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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】制御システム、製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20240723BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240723BHJP
   B29C 48/37 20190101ALI20240723BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/08
B29C48/37
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020136275
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032464
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】藤木 新也
(72)【発明者】
【氏名】水野 浩輔
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-172718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂原料をギアポンプに押し出して吐出させて、該ギアポンプより吐出された樹脂原料を搬送する工程と、樹脂原料から樹脂フィルムを成形する工程を含む樹脂フィルムの製造において、ギアポンプに押し出される、ギアポンプの前の樹脂原料の圧力と、ギアポンプの回転数と、前記樹脂フィルムの搬送速度とを制御する制御システムであって、
搬送速度の目標値を取得する目標値取得手段と、
搬送速度の測定値を取得する測定値取得手段と、
前記測定値取得手段によって取得された測定値、及び前記目標値取得手段によって取得された目標値に基づき搬送速度の設定値を算出する算出手段と、
前記樹脂原料の圧力を最初に制御した後に、前記搬送速度の測定値と前記算出手段によって算出された搬送速度の設定値との大小関係に基づく順番で前記ギアポンプの回転数及び前記樹脂フィルムの搬送速度を制御する制御手段と、
を備える制御システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記樹脂原料の圧力、前記ギアポンプの回転数及び前記樹脂フィルムの搬送速度を繰り返し制御する請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記測定値取得手段によって取得された測定値が前記搬送速度の設定値よりも小さい場合には、前記樹脂原料の圧力、前記ギアポンプの回転数及び前記樹脂フィルムの搬送速度の順番に制御する請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記測定値取得手段によって取得された測定値が前記搬送速度の設定値よりも大きい場合には、前記樹脂原料の圧力、前記樹脂フィルムの搬送速度及び前記ギアポンプの回転数の順番に制御する請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の制御システムを含む樹脂フィルムの製造装置。
【請求項6】
樹脂原料をギアポンプに押し出して吐出させて、該ギアポンプより吐出された樹脂原料を搬送する工程と、樹脂原料から樹脂フィルムを成形する工程とを含む樹脂フィルムを製造する製造方法であって、
搬送速度の目標値を取得する目標値取得ステップと、
搬送速度の測定値を取得する測定値取得ステップと、
前記測定値取得ステップにおいて取得された測定値、及び前記目標値取得ステップにおいて取得された目標値に基づき搬送速度の設定値を算出する算出ステップと、
ギアポンプに押し出される、ギアポンプの前の前記樹脂原料の圧力を最初に制御した後に、前記搬送速度の測定値と前記算出ステップにおいて算出された搬送速度の設定値との大小関係に基づく順番で前記ギアポンプの回転数及び前記樹脂フィルムの搬送速度を制御する制御ステップと、
を含む製造方法。
【請求項7】
