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  • 特許-石炭灰の改質装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】石炭灰の改質装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/14 20060101AFI20240723BHJP
   F27B 7/36 20060101ALI20240723BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F27B7/14
F27B7/36
F27D3/16 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020061823
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162189
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 牧生
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 智彦
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-083333(JP,A)
【文献】登録実用新案第3095138(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00- 5/00
F27B 5/00- 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰を加熱処理して改質する装置であって、
加熱装置、石炭灰投入手段、ガス吹込手段及び分散手段を備え、
前記加熱装置は、炉を有しており、かつ、当該炉の外表面を加熱するものであり、
前記石炭灰投入手段は、前記炉の内部に前記石炭灰を投入するものであり、
前記ガス吹込手段は、前記炉の内部に助燃空気を吹き込むものであり、
前記炉は、当該炉の長手軸を中心に回転する回転炉であり、
前記分散手段は、前記回転炉(4a)の内表面に取り付けられて前記回転部(4a)と共に回転する複数本のガス噴出管(5c)を有しており、
前記複数本のガス噴出管(5c)の外形形状は筒状とされており、
前記複数本のガス噴出管(5c)は、前記ガス噴出管(5c)を横断面視した状態において、前記回転炉(4a)の内側方向に突出するように配置されており、
前記複数本のガス噴出管(5c)どうしの間には、前記回転炉の内部に投入された前記石炭灰を、前記回転炉の回転に伴って一時的に収容可能な間隔が形成されており、
前記複数本のガス噴出管(5c)には、それぞれの前記ガス噴出管(5c)の内部に吹き込まれた分散ガス(G3又はG4)を前記回転炉の内部に噴出するための孔部(h1又はh2)が形成されており、
前記分散手段は、前記回転炉の内部における前記石炭灰の下方から、前記複数本のガス噴出管(5c)の上方に向けて前記石炭灰に前記分散ガスを噴出でき、かつ、前記間隔に収容された前記石炭灰を前記回転炉の回転に伴って落下させることができ、これにより、前記回転炉の内部において前記石炭灰を分散させるようになっていることを特徴とする石炭灰の改質装置。
【請求項2】
前記複数本のガス噴出管(5c)は、前記炉の内部における前記石炭灰の搬送方向上流側においては、前記分散ガスとして第1分散ガスを噴出し、前記炉の内部における前記石炭灰の搬送方向下流側においては、前記分散ガスとして第2分散ガスを噴出し、
前記第2分散ガスの流は、前記第1分散ガスの流に比較して小さいことを特徴とする請求項1に記載の石炭灰の改質装置。
【請求項3】
前記複数本のガス噴出管(5c)に形成された前記孔部は、前記ガス噴出管(5c)ごとに、前記石炭灰の搬送方向上流側に形成された第1孔部(h1)と、前記石炭灰の搬送方向下流側に形成された第2孔部(h2)とを有しており、前記第1分散ガスは前記第1孔部から噴出し、前記第2分散ガスは前記第2孔部から噴出する構成となっている
ことを特徴とする請求項2に記載の石炭灰の改質装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰を改質する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭灰をコンクリート用混和材として利用する場合、この石炭灰に多くの未燃カーボンが含まれていると、コンクリートの製造に必要なAE剤の量が多くなるおそれがあり、さらには、製造したコンクリートの表面に黒斑が生じるおそれがある。このため、石炭灰をコンクリート用混和材として利用する場合、予め石炭灰を改質して石炭灰の未燃カーボン含有率を低下させておき、その後で石炭灰をコンクリート用混和材としてセメント等と混合する必要がある。
【0003】
