(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】表面改質酸化亜鉛粒子、分散液、化粧料
(51)【国際特許分類】
C01G 9/02 20060101AFI20240723BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20240723BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240723BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C01G9/02 A
A61K8/27
A61Q1/00
B01J13/00 B
(21)【出願番号】P 2022518533
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2020018246
(87)【国際公開番号】W WO2021220454
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】須磨 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】野辺 正紘
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/190399(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/133412(WO,A1)
【文献】特表2015-527430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 9/02
A61K 8/27
A61Q 1/00
B01J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であり、
下記式(1)中のAで示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10
-2g
2/s以上かつ1.0×10
2g
2/s以下であることを特徴とする表面改質酸化亜鉛粒子。
W
2=A・t (1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
【請求項2】
L
*a
*b
*表色系色度図におけるb*が4.0以上かつ18以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面改質酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有することを特徴とする分散液。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項5】
アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子を用意する工程と、
前記表面改質酸化亜鉛粒子を評価して、下記式(1)中でAとして示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aを得て、前記Aが5.0×10
-2g
2/s以上かつ1.0×10
2g
2/s以下の範囲内であるかどうか判定する工程と、
W
2=A・t (1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
前記Aが前記範囲内である場合に、その表面改質酸化亜鉛粒子を選択する工程とを有する、請求項1の表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法。
【請求項6】
前記判定する工程が、
底面が濾紙である直径36mmの円筒セルと、シクロペンタシロキサンをいれた容器と、前記容器を昇降して前記シクロペンタシロキサンと前記濾紙に接触させる部材と、前記円筒セル又は前記シクロペンタシロキサンの重量の変化とその経過時間とを検知する装置と、を用意する工程と、
前記円筒セルに10gの表面改質酸化亜鉛粒子を入れた後に、シクロペンタシロキサンを前記濾紙に接触させて、前記セル又は前記シクロペンタシロキサンの重量変化とその経過時間とを測定する工程と、
前記重量変化、前記経過時間、及び前記式(1)から、Aの値を得る工程を含む、請求項
5に記載の表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質酸化亜鉛粒子、分散液、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛は、紫外線遮蔽能に優れ、ガスバリア性が高く、さらに透明性が高いことが知られている。そのため、酸化亜鉛を形成材料とする粒子(以下、「酸化亜鉛粒子」と称する。)は、紫外線遮蔽やガスバリア等の機能を有するとともに、透明性が必要とされる種々の素材の形成材料として用いられる。このような素材としては、例えば、紫外線遮蔽フィルム、紫外線遮蔽ガラス、化粧料、ガスバリアフィルム等が挙げられる。
【0003】
上記の種々の素材について、透明性を得るための方法としては、例えば、形成材料である酸化亜鉛粒子の一次粒子径を小さくする方法が挙げられる。酸化亜鉛粒子の一次粒子径を小さくする方法としては、熱分解法や気相法等の種々の方法が検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
酸化亜鉛粒子を化粧料に適用する場合、酸化亜鉛粒子の表面を化粧品の性状に合わせたり、酸化亜鉛粒子の触媒活性を抑えたりするために、酸化亜鉛粒子の表面処理が行われている。
酸化亜鉛粒子を油性化粧料や、エマルションタイプの油相等に配合する場合には、アルコキシ基を有するシランカップリング剤等で表面処理し、アルコキシ基を表面に有する酸化亜鉛粒子が用いられる(例えば、特許文献3、4参照)。
以下の説明では、シランカップリング剤を表面に有する酸化亜鉛粒子を、表面改質酸化亜鉛粒子と称する。
【0005】
このような表面改質酸化亜鉛粒子は、そのまま化粧料に配合されたり、分散媒に分散させた分散液の状態で化粧料に配合されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-284527号公報
【文献】特開2000-95519号公報
【文献】国際公開第2017/130632号
【文献】特開2007-51188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シランカップリング剤を表面に有する酸化亜鉛粒子であっても、油性化粧料に配合するためには、多くの分散エネルギーが必要であった。また、油性化粧料に配合されても、透明性と紫外線遮蔽性が十分に得られない、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、油性化粧料への配合が容易で、かつ、透明性と紫外線遮蔽性に優れる表面改質酸化亜鉛粒子を提供することを目的とする。また、このような表面改質酸化亜鉛粒子を含む分散液、化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の第一の態様は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であり、前記表面改質酸化亜鉛粒子は、下記式(1)中のAで示される、表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下であることを特徴とする表面改質酸化亜鉛粒子を提供する。
W2=A・t(1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
【0010】
本発明の第一の態様においては、表面改質酸化亜鉛粒子は、L*a*b*表色系色度図におけるb*が4.0以上かつ18以下である構成としてもよい。
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の前記第二の態様は、上記の表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する分散液を提供する。
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の前記第三の態様は、上記の表面改質酸化亜鉛粒子および上記の分散液からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する化粧料を提供する。
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の第四の態様は、上記の表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法を提供する。
