(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】密閉収納容器の輸送評価方法および輸送評価用密閉収納容器セット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240723BHJP
B65D 85/30 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
(21)【出願番号】P 2021120587
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖二
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-513459(JP,A)
【文献】特開2011-151399(JP,A)
【文献】特開平11-51776(JP,A)
【文献】特開2003-247896(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137556(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、筐体の開口部を開閉する蓋と、該蓋と前記筐体との間に位置するパッキンとを備えた密閉収納容器を用意し、
前記筐体内に、複数枚のウェーハを収納するとともに前記筐体の内部状態を評価するためのセンサーを配置した後、
前記密閉収納容器の輸送を行い、前記密閉収納容器の輸送評価を行う方法であって、
前記複数枚のウェーハを収納するとき、前記密閉収納容器の最大収納可能枚数の分だけ収納し、前記センサーを配置するとき、前記収納した複数枚のウェーハのうちのいずれかに貼り付けるか、または、前記筐体の内壁に貼り付けて配置し、かつ、
前記複数枚のウェーハのうち、前記貼り付けたセンサーの配置位置に対して収納位置が干渉することになるウェーハを収納するとき、該干渉することになるウェーハとして、刳り抜き部または切り欠き部を有する欠損ウェーハを用意し、前記センサーと接触しないように、前記貼り付けたセンサーが前記刳り抜き部または切り欠き部に位置した状態で収納し、その後、前記輸送評価を行うことを特徴とする密閉収納容器の輸送評価方法。
【請求項2】
前記センサーとして、衝撃センサー、振動センサー、温度センサー、湿度センサー、加速度センサー、および圧力センサーのうちの1つ以上を用いることを特徴とする請求項1に記載の密閉収納容器の輸送評価方法。
【請求項3】
前記ウェーハとして半導体ウェーハを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の密閉収納容器の輸送評価方法。
【請求項4】
複数枚のウェーハと、
該複数枚のウェーハが収納された筐体と、該筐体の開口部を開閉する蓋と、該蓋と前記筐体との間に位置するパッキンとを備えた密閉収納容器と、
該密閉収納容器内に配置されており、前記筐体の内部状態を評価するためのセンサーと、を有する輸送評価用密閉収納容器セットであって、
前記複数枚のウェーハは、前記密閉収納容器の最大収納可能枚数の分だけ収納されており、前記センサーは、前記収納された複数枚のウェーハのうちのいずれかに貼り付けられているか、または、前記筐体の内壁に貼り付けられて配置されており、かつ、
前記複数枚のウェーハのうち、前記貼り付けられたセンサーの配置位置に対して収納位置が干渉するウェーハは、刳り抜き部または切り欠き部を有する欠損ウェーハであり、
該欠損ウェーハは、前記センサーと接触しないように、前記貼り付けられたセンサーが前記刳り抜き部または切り欠き部に位置された状態で収納されているものであることを特徴とする輸送評価用密閉収納容器セット。
【請求項5】
前記センサーは、衝撃センサー、振動センサー、温度センサー、湿度センサー、加速度センサー、および圧力センサーのうちの1つ以上であることを特徴とする請求項4に記載の輸送評価用密閉収納容器セット。
【請求項6】