前記制御ステップにおいて、前記樹脂原料の圧力、前記ギアポンプの回転数及び前記樹脂フィルムの搬送速度を繰り返し制御する請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記制御ステップにおいて、前記測定値取得ステップにおいて取得された測定値が前記搬送速度の設定値よりも小さい場合には、前記樹脂原料の圧力、前記ギアポンプの回転数及び前記樹脂フィルムの搬送速度の順番に制御する請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記制御ステップにおいて、前記測定値取得ステップにおいて取得された測定値が前記搬送速度の設定値よりも大きい場合には、前記樹脂原料の圧力、前記樹脂フィルムの搬送速度及び前記ギアポンプの回転数の順番に制御する請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂原料はアクリル樹脂を含み、
前記樹脂フィルムはアクリル樹脂フィルムである請求項6~9の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの製造に係る制御システム、製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂原料をギアポンプに押し出して吐出させて、吐出された樹脂原料を搬送して樹脂フィルムを成形して製造することが行われている(例えば、特許文献1参照)。例えば、アクリル樹脂を樹脂原料として、偏光板用部材であるアクリル保護フィルムを製造することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-125123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂フィルムの製造を開始する際、又は製造中のラインにおいて異なる樹脂フィルム(例えば、厚みが異なるもの)の製造を開始する際等には、通常、ギアポンプの回転数及び樹脂フィルムの搬送速度等の製造装置の条件を徐々に、新たに成形する樹脂フィルムに合わせていく必要がある。製造装置の条件を新たな樹脂フィルムに合わせていくまでに製造されるものは無駄になるため、この制御時間を短時間にすることが求められる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、制御時間を短時間にすることができる制御システム、製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る制御システムは、樹脂原料をギアポンプに押し出して吐出させて、該ギアポンプより吐出された樹脂原料を搬送する工程と、樹脂原料から樹脂フィルムを成形する工程を含む樹脂フィルムの製造において、ギアポンプに押し出される樹脂原料の圧力と、ギアポンプの回転数と、樹脂フィルムの搬送速度とを制御する制御システムであって、搬送速度の目標値を取得する目標値取得手段と、搬送速度の測定値を取得する測定値取得手段と、測定値取得手段によって取得された測定値、及び目標値取得手段によって取得された目標値に基づき搬送速度の設定値を算出する算出手段と、樹脂原料の圧力を最初に制御した後に、搬送速度の測定値と算出手段によって算出された搬送速度の設定値との大小関係に基づく順番でギアポンプの回転数及び樹脂フィルムの搬送速度を制御する制御手段と、を備える。
【0007】
本発明に係る制御システムでは、樹脂原料の圧力が最初に制御された後に、搬送速度の測定値と搬送速度の設定値との大小関係に基づく順番でギアポンプの回転数及び樹脂フィルムの搬送速度が制御される。本発明に係る制御システムによれば、搬送速度を目標値にするまでの制御時間を短時間にすることができる。つまり、樹脂原料の供給及び樹脂フィルムの搬送を短時間で安定にすることができる。
【0008】
制御手段は、樹脂原料の圧力、ギアポンプの回転数及び樹脂フィルムの搬送速度を繰り返し制御することとしてもよい。この構成によれば、搬送速度の測定値と搬送速度の目標値とが大きく離れていた場合であっても、確実に搬送速度を目標値にすることができる。
【0009】
制御手段は、測定値取得手段によって取得された測定値が搬送速度の設定値よりも小さい場合には、樹脂原料の圧力、ギアポンプの回転数及び樹脂フィルムの搬送速度の順番に制御することとしてもよい。
【0010】
制御手段は、測定値取得手段によって取得された測定値が搬送速度の設定値よりも大きい場合には、樹脂原料の圧力、樹脂フィルムの搬送速度及びギアポンプの回転数の順番に制御することとしてもよい。
【0011】
本発明に係る製造装置は、上記の制御システムを含む樹脂フィルムの製造装置である。
【0012】
