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特許7524930硬化性樹脂、その製造方法、及び硬化性樹脂組成物、硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】硬化性樹脂、その製造方法、及び硬化性樹脂組成物、硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20240723BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08G61/12
C08F299/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022116376
(22)【出願日】2022-07-21
(62)【分割の表示】P 2022505297の分割
【原出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022132699
(43)【公開日】2022-09-09
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020100427
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】松岡 龍一
(72)【発明者】
【氏名】楊 立宸
(72)【発明者】
【氏名】神成 広義
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-189925(JP,A)
【文献】特開2017-066268(JP,A)
【文献】特開平05-043623(JP,A)
【文献】特開昭61-145222(JP,A)
【文献】特開平05-222156(JP,A)
【文献】特開平05-194708(JP,A)
【文献】特開2000-212259(JP,A)
【文献】特開昭62-045546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00-61/12
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3-1)、又は、下記一般式(3-2)で示されるアラルキル化合物と、
下記一般式(4)で示されるフェノールと、を反応させた反応物と、
スチレン、スチレンダイマー、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー、ビニルトルエン、エチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ジフェニルエチレン、及び、1-オクテンからなる群より選ばれる1種のアラルキル化合物と、を反応させ中間体フェノール化合物を得て、
次いで、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、クロロメチルスチレン、クロロスチレン、塩化アリル、及び、臭化アリルからなる群より選ばれる1種の架橋基導入剤と、
を反応させる硬化性樹脂の製造方法。
【化1】
(3-1)
〔上記一般式(3-1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を表す。Yは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または、オキシアルキル基を表す。〕
【化2】
(3-2)
【化3】
(4)
〔上記一般式(4)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、kは、1~3の整数を示す。〕
【請求項2】
下記一般式(1)で表される構造単位(1)と、下記一般式(2)で表される末端構造(2)と、を有することを特徴とする硬化性樹脂。
【化4】
【化5】
〔上記一般式(1)及び(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、kは、1~3の整数を示す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を表す。Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、または、アリルエーテル基を表す。
また、上記一般式(2)中、Rは、フェニル基と水素原子、フェニル基とメチル基、フェニルメチル基と水素原子、フェニル基とフェニル基、ヘキシル基と水素原子のいずれかの組み合わせを示す。〕
【請求項3】
請求項に記載の硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させた硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有する硬化性樹脂、前記硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物により得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信量の増加に伴い、高周波数帯域での情報通信が盛んに行われるようになり、より優れた電気特性、なかでも高周波数帯域での伝送損失を低減させるため、低誘電率と低誘電正接を有する電気絶縁材料が求められてきている。
【0003】
さらにそれら電気絶縁材料が使われているプリント基板あるいは電子部品は、実装時に高温のハンダリフローに曝されるため、耐熱性に優れた高いガラス転移温度を示す材料が求められ、特に最近は、環境問題の観点から、融点の高い鉛フリーのハンダが使われるため、より耐熱性の高い電気絶縁材料の要求が高まってきている。
【0004】
これらの要求に対し、従来から、種々の化学構造を持つビニル基含有の硬化性樹脂が提案されている。このような硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールのジビニルベンジルエーテル、あるいはノボラックのポリビニルベンジルエーテルなどの硬化性樹脂が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、これらのビニルベンジルエーテルは、誘電特性が十分に小さい硬化物を与えることができず、得られる硬化物は高周波数帯域で安定して使用するには問題があり、さらにビスフェノールのジビニルベンジルエーテルは、耐熱性においても十分に高いとはいえないものであった。
【0005】
上記特性を向上させたビニルベンジルエーテルに対して、誘電特性等の向上を図るため、特定構造のポリビニルベンジルエーテルがいくつか提案されている(例えば、特許文献3~5参照)。しかし、誘電正接を抑える試みや、耐熱性を向上させる試みがなされているが、これらの特性の向上は、未だ十分とは言えず、さらなる特性改善が望まれている。
【0006】
このように、従来のポリビニルベンジルエーテルを含むビニル基含有の硬化性樹脂は、電気絶縁材料用途、特に高周波数対応の電気絶縁材料用途として必要な低い誘電正接と、鉛フリーのハンダ加工に耐えうる耐熱性とを兼備する硬化物を与えるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-68537号公報
【文献】特開昭64-65110号公報
【文献】特表平1-503238号公報
【文献】特開平9-31006号公報