第四の態様の表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子を用意する工程と、前記表面改質酸化亜鉛粒子を評価して、下記式(1)中でAとして示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aを得て、前記Aが5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下の範囲内であるかどうか判定する工程と、
W
2
=A・(1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
前記Aが前記範囲内である場合に、その表面改質酸化亜鉛粒子を選択する工程とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、化粧料に少ないエネルギーで分散することができ、かつ、透明性と紫外線遮蔽性に優れる、表面改質酸化亜鉛粒子を提供することができる。また、本発明によれば、このような表面改質酸化亜鉛粒子を含む分散液、化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例4(右)、比較例2(左)の表面改質酸化亜鉛粒子の分散状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の表面改質酸化亜鉛粒子の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明は趣旨を逸脱しない範囲において、数値、量、材料、種類、時間、温度、順番などについて、変更、省略、置換、追加等が可能である。
【0018】
[表面改質酸化亜鉛粒子]
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子である。そして前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数(下記式(1)中のA)が、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下である。
W2=A・t (1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
【0019】
表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数は、浸透重量検知法により算出することができる。具体的には、浸透重量を検知できる装置、例えば、ホソカワミクロン社製のペネトアナライザ(型番:PNT-N)を用いて算出することができる。底面が濾紙である直径36mmの円筒セルと、前記円筒セル及び/又は後述するシクロペンタシロキサンの重量の変化とその経過時間とを検知できる装置と、シクロペンタシロキサンをいれた容器と、この容器を昇降などの動作によって前記濾紙に接触させる部材を用いて、浸透速度係数を得ることが可能である。具体的には、前記円筒セルに10gの表面改質酸化亜鉛粒子を入れた後に、シクロペンタシロキサンを前記濾紙の表面に接触させて、前記セル及び/又はシクロペンタシロキサンの重量変化と経過時間とを測定し、前記式(1)から前記Aを得ればよい。
ホソカワミクロン社製のペネトアナライザを使用する場合、例えば、以下のようにして測定を行うことができる。
測定セルを、次の手順で準備する。
底面が濾紙(型番:定量濾紙 No.7、ADVANTEC社製)である直径36mmの円筒セルに、表面改質酸化亜鉛粒子を10g程度充填する。この充填した表面改質酸化亜鉛粒子の上に、アルミニウム製の200gの錘を乗せ、1分間静置する。
次いで、錘を除去し、その後、媒液であるシクロペンタシロキサンを昇降装置で上昇させ、セルの底面(濾紙)に接触させて、時間と重量変化とを測定することで、浸透速度を計測する。測定した時間と重量変化から、浸透速度係数が得られる。
表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数が5.0×10-2g2/s以上であれば、シクロペンタシロキサンに対する表面改質酸化亜鉛粒子の濡れ性が高い。このため、油性化粧料に容易に分散できる。
表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数が1.0×102g2/s以下であれば、表面改質酸化亜鉛粒子は、化粧料に配合したときの吸油による粘度の上昇を抑制できる。なお吸油とは、表面改質酸化亜鉛粒子が化粧料中の油成分を吸収することを意味する。
【0020】
シクロペンタシロキサンは、油性化粧料で一般的に使用される溶媒である。そのため、シクロペンタシロキサンへの濡れ性が高い表面改質酸化亜鉛粒子であれば、油性化粧料への分散が容易であると判断できるため、シクロペンタシロキサンを用いた。
ここで、「容易に分散する」とは、弱い分散エネルギーで、分散粒子径が小さい分散液や組成物が得られることを意味する。分散粒子径が小さい表面改質酸化亜鉛粒子は、化粧料に配合されたときに、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0021】
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子である。すなわち、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤が、その表面の少なくとも一部に付着した酸化亜鉛粒子である。
【0022】
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積は、任意に選択できるが、1.5m2/g以上であることが好ましく、2.5m2/g以上であることがより好ましく、4m2/g以上であることがさらに好ましい。また、表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積は、例えば、55m2/g以下であってもよく、50m2/g以下であることが好ましく、45m2/g以下であることがより好ましい。必要に応じて、表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積は、40m2/g以下であってもよく、30m2/g以下であってもよく、10m2/g以下であってもよい。表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積の上記上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積が1.5m2/g以上50m2/g以下であれば、化粧料に配合した場合に透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0023】
化粧料に配合した場合の透明性を高くしたい場合には、表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積は8m2/g以上であることが好ましく、15m2/g以上であることがより好ましく、20m2/g以上であることがさらに好ましい。
例えば、表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積は20m2/g以上かつ50m2/g以下であり、20m2/g以上かつ48m2/g以下であることが好ましく、20m2/g以上かつ46m2/g以下であることがより好ましい。必要に応じて、20.0m2/g以上かつ30.0m2/g以下や、20.0m2/g以上かつ38.0m2/g以下や、20.0m2/g以上かつ44.0m2/g以下であってもよい。
表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積が20m2/g以上であることにより、シリコーンオイル等を含む油性化粧料に配合されたときに、透明性に優れる化粧料を得ることができる。一方、表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積が50m2/g以下であることにより、粒子の表面エネルギーが大き過ぎないため、油性化粧料(以下、「化粧料」と略記する場合がある。)に、少ないエネルギーで配合することができる。
【0024】
一方、化粧料に配合した場合のUVA領域の紫外線遮蔽性を大きくしたい場合には、表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積は20m2/g未満であることが好ましく、15m2/g以下であることがより好ましく、8m2/g以下であることがさらに好ましい。
例えば、表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積は1.5m2/g以上20m2/g未満であることが好ましく、1.5m2/g以上15m2/g以下であることがより好ましく、1.5m2/g以上8m2/g以下であることがさらに好ましい。