本発明に係る製造方法は、樹脂原料をギアポンプに押し出して吐出させて、該ギアポンプより吐出された樹脂原料を搬送する工程と、樹脂原料から樹脂フィルムを成形する工程とを含む樹脂フィルムを製造する製造方法であって、搬送速度の目標値を取得する目標値取得ステップと、搬送速度の測定値を取得する測定値取得ステップと、測定値取得ステップにおいて取得された測定値、及び目標値取得ステップにおいて取得された目標値に基づき搬送速度の設定値を算出する算出ステップと、樹脂原料の圧力を最初に制御した後に、搬送速度の測定値と算出ステップにおいて算出された搬送速度の設定値との大小関係に基づく順番でギアポンプの回転数及び樹脂フィルムの搬送速度を制御する制御ステップと、を含む。本発明に係る製造方法は、上記目標値取得ステップと上記測定値取得ステップと上記算出ステップと上記制御ステップとを含むので、樹脂原料の供給と樹脂フィルムの搬送とが安定した状態で製造することができる。ゆえに、本発明に係る製造方法より得られた樹脂フィルムは、厚みが均一である。
【0013】
制御ステップにおいて、樹脂原料の圧力、ギアポンプの回転数及び樹脂フィルムの搬送速度を繰り返し制御することとしてもよい。
【0014】
制御ステップにおいて、測定値取得ステップにおいて取得された測定値が搬送速度の設定値よりも小さい場合には、樹脂原料の圧力、ギアポンプの回転数及び樹脂フィルムの搬送速度の順番に制御することとしてもよい。
【0015】
制御ステップにおいて、測定値取得ステップにおいて取得された測定値が搬送速度の設定値よりも大きい場合には、樹脂原料の圧力、樹脂フィルムの搬送速度及びギアポンプの回転数の順番に制御することとしてもよい。
【0016】
樹脂原料はアクリル樹脂を含み、樹脂フィルムはアクリル樹脂フィルムであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、制御時間を短時間にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る制御システム、及び制御システムを含む製造装置の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る製造装置で実行される処理である製造方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態に係る実施例及び比較例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面と共に本発明に係る制御システム、製造装置及び製造方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1に本実施形態に係る制御システム10、及び該制御システム10を含む製造装置1を模式的に示す。製造装置1は、樹脂原料から樹脂フィルム(薄膜)を製造する装置である。製造装置1は、樹脂原料をギアポンプ23に押し出して吐出させて、該ギアポンプ23より吐出された樹脂原料を搬送する工程と、樹脂原料から樹脂フィルムを成形する工程を実施して、樹脂フィルムを製造する。樹脂原料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂が挙げられる。製造される樹脂フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、偏光板用部材であるアクリル保護フィルム等のアクリル樹脂フィルムが挙げられる。
【0021】
製造装置1は、ギアポンプ23に押し出される樹脂原料の圧力、ギアポンプ23の回転数及び樹脂フィルムの搬送速度を変更することで、これらの条件に応じた異なる樹脂フィルムを製造することができる。例えば、厚みが異なる樹脂フィルムを製造することができる。
【0022】
図1に示すように製造装置1は、樹脂フィルムを製造する装置として押出機21と、樹脂圧計22と、ギアポンプ23と、ダイ24と、搬送ロール25とを含んで構成される。なお、製造装置1は、通常の樹脂フィルムの製造装置に含まれる上記以外の構成が含まれていてもよい。
【0023】
押出機21は、その内部に樹脂原料を押し出すためのスクリューと原料投入口とを備えている。押出機21では、原料投入口から投入された樹脂原料が混練され、押し出される。押出機21は、スクリューの回転速度によって押し出される樹脂原料の圧力を制御することができる。スクリューは、押出機21が備えるモータによって回転される。樹脂圧計22は、押出機21によって押し出されてギアポンプ23に入れられる樹脂原料の圧力を測定するセンサである。樹脂圧計22と制御システム10とは、互いに情報が送受信可能なように接続されている。樹脂圧計22によって測定された圧力の測定値は、樹脂圧計22から制御システム10に出力される。
