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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ボイスコイルモータおよびレンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/18 20060101AFI20240723BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
H02K33/18 B
G02B7/04 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022571433
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2021046965
(87)【国際公開番号】W WO2022138543
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020217239
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 梓
(72)【発明者】
【氏名】臼井 一利
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-064284(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208876(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/18
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に長さを有する第1ヨーク及び第2ヨークと、
前記第1方向に長さを有し、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークの間に配置される第3ヨークと、
前記第1ヨークに配置される第1磁石と、
前記第2ヨークに配置される第2磁石と、
前記第3ヨークに貫通され、前記第1磁石および前記第2磁石の磁力により前記第1方向に移動可能なコイルと、
を備え、
前記コイルは、巻線が直線状に巻回された第1部分と、前記巻線が円弧状に巻回された第2部分と、を有し、前記第1方向から見た場合に略D形状を有する、
ボイスコイルモータ。
【請求項2】
前記第2部分は、前記第3ヨークをはさんで前記第1部分と対向する、
請求項1に記載のボイスコイルモータ。
【請求項3】
前記第3ヨークの前記第1部分と対向する面は、前記第1部分と略平行である、
請求項1または請求項2に記載のボイスコイルモータ。
【請求項4】
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークは、前記第1方向から見た場合に矩形形状を有し、
外周面が前記第3ヨークの外周面の一部と一致する仮想円柱の直径は、前記矩形形状の長手方向の長さよりも大きい、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のボイスコイルモータ。
【請求項5】
前記コイルの前記巻線同士が交差するクロスポイントが、前記第1部分に位置する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のボイスコイルモータ。
【請求項6】
前記第1ヨークの前記第1磁石と対向する第1側面を含む第1平面と、前記第2ヨークの前記第2磁石と対向する第2側面を含む第2平面とは、交差し、
前記第3ヨークは、前記第1平面と前記第2平面との交線と、前記コイルの前記第1部分と、の間に位置する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のボイスコイルモータ。
【請求項7】
前記第1ヨーク、前記第2ヨーク、および前記第3ヨークの前記第1方向における一端を接続する第4ヨークと、
前記第1ヨーク、前記第2ヨーク、および前記第3ヨークの前記第1方向における他端を接続する第5ヨークと、
を備え、
前記第1ヨーク、前記第2ヨーク、および前記第5ヨークは、1つの部材により一体に形成される、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のボイスコイルモータ。
【請求項8】
前記第1方向において、前記第4ヨークと前記第1磁石および前記第2磁石との距離は、前記第5ヨークと前記第1磁石および前記第2磁石との距離よりも短い、
請求項に記載のボイスコイルモータ。
【請求項9】
前記第3ヨークは、前記第1方向における両端面に凸部を有し、
前記第4ヨークと前記第5ヨークはそれぞれ前記凸部と係合する係合部を有する、
請求項7又は請求項8に記載のボイスコイルモータ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のボイスコイルモータを備えるレンズ鏡筒。
【請求項11】
レンズと、
前記レンズを保持し、前記コイルと連結されるレンズ保持枠と、
を備え、
前記ボイスコイルモータは前記第1方向が前記レンズの光軸と平行になるように配置され、
前記レンズの径方向において、前記第3ヨークは、前記コイルの前記第1部分と前記レンズとの間に位置する、