表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積が1.5m2/g以上であることにより、シリコーンオイル等を含む油性化粧料に配合されたときに、透明性のある化粧料を得ることができる。一方、表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積が20m2/g未満であることにより、粒子の表面エネルギーが大きすぎないため、油性化粧料に、少ないエネルギーで配合することができ、UVA領域の紫外線遮蔽性に優れる化粧料を得ることができる。
【0025】
本実施形態における表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積(単位:m2/g)とは、BET法で求めたBET比表面積のことである。
表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積を測定する方法としては、例えば、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model-1201、マウンテック社製)を用いたBET法が挙げられる。
【0026】
ここで、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子が、油性化粧料に少ないエネルギーで分散することができ、かつ、紫外線遮蔽性に優れる理由について説明する。
【0027】
本発明者等は、酸化亜鉛粒子に、アルコキシ基を有するシランカップリング剤(以下、「シランカップリング剤」と略記する場合がある。)を表面処理する際に、ビーズミル等の分散エネルギーが大きい分散機を用いて、酸化亜鉛粒子と前記シランカップリング剤を、高エネルギーで分散処理することにより、その結果、シリコーンを含む化粧料に容易に分散できる、優れた表面改質酸化亜鉛粒子が得られることを見出した。ここで、上記分散エネルギーとは、シランカップリング剤を用いて、酸化亜鉛粒子を溶媒に分散させるために要するエネルギーのことである。言い換えると、凝集していた酸化亜鉛粒子がほぐれる程度のエネルギーである。
そのメカニズムの詳細は以下のように推測される。
【0028】
比表面積が1.5m2/g以上かつ50m2/g以下である酸化亜鉛粒子は、粒子同士が凝集しやすい。特に、比表面積が20m2/g以上かつ50m2/gである酸化亜鉛粒子は、粒子同士がより凝集しやすい。そのため、従来は凝集した状態でシランカップリング剤による表面処理がなされていた。しかしながら、このような従来の粒子同士が凝集した状態で表面処理がされた粒子と、油性化粧料の油成分とが混合されると、粒子が凝集した状態のままで分散する。このため、凝集に起因して、透明性と紫外線遮蔽性が悪化する。前述のような悪化を防止するために、前記粒子の凝集をほぐす必要があり、油性化粧料を作製する際には、より多くの分散エネルギーが必要となっていた。しかしながら、高エネルギーで凝集をほぐすことで透明性と紫外線遮蔽性が改善されても、凝集した状態のまま表面処理された凝集体の凝集がほぐれたために、ほぐれた酸化亜鉛粒子の表面処理の状態が不均一となった。その結果、油性化粧料中の表面改質酸化亜鉛粒子の分散安定性が損なわれていた。
【0029】
しかしながら、酸化亜鉛粒子を高エネルギーで溶媒に分散させることで、酸化亜鉛粒子の凝集がほぐれた状態で、シランカップリング剤で表面処理することができ、酸化亜鉛粒子の表面全体に、略均一にシランカップリング剤が存在することができる、と推測される。そのため、このような状態の表面改質酸化亜鉛粒子と、油成分と、が混合されると、酸化亜鉛粒子表面のどの部分も、油成分との濡れ性がよく、低エネルギーで前記粒子が油成分に分散できる。また、酸化亜鉛粒子表面に、略均一にシランカップリング剤が存在するため、表面改質酸化亜鉛粒子同士の凝集も抑制され、透明性と紫外線遮蔽性と分散安定性に優れる化粧料を得ることができる、と推測される。
【0030】
しかしながら、シランカップリング剤が、酸化亜鉛粒子表面に均一に存在していることを直接確認することは非常に難しい。本実施形態において、表面改質酸化亜鉛粒子を溶媒に容易に分散できるようになったという効果は、多数の要因の複雑な絡み合いによって、具体的には、酸化亜鉛粒子の形状、比表面積、粒度分布や、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の加水分解度合いや、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の酸化亜鉛粒子に対する付着の具合や、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の酸化亜鉛粒子への付着率等、多数の要因の複雑な絡み合いによって発現していると推察される。そのため、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子の特徴を、アルコキシ基を有するシランカップリング剤によって表面修飾された酸化亜鉛粒子の表面の状態により、直接特定することは、およそ不可能であると考えられる。
そこで、本発明者等は、様々な検討を行った結果、表面改質酸化亜鉛粒子の濡れ性に着目し、目的の分散性を達成するように、シランカップリング剤による酸化亜鉛粒子の表面処理を高エネルギーで行うことにより、油性化粧料に容易に分散し、紫外線遮蔽性に優れる表面改質酸化亜鉛粒子が得られることを見出した。言い換えると、上記測定方法で得られる浸透速度係数の値は、シランカップリング剤が酸化亜鉛粒子表面に均一に存在しているかどうかの指標と考えて良い。
【0031】
本実施形態では、化粧料に好ましく使用される表面改質酸化亜鉛粒子を用いているため、粒子として酸化亜鉛粒子、表面修飾材料としてアルコキシ基を有するシランカップリング剤、溶媒としてシクロペンタシロキサンを用いて、表面処理の状態を評価する指標とした。
しかし、本実施形態の表面処理状態の評価方法は、酸化亜鉛粒子とアルコキシ基を有するシランカップリング剤の組み合わせに限らず、粒子と表面修飾材料にまで拡張して適用することができる。すなわち、溶媒を選択し、表面修飾剤で表面修飾された粒子の、前記選択した溶媒に対する浸透速度係数を測定することで、表面処理の均一性の指標とすることができる。
【0032】
シランカップリング剤による表面処理を高エネルギーで行うと、表面処理が進んだ結果、表面改質酸化亜鉛粒子のL*a*b*表色系色度図におけるb*(以下、「b*」と略記する場合がある。)が、表面処理前の酸化亜鉛粒子のb*より大きくなる。そのため、表面改質酸化亜鉛粒子のb*は、シランカップリング剤による表面処理の指標となる。
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、b*が4.0以上かつ18以下であることが好ましく、4.5以上かつ16以下であることがより好ましい。必要に応じて、4.0以上かつ12以下や、4.5以上かつ11以下や、5.0以上かつ10.0以下などであってもよい。表面改質前と表面改質後の粒子のb*の差は、例えば、0.5~8.0であってもよく、2.0~8.0であってもよく、3.0~7.5であってもよい。ただしこれらの値のみに限定されない。
【0033】
表面改質酸化亜鉛粒子のb*を測定する方法としては、分光色彩計を用いるなどの公知の方法、例えば、分光色彩計(東京電色工業社製、Spectro Color Meter SE7700)を用いることができる。
【0034】
本実施形態において、「シランカップリング剤を表面に有する」とは、シランカップリング剤が酸化亜鉛粒子に対し、これらの間の相互作用により接触または結合することをいう。接触としては、例えば、物理吸着が挙げられる。また、結合としては、例えば、イオン結合、水素結合、共有結合等が挙げられる。
【0035】
表面改質酸化亜鉛粒子中におけるシランカップリング剤の量は、酸化亜鉛粒子の比表面積と、配合する油性化粧料の疎水化度に合わせて適宜調整して用いればよい。例えば、表面改質酸化亜鉛粒子中におけるシランカップリング剤の量は、酸化亜鉛粒子に対して、1質量%以上かつ20質量%以下が好ましく、2質量%以上かつ18質量%以下がより好ましく、3質量%以上かつ16質量%以下がさらに好ましい。必要に応じて、3質量%以上かつ8質量%以下や、5質量%以上かつ10質量%以下などであってもよい。ただし、前記例のみに限定されない。
【0036】
表面改質酸化亜鉛粒子中におけるシランカップリング剤の量は、例えば、表面改質酸化亜鉛粒子中のSi量を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置で定量分析することで算出することができる。
【0037】
「酸化亜鉛粒子」
本実施形態の酸化亜鉛粒子(表面処理前)は、任意に選択できるが、1.5m2/g以上であることが好ましく、2.5m2/g以上であることがより好ましく、4m2/g以上であることがさらに好ましい。また、酸化亜鉛粒子の比表面積は、50m2/g以下であることが好ましく、45m2/g以下であることがより好ましい。必要に応じて、酸化亜鉛粒子の比表面積は、40m2/g以下であってもよく、30m2/g以下であってもよく、10m2/g以下であってもよい。
