(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】光電変換膜積層型固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240723BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240723BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L27/146 E
H01L31/10 H
H01L31/10 B
(21)【出願番号】P 2020069881
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】本田 悠葵
(72)【発明者】
【氏名】為村 成亨
(72)【発明者】
【氏名】難波 正和
(72)【発明者】
【氏名】大竹 浩
(72)【発明者】
【氏名】久保田 節
【審査官】渡邊 佑紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-024057(JP,A)
【文献】特表2019-530215(JP,A)
【文献】特開2015-195336(JP,A)
【文献】特開2005-260008(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0198580(US,A1)
【文献】国際公開第2017/047422(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206672951(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 31/10
H01L 31/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長域に感度を有する光電変換膜が回路基板上に積層され、該回路基板の表面と平行な一平面上において画素要素がアレイ状に配列され、該画素要素の配列の少なくとも一方向において、陽極と陰極を構成する各電極が交互に配設されてなり、
前記画素要素の1個または隣接する複数個の群によって1画素が構成され、
前記画素要素には各々、前記陽極と前記陰極を構成する各電極が少なくとも1つずつ配され、これら2つの電極のうち少なくとも該陰極を構成する電極の前記一方向の電極幅、および該陽極と該陰極を構成する各電極の前記一方向の間隔が、いずれも10nm以下とされ、
前記陽極および前記陰極を構成する各電極の
断面視における角部分の形状が、下式を満足することを特徴とする光電変換膜積層型固体撮像素子。
0.6≦前記電極の前記角部分の曲率半径/前記電極の厚み≦1.0
【請求項2】
前記画素要素の境界域に沿って形成された、前記陽極を構成する共通電極と、該画素要素各々の中心部位置に形成された、前記陰極を構成する読出し電極からなり、
前記陽極の電極幅が、前記陰極の電極幅の0.5倍以上
2倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換膜積層型固体撮像素子。
【請求項3】
前記アレイ状の前記画素要素の列において、前記陽極と前記陰極を構成する各電極が、いずれも櫛歯形状を形成し、一方が他方の櫛歯間に櫛歯を差し入れるように構成されてなり、
前記陽極の電極幅が、前記陰極の電極幅の2倍以上
3倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換膜積層型固体撮像素子。
【請求項4】
前記陽極と前記陰極を構成する各電極の間隔が、該陰極の電極幅以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の光電変換膜積層型固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号読出し回路基板上に光電変換膜を積層した光電変換膜積層型固体撮像素子に関し、特に光電変換膜に支持基板(回路基板)と平行な、横方向の電界を印加する電極構造を有する光電変換膜積層型固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像素子の多画素化や高フレームレート化が急速に進んだ結果、1画素あたりの入射光が減少し、素子の感度低下が問題となっており、この問題を解消するための技術として、信号読出し回路上に光電変換膜を積層した光電変換膜積層型固体撮像素子が知られている(例えば、下記非特許文献1、2を参照)。光電変換膜を積層した光電変換膜積層型固体撮像素子では、光電変換膜に外部電界を印加するために、最表面に成膜された透明共通電極と画素電極との間に電圧を印加し、光電変換膜の積層方向に外部電界を印加することにより膜内で光電変換された電荷を読出している。しかし、この構造では、光電変換膜の厚みに応じた高電圧を両電極間に印加しなければならず、固体撮像素子の耐電圧との関係で印加し得る電界強度に限界がある。
他方で、光電変換膜の厚みを薄くし過ぎると入射した光が十分に吸収されず、透過してしまうため、良好な感度を得ることが困難となる。
【0003】
そこで、下記非特許文献3に記載の技術では、櫛状の対向電極を基板上に形成し、光電変換膜の積層方向に対して垂直である光電変換膜の面方向に、外部電界を印加し、光電変換膜中で発生した電荷を横方向に走行させることで、光電変換膜の厚みを薄くすることなく、光電変換膜に高電界を印加できるようにしている。
【0004】
