましい。
【0061】
繊維強化複合樹脂成形体の剛性の観点から、炭素繊維のストランド引張強度は1.5~9GPaが好ましく、炭素繊維のストランド引張弾性率は150~260GPaが好ましい。
炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率は、JIS R 7601:1986に準拠して測定される値である。
【0062】
<プリプレグの製造方法>
プリプレグは、例えば、上述したエポキシ樹脂組成物を強化繊維の集合体に含浸させることで得られる。このようにして得られるプリプレグは、エポキシ樹脂組成物が強化繊維の集合体に含浸したものである。
エポキシ樹脂組成物を強化繊維の集合体に含浸させる方法としては、例えばエポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトン、メタノール等の溶媒に溶解して低粘度化してから、強化繊維の集合体に含浸させるウェット法;エポキシ樹脂組成物を加熱により低粘度化してから、強化繊維の集合体に含浸させるホットメルト法(ドライ法)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
ウェット法は、強化繊維の集合体をエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法である。
ホットメルト法には、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接、強化繊維の集合体に含浸させる方法と、一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙等の基材の表面に塗布してフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の集合体の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維の集合体に樹脂を含浸させる方法がある。離型紙等の基材の表面に塗布して得られる塗布層は、未硬化のままでホットメルト法に用いてもよいし、塗布層を硬化させた後にホットメルト法に用いてもよい。
ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上存在しないため好ましい。
【0064】
プリプレグの総質量(100質量%)に対するプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含有量(以下、「樹脂含有量」ともいう。)は15~50質量%が好ましく、20~45質量%がより好ましく、25~40質量%がさらに好ましい。
樹脂含有量が上記下限値以上であれば、強化繊維とエポキシ樹脂組成物との接着性を充分に確保することができる。樹脂含有量が上記上限値以下であれば、繊維強化複合樹脂成形体の機械物性がより高まる。
【0065】
<作用効果>
以上説明した本発明のプリプレグは、上述したエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含む。本発明のプリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物は、ガラス転移温度の低下および硬化速度の低下を防ぐことができる。
よって、本発明のプリプレグは、低温でも短時間で硬化が完了し、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる繊維強化複合樹脂成形体を得ることができる。
また、本発明のプリプレグを用いれば、繊維強化複合樹脂成形体の成形において加工時間を短縮できるから、低コストでの繊維強化複合樹脂成形体の製造が可能である。
しかも、本発明のプリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物は、30℃における粘度が制御されていることから、プリプレグ表面のタックの調整や作業性に優れる。
【0066】
[繊維強化複合樹脂成形体]
本発明の繊維強化複合樹脂成形体は、上述した本発明のプリプレグの2枚以上が積層された積層体の硬化物である。すなわち、本発明の繊維強化複合樹脂成形体は、プリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物の硬化物と、強化繊維とを含む。
繊維強化複合樹脂成形体は、例えば、本発明のプリプレグを2枚以上積層した後、得られた積層体に圧力を付与しながら、エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させる方法等により成形して得られる。
【0067】
本発明の繊維強化複合樹脂成形体の成形方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法、シートラップ成形法や、強化繊維のフィラメントやプリフォームにエポキシ樹脂組成物を含浸させて硬化し成形品を得るRTM(Resin Transfer Molding)、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding:真空樹脂含浸製造法)、フィラメントワインディング、RFI(Resin Film Infusion)等が挙げられるが、これらの成形方法に限られるものではない。
【0068】
ラッピングテープ法は、マンドレル等の芯金にプリプレグを捲回して、管状の繊維強化複合樹脂成形体(繊維強化複合樹脂管状体)を成形する方法であり、ゴルフシャフト、釣り竿等の棒状体を作製する際に好ましく用いられる。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回し、プリプレグの固定および圧力付与のため、プリプレグの外側に熱可塑性フィルムからなるラッピングテープを捲回し、オーブン中でプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた後、芯金を抜き取って繊維強化複合樹脂管状体を得る方法である。