石炭灰の未燃カーボン含有率を低下させる方法としては、石炭灰を加熱処理して石炭灰中の未燃カーボンを燃焼させる方法が挙げられる。下記特許文献1には、外熱式ロータリーキルンの内部にフライアッシュ(石炭灰の一種)と燃焼用ガス(助燃空気)とを供給し、外熱式ロータリーキルンの内部において、燃焼用ガス(助燃空気)によりフライアッシュを加熱処理してフライアッシュ中の未燃カーボンを燃焼させることが記載されている。
【0004】
しかし、下記特許文献1に記載の技術は、外熱式ロータリーキルンにおいてフライアッシュ中の未燃カーボンを効率よく燃焼させるために、外熱式ロータリーキルンに多量の燃料を供給しなければならず、フライアッシュの加熱処理に多くのコストを要するという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-29942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、石炭灰に含まれる未燃カーボンを少量の燃焼により低コストで効率よく燃焼させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一項目は、石炭灰を加熱処理して改質する装置に係るものである。この装置は、加熱装置、石炭灰投入手段、ガス吹込手段及び分散手段を備える。前記加熱装置は、炉を有しており、かつ、当該炉の外表面を加熱するものである。前記石炭灰投入手段は、前記炉の内部に前記石炭灰を投入するものである。前記ガス吹込手段は、前記炉の内部に助燃空気を吹き込むものである。前記分散手段は、前記炉の内部における前記石炭灰の下方から、当該分散手段の上方に向けて前記石炭灰に分散ガスを噴出することにより、前記炉の内部において前記石炭灰を分散させる。
【0008】
上記第一項目によれば、加熱されている石炭灰の分散を分散ガスにより促進することができる。これにより、石炭灰を偏りなく高温の助燃空気と接触させて加熱することができる。さらには、加熱されている石炭灰の搬送をも分散ガスにより促進することができる。これにより、石炭灰に対する長時間の過剰な加熱を抑制することができる。よって、石炭灰に含まれる未燃カーボンを少量の燃料により低コストで効率よく燃焼させることができる。
【0009】
本発明の第二項目は、上記第一項目において次の内容を備えるものである。すなわち、前記分散手段は、前記炉の内部における前記石炭灰の搬送方向上流側においては、前記分散ガスとして第1分散ガスを噴出し、前記炉の内部における前記石炭灰の搬送方向下流側においては、前記分散ガスとして第2分散ガスを噴出する。前記第2分散ガスの流量は、前記第1分散ガスの流量に比較して少ない。
【0010】
上記第二項目によれば、石炭灰の搬送方向上流側においては、未燃カーボンを多く含む石炭灰(改質されていない石炭灰)が多いため、第1分散ガスによって積極的に石炭灰を分散させることにより、石炭灰に含まれる未燃カーボンを効率よく燃焼させる。そして、石炭灰の搬送方向下流側においては、未燃カーボンの燃焼が進んで未燃カーボンをあまり含まない石炭灰(ある程度改質された石炭灰)が多いため、第2分散ガスによって石炭灰が過度に飛散しない程度に石炭灰を分散させることにより、石炭灰に残留している少量の未燃カーボンを燃焼させ、その上で、改質された石炭灰を効率よく回収する。よって、石炭灰に含まれる未燃カーボンを効率よく燃焼させることができ、かつ、改質された石炭灰を効率よく回収することができる。
【0011】
本発明の第三項目は、上記第一項目又は上記第二項目において次の内容を含むものである。前記炉は、当該炉の長手軸を中心に回転する回転炉である。前記分散手段は、前記回転炉に取り付けられている。前記分散手段は、前記回転炉の回転に伴って前記分散ガスの噴出を一時的に停止することにより、前記回転炉の内部における前記石炭灰の上方からは前記分散ガスを噴出せず、前記回転炉の内部における前記石炭灰の下方から前記分散ガスを噴出する。
【0012】
上記第三項目によれば、分散手段による分散ガスの噴出位置が回転炉の回転によって変化しても、分散ガスは回転炉の内部における石炭灰の上方からは噴出されずに下方から噴出されるため、回転炉の内部における石炭灰を分散ガスによって安定して分散させるとともに搬送することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、石炭灰に含まれる未燃カーボンを少量の燃料により低コストで効率よく燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る石炭灰の改質装置を示す概略図である。
図2図1における分散手段を拡大して示す側面図である。