請求項10に記載のレンズ鏡筒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ボイスコイルモータおよびレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの駆動装置として、ボイスコイルモータを採用したレンズ鏡筒が提案されている(例えば、特許文献1)。レンズ鏡筒内で使用されるボイスコイルモータは、小型にすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-49334号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、ボイスコイルモータは、第1方向に長さを有する第1ヨーク及び第2ヨークと、前記第1方向に長さを有し、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークの間に配置される第3ヨークと、前記第1ヨークに配置される第1磁石と、前記第2ヨークに配置される第2磁石と、前記第3ヨークに貫通され、前記第1磁石および前記第2磁石の磁力により前記第1方向に移動可能なコイルと、を備え、前記コイルは、巻線が直線状に巻回された第1部分と、前記巻線が円弧状に巻回された第2部分と、を有し、前記第1方向から見た場合に略D形状を有する
【0005】
第2の態様によれば、レンズ鏡筒は、上記ボイスコイルモータを備える。
【0006】
なお、後述の実施形態の構成を適宜改良しても良く、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させても良い。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係るレンズ鏡筒と、カメラ本体と、を備えるカメラを示す図である。
図2図2(A)は、ボイスコイルモータの構成を示す斜視図であり、図2(B)は、ボイスコイルモータを図2(A)の矢印AR1の方向から見た図である。
図3図3(A)は、図1のA-A線断面図であり、図3(B)は、コイルの部分拡大図である。
図4図4(A)は、比較例1に係るボイスコイルモータの断面図、図4(B)は、ボイスコイルモータの断面図、図4(C)は、比較例2に係るボイスコイルモータの断面図である。
図5図5(A)は、第1サイドヨーク、第2サイドヨーク、および下ヨークの斜視図であり、図5(B)は、ボイスコイルモータの概略正面図であり、図5(C)は、センターヨークの側面図であり、図5(D)は、上ヨークを取り外したボイスコイルモータを上ヨーク側から見た図であり、図5(E)は、上ヨークの斜視図である。
図6図6は、比較例3に係るボイスコイルモータにおけるコイルの駆動力について説明するための図である。
図7図7(A)及び図7(B)は、下ヨークおよび上ヨークの別例を示す図であり、図7(C)は、ボイスコイルモータの組立について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態に係るレンズ鏡筒100について、図面を参照し、詳細に説明する。なお、各図において、理解を容易にするため、一部の要素の図示を省略している場合がある。
【0009】
図1は、本実施形態に係るレンズ鏡筒100と、カメラ本体101と、を備えるカメラ1を示す図である。なお、本実施形態において、レンズ鏡筒100は、カメラ本体101に対して着脱可能であるが、これに限定されず、レンズ鏡筒100とカメラ本体101とは一体であってもよい。
【0010】
カメラ本体101は、内部に撮像素子111および制御部112等を備えている。撮像素子111は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)等の光電変換素子によって構成され、結像光学系(カメラ本体101に装着されたレンズ鏡筒100)によって結像された被写体像を電気信号に変換する。
【0011】
制御部112は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、カメラ本体101および装着されたレンズ鏡筒100における合焦駆動を含む撮影に係る当該カメラ1全体の動作を統括制御する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るレンズ鏡筒100は、第1固定筒10と、第1固定筒10よりも内周側に配置された第2固定筒20と、を備える。本実施形態において、第1固定筒10は複数の部品から構成されているが、1つの部品により構成されてもよい。図1に示すように、第1固定筒10には、レンズ鏡筒100をカメラ本体101に着脱可能とするレンズマウントLMが固定されている。
【0013】
また、レンズ鏡筒100は、共通の光軸OAに沿って順次配列された複数のレンズL1~L4を備える。レンズL3はレンズ保持枠F3に保持され、他のレンズは、第2固定筒20に保持されている。レンズL1~L4は、それぞれ、複数のレンズで構成されていてもよい。
【0014】
本実施形態において、レンズL3は、フォーカスレンズであって、光軸方向に移動されて、焦点調節を行う。レンズL3は、レンズ鏡筒100の内部に配設されたボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)30によって光軸方向に移動されるように設けられている。
【0015】