【0069】
内圧成形法は、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、成形する方法である。加熱する温度にも特に制限はないが、高い温度であるほど成形時間を短くすることができるので好ましい。具体的には120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。しかしながら温度が高すぎると成形型の温度を下げるのに非常に時間がかかる、または、温度を下げずにプリプレグをセットする場合は硬化が始まって最終成形物の隅々にまでエポキシ樹脂組成物が行き渡らないこともある。本方法は、ゴルフシャフト、バット、テニスやバドミントン等のラケットの如き複雑な形状物を成形する際に好ましく用いられる。
【0070】
以上説明した本発明の繊維強化複合樹脂成形体にあっては、本発明のプリプレグの2枚以上が積層された積層体の硬化物であるので、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる。
【0071】
本発明の繊維強化複合樹脂成形体は、スポーツ用途、一般産業用途および航空宇宙用途に好適に用いられる。より具体的には、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバドミントンのラケット用途、ホッケー等のスティック用途およびスキーポール用途に好適に用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、船舶、および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブルおよび補修補強材料等に好適に用いられる。
【0072】
[エポキシ樹脂組成物]
上記で説明した、本発明のプリプレグに用いられるエポキシ樹脂組成物とは別の態様の、本発明のエポキシ樹脂組成物について、以下説明する。
【0073】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂および硬化剤を含む。
【0074】
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂としては、前述の成分(A)、成分(B)、および任意成分として挙げた他のエポキシ樹脂を挙げることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、前述の成分(A)または成分(B)を含むことが好ましく、前述の成分(A)および成分(B)を含むことがより好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物における成分(A)および成分(B)の具体的な成分や含有量、好ましい態様等は前述のとおりである。
【0075】
特に、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、環構造を有することが好ましく、ナフタレン構造、ジシクロペンタジエン構造、または下記式(2)で示される構造に由来する構造単位を有することが耐熱性の観点から好ましい。
【0076】
【0077】
(式(2)中、nは1~30の整数を表す。)
【0078】
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤としては、前述の成分(D)を挙げることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物における成分(D)の具体的な成分や含有量、好ましい態様等は前述のとおりである。
【0079】
エポキシ樹脂組成物の速硬化性が向上し、低温でも短時間で硬化が完了するプリプレグが得られ、加えて、樹脂硬化物の破断歪の低下を抑制できることから、本発明のエポキシ樹脂組成物は尿素化合物を含んでもよい。尿素化合物としては、前述の成分(C)を挙げることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物における成分(C)の具体的な成分や含有量、好ましい態様等は前述のとおりである。
【0080】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性の指標となるガラス転移温度は通常120℃以上であり、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。また、靭性の観点から、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
【0081】
本発明のエポキシ樹脂組成物を130℃~150℃で加熱して硬化樹脂板としたときの、以下の測定法における硬化完了時間は12分以下であり、11分以下が好ましく、8分以下がより好ましい。
(測定方法)
JIS K 6300に準じ、ダイ温度140℃でのトルク値(N・m)の変化を測定し、トルク-時間曲線を得る。得られたトルク-時間曲線の接線の傾きが最大値となった後、その傾きが最大値の1/30となるときの時間を硬化完了時間とする。
【0082】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物を130℃~150℃で加熱して得られる硬化樹脂板の曲げ強度が174MPa以上、好ましくは175MPa以上、より好ましくは180MPa以上であり、コストの観点からは250MPa以下が好ましく、曲げ弾性率が3.6GPa以上、好ましくは3.7GPa以上、より好ましくは3.8GPa以上であり、コストの観点からは5.0MPa以下が好ましく、破断歪が9%以上、好ましくは9.5%以上、より好ましくは10%以上、コストの観点からは20%以下が好ましい。