【文献】特開2005-314556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、特定構造を有する硬化性樹脂を使用することで、耐熱性(高ガラス転移温度)、及び、低誘電特性に優れた硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、耐熱性、及び、低誘電特性に寄与できる硬化性樹脂、及び、前記硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物より得られる硬化物が、耐熱性、及び、低誘電特性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位(1)と、下記一般式(2)で表される末端構造(2)と、を有することを特徴とする硬化性樹脂に関する。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
(上記一般式(1)及び(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、kは、1~3の整数を示す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基を表す。Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、または、アリルエーテル基を表す。また、上記一般式(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、または、アルケニル基を表す。)
【0014】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(1)が、下記一般式(1-1)で表されることが好ましい。
【0015】
【化3】
【0016】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(2)が、下記一般式(2-1)で表されることが好ましい。
【0017】
【化4】
【0018】
(上記一般式(2-1)中、Rは、水素原子、メチル基、または、フェニル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0019】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(1)が、下記一般式(1-2)で表され、上記一般式(2)が、下記一般式(2-2)、または、(2-3)で表されることが好ましい。
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
(上記一般式(1-2)、(2-2)、及び、(2-3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表す。)
【0024】
本発明の硬化性樹脂は、重量平均分子量が、500~50000であることが好ましい。
【0025】
本発明は、前記硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0026】
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させた硬化物に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の硬化性樹脂は、耐熱性、及び、低誘電特性に寄与できるため、前記硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物より得られる硬化物が、耐熱性、及び、低誘電特性(特に低誘電正接)に優れ、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
<硬化性樹脂>
本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位(1)と、下記一般式(2)で表される末端構造(2)と、を有することを特徴とする硬化性樹脂に関する。
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
(上記一般式(1)及び(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、kは1~3の整数を示す。Rは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、または、アリルエーテル基を表す。また、上記一般式(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、または、アルケニル基を表す。)
【0033】
前記硬化性樹脂が、上記末端構造、及び、上記主鎖構造が特定の構造を有することにより、前記硬化性樹脂の構造中に極性官能基の割合が少なくなり、前記硬化性樹脂を使用して製造される硬化物は、低誘電特性に優れるため、好ましい。また、前記硬化性樹脂中に、架橋基を有することで、得られる硬化物が耐熱性に優れ、好ましい。
【0034】
上記一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、好ましくは、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、又は、シクロアルキル基である。前記Rが炭素数1~12のアルキル基等であることで、上記一般式(1)中のベンゼン環の近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。
【0035】
上記一般式(1)中、kは、1~3の整数を示し、好ましくは、1~2の整数である。kが前記範囲内にあることにより、上記一般式(1)中のベンゼン環の近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。
【0036】
上記一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基である。前記Rが水素原子等であることで、誘電率が低くなり、好ましい態様となる。
【0037】
上記一般式(1)中、Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、または、アリルエーテル基であり、好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基であり、より好ましくは、メタクリロイルオキシ基である。前記硬化性樹脂中に、前記架橋基を有することで、低い誘電正接を有する硬化物が得られ、好ましい態様となる。なお、前記メタクリロイルオキシ基は、その他の架橋基(例えば、ビニルベンジルエーテル基や、アリルエーテル基などの極性基であるエーテル基)と比べて、前記硬化性樹脂の構造中にメチル基を含むため、立体障害が大きくなり、分子運動性が更に低くなることが推測され、より低誘電正接の硬化物を得られるため、好ましい。また、架橋基が複数の場合、架橋密度が上がり、耐熱性が向上する。
【0038】
また、前記架橋基であるXは、極性基でもあるが、置換基であるRが隣接することにより、立体障害となり、Xの分子運動性が抑制され、得られる硬化物の誘電正接が低くなり、好ましい態様となる。
【0039】