前記ウェーハは半導体ウェーハであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の輸送評価用密閉収納容器セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密閉収納容器の輸送評価方法および輸送評価用密閉収納容器セットに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ(例えばシリコン等の半導体ウェーハ)を輸送する際には、密閉収納容器であるFOSB(Front Opening Shipping Box)やFOUP(Front Opening Unified Pod)によって収納されている。密閉収納容器は、蓋と筐体とこれらの間に樹脂製のパッキンを有する構成により外気の影響を受けない構造となっている。
【0003】
これら密閉収納容器を使用して、顧客に半導体ウェーハを輸送するが、輸送手段として、航空機、船、トラックなどの手段を組み合わせている。
航空機の場合には、地上1万メートルの上空を飛行するため、航空機の荷物室の気圧は低く、気温も氷点下10℃以下になることもある。また、船の場合には、赤道付近を航行する場合には、船のコンテナ内は50℃以上となり、湿度も高い状態となる。さらに上記輸送手段を繋ぐ場合に、載せ替えるターミナルで、フォークリフトやベルトコンベアーによって載せ替える。この際に衝撃や振動が加わることもあり得る。
これより、密閉収納容器内のウェーハに問題が無いか各種センサー(温度、湿度、圧力、加速度、衝撃、振動)を載置して評価している(特許文献1-5)。
【0004】
また、密閉収納容器の構造や材料の変更を行った場合に、問題が無いか輸送テストを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-169575号公報
【文献】特開2017-212323号公報
【文献】特開2017-212322号公報
【文献】国際公開第2016/163166号
【文献】特開2010-64780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの評価においては、各種センサーを用いる場合に、評価する内容によって密閉収納容器の内外に載置する。このとき、密閉収納容器の内部に設置する場合には、各種センサーの載置される場所にはウェーハを収納することができないため、密閉収納容器に全くウェーハが収納されないか、収納されても、各種センサーの載置する場所にはウェーハを収納しなかった。
【0007】
密閉収納容器は、一般に例えば最大25枚のウェーハを収納することができるが、先の説明にあるように蓋と筐体とその間にある樹脂製パッキンによって、密閉構造を確立している。また、収納されたウェーハが内部で動かないように、蓋に付属するウェーハ抑えで押し付ける機構とすることでウェーハが密閉収納容器内で動くことを抑制している。これらの構成よりウェーハ25枚が収納された場合(最大収納可能枚数の分だけ収納された場合)には、ウェーハ25枚分の、蓋を内側から押し返す力が蓋と筐体の間の樹脂製パッキンにかかっており、ウェーハを収納しない場合や一部収納した場合とでは、密閉収納容器内に収納されたウェーハへの温度、湿度、圧力、加速度、衝撃、振動は異なってくる。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、密閉収納容器において、内部にセンサーを配置しつつ、ウェーハを最大収納可能枚数収納した状態で、輸送時の内部状態を評価できる密閉収納容器の輸送評価方法および輸送評価用密閉収納容器セットを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、筐体と、筐体の開口部を開閉する蓋と、該蓋と前記筐体との間に位置するパッキンとを備えた密閉収納容器を用意し、
前記筐体内に、複数枚のウェーハを収納するとともに前記筐体の内部状態を評価するためのセンサーを配置した後、
前記密閉収納容器の輸送を行い、前記密閉収納容器の輸送評価を行う方法であって、
前記複数枚のウェーハを収納するとき、前記密閉収納容器の最大収納可能枚数の分だけ収納し、前記センサーを配置するとき、前記収納した複数枚のウェーハのうちのいずれかに貼り付けるか、または、前記筐体の内壁に貼り付けて配置し、かつ、