【0024】
上記制御システム10は、上記圧力の測定値を用いたフィードバック制御、具体的には、樹脂圧計22から出力された樹脂原料の圧力の測定値に応じて、押出機21(のスクリュー)の制御を行う。
【0025】
ギアポンプ23は、押出機21によって押し出された樹脂原料を吸い込んで、吐出する装置である。ギアポンプ23によって単位時間当たりに吐出される樹脂原料の量は、ギアポンプ23の単位時間当たりの回転数(以降、単位時間当たりの回転数を単に回転数と呼ぶ)に応じた一定の量となる。回転数が大きくなると吐出される樹脂原料が多くなり、それによって樹脂フィルムが厚くなる。回転数が小さくなると吐出される樹脂原料が少なくなり、それによって樹脂フィルムが薄くなる。
【0026】
ギアポンプ23は、回転数を測定する回転数計(エンコーダ)を備えている。ギアポンプ23は、回転数が設定値となるよう制御される。該制御は、例えば、回転数の測定値を用いたフィードバック制御、具体的には、制御システム10からから送信される上記の回転数の設定値に基づき行われる。
【0027】
ダイ24は、ギアポンプ23によって吐出された樹脂原料を樹脂フィルムに成形する金型である。搬送ロール(ポリシングロール)25は、ダイ24を通過した樹脂フィルムを冷却しながら搬送する。例えば、図1に示すように搬送ロール25は、複数のロールを含んで構成されている。搬送ロール25は、複数のロールのうちモータによって何れか(例えば、図1に示す中央のロール)を回転させて樹脂フィルムを搬送する。搬送ロール25による樹脂フィルムの搬送速度が大きくなると、それによって樹脂フィルムが薄くなる。搬送速度が小さくなると、それによって樹脂フィルムが厚くなる。
【0028】
搬送ロール25は、樹脂フィルムの搬送速度を測定する速度計(エンコーダ)を備えている。搬送ロール25では、搬送速度が設定値となるよう回転が制御される。該制御は、例えば、搬送速度の測定値を用いたフィードバック制御、具体的には、制御システム10から出力された上記の搬送速度の設定値に基づき行われる。以上が、製造装置1の樹脂フィルムを製造する構成である。
【0029】
制御システム10は、製造装置1における樹脂フィルムの製造の条件を制御する装置である。具体的には、制御システム10は、ギアポンプ23に押し出される樹脂原料の圧力(樹脂圧計22によって測定される樹脂原料の圧力)であるGP前圧と、ギアポンプ23の回転数であるGP回転数と、搬送ロール25による樹脂フィルムの搬送速度であるL/S(ラインスピード)とを制御する。通常、これらの条件は、製造される樹脂フィルムの厚み等に応じて一定の条件とされる。
【0030】
製造装置1において、制御システム10は、製造する樹脂フィルムの条件に応じて、GP前圧、GP回転数及びL/Sの制御を行う。
【0031】
制御システム10としては、例えば、プロセッサ及びメモリ等のハードウェアを含んで構成されている従来のコンピュータを用いることができる。制御システム10は、複数のコンピュータを含むコンピュータシステムとして構成されていてもよい。制御システム10の後述する各機能は、これらの構成要素がプログラム(ソフトウェア)等により動作することによって発揮される。制御システム10は、上記の制御が可能なように押出機21、樹脂圧計22、ギアポンプ23及び搬送ロール25と互いに情報の送受信が可能なように接続されている。
【0032】
本実施形態に係る制御システム10の機能を説明する。図1に示すように制御システム10は、目標値取得部11と、測定値取得部12と、算出部13と、制御部14とを備えて構成される。
【0033】
目標値取得部11は、L/Sの目標値を取得する目標値取得手段である。L/Sの目標値は、所望の樹脂フィルムを製造するための条件に相当するものである。例えば、製造される樹脂フィルム毎にL/Sの目標値が予め設定されている。目標値取得部11は、例えば、操作者による制御システム10に対する目標値の入力操作を受け付けてL/Sの目標値を取得する。製造装置1におけるL/Sは、例えば、(m/min)単位の値であり、L/Sの目標値も(m/min)単位の値である。
【0034】