上記一般式(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、または、アルケニル基を表し、好ましくは、炭素数1~10のアルキル基、アリール基、又は、シクロアルキル基である。前記Rが炭素数1~12のアルキル基等であることで、上記一般式(2)中のベンゼン環の近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。また、前記架橋基であるXは、極性基でもあるが、置換基であるRが隣接することにより、立体障害となり、Xの分子運動性が抑制され、得られる硬化物の誘電正接が低くなり、好ましい態様となる。
【0040】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(1)及び(2)を含むことを特徴とし、上記構造単位(1)を繰り返した構造であり、かつ、上記一般式(2)に基づく末端構造であることが好ましいが、前記構造単位(1)及び末端構造(2)以外の構造(または構造単位)として、フェニルエチリデン骨格(構造)、インダン骨格(構造)、ジシクロペンタジエン骨格(構造)、置換基を有するアラルキル基(構造)などの構造(または構造単位)を含んでいても良い。つまり、前記構造単位(1)はブロック構造を形成していても良く、本発明の特性に影響を与えない範囲であれば、その他の構造単位と共にランダム構造を形成していても良い。前記構造単位(1)及び末端構造(2)以外の前記フェニルエチリデン骨格(構造)等は、極性が小さく、誘電率や誘電正接を上昇させる構造ではないため、特に本発明における硬化性樹脂の特性に影響を与えるものではない。
【0041】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(1)が、下記一般式(1-1)で表されることが好ましい。
【0042】
【化10】
【0043】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(2)が、下記一般式(2-1)で表されることが好ましい。
【0044】
【化11】
【0045】
上記一般式(2-1)中、Rは、水素原子、メチル基、または、フェニル基で表されることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、Rは、炭素数1~4のアルキル基で表されることが好ましく、炭素数1~2のアルキル基であることがより好ましい。前記Rが前記水素原子等であることにより、誘電正接が低くなり、好ましい態様となり、また、前記Rが前記アルキル基等であることにより、誘電正接が低くなり、好ましい態様となる。
【0046】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(1)が、下記一般式(1-2)で表され、上記一般式(2)が、下記一般式(2-2)または(2-3)で表されることが好ましい。
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
上記一般式(1-2)、(2-2)、及び、(2-3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基で表されることが好ましく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、または、シクロアルキル基で表されることがより好ましい。前記Rが、前記水素原子等であることにより、誘電正接が低くなり、好ましい態様となる。
【0051】
なお、上記一般式(1)~(2-3)中において、同一の記号や、同一の置換基、及び、同一の官能基(k、X、及び、R等)については、共通するのものとする。また、後述する下記一般式(3-1)~(7)についても同様である。
【0052】
<中間体フェノール化合物の製造方法>
前記硬化性樹脂の製造方法として、まずは、前記硬化性樹脂の原料(前駆体)である中間体フェノール化合物の製造方法を以下に説明する。
【0053】
前記中間体フェノール化合物の製造方法としては、下記一般式(3-1)又は(3-2)で示されるアラルキル化合物(以下、「化合物(a)」と称する場合がある。)と、下記一般式(4)で示されるフェノール又はその誘導体(以下、「化合物(b)」と称する場合がある。)とを混合し、酸触媒存在下に反応させてえられる反応生成物(c)に、下記一般式(5-1)又は(5-2)で示されるアラルキル化合物(以下、「化合物(d)」と称する場合がある。)を反応させることにより、下記一般式で表される構造単位(6)と、下記一般式(7)で表される末端構造と、を有する前記中間体フェノール化合物を得ることができる。
【0054】
また、前記中間体フェノール化合物の製造方法として、前記化合物(b)、及び、前記化合物(d)を同時に仕込み、ワンポットで中間体フェノール化合物を合成することも可能である。
【0055】
なお、上記一般式(3-1)中のYは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または、オキシアルキル基であることが好ましく、ヒドロキシル基であることがより好ましい。
【0056】
【化15】
(3-1)
【0057】
【化16】
(3-2)
【0058】
【化17】
(4)
【0059】
【化18】
(5-1)
【0060】
【化19】
(5-2)
【0061】
【化20】
【0062】
【化21】
【0063】
前記化合物(a)の具体例としては、1,2-ジ(クロロメチル)ベンゼン、1,2-ジ(ブロモメチル)ベンゼン、1,3-ジ(クロロメチル)ベンゼン、1,3-ジ(フルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジ(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ジ(ブロモメチル)ベンゼン、1,4-ジ(フルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジ(クロロメチル)-2,5-ジメチルベンゼン、1,3-ジ(クロロメチル)-4,6-ジメチルベンゼン、1,3-ジ(クロロメチル)-2,4-ジメチルベンゼン、4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,2’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,3’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’-ビス(ブロモメチル)ビフェニル、4,4’-ビス(クロロメチル)ジフェニルエーテル、2,7-ジ(クロロメチル)ナフタレン、p-キシリレングリコール、m-キシレングリコール、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-エチル)ベンゼン、4,4’-ビス(ジメチロール)ビフェニル、2,4’-ビス(ジメチロール)ビフェニル、4,4’-ビス(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ビフェニル、2,4’-ビス(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ビフェニル、1,4’-ジ(メトキシメチル)ベンゼン、1,4’-ジ(エトキシメチル)ベンゼン、1,4’-ジ(イソプロポキシ)ベンゼン、1,4’-ジ(ブトキシ)ベンゼン、1,3’-ジ(