(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】診断用抗PD-L1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240723BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240723BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240723BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240723BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240723BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240723BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240723BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20240723BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240723BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/00
C12N15/63 Z
G01N33/53 D
(21)【出願番号】P 2019515405
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2017073712
(87)【国際公開番号】W WO2018054940
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】510069249
【氏名又は名称】ファイザー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【氏名又は名称】三橋 規樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィルム,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ダーメン,ハイク
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】荒木 英則
【審判官】天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Thoracic Disease,2015年12月,Vol.7, Suppl.3,pp.S181-S182
【文献】Lancet Oncol.,2016年10月,Vol.17, No.10 (pp.1374-1385),pp.1-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
UniProt/GeneSeq
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープに結合する
抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、
3つのCDRとして、配列番号4、配列番号6および配列番号8のアミノ酸配列を含み、前記抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、
3つのCDRとして、配列番号10、配列番号12および配列番号14のアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗原結合断片がFab、F(ab’)
2、Fab’、scFvまたはジscFvである、請求項1に記載の抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体が、モノクローナル抗体、好ましくはIgG型モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8のすべてを含む、および/または、
前記抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14のすべてを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号110のアミノ酸配列を含み、前記抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号111のアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記抗体の重鎖が、配列番号16のアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記抗体が、ウサギ抗体またはウサギ由来の抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合断片が、検出可能な標識にさらに結合されており、好ましくは、前記検出可能な標識が、酵素、フルオロフォアまたは放射性同位体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
試料中の配列番号1に含まれるエピトープの存在または発現の検出に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
試料中のヒトPD-L1または配列番号1のアミノ酸配列を含むその任意の断片の存在または発現を検出する方法であって、前記試料を請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片と接触させるステップ、および結合した抗体またはその抗原結合断片の存在を検出するステップを含む方法。
【請求項9】
前記試料が、がんを有するまたはがんのリスクがある対象、T細胞機能不全を有する対象、急性または慢性感染症を有する対象、または、腫瘍免疫のリスクがあるかまたはそれを示す対象に由来する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法における請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項13】
請求項5に記載の抗体の製造における請求項12に記載の発現ベクターの使用であって、前記抗体が、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を含む、発現ベクターの使用。
【請求項14】
請求項12に記載の少なくとも1つの発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体の製造における請求項14に記載の宿主細胞の使用であって、前記抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号110のアミノ酸配列を含み、前記抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号111のアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記抗体の重鎖が、配列番号16のアミノ酸配列を含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん診断の分野、特にインビトロ診断のための腫瘍試料中のPD-L1エピトープの存在を検出するための診断用抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分化抗原群(CD274)またはB7ホモログ1(B7-H1)としても知られるプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)は、CD274遺伝子によってコードされ、PD-1のリガンド(CD279)の1つであるPD-L2(CD273)の隣にある。PD-L1は、樹状細胞、マクロファージ、間葉系幹細胞および骨髄由来肥満細胞を含む多数の造血細胞上に発現される40kDaの1型膜貫通タンパク質である。PD-L1は、インターフェロンの作用を介して上皮細胞および内皮細胞上に誘導的に発現されることが見出されている。胎盤および網膜における合胞体栄養芽細胞などの免疫特権の部位は、恒常的にPD-L1を発現することが見出された。
【0003】
胎盤におけるPD-L1の発現は、妊娠中期の初めに増加し、酸素の増加によって上方制御され、低酸素濃度で急速に喪失する。実験は、PD-1-PD-L経路が、それぞれ微生物に対する有効な免疫応答および自己寛容の維持に必要とされる刺激シグナルと阻害シグナルのバランスを調節することを示している。慢性感染症を引き起こす多数の微生物は、宿主の免疫エフェクター機構を回避するためにPD-1-PD-L1経路を利用する。肝臓感染症のマウスモデルに基づいて、PD-1ヌルマウスは、野生型マウスと比較して、非常に活発であって、攻撃的なT細胞によって引き起こされると考えられている、アデノウイルスのクリアランスの際に肝臓損傷の増加を示すため、PD-PD-L1経路はウイルス感染中の免疫媒介性組織損傷を調節するとも考えられる。
【0004】
IFNγ放出を介した免疫攻撃は、粘膜によるPD-L1の誘導性上方制御をもたらし、慢性炎症または感染の設定における自己免疫攻撃に対して保護するための「免疫シールド」を作り出す。これらの細胞上の上方制御されたPD-L1は、T細胞上のPD-1に結合して、T細胞枯渇の発生に寄与する。
【0005】
腫瘍細胞は、このPD-1-PD-L1調節機構を取り込んでいて、これは、通常の生理学的設定の下で、自己免疫攻撃から粘膜を保護し、代わりにPD-L1を過剰発現して免疫学的監視を回避し、それによりがん増殖を促進する。
【0006】
この免疫抑制機構は、免疫系による排除から腫瘍の回避を最終的にもたらすPD-L1陽性腫瘍細胞によって乗っ取られる場合がある。モノクローナル抗体によってPD-1/PD-L1相互作用を阻害することは、PD-L1発現を有する腫瘍の治療のための有望な概念を提供する。PD-1およびPD-L1に対するモノクローナル抗体をブロックする臨床試験が、現在、様々な悪性腫瘍に罹患している患者に対して進行中である。
【0007】
PD-L1陽性患者またはPD-L1陰性患者の臨床反応率を比較した、公表されている抗PD-L1臨床試験データの統計分析は、PD-L1発現が特定のがんタイプに関して臨床反応の予測マーカーであり、他のものに関して相関バイオマーカーであることを示している(Gandini et al., Crit Rev Oncol Hematol. 2016 Apr;100:88-98)。例えば、転移性黒色腫では、抗PD-L1療法を受けているPD-L1陽性患者は53%の死亡率の減少を示すため、腫瘍組織におけるPD-L1発現は有意に良好な予後と関連している。
【0008】
研究はまた、特にPD-L1が腫瘍浸潤性免疫細胞上で発現された場合に、複数のがんタイプにわたって、抗PD-L1療法に対する反応が高レベルのPD-L1を発現する腫瘍を有する患者において観察されたことを示している(例えば、Herbst et al., Nature. 2014 Nov 27;515(7528):563-7; Ilie et al., Annals of Oncology 27: 147-153, 2016を参照されたい)。乳頭状甲状腺がんにおいて、PD-L1発現は、再発、および予後マーカーとしてのこの腫瘍タイプにおけるPD-L1発現の使用を支持する無病生存期間の短縮と相関することが見出された(Chowdhury et al., Oncotarget. 2016 Apr 12)。
【0009】
腫瘍組織試料におけるPD-L1発現の検出およびスコアリングは、通常、凍結またはホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織切片上の免疫組織化学によって行われる。PD-L1発現のスコアリングは、異なる方法論を用いて行うことができる:例えば、1つのアプローチは、PD-L1発現について陽性または陰性である標本の二元エンドポイントスコアリングを採用し、陽性結果は細胞表面膜染色の組織学的証拠を示した腫瘍細胞の割合に関して定義された。全腫瘍細胞の1%および5%の2つの異なるカットオフ値が用いられている。その値で、腫瘍標本をPD-L1陽性と評価した(Cancer. 2011 May 15; 117(10):2192-201; N Engl J Med 2012;366:2443-54)。腫瘍標本におけるPD-L1発現はまた、膜性染色と顕著な細胞質染色の両方を示す腫瘍細胞と比較して、膜性染色を示す腫瘍細胞および腫瘍浸潤性免疫細胞の両方をスコアリングすることによって定量されている。その後、PD-L1発現に基づく標本スコアリングが行われ、0、1、2、または3のIHCスコアが与えられた。1%未満の細胞がPD-L1陽性である場合、標本を「0」とスコア付けし、1%を超えるが5%未満の場合は「1」とスコアし、5%を超えるが10%未満の場合は「2」とスコアし、または10%を超える細胞がPD-L1陽性である場合は「3」とスコアした(Herbst et al. Nature. 2014 Nov 27;515(7528):563-7)。腫瘍浸潤性単核細胞(TIMC)におけるPD-L1発現は、標本中のTIMCの数に応じて0、1、または2のそれぞれのスコアを有する3つのカテゴリーによる半定量的アプローチを用いて評価された:0%=0、<5%=1、≧5%=2。
【0010】
ほとんどの市販の抗PD-L1抗体の特異性および再現性は十分に評価されておらず、一部の広く使用されている抗体の限界が報告されている(例えば、Cancer 2011;117: 2192-201; Carvajal-Hausorf et al., Laboratory Investigation (2015) 95, 385-396を参照されたい)。例えば、国際公開第2014/165422号パンフレット、国際公開第2016/007235号パンフレットは、抗PD-L1抗体、およびPD-L1発現を評価するためにそれぞれの抗体との使用に関するスコアリングガイドラインを開示している。
【0011】
したがって、PD-L1に非常に特異的であり、抗PD-L1ベースの治療に適した腫瘍患者の層別化に役立つ再現可能な結果をもたらす、入手可能な抗PD-L1抗体のレパートリーを拡大する継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープに対して指向される抗体またはその抗原結合断片が、高い特異性および再現性でヒトPD-L1に結合することを見出した。
【0013】
第1の実施形態では、本発明は、高い特異性で配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープに結合し、再現性のある結果をもたらす抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその抗原結合断片は、その軽鎖配列に配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8の少なくとも3つのアミノ酸配列、およびそれらの重鎖配列に配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14の少なくとも3つのアミノ酸配列を含む。
【0014】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、一実施形態によれば、Fab断片であり得る。
【0015】
一実施形態によれば、本発明の抗原結合断片はF(ab’)2断片である。
【0016】
一実施形態によれば、本発明の抗原結合断片はFab’断片である。
【0017】
一実施形態では、本発明の抗体はscFvである。
【0018】
一実施形態によれば、本発明の抗体はジscFvである。
【0019】
一実施形態によれば、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。
【0020】
一実施形態によれば、本発明の抗体はIgG型抗体である。
【0021】
一実施形態によれば、本発明の抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8のすべてを含む。
【0022】
一実施形態によれば、本発明の抗体またはその抗原結合断片の重鎖は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14のすべてを含む。
【0023】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖またはその抗原結合断片、および配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖またはその抗原結合断片を含む。
【0024】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体の軽鎖は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、重鎖は配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明の抗体の軽鎖は配列番号114のアミノ酸配列を含み、抗体の重鎖は配列番号115のアミノ酸配列を含む。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、ウサギ抗体、またはウサギ由来抗体である。
【0027】
一実施形態によれば、上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片は検出可能な標識にさらに結合される。
【0028】
一実施形態によれば、本発明の抗体またはその抗原結合断片の検出可能な標識は、酵素、またはフルオロフォア、または酵素基質のうちの1つである。
【0029】
一実施形態によれば、上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片は、一実施形態によれば、生物学的試料、好ましくは、組織試料、固定された組織試料、またはホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織、より好ましくは腫瘍由来のホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織である、試料中の配列番号1に含まれるエピトープの存在または発現の検出に使用するためのものである。
【0030】
一実施形態では、上述した配列番号1に含まれるエピトープの存在または不存在の検出は、上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片を用いたフローサイトメトリー、ELISA、またはウェスタンブロッティングによって行われる。
【0031】
好ましい実施形態によれば、上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片を用いた、配列番号1に含まれるエピトープの存在または発現の検出は、免疫組織化学(IHC)によって行われる。
【0032】
一実施形態では、本発明は、試料においてヒトPD-L1または配列番号1のアミノ酸配列を含むその任意の断片の存在または発現を検出する方法を提供し、本発明の方法は、試料を本発明の抗体またはその抗原結合断片と接触させるステップ、および結合抗体またはその抗原結合断片の存在を検出するステップを含む。
【0033】
一実施形態では、上述した本発明のインビトロ方法は、生物学的試料、組織試料、固定された組織試料、好ましくはホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織試料、より好ましくはホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織試料に対して使用される。
【0034】
一実施形態によれば、上述した本発明のインビトロ方法において使用される試料は、がん、T細胞機能不全、急性もしくは慢性感染症または腫瘍免疫を有する対象、またはそのリスクがある対象に由来する。
【0035】
一実施形態では、本発明は、試料中の配列番号1に含まれるエピトープの存在または発現における、上述した本発明の抗体または抗原結合断片の使用に関する。
【0036】
一実施形態では、本発明は、上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0037】
一実施形態によれば、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0038】
一実施形態では、本発明は、本発明の抗体を生成するのに使用するための、上述した発現ベクターを提供する。
【0039】
一実施形態では、本発明は、本発明による少なくとも1つの発現ベクターを含む少なくとも1つの宿主細胞を提供する。
【0040】
一実施形態では、本発明は、本発明の抗体の製造に使用するための本発明による少なくとも1つの宿主細胞を提供する。
【0041】