前記複数枚のウェーハのうち、前記貼り付けたセンサーの配置位置に対して収納位置が干渉することになるウェーハを収納するとき、該干渉することになるウェーハとして、刳り抜き部または切り欠き部を有する欠損ウェーハを用意し、前記センサーと接触しないように、前記貼り付けたセンサーが前記刳り抜き部または切り欠き部に位置した状態で収納し、その後、前記輸送評価を行うことを特徴とする密閉収納容器の輸送評価方法を提供する。
【0010】
前述したように、従来では密閉収納容器の筐体内にセンサーを配置する場合、ウェーハを全く収納しないか、センサーの配置位置と干渉する収納位置にはウェーハを収納せずに輸送評価を行っていた。しかし本発明の密閉収納容器の輸送評価方法であれば、密閉収納容器の筐体内に、センサーを配置するとともにウェーハを最大収納可能枚数の分だけ収納した状態で輸送評価をするため、実際の製品を輸送する状態(最大収納可能枚数のウェーハを収納してセンサーを配置しない状態)をほぼ忠実に再現することができ、輸送環境による密閉収納容器の内部状態への影響を従来よりも精度良く評価することが可能となる。
【0011】
また、前記センサーとして、衝撃センサー、振動センサー、温度センサー、湿度センサー、加速度センサー、および圧力センサーのうちの1つ以上を用いることができる。
【0012】
このように各種のセンサーを用いて種々のデータの評価を行うことができる。
【0013】
また、前記ウェーハとして半導体ウェーハを用いることができる。
【0014】
このように、特には半導体ウェーハを収納して輸送する場合についての評価を行うことができる。
【0015】
また本発明は、複数枚のウェーハと、
該複数枚のウェーハが収納された筐体と、該筐体の開口部を開閉する蓋と、該蓋と前記筐体との間に位置するパッキンとを備えた密閉収納容器と、
該密閉収納容器内に配置されており、前記筐体の内部状態を評価するためのセンサーと、を有する輸送評価用密閉収納容器セットであって、
前記複数枚のウェーハは、前記密閉収納容器の最大収納可能枚数の分だけ収納されており、前記センサーは、前記収納された複数枚のウェーハのうちのいずれかに貼り付けられているか、または、前記筐体の内壁に貼り付けられて配置されており、かつ、
前記複数枚のウェーハのうち、前記貼り付けられたセンサーの配置位置に対して収納位置が干渉するウェーハは、刳り抜き部または切り欠き部を有する欠損ウェーハであり、
該欠損ウェーハは、前記センサーと接触しないように、前記貼り付けられたセンサーが前記刳り抜き部または切り欠き部に位置された状態で収納されているものであることを特徴とする輸送評価用密閉収納容器セットを提供する。
【0016】
このような本発明の輸送評価用密閉収納容器セットであれば、密閉収納容器の筐体内に、センサーが配置されているとともにウェーハが最大収納可能枚数の分だけ収納されているため、実際の製品を輸送するときの状態がほぼ忠実に再現されたものである。そのため、輸送環境による密閉収納容器の内部状態への影響を従来よりも精度良く評価することが可能なものとなる。
【0017】
また、前記センサーは、衝撃センサー、振動センサー、温度センサー、湿度センサー、加速度センサー、および圧力センサーのうちの1つ以上であるものとすることができる。
【0018】
このように各種のセンサーであれば種々のデータの評価を行うことができる。
【0019】
また、前記ウェーハは半導体ウェーハであるものとすることができる。
【0020】
このように、特には半導体ウェーハを収納している場合についての評価が可能なものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の密閉収納容器の輸送評価方法および輸送評価用密閉収納容器セットであれば、密閉収納容器の内部にセンサーを配置しているにも関わらず、ウェーハを最大収納枚数分収納して、実際の製品の輸送時とほぼ同様の状態にすることができ、輸送状態における環境からの影響を忠実に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の輸送評価用密閉収納容器セット(刳り抜きタイプ)の一例を示す説明図である。