更に、目標値取得部11は、L/Sの目標値に加えて、GP前圧及びGP回転数の目標値を取得する。GP前圧及びGP回転数の目標値も、所望の樹脂フィルムを製造するための条件に相当するものである。目標値取得部11は、例えば、L/Sの目標値と同様に操作者による入力操作を受け付けてGP前圧及びGP回転数の目標値を取得してもよい。あるいは、目標値取得部11は、取得したL/Sの目標値からGP前圧及びGP回転数の目標値を算出して取得してもよい。L/Sの目標値からGP前圧及びGP回転数の目標値の算出は、従来の方法によって行うことができる。製造装置1におけるGP前圧は、例えば、(MPa)単位の値であり、GP前圧の目標値も(MPa)単位の値である。製造装置1におけるGP回転数は、例えば、(rpm)単位の値であり、GP回転数の目標値も(rpm)単位の値である。
【0035】
目標値取得部11は、取得した各目標値を算出部13及び制御部14に出力する。制御システム10による制御は、例えば、目標値取得部11にて取得された目標値を起点として行われる。
【0036】
測定値取得部12は、L/Sの測定値を取得する測定値取得手段である。搬送ロール25に備えられた速度計は、製造装置1の稼働中、継続的にL/Sを測定し、その都度、L/Sの測定値を制御システム10に送信する。測定値取得部12は、上記速度計から送信されたL/Sの測定値を受信する。このように測定値取得部12は、リアルタイムにL/Sの測定値を取得する。また、測定値取得部12は、GP前圧及びGP回転数の測定値もリアルタイムに取得する。測定値取得部12は、GP前圧の測定値を樹脂圧計22から受信する。測定値取得部12は、GP回転数の測定値をギアポンプ23に備えられた回転数計から受信する。測定値取得部12は、取得したL/S、GP前圧及びGP回転数の測定値を算出部13及び制御部14に出力する。
【0037】
算出部13は、測定値取得部12によって取得された測定値、及び目標値取得部11によって取得された目標値に基づきL/Sの設定値を算出する算出手段である。制御開始時点のL/S、GP前圧及びGP回転数(の測定値)と目標値との間の差が大きい場合、1回の制御で目標値までの制御を行おうとすると、製造装置1を構成する装置が破損する等の問題が生じ得る。そのため、制御システム10は、複数回の制御によってL/S、GP前圧及びGP回転数を徐々に目標値に近づける制御を行う。算出部13によって算出される設定値は、1回あたりの制御で制御される値(目標とされる)である。算出部13は、L/Sの設定値に加えてGP前圧及びGP回転数の設定値も算出する。
【0038】
算出部13は、例えば、問題なく制御が行える値として予め設定されたGP回転数についての1回の制御の上限値を記憶しておく。1回の制御の上限値は、例えば、0.5(rpm)である。算出部13では、目標値取得部11からL/S、GP前圧及びGP回転数の目標値が入力される。また、算出部13では、測定値取得部12からL/S、GP前圧及びGP回転数の測定値が入力される。算出部13での算出に用いる測定値は、目標値が入力されたタイミングの直前で入力された測定値(制御開始時点の測定値)とする。
【0039】
算出部13は、GP回転数について目標値から制御開始時点の測定値を引く。これによって得られた値は、制御によってGP回転数を変動させる値である。算出部13は、得られた値を1回の制御の上限値で割り、得られた値の絶対値を繰り上げる。これによって得られた値は、目標値までの制御の総回数である。
【0040】
算出部13は、L/S、GP前圧及びGP回転数のそれぞれについて、目標値から制御開始時点の測定値を引いた値を算出し、その値を目標値までの制御の総回数で割り、その値を制御1回あたりの制御で変動させる値とする。算出部13は、制御開始時点のL/S、GP前圧及びGP回転数(の測定値)に、制御1回あたりの制御で変動させる値×制御の回数を足して、制御の回数毎の(即ち、1回目、2回目、…、総回数目それぞれの)目標値を算出する。なお、GP回転数については、最後の1回を除く制御の設定値を、制御開始時点の測定値に、1回の制御の上限値×制御の回数を足した値とし、最後の1回の制御の設定値を目標値としてもよい。
【0041】
上記の例では、GP回転数について1回の制御の上限値が設定されていたが、L/S又はGP前圧に1回の制御の上限値が設定されていて、L/S又はGP前圧の1回の制御の上限値に基づいて上記と同様に設定値が算出されてもよい。あるいは、L/S、GP前圧及びGP回転数の全てにについて1回の制御の上限値が設定されていて、それらに基づく目標値までの制御の総回数が最も大きくなる場合の値で設定値が算出されてもよい。算出部13は、算出した制御の総回数及び制御の回数毎のL/S、GP前圧及びGP回転数それぞれについての設定値を制御部14に出力する。