図3図1における石炭灰の改質装置を図1のA-A線に沿って切断して概略的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係る石炭灰の改質装置における構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る石炭灰の改質装置を示す概略図である。図1に示すように、石炭灰の改質装置1は、石炭灰A1を加熱処理して改質する装置である。この改質装置1は、スクリューコンベア2(石炭灰投入手段)、ガス吹込管3(ガス吹込手段)、加熱装置4及び分散手段5を備えている。
【0016】
加熱装置4は、回転炉4aを有している。スクリューコンベア2は、回転炉4aの内部に石炭灰A1を投入するものである。ガス吹込管3は、回転炉4aの内部に助燃空気G1を燃料(図示せず)とともに吹き込むものである。スクリューコンベア2及びガス吹込管3は、回転炉4aにおける石炭灰搬送方向D1(回転炉4aの軸方向、助燃空気G1の吹込方向に平行な方向)の上流側端部に接続されている。
【0017】
加熱装置4は、回転炉4a及び排出部4bを備えている。回転炉4aは、回転炉4aの長手軸(後述する図3に示す回転軸O)を中心に回転するものである。排出部4bは、回転炉4aにおける石炭灰搬送方向D1の下流側端部に設けられている。加熱装置4は、熱媒体(図示せず)を回転炉4aの外表面に接触させて(当該熱媒体により当該外表面を加熱して)回転炉4aの内部を加熱する。回転炉4aは、円筒状に形成されて水平方向に対して傾斜するように配置された外熱式ロータリーキルンである。これにより、回転炉4aの内部底面は、水平方向に対して0.1°(deg.)以上10°(deg.)以下の勾配(傾斜)を有しており、この内部底面に沿って石炭灰A1が石炭灰搬送方向D1に滑り落ちるようになっている。
【0018】
なお、回転炉4aにおける石炭灰搬送方向D1の上流側端部には固定面sが形成されている。固定面sは回転炉4aにおける回転部(回転炉4aにおいて回転する部分であって固定面s以外の箇所)に対して相対移動可能となっており、この回転部が回転しても固定面sは回転することなく固定されている。この回転部と固定面sとの間はシール構造となっているため、この回転部と固定面sとの間をガス(図示せず)が通過することはない。
【0019】
加熱装置4は、回転炉4aの内部において、石炭灰A1を石炭灰搬送方向D1に搬送しながら高温の助燃空気G1と接触させて加熱する。加熱装置4は、回転炉4aを回転炉4aの回転軸(図3に示す回転軸O)周りに回転させることにより、回転炉4aの内部における石炭灰A1を撹拌しながら加熱する。
【0020】
このようにして、加熱装置4は、回転炉4aの内部において、石炭灰A1を回転炉4aの内部底面における勾配により搬送しながら高温の助燃空気G1と接触させて加熱することにより、石炭灰A1に含まれる未燃カーボンを燃焼させて改質灰A2を製造する。改質灰A2の未燃カーボン含有率は、石炭灰A1の未燃カーボン含有率よりも低い。回転炉4aの内部においては、石炭灰A1に含まれる未燃カーボンの燃焼により炭酸ガス(二酸化炭素、一酸化炭素など)が発生する。
【0021】
加熱装置4は、回転炉4aの内部から排出部4bの内部に向けて改質灰A2と排ガスG2とを排出する。排出部4bの上部にはガス排出口(図示せず)が設けられており、排出部4bの下部には灰分排出口(図示せず)が設けられている。排ガスG2は、加熱装置4の外部に設けられる誘引ファン(図示せず)に吸引されることにより、排出部4bの内部から上記ガス排出口を通過して加熱装置4の外部へ排出される。一方、改質灰A2は、排出部4bの内部において落下することにより、排出部4bの内部から上記灰分排出口を通過して加熱装置4の外部へ排出される。このように、排出部4bの内部においては、改質灰A2と排ガスG2とが互いに分離して各々排出される。
【0022】
図1に示すように、分散手段5は、送風機5a、分岐管5b及び複数のガス噴出管5cを備えている。分岐管5bは、回転炉4aにおける石炭灰搬送方向D1の下流側端部に設けられている。送風機5aは、排出部4bの内部に位置して分岐管5bの内部に設けられている。各々のガス噴出管5cは、円筒状に形成されている。各々のガス噴出管5cにおける一端(石炭灰搬送方向D1の下流側端部)は分岐管5bに接続されている。各々のガス噴出管5cは、分岐管5bとの連結部Lから石炭灰搬送方向D1の上流側に延びるようにして、回転炉4aの内表面に取り付けられている。
【0023】
図1に示すように、各々のガス噴出管5cには、複数の第1孔部h1及び複数の第2孔部h2が石炭灰搬送方向D1に沿って形成されている。複数の第1孔部h1は石炭灰搬送方向D1の上流側に設けられており、複数の第2孔部h2は石炭灰搬送方向D1の下流側に設けられている。石炭灰搬送方向D1において、複数の第1孔部h1は互いに間隔を設けて直列に配置されており、複数の第2孔部h2も互いに間隔を設けて直列に配置されている。
【0024】