表面処理前の酸化亜鉛粒子の比表面積と、表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積は、シランカップリング剤の付着の仕方によって多少前後するが、大きくは変化しない。
そのため、所望の比表面積の表面改質酸化亜鉛粒子を得るためには、所望の比表面積を有する酸化亜鉛粒子を用いればよい。すなわち、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、前述の酸化亜鉛粒子の好ましい比表面積の値や範囲と、同様の値や範囲を好ましく有することができる。
【0038】
処理前の酸化亜鉛粒子のL*a*b*表色系色度図におけるb*は、10以下であることが好ましい。酸化亜鉛粒子のb*が上記範囲のものを用いれば、表面改質酸化亜鉛粒子のb*も上記範囲、すなわち4.0以上かつ18以下となることができるとともに、表面改質酸化亜鉛粒子のb*が、表面処理前の酸化亜鉛粒子のb*より大きくなる。その結果、化粧料に適用できる程度の黄色度に、抑制することができる。酸化亜鉛粒子のb*の下限値は特に限定されず、0であってもよく、1.0であってもよく、1.5であってもよい。
【0039】
「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」
アルコキシ基を有するシランカップリング剤としては任意に選択でき、例えば、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤のうち、化粧料に使用可能なものが好ましく挙げられる。
R1Si(OR2)3・・・(1)
(R1は、炭素原子数1~18のアルキル基、フルオロアルキル基またはフェニル基、R2は、炭素原子数1~4のアルキル基を示す。)
【0040】
このようなシランカップリング剤としては、アルキルアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、アルキル基を側鎖に有するポリシロキサンおよびアリル基を側鎖に有するポリシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0041】
アルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン(トリエトキシカプリリルシラン)、n-オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
シランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマー、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン等の、シロキサン骨格を主鎖とし、分子構造内にアルコキシ基とアクリル基とを有するポリマー型シランカップリング剤等を用いることもできる。
【0043】
シランカップリング剤としては、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルアルコキシシラン等を用いることもできる。
【0044】
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
上記のシランカップリング剤の中でも、分子内にオクチル基を有するシランカップリング剤がより好ましい。具体的には、ナチュラルオイルやエステル油からシリコーンオイルまでの幅広い極性の油相に対応可能な、シランカップリング剤がより好ましい。このようなシランカップリング剤としては、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子では、表面改質酸化亜鉛粒子の特性を阻害しない範囲であれば、シランカップリング剤に加えて、化粧料に用いられる表面処理剤であって、シランカップリング剤以外の処理剤を用いて、酸化亜鉛粒子を表面処理してもよい。
【0047】
シランカップリング剤以外の表面処理剤としては、例えば、シリカ、アルミナ等の無機材料や、シリコーン化合物、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル、有機チタネート化合物等の有機材料が挙げられる。
【0048】
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、シクロペンタシロキサンの浸透速度係数(上記式(1)中のA)が、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下である。そのため、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子によれば、シクロペンタシロキサンへの濡れ性が高く、油性化粧料に容易に分散でき、化粧料に配合したときの吸油による粘度の上昇を抑制できる。
【0049】
「表面改質酸化亜鉛粒子の製造方法」
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子の製造方法は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤と、溶媒と、酸化亜鉛粒子を分散機に入れて、混合液を作製する工程と、この混合液を、所定以上のエネルギーで分散処理する工程と、を有する。
上記混合液を作製する工程は、さらに水を含んでもよい。
上記混合液を作製する工程は、さらに触媒を含んでもよい。
上記分散処理工程後に、加熱工程を行ってもよい。
上記分散処理工程後、または加熱工程後に、乾燥工程を行ってもよい。
上記加熱工程後、または乾燥工程後に、解砕処理を行ってよい。
【0050】
製造方法に使用されるアルコキシ基を有するシランカップリング剤と、酸化亜鉛粒子は、上記と全く同様のものを用いることができる。このため、説明は省略する。
【0051】
「混合液の作製工程」
混合液の作製工程では、シランカップリング剤と、溶媒と、酸化亜鉛粒子とを、分散機に入れる。さらに、必要に応じて純水や触媒を入れてもよい。これらの材料は同時に入れてもよく、順次入れてもよい。これらの材料を入れる順番は特に限定されない。分散機に入れた後は、そのまま何も攪拌しなくてもよいが、簡単に攪拌してもよい。また、分散液に入れる前、あらかじめこれらの材料を混合してから分散機に入れてもよい。
【0052】
「溶媒」
溶媒は、シランカップリング剤と混合可能な溶媒であれば特に限定されない。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコールや、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステルや、n-ヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの溶媒の中でも、水と混合できる点でアルコールが好ましく、アルコールの中でもイソプロパノールが特に好ましい。
【0053】
混合液中における溶媒の含有量は任意に選択できるが、酸化亜鉛粒子同士の凝集を抑制するため、40質量%以上であることが好ましい。溶媒の含有量の上限値は、特に制限されないが、生産効率の観点において95質量%以下であることが好ましい。
【0054】
混合液中における酸化亜鉛粒子の含有量は任意に選択できるが、酸化亜鉛粒子同士の凝集の抑制と生産効率の両立の観点から、1質量%以上かつ55質量%以下であることが好ましく、10質量%以上かつ50質量%以下であることがより好ましい。前記含有量は、15質量%以上かつ45質量%以下や、20質量%以上かつ40質量%以下や、25質量%以上かつ35質量%以下などであってもよい。
【0055】
混合液中におけるシランカップリング剤の含有量は任意に選択でき、酸化亜鉛粒子に所望の疎水性を付与できるように適宜調整すればよい。例えば、表面改質酸化亜鉛粒子中のシランカップリング剤の量が1質量%以上かつ20質量%以下となるように、調整して混合すればよい。前記量は、必要に応じて、1質量%以上かつ10質量%以下や、1質量%以上かつ5質量%以下であってもよい。混合液中におけるシランカップリング剤の含有量は、例えば、0.01質量%以上11質量%以下や、0.1質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0056】
純水の量は任意に選択でき、シランカップリング剤の加水分解反応を促進するために必要な量を、適宜調整して入れることが好ましい。
【0057】
触媒の量は任意に選択でき、シランカップリング剤の加水分解反応を促進するために必要な量を、適宜調整して入れることが好ましい。触媒は酸であってもよく、塩基であってもよい。
【0058】
酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、クエン酸、ギ酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0059】