【
図2】上面から見たセンサーと欠損ウェーハの位置関係(刳り抜きタイプ)を示す説明図である。
【
図3】本発明の輸送評価用密閉収納容器セット(切り欠きタイプ)の一例を示す説明図である。
【
図4】上面から見たセンサーと欠損ウェーハの位置関係(切り欠きタイプ)を示す説明図である。
【
図5】密閉収納容器の密閉状態の一例を示す説明図である。
【
図6】密閉収納容器の蓋を開けた状態の一例を示す説明図である。
【
図7】センサーを蓋と対向する筐体の内壁に貼り付けている従来の輸送評価用密閉収納容器セットの一例を示す説明図である。
【
図8】センサーを筐体の底側の内壁に貼り付けている従来の輸送評価用密閉収納容器セットの一例を示す説明図である。
【
図9】センサーを収納したウェーハに貼り付けている従来の輸送評価用密閉収納容器セットの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
従来の輸送評価用密閉収納容器セットとその課題を説明した上で、それを解決可能な本発明の輸送評価用密閉収納容器セットについて説明する。なお、以下では簡単のため、密閉収納容器を容器とも言い、また、輸送評価用密閉収納容器セットを容器セットとも言う。
【0024】
まず、一般的な密閉収納容器について説明する。ここではFOSBの例を示すが、FOUPでも良い。
図5は、密閉収納容器にウェーハを収納し、蓋をして密閉した状態を示す説明図である。
図5に示すように、密閉収納容器11は、筐体12と、その開口部を開閉する蓋13を有し、さらに蓋13と筐体12の間には、例えば樹脂製のパッキン14(四角のリング状)が設けられており、該パッキン14によって、密閉性が保たれている。
【0025】
複数枚(例えば、最大収納可能枚数である25枚。なお図面では簡便のため8枚で描かれている。)のウェーハW(例えば半導体ウェーハ)は、容器11の筐体12の内壁に設けられた溝部に1枚ずつ載置され、蓋13に設けられたウェーハ抑え15と、蓋13と対向する筐体12の上記の内壁とに挟まれ、ウェーハ抑え15の弾力性により、固定される。このように容器11内のウェーハWは、蓋13をした状態では、収納された25枚のウェーハWは、ウェーハ抑え15と、蓋13と対向する内壁とに挟まれて固定されているが、逆に言えば、その25枚のウェーハWは、蓋13に設けられたウェーハ抑え15を、蓋13が開く方向へ押し続けている。これよりパッキン14にも同様に蓋13が開く方向への力が掛かり続けている。
【0026】
図6に密閉収納容器の蓋を開けた状態を示す。この状態では、ウェーハ抑え15はウェーハWに接触していないことにより、収納された25枚のウェーハWは、蓋13に設けられたウェーハ抑え15を、蓋13が開く方向へ押していない状態である。これにより、当然、パッキン14にも同様に蓋13が開く方向への力が掛かっていない。
【0027】
ところで、これまで、容器の輸送ルートに問題があるか確認する輸送ルート調査や、容器の構造や材料の変更を行った場合に問題が無いか確認する輸送テストを行う場合には、各種センサーを、容器の外側に配置したり、あるいは容器の内側に配置していた。
特に気圧や湿度を検知するセンサーを配置する場合には、容器の内壁に貼り付けて配置したり、容器内に収納したウェーハに貼り付けて配置していた。
【0028】
そのような従来の輸送評価用密閉収納容器セット20の例について説明する。
図7はセンサー16を蓋13と対向する筐体12の内壁に貼り付けている例である。また
図8はセンサー16を筐体12の底側の内壁に貼り付けている例である。また
図9はセンサー16を収納したウェーハWに貼り付けている例である。
センサー16が筐体12の内部に配置されている状態でウェーハWを同じ内部にそのまま収納しようとすると、当然ながら、センサー16の配置位置とウェーハWの収納位置が干渉してしまいウェーハWを収納できないことから、
図7のようにウェーハWを全く収納しなかったり、
図8、
図9のようにウェーハWを収納している場合でも、センサー16の配置位置と干渉する収納位置にはウェーハWは収納していない。従来では、これらのような状態の容器セットを用いて輸送テストを実施していた。