メトキシメチル)ベンゼン、1,3’-ジ(エトキシメチル)ベンゼン、1,3’-ジ(イソプロポキシ)ベンゼン、1,3’-ジ(ブトキシ)ベンゼン、1,4-ジ(2-メトキシ-2-エチル)ベンゼン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-エチル)ベンゼン、1,4-ジ(2-エトキシ-2-エチル)ベンゼン、4,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,2’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,3’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,3’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’-ビス(エトキシメチル)ビフェニル、2,4’-ビス(エトキシメチル)ビフェニル、4,4’-ビス(イソプロポキシ)メチルビフェニル、2,4’-ビス(イソプロポキシ)メチルビフェニル、ビス(1-メトキシ-1-エチル)ビフェニル、ビス(1-メトキシ-1-エチル)ビフェニル、ビス(1-イソプロポキシ-1-エチル)ビフェニル、ビス(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ビフェニル、ビス(2-メトキシ-2-プロピル)ビフェニル、ビス(2-イソプロポキシ-2-プロピル)ビフェニル、1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、p-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、4,4’-ビス(ビニル)ビフェニル、1,3-ビス(1-ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-ヒドロキシエチル)ベンゼン等が挙げられる。これら化合物(a)は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、化合物(a)としては、工業的に入手のしやすさの観点から、例えば、p-キシリレングリコール、m-キシレングリコール、1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、p-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼンを使用することが、より好ましい態様となる。
【0064】
前記化合物(b)としては、特に限定されないが、具体的には、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール(2,6-ジメチルフェノール)、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、3,6-キシレノール等のキシレノール;2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール;o-エチルフェノール(2-エチルフェノール)、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-t-ブチルフェノール等のブチルフェノール;p-ペンチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノール等のアルキルフェノール;o-フェニルフェノール(2-フェニルフェノール)、p-フェニルフェノール、2-シクロヘキシルフェノール、2-ベンジルフェノール等の1置換フェノール等が挙げられる。これら化合物(b)は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、工業的入手のしやすさの観点から、化合物(b)としては、例えば、クレゾールやキシレノールを使用することが、より好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎると、中間体フェノール化合物の合成時における反応性を阻害する場合も懸念されるため、例えば、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、フェニル基を有する化合物(b)を使用することが好ましい。
【0065】
前記中間体フェノール化合物の製造方法においては、前記化合物(a)と前記化合物(b)を、前記化合物(a)に対する前記化合物(b)のモル比(化合物(b)/化合物(a))を、好ましくは2.5/1~1.05/1であり、より好ましくは2/1~1.1/1で仕込み、酸触媒存在下で反応させることにより、前記化合物(a)、および、前記化合物(b)との反応生成物(c)を得ることができる。
【0066】
前記反応に用いる酸触媒には、例えば、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ酸塩等を挙げることができるが、反応後、塩基による中和と水による洗浄で簡便に除去できる均一系触媒であるシュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸を用いることが好ましい。
【0067】
前記酸触媒の配合量は、最初に仕込む原料の前記化合物(a)、及び、前記化合物(b)の総量100質量部に対して、0.001~40質量部の範囲で配合されるが、ハンドリング性と経済性の点から、0.001~25質量部が好ましい。
【0068】
前記反応温度は、通常80~200℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避け、高純度の中間体フェノール化合物を得るためには、100~150℃が好ましい。
【0069】
前記反応時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ0.5~24時間の範囲であるが、好ましくは、のべ0.5~15時間の範囲である。
【0070】
前記化合物(d)(末端封止剤として機能する。)の具体例としては、特に限定されないが、具体的には、スチレン、スチレンダイマー、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー、メチルスチレン、ビニルトルエン)、エチルスチレン、t-ブチルスチレン等のスチレン又はスチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ジフェニルエチレン、1-オクテン等が挙げられる。
【0071】
前記化合物(d)の配合量は、最初に仕込む原料の前記化合物(a)、及び、前記化合物(b)の総量100質量部に対して、1~200質量部の範囲で配合されるが、反応性の点から、10~100質量部が好ましい。
【0072】
前記化合物(b)と反応生成物(c)との反応温度は、通常80~200℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避け、高純度の中間体フェノール化合物を得るためには、100~150℃が好ましい。
【0073】
前記反応時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ0.5~24時間の範囲であるが、好ましくは、のべ0.5~15時間の範囲である。
【0074】
