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特許7524770端子付き電線及びこれを備えたハーネス部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】端子付き電線及びこれを備えたハーネス部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021002798
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022108022
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和彦
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-266469(JP,A)
【文献】実開昭56-104070(JP,U)
【文献】実開昭52-151384(JP,U)
【文献】特開昭57-187880(JP,A)
【文献】特開2012-186097(JP,A)
【文献】実開昭59-031159(JP,U)
【文献】国際公開第2018/088189(WO,A1)
【文献】特開2019-096568(JP,A)
【文献】特開2016-115525(JP,A)
【文献】特開2016-004762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線からなる芯線が絶縁被覆に覆われた被覆線部、及び前記芯線が前記絶縁被覆から露出した露出部を有する電線と、
前記電線に沿って形成された底板部と、前記底板部から立設され前記電線の長手方向に並ぶ第1バレル部及び第2バレル部と、を有する端子と
備え、
前記露出部は、折り返し部にて折り返された形状を有するとともに、前記折り返し部よりも前記絶縁被覆に近い第1露出部と、前記折り返し部よりも前記絶縁被覆から遠い第2露出部と、を有し、
前記第1バレル部には、前記第1露出部と前記第2露出部とが互いに重なり合って圧着されており、
前記第2バレル部には、前記被覆線部の一部と前記第2露出部とが互いに重なり合って圧着されており、
前記第1バレル部と前記第2バレル部との間において、前記第1露出部と前記第2露出部とが接触しており、
前記第2バレル部内において、前記被覆線部の一部は、前記第2露出部よりも前記底板部から遠い側の端部に配されており、前記第2バレル部は、前記絶縁被覆と接触しているとともに、前記底板部は、前記第2露出部を構成する前記複数の素線と接触している、
端子付き電線。
【請求項2】
前記第2バレル部内において、前記被覆線部の一部の断面形状は、楕円形状であり、前記第2露出部は、当該楕円形状に沿って前記被覆線部との接触部が湾曲している、
請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記底板部よりも前記端子の基端側に前記第2露出部が突出した突出部が形成されている、
請求項又はに記載の端子付き電線。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の端子付き電線と、
前記端子付き電線を保持するコネクタハウジングと、を備える
ハーネス部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線及びこれを備えたハーネス部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線の端部に端子が取り付けられた端子付き電線が開示されている。この端子は、電線の端部において絶縁被覆から露出した芯線にかしめられた第1バレル部と、電線の絶縁被覆にかしめられた第2バレル部とを有する。ここで、特許文献1に記載の端子付き電線において、絶縁被覆から露出した芯線は折り返されており、第1バレル部は芯線における互いに異なる部位同士が重なり合った箇所にかしめられている。これにより、芯線の直径が小さい場合であっても、第1バレル部にかしめられる芯線の部位を、第1バレル部をかしめるに適した太さにしようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-283458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電線の細径化を図る場合は、芯線の外径だけではなく絶縁被覆の外径も小さくなる。