【0029】
しかしながら、ウェーハWを全く収納していない容器セットでは、ウェーハWが無いため、蓋13に設けられたウェーハ抑え15を、蓋13が開く方向へ押していない状態となる。このため、パッキン14にも同様に蓋13が開く方向への力が掛かっていない状態で輸送テストが行われていたことになる。
また、ウェーハWを収納している場合でも、センサー16の配置位置と干渉する収納位置のウェーハWは収納できないことから、その位置のウェーハWを収納していない。そのため、蓋13に設けられたウェーハ抑え15を、蓋13が開く方向へ押す力が働いているが、その力は、ウェーハWを最大25枚収納した状態よりは弱い力となっている。このため、パッキン14において蓋13が開く方向への力も同様に、ウェーハWを最大25枚収納した状態よりは弱い力となる。そのような、実際に25枚収納していないという不完全な状態で輸送テストが行われていたことになる。
【0030】
これらのことより、従来の容器セットおよびそれを用いた輸送評価方法では、容器内に設置されたセンサーのデータに基づく輸送評価が、例えば25枚という最大収納可能枚数の分だけ収納された通常の製品輸送時の状態を正しく反映できているとは言えなかった。
【0031】
ウェーハを最大収納可能枚数の分だけ収納した状態で輸送テストを実施するため、本発明者が鋭意検討した結果から得られた本発明の輸送評価用密閉収納容器セットが以下の通りである。大別すると、センサーの配置位置に対して収納位置が干渉するウェーハについて、刳り抜いたり、切り欠いた形状にすることにより、センサーとウェーハが接触していない形態とした。
図1に本発明の密閉収納容器セット10を示す。容器セット10において、筐体2、蓋3、パッキン4、ウェーハ抑え5を備えた容器1自体は特に限定されず、例えば従来の一般的な容器11と同様のものとすることができる。
【0032】
また、センサー6自体は、容器1の筐体2内に配置可能であり、該筐体2の内部状態を評価可能なものであればよく特に限定されない。例えば従来の容器セット20におけるセンサー16と同様のものとすることができる。センサー6の具体例としては、衝撃センサー、振動センサー、温度センサー、湿度センサー、加速度センサー、および圧力センサーのうちのいずれかとすることができる。衝撃、振動、温度、湿度、加速度など、種々のデータの評価が可能である。このうちの1つが配置されたものでも良いし、2つ以上が配置されたものとすることもできる。所望の輸送評価が得られるように配置するセンサー6の種類は適宜決定することができる。また、複数のセンサーが一箇所にまとめて配置されていても良いし、センサーごとに別々の箇所に配置されていても良い。
【0033】
そして筐体2内にはウェーハWは複数枚収納されている。具体的にはその容器1の最大収納可能枚数(例えば25枚)の分だけ収納されている。なお、センサー6は、この複数枚のウェーハWのうちのいずれかの上面に接着により貼り付けられて固定配置されている。
図1の例ではウェーハWSの上面の中心部に貼り付けられている。
【0034】
ところで、センサー6はある程度の大きさを有しているため、ウェーハWSの上面に貼り付けた場合、その配置位置は、ウェーハWSよりも上側に収納される1枚以上のウェーハの収納位置と干渉することになる。何枚のウェーハと干渉するかはセンサー6のサイズによるが、とにかくそのままではセンサー6が邪魔となり、ウェーハをその干渉位置に収納できない。そこで本発明では、そのような干渉位置に収納するウェーハは刳り抜き部7を有する欠損ウェーハとなっている。
図1の例では、W1、W2が欠損ウェーハWCである。
図2に、上面から見たセンサーと欠損ウェーハの位置関係を示す。欠損ウェーハW1、W2は、刳り抜き部7の位置にセンサー6が位置するように収納されているため、欠損ウェーハW1、W2はセンサー6と接触することなく収納できている。
【0035】