なお、前記反応生成物(c)と前記化合物(d)との反応の際に、上述した前記化合物(a)と前記化合物(b)との反応時に使用する酸触媒を同様に使用することができる。
【0075】
前記中間体フェノール化合物の製造方法においては、原料が溶剤を兼ねる場合もあるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。また、反応時に発生する溶剤(例えば、メタノールなど)については、留去してから、上記反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
【0076】
前記中間体フェノール化合物を合成するために使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、2-エトキシエタノール、メタノールなどのアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0077】
前記中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)としては、耐熱性の観点から、好ましくは、100~1000g/eqであり、より好ましくは、200~500g/eqである。なお、中間体フェノール化合物の水酸基当量(フェノール当量)は、滴定法により算出したものであり、JIS K0070に準拠した中和滴定法を指す。
【0078】
<硬化性樹脂の製造方法>
前記硬化性樹脂の製造方法(中間体フェノール化合物への(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、または、アリルエーテル基の導入)について、以下に説明する。
【0079】
前記硬化性樹脂は、塩基性、又は、酸性触媒存在下で、前記中間体フェノール化合物に、無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド、クロロメチルスチレン、クロロスチレン、塩化アリル、または、臭化アリル等(以下、「化合物(e)」と称する場合がある。)との反応といった公知の方法によって得ることができる。これらを反応させることにより、中間体フェノール化合物中に架橋基(X)を導入することができ、また、低誘電率、低誘電正接な熱硬化性となり、好ましい態様となる。
【0080】
前記化合物(e)(架橋基導入剤として機能する。)として、前記無水(メタ)アクリル酸としては、無水アクリル酸と無水メタクリル酸が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸クロリドとしては、メタクリル酸クロリドとアクリル酸クロリドが挙げられる。また、クロロメチルスチレンとしては、例えば、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレンが挙げられ、クロロスチレンとしては、例えば、p-クロロスチレン、m-クロロスチレンが挙げられ、塩化アリルとしては、例えば、3-クロロ-1-プロペンが挙げられ、臭化アリルとしては、例えば、3-ブロモ-1-プロペンが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても混合して用いてもよい。中でも、より低誘電正接の硬化物が得られる無水メタクリル酸や、メタクリル酸クロリドを用いることが好ましい。
【0081】
前記塩基性触媒としては、具体的には、ジメチルアミノピリジン、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及び、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。前記酸性触媒としては、具体的には、硫酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。特にジメチルアミノピリジンが触媒活性の点から優れている。
【0082】
前記中間体フェノール化合物と前記化合物(e)との反応としては、前記中間体フェノール化合物に含まれる水酸基1モルに対し、前記化合物(e)を1~10モルを添加し、0.01~0.2モルの塩基性触媒を一括添加、又は、徐々に添加しながら、30~150℃の温度で、1~40時間反応させる方法が挙げられる。
【0083】
また、前記化合物(e)との反応(架橋基の導入)時に、有機溶媒を併用することにより、前記硬化性樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、1、3-ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調製するために、適宜2種以上を併用してもよい。
【0084】
上述の化合物(e)との反応(架橋基の導入)の終了後は、反応生成物を貧溶媒に再沈した後、析出物を貧溶媒で20~100℃の温度で、0.1~5時間攪拌し、減圧濾過した後、析出物を40~80℃の温度で、1~10時間乾燥することで、目的の前記硬化性樹脂を得ることができる。貧溶媒としてはヘキサンなどが挙げられる。
【0085】
なお、本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(1)及び(2)を含むことを特徴とし、上記構造単位(1)を繰り返した構造であり、かつ、上記一般式(2)に基づく末端構造であることが好ましいが、上記製造方法により、副反応として、これら構造単位(1)及び末端構造(2)以外の構造を含んでいても、本発明における硬化性樹脂の特性に影響を与えるものでなければ、特に問題はない。
【0086】
本発明の硬化性樹脂は、重量平均分子量(Mw)が500~50000であることが好ましく、500~20000であることがより好ましく、800~10000であることが更に好ましい。前記硬化性樹脂の重量平均分子量が前記範囲内であると、作業性や成形加工性に優れるため、好ましい。
【0087】
前記硬化性樹脂の軟化点としては、150℃以下であることが好ましく、50~100℃であることがより好ましい。前記硬化性樹脂の軟化点が前記範囲内であると、加工性に優れるため好ましい。
【0088】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記硬化性樹脂を含有することが好ましい。前記硬化性樹脂が、構造中に置換基Rを有し、かつ、末端構造に-C(CH)Rを有することで架橋基の分子運動性が抑制され低誘電正接に優れ、また構造単位に-CR-C-CR-を有することで、自由体積が小さくなり、低誘電率に優れ、かつ、柔軟性が発現され、溶剤溶解性に優れ、硬化性樹脂組成物の調製が容易で、ハンドリング性に優れ、前記硬化性樹脂の構造中に極性官能基の割合が少ないため、前記硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、低誘電特性に優れ、好ましい態様となる。
【0089】
〔その他樹脂等〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、前記硬化性樹脂に加えて、その他樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で特に限定なく使用できる。前記硬化性樹脂は、後述するが、硬化剤を配合することなく、加熱等により硬化物を得ることができるが、例えば、その他樹脂等を併せて配合する際には、硬化剤や硬化促進剤などを配合して、使用することができる。