一実施形態によれば、本発明は、患者におけるがんを治療する方法を提供し、上述した本発明の抗PD-L1抗体を用いて、前記患者からの試料中のヒトPD-L1の存在または発現を検出するステップ、患者試料におけるPD-L1発現を参照試料と比較するステップ、患者試料におけるPD-L1発現が参照試料と比較して増加している場合、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-L1または抗PD-1抗体)を患者に投与するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】ELISAプレートのウェルのコーティングのために1μg/mlの濃度で50μl/ウェルの免疫原を用いた本発明の抗体クローンMKP1A07310のELISA結果を示す図である。
【
図2】1:10000および1:25000の希釈率で本発明の抗体クローンMKP1A07310、および指示された細胞溶解物を用いた対照抗体(抗CD247、希釈率1:250)を使用するウェスタンブロットを示す図である。PD-L1をトランスフェクトされたHEK293、PD-L1を発現するMDA-MB 231、MDA-MB 231のsiRNA PDL1ノックダウン、およびPD-L1低細胞株A549の細胞溶解物を用いてウェスタンブロッティングを行った。
【
図3】本発明の抗体(MKP1A07310)、およびMDA-MB 231細胞上のsiRNAノックダウンにおいてヒトPD-L1の細胞外エピトープに対して指向される他の抗PD-L1抗体を用いた免疫組織化学染色を示す図である。PD-L1染色は、siRNAノックダウン細胞において減少した。
【
図4】本発明の抗体(MKP1A07310)ならびにヒトPD-L1の細胞外エピトープに対して指向される1つの抗体(MKP1B19610)は、それぞれの結合特性を評価および比較し、さらなる研究のための最適作業濃度を決定するために、70個の細胞株のうちのがん細胞株アレイ上で、1μg/mlの濃度のMKP1A7310、および3つの異なる濃度(2μg/ml、5μg/mlおよび10μg/ml)のMKP1B19610を用いて特徴付けられた図である。がん細胞株アレイ(Multiblock GmbHおよびZytomed Systems GmbHにより製造されたCAX09_70_MB)をIHCにおける抗体特性の評価に使用した。カスタムがん細胞株アレイの製造に使用されたがん細胞株を、リン酸緩衝化された4%パラホルムアルデヒド、pH7で室温で16~48時間かけて固定し、続いてパラフィン中に包埋した。
【
図5】組織アレイCAX08_60上の本発明の抗体(MKP1A07310)の実験間変動を示す図である。異なるスライド間での相関係数はr=0.99である。
【
図6】がん細胞株アレイCAX09_70上の本発明の抗体(MKP1A07310、「#」で印を付けた)およびヒトPD-L1の細胞外エピトープに対する1つの抗体(MKP1B19610)の特徴付けは、1μg/mlの濃度のMKP1A7310、および10μg/mlの濃度のMKP1B19610で試験された図である。
【
図7】(A)色素原としてDABを有する本発明の抗体を用いたPD-L1陽性細胞のIHC検出(右の画像)。コンピュータソフトウェアによる色素原の検出(中央の画像)。核および細胞質の青色染色の検出(右の画像)。矢印は陽性細胞を示す。(B)1μg/mlの濃度で本発明の抗体MKP1A07310を用いた陽性および陰性対照組織におけるIHC染色。
【
図8】(A)異種移植片組織マイクロアレイTMA_Xenos_12のFFPE組織上の本発明の抗体MKP1A07310を2μg/mlの濃度で用いた免疫組織化学。(B)異種移植片組織マイクロアレイTMA_Xenos_12のFFPE組織上の10μg/mlの濃度のヒトPD-L1の細胞外エピトープに対して指向される抗体(MKP1B19610)を用いた免疫組織化学染色。例示的なPD-L1陽性細胞は矢印で示される。
【
図9】(A)がん細胞株アレイCAX08_60のFFPE組織上に1μg/mlの濃度で本発明の抗体MKP1A07310を用いた免疫組織化学染色。(B)がん細胞株アレイCAX08_60のFFPE組織上に10μg/mlの濃度のヒトPD-L1の細胞外エピトープに対する抗体(MKP1B19610)を用いた免疫組織化学染色。矢印は例示的なPD-L1陽性細胞を示す。
【
図10】FFPE固定された細胞株NCI-H2900、LoxおよびA2780(NCI-H2009、Loxがん細胞株は高レベルのPD-L1を発現し、がん細胞株A2780はごく少量のPD-L1のみを発現する)上で、Discovery XT染色装置で、1μg/mlの濃度の本発明の抗体MKP1A07310、および10μg/mlの濃度のPD-L1の細胞外エピトープに対して指向される抗体MKP1B19610を用いた免疫組織化学染色を示す図である。
【
図11】FFPE固定された細胞NCI-H2009、LoxおよびA2780上でAutostainerLink染色装置における、0.5μg/mlの濃度の本発明の抗体MKP1A07310、および1μg/mlの濃度のPD-L1の細胞外エピトープに対して指向される抗体MKP1B19610を用いた免疫組織化学染色を示す図である。
【
図12】Discovery XT(登録商標)システム(Ventana)およびAutostainerLink システム(DAKO)を用いて染色されたFFPEがん細胞株におけるMKP1B19610を用いたIHC結果の相関を示す図である。(A)互いに対してプロットされる異なるIHCプラットフォームおよび濃度を用いて、低pHおよび高pHでMKP1B19610を用いてIHCを実行した結果。(B)ダイアグラムの統計分析。ピアソン相関係数は0.6186(2μg/ml、高pH)、0.6969(1μg/ml、高pH)、および低pH0.4309(5μg/ml)、0.6631(2μg/ml)。
【
図13】(A)指示された抗体濃度を用いて高pHでDiscovery XT(登録商標)システム(Ventana)またはAutostainerLink(DAKO)で染色されたFFPEがん細胞株に本発明の抗PD-L1抗体MKP1A07310を用いたIHCの結果の相関を示す図である。(B)IHC結果の相関の統計分析。相関係数は、r=0.9474(1μg/ml)およびr=0.9695(2μg/ml)であることを示す図である。
【
図14】(A)指示された濃度(菱形:1μg/ml;丸:2μg/ml)でAutostainerLink(DAKO)で染色されたFFPEがん細胞株における抗PD-L1抗体MKP1B19610と本発明の抗体MKP1A07310の間のIHC相関;指示されるように、本発明の抗体を0.5μg/mlの濃度で使用したことを示す図である。(B)IHC結果の相関の統計分析を示す図である。相関係数はr=0.6503(2μg/mlのMKP1B19610)およびr=0.7088(1μg/mlのMKP1B19610)。
【発明を実施するための形態】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
本発明を以下に詳細に説明するが、本発明は、以下のものは変更され得るため、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコールおよび試薬に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0051】
以下、本発明の要素について説明する。これらの要素は、特定の実施形態とともに列挙されているが、しかしながら、それらは任意の方法および任意の数で組み合わせて、追加の実施形態を作り出すことができることを理解されたい。様々に説明された例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。この説明は、明示的に説明された実施形態を任意の数の開示されたおよび/または好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持および包含するものとして理解されるべきである。さらに、本出願において記載されたすべての要素の任意の置換および組み合わせは、文脈がそうでないことを示さない限り、本出願の説明によって開示されると見なされるべきである。
【0052】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈が他を必要としない限り、用語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含むこと」などの変形は、記述されたメンバー、整数またはステップの包含を暗示するが、記述されていない他のメンバー、整数、またはステップの除外を暗示しないことが理解される。「からなる」という用語は、「含む」という用語の特定の実施形態であり、いずれもの他の記述されていないメンバー、整数またはステップは除外される。本発明の文脈において、用語「含む」は用語「からなる」を包含する。
【0053】
本発明を説明する文脈で(特に特許請求の範囲の文脈で)使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」および同様の参照は、本明細書で別段の指定がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に含まれる各々の別個の値を個々に指す簡潔な方法として役立つことを意図している。本明細書で別段の指定がない限り、各々の個々の値は、あたかも本明細書で個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に必須であるいずれもの請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0054】
本明細書の本文中にいくつかの文献が引用されている。本明細書で引用される文献(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書などを含む)の各々は、上記または下記にかかわらず、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明のためにこのような開示に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。
【0055】
記載された目的は、本発明によって、好ましくは添付の特許請求の範囲の主題によって解決される。
【0056】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、PD-L1に対して非常に特異的であり、免疫組織化学によるPD-L1検出において再現性のある結果をもたらし、抗PD-L1ベースの治療に適した腫瘍患者の層別化を助けることを見出している。
【0057】
記載された目的は、第1の実施形態に従って、配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープに結合する本発明の抗体またはその抗原結合断片によって解決され、抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8のアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含み、抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14のアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む。例えば、本発明による抗体またはその抗原結合断片は、その軽鎖において、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8のうちの少なくとも1つを、または例えば、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、もしくはすべてを含む。例えば、軽鎖は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、または例えば配列番号3、配列番号4、配列番号5;配列番号4、配列番号5、配列番号6;配列番号5、配列番号6、配列番号7;配列番号6、配列番号7、配列番号8、または例えば配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、または例えば配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号116を含み、抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14の少なくとも1つを含み、例えば、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、例えば配列番号9、配列番号10、配列番号10、配列番号11、配列番号11、配列番号12;配列番号12、配列番号13;配列番号13、配列番号14、または例えば配列番号9、配列番号10、配列番号11;配列番号10、配列番号11、配列番号12;配列番号11、配列番号12、配列番号13;配列番号12、配列番号13、配列番号14、または例えば配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12;配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13;配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14;または例えば配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または例えば配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号117のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、もしくはすべてを含む。上述した軽鎖および重鎖アミノ酸配列要素は、例えば、列挙された配列番号の数字の昇順で存在し得、重鎖および軽鎖配列要素のすべてが本発明の抗体またはその抗原結合断片に存在する場合、軽鎖配列要素は、順に配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号116に含まれ、および重鎖配列要素は、順に配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号117に含まれることが好ましい。本発明の抗体について使用される場合、「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合し、認識する免疫グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域またはその断片を含むポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミューの定常領域遺伝子、ならびに免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。抗体の軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。抗体の重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、これらは順に、それぞれ、免疫グロブリンクラスのIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定する。典型的には、抗体の抗原結合領域は、結合の特異性および親和性において最も重要である。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体を含む。各四量体は、2つの同一対のポリペプチド鎖で構成され、各対は1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する(例えば、J Allergy Clin Immunol. 2010 February ; 125(2 0 2): S41-S52を参照されたい)。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100~110個またはそれより多くのアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖を指す。
【0058】
一実施形態によれば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、またはジscFvである。抗体は、無傷の免疫グロブリンとして、またはペプシンもしくはパパインなどのペプチダーゼによる消化によって生成される、十分に特徴付けられた抗原結合断片として存在する:ペプシンは、ジスルフィド連結の下方でタンパク質分解的切断をもたらし、F(ab’)2抗体断片を生じさせる。一方、パパインによるタンパク質分解的切断は、ジスルフィド連結の上方で切断し、2つのFab断片を生じさせる。したがって、F(ab’)2断片は、それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に接続した軽鎖であるFabの二量体である。F(ab’)2は穏やかな条件下で還元されて、ヒンジ領域のジスルフィド連結を切断し、それによってF(ab)’2二量体をFab’単量体に変換し得る。前述の抗体断片は、ペプシンおよびパパインによる無傷な抗体の消化に関して規定されるが、このような断片は、化学的にまたは組換えDNA方法論を使用することによってデノボで合成することができる。
【0059】
本発明による「その抗原結合断片」という用語は、(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価の断片、(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片、(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインを含むdAb断片(例えば、Ward et al (1989) Nature 341 544-46を参照されたい)、および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を指す。本発明で使用される「scFv」という用語は、リンカーによって連結された抗体の重鎖可変ドメイン(または領域;VH)および抗体の軽鎖可変ドメイン(または領域;VL)を含み、定常ドメインを欠く分子を指す。例えば、本発明によるscFv断片には、例えば、1つの軽鎖可変ドメイン(VL)またはその一部、および1つの重鎖可変ドメイン(VH)またはその一部からなる結合分子が含まれ得、各可変ドメイン(またはその一部)は同じまたは異なる抗体に由来する。好ましくは、scFv分子は、VHドメインとVLドメインの間に挿入されたリンカーを含み、これは、例えば、アミノ酸グリシンおよびセリンで構成されるペプチド配列を含み得る。例えば、ペプチド配列は、アミノ酸配列(Gly4Ser)nを含み得、nは1~6の整数であり、例えばnは1、2、3、4、5、または6であり得、好ましくはn=4である。scFv分子およびそれらを得る方法は当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号明細書、Ho et al. 1989. Gene 77:51; Bird et al. 1988 Science 242:423; Pantoliano et al. 1991. Biochemistry 30:10117; Milenic et al. 1991. Cancer Research 51:6363; Takkinen et al. 1991. Protein Engineering 4:837に記載されている。本発明の抗原結合断片に使用される「ジscFv」という用語は、リンカーを介して互いに結合している2つのscFv断片を指し、例えば、Cancer Research 54:6176-618,. December 1, 1994またはChem Commun (Camb). 2007 Feb 21; (7): 695-7に開示されているものなどが挙げられる。
【0060】
一実施形態によれば、本発明による抗体または抗原結合断片はモノクローナル抗体である。本発明の抗体に使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は、少量で存在する可能性がある天然に存在する可能性のある突然変異体、またはそれらのグリコシル化パターンにおけるわずかな違いを除いて同一である。モノクローナル抗体、例えば、本発明のモノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に指向され、抗原内の単一のエピトープに特異的に結合する。これは、典型的には、異なるエピトープに対して指向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは異なる。モノクローナル抗体は、例えば、Kohler et al., (1975) Nature, 256:495に記載されるハイブリドーマ培養により得ることができ、または組換えDNA法によって作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)。
【0061】