特許文献1に記載の端子付き電線においては、絶縁被覆が細径化された際の第2バレル部と電線との機械的接続性については考慮されておらず、電線と端子との機械的接続性について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、電線の細径化を図った場合であっても、電線と端子との機械的接続性を確保することができる端子付き電線及びこれを備えたハーネス部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、芯線が絶縁被覆に覆われた被覆線部、及び前記芯線が前記絶縁被覆から露出した露出部を有する電線と、前記電線の長手方向に並ぶ第1バレル部及び第2バレル部を有する端子とを備え、前記第1バレル部には、前記露出部の一部を含む複数の第1被圧着部が互いに重なり合って圧着されており、前記第2バレル部には、前記被覆線部の一部を含む複数の第2被圧着部が互いに重なり合って圧着されている、端子付き電線を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、前記端子付き電線と、前記端子付き電線を保持するコネクタハウジングと、を備えるハーネス部材を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電線の細径化を図った場合であっても、電線と端子との機械的接続性を確保することができる端子付き電線及びこれを備えたハーネス部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態における、端子付き電線の側面図であって、端子における電線周辺部分のみを断面として表した図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】第1の実施の形態における、かしめ前の状態における端子の平面図である。
図5】第1の実施の形態における、電線の絶縁被覆をずらした状態を示す側面図である。
図6】第1の実施の形態における、電線の露出部を折り返した状態を示す側面図である。
図7】第1の実施の形態における、電線を端子内に組み付けた状態を示す側面図である。
図8】第1の実施の形態における、ハーネス部材の断面図である。
図9】第2の実施の形態における、端子付き電線の側面図であって、端子における電線周辺部分のみを断面として表した図である。
図10】第2の実施の形態における、電線の露出部における折り返し部周辺を超音波溶接する様子を示す側面図である。
図11】第2の実施の形態における、超音波溶接後の電線の状態を示す側面図。
図12】第2の実施の形態における、電線の溶接部を一部切断した状態を示す側面図。
図13】第3の実施の形態における、端子付き電線の側面図であって、端子における電線周辺部分のみを断面として表した図である。
図14】第4の実施の形態における、端子付き電線の側面図であって、端子における電線周辺部分のみを断面として表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図8を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(端子付き電線1)
図1は、本形態における、端子付き電線1の側面図であって、端子3における電線2周辺部分のみを断面として表した図である。図2は、図1のII-II線断面図である。図3は、図1のIII-III線断面図である。図4は、かしめ前の状態における端子の平面図である。
【0012】
端子付き電線1においては、端子3は従来のものを使用しつつ、電線2については従来のものよりも細いものを採用する場合(すなわち電線2の細径化を図る場合)がある。例えば、端子3については相手方の図示しない端子との接続性の観点等からその大きさを不変に保つ必要があるものの電線2については従来よりも細いものを採用できる場合があり得る。かかる場合において、特に工夫しなければ、電線2と端子3とのサイズが合わず、端子3を電線2に強固にかしめることができないおそれがある。その結果、電線2と端子3との機械的接続性が低くなり、端子3から電線2が抜けやすくなるおそれがある。本形態は、かかる事情に鑑み、端子3に比べて電線2のサイズ(すなわち直径)が小さい場合であっても、端子3と電線2との機械的接続性を確保することができる端子付き電線1を提供しようとするものである。
【0013】