【0042】
制御部14は、GP前圧を最初に制御した後に、L/Sの測定値と算出部13によって算出されたL/Sの設定値との大小関係に基づく順番でGP回転数及びL/Sを制御する制御手段である。制御部14は、GP前圧、GP回転数及びL/Sを繰り返し制御してもよい。制御部14は、L/Sの測定値がL/Sの設定値よりも小さい場合には、GP前圧、GP回転数及びL/Sの順番に制御してもよい。制御部14は、L/Sの測定値がL/Sの設定値よりも大きい場合には、GP前圧、L/S及びGP回転数の順番に制御してもよい。具体的には、制御部14は、以下のように制御を行う。
【0043】
制御部14は、目標値取得部11からL/S、GP前圧及びGP回転数の目標値を入力する。更に、制御部14は、測定値取得部12からL/S、GP前圧及びGP回転数の測定値を入力する。測定値の入力は、上記のようにリアルタイムに行われる。制御部14は、算出部13から、制御の総回数及び制御の回数毎のL/S、GP前圧及びGP回転数それぞれについての設定値を入力する。
【0044】
制御部14は、制御の回数毎のGP前圧の設定値を押出機21に送信してGP前圧を制御する。例えば、1回目の制御の開始時点で1回目のGP前圧の設定値を押出機21(のスクリュー)に送信する。押出機21は、GP前圧が設定値となるように動作する。制御部14は、同様に制御の回数毎のGP回転数の設定値をギアポンプ23に送信してGP回転数を制御する。制御部14は、同様に制御の回数毎のL/Sの設定値を搬送ロール25に送信してGP回転数を制御する。制御部14は、GP前圧、GP回転数及びL/Sの測定値を監視し、測定値が各制御の回について、設定値に基づく条件を満たしているかどうか判断する。
【0045】
通常、GP回転数及びL/Sの測定値は、GP前圧に比べると極めて短時間で目標値に到達する。一方で、GP前圧は、GP回転数及びL/Sと比べて目標値に到達するまでの時間が長い。ゆえに、GP前圧の制御が完了した場合、GP前圧、GP回転数及びL/Sの各制御が完了したとみなしてよい。更に、GP前圧の測定値が予め設定された一定の範囲(即ち、設定値と同等とみなしてよい範囲)内に入っているか否かを判断し、該測定値が予め設定された一定時間、該範囲内に入っていると判断した場合、GP前圧が設定値に達しているとみなしてよい。即ち、GP前圧について、測定値が一定時間以上継続して設定値に近似した値であれば、GP前圧、GP回転数及びL/Sがそれぞれ設定値に達しているとみなしてよい(この場合、測定値が設定値に基づく条件を満たしている)。なお、上記の判断には、GP前圧の測定値の平均が用いられてもよい。また、制御部14による設定値に達しているか否かの判断には、GP前圧だけでなく、GP回転数及びL/Sがあわせて用いられてもよい。
【0046】
制御部14は、測定値が条件を満たしていると判断した場合、次の回の設定値を用いて上記と同様に制御を行う。制御の回数が総回数に達した場合、制御部14は、測定値が、制御全体の終了条件を満たしているかどうか判断する。例えば、制御部14は、GP前圧、GP回転数及びL/Sの測定値が、予め設定された一定の範囲(即ち、目標値と同等とみなしてよい範囲)内に入っているか否かを判断し、全ての測定値が予め設定された一定時間、該範囲内に入っていると判断した場合、制御全体の終了条件を満たしたとする。即ち、GP前圧、GP回転数及びL/Sの各測定値が一定時間以上継続して各目標値に近似した値であれば、制御が完了したとみなしてよい(この場合、測定値が制御全体の終了条件を満たしている)。なお、上記の判断には、それぞれの測定値の平均が用いられてもよい。制御部14は、測定値が、制御全体の終了条件を満たしていると判断すると制御を終了する。
【0047】
制御部14は、制御を行う時点のL/Sの測定値がL/Sの設定値よりも小さい場合、即ち、L/Sを増速する(L/Sを大きくする)場合、各回の制御において、GP前圧、GP回転数及びL/Sの順番に制御を行うことができる。この場合、制御部14は、GP前圧、GP回転数及びL/Sの順番に設定値を、押出機21、ギアポンプ23及び搬送ロール25に送信する。設定値の送信は、GP前圧、GP回転数及びL/S毎に設定値に基づく条件を満たしているか否かにかかわらず順次行われればよい。例えば、押出機21へのGP前圧の設定値の送信を行って予め設定した時間(例えば、1,2秒)が経過した後にギアポンプ23へのGP回転数の設定値の送信を行う。また、ギアポンプ23へのGP回転数の設定値の送信を行って予め設定した時間(例えば、1,2秒)が経過した後に搬送ロール25へのL/Sの設定値の送信を行う。上記のように各制御の間で短時間(例えば、1,2秒)を空けるのは、前のパラメータの制御が開始されてから次のパラメータの制御を行うことで安定的な制御を行うためである。