【0083】
このように、本発明のエポキシ樹脂組成物は、低温でも短時間で硬化が完了し、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる樹脂成形体を得ることができる。従って、プリプレグに用いられるマトリクス樹脂として有用である。
【0084】
[管状成形体の製造方法]
本発明の管状成形体の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)樹脂組成物と強化繊維とを含む管状のプリプレグを金型に配置する工程、
(2)130℃以上で管状のプリプレグを加熱する工程、
(3)管状のプリプレグ内部から媒体が膨張することにより管状のプリプレグを金型に押し付けて成型する工程。
【0085】
管状のプリプレグは、たとえば、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体に、樹脂組成物と強化繊維とを含むプリプレグを捲回して得ることができる。
得られた管状のプリプレグは、金型にセットされ、130℃以上、好ましくは140℃以上に加熱して、成形される。成形に際しては、内圧付与体に高圧の気体を導入することにより膨張させ、管状のプリプレグ内部から金型に押し付けることによって行うことができる。
【0086】
本発明の管状成形体の製造方法において用いられる管状のプリプレグが含む樹脂組成物は、前述の成分(A)、成分(B)、および成分(D)を含む。本発明の管状成形体の製造方法における成分(A)、成分(B)、および成分(D)の具体的な成分や含有量、好ましい態様等は前述のとおりである。
【0087】
樹脂組成物の速硬化性が向上し、低温でも短時間で硬化が完了する管状のプリプレグが得られ、加えて、樹脂硬化物の破断歪の低下を抑制できることから、本発明の管状成形体の製造方法において用いられる管状のプリプレグが含む樹脂組成物は尿素化合物を含んでもよい。尿素化合物としては、前述の成分(C)を挙げることができる。本発明の管状成形体の製造方法における成分(C)の具体的な成分や含有量、好ましい態様等は前述のとおりである。
【0088】
本発明の管状成形体の製造方法において用いられる管状のプリプレグが含む樹脂組成物は、前述の本発明のエポキシ樹脂組成物であってもよく、前述の本発明のプリプレグが含むエポキシ樹脂組成物であってもよい。
【0089】
本発明の管状成形体の製造方法において、管状成形体が環状の湾曲部を有している場合、管状のプリプレグを環状に湾曲させる工程を、さらに含んでいてもよい。
管状成形体が環状の湾曲部を有するとは、テニスやバドミントンのラケットのようなものを指す。
【0090】
[管状成形体]
本発明の管状成形体は、湾曲部、好ましくは環状の湾曲部を有し、樹脂組成物の硬化物と炭素繊維とを含む。
本発明の管状成形体が含む樹脂組成物は、前述の成分(A)、成分(B)、および成分(D)を含む。本発明の管状成形体の製造方法における成分(A)、成分(B)、および成分(D)の具体的な成分や含有量、好ましい態様等は前述のとおりである。すなわち、本発明の管状成形体が含む樹脂組成物は、本発明の管状成形体の製造方法において用いられる管状のプリプレグが含む樹脂組成物と、具体的な成分や含有量、好ましい態様等が同様であってよい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0092】
<各成分>
(成分(A))
・TSR-400:オキサゾリドン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:TSR-400)。
【0093】
(成分(B))
・N-775:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:エピクロンN-775)。
・N-740:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:エピクロンN-740)。
【0094】
(成分(C))
・オミキュア94:3-フェニル-1,1-ジメチルウレア(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製、商品名:オミキュア94)。
【0095】
(成分(D))
・1400F:ジシアンジアミド(エボニック ジャパン株式会社製、商品名:DICYANEX1400F)。
【0096】
(他のエポキシ樹脂)
・jER807:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:jER807)。
・jER828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:jER828、数平均分子量370)。
・jER828+DDS:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:jER828、数平均分子量370)100質量部と、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS、和歌山精化工業株式会社製、商品名:セイカキュア(登録商標)-S)9質量部とを混合し、得られた混合物を170℃に加熱し、1時間反応(予備反応)させて得られたエポキシ樹脂(エポキシ当量266g/eq、90℃における粘度1.3Pa・s)。
【0097】
(その他の成分)
・2MZA-PW:(四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2MZA-PW)
【0098】