図1に示すごとく、端子付き電線1は、電線2及び端子3を備える。電線2は、芯線21及び絶縁被覆22を備える。本形態において、芯線21は、複数の素線210(図2及び図3参照)を撚り合わせてなる撚線である。本形態において、芯線21は、公称断面積が0.13mm(すなわち0.13SQ)である一方、端子3は、芯線21の公称断面積が0.25mm(すなわち0.25SQ)又は0.3mm(すなわち0.3SQ)となる電線2を固定するために一般に用いられている端子である。電線2の端部においては、絶縁被覆22が剥がされて芯線21が露出している。すなわち、電線2は、絶縁被覆22から芯線21が露出した露出部23と、芯線21が絶縁被覆22に覆われた被覆線部24とを有する。
【0014】
露出部23は、被覆線部24と反対側の部位が折り返されている。そして、電線2は、露出部23の互いに異なる部位同士が重なり合っているとともに、露出部23と被覆線部24とが重なり合っている。電線2における露出部23の互いに異なる部位同士が重なり合った箇所は、端子3における後述する第1バレル部33に、かしめにより圧着されており、電線2における露出部23と被覆線部24とが重なり合った領域は、端子3における後述する第2バレル部34に、かしめにより圧着されている。
【0015】
端子3は、後述するように、コネクタの雄端子を構成するものである。端子3は、例えば一枚の板金を所定形状に打ち抜くとともに折り曲げることにより全体が一体として形成されている。端子3は、一方向に長尺に形成されており、その先端側において図示しない雌端子に接続され、その基端側において電線2に接続される。なお、端子付き電線1の長手方向(例えば図1の左右方向)を軸方向といい、軸方向の一方側であって、端子3における雌端子に接続される側(例えば図1の右側)を先端側といい、端子3における電線2に接続される側(例えば図1の左側)を基端側という。
【0016】
図1及び図4に示すごとく、端子3は、タブ部31、底板部32、一対の第1バレル部33及び一対の第2バレル部34を少なくとも備える。タブ部31は、端子3の先端部に形成されており、軸方向に長尺な棒状となるよう形成されている。タブ部31は、その長手方向に直交する断面が略U字状となるよう折り曲げて形成されている。底板部32は、軸方向に長尺な板状を呈している。底板部32から底板部32の厚み方向の一方側に、一対の第1バレル部33及び一対の第2バレル部34が立設されている。以後、便宜的に、底板部32から一対の第1バレル部33及び一対の第2バレル部34が立設された側(例えば図1の上側)を上側といい、その反対側(例えば図1の下側)を下側という。なお、上下の表現は便宜的なものであり、例えば、端子付き電線1の使用状態における姿勢を限定するものではない。
【0017】
本形態において、一対の第1バレル部33及び一対の第2バレル部34は、底板部32と反対側が開放されたいわゆるオープンバレルである。一対の第1バレル部33は、一対の第2バレル部34よりも先端側(すなわちタブ部31側)に形成されており、一対の第2バレル部34は、端子3の基端部に形成されている。一対の第1バレル部33は、底板部32の幅方向の両端から上側に立設されており、同様に、一対の第2バレル部34は、底板部32の幅方向の両端から上側に立設されている。図1において二点鎖線にて示すごとく、一対の第1バレル部33及び一対の第2バレル部34のかしめ前の状態において、一対の第2バレル部34は、一対の第1バレル部33よりも上側に大きく突出するよう形成されている。一対の第1バレル部33及び一対の第2バレル部34は、少なくとも上下方向に圧縮されることで、それぞれの被圧着部と少なくとも上下方向に圧着される。本形態において、一対の第1バレル部33及び一対の第2バレル部34は、略全周において縮径するよう圧縮されることにより、それぞれの被圧着部と圧着されている。
【0018】
図1及び図2に示すごとく、一対の第1バレル部33には、露出部23の一部を含む2つの第1被圧着部25a,25bが互いに重なり合って圧着されている。本形態において、2つ第1被圧着部25a,25bは、露出部23における互いに重なる2つの部位からなる。2つの第1被圧着部25a,25bは、上下方向に重なり合っている。なお、図2及び図3においては、芯線21は、外形の概略形状を示している。
【0019】
図1に示すごとく、第1被圧着部25a,25bよりも先端側に、露出部23の折り返し部231が位置している。折り返し部231は、露出部23において比較的硬く、第1バレル部33又は第2バレル部34のかしめを行い難いため、第1被圧着部25a,25bよりも先端側に離れた箇所に配されている。
【0020】