一実施形態によれば、本発明の抗体は、IgG型のモノクローナル抗体であり、例えば、本発明の抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4型のモノクローナル抗体、または例えば、マウスIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、または例えば、ラットIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2cであり得る。例えば、本発明のIgG型のモノクローナル抗体は、任意の起源のものであり得、例えば、マウス、ヤギ、ヒツジ、ハムスター、ラット、またはウサギ起源のものであり得る。
【0062】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8の軽鎖アミノ酸配列のすべてを含む。
【0063】
好ましい一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14の重鎖アミノ酸配列のすべてを含む。
【0064】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域由来の3つのCDR、および配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域由来の3つのCDRを含む。
【0065】
好ましい一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域由来の3つのCDR、および配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域由来の3つのCDRを含み、軽鎖のCDRは、配列番号4、配列番号6および配列番号8のアミノ酸配列を含むまたはそれらに含まれ、重鎖のCDRは、配列番号10、配列番号12および配列番号14のアミノ酸配列を含むまたはそれに含まれる。
【0066】
好ましい一実施形態では、上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片は、上記で定義したCDRを含む軽鎖および重鎖を含み、配列番号111の軽鎖可変領域はさらに4つのフレームワーク領域(FR)を含み、配列番号110の重鎖可変領域はさらに4つのフレームワーク領域を含み、軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号116のアミノ酸配列を含むまたはそれに含まれ、および重鎖可変領域のフレームワーク領域は、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号117のアミノ酸配列を含むまたはそれに含まれる。
【0067】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体の重鎖(または例えば、その抗原結合断片)は、配列番号110のアミノ酸配列を含む可変領域を含み、本発明の抗体の軽鎖(または例えば、その抗原結合断片)は、配列番号111のアミノ酸配列を含む可変領域を含む。
【0068】
より好ましい実施形態によれば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、例えばタンパク質分解的切断により、シグナル配列が除去されている配列番号114のアミノ酸配列、例えば配列番号112のアミノ酸配列を含む軽鎖、および例えばタンパク質分解的切断により、シグナル配列が除去されている配列番号115のアミノ酸配列、例えば配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0069】
一実施形態では、本発明の抗体の可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)、例えば、配列番号110および配列番号111のアミノ酸配列を含むものは、scFvに含まれてもよく、または例えば、さらにGA-SEEDもしくはAG-SEEDに連結され得るFabに含まれてもよい。「SEED」という用語は、国際公開第2007/110205A2号パンフレット、Protein Engineering, Design & Selection vol. 23 no. 4 pp. 195-202, 2010に開示される鎖交換操作ドメイン(SEED)CH3二量体を指す。これらのヘテロ二量体分子は、ヒトIgGおよびIgA CH3ドメインの誘導体であり、ヒトIgAおよびIgG CH3配列の交互セグメントからなる相補的ヒトSEED CH3ヘテロ二量体を作製する。得られた一対のSEED CH3ドメインは、哺乳動物細胞中で発現された場合に、優先的に会合して1:1の比でヘテロ二量体を形成して「SEED体」(Sb)を形成する。「GA-SEED」という用語は、SEED分子がIgG配列から開始し、それにIgA配列が続くことを意味し、一方、「AG-SEED」は、SEED分子がIgA由来配列から開始し、それにIgG由来配列が続くことを指す。配列番号110および配列番号110のアミノ酸配列を含む本発明のscFvは、例えば、ペプチドリンカーを介して、例えば、上述したアミノ酸配列(Gly4Ser)nのグリシン-セリンリンカーを介して、GA-またはAG-SEEDに連結され得る。
【0070】
より好ましい実施形態によれば、本発明の抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、本発明の抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、その軽鎖に配列番号15のアミノ酸配列、およびその重鎖に配列番号16のアミノ酸配列を含み得る。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片の重鎖配列と軽鎖配列の両方は、軽鎖について配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、もしくは配列番号111、および重鎖について配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、もしくは配列番号110のいずれにも含まれないアミノ酸配列におけるアミノ酸置換、例えば、軽鎖もしくは重鎖の可変領域の部分、または例えば、本発明の抗体の軽鎖の配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、もしくは例えば配列番号111、または重鎖の配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、もしくは配列番号110に対してアミノ末端またはカルボキシ末端に、いずれもの軽鎖もしくは重鎖CDRまたはフレークワーク配列を形成しないアミノ酸におけるアミノ酸置換を含み得る。アミノ酸置換は、例えば、非保存的アミノ酸置換、または保存的アミノ酸置換であり得る。本発明で使用される「保存的アミノ酸置換」という用語は、置換されたアミノ酸残基が、置き換わる残基と類似した電荷を有し、置き換わる残基と類似したまたはより小さいサイズのものであるアミノ酸置換を指す。アミノ酸の保存的置換には、例えば、以下のグループ内のアミノ酸の中でなされる置換を含む:
【0071】
【0072】
好ましい実施形態によれば、本発明のモノクローナルIgG抗体は、ウサギ抗体、または例えばウサギ由来の抗体である。本発明のウサギIgGモノクローナル抗体は、例えばAntibodies: A Laboratory Manual, Second Edition, Chapter 7, Edited by Edward A. Greenfield, CSH Press, ISBN 978-1-936113-81-1に開示される方法に従って、または例えば、Proc. Natl Acad. Sci. USA, Vol, 92, pp. 9348-9352, September 1995、もしくは例えば米国特許第7,732,168号B2明細書に開示される方法などの当該技術分野における任意の適切な方法に従って生成し得る。本発明の抗体について使用される「ウサギ由来」という用語は、例えば、本発明の抗体などの、それぞれの抗体を産生するウサギハイブリドーマから得られるポリヌクレオチド配列を用いて異種発現系(例えば、CHO細胞、HEK293細胞)において産生される抗体を指す。例えば、本発明のウサギ由来抗体は、ウサギハイブリドーマ細胞によって産生される抗体のアミノ酸配列(例えば、配列番号15および/または配列番号16による)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクトされたCHOまたはHEK細胞中で産生され得る抗体を含む。例えば、本発明による組換えモノクローナル抗体は、PLoS One. 2016 Mar 29; 11(3):e0152282に開示される方法によって、本発明の抗体を産生するウサギハイブリドーマ細胞から生成され得る。例えば、単一のB細胞からのcDNAは、オリゴ(dT)でプライムされたSuperscript III逆転写酵素(Invitrogen)を使用して調製され得る。次に、抗体可変領域遺伝子は、KOD DNAポリメラーゼ(EMD Millipore)またはTaqPlus Precision DNAポリメラーゼ(Agilent)のいずれかを用いた2ラウンドのPCRによって回収することができる。一次PCRは、例えば、抗体可変領域の5’末端と3’末端の両方に遺伝子特異的プライマーを利用し得る。5’オリゴヌクレオチドセットは、例えば、リーダー配列の5’末端で結合することができ、3’リバースプライマーセットは、それぞれCH1またはCκ領域にアニーリングすることができる。二次PCRでは、一次PCR産物の5’末端にコードされる「テール」にアニーリングする単一の5’フォワードオリゴヌクレオチドは、J領域にアニーリングする3’プライマーセットとともに使用され得る。二次オリゴヌクレオチドを用いて、例えば、下流のクローニングを容易にするために制限部位を導入し得る。次に、重鎖および軽鎖PCR断片は、例えば、製造者の指示に従って、適切な発現ベクター(例えば、pCMV)にサブクローニングし、Expi293フェクタミン(Life Technologies)を用いてExpi293細胞(Life technologies)にトランスフェクトされ得る。トランスフェクションされた細胞は、例えば、本発明の抗体の産生を可能にする増殖培地を用いて5%CO2環境下、37℃で7日間増殖され得る。得られた上清は、例えば5~7日後に回収され得る。
【0073】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、検出可能な標識にさらに結合される。本発明の抗体またはその抗原結合断片について使用される場合、用語「検出可能な標識」は、検出することができる分子を意味し、例えば、放射性同位元素、蛍光プローブ、化学発光、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、色素、金属イオン、またはビオチンが含まれ得る。本発明の抗体またはその抗原結合断片について使用される「結合」という用語は、色素、放射性同位元素が、例えばイオン性もしくは疎水性相互作用を介して、例えば非共有結合的である、または本発明の抗体もしくはその抗原結合断片に共有結合され得るという事実を指す。上述した検出可能な標識の結合、例えば、上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片への蛍光プローブ、色素、または酵素の結合は、例えば、Methods Cell Biol. 2001;63:185-204; Methods Mol Biol. 2010;588:43-8; Curr Protoc Mol Biol. 2001 May;Chapter 11:Unit 11.1に開示されたものなど、当該技術分野において公知である方法に従って行うことができる。
【0074】
一実施形態によれば、本発明の抗体またはその抗原結合断片に結合した検出可能な標識は、酵素、またはフルオロフォア、または酵素基質のうちの1つである。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片に結合された検出可能な標識は、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、タバコエッチウイルス核内包物-エンドペプチダーゼ(「TEVプロテアーゼ」)であり得る。例えば、上述した本発明の抗体に結合し得るフルオロフォアは、1,8-ANS、4-メチルウンベリフェロン、7-アミノ-4-メチルクマリン、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン、アクリジン、Alexa Fluor 350(商標)、Alexa Fluor 405(商標)、AMCA、AMCA-X、ATTO Rho6G、ATTO Rho11、ATTO Rho12、ATTO Rho13、ATTO Rho14、ATTO Rho101、パシフィックブルー、Alexa Fluor 430(商標)、Alexa Fluor 480(商標)、Alexa Fluor 488(商標)、BODIPY 492/515、Alexa Fluor 532(商標)、Alexa Fluor 546(商標)、Alexa Fluor 555(商標)、Alexa Fluor 594(商標)、BODIPY 505/515、Cy2、cyQUANT GR、FITC、Fluo-3、Fluo-4、GFP(EGFP)、mハニーデュー、Oregon Green(商標)488、Oregon Green(商標)514、EYFP、DsRed、DsRed2、dTomato、Cy3.5、フィコエリトリン(PE)、ローダミンレッド、mタンジェリン、mストローベリー、mオレンジ、mバナナ、テトラメチルローダミン(TRITC)、R-フィコエリトリン、ROX、DyLight 594、カルシウムクリムソン、Alexa Fluor 594(商標)、Alexa Fluor 610(商標)、テキサスレッド、mチェリー、mケイト、Alexa Fluor 660(商標)、Alexa Fluor 680(商標)、アロフィコシアニン、DRAQ-5、カルボキシナフトフルオレセイン、C7、DyLight 750、Cellvue NIR780、DM-NERF、エオシン、エリスロシン、フルオレセイン、FAM、ヒドロキシクマリン、IRDye(IRD40、IRD 700、IRD 800)、JOE、リッサミンローダミンB、マリナブルー、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、PyMPO、5-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2’,4’,5’,7’-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノ、カスケードブルー、Cy2、Cy3、Cy5、6-FAM、ダンシルクロリド、HEX、6-JOE、NBD(7-ニトロベンゼン-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、オレゴングリーン(Oregon Green)488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラ-アミノ安息香酸、エリスロシン、フタロシアニン、アゾメシン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、希土類金属クリプテート、ユウロピウムトリスビピリジンジアミン、ユウロピウムクリプテートまたはキレート、ジアミン、ジシアニン、またはラホイヤブルー色素のうちの1つであり得る。本発明の抗体または抗原結合断片に結合され得るフルオロフォアにまた、例えば量子ドットを含み得る。本発明で使用される量子ドットという用語は、半導体物質の単一球状ナノ結晶を指し、この場合、ナノ結晶の半径は半導体物質の励起子ボーア半径のサイズより小さいまたはそれに等しい(励起子ボーア半径の値は、半導体の特性に関する情報を含むハンドブック(例えば、CRC Handbook of Chemistry and Physics, 83rd ed., Lide, David R. (Editor), CRC Press, Boca Raton, Fla. (2002)において見出されるデータから計算することができる)。量子ドットは当該技術分野において公知であり、例えば、下記文献に記載されている:Weller, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32: 41-53 (1993), Alivisatos, J. Phys. Chem. 100: 13226-13239 (1996)、およびAlivisatos, Science 271: 933-937 (1996)。量子ドットは、直径が約1nm~約1000nm、例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、または500nm、好ましくは少なくとも約2nm~約50nmであり、より好ましくは、QDは直径が少なくとも約2nm~約20nmである(例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20nm)。QDは、それらの実質的に均質なナノメートルサイズ、しばしば約10~15%の多分散または範囲を示すサイズによって特徴付けられる。QDは、励起に際して電磁放射を放出することができ(すなわち、QDはフォトルミネッセンス性である)、1つ以上の第1の半導体物質の「コア」を含み、第2の半導体物質の「シェル」によって取り囲まれ得る。半導体のシェルによって取り囲まれたQDコアは、「コア/シェル」QDと称される。周囲の「シェル」の材料は、好ましくはコア物質のバンドギャップエネルギーより大きいバンドギャップエネルギーを有し、「コア」基質の原子間隔に近い原子間隔を有するように選択され得る。コアおよび/またはシェルは、限定されないが、以下を含む半導体物質であり得る:グループII~VIのもの(ZnS、ZnSe、ZnTe、US、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTeなど)、およびグループIII~V(GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSbなど)、およびグループIV(Ge、Siなど)の物質、PbS、PbSe、ならびにそれらの合金または混合物。好ましいシェルの材料には、ZnSが含まれる。量子ドットは、本発明の抗体またはその抗原結合断片に、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば、Nanotechnology. 2011 Dec 9;22(49):494006; Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 84 (2011) 360-368に開示される方法などによって結合され得る。
【0075】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、47Ca、14C、137Cs、157Cr、57Co、60Co、67Cu、67Ga、123I、125I、129I、131I、32P、75Se、85Sr、35S、201Th、3Hなどの放射性同位体に結合され得る。好ましくは、放射性同位体は、例えば、キレート剤などのさらなる分子に組み込まれる。本発明に従って使用され得る典型的なキレート剤は、例えば、DPTA、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール-O,O’-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N’,N’-四酢酸、NTA(ニトリロ三酢酸)、HEDTA(N-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸)、DTPA(2-[ビス[2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]-エチル]アミノ]酢酸)、またはDOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロ-ドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸)である。