一方で、本願出願人は下記特許文献1の技術について開示している。この技術は、金属-半導体-金属型の受光素子(MSM)を用いた撮像素子に関するものであり、回路基板上に所定の波長域に感度を有する光電変換膜を積層し、画素はアレイ状に形成し、各画素において、画素境界域に沿って形成された共通電極と、各画素の中心部位置に形成された読出し電極とを備えることにより、横方向(基板素子表面と平行)に外部電界を印加するタイプにおいて、高電界で製造の効率化を図る、という効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】映像情報メディア学会年次大会 12-3、p.166~167、1998
【文献】映像情報メディア学会年次大会 14-4、2002
【文献】IEEE. Trans. Electron Devices, vol. 57, no. 8, p. 1953, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した非特許文献3および特許文献1の技術においては、ある程度の高い電界強度を得ることができるものの、素子のさらなる高感度化が求められている今日においては、印加電圧を固体撮像素子の耐電圧以内に抑えつつ、均一性が高く、さらに高い電界強度を光電変換膜に印加する手法が求められていた。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、両電極間の印加電圧を固体撮像素子の耐電圧以内に抑えることが可能であり、光電変換膜の面方向における電界強度の均一性を高く維持しつつ、光電変換膜内でのアバランシェ増倍現象を利用可能な、高い電界強度を両電極間に発生させ得る光電変換膜積層型固体撮像素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明の光電変換膜積層型固体撮像素子は以下のような構成とされている。
すなわち、本発明の光電変換膜積層型固体撮像素子は、
所定の波長域に感度を有する光電変換膜が回路基板上に積層され、該回路基板の表面と平行な一平面上において画素要素がアレイ状に配列され、該画素要素の配列の少なくとも一方向において、陽極と陰極を構成する各電極が交互に配設されてなり、
前記画素要素の1個または隣接する複数個の群によって1画素が構成され、
前記画素要素には各々、前記陽極と前記陰極を構成する各電極が少なくとも1つずつ配され、これら2つの電極のうち少なくとも該陰極を構成する電極の前記一方向の電極幅、および該陽極と該陰極を構成する各電極の前記一方向の間隔が、いずれも10nm以下とされ、
前記陽極および前記陰極を構成する各電極の断面視における角部分の形状が、下式を満足することを特徴とするものである。
0.6≦前記電極の前記角部分の曲率半径/前記電極の厚み≦1.0
【0009】
ここで、「交互に」とは、陽極と陰極が順番にかわるがわる配置される状態にあることを意味するが、同種の電極が、間隔をおかずに隣接して配されているときは、これらを1つの電極として扱うものとする。
【0010】
また、上記光電変換膜積層型固体撮像素子の第1の態様として、
前記画素要素の境界域に沿って形成された、前記陽極を構成する共通電極と、該画素要素各々の中心部位置に形成された、前記陰極を構成する読出し電極からなり、
前記陽極の電極幅が、前記陰極の電極幅の0.5倍以上2倍以下であることが好ましい。
【0011】
一方、第2の態様として、
前記アレイ状の画素要素の列において、前記陽極と前記陰極を構成する各電極が、いずれも櫛歯形状を形成し、一方が他方の櫛歯間に櫛歯を差し入れるように構成されてなり、
前記陽極の電極幅が、前記陰極の電極幅の2倍以上3倍以下であることが好ましい。
さらに、前記第1および第2の態様において、前記陽極と前記陰極を構成する各電極の間隔が、該陰極の電極幅以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光電変換膜積層型固体撮像素子によれば、信号読出し用の回路基板上に、陽極と陰極を有する、各画素を構成する画素要素をアレイ状に形成し、各画素要素に配された陽極と陰極の2つの電極のうち、少なくとも陰極を構成する電極の一方向の電極幅、およびこれら2つの電極の間隔を、10nm以下としている。
【0013】
このような構成は、本発明者等の研究により見出されたものである。すなわち、光電変換膜を積層した固体撮像素子において、膜内で光電変換された電荷の増倍率を飛躍的に高めるには、光電変換膜内でのアバランシェ増倍現象を利用することが考えられる。しかしながら、一般に、アバランシェ増倍を発生させるためには高電圧を印加する必要があり、このような高電圧を印加すると固体撮像素子の耐電圧を超えてしまう。
【0014】
そこで、本発明に係る光電変換膜積層型固体撮像素子では、横方向の電界を印加する固体撮像素子において、固体撮像素子の耐電圧以内に十分抑え得る両電極間の印加電圧として5Vを選択したときに、アバランシェ増倍を発生させるための条件として、各画素に配された陰極と陽極の2つの電極のうち、少なくとも陰極の一方向の電極幅、およびこれら2つの電極間隔を、10nm以下に設定するとともに、前記陽極および前記陰極を構成する各電極の角部分の形状が、下式を満足するように構成した。
0.6≦前記電極の角部分の曲率半径/前記電極の厚み≦1.0
これにより、電圧を固体撮像素子の耐電圧以内に抑えつつ、光電変換膜の面方向における電界強度の均一性を高く維持しつつ、光電変換膜内でのアバランシェ増倍現象を利用可能な、高い電界強度を、両電極間に発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の一部分の平面構造を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の一部分の断面構造を示す概略図である。