[実施例1~4、比較例1~8]
<硬化樹脂板の製造>
表1~3に示す配合に従い、以下のようにしてエポキシ樹脂組成物を調製した。
まず、成分(C)および成分(D)以外の成分をガラスフラスコに計量し、100℃にて加熱混合することで均一なエポキシ樹脂主剤を得た。
得られたエポキシ樹脂主剤を60℃以下に冷却した後、成分(C)および成分(D)を計量して添加し、60℃で加熱混合することによって均一に分散させ、エポキシ樹脂組成物を得た。
ついで、得られたエポキシ樹脂組成物を厚さ2mmテフロン(登録商標。以下同様。)スペーサーと共にガラス板で挟んでキャストし、140℃で30分加熱硬化させることにより、厚さ2mmの硬化樹脂板(エポキシ樹脂組成物の硬化物)を得た。得られた硬化樹脂板について、下記の測定および評価を行った。
結果を表1~3に示す。
【0099】
[比較例9]
表3に示す配合に従い、以下のようにしてエポキシ樹脂組成物を調製した。
まず、成分(C)および成分(D)以外の成分をガラスフラスコに計量し、100℃にて加熱混合することで均一なエポキシ樹脂主剤を得た。
得られたエポキシ樹脂主剤を60℃以下に冷却した後、成分(C)および成分(D)を計量して添加し、60℃で加熱混合することによって均一に分散させ、エポキシ樹脂組成物を得た。
ついで、得られたエポキシ樹脂組成物を厚さ2mmテフロンスペーサーと共にガラス板で挟んでキャストし、70℃で10分保持した後、140℃で40分加熱硬化させることにより、厚さ2mmの硬化樹脂板(エポキシ樹脂組成物の硬化物)を得た。得られた硬化樹脂板について、下記の測定および評価を行った。
結果を表3に示す。
【0100】
(硬化性の評価)
JIS K 6300に準じ、以下に示す測定条件にてダイ温度140℃でのトルク値(N・m)の変化を測定し、トルク-時間曲線を得た。得られたトルク-時間曲線の接線の傾きが最大値となった後、その傾きが最大値の1/30となるときの時間を硬化完了時間とした。
・測定機器:JSRトレーディング株式会社製、製品名:キュラストメーター7TypeP
・振動数:100cpm
・振動角度:±1/4°
・ダイス形状:WP-100
【0101】
(機械物性の評価)
各例における硬化樹脂板を長さ60mm×幅8mmに加工して試験片とした。得られた試験片について、以下に示す測定条件にて3点曲げ試験を行い、硬化樹脂板の曲げ強度、曲げ弾性率、および破断歪を測定した。
・測定機器:INSTRON社製、製品名:INSTRON 5565
・治具:圧子R=3.2mm、サポートR=1.6mm、サポート間距離(L)と試験片の厚さ(d)の比(L/d)=16
・測定環境:温度23℃、湿度50%RH
【0102】
(耐熱性の評価)
各例における硬化樹脂板を長さ55mm×幅12.5mmに加工して試験片とした。得られた試験片について、以下に示す測定条件にて貯蔵弾性率(G’)を測定し、logG’を温度に対してプロットし、logG’の平坦領域の近似直線と、G’が転移する領域の近似直線との交点の温度をガラス転移温度(G’-Tg)として記録した。
・測定機器:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、製品名:RES-RDA
・周波数:1Hz
・昇温速度5℃/分
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
実施例1~4で得られたエポキシ樹脂組成物は、いずれも硬化完了時間が12分以内であった。また、これらエポキシ樹脂組成物の硬化物である硬化樹脂板は、いずれも曲げ強度が174MPa以上、曲げ弾性率が3.6GPa以上、破断歪が9%以上であり、機械物性に優れていた。また、硬化樹脂板のガラス転移温度が140℃以上であり、耐熱性にも優れていた。
よって、実施例1~4で得られたエポキシ樹脂組成物を含むプリプレグであれば、低温でも短時間で硬化が完了し、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる繊維強化複合樹脂成形体を得ることができることが示された。
【0107】
成分(A)を含まない比較例1のエポキシ樹脂組成物は、硬化物(硬化樹脂板)の破断歪が低く、機械物性に劣っていた。
成分(B)を含まない比較例2のエポキシ樹脂組成物は、硬化完了時間が長かった。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が低く、耐熱性に劣っていた。
成分(A)の含有量が40質量%未満である比較例3、4のエポキシ樹脂組成物は、硬化物のガラス転移温度が低く、耐熱性に劣っていた。また、成分(A)の含有量が少ないため、強化繊維への接着性が低下し、繊維強化複合樹脂成形体の物性が低下すると推測される。
成分(B)の含有量が15質量%未満である比較例5、6のエポキシ樹脂組成物は、硬化物のガラス転移温度が低く、耐熱性に劣っていた。
成分(A)の含有量が70質量%より多い比較例7のエポキシ樹脂組成物は、硬化物のガラス転移温度が低く、耐熱性に劣っていた。また、硬化物の曲げ強度が低く、機械物性に劣っていた。
成分(B)の含有量が40質量%より多い比較例8のエポキシ樹脂組成物は、硬化物の曲げ強度が低く、機械物性に劣っていた。
成分(C)を含まない比較例9のエポキシ樹脂組成物は、曲げ強度、曲げ弾性率、破断歪が低く、機械物性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のプリプレグによれば、低温でも短時間で硬化が完了し、曲げ弾性率、曲げ強度、破断歪等の機械物性および耐熱性に優れる繊維強化複合樹脂成形体を得ることができる。よって、本発明によれば、高生産性、高効率で、機械物性に優れた成形体、例えばゴルフクラブ用シャフト等のスポーツ・レジャー用途成形体から航空機等の産業用途の成形体まで、幅広く提供することができる。