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アミン等が挙げられる。これらの塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
「分散機」
分散機は、酸化亜鉛粒子同士の凝集をほぐしながら表面処理できる程度の分散エネルギーを、混合液に付与できるものであれば、特に限定されない。
このような分散機としては、コロイドミル、ロールミル、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、アルティマイザー、回転ミル、遊星ミル、ビーズミル、サンドミル等が挙げられる。分散メディアを必要とする分散装置で使用する分散メディアとしては、例えば、ジルコニア、ガラス、アルミナ、チタニア、窒化ケイ素等所定硬度を有する粒状体を用いることができる。
【0061】
「分散工程」
分散工程では、分散機を用いて、上記の混合液を、所定以上のエネルギーで分散処理することにより、表面改質酸化亜鉛粒子を得る。
混合液に付与されるエネルギーは、分散機の大きさに合わせて、適宜調整すればよい。よって分散の為の条件は適宜選択してよい。例えば、ミル、例えば容量が約1Lの容器を用いてビーズミルで、分散処理する場合には、500rpm以上の回転数で、1時間以上かつ10時間以下の時間で分散処理をすることが好ましい。ただし条件は必要に応じて選択でき、前記条件のみに限定されない。
また、ミル、例えば容量が約1Lの容器を用いてビーズミルで分散処理する場合には、混合液に付与される分散エネルギーは、例えば、100W・h/kg以上かつ600W・h/kg以下であることが好ましい。ただし条件は必要に応じて選択でき、前記条件のみに限定されない。
また、ビーズミルの解砕力がミル内のディスクまたはピン外周のビーズの遠心力に依存することから、ビーズ重量をミル内のビーズの総重量とした場合の前記遠心力と分散時間の積(力積)を計算した場合、0.5×106N・s以上かつ100×106N・s以下となるような分散処理をすることが好ましい。
また、表面改質酸化亜鉛粒子のb*が4.0以上かつ18以下となるまで分散処理を行ってもよい。この場合、分散処理中の酸化亜鉛粒子を少量抜き出して、分光色彩計を用いて、その酸化亜鉛粒子のb*を測定することにより、分散処理の進行度合を確認してもよい。
【0062】
分散工程における温度は特に限定されないが、例えば、20℃以上かつ45℃以下であることが好ましい。
【0063】
「加熱工程」
シランカップリング剤の表面処理工程を促進する観点においては、分散工程と同時、または、分散工程後に、加熱する工程を行ってもよい。
加熱温度は、表面処理が促進される温度であれば特に限定されず、例えば、40℃以上かつ150℃以下であることが好ましい。必要に応じて、40℃以上かつ80℃以下や、60℃から100℃などであってもよい。
【0064】
「乾燥工程」
分散処理後の液は、乾燥装置を用いて乾燥することが好ましい。なお、乾燥する前に固液分離を行うなど、乾燥時間が短くなるような処理をしてもよい。乾燥装置は、特に限定されず、例えば、箱型乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、流動層乾燥機、バンド乾燥機、エバポレーター、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、リボコーン、パドルドライヤー、スプレードライヤー、スラリードライヤー、フラッシュドライヤー、ロータリードライヤー等が挙げられる。
乾燥温度は、溶媒を除去できる温度であれば特に限定されず、例えば、50℃以上かつ200℃以下であることが好ましい。60℃以上かつ150℃以下や、70℃以上かつ120℃以下などであってもよい。
【0065】
「解砕工程」
乾燥後の表面改質酸化亜鉛粒子は、解砕機を用いて解砕処理を行ってもよい。解砕機としては、任意に選択でき、例えば、アトマイザー、ハンマーミル、ジェットミル、インペラーミル、ピンミル等が挙げられる。解砕工程により、例えば、化粧料に配合したときの表面改質酸化亜鉛粒子のざらつき感を抑制することができる。すなわち、表面改質酸化亜鉛粒子を化粧料に使用したときの使用感を向上することができる。
「選択工程」
なお本発明では、以下の方法によって、好ましい表面改質酸化亜鉛粒子の選択をすることも可能である。
まずアルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子を用意する。この表面改質酸化亜鉛粒子を評価して、下記式(1)中でAとして示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aを得て、前記Aが5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下の範囲内であるかどうか判定する。前記Aが前記範囲内である場合に、その表面改質酸化亜鉛粒子を好ましく選択することができる。
W2=A・t (1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
なお前記判定する工程は、例えば、底面が濾紙である直径36mmの円筒セルと、シクロペンタシロキサンをいれた容器と、前記容器を昇降して前記シクロペンタシロキサンと前記濾紙に接触させる部材と、前記円筒セル又は前記シクロペンタシロキサンの重量の変化とその経過時間とを検知する装置を用いて行うことができる。例えば、前記円筒セルに10gの表面改質酸化亜鉛粒子を入れた後に、シクロペンタシロキサンを前記濾紙に接触させて、前記セル又は前記シクロペンタシロキサンの重量変化とその経過時間とを測定する。そして、前記重量変化、前記経過時間、及び前記式(1)から、Aの値を得ることができる。
【0066】
[分散液]
本実施形態の分散液は、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する。本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子を用意し、これを分散媒と混ぜて形成してよい。
なお、本実施形態の分散液は、粘度が高いペースト状の分散体も好ましく含むことができる。
【0067】
分散媒は、表面改質酸化亜鉛粒子を分散できるものであれば、特に限定されない。表面改質酸化亜鉛粒子を化粧料用途で用いる場合には、分散媒は、化粧料に処方することが可能であれば、特に限定されない。
分散媒としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、オクタデカン等の炭化水素油;イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、安息香酸アルキル(C12-15)等のエステル油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール等の疎水性の分散媒が挙げられる。また、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、オクタノール、グリセリン等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1-フェニルプロパン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、o-、m-またはp-キシレン、2-、3-または4-エチルトルエン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル等のニトリル;オレイン酸、ホホバ油、オリーブ油、ココナッツオイル、グレープシード油、ヒマシ油、米ぬか油、馬油、ミンク油等のナチュラルオイル等が挙げられる。
これらの分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
表面改質酸化亜鉛粒子を化粧料用途で用いる場合には、分散媒は、上記鎖状ポリシロキサン、上記環状ポリシロキサン、上記変性ポリシロキサン、上記炭化水素油、上記エステル油、上記高級脂肪酸、上記高級アルコール、上記ナチュラルオイル、エタノール、グリセリン等が好ましく用いられる。
これらの分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
本実施形態の分散液は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0070】
添加剤としては、例えば、防腐剤、分散剤、分散助剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、UV吸収剤等が挙げられる。
【0071】
本実施形態の分散液における粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(d50)は任意に選択されるが、300nm以下(0.3μm以下)であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。150nm以下や、100nm以下であってもよい。