【
図3】アモルファスセレンを主成分とする光電変換膜に一定光量を照射したときの印加電界強度と出力信号電流との関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の1つの画素の等価回路構成を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の電極間隔と、発生する電界強度の関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の電極A(陰極)の電極幅と、発生する電界強度の関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の、(電極B(陽極)の電極幅/電極A(陰極)の電極幅)の値と、電界強度比の関係を示すグラフである。
【
図8A】本発明の実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子において、
図8B(F)のグラフ上の各位置における電界集中の状態を示す図である((A)~(E))。
【
図8B】本発明の実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子において、(F)は(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)の値と、電界強度比の関係を示すグラフ、(G)は実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の等電位線を示す断面模式図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の一部分の平面構造を示す概略図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の、電極A(陰極)の電極幅および電極間隔と、発生する電界強度の関係を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施例2に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の、(電極B(陽極)の電極幅/電極A(陰極)の電極幅)の値と、電界強度比の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施例1>
図1は横方向電場印加型(MSM)の光電変換膜積層型固体撮像素子(以下、特に特定する必要がある場合以外は、単に固体撮像素子と称する)の平面構造を示すものである。また、
図2は、この固体撮像素子の電極上に、光電変換膜を積層した場合の固体撮像素子の断面構造を示すものである。
【0017】
図1および
図2に示されるように、本実施形態に係る光電変換膜積層型固体撮像素子は、信号読出し用の回路基板1上に、共通電極(電極B:陽極)2が格子状に配置されるとともに、読出し電極(電極A:陰極)3が格子で区切られた一領域(
図1では、正方形状の領域)の中心部に配置され(共通電極2と読出し電極3が配置された層を金属配線層と称する場合がある)、その上方に光電変換層5が積層されている。この場合、
図1に示す1つの正方形領域は、請求項1における「画素要素」に相当し、この1つの「画素要素」によって1画素が構成されていてもよい(
図1、
図2のパターン1を参照)。
【0018】
1画素を1つの「画素要素」から構成する態様(パターン1)の他、例えば、1画素を4つの正方形領域(「画素要素」)から構成する場合(
図1、
図2のパターン2を参照)等の、複数個の正方形領域(「画素要素」)をグループ化したものから構成する態様であってもよい。なお、
図2に示す断面図において、このパターン2の態様は、1画素が、電極B(2)の2ピッチを1辺とする正方形領域に相当する。
【0019】
共通電極2と読出し電極3の間に所定の電圧を印加し、これら電極2、3間の電位差によって光電変換層5に横方向の電界が印加される。
このように、共通電極2および読出し電極3が上下方向ではなく、積層方向に対し垂直方向に配設されているので、光電変換層5に対して電界の方向が横方向となる。
【0020】
ところで、従来の構成(透明導電膜を利用して積層方法に電界を印可する構成)では、印可電圧を上げずに電界強度を高めるためには光電変換層の厚さを薄くする必要があるが、薄くし過ぎると入射した光が吸収されずに透過する割合が増加してしまう。したがって、電界強度を高めて感度を高めるには限界があった。これに対し、本実施形態に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の構成では、上述した構成によって電界強度を高めているので、従来のように光電変換層5を薄くする必要がない。これにより、印可電圧を上げずに電界強度を高める(感度を高める)際の限界をなくすことができる。
【0021】
また、画素領域を格子状に区切る境界域に沿って共通電極2を配し、その格子で区切られた各領域の中心部に読出し電極3を配してなる、2次元のアレイ状の構成を形成し、1つの読出し電極3が共通電極2に囲まれてなる画素要素の1単位、またはこの画素要素の複数単位、を1画素として設定する、という極めてシンプルな構成となっているので、微小画素においても電極の作製が容易である。
【0022】