レンズ保持枠F3は、光軸OAと交差する方向に突出する係合部116を備える。係合部116は、第2固定筒20が有する直進溝22と係合する。直進溝22は、光軸方向に延伸しており、これにより、光軸OAを中心とするレンズ保持枠F3の回転が規制され、レンズ保持枠F3は、直進溝22に案内されて、光軸方向に直進移動する。なお、直進溝22ではなく、光軸方向に延伸するガイドバーによりレンズ保持枠F3を光軸方向に案内してもよい。
【0016】
VCM30は駆動装置113によって駆動される。駆動装置113は、カメラ本体101の制御部112による制御下で、レンズL3の合焦駆動を制御する。具体的には、駆動装置113は、光学式エンコーダや磁気エンコーダ等の位置検出機構(不図示)から入力されるレンズL3の位置情報と、カメラ本体101の制御部112から入力されたレンズL3の目標位置情報とに基づいて、VCM30の駆動信号を生成し、VCM30に出力する。
【0017】
VCM30は駆動信号によって、レンズL3を光軸方向に直進駆動する。詳細は後述するが、図1に示すように、VCM30が備えるコイル35には、レンズ保持枠F3が連結されている。具体的には、レンズ保持枠F3は、レンズ保持枠F3の連結部115を介して例えば接着剤等によってコイル35に連結されている。これにより、コイル35が光軸方向に直進駆動すると、レンズ保持枠F3が光軸方向に直進駆動され、レンズL3の光軸方向における位置が変化する。
【0018】
なお、VCM30の駆動信号がOFFになっている場合、VCM30のコイル35はその位置を保つ保持力を有さないため、自由に移動する。そのため、レンズ鏡筒100を上向きまたは下向きにした場合、レンズ保持枠F3及びレンズL3の自重でコイル35が移動して、レンズ保持枠F3が第2固定筒20に衝突し、衝撃音が発生するおそれがある。そこで、図1に示すように、光軸方向において、第2固定筒20のレンズ保持枠F3と重なる部分には、クッション材40が設けられている。これにより、レンズ保持枠F3がクッション材40に衝突するようになるため、衝撃が緩和されるとともに、衝撃音が抑制される。
【0019】
上記のようにカメラ本体101とレンズ鏡筒100とにより構成されたカメラ1は、図示しないシャッターボタンが押圧操作(レリーズ操作又は合焦操作)されると、カメラ本体101における制御部112が、駆動装置113を介してレンズ鏡筒100の合焦駆動等の制御を行う。また、レンズ鏡筒100によって結像された被写体像光を撮像素子111が電気信号に変換し、その画像データをカメラ本体101が備える図示しないメモリに記録(すなわち撮影)する。
【0020】
次に、レンズL3を駆動するVCM30の構成について説明する。図2(A)は、VCM30の構成を示す斜視図であり、図2(B)は、VCM30を図2(A)の矢印AR1の方向から見た図である。図3(A)は、図1のA-A線断面図であり、図3(B)は、コイル35の部分拡大図である。
【0021】
本実施形態に係るVCM30は、図2(A)及び図2(B)に示すように、光軸方向に長さを有する第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bと、光軸方向に長さを有し、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bの間に配置されるセンターヨーク32と、を備える。
【0022】
また、VCM30は、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、およびセンターヨーク32の光軸方向における一端を接続する上ヨーク34aと、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、およびセンターヨーク32の光軸方向における他端を接続する下ヨーク34bとを備える。これにより、閉磁路が形成される。
【0023】
第1サイドヨーク31aのセンターヨーク32側の側面には第1磁石33aが配置され、第2サイドヨーク31bのセンターヨーク32側の側面には第2磁石33bが配置されている。
【0024】
第1磁石33aは、例えば、センターヨーク32側がN極となるように配置されており、第2磁石33bも、センターヨーク32側がN極となるように配置されている。これにより、磁束が、第1磁石33aおよび第2磁石33bのN極からセンターヨーク32に入り、上ヨーク34aおよび下ヨーク34b並びに第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bを経て、第1磁石33aおよび第2磁石33bのS極にそれぞれ戻る磁路を形成している。
【0025】
また、VCM30は、センターヨーク32に貫通されるコイル35を備える。本実施形態におけるVCM30のコイル35は、図3(A)に示すように、略D形状を有する。具体的には、コイル35は、巻線が直線状に巻回された直線部351と、巻線が円弧状に巻回された曲線部352と、直線部351と曲線部352とを接続する接続部353と、を有する。曲線部352は、センターヨーク32をはさんで直線部351と対向している。また、直線部351を流れる電流の方向は、第1サイドヨーク31aから第2サイドヨーク31bに向かう方向又は第2サイドヨーク31bから第1サイドヨーク31aに向かう方向である。
【0026】
第1サイドヨーク31aの第1磁石33aと対向する側面S1を含む平面P1と、第2サイドヨーク31bの第2磁石33bと対向する側面S2を含む平面P2とは、交差する。また、センターヨーク32は、平面P1と平面P2との交線IL1と、コイル35の直線部351との間に位置する。すなわち、コイル35の直線部351は、第1固定筒10側(外周側)に配置されている。このように、コイル35が直線部351を有し、直線部351を外周側に配置することで、VCM30を小型化することができる。また、十分な駆動力を確保することができる。この点について詳細に説明する。