【0048】
制御部14は、制御を行う時点のL/Sの測定値がL/Sの設定値よりも大きい場合、即ち、L/Sを減速する(L/Sを小さくする)場合、各回の制御において、GP前圧、L/S及びGP回転数の順番に制御を行う。この場合の順番が変わっている以外は、上記のL/Sを増速する場合の制御と同様である。
【0049】
なお、上記の制御の順番は、L/Sを増速するか、減速するかに応じて予め制御部14に記憶させておいてもよい。あるいは、制御部14が、制御を行う時点のL/Sの測定値とL/Sの設定値とを比較して、比較結果に応じた順序で制御を行うようにしてもよい。以上が、本実施形態に係る制御システム10の機能である。
【0050】
引き続いて、図2のフローチャートを用いて、本実施形態に係る制御システム10による処理(製造装置1が行う動作方法)を説明する。本処理の開始時点では、製造装置1は動作しており、製造装置1には樹脂原料が供給されて樹脂フィルムが製造されている。本処理は、L/Sを処理開始前よりも増速させる場合の例である。
【0051】
本処理では、まず、目標値取得部11によって、L/Sの目標値、GP前圧及びGP回転の目標値が取得される(S01、目標値取得ステップ)。また、測定値取得部12によって、L/S、GP前圧及びGP回転数の測定値が取得される(S02、測定値取得ステップ)。なお、測定値取得部12による測定値の取得は、本処理が行われている間、継続的に行われている。
【0052】
続いて、算出部13によって、測定値取得部12によって取得された測定値、及び目標値取得部11によって取得された目標値に基づき、制御の総回数及び制御の回数毎のL/S、GP前圧及びGP回転数の設定値が算出される(S03、算出ステップ)。
【0053】
続いて、制御部14によって、1回目の制御のL/S、GP前圧及びGP回転数の設定値に基づき制御が行われる。まず、GP前圧を設定値にする制御が行われる(S04、制御ステップ)。具体的には、制御部14から押出機21に設定値が送信されて該制御が行われる。続いて、GP回転数を設定値にする制御が行われる(S05、制御ステップ)。具体的には、制御部14からギアポンプ23に設定値が送信されて該制御が行われる。続いて、L/Sを設定値にする制御が行われる(S06、制御ステップ)。具体的には、制御部14から搬送ロール25に設定値が送信されて該制御が行われる。
【0054】
続いて、制御部14によって、制御の回数が総回数となっているか否かが判断される(S07、制御ステップ)。制御の回数が総回数となっていないと判断された場合(S07のNO)、続いて、制御部14によって、その時点の測定値が設定値に基づく条件を満たしているか否かが判断される(S08、制御ステップ)。測定値が設定値に基づく条件を満たしていないと判断された場合(S08のNO)、測定値が設定値に基づく条件を満たしていると判断されるまで繰り返し該判断が行われる(S08、制御ステップ)。
【0055】
測定値が設定値に基づく条件を満たしていると判断された場合(S08のYES)、続いて、続いて、制御部14によって、次回目の制御のL/S、GP前圧及びGP回転数の設定値が用いられて(S09、制御ステップ)、上記と同様の制御及び判断(S04-S07、制御ステップ)が行われる。S07において、制御の回数が総回数となっていると判断された場合(S07のYES)、続いて、制御部14によって、その時点の測定値が制御終了条件を満たしているか否かが判断される(S10、制御ステップ)。測定値が制御終了条件を満たしていないと判断された場合(S10のNO)、測定値が制御終了条件を満たしていると判断されるまで繰り返し該判断が行われる(S10、制御ステップ)。
【0056】
測定値が制御終了条件を満たしていると判断された場合(S10のYES)、制御されたL/S、GP前圧及びGP回転数にて樹脂フィルムの製造が行われる。即ち、製造装置1では、所望の条件で樹脂フィルムの製造が行われる。
【0057】
なお、上述した処理は、L/Sを処理開始前よりも増速させる場合の例であったが、L/Sを処理開始前よりも減速させる場合、GP回転数の制御(S05)とL/Sの制御(S06)との順番が逆の処理となる。以上が、本実施形態に係る製造装置1で実行される処理である。
【0058】