このようにセンサー6が筐体2内に配置されているにも関わらず、ウェーハW(欠損ウェーハWCを含む)が最大収納可能枚数(25枚)の分だけ収納できている。すなわち、実際のウェーハ製品の通常での輸送時の状態(最大収納可能枚数の分のウェーハを収納している)を実に再現性高く再現できている。このような容器セット10であれば、ウェーハを全く収納していなかったり、部分的にしかウェーハを収納できていなかった従来の容器セット20に比べて、輸送時の容器1の内部状態への影響を格段に精度良く評価することが可能である。蓋に設けられたウェーハ抑えを、通常の製品輸送時とほぼ同等の力で蓋が開く方向へ押し続けており、これよりパッキンにも通常の製品輸送時とほぼ同様に蓋が開く方向への力が掛かり続けた状態で輸送テストを行うことができる。
【0036】
図1、
図2の例では欠損ウェーハが刳り抜きタイプのものの場合について示したが、代わりに、
図3、
図4のような切り欠きタイプのものでも良い。
図3に示すように、センサー6はウェーハWSの上面の外周部に貼り付けられている。そして、欠損ウェーハW3、W4は、その外周部に切り欠き部8が形成されており、該切り欠き部8の位置にセンサー6が位置した状態で筐体2内に収納されている。このため、このタイプでも、欠損ウェーハW3、W4はセンサー6と接触していない。しかも、最大収納可能枚数の分だけウェーハW(欠損ウェーハWCを含む)を収納できている。
【0037】
上記のような欠損ウェーハWCにおける刳り抜き部7や切欠き部8のサイズ、その形成位置は特に限定されず、センサー6のサイズ(縦、横、厚さ寸法)、配置位置などに応じて適宜決定することができる。
【0038】
なお、
図1-4では、センサー6がウェーハWの上面に貼り付けられて配置された例を示したが、ウェーハWの下面に貼り付けても良い。さらにはウェーハWに限定されず、筐体2の内壁に貼り付けられて配置されていても良い。例えば、蓋3と対向する筐体2の内壁や、底側の内壁や、あるいは天井側の内壁などに貼り付けられていても良い。
【0039】
次に、本発明の密閉収納容器の輸送評価方法について説明する。
まず、容器1を用意する。この容器1は、例えば
図5に示すような一般的な容器11と同様なものとすることができる。
そしてこの容器1の筐体2の内部に、その最大収納可能枚数の分のウェーハWを収納するとともにセンサー6を配置する。
【0040】
このときセンサー6は、いずれかの収納したウェーハWに貼り付けることによって固定配置する。または、ウェーハWに対してではなく、筐体2の内壁に貼り付けることによって固定配置しても良い。
【0041】
またウェーハWは、その収納すべき位置がセンサー6の配置位置とは離れていて干渉することのないウェーハについては、通常のウェーハをそのまま収納する。
一方で、その収納すべき位置がセンサー6の配置位置と重なっていて干渉することになるウェーハについては、
図1、
図2のような刳り抜き部7を有するタイプ(W1、W2)か、
図3、
図4のような切り欠き部8を有するタイプ(W3、W4)の欠損ウェーハWCを用意する。そしてその刳り抜き部7または切り欠き部8にセンサー6が位置した状態で欠損ウェーハWCを収納する。このようにすれば、欠損ウェーハWCをセンサー6と接触しない状態で収納することができる。
このようにして、従来では成し得なかった、最大収納可能枚数の分のウェーハW(欠損ウェーハWCを含む)の収納とセンサー6の筐体2内への配置の両立を達成でき、本発明の輸送評価用密閉収納容器セット10を用意することができる。
【0042】
そして、このような容器セット10を用いて実際に航空機、船、トラックなどで輸送を行う。
輸送後は、センサー6により得られた輸送中の衝撃等のデータを解析し、輸送時における容器1の内部状態の評価を行う。実際の製品の輸送状態に極めて近い状態で輸送できているため、収納枚数が不足している従来よりも正確な評価を得られる。さらには、その輸送評価を用いて輸送ルートの調査や容器の改良などに役立てることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すような密閉収納容器セットを用意した。具体的には、FOSBタイプの容器1(筐体2、蓋3、パッキン4、ウェーハ抑え5)を用意し、その内部にセンサー6を配置するとともに、欠損ウェーハWCと通常のウェーハを合わせて最大収納可能枚数(25枚)の分だけ収納した。このとき、通常のウェーハのうちの1つ(ウェーハWS)の中心部にセンサー6を接着して固定するとともに、該センサー6の配置位置と収納位置が干渉するウェーハについてのみ、中心部を刳り抜いた欠損ウェーハWC(3枚)を使用した。以上のようにして、刳り抜きタイプの欠損ウェーハを用いた本発明の密閉収納容器セットを用意した。