【0072】
d50の下限値は、特に限定されず、例えば、20nm以上であってもよく、40nm以上であってもよく、60nm以上であってもよい。
d50の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0073】
また、本実施形態の分散液における粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(d90)は、350nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることがさらに好ましい。
【0074】
d90の下限値は、特に限定されず、例えば、60nm以上であってもよく、80nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。
d90の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0075】
分散液のd50が300nm以下の場合には、この分散液を用いて作製した化粧料を皮膚に塗布した場合に、表面改質酸化亜鉛粒子が均一に分布しやすく、紫外線遮蔽効果が向上するため好ましい。また、分散液のd90が350nm以下の場合には、分散液の透明性が高く、この分散液を用いて作製された化粧料の透明性も高くなるため好ましい。
【0076】
すなわち、本実施形態の分散液におけるd50とd90が上記範囲であることにより、透明性に優れ、紫外線遮蔽性に優れる分散液を得ることができる。また、この分散液を用いて作製した化粧料も、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0077】
本実施形態の分散液における粒度分布の累積体積百分率の測定方法としては、例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置(型番:LB-550、堀場製作所製)を用いた方法が挙げられる。
【0078】
本実施形態の分散液における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量は、目的とする分散液の特性に応じて適宜調整される。
【0079】
本実施形態の分散液を化粧料に用いる場合、分散液における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、分散液における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
分散液における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0080】
分散液における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が上記範囲であることにより、分散液において、表面改質酸化亜鉛粒子が高濃度に含有される。そのため、分散液を用いて作製する化粧料の処方の自由度を向上することができるとともに、分散液の粘度を取り扱いが容易な範囲に調整することができる。
【0081】
本実施形態の分散液の製造方法は、特に限定されない。例えば、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒とを、公知の分散装置で、機械的に分散する方法が挙げられる。
【0082】
分散装置は、必要に応じて選択できる。分散装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、サンドミル、ボールミル、ロールミル等が挙げられる。
【0083】
本実施形態の分散液は、化粧料の他、紫外線遮蔽機能やガス透過抑制機能等を有する塗料等に用いることができる。
【0084】
本実施形態の分散液によれば、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子を含むため、分散液の生産効率がよく、かつ、安定的に高い紫外線遮蔽性を示す。
【0085】
[組成物]
本実施形態の組成物は、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子と、樹脂と、分散媒と、を含有してなる。本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子を用意し、樹脂と分散媒と混ぜて、組成物を用意してもよい。
【0086】
本実施形態の組成物における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量は、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。本実施形態の組成物における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量は、例えば、10質量%以上かつ40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上かつ30質量%以下であることがより好ましい。
【0087】
組成物における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が上記範囲であることにより、組成物において、表面改質酸化亜鉛粒子が高濃度に含有される。そのため、表面改質酸化亜鉛粒子の特性が充分に得られ、かつ、表面改質酸化亜鉛粒子を均一に分散した組成物が得られる。
【0088】
分散媒は、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されない。分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0089】
本実施形態の組成物における分散媒の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0090】
樹脂は、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されない。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0091】
本実施形態の組成物における樹脂の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0092】
本実施形態の組成物は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、重合開始剤、分散剤、防腐剤等が挙げられる。
【0093】
本実施形態の組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子と、樹脂と、分散媒とを、公知の混合装置で、機械的に混合する方法が挙げられる。
【0094】
また、上述の分散液と、樹脂とを、公知の混合装置で、機械的に混合する方法が挙げられる。
【0095】
混合装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
【0096】
本実施形態の組成物を、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、はけ塗り法、浸漬法等の通常の塗布方法により、ポリエステルフィルム等のプラスチック基材に塗布することにより、塗膜を形成することができる。これらの塗膜は、紫外線遮蔽膜やガスバリア膜として活用することができる。
【0097】
本実施形態の組成物によれば、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子を含むため、組成物の生産効率がよく、かつ、安定的に高い紫外線遮蔽性を示す。
【0098】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子および本実施形態の分散液の少なくとも一方と、化粧品基剤原料を含有してなる。
【0099】
ここで、化粧品基剤原料とは、化粧品の本体を形成する諸原料のことであり、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
水性原料としては、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。
粉末原料としては、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
本実施形態においては、化粧品基剤原料は、好ましくは、油性原料、粉末原料、または油性原料および粉末原料を用いることができ、より好ましくは油性原料を用いることができる。
【0100】
本実施形態の化粧料とは、油性化粧料や、表面改質酸化亜鉛粒子を油相に含むエマルションタイプの化粧料や、表面改質酸化亜鉛粒子を油剤と混合した後に、油剤を除去して成型する粉末固形化粧料等の、その製造過程または最終形態において、表面改質酸化亜鉛粒子が油成分(油相)に含有されている、化粧料を意味してよい。