一対の第2バレル部34は、電線2にかしめられた状態において互いに重ならないよう形成されている。すなわち、図4に示すごとく、一対の第2バレル部34は、互いに軸方向にずれて形成されている。図1及び図3に示すごとく、第2バレル部34には、被覆線部24の一部を含む2つの第2被圧着部26a,26bが互いに重なり合って圧着されている。第2被圧着部26aは、被覆線部24の一部からなり、第2被圧着部26bは、露出部23の一部からなる。2つの第2被圧着部26a,26bは、上下方向に重なり合っている。2つの第2被圧着部26a,26bのうち、被覆線部24の一部によって構成される第2被圧着部26aは、露出部23の一部によって構成される第2被圧着部26bの上側に配されている。つまり、2つの第2被圧着部26a,26bにおいて、被覆線部24の一部によって構成される第2被圧着部26aは、底板部32から遠い側の端部に配されており、露出部23の一部によって構成される第2被圧着部26bは、底板部32に当接している。
【0021】
図1に示すごとく、露出部23は、露出部23の一部によって構成される第2被圧着部26bから延びるとともに、底板部32よりも基端側に突出した突出部27を備える。突出部27は、露出部23における被覆線部24と反対側の端部である。底板部32からの突出部27の突出長さは、例えば、端子3に圧着された部位を除く電線2の半径以上、直径以下とすることができる。
【0022】
(端子付き電線1の製造方法)
次に、図5乃至図7を参照しつつ、本形態における、端子付き電線1の製造方法につき説明する。
まず、電線2を準備する。そして、電線2の先端近傍において芯線21及び絶縁被覆22のうちの絶縁被覆22のみを切断し、切り離された側の絶縁被覆22aを先端側にずらし、芯線21に露出部23を形成する。この状態が図5に示す状態である。
【0023】
次いで、露出部23を折り返す。このとき、露出部23の一部が被覆線部24に重なるよう露出部23を折り返す。このときの状態が図6に示す状態である。
【0024】
次いで、図7に示すごとく、電線2を端子3の底板部32上に配置する。電線2は、先端側の端部(すなわち折り返し部231)が第1バレル部33よりも先端側に位置するよう配される。また、電線2は、一対の第1バレル部33及び底板部32に囲まれる領域に、露出部23の互いに異なる部位同士が重なり合った箇所が配され、一対の第2バレル部34及び底板部32に囲まれる領域に、被覆線部24と露出部23とが重なり合った箇所が配される。そして、露出部23の基端側の端部(すなわち突出部27となる部位)及び切り離された側の絶縁被覆22aを、底板部32よりも基端側に突出させる。
【0025】
次いで、一対の第1バレル部33が、露出部23の互いに異なる部位同士が重なり合った箇所(すなわち2つの第1被圧着部25a,25b)に向かってかしめられる。また、一対の第2バレル部34が、互いに重なり合った被覆線部24と露出部23と(すなわち2つの第2被圧着部26a,26b)に向かってかしめられる。そして、底板部32よりも基端側に突出した露出部23の基端側の端部が切断される。この切断箇所は、図7において一点鎖線にて示す箇所であり、底板部32から基端側に僅かに離れた位置である。なお、露出部23の底板部32からの突出量が小さい場合は、例えば切り離された側の絶縁被覆22aを抜き取るだけでよく、必ずしも露出部23を切断する必要はない。
以上のように、図1に示すような本形態の端子付き電線1を製造することができる。
【0026】
(ハーネス部材4)
次に、本形態の端子付き電線1を備えたハーネス部材4について説明する。図8は、本形態における、ハーネス部材4の断面図である。本形態において、ハーネス部材4は、例えば、自動車の車輪の回転速度を検出する車輪速センサの検出信号出力用のハーネスとすることができる。すなわち、端子付き電線1の端子3は、車輪速センサの磁気検出素子の検出信号を出力する端子とすることができ、電線2は、磁気検出素子から端子3への検出信号を伝送するための電線とすることができる。車輪速センサは、例えばアンチロックブレーキシステム(ABS)を構成するものとすることができる。この場合、端子付き電線1は、ABS一体型EPBハーネスを構成してもよい。ABS一体型EPBハーネスにおいては、端子付き電線1の電線2が電動パーキングブレーキ(EPB:Electric Parking Brake)用の電動モータに駆動電流を供給するための電源線と共通のシースにて被覆される(例えば特開2013-237428号公報に記載の複合ハーネス参照)。なお、ハーネス部材4の用途はこれに限られず、例えば、端子付き電線1を、車輪速センサの検出信号以外の他の信号を伝送するためのものとすることもできる。一例として、端子付き電線1を、例えば車両等を構成する回転軸のトルクを検出するためのトルクセンサの検出信号を伝送するものとすることができる。