光電変換層5には、例えば、結晶セレンやアモルファスセレンを主成分とする光電変換膜が用いられる。光電変換膜は入射光量に応じて電荷を生成・蓄積する機能を有し、光電変換膜内に1×108V/m程度の強電界を印加することでアバランシェ増倍を起こす。
【0023】
共通電極2と読出し電極3が配置された金属配線層における金属配線形状は、前述したように、画素内に陰極(電極A)、および電極Aの周囲を囲うように配置した陽極(電極B)による電極の対をなす金属配線がアレイ状に配置される。
前述したように、複数の正方形領域をグループ化して1画素とする場合は、
図4に示すように、同一画素内に配置された同種の電極(望ましくは電極A)同士を結線し、回路基板1に形成した増幅トランジスタ(AMP)のゲート電極に接続する。
【0024】
ところで、本実施形態の光電変換膜積層型固体撮像素子(実施例1、2共に)においては、均一かつ高い電界強度を得ることが要望されているが、本願発明者の研究の結果、1画素内の電極間距離を短くするだけでは、光電変換膜の面方向の電界強度の均一性とアバランシェ増倍現象を利用するための高い電界強度の両立を図ることには限界があり、下述する如く、1画素内の電極形状等のその他の要素を厳密に規定することが上記要求に応えるために必要であることが明らかとなった。したがって、本実施形態に係る光電変換膜積層型固体撮像素子においては、この研究により得られたデータに基づき、各実施例毎に、所定の規定内容について適切な数値に設定するようにしている。以下、上記要望に応え得る規定内容について、数値的な要件を挙げる形式で列挙する。
【0025】
<1>まず、本実施例においては、各画素における、読出し電極(陰極:電極A)3の少なくとも一方向(図中で横方向および/または縦方向)の電極幅(
図1ではα)が10nm以下とされる。また、各画素における、共通電極(陽極:電極B)2と読出し電極(陰極:電極A)3の電極間隔γが、10nm以下とされる。
また、上述した読出し電極3の少なくとも一方向の電極幅α、および共通電極2と読出し電極3の電極間隔γについては、製造を容易とするために、1nm以上とすることがより望ましい。
【0026】
<2>また、上記<1>の要件とともに、各画素における、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅βが、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αの0.5倍以上2倍以下に設定することにより、上記要望に、より一層応えることが可能である。
【0027】
<3>また、上記<1>に説明した、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αを10nm以下に設定した場合に、各画素における、共通電極(陽極:電極B)2と読出し電極(陰極:電極A)3の電極間隔γを、1nm以上の範囲内において、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅α以下の範囲に設定することにより、上記要望に、より一層に応えることが可能である。
【0028】
また、上記共通電極2および読出し電極3としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、Au(金)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、ニオブ(Nb)、Pt(白金)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ti(チタン)、TiN(窒化チタン)等の、導電性を有する材料を用いることができる。
【0029】
また、光電変換層5は、結晶セレンと接合膜および半絶縁性金属酸化物膜との積層構造としてもよい。半絶縁性金属酸化物膜は、酸化亜鉛、酸化ガリウム、硫化亜鉛、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化インジウムからなる群から選択される一種または二種以上から構成される。接合膜は、テルル、ビスマス、アンチモンからなる群から選択される一種からなる。接合膜を結晶セレンと半絶縁性金属酸化膜との間に配置することにより、結晶セレンと半絶縁性金属酸化膜との接着力を向上させる機能を有する。積層構造の場合、半絶縁性金属酸化膜の膜厚は2nm~100nmであることが好ましい。結晶セレンの膜厚は100nm以上であることが好ましい。結晶セレンの膜厚が100nm以上である場合、光電変換層として良好に機能するものとなる。また、結晶セレンの膜厚は1μm以下であることが好ましく、より好ましくは500nm以下である。結晶セレンの膜厚が500nm以下であると、半絶縁性酸化物膜と結晶セレン膜との界面に形成されている空乏層に入射光が到達しやすくなる。
【0030】
結晶セレンの膜厚を0.1μm以上とすると、十分な膜厚を有する結晶セレンとすることができるので、可視光全域で十分な感度を得ることができ、光電変換層として良好な結晶セレンとなる。このような趣旨から、膜厚は0.3μm以上とすることがより好ましい。一方、膜厚を5μm以下とすると、結晶セレン膜を効率良く形成することができ、生産性に優れた光電変換膜とすることができる。このような趣旨から上限を2μm以下とすることが好ましい。
【0031】
図4は、1つの画素の等価回路を示す回路図である。各画素は、
図4に示すように、入射光に応じた電荷を生成する光電変換層5と、この電荷を電位に変換する浮遊拡散部(フローティング・ディフュージョン)FDと、浮遊拡散部FDの電位をリセットするリセットトランジスタRSTと、浮遊拡散部FDの電位に応じた信号を出力する、増幅部としての、前述した増幅トランジスタAMPと、読出し行を選択する選択トランジスタSELとを有している。