エマルションタイプの化粧料は、O/W型のエマルションであってもよく、W/O型のエマルションであってもよい。
本実施形態の化粧料は、換言すれば、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子および本実施形態の分散液の少なくとも一方が、油成分または油相に含有されていることが好ましい。
【0101】
油性化粧料やエマルションの油相に用いられる油成分は、化粧料で一般的に使用されているものであれば特に限定されない。例えば、シリコーンオイル、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、ナチュラルオイル等が挙げられる。
【0102】
また、本実施形態の化粧料は、その特性を阻害しない範囲で、前記水性原料、界面活性剤、粉末原料などを含んでいてもよい。
【0103】
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子、または分散液を、乳液、クリーム、サンスクリーン、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品の基剤に、従来通りに配合することにより得られる。
【0104】
また、本実施形態の化粧料は、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子を油相に配合して、O/W型のまたはW/O型のエマルションとし、そのエマルションと化粧料の原料とを配合することにより得られる。
【0105】
本実施形態の化粧料における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量は、目的とする化粧料の特性に応じて適宜調整される。例えば、表面改質酸化亜鉛粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、表面改質酸化亜鉛粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
化粧料における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0106】
以下、化粧料の一例として、日焼け止め化粧料について具体的に説明する。
紫外線を、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽し、粉っぽさやきしみの少ない良好な使用感を得るためには、日焼け止め化粧料における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、日焼け止め化粧料における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。日焼け止め化粧料における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0107】
日焼け止め化粧料は、必要に応じて、疎水性分散媒、表面改質酸化亜鉛粒子以外の無機微粒子や無機顔料、親水性分散媒、油脂、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、栄養剤、酸化防止剤、香料等を含んでいてもよい。
【0108】
疎水性分散媒としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0109】
化粧料に含まれる表面処理粒子以外の無機微粒子や無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(アパタイト)、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、γ-酸化鉄、チタン酸コバルト、コバルトバイオレット、酸化ケイ素等が挙げられる。
【0110】
日焼け止め化粧料は、さらに有機系紫外線吸収剤を少なくとも1種含有していてもよい。
【0111】
有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0112】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0113】
ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、1-(4’-イソプロピルフェニル)-3-フェニルプロパン-1,3-ジオン、5-(3,3’-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0114】
安息香酸系紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAメチルエステル等が挙げられる。
【0115】
アントラニル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等が挙げられる。
【0116】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-2-プロパノールフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0117】
ケイ皮酸系紫外線吸収剤としては、例えば、オクチルメトキシシンナメート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、ジ-パラメトキシケイ皮酸-モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0118】
シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤としては、例えば、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-1-メチルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-3-メチルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-トリス(トリメチルシロキシ)シリル-1-メチルプロピル]-3,4-ジメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0119】
上記以外の有機系紫外線吸収剤としては、例えば、3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、5-(3,3’-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、シリコーン変性紫外線吸収剤、フッ素変性紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0120】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子を含むため、油成分に容易に分散するため製造効率がよく、安定的に高い紫外線遮蔽性を示す。
【実施例】
【0121】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0122】
[実施例1]
「表面改質酸化亜鉛粒子の作製」
比表面積が21.3m2/g、b*が3.33の酸化亜鉛粒子(住友大阪セメント社製)を33.3質量部と、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、製品名:KBE-3083)を2.0質量部と、純水0.4質量部と、イソプロピルアルコール64.3質量部と、を混合した。
次いで、この混合液を、ビーズミルを用いて、3時間分散させた。分散条件は、回転数を2500rpmとした。温度は20℃とした。
ビーズを除去した分散液を、固液分離し、80℃で2時間乾燥し、実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
【0123】
「表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積の測定」
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積を、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model-1201、マウンテック社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
またこの粒子の浸透速度係数やb*も下記に述べる方法で測定した。
【0124】
「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数の測定」
表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数を、ホソカワミクロン社製のペネトアナライザ(型番:PNT-N)を用いて、次の手順で測定した。