【0027】
ハーネス部材4は、コネクタハウジング41と複数の端子付き電線1とを有する。本形態において、コネクタハウジング41は、成形型内に複数の端子付き電線1を配置してコネクタハウジング41を形成する樹脂を注入するインサート成形により成形される。図8において、端子付き電線1は1つのみ表しているが、実際は車輪速センサの磁気検出素子の端子3に接続された複数の端子付き電線1がコネクタハウジング41内に埋設されている。複数の端子付き電線1のそれぞれの電線2は、シース42によって一括して覆われている。そして、シースの先端部から先端側の領域がコネクタハウジング41内に埋設されている。
【0028】
コネクタハウジング41は、先端側に向かって開口する嵌合口411を有する。コネクタハウジング41内に埋設された複数の端子3のタブ部31は、嵌合口411の内側の空間に突出している。そして、嵌合口411には、相手コネクタが嵌合される。コネクタハウジング41に相手コネクタが嵌合された状態においては、嵌合口411の内側に突出した端子3のタブ部31は、相手コネクタの雌端子に挿入される。
【0029】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態の端子付き電線1において、第1バレル部33には、露出部23の一部を含む2つの第1被圧着部25a,25bが互いに重なり合って圧着されており、第2バレル部34には、被覆線部24の一部を含む2つの第2被圧着部26a,26bが互いに重なり合って圧着されている。それゆえ、端子3のサイズに対して電線2のサイズが小さい場合であっても、第1バレル部33及び第2バレル部34の双方において、電線2を強固に固定することができる。また、電線2は被覆線部24の方が露出部23よりも外径が大きいため、端子3は、一般に、電線2の露出部23をかしめる部位(すなわち第1バレル部33)よりも、電線2の被覆線部24をかしめる部位(すなわち第2バレル部34)の方が大きく形成される。そこで、第2バレル部34が、被覆線部24からなる第2被圧着部26aとさらに別の第2被圧着部26bとの双方に圧着されることにより、比較的大きく形成される第2バレル部34においても、電線2を強固に固定することができる。
【0030】
また、第2バレル部34内の2つの第2被圧着部26a,26bにおいて、被覆線部24の一部によって構成される第2被圧着部26aは、底板部32から遠い側の端部に配されている。それゆえ、第2バレル部34は、2つの第2被圧着部26a,26bのうちの上側に位置する被覆線部24に向かってかしめられることとなる。ここで、被覆線部24は、露出部23よりも弾性変形しやすいため、2つの第2被圧着部26a,26bのうちの上側の第2被圧着部26aを被覆線部24の一部とすることにより、第2バレル部34を強固に被覆線部24にかしめることができる。さらに、本形態において、2つの第2被圧着部26a,26bのうち、底板部32側に配される第2被圧着部26bは、撚線によって構成されている。撚線は、端子3にセットされる際や、端子3にセットされてかしめられる際に、その撚りがほどけて広がるおそれがあるが、撚線によって構成された第2被圧着部26bを底板部32側に配することにより、撚線がほどけて端子3の外側に大きく広がることを防止することができる。
【0031】
また、2つの第2被圧着部26a,26bのうちの被覆線部24の一部によって構成される第2被圧着部26a以外の第2被圧着部26bから延びるとともに、底板部32よりも基端側に突出した突出部27が形成されている。それゆえ、端子3の底板部32から突出部27が突出していることを下側から確認することによって、第2バレル部34が2つの第2被圧着部26a,26bに確実に圧着されていることを確認することができる。また、本形態のように、底板部32から基端側に突出した露出部23を切断する場合、露出部23における底板部32から基端側に突出した部位を切断することにより、切断時に被覆線部24に傷がつくことを防止しやすい。
【0032】
また、露出部23は、被覆線部24と反対側の部位が折り返されており、重なり合った露出部23の互いに異なる部位のそれぞれが第1被圧着部25a,25bを構成しており、重なり合った被覆線部24の一部及び露出部23の一部のそれぞれが第2被圧着部26a,26bを構成している。それゆえ、部品点数が増えることを抑制しつつ、端子3と電線2との機械的接続性を確保することができる。