【0090】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物には、前記硬化性樹脂を含むが、前記硬化性樹脂の中で、Xがアリルエーテル基の場合、Xが(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基と異なり、単独重合(架橋)することができない(単独では硬化物を得ることができない)ため、前記Xがアリルエーテル基の場合は、硬化剤や硬化促進剤などを使用することが必要となる。
【0091】
〔その他樹脂〕
前記その他樹脂としては、例えば、アルケニル基含有化合物、例えば、ビスマレイミド類、アリルエーテル系化合物、アリルアミン系化合物、トリアリルシアヌレート、アルケニルフェノール系化合物、ビニル基含有ポリオレフィン化合物等を添加することもできる。また、その他の熱硬化性樹脂、例えば、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂等も目的に応じて適宜配合することも可能である。
【0092】
〔硬化剤〕
前記硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ-ル系化合物、シアネートエステル化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0093】
〔硬化促進剤〕
前記硬化促進剤としては、種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール類、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルフォスフィン等のリン系化合物、又は、イミダゾール類が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0094】
〔難燃剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、難燃性を発揮させるために、難燃剤を配合することができ、中でも、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合することが好ましい。前記非ハロゲン系難燃剤として、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、これらの難燃剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0095】
〔充填剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、無機質充填剤を配合することができる。前記無機質充填剤として、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填剤の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつ、成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。また、前記硬化性樹脂組成物を以下に詳述する導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0096】
〔その他配合剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0097】
<硬化物>
本発明の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られることが好ましい。前記硬化性樹脂組成物は、前記硬化性樹脂単独、もしくは、前記硬化性樹脂に加えて、上述した硬化剤などの各成分を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0098】
前記硬化反応としては、熱硬化や紫外線硬化反応などが挙げられ、中でも熱硬化反応としては、無触媒下でも容易に行われるが、さらに速く反応させたい場合には、有機過酸化物、アゾ化合物のような重合開始剤やホスフィン系化合物、第3級アミンの様な塩基性触媒の添加が効果的である。例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルフォスフィン、トリエチルアミン、イミダゾール類等が挙げられる。
【0099】
<用途>
本発明の硬化性樹脂組成物により得られる硬化物が、耐熱性、及び、低誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。また、前記硬化性樹脂組成物に含まれる前記硬化性樹脂は、各種溶剤への優れた溶解性を表すことから塗料化が可能である。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【実施例
【0100】
以下に、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、「部」及び「%」は特に断わりのない限り、質量基準である。なお、以下に示す条件で、硬化性樹脂、及び、前記硬化性樹脂を用いて得られる硬化物を合成し、更に得られた硬化物について、以下の条件にて測定・評価を行った。
【0101】
<GPC測定(硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)の評価)>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成方法で得られた硬化性樹脂のGPCチャートを得た。前記GPCチャートの結果より、硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0102】
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0103】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:合成例で得られた硬化性樹脂の固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0104】
(実施例1)
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた3L、4口セパラブルフラスコに、o-クレゾール324.4g、p-キシリレングリコール276.3g、及びp-トルエンスルホン酸一水和物19.0gを仕込み、撹拌しながら150℃に昇温し5時間反応させた。この間、反応により生成するメタノールは系外に除いた。その後、120℃に降温し、スチレン260.4gを5時間かけて滴下し反応させ、中間体フェノール化合物を得た。
【0105】
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた100mL、4口フラスコに、上記で合成した中間体フェノール化合物を10.0g、N,N-ジメチルホルムアミド10.0g、4-クロロメチルスチレン9.2g、48%水酸化カリウム水溶液7.0gを仕込み、攪拌しながら60℃に昇温し20時間反応させた。反応液をメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。ポリマーをテトラヒドロフラン100gで再溶解し、再びメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。得られたポリマーをメタノール100gで2回洗浄した。その後、減圧下50℃で2時間乾燥させ、硬化性樹脂(Mw:2100)を得た。