【0027】
図4(A)は、比較例1に係るVCM300Aの断面図、図4(B)は、VCM30の断面図、図4(C)は、比較例2に係るVCM300Bの断面図である。図4(A)~図4(C)は、図1のA-A線断面図に相当する。図4(A)~図4(C)において、第1固定筒10の内周面を一点鎖線L22で示し、レンズ保持枠F3の外周を一点鎖線L21で示している。
【0028】
図4(A)に示すように、比較例1に係るVCM300Aのコイル350Aでは、巻線が直線状に巻回された直線部を有さず、円筒状となっている。コイル350Aの巻線の層数(コイル350Aの径方向の厚み)は、実施形態に係るコイル35の巻線の層数と同じである。また、比較例1に係るセンターヨーク320Aは、円柱状であり、その直径は、VCM30のセンターヨーク32の外周面の一部とその外周面が一致する仮想円柱CL1(図4(B)に破線で示す)の直径D1と等しい。第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31b、上ヨーク34aおよび下ヨーク34b、ならびに、第1磁石33aおよび第2磁石33bのサイズおよび配置は、VCM30と同様である。
【0029】
比較例1では、コイル350Aが直線部を有さないため、コイル350Aの一部が、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bよりも外周側に突出する。その結果、レンズL3の径方向におけるVCM300Aのサイズは、VCM30よりも大きくなる。したがって、VCM300Aを使用する場合、第1固定筒10の内径が、VCM30を使用する場合よりも大きくなり、結果的にレンズ鏡筒のサイズも大きくなってしまう。
【0030】
一方、本実施形態に係るVCM30では、図4(B)に示すように、コイル35が直線部351を有するため、コイル35は、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bよりも外周側に突出しない。これにより、レンズの径方向におけるVCM30サイズが小さくなる。これにより、第1固定筒10の内径を小さくできるため、レンズ鏡筒100を小型化することができる。
【0031】
図4(C)に示す比較例2に係るVCM300Bでは、外周側において、円筒状のコイル350Bが第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bから突出しないようにセンターヨーク320Bの直径および位置を調整している。VCM300Bにおいて、コイル350Bの巻線の層数(コイル350Bの径方向の厚み)は、実施形態に係るコイル35の巻線の層数と同じである。比較例2に係るVMC300Bでは、径方向におけるVCM300Bのサイズは低減できるが、センターヨーク320Bの直径が小さくなる。この結果、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31b、上ヨーク34aおよび下ヨーク34b、ならびに、第1磁石33aおよび第2磁石33bのサイズおよび配置を、VCM30と同じにすると、第1サイドヨーク31a及び第1磁石33aとセンターヨーク320Bとの距離、ならびに第2サイドヨーク31b及び第2磁石33bとセンターヨーク320Bとの距離、が長くなり、十分な駆動力を得られないおそれがある。より詳細には、第1磁石33aからセンターヨーク320Bに向かう方向において、センターヨーク320B付近における第1磁石33aの磁力の大きさは、クーロンの法則から第1磁石33aとセンターヨーク320Bとの距離の二乗に反比例する。同様に、第2磁石33bからセンターヨーク320Bへ向かう方向において、センターヨーク320B付近における第2磁石33bの磁力の大きさは、クーロンの法則から第2サイドヨーク31b及び第2磁石33bとセンターヨーク320Bとの距離の二乗に反比例する。したがって、第1磁石33aとセンターヨーク320Bとの距離および第2磁石33bとセンターヨーク320Bとの距離が長くなるほど、コイル35に加わる磁力が小さくなり、コイル35の駆動力が小さくなる。また、例えば、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bならびに第1磁石33aおよび第2磁石33bをセンターヨーク320Bに近づけて配置しても、センターヨーク320Bの直径が小さいため、センターヨーク320B内で磁束が流れにくくなり、十分な駆動力を得られないおそれがある。
【0032】
一方、本実施形態に係るVCM30では、図4(B)に示すように、センターヨーク32の直径を大きくすることができる。例えば、センターヨーク32の外周面の一部にその外周面が一致する仮想円柱CL1の直径D1を、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bを光軸方向から見た場合の矩形形状の長手方向の長さL11よりも大きくすることができる。したがって、センターヨーク32において磁束を流れやすくできる。また、第1サイドヨーク31a及び第1磁石33aとセンターヨーク32との距離、ならびに第2サイドヨーク31b及び第2磁石33bとセンターヨーク320Bとの距離、を短くできるため、VMC30の駆動力を向上させることができる。