【0076】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、試料における配列番号1に含まれるエピトープの存在または発現の検出に使用するものである。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープの発現の検出に使用されるものであり、配列番号1は、GenBank受託番号AAH69381のアミノ酸残基260~290にわたるヒトPD-L1の細胞内部分に対応する。配列番号1のアミノ酸配列(例えば、ヒトPD-L1の細胞内ドメイン内)に含まれるエピトープは、例えば、FFPE組織試料、または腫瘍組織試料における免疫組織化学的方法により、本発明の抗体またはその抗原結合断片の使用を通じて確実に再現性よく検出することができる。配列番号1(RLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET)に含まれる本発明に使用される「エピトープ」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはウサギにおいて抗原性または免疫原性活性を有する配列番号1の一部を指す。本発明による配列番号1に含まれるエピトープは、例えば、直鎖状エピトープ、または立体配座エピトープであり得る。立体配座エピトープは、例えば、配列番号1のアミノ酸配列の不連続部分で構成されてもよく、例えば、本発明の抗体のパラトープ、または配列番号1のその3次元表面特徴および形状もしくは三次構造に基づいて上述した抗原結合断片と相互作用し得る。本発明による配列番号1に含まれるエピトープはまた、例えば、配列番号1の一次アミノ酸配列(RLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKK QSDTHLEET)に基づく、本発明の抗体またはその抗原結合断片のパラトープと相互作用する配列番号1のアミノ酸の連続配列によって形成される直鎖状エピトープであり得る。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合断片のパラトープは、例えば、配列番号1のアミノ酸配列に含まれる直鎖状エピトープに結合し得、例えば、長さが約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個から、約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個のアミノ酸、または約2個から、約3、4、5、6、7、8、9、10個のアミノ酸、または例えば、約8個のアミノ酸から約11個のアミノ酸であり得る。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片のパラトープと相互作用する直鎖状エピトープは、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108のアミノ酸配列を含み得るまたはそれに含まれ得る。例えば、上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片は、例えば、体液または血液試料などの生物学的試料であり得る試料における、上述したエピトープの存在または発現を検出するために使用され得る。例えば、体液または血液試料などの生物学的試料は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を用いて、フローサイトメトリー、または例えば、FACSに供され、配列番号1に含まれるエピトープ、または例えば、本発明の配列番号19から配列番号108のアミノ酸のいずれかに含まれるエピトープの非存在もしくは存在を検出し得る。例えば、針生検により得られた細胞は、1:1000希釈のFcRブロッカー(例えば、TruStain FcX(商標)(Biolegend、San Diego;または例えば、Human BD Fc Block(商標)、BD Biosciences)を用いて室温で10分間ブロッキングし、次に、本発明の抗体またはその抗原結合断片とともにインキュベートされ得、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、例えば、PBS+2%血清中、約1:50から約1:500、例えば、約1:75、1:100、1:125、1:150、1:175、1:200から、約1:250、1:275、1:300、1:350、1:400、1:450、または例えば、1:25、1:50、1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:400、1:500希釈の蛍光プローブ、例えばフィコエリトリン[PE]に15分間、暗所にて室温で結合させ得る。次に、細胞は、例えば、Attuneフローサイトメーター(Life Technologies、Grand Island、NY)で分析され、その結果は、FlowJo 10.0ソフトウェア(Tree Star,Inc.、Ashland、OR)を用いて評価され得る。例えば、細胞はさらに、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE、Biolegend、San Diego、CA)を用いて、5μMの最終濃度で10分間、37℃にて暗所中で対比染色され、続いてRPMI-1640培地で2回洗浄され得る。
【0077】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、組織試料、固定された組織試料、またはホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織において、配列番号1に含まれるエピトープ、例えば、配列番号19から配列番号108のアミノ酸配列のいずれかの直鎖状エピトープに含まれるエピトープの存在または発現を検出するために使用され得る。本発明による「組織試料」という用語は、例えば、腫瘍、もしくは腫瘍であると疑われる組織に由来する単一の細胞、または例えば、Trends Biotechnol. 2013 June; 31(6): 347-354; Cancer Cell Culture: Methods and Protocols (Methods in Molecular Medicine); S.P. Langdon (Ed.), Humana Press, ISBN: 978-1588290793に記載される、培養腫瘍細胞も含み得る腫瘍組織もしくは腫瘍であると疑われる組織に由来する少なくとも102、103、104、105、106個またはそれより多くの細胞を指すことができる。
【0078】
細胞または組織は、例えば、細針吸引および針生検を含むがこれらに限定されない非侵襲的手段によって、または代替的には、例えば、外科的生検を含むがこれに限定されない侵襲的方法によって得ることができる。組織試料を採取する方法は、本発明の一部を構成しない。本発明による「固定された組織試料」という用語は、化学的組織固定に供された組織試料を指す。例えば、化学的固定は、メタノール、エタノール、アセトン、メタノール-アセトン混合物、緩衝化されたホルマリン溶液、グルタルアルデヒド、または緩衝化されたパラホルムアルデヒドによる固定を含み得る。例えば、固定は、100mMリン酸緩衝液でpH6.8~7.2に緩衝化された10%飽和ホルムアルデヒド水溶液、または10%中性緩衝化されたホルマリン(NBF)を用いて、様々な時間で、4~45℃の範囲の温度、例えば、室温(20~25℃)、または例えば、約5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃から、約15℃、17.5℃、20℃、もしくは約12℃、15℃、17.5℃、20℃から、約25℃、27℃、30℃、35℃、40℃、45℃で様々な時間量で、上述した組織試料の処理(固定化)を含み得る。例えば、上述した組織試料は、約5分から約24時間、または約10分、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分から、約15分、30分、45分、1時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、24時間、48時間、固定され得る。例えば、固定された組織試料は、10%NBFを用いた浸漬固定によって約18から24時間固定された組織試料を含み得る。例えば、本発明による固定された組織試料は、当該技術分野において利用可能な標準的なプロトコールに従って、例えば、Hopwood D. Fixatives and fixation: a review. Histochem J. 1969;1(4):323-60に記載され、または例えば、DAKO North America,Inc.により出版された「Immunohistochemical Staining Methods」, 5thedition (2009)に記載される、ウェブサイトwww.ihcworld.comで提供されるものなどに従って固定されているまたは処理されている、上述した組織試料を含み得る。例えば、ホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織は、以下の手順によって得ることができる。
【0079】
上述した腫瘍組織は、例えば、少なくとも10容積の緩衝化ホルマリン(3.7%ホルムアルデヒド:10mMリン酸緩衝液、ph7.4)または緩衝化パラホルムアルデヒド(3.7%パラホルムアルデヒド:10mMリン酸緩衝液、ph7.4)に入れ、続いて、緩衝化ホルマリンまたはNBF中で、上述した組織試料の厚さに応じて様々な時間量でインキュベートし得、例えば、1~2mmの組織試料の場合は室温で2~3時間、5~10mm厚の組織試料の場合は室温で5時間、または例えば、>10mm厚の組織試料の場合は室温で2~3時間、もしくは例えば、4℃で一晩である。続いて、組織は、例えば、PBSで1~2回洗浄し、H2O中の70%エタノールで4℃にて保存し、次に、組織処理組織学カセットに入れ、後で識別するためにラベルを貼り得る。次に、組織学カセットは、例えば、市販の組織プロセッサーを用いてパラフィン包埋に供され得、70%エタノールで1時間;95%エタノール(95%エタノール/5%メタノール)で1時間;1回目の無水エタノールで1時間;2回目の無水エタノールで1時間30分;3回目の無水エタノールで1時間30分;4回目の無水エタノールで2時間;1回目の洗浄剤(キシレンまたは代替物)で1時間;2回目の最初の専用剤(キシレンまたは代替物)で1時間;1回目のワックス(Paraplast X-tra)を58℃で1時間;2回目のワックス(Paraplast X-tra)を58℃で1時間で供され得る。次に、ホルマリン固定されたパラフィン包埋組織は、さらなる処理のために型に入れることができる。
【0080】
一実施形態では、上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片は、組織試料、固定された組織試料、または腫瘍由来のFFPE組織試料、例えば、上述した生検によって腫瘍から得られた組織において、配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープ、例えば、上述した配列番号19から配列番号108のアミノ酸配列のいずれかに含まれるエピトープの検出に使用される。本発明による「腫瘍に由来する」という用語はまた、例えば、針吸引によって得られた腫瘍細胞、または例えば、培養された、針吸引によって得られた腫瘍細胞を含み得る。
【0081】
一実施形態によれば、配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープの検出は、免疫組織化学(IHC)、フローサイトメトリー、ELISA、またはウェスタンブロッティングによって行われる。例えば、本発明による組織試料、または腫瘍組織試料は、Current Protocols in Molecular Biology 10.8.1-10.8.28, July 2008に記載される、本発明による抗体またはその抗原結合断片を用いて配列番号1に含まれるエピトープを検出するために免疫ブロッティングに供することができる。
【0082】
例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片を用いて、配列番号1に含まれるエピトープを検出するためにELISAが使用される場合、ELISAは標準的なプロトコール、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (1991) 11.2.1-11.2.22に記載されるプロトコールに従って実施することができる。好ましくは、配列番号1に含まれるエピトープは、本発明の抗体またはその抗原結合断片(例えば一次抗体)を用いて、FFPE組織試料上の免疫組織化学(IHC)により検出される:例えば、FFPE腫瘍組織試料は、乾燥させたパラフィン切片をスライド上に60℃のオーブンで1時間置くことにより脱パラフィン処理され得る。続いて、スライドをSakura染色ラックに入れ、以下の溶液を含有するTissue-Tek(登録商標)染色ディッシュにおいて浸す:5分間、キシレン中に3回、少なくとも1分間、100%エタノール中に各2回、少なくとも1分間、95%エタノール中に各2回、少なくとも1分間、70%エタノール中に各1回。次に、スライドを水道水で約5分間、穏やかに濯ぎ得る。試料が由来する腫瘍組織に応じて、スライドを3%過酸化水素溶液中に室温で10分間入れ、続いて水で濯ぐことによって内因性ペルオキシダーゼ活性を遮断することが要求され得る。その後の抗原賦活化は、例えば、以下の手順に従って水浴中で行うことができる:スライドは、抗原賦活化溶液、例えば、標的賦活化溶液、増強クエン酸緩衝液(Dako、S1699またはS1700)、および標的賦活化溶液、高pH(Dako、S3308)、または0.05Mクエン酸緩衝液、pH6、または例えば、Tris EDTA緩衝液、pH8を含むコプリンジャーに入れることができる。次に、スライドは、例えば、水浴中で75~95℃に平衡化させ、約40分間インキュベートされ得る。その後、スライドは、例えば、室温で20分間冷却した後、溶液をデカントし得、スライドをTBS/0.6%Tween20を含む染色ディッシュに最低5分間入れ得る。抗原賦活化はまた、例えば、Tris-EDTA緩衝液 pH9を用いたPTリンク前処理モジュール(DAKO)を用いて、97℃で20分間行われる。抗原賦活化後、次に、スライドは、製造業者の指示に従って、自動化装置(例えば、Discovery XT(登録商標)、またはAutostainerLink48)を用いて染色手順に供することができる。例えば、スライドはまた、Current Protocols in Molecular Biology 14.6.1-14.6.23, January 2008に記載されるように手動で処理され得る。例えば、スライドは、例えば、市販の抗体希釈剤(例えば、DAKO製)中に、約0.2μg/mlから、約5μg/mlの濃度、例えば、約0.2μg/ml、0.3μg/ml、0.4μg/ml、0.5μg/ml、0.6μg/ml、0.7μg/ml、0.8μg/ml、0.9μg/ml、1.0μg/ml、1.25μg/ml、1.5μg/ml、1.75μg/ml、2.0μg/mlから、約3μg/ml、3.5μg/ml、4μg/ml、4.5μg/ml、5μg/ml、5.5μg/ml、6.0μg/ml、7.0μg/ml、8.0μg/ml、9.0μg/ml、10μg/mlの濃度に希釈された本発明による抗体の400~500μlで覆われ、湿ったチャンバー中で約30分間、室温でインキュベートされ得る。次に、一次抗体をTBS/0.6%Tween20(登録商標)で洗い流すことができる。続いて、スライドは、例えば、ゆっくり排水し、いずれもの残っている洗浄液を取り除き得る。その直後に、本発明の抗体を検出するための二次抗体を添加し、室温で約30分間インキュベートし得る。二次抗体希釈液は、例えば、約1:100から、約1:10,000、例えば、約1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:400、1:500、1:750、1:1000から、約1:1500、1:2000、1:2500、1:3000、1:3500、1:4000、1:5000、1:5500、1:6000、1:7000、1:8000、1:9000、または例えば、約1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:400、1:500、1:750から、約1:1,000、1:2000であり得る。例えば、本発明による結合抗体を検出するために使用することができる二次抗体は、約1:50、1:175から約1:200希釈のポリクローナルヤギ抗ウサギHRP結合された免疫グロブリン、または例えば、約1:20、1:50、1:100から、約1:100、1:200、1:250希釈のヤギ抗ウサギアルカリホスファターゼ(AP)結合された免疫グロブリンを含み得て、これらは、使用される検出方法および基質の選択に依存し、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合された二次抗体を使用する場合、例えば、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)が発色検出に使用され得、または例えば、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)もしくは例えば、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を使用され得、または例えば、AP結合された二次抗体を使用する場合、ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)と5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)の基質の組み合わせが使用され得る。発色性免疫組織化学に関する一般原則および指針は、例えば、Current Protocols in Immunology 21.4.21-21.4.26, November 2013に見出すことができる。
【0083】
次に、スライドは、スライドを洗浄液で約5分間オーバーレイすることにより、TBS/0.6%Tween20(登録商標)で2回洗浄され、その後、色素原溶液を製造業者の推奨するプロトコールに従って添加し、約4~5分間インキュベートし得る。対比染色は、例えば、ハリスのヘマトキシリンを使用して約5分間作製され得、その後、スライドを水道水を流しながら濯ぎ、続いて、さらに例えば、TBS/0.6%Tween20で約1分間、追加して濯ぎ得る。その後、切片は、例えば、次の溶液に移す前に、各溶液:70%エタノール、90%エタノール、100%エタノール、キシレンに2回、に数秒間、スライドをゆっくりと上下にして浸すことによって脱水され得る。切片は、例えば、封入剤とカバーガラスを使用して載せられ得る。
【0084】
一態様では、本発明は、試料中の配列番号1に含まれるエピトープ、例えば、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108のいずれかに含まれるエピトープの存在または発現を検出する方法を提供し、本方法は、試料を本発明による抗体または抗原結合断片と接触させるステップ、および本発明による結合した抗体または抗原結合断片の存在を検出するステップを含む。例えば、試料中の配列番号1に含まれるエピトープの存在または発現を検出する本発明の方法は、免疫組織化学による、または、対応する製造業者の指示および/またはプロトコールに従って、市販のIHCプラットフォーム、例えば、intelliPath FLX(Biocare Medical)、WAVE RPD(Celerus Diagnostics)、Omnis(DAKO)、Autostainer Link48(DAKO)、Benchmark XT(Ventana)、もしくはBenchmark Ultra(Ventana)を用いた自動免疫組織化学による検出を含み得る。したがって、本発明の方法は、本発明による試料中のヒトPD-L1の発現を検出するために使用され得る。
【0085】
一実施形態では、本発明の方法は、試料中のヒトPD-L1または配列番号1のアミノ酸配列を含むその任意の断片の存在を検出するために使用され得、本方法は、前記試料を本発明の抗体またはその抗原結合断片と接触させるステップ、および例えば、免疫組織化学によりまたは自動免疫組織化学により、上述した結合した抗体またはその抗原結合断片の存在を検出するステップを含む。例えば、本発明によるヒトPD-L1の断片は、タンパク質分解的に切断されているヒトPD-L1を含み得、切断されたPD-L1断片は配列番号1のアミノ酸配列を含む。例えば、本発明によるヒトPD-L1の断片は、細胞外ドメインを欠くヒトPD-L1を含み得、例えば、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメイン(例えば、GenBank受託番号AAH69381のアミノ酸239~290)のみを含む、または例えば、本発明の抗体を用いて検出され得るPD-L1断片は、ヒトPD-L1の細胞内ドメイン(例えば、アミノ酸260~290)のみを含み得る。
【0086】
一態様では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、上述した試料中の配列番号1に含まれるエピトープ、例えば、上述した配列番号19から配列番号108のいずれかに含まれるエピトープの存在または発現を検出するために使用される。例えば、試料は、生物学的試料、例えば、体液、または血液試料であり得る。例えば、血液試料中の配列番号1に含まれるエピトープの存在または発現は、上述した本発明の抗体または抗原結合断片を使用して行うことができる。使用される血液試料は、例えば、哺乳動物起源のもの、好ましくはヒト血液試料、好ましくはがん患者由来またはがんを有するリスクのある個体由来の血液試料であり得る。一態様では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、例えば、循環腫瘍細胞、または例えば、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球または単球などの白血球上のPD-L1発現の存在または発現を検出する。