図2は、図1における分散手段5を拡大して示す側面図である。具体的には、図2は、図1に示す石炭灰搬送方向D1の下流側から上流側に向かって分散手段5を見た図である。図2に示すように、分岐管5bは、一の主管5mと複数の枝管5sとにより構成されている。主管5m及び枝管5sは、共に円筒状に形成されている。主管5mの内部には送風機5aが設けられている。各々の枝管5sは、主管5mから主管5mの径方向外側に延びるように設けられている。各々の枝管5sは、主管5mから互いに異なる方向に延びるように設けられている。各々の枝管5sは、対応するガス噴出管5cにそれぞれ接続されている。図2に示すように、各々の枝管5sにおける間には、回転炉4aの周方向(回転炉4aの回転方向D2)に沿って配列された間隔Cがそれぞれ設けられている。各々のガス噴出管5cは、回転炉4aの周方向(回転炉4aの回転方向D2)における間隔を互いに設けるようにして配置されている。
【0025】
主管5mの内部は、図1に示す排出部4bの内部において主管5mの外部(分散手段5の外部)と連通しており、かつ、各々の枝管5sの内部と連通している。各々の枝管5sの内部は、対応するガス噴出管5cの内部とそれぞれ連通している。各々のガス噴出管5cの内部は、回転炉4aの内部において、各々のガス噴出管5cに形成されている第1孔部h1及び第2孔部h2を介してガス噴出管5cの外部(分散手段5の外部)と連通している。
【0026】
図1及び図2に示すように、高温空気Hは、排出部4bの内部において主管5mの外部(分散手段5の外部)から送風機5aによって主管5mの内部に吹き込まれ、主管5mの内部から枝管5sの内部を通過してガス噴出管5cの内部にまで供給される。さらに、高温空気Hは、回転炉4aの内部において、ガス噴出管5cの第1孔部h1から第1分散ガスG3としてガス噴出管5cの外部(分散手段5の外部)に噴出され、ガス噴出管5cの第2孔部h2から第2分散ガスG4としてガス噴出管5cの外部(分散手段5の外部)に噴出される。第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4は、ガス噴出管5cから回転炉4aの回転軸(図3に示す回転軸O)に向かって、すなわち、回転炉4aの径方向外側から径方向内側に向かって噴出される。
【0027】
分散手段5は、主管5mと一部の枝管5sとの連結部Lにおける流路を適宜なタイミングで塞ぐ切替部材(図示せず)を有している。この切替部材は、「回転炉4aの回転に伴って回転炉4aの内部底面に位置しているガス噴出管5c」に接続されている枝管5sには高温空気Hが流れることを許容し、「回転炉4aの回転に伴って回転炉4aの内部底面に位置しなくなったガス噴出管5c」に接続されている枝管5sには高温空気Hが流れることを防止する。これにより、高温空気Hは、回転炉4aの回転に伴って各々のガス噴出管5cの位置が変わったとしても、回転炉4aの内部底面に位置しているガス噴出管5cにのみ流れることになる。
【0028】
このように、分散手段5は、回転炉4aの内部(加熱装置4の内部)における石炭灰A1の下方から、ガス噴出管5cの上方(分散手段5の上方)に向けて回転炉4aの内部における石炭灰A1に分散ガス(第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4)を噴出する。そして、分散手段5は、「回転炉4aの回転に伴って回転炉4aの内部底面に位置しなくなったガス噴出管5c」からの分散ガス(第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4)の噴出を一時的に停止させることにより、回転炉4aの内部における石炭灰A1の上方からは上記分散ガスを噴出しないようにする。これにより、分散手段5は、回転炉4aの内部において石炭灰A1を効果的に分散させて高温の助燃空気G1に積極的に接触させる。
【0029】
各々のガス噴出管5cにおいて第2孔部h2は第1孔部h1に比較して少なく形成されているため、第2分散ガスG4の流量は第1分散ガスG3の流量に比較して少なくなっている。また、一個当たりの第2孔部h2の面積は一個当たりの第1孔部h1の面積に比較して大きいため、第2分散ガスG4の流速は第1分散ガスG3の流速に比較して遅くなっている。分散手段5は、このような第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4の特性に基づき、石炭灰搬送方向D1の上流側(石炭灰A1の未燃カーボン含有率が高く積極的な分散が必要な箇所)においては第1分散ガスG3を噴出し、かつ、石炭灰搬送方向D1の下流側(石炭灰A1の未燃カーボン含有率が低く積極的な分散が必要ではない箇所)においては第2分散ガスG4を噴出する。
【0030】
各々のガス噴出管5cは、回転炉4aの内表面(符号なし)に取り付けられているため、回転炉4aの回転に伴って回転炉4aの回転軸(図3に示す回転軸O)周りに回転する。これにより、各々のガス噴出管5cは、回転炉4aの内部における石炭灰A1を撹拌するリフターとしても機能する。
【0031】
次に、図1及び図2に示す石炭灰の改質装置1における動作について説明する。