【0033】
以上のごとく、本形態によれば、電線の細径化を図った場合であっても、電線と端子との機械的接続性を確保することができる端子付き電線及びこれを備えたハーネス部材を提供することができる。
【0034】
[第2の実施の形態]
(端子付き電線1)
図9は、本形態における端子付き電線1の側面図であって、端子3における電線2周辺部分のみを断面として表した図である。本形態は、第1の実施の形態と基本構成を同様としつつ、電線2の構成を変更した形態である。なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0035】
本形態の端子付き電線1において、電線2の露出部23は、第1バレル部33によってかしめられた第1被圧着部25a,25bよりも先端側の位置に、超音波溶接された溶接部5を有する。すなわち、溶接部5は、第1バレル部33及び第2バレル部34のいずれにもかしめられていない。溶接部5は、超音波溶接により、露出部23における溶接部5以外の部位よりも硬く形成される。
【0036】
(端子付き電線1の製造方法)
次に、図10乃至図12を参照しつつ、本形態における、端子付き電線1の製造方法につき説明する。
【0037】
本形態においても、第1の実施の形態と同様、電線2の露出部23を絶縁被覆22から露出させ、露出部23を折り返す。本形態においては、後述するよう露出部23の先端側の部位が切り落とされるため(図11の一点鎖線箇所参照)、露出部23の折り返し部231を、絶縁被覆22から比較的大きく離れた位置に形成する。
【0038】
次いで、図10に示すごとく、折り返し部231を含む露出部23の先端側の部位を、超音波溶接にて接合する。折り返し部231はその外形が大きく膨らみやすいため、超音波溶接にて露出部23における折り返し部231周辺を超音波溶接にて接合することにより、折り返し部231の膨らみを抑えることができる。超音波溶接は、載置台101に電線2の露出部23を配置し、超音波を発生させるホーン102を露出部23の上側から露出部23に押し付けつつ、ホーン102に超音波振動を発生させる。これにより、折り返されて重なり合った露出部23の部位同士が超音波溶接によって一体化されてなる溶接部5が形成される。このときの電線2の状態が、図11に示す状態である。
【0039】
次いで、溶接部5を、溶接部5の基端部から僅かに先端側にずれた位置(すなわち図11において一点鎖線にて示す位置)において切断する。これにより、図12に示すごとく、溶接部5を短くする。
【0040】
次いで、図9に示すように、電線2を端子3に配置するとともに、第1バレル部33と第2バレル部34とのそれぞれを電線2にかしめる。電線2を端子3に配置するにあたっては、溶接部5を、第1バレル部33よりも先端側に位置させる。そして、第1バレル部33は、露出部23における溶接部5以外の互いに重なり合った部位にかしめられ、第2バレル部34は、露出部23と被覆線部24とにかしめられる。そして、第1の実施の形態と同様に、底板部32よりも基端側に突出した露出部23の一部を切断する。
【0041】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本形態において、複数の第1被圧着部25a,25bのそれぞれから端子3の先端側に延びる部位は、溶接により互いに接合されて溶接部5を構成している。これにより、電線2における溶接部5から基端側に延びる2本の線部同士が互いにまとまりやすい。それゆえ、電線2を端子3に挿入する作業を容易にしやすい。また、本形態のように露出部23を折り返している場合においては、折り返し部231が膨らみやすいところ、折り返し部231を含む部位を超音波溶接することによって、折り返し部231が膨らんで電線2を端子3に挿入し難くなることを防止することができる。さらに、溶接部5は、第1バレル部33によってかしめられる第1被圧着部25a,25bから先端側の位置に形成されている。換言すれば、溶接部5は、第1バレル部33及び第2バレル部34にかしめられていない。溶接部5は、電線2において比較的硬くなり、かしめに不向きであるため、溶接部5を第1被圧着部25a,25bよりも先端側に位置することにより、電線2に溶接部5を形成した場合であっても電線2と端子3との機械的接続性を確保することができる。
その他、本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0042】