【0087】
例えば、フローサイトメトリーを使用して、末梢血液試料(例えば腫瘍患者由来、ここで用語「腫瘍」は新生物、すなわち塊を形成することもあり得る組織の異常な増殖を指す)は、フィコエリトリン-テキサスレッド(ECD)結合させた抗CD3、フィコエリトリン-シアニン5(PC5)結合させた抗CD15(BD Biosciences、San Diego、CA、USA)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合させた抗CD80(MIHクローン、eBioscience、San Diego、CA、USA)を、フィコエリトリン(PE)に結合された本発明の抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて用いて分析し、配列番号1に含まれるエピトープを発現する細胞タイプを同定し得る。例えば、好中球は、CD15+CD3-細胞として同定され得る。その標識化は、例えば、50μLの新鮮なヘパリン処理全血を5μLのECD結合させた抗CD3、5μLのPC5結合させた抗CD15とともに氷上で暗所中、30分間インキュベートすることによって行うことができる。PE-およびFITC-結合させたマウスIgGとともにインキュベートされた細胞は、例えば、アイソタイプ対照として使用され得る。次に、試料をセルソーター、例えば、製造者の指示に従って、CYTOMICS FC 500フローサイトメーター(Beckman Coulter Inc.、Brea、CA、USA)および関連するソフトウェアプログラム(CXP)を用いて分析され得る。
【0088】
上述した本発明の抗体またはその抗原結合断片を使用して、循環腫瘍細胞(CTC)上の配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープ、または例えば、配列番号19から配列番号108のアミノ酸配列のいずれかに含まれるエピトープの存在または発現は、例えば、上述した本発明の抗体と組み合わせて、以下のマーカーEpCAM、EphB4、EGFR、CEA、HER2、またはMUC-1のうちの1つ以上を使用することによって上述したフローサイトメトリーにより分析され得、CTCを標識するために使用される1つ以上の抗体は、上述した本発明の抗体とは異なる蛍光標識を有する。CTCは、例えば、血液試料、例えば、上述したヒト血液試料から、市販の単離方法、例えば、CellSearch、または例えば、ClearCell(登録商標)FX CTCベースの濃縮を用いたCTCチップにより、例えば、製造業者の指示に従って単離され得る。上記の方法において、上述した蛍光プローブまたは検出可能な標識に結合された本発明の抗体またはその抗原結合断片は、例えば、約0.01μg/mlから、約50μg/ml、例えば、約0.025μg/ml、0.05μg/ml、0.075μg/ml、0.1mg/ml、0.25μg/ml、0.5μg/ml、0.75μg/ml、1μg/ml、1.50μg/ml、1.75μg/ml、2μg/ml、2.5μg/ml、3μg/ml、3.5μg/ml、4μg/ml、4.5μg/ml、5μg/ml、5.5μg/ml、6μg/ml、7μg/ml、8μg/ml、9μg/ml、10μg/mlから、約11μg/ml、12μg/ml、15μg/ml、17.5μg/ml、20μg/ml、22.5μg/ml、25μg/ml、30μg/ml、35μg/ml、37.5μg/ml、40μg/ml、45μg/ml、50μg/ml、または例えば、約0.5μg/ml、0.75μg/ml、1μg/ml、1.50μg/ml、1.75μg/ml、2μg/ml、2.5μg/ml、3μg/ml、3.5μg/ml、4μg/ml、4.5μg/ml、5μg/mlから、約6μg/ml、7μg/ml、8μg/ml、9μg/ml、10μg/ml、または約0.5μg/ml、0.75μg/mlから、約1μg/ml、1.50μg/ml、1.75μg/ml、2μg/ml、2.5μg/ml、3μg/ml、3.5μg/ml、4μg/ml、4.5μg/ml、5μg/ml、5.5μg/ml、6μg/ml、7μg/ml、8μg/ml、9μg/ml、10μg/mlの濃度で、または例えば、0.5μg/ml、0.75μg/ml、1μg/ml、1.50μg/ml、1.75μg/ml、2μg/ml、2.5μg/ml、3μg/ml、3.5μg/ml、4μg/ml、4.5μg/ml、5μg/ml、5.5μg/ml、6μg/ml、7μg/ml、8μg/ml、9μg/ml、10μg/mlの濃度で使用され得る。
【0089】
例えば、本発明の一態様では、血液試料などの試料における本発明の抗体または抗原結合断片を使用して、配列番号1のアミノ酸配列、または例えば、配列番号19から配列番号108のいずれかのアミノ酸配列に含まれるエピトープの存在または発現は、ELISAによって行うことができる。例えば、本発明の抗体は、ELISAプレートを4℃で一晩コーティングするために、約0.25μg/ml、0.5μg/ml、0.75μg/ml、1μg/ml、1.50μg/ml、1.75μg/ml、2μg/ml、2.5μg/ml、3μg/ml、3.5μg/ml、4μg/ml、4.5μg/ml、5μg/ml、5.5μg/ml、6μg/ml、7μg/ml、8μg/ml、9μg/ml、10μg/mlの濃度で使用され、または対照抗体(例えば、PBS中2μg/mlのmIgG2a)が使用され、その後、10%FBSを含有するPBSでブロッキングされ得る。血液試料(例えば、がん患者からのもの、および/または対照もしくは参照試料としての健康な個人からのもの)は、例えば、プレートに添加する前に3重にして1:1.000でPBS中に希釈され得る。続いて、ウェルは、例えば、0.1%Tween-20を含むPBSで6回洗浄され得る。結合した本発明の抗体は、室温で1.5時間インキュベートされた1:2.000希釈のセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合させた二次抗ウサギIgGAbによって検出し、次に、テトラメチルベンジジンと反応させて、450nmの波長でプレートリーダーを使用して吸光度を測定され得る。対照Igでコーティングされたプレートへの血清の非特異的結合は、例えば、バックグラウンド補正のために各試料の測定値から差し引くことができる。
【0090】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、上述した組織試料、固定された組織試料、またはホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織中の配列番号1に含まれるエピトープ、または例えば、配列番号19から配列番号108のアミノ酸配列のいずれかの存在または発現を検出するために使用され得る。好ましくは、一実施形態によれば、ホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織は、腫瘍組織試料、または腫瘍組織由来試料、例えば、腫瘍細胞、培養腫瘍細胞株、または上述した培養された腫瘍組織である。本発明の方法はまた、例えば、一実施形態では、PD-L1を発現しないまたはごく少量しか発現しない対照組織を本発明の方法に供し、好ましくは上述した組織試料と並行して処理される対象組織を含む。例えば、対照組織は、甲状腺組織もしくは骨格筋組織、または培養されたPD-L1陰性がん細胞、例えばA2780、Colo205、またはIGROV-1を含み得る。上記で用いられる少量という用語は、例えば、Journal of Immunological Methods 345 (2009) 40-48; Journal of Immunological Methods 353 (2010) 148-150; Hematology. 2016 Mar 31:1-6に記載される半定量的免疫ブロット法またはqPCRと比較した場合、PD-L1陽性腫瘍組織または腫瘍細胞(例えば、Hs746T、MDA-MB 231、NCI-H 2009、ヒト脾臓)よりも少なくとも5、10、20、25、40、50、または100倍少ない腫瘍細胞または腫瘍組織によるPD-L1の発現を指す。例えば、上記で定義した組織試料または腫瘍組織試料は、RNA単離およびcDNA合成に供され得、次に、例えば、qPCRに使用して、PD-L1の相対的な発現レベルを決定し得る。
【0091】
一態様では、本発明の抗体は、例えば、ガラススライド上に載せられた組織試料上で使用されて、異なる腫瘍組織試料が互いに隣接して配置され得る組織アレイを形成し得る。例えば、組織アレイは、(例えば検出アーティファクトを回避するために)ガラススライド上の異なる位置に載せられた各組織試料の少なくとも1、2、3または4つの切片を含む。例えば、組織アレイは、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20から、約22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、55もしくは60、または約22、24、28、30、36、40、44、48、52、56、60から、約64、68、72、76、78、80、82、84、86、90、100の異なる組織試料を含み得る。例えば、一実施形態では、組織アレイは、上述した腫瘍組織試料に加えて、がん細胞株ZR-75-1、WM164、U-87MG、U-118MG、T47D、SW707、SW620、SNB-78、NCI-H69、NCI-H569、NCI-H460、NCI-H292、NCI-H2009、NCI-H1975、Mx-1、MeWo、PC-3、Raji、Ramos、suit7、MDA-MB-468、MDA-MB-435、MDA-MB-231、MCF7、M24met、Lox、LoVo、Kyse 30、Jurkat、IGROV-1、HT29、Hs746T、Hs68、HL60、FaDu、EBC-1、DU 145、DLD-1、COLO 205、Calu 6、Calu 3、BT474、AGS、A549、A-431、A2780、Pfeiffer、MiaPaCa-2、ME-SAのうちの少なくとも1つ以上、例えば5、10、20、30、40、50個以上、または、例えばすべてを含み得る。上述したがん細胞株は、例えば、ATCC、または例えば、DSMZ(Leipniz Institute DSMZ)から入手し得て、それぞれの細胞株の各々について確立された方法に従って培養され得る。上述した少なくとも1つのホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織試料またはFFPE腫瘍組織試料を含む組織アレイまたは腫瘍組織アレイは、例えば、Nat Med. 1998 Jul;4(7):844-7に記載されるプロトコールに従って製造され得る。
【0092】
一実施形態によれば、ホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織試料、またはホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋腫瘍組織試料は、がん、T細胞機能不全、急性もしくは慢性感染のリスクがあるまたはそれらに罹患している対象、または腫瘍免疫を示している対象に由来する。本発明の方法に使用されるがんという用語は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける生理学的状態を指しまたはそれを記述し、これは典型的には、生体の他の部分に侵入または拡散する可能性を伴う無秩序な細胞成長/増殖によって特徴付けられる。がんの例としては、限定されないが、非小細胞肺がん(NSCLC)、中皮腫、切除不能な中皮腫、乳がん、胃の腺癌またはGEJ、胃、胸腺腫、卵巣がん、腺様嚢胞癌、転移性腺様嚢胞癌、膀胱がん、明細胞腎臓がん、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、悪性黒色腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん(SCLC)またはトリプルネガティブ乳がん、リンパ球増殖性障害、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、EBV陽性DLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄性白血病-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、または小リンパ球性リンパ腫(SLL)、メルケル細胞癌(MCC)、または扁平上皮頭頸部がん(SHNC)が挙げられる。上記のがんのタイプは、例えば悪性腫瘍とも呼ばれ得る。上述した本発明の方法に使用される「T細胞機能不全」という用語は、CD8T細胞の病理学的状態を指し、それは、例えば、CD8陽性T細胞の厳密に制御された分化プロセスの変化が起こると生じ得、例えば、抗原遭遇の性質、状況および持続時間の変化は、T細胞の枯渇、寛容、アネルギーまたは老化とも呼ばれ得るT細胞活性化および分化プロセスにおける実質的な変化をもたらし得る。本発明の方法に使用される急性感染症という用語は、細菌、ウイルスまたは寄生虫によって引き起こされる急性感染症を指し、例えば、診断の約1、2、3、または4週間前に発症している。本発明の方法に使用される「慢性感染症」という用語は、病原体が迅速に排除されるのではなく、むしろ長期間、例えば3、4、5、6、7、8、9、または10週間以上、持続するような状況を指す。持続的な病原体曝露は、慢性的な抗原刺激および持続的な炎症をもたらし得、それは病原体特異的CD8 T細胞の枯渇および/またはクローン喪失をもたらす場合がある。慢性感染症は、例えば、ウイルス感染、例えばA型肝炎、C型肝炎もしくはD型肝炎、HIV感染、または例えば未治療の場合は、髄膜炎菌、淋菌、バルトネラ・ヘンセラ、ボレリア・ブルグドルフェリ、サルモネラ種、ブルセラ種、カンピロバクター種、マイコバクテリア種、梅毒トレポネーマ、またはコクシエラ・ブルネチイによる感染であり得る。一実施形態では、FFPE組織試料、またはFFPE腫瘍組織試料は、腫瘍免疫によって特徴付けられるまたはそれを有する対象、例えばヒトに由来する。本発明の方法に使用される「腫瘍免疫」という用語は、腫瘍が免疫認識および排除を回避するプロセスを指す。腫瘍由来または腫瘍関連因子は、樹状細胞分化に影響を及ぼし、最終的に腫瘍免疫をもたらす抗原提示機能を有する細胞の発生を妨げると考えられている。内因性レトロウイルス(ERV)、特に腫瘍特異的内因性レトロウイルス(TERV)の発現はまた、例えば腫瘍免疫に関与している。腫瘍免疫に寄与する可能性がある他の因子は、例えば遺伝子増幅PD-L1(CD274)およびALOX12B/15Bであり、または抗原提示(例えば腫瘍関連新生抗原)の喪失をもたらすもしくは外因性アポトーシスの遮断をもたらす、遺伝子B2M、HLA-A、HLA-B、HLA-C、またはCASP8のいずれかにおける突然変異である。
【0093】
一態様では、本発明は、悪性腫瘍に罹患している哺乳動物、好ましくはヒトが、哺乳動物、例えば、それを必要とする個体、例えば、がん、T細胞機能不全、急性もしくは慢性の感染症または腫瘍免疫を有するまたはそのリスクがあるヒト、あるいは例えば、悪性腫瘍を患っているがん患者由来の試料における、配列番号1に含まれるエピトープ、または、例えば、配列番号19~配列番号108、例えば配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107のいずれかに含まれるエピトープの存在または非存在の検出を含む、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体を用いた治療のための有望な候補であることを予測する方法を提供し、本方法は、例えばフローサイトメトリー、FACS、または好ましくは本発明の抗体を用いた免疫組織化学を含み、ここで、試料中の、例えば、約0.25%、0.5%、0.75%、1%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、もしくは10.0%より多くの、または約0.5%、0.75%、1%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、12%、13%、14%、15%から、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%未満の、または例えば、約20%、25%、30%、35%、40%、45%から、約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%未満の、または約0.25%、0.5%、0.75%、1%から、約1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9%、9.5%もしくは10%未満の、または約0.25%から、約0.5%、0.75%、1%未満の細胞において、配列番号1に含まれるエピトープ、または例えば、配列番号19から配列番号108のいずれかに含まれるエピトープの検出は、患者が、免疫チェックポイント阻害剤による治療、例えば、抗PD-L1抗体による治療、または抗PD-1抗体による治療に応答する可能性があることを示す。本明細書で使用される「免疫チェックポイント阻害剤」という用語は、当該技術分野においてその一般的な意味を有し、シグナル(刺激チェックポイント分子)を上昇させるまたはシグナル(阻害チェックポイント分子)を低下させるという点でT細胞によって発現される分子を指し、例えば、PD-1/PD-L1およびCTLA-4/CD28シグナル伝達経路はともに、当該技術分野において免疫チェックポイント経路を構成するものとして認識されている(例えば、Pardoll, 2012. Nature Rev Cancer 12:252-264を参照されたい)。例えば、上述した本発明の方法を用いて免疫チェックポイント阻害剤による治療の可能性がある候補として同定されている、患者に投与され得る抗PD-L1抗体としては、例えば、アヴェルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブが挙げられ、または例えば、抗PD-1抗体としてはペンブロリズマブ、ニボルマブ、もしくはPf-06801591などが挙げられる。
【0094】
本発明による試料中のPD-L1陽性細胞は、例えば、腫瘍細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの免疫細胞(例えば、CD8陽性T細胞、マクロファージ、NK細胞、もしくはB細胞)が含まれ得る。例えば、上述したFFPE腫瘍組織試料を得たまたはそれに由来した腫瘍タイプに応じて、試料中のPD-L1陽性細胞の相対存在量を決定するための異なる方法(スコアリング方法)を使用することができる。例えば、PD-L1陽性細胞を検出するために本発明の抗体を使用する上述したような免疫組織化学(IHC)を使用して、PD-L1スコアリングは、試料中のPD-L1陽性腫瘍細胞の相対存在量、もしくはPD-L1陽性TILの相対存在量を決定し、または例えば、PD-L1陽性腫瘍細胞およびTILの組み合わせた相対存在量を決定することを含み得る。試料中の細胞の総数、またはPD-L1陽性細胞の数を決定するために使用されるその任意のサブ画分は、例えば、細胞核および細胞質を可視化するためにヘマトキシリンを使用して試料を対比染色することによって、または例えば、蛍光検出法を使用する場合は、細胞核を可視化するために4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)染色を使用することによって得ることができる。本発明の方法に使用される「PD-L1陽性細胞」という用語は、本発明の抗体が特異的に結合し、次に、本発明の抗体に特異的に結合し、対応する基質(例えば、上述される)と反応させた場合に発色または蛍光検出を可能にする、例えば、HRP-またはAP-結合した二次抗体で検出され得る、配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープを検出可能に発現する細胞を指す。例えば、HRP結合した二次抗体を使用して、PD-L1陽性細胞を標識するための基質としてDABとともにインキュベートされ得る。PD-L1陽性細胞のスコアリングは、例えば、分析されるFFPE腫瘍組織試料(または例えばその任意のサブ切片)中のPD-L1陽性細胞の数および細胞総数を決定するために、個々の細胞または核を計数することを含み得る。あるいは、PD-L1陽性細胞およびヘマトキシリン染色細胞の表面積は、例えば、PD-L1陽性細胞の相対存在量を決定するために使用され得る。
【0095】