【0032】
本実施形態の光電変換膜積層型固体撮像素子では、
図1に示す電極A(読出し電極)3が浮遊拡散部FDと接続され、光電変換層5で生成された電荷が浮遊拡散部FDに転送される。なお、選択トランジスタSELの出力は垂直信号線を介して、図示されない回路部に送出される。
アモルファスセレンを主成分とする光電変換膜に一定光量を照射したときの印加電界強度と出力信号電流との関係を
図3に示す。光電変換膜の印加電界を高めていくと、出力信号電流はいったん飽和した後、1×10
8V/m 以上で急激に増加しており、光電変換膜内でアバランシェ増倍が起きていることを示唆している。
【0033】
≪実施例1の検証≫
以下、実施例1の光電変換膜積層型固体撮像素子に係る、上記<1>、<2>の数値的な要件について検証する。
(<1>の検証)
図5に、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αを100nm、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅βを無限大とし、両電極間隔γを50nmから10nmまで変化させた場合における、光電変換層5に印加される電界強度の変化をシミュレーション解析した結果を示す。
【0034】
図5によれば、電界強度は、両電極間隔γが減少するにしたがって増加し、電極間隔30nm以下にすることで、アバランシェ増倍を起こし得る1×10
8V/m以上の強電界を電極端部で得ることができる(
図5の●印を参照)。これに対し、
図5に示すように電極中央部における両電極間隔γの変化に対する電界強度の変化(
図5の〇印を参照)は、電極端部における場合と比べて緩やかであり両電極間隔γを10nmまで減少させても、1×10
8V/m以上の強電界を得ることができない。
【0035】
一方、
図6には、両電極間隔γを10nm、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅βを無限大とし、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αを50nmから10nmまで変化させた場合における光電変換層5に印加される電界強度の変化をシミュレーション解析した結果を示す。読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αを減少させるのに従って、電界強度が増加するとともに、電極中央部(
図6の〇印を参照)と電極端部(
図6の●印を参照)の電界強度の差が減少し、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αが10nmの場合では、アバランシェ増倍を起こし得る1×10
8V/m以上の強電界を得ることができるのと同時に、
図6に示すように、電極中央部と電極端部の電界強度をほぼ一致させることができる。
【0036】
したがって、光電変換膜に一定光量を照射したときの出力信号電流を電極中央部と電極端部でほぼ一致させることができるため、光電変換膜の面方向に均一かつアバランシェ増倍現象を利用した高感度を実現することができる。
【0037】
一方、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αが20nmの場合では、電極中央部と電極端部の電界強度はどちらも、アバランシェ増倍を起こし得る1×10
8V/m以上の強電界を得ることはできるが、電極中央部に比べて電極端部の電界強度は約1.3倍大きい。
図3に基づき、電極中央部と電極端部の印加電界強度比から出力信号電流比を求めると、電界強度が1×10
8V/mの時に対して電界強度が1.2×10
8V/mの時には、出力信号電流が約15倍となっている。すなわち、電界強度が1.2倍となれば、出力信号電流が約15倍となることからすると、上記では、電界強度が約1.3倍となるので(
図3には、電界強度が1.2×10
8V/mより大きい時の出力信号電流値が示されていないが)、結局、出力信号電流は15倍より大きい値となっていることは明らかである。
【0038】
したがって、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αが20nmの場合では、光電変換膜に一定光量を照射したときの感度(出力信号)が電極中央部と電極端部で15倍より大きい値となり、感度の均一性が得られない。
【0039】
これに対し、各画素内に、読出し電極(陰極:電極A)3および読出し電極(陰極:電極A)3の周囲を囲むように共通電極(陽極:電極B)2を配置し、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αおよび両電極間隔γを10nm以下とすることで、均一かつ大きな電界強度(電荷増倍)を得ることができることが明らかである。
【0040】
このように実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子によれば、光電変換膜に一定光量を照射したときの出力信号電流を電極中央部と電極端部でほぼ一致させることができるため、均一かつアバランシェ増倍現象を利用した高感度を実現することができる。
【0041】
(<2>の検証)
図7に、両電極間隔γを固定し、(共通電極(陽極:電極B)2の電極幅β/読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅α)の値を、0.2、0.5、1、2と変化させた場合における、電界強度比(共通電極(陽極:電極B)2の電極幅βを無限大としたときの電界強度を100%とする)の変化をシミュレーション解析した結果を示す。