測定セルとしては、底面が濾紙(型番:定量濾紙 No.7、ADVANTEC社製)である直径36mmの円筒セルに、表面改質酸化亜鉛粒子を10g充填した。この充填した表面改質酸化亜鉛粒子の上に、アルミニウム製の200gの錘を乗せ、1分間静置した。次いで、錘を除去し、その後、媒液であるシクロペンタシロキサンを入れた容器を昇降装置で上昇させ、セルの底面(濾紙)にシクロペンタシロキサンを接触させ、浸透速度を計測した。
結果を表1に示す。
【0125】
「表面改質酸化亜鉛粒子のb*の測定」
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子のb*を、分光色彩計(東京電色工業社製、Spectro Color Meter SE7700)を用いて測定した。反射(光2度視野)測定条件で、測定径φ10mmで、光源はD65光源を用いて測定した。
測定サンプルは、30mLスクリュー管に、実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子10gを入れて、卓上で30回タップし、このスクリュー管の底面を測定面とした。結果を表1に示す。
【0126】
「分散液の作製」
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロキサン(ダウ・東レ社製、型番:DOWSIL SH245 Fluid)88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(信越化学工業社製、型番:KF-6106)2gと、を混合して混合液を得た。
次いで、この混合液を、ホモジナイザー(IKA社製、ULTRA-TURRAX(登録商標)シリーズ:T25basic)を用いて、9500rpmで5分間分散処理し、実施例1の分散液を得た。
【0127】
「粒度分布による分散性の評価」
実施例1の分散液において、表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるように、シクロペンタシロキサンで希釈して測定液を作製した。
この測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、型番:LA-920)を用いてd50を測定した。結果を表1に示す。
また、粒度分布の累積体積百分率が10%のときの粒径(d10)と、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(d90)を、d50と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0128】
「分散液の透明性の評価」
実施例1の分散液において、表面改質酸化亜鉛粒子の濃度が0.005質量%となるように、シクロペンタシロキサンで希釈した。
この希釈液の360nmと550nmにおける直線透過率T1(%)と、360nmと550nmにおける全透過率T2(%)を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、型番:V-770)を用いて測定した。結果を表1に示す。
360nmにおける透過率が低いことは、紫外線遮蔽性が高いことを示すため、360nmにおける透過率は、低いことが好ましい。
550nmにおける透過率が高いことは、透明性が高いことを示すため、550nmにおける透過率は、高いことが好ましい。
【0129】
[実施例2]
実施例1において、比表面積が21.3m2/g、b*が3.33の酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比表面積が24.2m2/g、b*が3.60の酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0130】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例2の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0131】
[実施例3]
実施例1において、比表面積が21.3m2/g、b*が3.33の酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比表面積が38.2m2/g、b*が3.42の酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0132】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例3の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0133】
[実施例4]
実施例3において、3時間分散処理する替わりに9時間分散処理した以外は実施例3と同様にして、実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
分散時における遠心力と分散時間の積(力積)は、実施例1の約3倍であった。実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0135】
[比較例1]
実施例3において、3時間分散処理する替わりに、5分分散処理した以外は実施例3と同様にして、比較例1の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
分散時における遠心力と分散時間の積(力積)は、実施例1の約40分の1であった。実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0136】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0137】
[比較例2]
比表面積が38.2m2/g、b*が3.42の酸化亜鉛粒子100質量部をヘンシェルミキサーに投入した。酸化亜鉛粒子をヘンシェルミキサーで酸化亜鉛粒子を撹拌しながら、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE-3083、信越化学社製)5質量部、純水0.375質量部、およびイソプロピルアルコール7.125質量部の混合液を添加した。これらの混合物をヘンシェルミキサー内で混合し、1時間撹拌した。
次いで、得られた混合物をジェットミルで粉砕し、この粉砕粉を100℃で乾燥することにより、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0138】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
【0140】
表1の結果から、実施例1~実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子は、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子と比較して、d50が小さく、紫外線遮蔽性に優れるとともに、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子と同等以上の透明性を有することが確認された。
【0141】
「易分散性の評価」
実施例1~実施例4、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子1gを、それぞれシクロペンタシロキサン20gが入ったスクリュー管に、静かに添加し、20分後のスクリュー管の様子を観察した。
その結果、実施例1~実施例4は、表面改質酸化亜鉛粒子が、全体的に分散しているのに対して、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子は、多くの粒子が沈降しているのが確認された。実施例4と比較例2の結果を、
図1に示す。
図1の右側のスクリュー管が、実施例4で得られた表面改質酸化亜鉛粒子を含み、
図1の左側のスクリュー管が、比較例2得られた表面改質酸化亜鉛粒子を含む。
図1に示すように、実施例4では、表面改質酸化亜鉛粒子が、全体的に分散していることが確認された。一方、比較例2では、多くの表面改質酸化亜鉛粒子が沈降しているのが確認された。
すなわち、シクロペンタシロキサンの浸透速度係数が所定の範囲である実施例1~実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子は、化粧料を作製する時の分散エネルギーが小さくても、容易に分散媒中に分散することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、油性化粧料への配合が容易かつ透明性と紫外線遮蔽性に優れる表面改質酸化亜鉛粒子を提供できる。本発明の表面改質酸化亜鉛粒子は、分散性に優れるため、紫外線遮蔽性に優れ、透明性も従来と同等以上であるため、化粧料に用いられた場合の工業的価値は大きい。