一態様では、上述した本発明による方法は、抗PD-L1抗体による治療のための可能性がある候補を同定するために使用され得る。本発明による悪性腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)、中皮腫、切除不能な中皮腫、乳がん、胃の腺癌またはGEJ、胃、胸腺腫、卵巣がん、腺様嚢胞癌、転移性腺様嚢胞癌、膀胱がん、明細胞腎臓がん、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、悪性黒色腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん(SCLC)またはトリプルネガティブ乳がん、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、EBV陽性DLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄性白血病-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、または小リンパ球性リンパ腫(SLL)、メルケル細胞癌(MCC)、または扁平上皮頭頸部がん(SHNC)のうちの1つであり得る。
【0096】
本発明の一態様によれば、本発明の方法を使用して、以下の抗PD-L1抗体であるアヴェルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、LY300054、BMS-936559、または抗PD-1抗体であるペンブロリズマブ、ニボルマブ、もしくはPf-06801591のうちの1つにより、可能性がある候補(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤による治療に反応するがん患者)を同定または予測し得る。例えば、それを必要とする個体、例えば、ヒトがん患者、または例えば、上述した悪性腫瘍に罹患しているヒト患者、またはがんを有するリスクがあるヒトは、上記の本発明の方法を適用することによって、抗PD-L1抗体、例えばアヴェルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、LY300054、BMS-936559のうちの1つ、または抗PD-1抗体、例えばペンブロリズマブ、ニボルマブ、もしくはPf-06801591のうちの1つによる治療について可能性がある候補であることが見出され、約0.1mg/kgから、約50mg/kg、約0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgから、約12.5mg/kg、15mg/kg、17.5mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、27.5mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、37.5mg/kg、40mg/kg、42.5mg/kg、45mg/kg、または例えば1mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、12.5mg/kg、15mg/kg、17.5mg/kg、20mg/kg、22.5mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kgの投薬量で、単独でまたは他の抗がん剤と組み合わせて投与することができる。一実施形態では、抗PD-L1抗体であるアヴェルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、または例えば抗PD-1抗体、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、またはPf-06801591は、例えば、固定(flat)投薬レジメンで上述した本発明の方法を適用することによって同定されている可能性がある候補に投与され得る。例えば、アヴェルマブは、毎週500~800mg、例えば、毎週約600mg~750mg、または例えば、毎週約650~850mg、または例えば、毎週約700~900mg、または例えば、毎週525mg、毎週550mg、毎週600mg、毎週625mg、毎週650mg、毎週700mg、毎週725mg、毎週750mg、または例えば2週間毎に約900~約1600mg、例えば、2週間毎に約1000mg~約1500mg(q2w)、または約1250mg~約1400mg q2w、または約1000mg q2w~約1250mg q2w、例えば、925mg q2w、950mg q2w、1000mg q2w、1125mg q2w、1200mg q2w、1250mg q2w、1300mg q2w、1350mg q2w、1400mg q2w、1450mg q2w、1500mg q2w、1550mg q2w、または例えば、3週間毎に約1250~2400mg(q3w)、または約1500mg~約2250mg q3w、または約1750mg~約2000mg q3w、または約1800mg~約2300mg q3w、または約1250mg~約1750mg q3w、または約1300mg~約1500mg q3w、または例えば150mg q3w、1350mg q3w、1450mg q3w、1550mg q3w、1650mg q3w、1750mg q3w、1800mg q3w、1850mg q3w、1900mg q3w、1950mg q3w、2000mg q3w、2125mg q3w、2250mg q3w、2350mg q3wの固定投薬レジメンで投与され得る。上記で使用される「mg/kg」という用語は、それぞれの抗体による治療を受けることになる患者の体重1kgあたりの抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体のミリグラム数を指す。本明細書で使用される「q2w」および「q3w」という用語は、2週間毎または3週間毎の投与を示すものである。上記で使用される「mg/kg」という用語は、体重1キログラムあたりの抗PD-L1(または例えば抗PD-1)抗体のミリグラム数を指す。
【0097】
一態様によれば、本発明は、悪性腫瘍に罹患している患者が抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体による治療に対して可能性がある候補であると予測するための本発明の方法における本発明の抗体またはその抗原結合断片の使用に関する。例えば、本発明の抗体または抗原結合断片を免疫組織化学に使用して、FFPE腫瘍組織試料中のPD-L1発現を検出し、続いて試料をPD-L1発現の目視評価(スコアリング)に付してPD-L1陽性細胞、例えば腫瘍細胞、または上述したTILの数を決定することができる。本発明の抗体またはその抗原結合断片はまた、例えば、TILを標識するための二色免疫蛍光法に使用され得る。例えば、二色蛍光は、本発明の抗体、および抗CD8抗体、抗CD163抗体、抗CD3抗体、抗CD11c抗体、抗CD56抗体、抗CD68抗体、抗グランザイムB抗体または抗FoxP3抗体のうちの1つを含み得、本抗体は、本発明の抗体とTIL特異的抗体の両方の検出を可能にするために、異なる種に由来する。二重免疫蛍光法は、例えば、市販のキットを用いて、例えば、Novocastra PowerVision Poly-HRP IHC検出システム、およびその後のAlexa Fluor 594またはAlexa Fluor 488 Tyramide Signal Amplification(TSA)キットを用いて、製造業者の指示に従って実施され得る。PD-L1陽性細胞のスコアリングは、例えば、上述したように行われ得、または例えば、PD-L1陽性腫瘍細胞、PD-L1陽性免疫細胞(例えば、TIL、マクロファージ)に基づくIHCスコア、またはPD-L1陽性腫瘍と免疫細胞の合計スコアを割りあてることを含み得、例えば、0、1、2、または3のIHCスコアは<1%のPD-L1陽性細胞(IHCスコアは0である)に対応し、>1%であるが<5%(IHCスコアは1である)、>5%であるが<10%(IHCスコアは2である)、または>10%(IHCスコアは3である)に対応する。例えば、所与の患者の1を超える試料が上述した本発明の抗PD-L1抗体を用いて上述した本発明のインビトロの方法に供される場合、IHCスコアは、分析された試料の平均スコアであり得、または例えば、IHCスコアは、最も高いIHCスコアを有する試料のIHCスコアに対応し得る。IHCスコアはまた、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片を用いてPD-L1を発現する腫瘍細胞を総腫瘍細胞のパーセンテージとして、およびPD-L1を発現する腫瘍浸潤性免疫細胞の両方を腫瘍面積のパーセンテージとしてスコアリングすることによって決定され得る。試料は、例えば、50%以上の腫瘍細胞がPD-L1陽性である場合には3であるとスコアリングされ得、5%以上であるが50%未満の腫瘍細胞がPD-L1陽性である場合、スコアは2であり;1%以上であるが5%未満の腫瘍細胞がPD-L1陽性である場合、スコアは1であり;1%未満の腫瘍細胞がPD-L1を発現した場合、スコアは0である。
【0098】
一実施形態では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療に応答する可能性がある候補として同定された患者におけるがんを治療する方法を提供し、これは、上述した本発明の方法を前記患者から得られたまたはそれに由来する試料に適用し、その試料におけるPD-L1発現を決定することにより、第2のステップでは、その試料におけるPD-L1の発現と参照試料におけるPD-L1発現とを比較し、第3のステップでは、前記患者の試料におけるPD-L1発現が増加しまたは特定の閾値を上回ることが見出された場合に免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体を前記患者に投与することによる方法を提供する。本発明の治療方法において使用される「閾値」という用語は、例えば、上述した本発明の方法によって決定される参照試料と比較した、患者由来の試料におけるPD-L1発現の相対存在量を指す。例えば、閾値は、参照試料と比較した患者試料中のPD-L1陽性細胞の相対的増加として定義され得、または例えば、前記試料中のPD-L1陽性細胞の絶対数もしくは相対数として定義され得、例えば、試料中の細胞の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、75%、80%、>1%、>5%、>10%、>20%、>50%、>75%、>80%であり得、または例えば、閾値は、上述したIHCスコアもしくはスコアリング法に基づくことができる。本発明の治療方法において使用される参照試料は、例えば、がんに罹患しておらず、上述した本発明の抗体または抗原結合断片を用いたPD-L1発現を検出する同方法に供される健康なドナーに由来し得、例えば、FFPE組織試料のIHCである。例えば、参照試料は、患者から得られた試料として対応する組織および位置から得ることができ、好ましくは前記患者からの試料と並行して処理される。参照試料はまた、例えば、それが罹患していない領域または位置から得られる場合、腫瘍組織試料と同じ組織または臓器に由来し得、または例えば、参照試料は反対側の健康な臓器に由来し得る。例えば、本発明の治療方法に従って患者に投与され得る抗PD-L1には、アヴェルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブが含まれ、または抗PD-L1抗体は、例えばペンブロリズマブ、ニボルマブ、またはPf-06801591である。本発明の治療方法では、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体、例えばアヴェルマブは、上述したように投与され、例えば、約5mg/kg~約30mg/kgの用量で、または例えば5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg~約12.5mg/kg、15mg/kg、17.5mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、27.5mg/kg、30mg/kgの用量で投与され、抗体は週1回(q1w)投与される。抗PD-L1抗体(例えば、アヴェルマブ)はまた、上述した毎週または2週間毎または3週間毎に固定用量として、例えば、毎週500~800mg、または2週間毎に900~1600mg、または3週間毎に1250~2400mgの固定用量で投与され得る。
【0099】
一実施形態では、本発明は、抗体またはその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。本発明に使用される「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは95%、96%、97%、98%、99%の純粋であり、汚染物質がない、例えばタンパク質および/または脂質がないポリヌクレオチドを指す。本発明の抗体またはその抗原結合断片は、例えば、本発明の抗体の軽鎖および重鎖をコードする2つの単離されたポリヌクレオチドによってコードされ得る。単離されたポリヌクレオチドは、例えば、本発明の抗体の軽鎖をコードする配列番号17の1つのポリヌクレオチド配列、および本発明の抗体の重鎖をコードする配列番号18のポリヌクレオチド配列を含む1つのポリヌクレオチド配列を含み得る。使用される発現系に応じて、配列番号17および配列番号18のポリヌクレオチド配列は、本発明のポリヌクレオチドのより良好な発現を可能にするようにコドン最適化され、それぞれの発現系において本発明の抗体のより高い収率をもたらし得る。コドン最適化は、例えば、Nucleic Acids Res. 1988 Mar 11;16(5):1715-28、Nucleic Acids Res. 1988 Sep 12;16(17):8207-11、Methods Cell Biol. 1991;36:675-7において公開されている利用可能なコドン使用表を用いて、または例えば、Bioinformatics. 2014 Aug 1;30(15):2210-2に公開されているものなどの利用可能なコンピュータに埋め込まれたコドン最適化ツールを用いて行うことができる。少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドのコドン最適化は、使用されるそれぞれの発現系、例えば、マウスもしくはヒトの細胞株、酵母または昆虫の細胞株を考慮して行われ得る。
【0100】
一実施形態では、本発明は、上述した本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。本発明による用語「発現ベクター」は、遺伝子発現制御配列、例えば、少なくとも1つのポリペプチド、例えば、配列番号17および/または配列番号18をコードするヌクレオチド配列に対して5’から3’方向に作動可能に連結されたプロモーターまたはプロモーター成分を含む核酸ベクターを指す。例えば、本発明による発現ベクターは、配列番号17もしくは配列番号18のポリヌクレオチドを含み得、または配列番号17と配列番号18の両方のポリヌクレオチドを含み得る。原核生物における発現に必要な核酸配列には、プロモーター、リボソーム結合部位、場合によりオペレーター配列および可能であれば他の配列が含まれる。真核細胞は、プロモーター、例えば、CMVプロモーター、SV40プロモーター、EF1a、またはCAGプロモーター、ならびにしばしばエンハンサーおよびポリアデニル化シグナルを利用する。例示的な哺乳動物発現ベクターは、pCMV、pCMV-SPORT、pcDNA、または例えばNat Commun. 2010 Nov 16;1:120に記載されるプラスミドベースの多重遺伝子発現系、または、例えば本発明の抗体またはその抗原結合断片のウイルス発現が意図される場合、pLKO.1-hygro、pBABE-hygro、pBABE-puro、pBABE-zeo、pLenti CMV/TO zeo DEST、pCW57.1である。場合により、真核生物の発現ベクターは、バイシストロン性発現構築物を提供する本発明のポリヌクレオチド配列間に内部リボソーム進入部位(IRES)を含み、1つの発現ベクターから配列番号17および配列番号18の両ポリヌクレオチドの発現を可能にし得る。例えば、使用され得るIRES配列は、PLoS One. 2013 Dec 9;8(12):e82100に公開されているもの、例えば、5’AUGAUAAUAUGGCCACAACCAUGを含み得る。例えば、本発明のポリヌクレオチドの発現に使用され得る適切な発現ベクターは、pCMVベースの発現ベクター、またはpD912ベースのベクターおよびその変異体、Gateway(登録商標)発現ベクター、pcDNAベースの発現ベクター、またはpJΩベクター(例えば、Nucleic Acids Research, Vol. 18, No. 4を参照されたい)、またはレトロウイルスもしくはレンチウイルス生成用に使用され得るベクター(例えば、Front Biosci. 1999 Jun 1;4:D481-96を参照されたい)を含み得る。適切な酵母発現ベクターは、例えば、本発明のポリヌクレオチドを発現させるためのGAL4、PGK、ADH1、ADE2またはTRP1プロモーター、例えば、発現ベクターpRS420、pLEX、pACT2.2、pTEF1/zeo、pAG425GDP-ccdb、pBEVY-T、pAG300、pGBK T7、pEZY202、pCETT、pRG201、pXP120、pXP320、p2GLex、またはp426GALを利用し得る。例えば、上述した本発明のポリヌクレオチドはまた、例えば、本発明のポリヌクレオチドのバキュロウイルス発現に使用するためのポリヘドリンプロモーターを含む発現ベクター、例えば、pFastBac、pFastBac DUAL、pVL1392、pVL1393、またはAcNPVを用いて、昆虫細胞中で発現させ得る。好ましい態様では、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、哺乳動物発現ベクターである。
【0101】
一実施形態では、本発明は、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を含む本発明の抗体の生成における本発明による発現ベクターの使用に関する。例えば、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む本発明による少なくとも1つのベクターは、一過性発現系を用いて、本発明の抗体を発現させ得る。例えば、Methods. 2014 Jan 1;65(1):5-10に開示されている一過性発現系を使用し得る。本発明による本発明の発現ベクターまたは少なくとも1つの発現ベクターはまた、例えば、本発明の抗体を発現する安定な細胞株の生成に使用され得る。例えば、安定な細胞株を開発するためのプロセスは、例えば、本発明の発現ベクター、または少なくとも1つの本発明の発現ベクター、例えば、2つの発現ベクターを用いた適切な宿主細胞のトランスフェクションから開始することができ、この2つの発現ベクターのうちの第1のベクターは、配列番号17のポリヌクレオチドを含み、第2の発現ベクターは、配列番号18のポリヌクレオチドを含む。抗体の軽鎖および重鎖をコードするポリヌクレオチド、ならびに少なくとも1つの選択マーカーを含む発現ベクターによるトランスフェクション後、トランスフェクトされた細胞を本発明の抗体の発現を可能にする24時間~72時間の適切な増殖条件でインキュベートし、増殖回復、無血清懸濁液への適応、ならびに増幅およびクローン選択の後に本発明の抗体の高い生産性を有する細胞をスクリーニングし得る。
【0102】
例えば、本発明の発現ベクター、または配列番号17および/もしくは配列番号18のポリヌクレオチドを含む本発明の少なくとも1つの発現ベクターは、上述した本発明の抗体を生成または製造するために使用され得る。例えば、配列番号17および/または配列番号18の配列を含む本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、上述した本発明の抗体の発現のための少なくとも1つの適切な宿主細胞をトランスフェクトするために使用され得る。例えば、配列番号17および配列番号18の本発明のポリヌクレオチドは、1つの発現ベクターに含まれていてもよく、または例えば、本発明の抗体の生成においてともに使用される2つの別個の発現ベクターに含まれ得る。
【0103】
配列番号17および配列番号18のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、例えば、本発明のポリヌクレオチドを発現させるための少なくとも1つの適切な宿主細胞に形質導入するために、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターにおいて使用され得る。
【0104】