【0033】
このように、コイル35が直線部351を有することで、VCM30やレンズ鏡筒100を小型化することができる。また、VCM30は、十分な駆動力を確保することができる。
【0034】
図3(B)に戻り、コイル35は、整列多層巻きコイルであり、コイル35の巻線355同士が交差するクロスポイントCP(n+1層の巻線355がn層の巻線355を乗り越える部分)が、直線部351に位置するようになっている。クロスポイントCPではコイル35がわずかに膨らむ(コイル35の径方向の厚みが厚くなる)ので、レンズ保持枠F3と接着される曲線部352にクロスポイントCPが位置すると、レンズ保持枠F3とコイル35とを正確に位置決めできないおそれがある。より具体的には、クロスポイントCPが位置する部分をコイル35の曲線部352に設定し、曲線部352とレンズ保持枠F3とを接着すると、レンズ保持枠F3に対してコイル35が斜めに接着されてしまったり、所望の位置決めができないおそれがある。本実施形態では、コイル35とレンズ保持枠F3との位置決めに利用されない直線部351にクロスポイントCPを位置させることで、コイル35とレンズ保持枠F3とを指定された位置に正確に接着することができる。
【0035】
コイル35には、レンズ鏡筒100内に設けられた駆動装置113(図1参照)から駆動信号(電流)が入力される。コイル35に電流が流れると、第1磁石33aおよび第2磁石33bの磁力によりコイル35は光軸方向に移動する。より詳細には、電流が流れているコイル35と第1磁石33aおよび第2磁石33bとの間の電磁相互作用によりコイル35は光軸方向に移動する。コイル35に流す電流の向きを変更することで、コイル35の移動方向を被写体側とカメラ本体101側との間で切り替えることができる。また、コイル35に流す電流値を変更することで、コイル35の駆動力や移動速度を変更することができる。
【0036】
VCM30の各部品についてさらに詳細に説明する。図5(A)は、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、および下ヨーク34bの斜視図であり、図5(B)は、VCM30の概略正面図であり、図5(C)は、センターヨーク32の側面図であり、図5(D)は、上ヨーク34aを取り外したVCM30を上ヨーク34a側から見た図であり、図5(E)は、上ヨーク34aの斜視図である

【0037】
図5(A)に示すように、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、および下ヨーク34bは、1つの部材によって一体に形成されている。第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、および下ヨーク34bは、例えば、所定のサイズに切断した冷間圧延鋼板(SPCC:Steel Plate Cold Commercial)の平板をプレス加工により折り曲げることで、一体に形成することができる。
【0038】
VCM30で使用される第1磁石33aおよび第2磁石33bは、強い磁力を有する。したがって、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、および下ヨーク34bが別々の部材で形成されている場合、VCM30の組立時に、第1磁石33aおよび第2磁石33bを取り付けた第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bと、その他の部材(上ヨーク34a,下ヨーク34b,センターヨーク32)とが磁気吸着して、組み立てが困難となるおそれがある。あるいは、各部材の位置が磁力によってずれないようにするための特別な治具が必要となるおそれもある。
【0039】
一方、本実施形態では、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、および下ヨーク34bが、1つの部材によって一体に形成されているため、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bに第1磁石33aおよび第2磁石33bを取り付けた後であっても、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、および下ヨーク34bは、その位置および姿勢を維持できる。したがって、センターヨーク32の取り付けや、コイル35の取り付け、上ヨーク34aの取り付けが容易になる。すなわち、VCM30の組立が容易になる。
【0040】
第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、および下ヨーク34bを1つの部材によって一体に形成した場合、図5(B)に示すように、下ヨーク34bと第1サイドヨーク31aとの接続部および下ヨーク34bと第2サイドヨーク31bとの接続部は曲線状になるため、磁束が流れにくい。一方、第1サイドヨーク31aと上ヨーク34aとの接続部および第2サイドヨーク31bと上ヨーク34aとの接続部は、下ヨーク34bと比較して磁束が流れやすい。
【0041】