なお、センサーとしては、スリック社製のG-MEN GP20(寸法:高さ75.5mm×幅60.5mm×奥行33mm、重量:240g)を用いた。
また通常のウェーハとしては、直径300mmのものを用いた。
また刳り抜きタイプの欠損ウェーハとしては、直径300mmで、刳り抜き部が直径110mmの円形のものを用いた。
【0044】
(実施例2)
図3に示すような密閉収納容器セットを用意した。具体的には、通常のウェーハのうちの1つ(ウェーハWS)の外周部にセンサー6を接着して固定するとともに、該センサー6の配置位置と収納位置が干渉するウェーハについてのみ、外周部を切り欠いた欠損ウェーハWC(3枚)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、切り欠きタイプの欠損ウェーハを用いた本発明の密閉収納容器セットを用意した。
なお、切り欠きタイプの欠損ウェーハとしては、直径300mmで、切り欠き部が90mm×70mmの略矩形のものを用いた。
【0045】
(比較例1)
図7に示すような密閉収納容器セットを用意した。具体的には、FOSBタイプの容器11(筐体12、蓋13、パッキン14、ウェーハ抑え15)(容器1と同様のもの)を用意し、その内部にセンサー16(センサー6と同様のもの)を配置した。センサー16は蓋13に対向する筐体12の内壁の中心部に接着して固定した。なお、ウェーハWは一枚も収納しなかった。以上のようにして、従来の密閉収納容器セットを用意した。
【0046】
(比較例2)
図8に示すような密閉収納容器セットを用意した。具体的には、センサー16は筐体12の底側の内壁の中心部に接着して固定し、センサー16の配置位置と干渉しない収納位置にのみ通常のウェーハを収納し(22枚収納)、それ以外は比較例1と同様にして、従来の密閉収納容器セットを用意した。
【0047】
(比較例3)
図9に示すような密閉収納容器セットを用意した。具体的には、通常のウェーハのうちの1つの中心部にセンサー16を接着して固定し、センサー16の配置位置と干渉しない収納位置にのみ通常のウェーハを収納し(センサー16より上方に11枚、センサー16より下方に11枚(センサー16を貼り付けたウェーハを含む))、それ以外は比較例1と同様にして、従来の密閉収納容器セットを用意した。
【0048】
実施例1及び実施例2の容器セットでは、センサーを載置する際に、干渉するウェーハについて、刳り抜いたり、切り欠いた形状にすることにより、ウェーハを25枚収納した状態で輸送テストを行うことができる。このように、顧客にウェーハを納入する際の輸送状態と実質的に同様であることから、輸送テスト時に、密閉収納容器内に載置されたセンサーから得られるデータは、顧客にウェーハを納入する際の輸送状態を極めて忠実に反映したものとなる。
【0049】
しかし、比較例1-3の容器セットでは、ウェーハを25枚未満の枚数しか収納できていない状態で輸送テストが実施されることから、輸送テスト時に、密閉収納容器内に載置されたセンサーから得られるデータは、顧客にウェーハを納入する際の輸送状態を反映したものではない。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0051】
1、11…密閉収納容器、 2、12…筐体、 3、13…蓋、
4、14…パッキン、 5、15…ウェーハ抑え、 6、16…センサー、
7…刳り抜き部、 8…切り欠き部、
10…本発明の輸送評価用密閉収納容器セット、
20…従来の輸送評価用密閉収納容器セット、
W…ウェーハ、 WS…センサーが貼り付けられたウェーハ、 WC…欠損ウェーハ、
W1、W2…欠損ウェーハ(刳り抜きタイプ)、
W3、W4…欠損ウェーハ(切り欠きタイプ)。