例えば、本発明の抗体の製造または生成のために、配列番号15の軽鎖アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、および配列番号16の重鎖アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、2つの別個の発現ベクターに含まれ得、そのため、両方の発現ベクターは、本発明の抗体の製造または生成のために、適切な宿主細胞にトランスフェクトされなければならない。使用されるトランスフェクション方法は、例えば、利用する宿主細胞株に依存し得る。哺乳動物細胞にベクターDNAを安定的に導入するための様々なトランスフェクション方法が開発されていて、例えば、リン酸カルシウム、エレクトロポレーション、カチオン性脂質ベースのリポフェクション、およびポリマーまたはデンドリマーベースの方法が挙げられる。一例では、本発明の発現ベクター、または本発明による少なくとも1つの発現ベクターは、CHOK1SV細胞を使用するリコンビナーゼ媒介性カセット交換(RMCE)に使用され、例えば、Biotechnol Prog. 2015 Nov-Dec;31(6):1645-56に記載される方法に従って、本発明の抗体を製造するための安定な細胞株を生成し得る。
【0105】
一実施形態によれば、本発明は、上述した少なくとも1つの発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。例えば、本発明による宿主細胞は、配列番号17および配列番号18のアミノ酸配列を含む本発明の抗体をコードする、上述した少なくとも1つの発現ベクターを含み得る。例えば、宿主細胞は、配列番号17のアミノ酸配列をコードする上述した1つの発現ベクター、および配列番号18のアミノ酸配列をコードする上述した第2の発現ベクターを含み得る。発現ベクターは、選択マーカー、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばG418、ゼオシン、ブラスチシジン、ハイグロマイシンB、ミコフェノール酸、またはピューロマイシンを含み得る。本発明の抗体はまた、例えば、本発明の1を超える発現ベクターによってコードされ得、その各々は、各発現ベクターの少なくとも1つでトランスフェクトされている宿主細胞の選択を可能にするために、異なる選択マーカーを含み得る。例えば、本発明が配列番号17のポリヌクレオチドを含む場合の第1の発現ベクターはneoR遺伝子を含み得、第2の本発明の発現ベクターは、ブラスチシジンに対する耐性を付与するbsd遺伝子を含み得る。したがって、本発明の両方の発現ベクターを含む宿主細胞は、G418およびブラスチシジンに対する耐性を付与し、両方の抗生物質を含有する増殖培地中で選択され得る。一態様では、本発明による宿主細胞は、例えば、少なくとも1つ、2つまたはそれより多くの選択マーカーを含む、配列番号15および配列番号16のポリヌクレオチドのウイルス形質導入によって、宿主細胞ゲノムに安定に組み込まれた、上述した本発明のポリヌクレオチドを含み得る。例えば、一態様では、本発明による宿主細胞は、例えば、少なくとも1つ、2つの異なる選択マーカーとともに、エピソームとして配列番号15および配列番号16の本発明のポリヌクレオチドを含み得る。
【0106】
例えば、本発明による宿主細胞は、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞であり得る。例えば、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドまたは上述した本発明による発現ベクターを含む本発明による宿主細胞は、本発明によるベクターを含み得る任意のタイプの細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞、例えば植物、動物、真菌、もしくは藻類(例えば、海洋性珪藻(Phaeodactylum tricornutum)、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii))であり得、または原核細胞、例えば細菌もしくは原虫であり得る。宿主細胞は、培養細胞または初代細胞、すなわち生物、例えばヒトから直接単離されたものであり得る。宿主細胞は、例えば、接着細胞または懸濁細胞、すなわち懸濁状態で増殖する細胞であり得る。本発明による宿主細胞としては、例えば、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ピリモルファ(Hansenula polymorpha)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュバニオマイセス・ オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、クルベロマイセス・ ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)、または例えばSf9、Sf21、S2、Hi5、もしくはBTI-TN-5B1-4細胞、または例えば、DH5α大腸菌(E. coli)が挙げられる。好ましくは、本発明による宿主細胞は、HEK293、HEK293T、HEK293E、HEK293F、NS0、per.C6、MCF-7、HeLa、Cos-1、Cos-7、PC-12、3T3、Vero、vero-76、PC3、U87、SAOS-2、LNCAP、DU145、A431、A549、B35、H1299、HUVEC、Jurkat、MDA-MB-231、MDA-MB-468、MDA-MB-435、Caco-2、CHO、CHO-K1、CHO-B11、CHO-DG44、BHK、AGE1.HN、Namalwa、WI-38、MRC-5、HepG2、L-929、RAB-9、SIRC、RK13、11B11、1D3、2.4G2、A-10、B-35、C-6、F4/80、IEC-18、L2、MH1C1、NRK、NRK-49F、NRK-52E、RMC、CV-1、BT、MDBK、CPAE、MDCK.1、またはMDCK.2、D-17のうちの1つである。
【0107】
一実施形態によれば、本発明は、本発明の抗体、例えば、配列番号15(軽鎖)および配列番号16(重鎖)のアミノ酸配列を含む本発明の抗体、の製造における、上述した本発明の宿主細胞の使用を提供する。例えば、本発明の抗体の製造における本発明による宿主細胞の使用は、本発明の抗体の発現を可能にする適切な条件下で、配列番号15および/または配列番号16のポリヌクレオチド配列を含む、少なくとも1つの発現ベクターまたはポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの宿主細胞を培養することを含み得る。一例では、本発明の少なくとも1つの宿主細胞は、宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれた、ポリヌクレオチドの発現に必要とされる調節配列を含む配列番号17および配列番号18のポリヌクレオチドを含む。
【0108】
例えば、本発明の少なくとも1つの宿主細胞、例えば、少なくとも102、103、104、105、106、107、108、109個の細胞は、10%FBSを含むDMEM中、37℃にて、10%CO2雰囲気において、または例えば、その後の単離および精製を補助するために無血清培地中で、例えば、FreeStyle(商標)293発現培地もしくはOptiCHO(商標)培地中で増殖させることができる。例えば、本発明の少なくとも1つの宿主細胞が上述した昆虫細胞である場合、Graceの昆虫培地、express Five(登録商標)SFM(Life Technologies)、もしくはHigh Five(登録商標)培地(Life Technologies)を使用することができ、または本発明の少なくとも1つの宿主細胞が酵母細胞である場合、YNM培地、YPDブロス、もしくは例えば、PichiaPink(Life technologies)を使用することができる。例えば、適切な増殖条件は、本発明の少なくとも1つの宿主細胞を12~408時間、例えば、約12~約400時間、例えば、14時間、16時間、18時間、20時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間から、約120時間、144時間、168時間、192時間、216時間、240時間、264時間、288時間、312時間、336時間、360時間、384時間、408時間の間、増殖させることを含み得る。続いて、上述した本発明の抗体または抗原結合断片は、単離および精製され得る。例えば、本発明の抗体または抗原結合断片は、クロマトグラフィー、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、限外濾過、またはプロテインAセファロースを用いた精製、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (1997) 11.11.1-11.11.5に記載されているものによって精製および単離され得る。
【実施例】
【0109】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものである。それらは、本発明の主題または範囲をそれに限定することを意図しない。
【0110】
[実施例1]
抗体生成
PD-L1のKLH結合カルボキシ末端ペプチド(配列番号1、RLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET)に対して指向される本発明のモノクローナルウサギ抗体は、マウスモノクローナル抗体と同じモノクローナル抗体を作製するための同じ基本原理を用いて生成された。簡単には、本発明のウサギモノクローナル抗体の生成は、4段階の手順に従った:
1)ウサギの免疫化およびポリクローナル血清のスクリーニング。
2)ハイブリドーマ細胞を生成するための融合およびマルチクローンの上清のスクリーニング。
3)C.サブクローニングおよびサブクローンの上清のスクリーニング。
4)HEK-293細胞における組換え抗体のクローニングおよび産生。
【0111】
マルチクローン、サブクローンおよび組換え抗体の上清は、酵素結合免疫吸着検定法によって、配列番号1のアミノ酸配列を有するPD-L1抗原への結合についてスクリーニングされた(
図1)。最初のスクリーニングは、1つの抗体クローンMKP1A07310の同定をもたらし、次に、FFPE組織切片上のウェスタンブロッティングおよび免疫組織化学によりさらに特徴付けた。
【0112】
[実施例2]
ウェスタンブロッティングによる抗体の特徴付け
抗体クローンMKP1A07310は、細胞株A549、MDA-MB231、PD-L1ノックダウンMDA-MB231、およびヒトPD-L1でトランスフェクトされたHEK293(=HEK293_PDL1)細胞株の溶解物についてウェスタンブロッティングにより分析して、その特異性を評価した。Merck KGaA、Darmstadの細胞バンクからのA549およびMDA-MB 231細胞株を賦活化した。MDA-MB 231細胞におけるヒトPD-L1のノックダウンは、PD-L1に対するsiRNA(siGENOME SMARTpool、Dharmacon)を用いて、Merck,Darmstaで行われた。ポリクローナル抗体である抗CD274(Abcam、カタログ番号58810)をPD-L1(=CD274)の検出のための陽性対照抗体として用いた。一次ウサギ抗体は、Alexa Fluor結合したヤギ抗ウサギ抗体(Invitrogen、カタログ番号21076)を用いて検出した。ウェスタンブロットは、Odysseyスキャナー(LI-COR、USA)を用いてスキャンされた。
【0113】
ウェスタンブロッティングは、PD-L1をトランスフェクトされたHEK293、PD-L1を発現するMDA-MB231、MDA-MB231のsiRNA PDL1ノックダウン、およびPD-L1低細胞株A549の細胞溶解物について行われた。ウェスタンブロットは、PD-L1の特異的標識を示し、それはsiRNA PD-L1ノックダウンMDA-MB231において減少した(
図2参照)。PD-L1タンパク質は、MWが約40kDaである。高程度のグリコシル化のために、グリコシル化されたPD-L1のMWは約52kDaである。ポリクローナル陽性対照抗体(抗CD274、1:250に希釈)は、特異的な52kDaバンドに加えていくつかのバンドを示し、この抗体がPD-L1に対して低い選択性を有することを示している。ポリクローナル抗体と比較して、モノクローナル組換え抗体は非常に選択的である。
【0114】
[実施例3]
抗体クローニング
本発明のクローンMKP1A07310のハイブリドーマ細胞からのmRNAは、製造業者の推奨に従ってTurboCaptureキット(Qiagen:カタログ番号72232)を用いて単離し、オリゴ-dTプライマーを用いてcDNAに逆転写された。重鎖の可変領域(VH)は、独自のEpitomicsプライマーOYZ64-2およびOYZvh3を用いてPCR増幅された。全軽鎖(LC)は、独自のプライマーOYZ62およびOYZ71を用いてPCR増幅された。PCR断片のVH領域は、制限酵素HindIIIおよびKpnIを用いて消化された。LC PCR断片をHindIIIおよびNotIを用いて消化した。制限消化後、得られた断片は、Qiagen PCRクリーンアップキット(カタログ番号28016)を用いて精製され、得られた精製されたVHおよびLC断片は、対応する重鎖または軽鎖に独自のpTT発現ベクターに連結され、コンピテント大腸菌(E. coli)DH5α細胞(MC Lab、カタログ番号DA-100)に形質転換された。得られた細菌コロニーを選び出し、対応する制限酵素を用いて挿入物を確認した(予想サイズ:VHについては約440bp、LCについては740bp)。予想サイズの挿入物を有するプラスミドは、TT5特異的な配列決定プライマーを用いて配列決定された。配列確認後、HindIIIおよびNotIを用いて対応するベクターから全軽鎖および重鎖断片を切り出し、続いてQiagen PCRクリーンアップキットを用いて精製した。
【0115】
[実施例4]
抗体特異性の評価
本発明の抗体であるMKP1A07310および抗体MKP1B19610がヒトPD-L1に特異的に結合することを証明するために、MDA-MB231細胞を用いたsiRNA実験を行った。MDA-MB231細胞について、この細胞株が高いベースラインPD-L1発現を有することが示されている(例えば、Cancer Immunol Res. 2014 April;2(4): 361-370を参照されたい)。siRNAをトランスフェクトされたMDA-MB231細胞の免疫組織化学的染色は、試験された両方の抗体がPD-L1を特異的に認識し、それに結合することを示した(
図3参照):siRNA1またはsiRNA2のトランスフェクションでは、PD-L1に対する抗体染色は強く減少した(
図3参照、「PDL1_SP+」、「PDL1_SP」)。両抗体の結合特異性のこの最初の決定は、本発明の抗体MKP1A07310(例えば、0.2μg/mlの濃度で)について観察される同等の染色強度をもたらすためにはより高い抗体濃度(5μg/ml以上)が必要とされるため、MKP1B19610はそれほど感受性ではないことをすでに示した。
【0116】
免疫組織化学による本発明の抗体クローンMKP1A07310の特異性の評価について、公知のPD-L1タンパク質発現を有する陽性および陰性対照組織から作製された組織マイクロアレイ(TMA)を使用した。組織マイクロアレイの構築について、異なるPD-L1発現レベルを有するヒト正常組織および腫瘍組織を選択した。PD-L1の発現は、本発明の抗PD-L1抗体を用いて、ヒト臓器の凍結組織マイクロアレイ(BioChip、Indivumed GmbH)および凍結ヒト腫瘍上で以前に分析された。PD-L1陽性および陰性の正常ヒト組織のパラフィンブロックをProvitro GmbH(Germany)から購入した。高いまたは低いPD-L1発現を有する選択された患者から、非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍の対応するパラフィンブロックをIndivumed GmbH(Germany)から購入した。各パラフィンブロックから直径1.5mmの2つのパンチを取り出し、接着テープ上に直立にして載せ、流動パラフィン中に組み込んだ(例えば、
図7参照)。
【0117】
FFPE組織における免疫組織化学または組織/細胞株アレイ
3μmのFFPE組織の切片または組織/細胞マイクロアレイは、正に帯電したSuperFrost(登録商標)Plusスライド(Menzel-Glaeser、Braunschweig、Germany)に載せられた。免疫組織化学的染色手順は、切片の脱パラフィン処理から始まり、染色装置Discovery(商標)、またはDiscovery(登録商標)XT(Ventana Medical Systems,Inc.、Tucson、USA;下記の図を参照)を用いて行われた。脱パラフィン処理後、切片をTris-EDTA緩衝液pH8中でエピトープ賦活化のために加熱した。内因性ペルオキシダーゼを3%過酸化水素(OmniMap(商標)キットの一部、Ventana Medical Systems)中のインキュベーションによりブロックした。切片をPBSで希釈した抗体とともにインキュベートし、次に、二次抗体、OmniMapキットのHRP結合ポリマーとともに、16分間、37℃でインキュベートした。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)は3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)/H2O2反応を触媒して、可視化することができる不溶性の暗褐色の沈殿物を生成する。モノクローナルウサギIgG抗体を陰性対照として使用した。切片をヘマトキシリンで対比染色した。スライドを水道水で洗浄し、脱水し、恒久的な封入剤Entellan(登録商標)Neu(VWR、Germany)にガラス製のカバーガラスを付けて載せた。
【0118】
Discovery(商標)装置における免疫組織化学的染色手順
FFPE組織の免疫組織化学的染色のために、以下のステップに従って、以下のDiscovery(商標)プラットフォーム(Ventana Medical Systems,Inc)を使用した:カタログ番号750-200、750-800、カタログ番号F-DISXT-750-000。
【0119】
組織/プローブ:ヒト組織、インビトロでのがん細胞株、
保存:FFPE(4%パラホルムアルデヒドpH7、パラフィン包埋)
切片厚:FFPE組織の場合は3μm
1.切片の焼成および脱パラフィン処理
75℃で8分間のスライドの焼成
75℃で8分間のスライドの脱パラフィン処理
2.ブロッキング
内因性ペルオキシダーゼのブロッキングはプロテイナーゼ抗原賦活化前であって、Discovery染色装置における熱抗原賦活化後に行われる
37℃で3%H2O2による内因性ペルオキシダーゼのブロッキング
3.抗原賦活化用の切片の前処理
96℃で48分間、標準CC1(Tris EDTA緩衝液pH8)
4.一次抗体とのインキュベーション
一次抗体:PDL1(本発明の抗体MKP1A07310)
会社:Merck KGaA,Darmstadt
カタログ番号:MKP-1A-73-10
アイソタイプ:ウサギモノクローナル組換え
クローン:MKP1A07310
希釈または濃度:1~2μg/ml
37℃で32分間のインキュベーション
一次抗体の陰性対照:ウサギmAb IgGアイソタイプ対照、クローンDA1E(NEB、#3900)
5.二次抗体とのインキュベーション
二次抗体:OmniMap抗ウサギHRPの抗ウサギIgG
会社:Ventana
カタログ番号:760-4311
希釈:VMSIディスペンサー(不明)
37℃で16分間のインキュベート
6.使用した三次抗体または検出キットとのインキュベーション
抗体/キット:
OmniMap抗ウサギHRP(#760-4311、VMSI)、ChromoMap(#760-159、VMSI)
インキュベーション中、温度、およびChromoMap(DAB、赤銅色)の洗浄ステップは、Discovery装置によって設定される。
7.対比染色
37℃で8分間、ヘマトキシリンII(#790-2208、VMSI)
装置によるブルーイング
【0120】
洗浄ステップは図に含まれていない。脱パラフィン処理、抗原賦活化、スライドの洗浄のための試薬は、VMSI(Ventana Medical Systems,Inc.)からのものである。抗体をPBSで希釈する。
【0121】
画像分析
免疫組織化学的染色は、MiraxSCAN(Zeiss、Germany)を用いてスキャンされ、解像度x/yは1ピクセル=0.23×0.23μm2であった。MiraxScan装置は、スキャンの前に各スライドの明るさを調整する。画像は、MiraxViewerソフトウェアを用いて撮影された。スキャニングは、画像分析ソフトウェアVisiopharm Integrator System(VIS)を用いて分析された。生存組織領域は、明らかな壊死領域および結合組織を避けて輪郭が描かれた。
【0122】
存在する抗原の量を決定するために、陽性の褐色に染色された面積を生存組織面積の面積%として計算した。抗体染色(任意単位)は、
抗体染色(AU)=陽性面積(%)×(255-強度)/100の褐色面積
として算出され、これにより、陽性面積は、陽性面積(%)=100×[褐色面積/(褐色面積+青色面積)]として算出された。強度は、褐色面積の平均グレイ値として設定された(
図7A参照、最も右側の画像中の矢印は褐色細胞を示し、中央の画像中の矢印は褐色色素原のソフトウェアベースの検出を示し、右側画像は核および細胞質の青色染色の検出を示す)。
【0123】
[実施例5]