図6は、比較例3に係るVCM300Cにおけるコイル35の駆動力について説明するための図である。VCM300Cでは、第1磁石33aおよび第2磁石33bを、第1磁石33aおよび第2磁石33bと上ヨーク34aとの距離d2と、第1磁石33aおよび第2磁石33bと下ヨーク34bとの距離d1と、が等しくなるように設置している。その他の構成は、VCM30と同様である。図6において、VCM300Cの右側には、コイル35が移動した位置におけるコイル35の駆動力を示すグラフを示す。当該グラフでは、コイル35の延伸方向の中心がセンターヨーク32の延伸方向の中心と一致する位置を0とし、コイル35の中心が上ヨーク34a側または下ヨーク34b側に移動した場合に、移動した位置におけるコイル35の駆動力を示している。図6に示すように、第1磁石33aおよび第2磁石33bを、上ヨーク34aとの距離d2と下ヨーク34bとの距離d1とが等しくなるように設置すると、下ヨーク34b側での駆動力が上ヨーク34a側での駆動力よりも低くなってしまう。
【0042】
そこで、本実施形態では、駆動力が光軸方向で均一となるよう、第1磁石33aおよび第2磁石33bを、上ヨーク34aよりも下ヨーク34bに近づけて配置している。より具体的には、図5(B)に示すように、第1磁石33aおよび第2磁石33bと下ヨーク34bとの距離d1が、第1磁石33aおよび第2磁石33bと上ヨーク34aとの距離d2よりも短くなるように、第1磁石33aおよび第2磁石33bを配置している。これにより、VCM30の駆動力を光軸方向で均一にすることができ、レンズL3を安定して駆動することができる。
【0043】
次に、センターヨーク32の構成について説明する。センターヨーク32の材料は、例えば、SS(Steel Structure)400である。
【0044】
図5(D)に示すように、コイル35の直線部351と対向するセンターヨーク32の面は、直線部351と略平行である。より詳細には、コイル35の直線部351と対向するセンターヨーク32の面は、直線部351のセンターヨーク32側の面と略平行となっている。これにより、略D形状のコイル35が光軸方向にスムーズに移動することができる。
【0045】
また、図5(C)に示すように、センターヨーク32は、光軸方向における両端面に、センターヨーク32の位置決めに使用される凸部321a,321bを有する。具体的には、凸部321a,321bが、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bにそれぞれ形成された係合部341a,341b(図5(A)及び図5(E)参照)と係合することで、センターヨーク32が位置決めされる。本実施形態では、係合部341a,341bは、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bを貫通する貫通孔であり、凸部321a,321bと嵌合する。したがって、凸部321a,321bを当該貫通孔(係合部341a,341b)に挿入することにより、センターヨーク32が位置決めされる。なお、係合部341a,341bは、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bを貫通していなくともよい。
【0046】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るVCM30は、光軸方向に長さを有する第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bと、光軸方向に長さを有し、第1サイドヨーク31a及び第2サイドヨーク31bの間に配置されるセンターヨーク32と、第1サイドヨーク31aに配置される第1磁石33aと、第2サイドヨーク31bに配置される第2磁石33bと、センターヨーク32に貫通され、第1磁石33aおよび第2磁石33bの磁力により光軸方向に移動可能なコイル35と、を備え、コイル35は、巻線が直線状に巻回された直線部351を有する。
【0047】
上述したように、コイル35が直線部351を有するため、VCM30を小型化することができる。また、直線部351を有さないコイルを備えるVCMと比較して、VCM30の駆動力を向上できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、コイル35は、巻線が円弧状に巻回された曲線部352を有する。これにより、曲線部352は、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bよりも内周側に突出するので、レンズ保持枠F3をコイル35に接着しやすくなる。
【0049】
また、本実施形態において、センターヨーク32のコイル35の直線部351と対向する面は、直線部351と略平行である。これにより、直線部351を有するコイル35は、センターヨーク32に沿ってスムーズに移動することができる。
【0050】
また、本実施形態において、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bは、光軸方向から見た場合に矩形形状を有し、外周面がセンターヨーク32の外周面の一部と一致する仮想円柱CL1の直径D1は、矩形形状の長手方向の長さL11よりも大きい。これにより、第1磁石33aおよび第2磁石33bとセンターヨーク32との距離を短くできるため、VCM30の駆動力を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態において、コイル35の巻線同士が交差するクロスポイントCPは、直線部351に位置する。クロスポイントCPでは、コイル35が径方向外側に膨らむ。クロスポイントCPを直線部351に位置させることで、レンズ保持枠F3と接着される曲線部352にクロスポイントCPが位置する場合と比較して、コイル35を指定位置に正確に配置することができる。また、クロスポイントCPが位置する部分が第1磁石33aおよび第2磁石33bと接触しないので、コイル35をスムーズに移動させることができる。