【0032】
図1に示すように、回転炉4aの外表面を熱媒体(図示せず)によって加熱することにより、回転炉4aの内部を600℃以上850℃以下に加熱する。石炭灰A1をスクリューコンベア2から回転炉4aの内部に投入し、助燃空気G1をガス吹込管3から回転炉4aの内部に吹き込む。回転炉4aを回転炉4aの回転軸(図3に示す回転軸O)周りに回転させる。
【0033】
図3は、図1における石炭灰の改質装置1を図1のA-A線に沿って切断して概略的に示す拡大断面図である。図3においては、回転炉4aの内部状態を簡略化して示している。図3は、回転炉4aが図1に示す状態からわずかに回転方向D2に回転した状態を示している。
【0034】
図3に示すように、分散手段5は、回転炉4aの回転に伴って次の(1)及び「(2)又は(3)」の条件を満たす位置にあるガス噴出管5c(回転炉4aの内部底面に位置するガス噴出管5c)からのみ、第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4を噴出するものである。(1)回転軸Oの下方。(2)回転方向D2において、「回転軸Oを通過する鉛直方向」と「当該鉛直方向から回転方向D2の反対側に向かって角度θ1だけ傾斜した方向」との間。(3)回転方向D2において、「回転軸Oを通過する鉛直方向」と「当該鉛直方向から回転方向D2に向かって角度θ2だけ傾斜した方向」との間。
【0035】
ここで、回転炉4aの内部においては、回転炉4aの内部底面に沿って滑り落ちる石炭灰A1に対して回転炉4aの回転により遠心力が作用するため、石炭灰A1の流量は、上記(1)及び(2)の条件を満たす位置よりも、上記(1)及び(3)の条件を満たす位置において多くなる。よって、上記θ2の値を上記θ1の値に比較して大きく設定する。なお、石炭灰A1が回転炉4aの内部において回転炉4aの容積の5%以上15%以下を占めている場合、上記θ1の値を40°以上45°以下とし、かつ、上記θ2の値を45°以上50°以下とすることが好ましい。
【0036】
分散手段5の上記切替部材は、「上記条件を満たさない位置にあるガス噴出管5cに接続された枝管5s」と主管5mとの連結部Lにおける内部流路を塞ぐ。これにより、分散手段5において高温空気Hは次のように流れる。すなわち、図1及び図2に示すように、高温空気Hは、排出部4bの内部において、分岐管5bの外部から送風機5aにより主管5mの内部に吹き込まれる。さらに、高温空気Hは、主管5mの内部から「上記条件を満たす位置にあるガス噴出管5cに接続された枝管5s」の内部を通過して「上記条件を満たす位置にあるガス噴出管5c」の内部に供給される。そして、このガス噴出管5cの第1孔部h1から高温空気Hを第1分散ガスG3として噴出し、このガス噴出管5cの第2孔部h2から高温空気Hを第2分散ガスG4として噴出する。
【0037】
このようにして、分散手段5は、回転炉4aの内部における石炭灰A1の上方からは石炭灰A1に第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4を噴出しない。そして、分散手段5は、回転炉4aの内部における石炭灰A1の下方から、ガス噴出管5c(分散手段5)の上方に向けて石炭灰A1に対して第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4を噴出する。
【0038】
分散手段5による分散ガス(第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4)の噴出流量を、回転炉4aへ供給されるガスの合計流量(上記分散ガスと助燃空気G1との合計流量)の20%以上80%以下とし、さらに好ましくは、この合計流量の40%以上80%以下とする。
【0039】
回転炉4aの内部においては、石炭灰A1を回転炉4aの回転により撹拌し、また、回転炉4aの回転に伴うガス噴出管5cのかき上げ効果によっても石炭灰A1を撹拌し、さらには、石炭灰A1を第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4によって分散させる。これらにより、回転炉4aの内部において、石炭灰A1に含まれる未燃カーボンを効率よく燃焼させて改質灰A2を製造する。さらに、改質灰A2及び排ガスG2を、図2に示す間隔Cを通過させて回転炉4aの内部から排出部4bの内部に排出する。なお、排ガスG2は、石炭灰A1に含まれる未燃カーボンの燃焼によって生じた炭酸ガス(図示せず)、高温の助燃空気G1、第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4の混合ガスである。
【0040】
さらに、誘引ファン(図示せず)により排ガスG2を排出部4bの外部へ吸引し、かつ、改質灰A2を排出部4bの内部において落下させて排出部4bの外部へ排出する。改質灰A2をコンクリート用混和材等のセメント混合材として利用する。