なお、本形態において、例えば第1の実施の形態における折り返し部231のみを局所的に超音波溶接することも可能である。この場合は、溶接部5を切り落として短くする作業が不要となる。
【0043】
[第3の実施の形態]
図13は、本形態における端子付き電線1の側面図であって、端子3における電線2周辺部分のみを断面として表した図である。本形態は、端子付き電線1が、端子3及び電線2に加え、これらとは別体の長尺部材6を備える形態である。
【0044】
本形態において、電線2における露出部23は、直線状に形成されており、折り返されていない。そして、電線2の先端部に沿うよう、長尺部材6が配されている。本形態において、長尺部材6は、電線2の芯線21と同様の撚線からなる。例えば、電線2の露出部23を長めに形成しておき、露出部23の一部を切り落とすことにより、切り落とされた露出部23の部位を長尺部材6とすることができる。
【0045】
第1バレル部33は、電線2の露出部23と長尺部材6の一部とにかしめられており、第2バレル部34は、電線2の被覆線部24と長尺部材6の他の一部とにかしめられている。すなわち、本形態において、第1被圧着部25aは、露出部23の一部によって構成されており、第1被圧着部25bは長尺部材6の一部によって構成されており、第2被圧着部26aは被覆線部24の一部によって構成されており、第2被圧着部26bは長尺部材6の他の一部によって構成されている。長尺部材6の基端部は、端子3の底板部32から基端側に突出した突出部27となっている。
【0046】
本形態において、長尺部材6は、電線2の芯線21と同じ撚線としたが、これに限られず、例えば長尺部材6の直径は適宜、変更可能である。具体的には、例えば第1バレル部33及び第2バレル部34のそれぞれが電線2に比べて大きすぎる場合は、長尺部材6として、芯線21の直径よりも大きい直径を有する線材を採用することにより、第1バレル部33及び第2バレル部34のそれぞれを電線2及び長尺部材6に強固にかしめることが可能となる。また、長尺部材6は撚線としたが、単線等、他の部材とすることも可能である。電線2と端子3との電気的接続性を確保する観点からは、長尺部材6は導電性を有する材料からなることが好ましい。
その他は、第1の実施の形態と同様である。
【0047】
(第3の実施の形態の作用及び効果)
本形態の端子付き電線1は、電線2とは別体の長尺部材6をさらに備える。そして、露出部23の一部と長尺部材6の一部とのそれぞれが第1被圧着部25a,25bを構成しており、被覆線部24の一部と長尺部材6の他の一部とのそれぞれが第2被圧着部26a,26bを構成している。それゆえ、第1バレル部33及び第2バレル部34のそれぞれの大きさと電線2の大きさとを考慮して、かしめに適した大きさの長尺部材6を適宜選択することが可能となり、電線2と端子3との機械的接続性を一層確保しやすい。また、端子付き電線1の生産性を向上させやすい。すなわち、電線2において絶縁被覆22から芯線21を露出させるとともに、電線2に長尺部材6を沿わせ、これらを端子3に取り付ければよいため、電線2に特別な加工をしなくとも端子付き電線1を製造可能である。
その他、本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0048】
なお、本形態において、長尺部材6は1つとしたが、長尺部材6を複数設けることも可能である。例えば、電線2に比べて第1バレル部33及び第2バレル部34が大きすぎる場合等においては、長尺部材6を複数本用意し、第1バレル部33にて電線2の露出部23と複数の長尺部材6をかしめるとともに、第2バレル部34にて電線2の被覆線部24と複数の長尺部材6とをかしめることも可能である。
【0049】
[第4の実施の形態]
図14は、本形態における端子付き電線1の側面図であって、端子3における電線2周辺部分のみを断面として表した図である。本形態は、第3の実施の形態と基本構成を同様としつつ、長尺部材6を長尺な板状の部材とした形態である。長尺部材6は、例えば上下方向に厚みを有し、軸方向に長尺な板状に形成されている。
その他は、第3の実施の形態と同様である。
【0050】
(第4の実施の形態の作用及び効果)
本形態においても、第3の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0051】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0052】