【0042】
図7によれば、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅βを読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αの0.2倍とした場合、光電変換膜に印加される電界強度比は、隣接する電極対(電極Aと電極Bのペア)がそれぞれ形成する電界の相互作用および電極Bからの電界(電気力線)の供給不足等が原因で90%まで到達しない。これに対し、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅βを読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αの0.5倍以上とした場合、隣接する電極対がそれぞれ形成する電界の相互作用が抑制され、電極Bからの電界(電気力線)の供給不足が改善されるため90%以上の電界強度比が得られる。
【0043】
したがって、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅βを読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αの0.5倍以上に設定することで光電変換膜に印加される電界強度を90%以上に向上させることができる。一方、共通電極の電極幅を読出し電極の2倍とした場合、約98%の電界強度比が得られ、隣接する電極対による電界の相互作用や電界(電気力線)の供給不足は、無視してよい程度まで改善される。したがって、共通電極の電極幅を読出し電極の2倍を超えてさらに増加させても、電界強度比の更なる増加は限定的である。
【0044】
以上の結果より、効率的に光電変換膜に電界を印加するための最適な、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅βは、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅αの0.5倍以上2倍以下であり、このような両電極形状に設定することで、効率的に光電変換膜に高い電界を印加することができ、光電変換膜内での効率的な電荷増倍を可能とすることができる。
【0045】
図8B(F)は、(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)の値と、電界強度比の関係を示すグラフであり、
図8B(G)は、本実施例に係る光電変換膜積層型固体撮像素子の等電位線を示す断面模式図である(等電位線が両電極2、3間に形成される。電極角部の曲率半径および電極A(陰極)の厚みが図内で定義されている。)。
【0046】
一方、
図8Aは、
図8B(F)のグラフ上の各位置(<A>~<E>)における電界集中の状態を示す図である((A)~(E)(<A>~<E>に各々対応する))。(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)の値が略0の場合を<A>、約0.2の場合を<B>、約0.8の場合を<C>、約1.2の場合を<D>、約1.4の場合を<E>とする。
【0047】
電界強度は、電極(電極A(陰極)および電極B(陽極))の角部の断面において隣接する2つの面のなす角度が90度の場合に、この電極の角部に電界が集中した際の電界強度を100%とする。
図8B(F)に示すように、(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)の値を0.2から1.4まで0.2きざみで増加するように形状変化させた場合には、この電極の角部での電界集中による電界強度は、途中まで低下するように変化する。
【0048】
そして、0.6≦(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)≦1.0の範囲で最小となり、この時の電界強度は約50%まで低下する。
さらに(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)の値を増加させると、電界強度は増加に転じ、(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)の値が1.4程度では、電界強度は約90%まで増加する。
また、
図8Aにおいては、 (A)、(B)では角部に電界が集中しているが、
図8Aの(C)では角部の電界集中が緩和され、広い範囲に分散していることが明らかである。
【0049】
したがって、(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)の値を最適化することにより電極角部における電界集中を抑制することができ、特に0.6≦(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)≦1.0においては電界集中による電界強度を半減させることができる。
図3に基づき、電極角部の電界集中を抑制させた場合の感度ばらつきの抑制効果を求めると、以下のように考えられる。光電変換膜内においてアバランシェ増倍現象の利用に必要な1×10
8V/mの電界強度を印加させている場合において、電極角部に電界集中が発生し、2倍(2×10
8V/m)の電界強度が印加される場合、出力信号電流は電極角部で15倍を上回る(