なお、製造装置1における制御は、制御システム10以外、例えば、製造装置1の操作者によって行われてもよい。本実施形態に係る製造方法を行う主体の一部は、該操作者となる。この場合、製造装置1には、制御システム10が含まれていなくてもよい。
【0059】
本実施形態では、GP前圧を最初に制御した後に、L/Sの測定値とL/Sの設定値との大小関係に基づく順番でGP回転数及びL/Sが制御される。通常、制御に時間がかかるGP前圧を最初に制御することで、本実施形態によれば、L/Sを目標値にするまでの制御時間を短時間にすることができる。
【0060】
本実施形態のようにGP前圧、GP回転数及びL/Sを繰り返し制御する、即ち、上述したように複数回の制御を行ってもよい。この構成によれば、制御開始時点のL/Sの測定値とL/Sの目標値とが大きく離れていた場合であっても、確実にL/Sを目標値にすることができる。但し、制御開始時点のL/Sの測定値とL/Sの目標値との差が小さい場合等には、1回の制御でL/Sを目標値にしてもよい。
【0061】
本実施形態のようにL/Sの測定値がL/Sの設定値よりも小さい場合、即ち、L/Sを増速する場合には、GP前圧、GP回転数及びL/Sの順番に制御してもよい。L/Sを増速する場合、通常、搬送される樹脂フィルムは薄くなるが、L/Sを増速する前にGP回転数を制御することで、樹脂フィルムの製造におけるその影響を小さくすることができる。その結果、樹脂原料の供給や樹脂フィルムの搬送が安定した状態で製造することができる。
【0062】
一方で、L/Sの測定値がL/Sの設定値よりも大きい場合、即ち、L/Sを減速する場合には、GP前圧、L/S及びGP回転数の順番に制御してもよい。L/Sを減速する場合、通常、搬送される樹脂フィルムは厚くなるが、L/Sを減速した後にGP回転数を制御することで、樹脂フィルムの製造におけるその影響を小さくすることができる。その結果、樹脂フィルムを安定して製造することができる。但し、GP前圧、GP回転数及びL/Sの制御の順番は、GP前圧を最初にしたものであればよく、上記以外の順番であってもよい。
【0063】
本発明に係る製造方法は、樹脂原料をギアポンプ23に押し出して吐出させて、該ギアポンプ23より吐出された樹脂原料を搬送する工程と、樹脂原料から樹脂フィルムを成形する工程とを含む。該製造方法は、上述の目標値取得ステップと、測定値取得ステップと、算出ステップと、制御ステップとを含む。
本製造方法において、GP前圧、L/S及びGP回転数の各設定値は任意であるが、例えば、GP前圧の設定値は0.1~60(MPa)、L/Sの設定値は1~200(m/s)、GP回転数の設定値は0.1~60(rpm)の範囲内で行う。
本発明に係る製造方法は、上記目標値取得ステップと上記測定値取得ステップと上記算出ステップと上記制御ステップとを含むので、樹脂原料の供給と樹脂フィルムの搬送とが安定した状態で製造することができる。ゆえに、本発明に係る製造方法より得られた樹脂フィルムは、厚みが均一である。
【実施例
【0064】
引き続いて、本実施形態に係る実施例を説明する。図3に本実施形態の実施例及び比較例を示す。本実施例は、何れもL/Sを増速し、3回の制御によってL/Sが目標値に到達する場合の例である。本実施例では、GP前圧、GP回転数及びL/Sの順番に制御した場合の実施例1、GP前圧、L/S及びGP回転数の順番に制御した場合の実施例2、及びGP回転数、L/S及びGP前圧の順番に制御した場合(即ち、GP前圧を最初にしなかった順番で制御した場合)の比較例1を示す。
【0065】
図3の表に、実施例1、実施例2及び比較例1それぞれの、L/Sが目標値に到達するまでの制御時間(増速完了までに要する時間)を示す。図3の表に示すように、実施例1及び実施例2は、比較例1に比べて制御時間が短い。また、実施例1と実施例2とを比べると、実施例1の方が、制御時間が短い。このように本実施例では、制御時間を短時間にできていることが示されている。また、図3の表に、実施例1及び実施例2それぞれの、製造される樹脂フィルムの安定性L/Sが目標値に到達するまでの制御時間(増速完了までに要する時間)を示す。図3の表に示すように、実施例1の方が、実施例2に比べて樹脂フィルムの安定性がよい。このように本実施例では、制御の順番に応じて高い樹脂フィルムの安定性が得られることが示されている。
【符号の説明】
【0066】
1…製造装置、10…制御システム、11…目標値取得部、12…測定値取得部、13…算出部、14…制御部、21…押出機、22…樹脂圧計、23…ギアポンプ、24…ダイ、25…搬送ロール。
図1
図2
図3