[1]芯線(21)が絶縁被覆(22)に覆われた被覆線部(24)、及び前記芯線が前記絶縁被覆から露出した露出部(23)を有する電線(2)と、前記電線(2)の長手方向に並ぶ第1バレル部(33)及び第2バレル部(34)を有する端子(3)とを備え、前記第1バレル部(33)には、前記露出部(23)の一部を含む複数の第1被圧着部(25a,25b)が互いに重なり合って圧着されており、前記第2バレル部(34)には、前記被覆線部(24)の一部を含む複数の第2被圧着部(26a,26b)が互いに重なり合って圧着されている、端子付き電線(1)。
【0053】
[2]前記端子(3)は、前記電線(2)に沿って形成された底板部(32)と、前記底板部(32)から立設された前記第1バレル部(33)及び前記第2バレル部(34)と、を備え、前記第2バレル部(34)内の複数の前記第2被圧着部(26a,26b)において、前記被覆線部(24)の一部によって構成される第2被圧着部(26a)は、前記底板部(32)から遠い側の端部に配されている、前記[1]に記載の端子付き電線(1)。
【0054】
[3]前記複数の第2被圧着部(26a,26b)のうちの前記被覆線部(24)の一部によって構成される第2被圧着部(26a)以外の第2被圧着部(26a,26b)は、複数の素線(210)を撚り合わせた撚線である、前記[2]に記載の端子付き電線(1)。
【0055】
[4]前記複数の第2被圧着部(26a,26b)のうちの前記被覆線部(24)の一部によって構成される第2被圧着部(26a)以外の第2被圧着部(26b)から延びるとともに、前記底板部(32)よりも前記端子(3)の基端側に突出した突出部(27)が形成されている、前記[2]又は前記[3]に記載の端子付き電線(1)。
【0056】
[5]前記露出部(23)は、折り返された形状を有し、重なり合った前記露出部(23)の互いに異なる部位のそれぞれが前記第1被圧着部(25a,25b)を構成しており、重なり合った前記被覆線部(24)の一部及び前記露出部(23)の一部のそれぞれが前記第2被圧着部(26a,26b)を構成している、前記[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の端子付き電線(1)。
【0057】
[6]前記電線(2)とは別体の長尺部材(6)を備え、前記露出部(23)の一部と前記長尺部材(6)の一部とのそれぞれが前記第1被圧着部(25a,25b)を構成しており、前記被覆線部(24)の一部と前記長尺部材の他の一部とのそれぞれが前記第2被圧着部(26a,26b)を構成している、前記[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の端子付き電線(1)。
【0058】
[7]前記複数の第1被圧着部(25a,25b)のそれぞれから前記端子(3)の先端側に延びる部位は、溶接により互いに接合されている、前記[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の端子付き電線(1)。
【0059】
[8]前記[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の端子付き電線(1)と、前記端子付き電線(1)を保持するコネクタハウジング(41)と、を備えるハーネス部材(4)。
【0060】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0061】
前記各実施の形態において、2つの第1被圧着部は、上下方向に並ぶ構成としたが、これに限られず、上下方向に交差する方向に並んでいてもよい。2つの第2被圧着部についても同様である。
【0062】
また、端子付き電線の端子は、コネクタの雄端子としたが、これに限られず、例えばコネクタの雌端子とすることもできる。さらに、端子は、コネクタ端子以外の端子、例えばボルトを用いて電線と圧着される丸型、Y型、C型の端子等とすることも可能である。
【0063】
また、第1バレル部及び第2バレル部のそれぞれは、オープンバレルとしたが、筒状のクローズドバレルとしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…端子付き電線
2…電線
21…芯線
210…素線
22…絶縁被覆
23…露出部
24…被覆線部
25a,25b…第1被圧着部
26a,26b…第2被圧着部
27…突出部
3…端子
32…底板部
33…第1バレル部
34…第2バレル部
4…ハーネス部材
41…コネクタハウジング
411…嵌合口
6…長尺部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14