MKP1A07310およびMKP1B19610の実験内および実験間変動
本発明の抗体であるMKP1A07310および抗体MKP1B19610は、それらの結合特性を比較し、さらなる研究のための最適濃度を決定するために、70個の細胞株からがん細胞株アレイ上のそれぞれ2つの濃度において特徴付けられた。がん細胞株アレイCAX09_70は、抗体の連続的な結合範囲を示した。細胞株の約50%において、シグナルはゼロまたは非常に低かった。抗体の最も高い結合はHs746T細胞(Met増幅細胞株)を示した。抗体MKP1A07310は、その濃度を1~2μg/mlに増加させてもわずかにシグナル強度の増加を示しただけであり、これは1μg/mlが既に飽和濃度に近いことを示している。抗体MKP1B19610は5~10μg/mlのシグナルの実質的な増加を示した。抗体は10μg/mlを超える濃度で組織およびガラスに非特異的に結合する傾向があるため、より高い濃度で試験しなかった。70個の細胞株における抗体MKP1A07310およびMKP1B19610の結合は相関し、ピアソン係数r=0.95である。
【0124】
Discovery XT染色装置上の2つの抗体を用いる免疫組織化学的染色の実験内および実験間変動は、60個の細胞株CAX08_60からの細胞株アレイ上で実施された(
図6)。抗体MKP1A07310を1μg/mlの濃度で試験し、抗体MKP1B19610を10μg/mlの濃度で試験した。CAX08_60の細胞株では、MKP1A07310の染色はMKP19610と相関し、ピアソン係数はr=0.97であった。A549、PC-3またはU-87 MGのような中程度から低い全体的染色シグナルを示す細胞株では、高い染色を示す細胞が陰性細胞間に分散していた(
図9A:MKP1A07310;
図9B:MKP1B19610)。
【0125】
本発明の抗体であるMKP1A07310の実験間変動は低く、異なるスライド間で相関係数はr=0.99であった(
図5)。MKP1B19610はわずかに高い実験間変動を示し、相関係数は異なるスライド間で0.93~0.99の範囲であった。3つの異なる実験での実験間の変動は低く、MKP1A07310ではr=0.99、およびMKP1B19610ではr≧0.98であった。
【0126】
組換え抗体は、48の異なる異種移植片から組織マイクロアレイ上でさらに試験された(TMA_Xenos_12、
図8)。MKP1A07310による染色は、MKP1B19610と相関し、相関係数r=0.90であった。高発現異種移植片は、Hs746T、MDA-MB 231、NCI-H2009、およびH1975であった。陰性負の例はA2780およびColo205であった。
【0127】
[実施例6]
様々なIHCプラットフォームを用いたMKP1A07310およびMKP1B19610の比較
本研究の目的は、Dako(Dako GmbH、Germany)からの抗原検索のためにAutostainerLink48をPT Linkモジュールとともに用いて抗体の結合特性をDiscovery XT装置を使用した染色と比較することであった。パラフィン除去、抗原回収、スライド上での抗体の希釈、洗浄緩衝液、および検出システムのためにDakoまたはVentana Medical Systems,Inc.(VMSI)が使用する試薬は様々であり、抗体の「エピトープワールド」に影響を及ぼす可能性があった。
【0128】
基質
PD-L1の陽性および陰性対照組織からの組織マイクロアレイ、TMA_PDL1_11、ならびに59個のヒトがん細胞株および1個の昆虫細胞株からの細胞株マイクロアレイ、CAX08_60を試験マトリックスとして使用した。生成した抗体の選択にはTMA_PDL1_11を使用した。3μmのホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織の切片または組織/細胞マイクロアレイを、正に帯電したSuperFrost(登録商標)Plusスライド(Menzel-Glaser、Braunschweig、Germany)に載せた。
【0129】
使用した抗体:
一次抗体:本発明の抗体であるMKP1A07310(「’7310mAb」)およびMKP1B19610をPBSに希釈して使用した。MKP1A07310を1、2および5μg/mlの濃度で使用した。抗体MKP1B19610を2、5、および10μg/mlの濃度で使用した。
二次抗体
【0130】
【0131】
染色手順
抗原賦活化
抗原賦活化は、以下のようにして行った:Discovery XTについては、抗原賦活化は、「高pH」抗原賦活化条件(Tris-EDTA pH8)を用いて行われ、AutostainerLinkについては、「高pH」(Tris-EDTA緩衝液、pH9)抗原賦活化を用いて試験を開始した。抗体PD-L1(MKP1B19610)については、さらに「低pH」(クエン酸緩衝液、pH6.1)抗原賦活化を使用した。
【0132】
Discovery XT染色装置のための染色手順
切片の脱パラフィン処理から開始する免疫組織化学的染色手順は、染色装置Discovery(登録商標)XT(Ventana Medical Systems,Inc.(「VMSI」)Tucson、USA)を用いて行われた。脱パラフィン処理後、切片をTris-EDTA緩衝液pH8中、96℃で48分間エピトープ賦活化のために加熱した。内因性ペルオキシダーゼは、3%過酸化水素(OmniMap(商標)キットの一部、Ventana Medical Systems)中でのインキュベーションによりブロックした。切片をPBS希釈した抗体、次に、二次抗体、OmniMapキットのHRP結合ポリマー(Discovery)とともに37℃で16分間インキュベートした。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)/H2O2反応を触媒して、可視化することができる不溶性の暗褐色の沈殿物を生成する。切片をヘマトキシリンで対比染色した。本発明の抗PD-L1抗体を1、2および5μg/mlの濃度で使用した。抗体MKP1B19610を2、5、および10μg/mlで使用した。両方の抗体について、OmniMap抗ウサギHRP(#760-4311、VMSI)およびChromoMap(#760-159)を用いて検出を行った。
【0133】
AutostainerLink48のための染色手順
切片の脱パラフィン処理および抗原賦活化は、PTリンク前処理モジュール(Dako GmbH、Germany)で行われた。スライドは、Tris-EDTA緩衝液pH9(高pH)またはクエン酸緩衝液pH6.1(低pH)中、97℃で20分間のエピトープ賦活化のための加熱の間に脱パラフィン処理された。熱抗原賦活化後、スライドをAutostainerLink48装置に移した。内因性ペルオキシダーゼは、3%過酸化水素中でのインキュベーションによってブロックされた。切片をPBS希釈した抗体とともに、次に、二次抗体、EnVision FLEXのHRP結合ポリマー(SM802、Dako)とともに30分間、室温でインキュベートした。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)/H2O2反応を触媒して、可視化することができる不溶性の暗褐色の沈殿物を生成する。切片をヘマトキシリンで対比染色した。続いて、スライドを水道水で洗浄し、脱水し、恒久的な封入媒体Entellan(登録商標)Neu(VWR、Germany)にガラス製のカバーガラスを付けて載せた。MKP1A07310を0.5、1および2μg/mlの濃度で、MKP1B19610を0.2、0.5、1、2および5μg/mlの濃度で使用した。
【0134】
様々な染色プラットフォームにおけるMKP1A07310およびMKP1B19610の比較
AutostainerLinkを用いると、抗PD-L1抗体であるMKP1B19610および本発明の抗PD-L1抗体であるMKP1A07310で得られたIHC結果の相関は低く、r<0.71であった(
図11および14)。例えば、NCI-H2009およびLoxのように、特定の細胞株では染色強度の相関は依然として存在したが(
図11参照)、PD-L1発現について陰性対照としての役割を果たすA2780細胞では、抗PD-L1抗体であるMKP1B19610はPD-L1発現を示し、一方、同じ細胞株は、本発明の抗体を用いると、PD-L1発現について陰性である(
図11参照)。
【0135】
Discovery XTシステム上の本発明の抗PD-L1抗体(MKP1A07310)の染色特性とAutostainerLinkを用いたその特性の比較は、使用されたがん細胞株におけるIHC染色強度の高い相関が示され、相関係数は0.5μg/mlでr=0.96であった(
図13)。本データに基づいて、脱パラフィン処理、抗原賦活化および染色のためのAutostainerLinkとともに用いるためにDakoによるガイドラインに従って使用された試薬は、例えば、IHC染色シグナルの増加を除いて、VentanaのDiscovery XTプラットフォームおよびVentana試薬を用いたIHC染色の結果と比較した場合、本発明の抗PD-L1抗体(MKP1A07310)について異常な結合部位をマスクを外すことによって、IHC染色パターンを変化させなかった。
【0136】
Discovery XTシステム上のヒトPD-L1の細胞外エピトープに対する抗PD-L1抗体MKP1B19610の染色特性を、AutostainerLink(Dako)を用いたその特性と比較すると、がん細胞株において、IHC染色強度の相関がはるかに低いことが明らかになった。相関係数はr<0.67であった(
図12)。「低pH」抗原賦活化を使用すると、相関は、IHC染色条件「高pH」よりもさらに低かった(例えば、
図12B、「低pH」、5μg/mlのMKP1B19610の抗体濃度でr=0.43、および1μg/mlのMKP1B19610の抗体濃度でr=0.66である)。評価された多数の細胞株におけるIHC染色強度の相関は依然として存在したが、評価されたDiscovery XTシステムで陰性である細胞群は、A2780に示されているようにAutostainerLinkを用いると、PD-L1発現について陽性であった(例えば、
図11参照)。
【0137】
結論として、Dakoからの試薬とともにAutostainerLinkプラットフォームを用いると、PD-L1の細胞質ドメインに対する本発明の抗体(MKP1A07310)は、Ventana Medical SystemsからのDiscovery XT染色プラットフォームと同じである、55FFPEがん細胞株における結合特性を示した。対照的に、細胞外ドメインに対して生成された抗体MKP1B19610のさらなる結合部位は、Discovery XTの代わりにAutostainerLinkを用いてマスクを外された。したがって、本発明の抗体は、驚くべきことに、広く使用されている市販のIHCプラットフォーム、AutostainerLinkプラットフォーム(DAKO)、ならびにVentana Medical SystemsからのDiscovery XT染色プラットフォームの両方で使用することができる。
【0138】
さらに、
図5に示されるように、本発明の抗体を用いて得られた染色結果の実験間変動は、r=0.99の相関効率によって示されるように驚くほど低く、そのため、IHC染色、および本明細書に開示されるFFPE腫瘍組織におけるPD-L1発現の得られたスコアリングは、異なる染色実験間で同等である。したがって、本発明の抗体は、一般的に使用される2つのIHCプラットフォーム(例えば、Discovery XT(登録商標)System、VentanaおよびAutostainerLink、Dako)上で、病理学において日常的に使用されるFFPE腫瘍組織試料(例えば、生検由来)におけるPD-L1発現を確実に検出することができる抗PD-L1抗体の満たされていない必要性を満たす。
また、本発明は以下を提供する。
[1]
配列番号1のアミノ酸配列に含まれるエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8の少なくとも3つのアミノ酸配列を含み、前記抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14の少なくとも3つのアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合断片。
[2]
前記抗原結合断片がFabである、[1]に記載の抗原結合断片。
[3]
前記抗原結合断片が、F(ab’)
2
である、[1]に記載の抗原結合断片。
[4]
前記抗原結合断片が、Fab’である、[1]に記載の抗原結合断片。
[5]
前記抗原結合断片が、scFvである、[1]に記載の抗原結合断片。
[6]
前記抗原結合断片が、ジscFvである、[1]に記載の抗原結合断片。
[7]
前記抗体が、モノクローナル抗体である、[1]に記載の抗体。
[8]
前記モノクローナル抗体が、IgG型モノクローナル抗体である、[7]に記載の抗体。
[9]
前記抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8のすべてを含む、[2]~[8]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[10]
前記抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14のすべてを含む、[2]~[9]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[11]
前記抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号110のアミノ酸配列を含み、前記抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号111のアミノ酸配列を含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[12]
前記抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記抗体の重鎖が、配列番号16のアミノ酸配列を含む、[11]に記載の抗体。
[13]
前記抗体の軽鎖が、配列番号114のアミノ酸配列を含み、前記抗体の重鎖が、配列番号115のアミノ酸配列を含む、[11]に記載の抗体。
[14]
前記抗体が、ウサギ抗体である、[13]に記載の抗体。
[15]
前記抗体が、ウサギ由来の抗体である、[13]に記載の抗体。
[16]
前記抗体またはその抗原結合断片が、検出可能な標識にさらに結合されている、[1]~[15]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[17]
前記検出可能な標識が、酵素である、[16]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[18]
前記検出可能な標識が、フルオロフォアである、[16]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[19]
前記検出可能な標識が、放射性同位体である、[16]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[20]
試料中の配列番号1に含まれるエピトープの存在または発現の検出に使用するための、[1]~[19]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[21]
前記試料が、生物学的試料である、[20]に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
[22]
前記生物学的試料が、組織試料である、[21]に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
[23]
前記試料が、固定された組織試料である、[21]に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
[24]
前記試料が、ホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織である、[21]に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
[25]
前記組織試料が、腫瘍組織に由来する、[20]~[24]のいずれか一項に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
[26]
前記検出が、フローサイトメトリーによって行われる、[20]~[25]のいずれか一項に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
[27]
前記検出が、ELISAによって行われる、[20]~[25]のいずれか一項に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
[28]
前記検出が、ウェスタンブロッティングによって行われる、[20]~[25]のいずれか一項に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
[29]
前記検出が、免疫組織化学(IHC)によって行われる、[20]~[25]のいずれか一項に記載の使用のための抗体またはその抗原結合断片。
[30]
試料中のヒトPD-L1または配列番号1のアミノ酸配列を含むその任意の断片の存在または発現を検出する方法であって、前記試料を[1]~[19]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片と接触させるステップ、および結合した抗体またはその抗原結合断片の存在を検出するステップを含む方法。
[31]
前記試料が、生物学的試料である、[30]に記載の方法。
[32]
前記生物学的試料が、組織試料である、[31]に記載の方法。
[33]
前記生物学的試料が、固定された組織試料である、[31]に記載の方法。
[34]
前記固定された組織試料が、ホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)組織試料である、[33]に記載の方法。
[35]
前記固定された組織試料が、ホルムアルデヒド固定されたパラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織試料である、[33]に記載の方法。
[36]
前記試料が、がんを有するまたはがんのリスクがある対象に由来する、[30]~[35]のいずれか一項に記載の方法。
[37]
前記試料が、T細胞機能不全を有する対象に由来する、[30]~[35]のいずれか一項に記載の方法。
[38]
前記試料が、急性または慢性感染症を有する対象に由来する、[30]~[35]のいずれか一項に記載の方法。
[39]
前記試料が、腫瘍免疫のリスクがあるかまたはそれを示す対象に由来する、[30]~[35]のいずれか一項に記載の方法。
[40]
[30]~[35]のいずれか一項に記載の方法における[1]~[18]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
[41]
[1]~[15]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド。
[42]
[41]に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[43]
[11]~[15]のいずれか一項に記載の抗体の製造における[42]に記載の発現ベクターの使用であって、前記抗体が、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を含む、発現ベクターの使用。
[44]
[41]に記載の少なくとも1つの発現ベクターを含む宿主細胞。
[45]
[12]に記載の抗体の製造における[43]に記載の宿主細胞の使用。
[46]
患者におけるがんを治療する方法であって、
(i)試料中の[30]~[35]のいずれか一項に記載のヒトPD-L1の存在または発現を検出するステップ、および
(ii)(i)からの前記PD-L1発現の結果を参照試料と比較するステップ、および
(iii)ステップ(i)で検出された試料中の前記PD-L1発現が前記参照試料と比較して増加している場合、免疫チェックポイント阻害剤を前記患者に投与するステップ
を含む方法。
[47]
前記参照試料が、がんに罹患していない健康な対象に由来するまたはそれから得られる、[46]に記載の方法。
[48]
前記患者に投与される工程(iii)の前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体である、[46]または[47]に記載の方法。
[49]
前記免疫チェックポイント阻害剤が、約5mg/kg体重から約30mg/kg体重の用量で投与される、[46]~[48]のいずれか一項に記載の方法。
[50]
前記免疫チェックポイント阻害剤が、毎週500~800mg、または2週間毎に900~1600mg、または3週間毎に1250~2400mgの固定投薬レジメンで投与される、[45]~[47]のいずれか一項に記載の方法。
【配列表】