図3を参照)。すなわち、光電変換膜のうち電極角部では電極角部以外に比べて15倍を上回る程度まで感度が増加しており、感度の均一性が得られない。
【0050】
一方、特に0.6≦(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)≦1.0の範囲においては電極角部の電界集中を半減させることができ、出力信号電流の電極角部での急激な上昇を抑制することができる。よって、光電変換膜の感度の均一性を保つことが可能となる。
これにより、撮像画像における画質向上を図ることができる。すなわち、電極角部における過度の電界集中を抑制することができ、これにより増幅率の不均一性を回避し、画素内の明るさの不均一性を回避し、画質の劣化を防止することが可能となる。
【0051】
<実施例2>
この実施例2に係る光電変換膜積層型固体撮像素子は、上記実施例1に係る光電変換膜積層型固体撮像素子とは、電極の配置関係において相違するが、その他は同様であるので、この電極形状について、およびこの電極形状の相違に起因する作用効果の違いについてのみ説明する。
【0052】
図9は横方向電場印加型(MSM)の固体撮像素子の平面構造を示すものである。
この
図9においては、電極B(12)の2ピッチ分の範囲によって1画素の領域が構成されているが、その他、電極B(12)の任意のnピッチ(nは正の整数)分の範囲によって1画素の領域を構成することが可能である。この場合において、電極B(12)の1ピッチ分の範囲が請求項1における1画素要素を構成する。
【0053】
図9に示されるように、各電極(共通電極(陽極:電極B)12、および読出し電極(陰極:電極A)13)はいずれも櫛歯型をなしており、一方の櫛歯間に他方の櫛歯が差し入れられるように構成されている。両電極12、13は、互いに陰極と陽極を入れ替えることが可能である。
【0054】
上述したように、本実施例に係る光電変換膜積層型固体撮像素子においても、本願発明者等による研究により得られたデータに基づき、所定の規定内容について適切な数値に設定するようにしている。以下、上記規定内容について、数値的な要件を挙げる形式で列挙する。
【0055】
<1>まず、本実施例においては、各画素における、読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅α´(
図9では、1画素中に電極Bの櫛歯が2本設けられているので、この2本の電極Bの櫛歯の各々の幅)が10nm以下とされる。また、各画素における、共通電極(陽極:電極B)12と読出し電極(陰極:電極A)13の電極間隔γ´が、10nm以下とされる。なお、本実施例における、共通電極(陽極:電極B)12の電極幅β´(1画素中に電極Aの櫛歯が2本設けられているので、この2本の電極Bの櫛歯の各々の幅)も、10nm以下とされる。
【0056】
また、上述した読出し電極13の電極幅α´、共通電極12の電極幅β´、および共通電極12と読出し電極13の電極間隔γ´については、製造を容易とするために、1nm以上とすることがより望ましい。
これらの点においては、基本的には、実施例1と同様の数値的な要件とされる。
【0057】
<2> 上記<1>の要件とともに、各画素における、共通電極(陽極:電極B)12の電極幅2β´を、読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅2α´の2倍以上、より好ましくは2倍に設定することにより、上記要望に対して、より良好に応えることが可能である。
【0058】
≪実施例2の検証≫
以下、実施例2の光電変換膜積層型固体撮像素子に係る、上記<1>、<2>の数値的な要件について検証する。
(<1>の検証)
図10に、読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅2α´および両電極間隔γ´(2α´=γ´)を100nmから10nmまで変化させた場合における光電変換層5に印加される電界強度の変化をシミュレーション解析した結果を示す。
【0059】
図10によれば、読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅2α´および両電極間隔γ´を100nmに設定した場合には、電界強度は0.5×10
8V/mに到達せず、アバランシェ増倍を起こさせるために必要な電界強度を得ることはできない。
電界強度は、電極幅2α´および両電極間隔γ´が減少するにしたがって増加し、電極間隔30nm以下にすることで、アバランシェ増倍を起こし得る1×10
8V/m以上の強電界を電極端部で得ることができる。
【0060】
しかしながら、その一方で、電極中央部における両電極間隔γ´の変化に対する電界強度の変化は、電極端部における場合と比べて緩やかであり、実施例1の説明において示すように、読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅2α´および両電極間隔γ´を減少させるのに従って、電極中央部と電極端部の電界強度の差が減少するが、読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅2α´を10nmまで減少させることで、電極中央部と電極端部の電界強度をほぼ一致させることができる。
【0061】
したがって、各画素内に、櫛歯型の共通電極(陽極:電極B)12、および櫛歯型の読出し電極(陰極:電極A)13を配設し、読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅2α´および両電極間隔γ´を、いずれも10nm以下の長さに設定することで、均一かつ高い電界強度(電荷増倍)を得ることができる。