【0106】
(実施例2)
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた3L、4口セパラブルフラスコに、o-クレゾール324.4g、1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン388.5g、及びp-トルエンスルホン酸一水和物19.0gを仕込み、撹拌しながら150℃に昇温し5時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、120℃に降温し、スチレン260.4gを5時間かけて滴下し反応させ、中間体フェノール化合物を得た。
【0107】
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた100mL、4口フラスコに、上記で合成した中間体フェノール化合物を10.0g、N,N-ジメチルホルムアミド10.0g、4-クロロメチルスチレン9.2g、48%水酸化カリウム水溶液7.0gを仕込み、攪拌しながら60℃に昇温し20時間反応させた。反応液をメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。ポリマーをテトラヒドロフラン100gで再溶解し、再びメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。得られたポリマーをメタノール100gで2回洗浄した。その後、減圧下50℃で2時間乾燥させ、硬化性樹脂(Mw:2200)を得た。
【0108】
(実施例3)
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた3L、4口セパラブルフラスコに、o-クレゾール324.4g、1,4-ビス(1-ヒドロキシエチル)ベンゼン332.4g、及びp-トルエンスルホン酸一水和物19.0gを仕込み、撹拌しながら150℃に昇温し5時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、120℃に降温し、スチレン260.4gを5時間かけて滴下し反応させ、中間体フェノール化合物を得た。
【0109】
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた100mL、4口フラスコに、上記で合成した中間体フェノール化合物を10.0g、N,N-ジメチルホルムアミド10.0g、4-クロロメチルスチレン9.2g、48%水酸化カリウム水溶液7.0gを仕込み、攪拌しながら60℃に昇温し20時間反応させた。反応液をメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。ポリマーをテトラヒドロフラン100gで再溶解し、再びメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。得られたポリマーをメタノール100gで2回洗浄した。その後、減圧下50℃で2時間乾燥させ、硬化性樹脂(Mw:2200)を得た。
【0110】
(実施例4)
実施例3のスチレン260.4gをα-メチルスチレン295.5gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:2000)を得た。
【0111】
(実施例5)
実施例3のスチレン260.4gを4-メチルスチレン295.5gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:1900)を得た。
【0112】
(実施例6)
実施例3のスチレン260.4gを1,1-ジフェニルエチレン450.8gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:1900)を得た。
【0113】
(実施例7)
実施例3のスチレン260.4gを1-オクテン280.6gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:1800)を得た。
【0114】
(実施例8)
実施例3のo-クレゾール324.4gを2-エチルフェノール366.5gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:1800)を得た。
【0115】
(実施例9)
実施例3のo-クレゾール324.4gを2-フェニルフェノール510.6gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:1800)を得た。
【0116】
(実施例10)
実施例3のo-クレゾール324.4gを2-シクロヘキシルフェノール528.8gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:1900)を得た。
【0117】
(実施例11)
実施例3のo-クレゾール324.4gをp-クレゾール324.4gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:2600)を得た。
【0118】
(実施例12)
実施例3の4-クロロメチルスチレン9.2gをメタクリル酸無水物9.3gに変更し、48%水酸化カリウム水溶液7.0gを4-ジメチルアミノピリジン0.2gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:2200)を得た。
【0119】
(実施例13)
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた3L、4口セパラブルフラスコに、o-クレゾール324.4g、p-トルエンスルホン酸一水和物19.0gを仕込み、撹拌しながら120℃に昇温し、ジビニルベンゼン280.4gを5時間かけて滴下し反応させた。その後、スチレン260.4gを5時間かけて滴下し反応させ、中間体フェノール化合物を得た。
【0120】
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた100mL、4口フラスコに、上記で合成した中間体フェノール化合物を10.0g、N,N-ジメチルホルムアミド10.0g、4-クロロメチルスチレン9.2g、48%水酸化カリウム水溶液7.0gを仕込み、攪拌しながら60℃に昇温し20時間反応させた。反応液をメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。ポリマーをテトラヒドロフラン100gで再溶解し、再びメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。得られたポリマーをメタノール100gで2回洗浄した。その後、減圧下50℃で2時間乾燥させ、硬化性樹脂(Mw:2100)を得た。
【0121】
(実施例14)
実施例3のo-クレゾール324.4gを2,5-キシレノール366.49gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:2300)を得た。
【0122】
(実施例15)