【0052】
また、本実施形態において、VCM30は、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、およびセンターヨーク32の光軸方向における一端を接続する上ヨーク34aと、第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、およびセンターヨーク32の光軸方向における他端を接続する下ヨーク34bと、を備える。第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、および下ヨーク34bは、1つの部材により一体に形成され、光軸方向において、上ヨーク34aと第1磁石33aおよび第2磁石33bとの距離d1は、下ヨーク34bと第1磁石33aおよび第2磁石33bとの距離d2よりも短い。これにより、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bと下ヨーク34bとの接続部における磁束の流れやすさと、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bと上ヨーク34aとの接続部における磁束の流れやすさとを同程度にできるため、VCM30の駆動力を光軸方向で均一にすることができる。
【0053】
また、本実施形態において、センターヨーク32は、光軸方向における両端面に凸部321a,321bを有し、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bはそれぞれ凸部321a,321bと係合する係合部341a,341bを有する。これにより、センターヨーク32を位置決めすることができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、接続部353において巻線が曲線状に巻回されていたが、直線状に巻回されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、センターヨーク32の材料は、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bの材料と異なっていたが、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bの材料と同じでもよいし、異なっていてもよい。ただし、センターヨーク32の材料は、第1サイドヨーク31aおよび第2サイドヨーク31bの材料よりも高い飽和磁束密度を有する材料であることが好ましい。これにより、センターヨーク32での磁束の流れを改善することができ、VCM30の駆動力を向上させることができる。
【0056】
また、上記実施形態において、図7(A)及び図7(B)に示すように、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bの係合部341a,341bは、レンズL3に向かって開口していてもよい。これにより、例えば、図7(C)に示すように、一体に形成された第1サイドヨーク31a、第2サイドヨーク31b、および下ヨーク34bに、第1磁石33a、第2磁石33b、および上ヨーク34aを取り付けた後、コイル35を貫通させたセンターヨーク32の凸部321a,321bを、係合部341a,341bの開口側から係合部341a,341bに挿入(スライド)することによって、センターヨーク32を第1サイドヨーク31aと第2サイドヨーク31bとの間に配置することができる。また、センターヨーク32を第1サイドヨーク31aと第2サイドヨーク31bとの間に配置したのち、センターヨーク32の凸部321a,321bをそれぞれ上ヨーク34aおよび下ヨーク34bに接着することで、センターヨーク32を位置決めできる。したがって、VCMの組立が容易になる。なお、係合部341a,341bは、レンズL3ではなく、第1固定筒10に向かって開口していてもよい。
【0057】
なお、上記実施形態において、レンズ保持枠F3を収納する第2固定筒20は、光軸方向に直進移動が可能な移動筒であってもよい。また、上記実施形態およびその変形例において、レンズ鏡筒100は単焦点レンズであってもよいし、ズームレンズであってもよい。また、VCM30は、レンズ鏡筒以外に用いてもよい。
【0058】
上述した実施形態は好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能であり、任意の構成要件を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 カメラ
30 ボイスコイルモータ
31a 第1サイドヨーク
31b 第2サイドヨーク
32 センターヨーク
33a 第1磁石
33b 第2磁石
34a 上ヨーク
34b 下ヨーク
35 コイル
100 レンズ鏡筒
101 カメラ本体
351 直線部
352 曲線部
355 巻線
L3 レンズ
F3 レンズ保持枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7