【0062】
(<2>の検証)
図11に、両電極間隔γ´を固定し、(共通電極(陽極:電極B)12の電極幅β´/読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅α´)の値を、1、2、3と変化させた場合における、電界強度比(共通電極(陽極:電極B)12の電極幅β´を無限大としたときの電界強度を100%とする)の変化をシミュレーション解析した結果を示す。
【0063】
図11によれば、共通電極(陽極:電極B)12の電極幅2β´が、読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅2α´と等しいとき(上記値が1の場合)、光電変換膜に印加される電界強度比は85%に低下する。
【0064】
一方、共通電極(陽極:電極B)12の電極幅β´が、読出し電極(陰極:電極A)13の電極幅α´の2倍であるとき(上記値が2の場合)、光電変換膜に印加される電界強度比は91%まで増加する。これは、共通電極(陽極:電極B)12の電極幅2β´を、ある程度広くとることによって、隣接する電極対(電極Aと電極Bのペア)がそれぞれ形成する電界の相互作用が抑制され、共通電極(陽極:電極B)12からの電界(電気力線)の供給を十分なものとすることができるためである。
さらに、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅β´が、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅α´の3倍であるとき(上記値が3の場合)、光電変換膜に印加される電界強度比は91%となる。
【0065】
したがって、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅β´を、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅α´の2倍以上とすることで、光電変換膜に印加される電界強度比を90%以上まで増加させることができる。しかし、共通電極(陽極:電極B)2の電極幅β´を、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅α´の3倍まで増加させても、光電変換膜に印加される電界強度比のさらなる増加は見られない。
【0066】
この結果、電極配置の密度を高めつつ、光電変換膜に電界を効率的に印加するための最適な共通電極(陽極:電極B)2の電極幅β´は、読出し電極(陰極:電極A)3の電極幅α´の2倍であり、比較的、製造容易な櫛歯型電極を上記のような形状とすることで、光電変換膜に効率的に高い電界を印加することができ、光電変換膜内での効率的な電荷増倍が可能である。
【0067】
なお、本実施例においても、実施例1と同様に、(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)の値を最適化するようにしており、最適化する内容は、
図8A、
図8Bを用いて説明したものと同様である。
すなわち、電極(共通電極(陽極:電極B)2、および読出し電極(陰極:電極A)3)の角部の形状を、特に0.6≦(電極角部の曲率半径/電極A(陰極)の厚み)≦1.0に設定することにより、電界集中による電界強度を半減させるようにしている。
【0068】
本発明の光電変換膜積層型固体撮像素子としては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、各画素において、画素境界域に沿って形成された共通電極と、各画素の中心部位置に形成された読出し電極とを備えた電極配置、またはいずれも櫛歯型の、共通電極と読出し電極を備えた電極配置とされているが、例えば、
図1全体に示すように、正方形を構成する、互いに隣接する4つの画素からなる画素群を拡大された単位画素とし、これを1つの画素とみなすように構成することも可能である。
【0069】
この場合、実際の4つの画素からの電気信号を合成し、拡大された単位画素から出力される電気信号とすればよい。
また、櫛歯型の電極とされた場合にも、1画素内に配置される各電極の櫛歯の数は、実施例のごとく2対のものに限られるのものではなく、1対としてもよいし、それ以外の所望の数(0を除く)だけ設けるようにしてもよい。
【0070】
また、例えば、上記実施例1のものにおいては、画素中心部に配される読出し電極の形状は矩形状とされているが、この形状は円形であってもよいし、6角形等の他の形状であってもよい。
【0071】
また、光電変換膜積層型固体撮像素子の層構成としては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の層を間に挟むようにしてもよい。
また、
図4の画素回路の構成としても、その他の種々の態様を採用可能である。
【0072】
また、本発明の光電変換膜積層型固体撮像素子としては、可視光全域に感度を有するものが一般的であるが、その他、どのような波長域をカバーするものとすることも可能であり、例えば、赤外域のみに感度を有する固体撮像素子とすることも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 信号読出し回路基板(回路基板)
2、12 共通電極(電極B)
3、13 読出し電極(電極A)
5 光電変換層
FD 浮遊拡散容量(フローティング・ディフュージョン)
RST リセットトランジスタ
AMP 増幅トランジスタ
SEL 選択トランジスタ