【0041】
以上のように、上記実施形態によれば、加熱されている石炭灰A1の分散を第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4により促進することができる。これにより、石炭灰A1を偏りなく高温の助燃空気G1と接触させて加熱することができる。さらには、加熱されている石炭灰A1の搬送をも第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4により促進することができる。これにより、石炭灰A1に対する長時間の過剰な加熱を抑制することができる。よって、石炭灰A1に含まれる未燃カーボンを少量の燃料により低コストで効率よく燃焼させることができる。
【0042】
また、上記実施形態によれば、石炭灰搬送方向D1の上流側においては、未燃カーボンを多く含む石炭灰A1(改質されていない石炭灰A1)が多いため、第1分散ガスG3によって積極的に石炭灰A1を分散させることにより、石炭灰A1に含まれる未燃カーボンを効率よく燃焼させる。そして、石炭灰搬送方向D1の下流側においては、未燃カーボンの燃焼が進んで未燃カーボンをあまり含まない石炭灰(ある程度改質された石炭灰)が多いため、第2分散ガスG4によって石炭灰A1が過度に飛散しない程度に石炭灰A1を分散させることにより、石炭灰A1に残留している少量の未燃カーボンを燃焼させ、その上で、改質された石炭灰(改質灰A2)を効率よく回収する。よって、石炭灰A1に含まれる未燃カーボンを効率よく燃焼させることができ、かつ、改質された石炭灰(改質灰A2)を効率よく回収することができる。
【0043】
さらに、上記実施形態によれば、分散手段5による分散ガス(第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4)の噴出位置が回転炉4aの回転によって変化しても、上記分散ガスは回転炉4aの内部における石炭灰A1の上方からは噴出されずに下方から噴出されるため、回転炉4aの内部における石炭灰A1を上記分散ガスによって安定して分散させるとともに搬送することができる。
【0044】
上記実施形態において、さらに排ガスG2を集塵する集塵機(図示せず)、排ガスG2および回転炉4a内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定器(図示せず)、改質灰A2の粒径、比表面積及び未燃カーボン含有率を測定する分析器(図示せず)などを備えることもできる。また、熱交換器(図示せず)を備え、この熱交換器に高温ガス(図示せず)と大気(図示せず)とを導入して大気を加熱し、高温となった大気を燃料(図示せず)と共にガス吹込管3から回転炉4aの内部に吹き込むこともできる。
【0045】
上記実施形態において、円筒状の回転炉4aに代えて角筒状の回転炉(図示せず)を備えることもできる。また、円筒状のガス噴出管5cに代えて角筒状のガス噴出管を設けてもよく、この角筒状のガス噴出管における横断面を例えば三角形(回転炉4aの内表面から回転軸Oに向けて突出する三角形)にすることもできる。
【0046】
上記実施形態においては、第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4の流速を速くすることにより、ガス噴出管5cにおける第1孔部h1及び第2孔部h2における目詰まり(石炭灰A1によるもの)を防止したり、回転炉4aの内部において石炭灰A1の溶融を防止して石炭灰A1の粒状化を防止したりすることができる。一方、第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4の流速を過度に速くしないことにより、加熱装置4の排出部4bにおける改質灰A2の飛散を抑制して改質灰A2を効率よく回収することができる。なお、第1分散ガスG3及び第2分散ガスG4の流量及び流速の調整を、例えば、ガス噴出管5cに形成する第1孔部h1及び第2孔部h2の数及び面積を調整することにより行うことができる。第1孔部h1及び第2孔部h2の数は共に単数であってもよい。
【0047】
なお、上記実施形態においては、回転炉4aの内部温度を高めるために、回転炉4aの外表面をバーナー(図示せず)によって加熱することもできる。また、加熱装置4においては、回転炉4a以外の炉を設置することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 石炭灰の改質装置
2 スクリューコンベア
3 ガス吹込管
4 加熱装置
4a 回転炉
4b 排出部
5 分散手段
5a 送風機
5b 分岐管
5c ガス噴出管
5m 主管
5s 枝管
A1 石炭灰
A2 改質灰
C 間隔
D1 石炭灰搬送方向
D2 回転方向
G1 助燃空気
G2 排ガス
G3 第1分散ガス
G4 第2分散ガス
H 高温空気
h1 第1孔部
h2 第2孔部
L 連結部
O 回転軸
s 固定面
図1
図2
図3