実施例3のo-クレゾール324.4gを2,3,5-トリメチルフェノール408.54gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:2500)を得た。
【0123】
(実施例16)
実施例3の4-クロロメチルスチレン9.2gをアクリルブロミド7.3gに変更し、48%水酸化カリウム水溶液7.0gを炭酸カリウム20.0gに変更した以外は、実施例3と同様の方法で合成を実施し、硬化性樹脂(Mw:1800)を得た。
【0124】
(比較例1)
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた3L、4口セパラブルフラスコに、フェノール282.3g、p-キシリレングリコール276.3g、及びp-トルエンスルホン酸一水和物19.0gを仕込み、撹拌しながら150℃に昇温し5時間反応させた。この間、反応により生成するメタノールは系外に除いて、中間体フェノール化合物を得た。
【0125】
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた100mL、4口フラスコに、上記で合成した中間体フェノール化合物を10.0g、N,N-ジメチルホルムアミド10.0g、4-クロロメチルスチレン9.2g、48%水酸化カリウム水溶液7.0gを仕込み、攪拌しながら60℃に昇温し20時間反応させた。反応液をメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。ポリマーをテトラヒドロフラン100gで再溶解し、再びメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。得られたポリマーをメタノール100gで2回洗浄した。その後、減圧下50℃で2時間乾燥させ、硬化性樹脂(Mw:2300)を得た。
【0126】
(比較例2)
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた3L、4口セパラブルフラスコに、o-クレゾール324.4g、p-キシリレングリコール276.3g、及びp-トルエンスルホン酸一水和物19.0gを仕込み、撹拌しながら150℃に昇温し5時間反応させた。この間、反応により生成するメタノールは系外に除いて、中間体フェノール化合物を得た。
【0127】
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計のついた100mL、4口フラスコに、上記で合成した中間体フェノール化合物を10.0g、N,N-ジメチルホルムアミド10.0g、4-クロロメチルスチレン9.2g、48%水酸化カリウム水溶液7.0gを仕込み、攪拌しながら60℃に昇温し20時間反応させた。反応液をメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。ポリマーをテトラヒドロフラン100gで再溶解し、再びメタノール100gに注ぎ、ポリマーを再沈殿した。得られたポリマーをメタノール100gで2回洗浄した。その後、減圧下50℃で2時間乾燥させ、硬化性樹脂(Mw:2400)を得た。
【0128】
<樹脂フィルム(硬化物)の作成>
実施例、及び、比較例で得られた硬化性樹脂(固体粉末)を5cm角の正方形の型枠に入れ、ステンレス板で挟み、真空プレスにセットした。常圧常温下で1.5MPaまで加圧した。次に10torrまで減圧後、熱硬化温度より50℃高い温度まで30分かけて加温した。さらに2時間静置後、室温まで徐冷した。その結果、平均膜厚が100μmの均一な樹脂フィルム(硬化物)を作製した。
【0129】
なお、実施例16(Xがアリルエーテル基)においては、硬化性樹脂単独での単独重合(架橋)が進行しないため、硬化性樹脂の製造確認のみを行い、以下の樹脂フィルム(硬化物)に基づく評価は行っていない。
【0130】
<誘電特性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)の面内方向の誘電特性について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて誘電率、及び、誘電正接を測定した。なお、誘電正接としては、10×10-3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、5.5×10-3以下であり、より好ましくは4.5×10-3以下である。また、誘電率としては、3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、2.8以下であることが好ましく、より好ましくは、2.6以下である。
【0131】
<耐熱性の評価(ガラス転移温度)>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、パーキンエルマー製DSC装置(Pyris Diamond)を用い、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される発熱ピーク温度(熱硬化温度)の観測後、それより50℃高い温度で30分間保持した。ついで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、さらに、再度20℃/分の昇温条件で昇温し、樹脂フィルム(硬化物)のガラス転移点温度(Tg)(℃)を測定した。なお、ガラス転移点温度(Tg)としては、100℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、130℃以上、より好ましくは、150℃以上である。
【0132】
【表1】
【0133】
注)上記表1中のRは、実施例1~10、12、及び、13は、架橋基Xに対して、オルソ位にメチル基等を有する。また、実施例11は、架橋基Xに対してオルト位にメチル基を有し、実施例14は、架橋基Xに対して、オルト位(2-)とメタ位(5-)にメチル基を有し、実施例15が架橋基Xに対して、オルト位(2-)、メタ位(3-)、及び、メタ位(5-)にメチル基を有する。
【0134】
【表2】
【0135】
注)上記表1及び表2中のPhはフェニル基、Cyはシクロヘキシル基を表す。
【0136】
上記表1及び表2の評価結果より、全ての実施例においては、硬化性樹脂を使用することで得られる硬化物は、耐熱性、及び、低誘電特性の両立を図ることができ、実用上問題のないレベルであることが確認できた。
【0137】
一方、上記表2の評価結果より、比較例1においては、得られた硬化性樹脂中の主鎖と末端の架橋基(極性部位)の分子運動性が高いことにより、誘電正接や誘電率が高めの値を示し、誘電特性に劣り(低誘電特性が得られず)、主鎖の剛直性が低いことにより、ガラス転移温度(Tg)が低く、耐熱性に劣ることが確認された。比較例2においては、硬化性樹脂の末端の架橋基(極性部位)の分子運動性が高いことのせいで、誘電正接や誘電率が高めの値を示し、誘電特性に劣り、主鎖の剛直性が低いため、ガラス転移温度(Tg)が低く、耐熱性に劣ることも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の硬化制樹脂を使用し得られる硬化物は、耐熱性、及び、誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能であり、特に、プリプレグ、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして適している。