(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/38 20060101AFI20240723BHJP
H03F 3/34 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H03F3/38
H03F3/34 210
(21)【出願番号】P 2020165879
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大司
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108494370(CN,A)
【文献】特開2020-145545(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108270408(CN,A)
【文献】特表2012-502581(JP,A)
【文献】特表2005-502254(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0294331(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111697928(CN,A)
【文献】米国特許第08179195(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、
前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、
前記第2のチョッパ変調器の出力に入力が接続され、前記第2のチョッパ変調器の入力に出力が接続され、前記第2のチョッパ変調器の出力の高周波雑音成分を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するリップル校正回路と、を備え、
前記リップル校正回路は、
前記リップル校正回路に入力される高周波雑音成分を検出するハイパスフィルタ回路と、
前記ハイパスフィルタ回路の出力を増幅する増幅回路を有し、前記高周波雑音成分を低周波成分に復調する機能と前記増幅回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能とを有する位相反転オートゼロ増幅器と、
前記位相反転オートゼロ増幅器の出力の高周波成分を低減するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力を増幅し、前記リップル校正回路の出力とする第2の増幅器と、を有
し、
前記位相反転オートゼロ増幅器は、
前記位相反転オートゼロ増幅器の入力を反転増幅する第1のオートゼロ増幅回路と、
前記位相反転オートゼロ増幅器の入力を非反転増幅する第2のオートゼロ増幅回路と、を備え、
前記第1のオートゼロ増幅回路及び前記第2のオートゼロ増幅回路は、
自回路における増幅器と、
容量と、
前記増幅器と、前記ハイパスフィルタ回路及び前記フィルタ回路との接続をオンオフする第1のスイッチと、
前記増幅器の入力の短絡をオンオフする第2のスイッチと、
前記容量と、前記増幅器の出力との接続をオンオフする第3のスイッチと、を備え、
前記第1のスイッチをオフ、前記第2のスイッチ及び前記第3のスイッチをオンして、前記増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正信号を前記容量によりサンプリングする校正モードと、前記第1のスイッチをオン、前記第2のスイッチ及び前記第3のスイッチをオフして、前記校正信号によりオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された前記増幅器によって入力信号を増幅する増幅モードと、を有し、
前記第1のオートゼロ増幅回路が前記増幅モードとして反転増幅動作するとき、前記第2のオートゼロ増幅回路が前記校正モードとして動作する第1の状態と、前記第2のオートゼロ増幅回路が前記増幅モードとして非反転増幅動作するとき、前記第1のオートゼロ増幅回路が前記校正モードとして動作する第2の状態と、を有し、
前記第2のチョッパ変調器の動作に連動して、前記スイッチを所定の動作クロックによって駆動して前記校正モードと前記増幅モードとを交互に動作させ、前記リップル校正回路が負帰還構成となるように前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替え、
前記位相反転オートゼロと、前記ハイパスフィルタ回路との間には、前記ハイパスフィルタ回路の出力のリップルノイズを低周波成分に変調するチョッパ変調器が設けられていない、
増幅装置。
【請求項2】
前記ハイパスフィルタ回路は、
結合容量と抵抗とにより構成される容量結合回路を含む、
請求項1に記載の増幅装置。
【請求項3】
前記フィルタ回路は、
増幅器と容量とにより構成される積分回路を含む、
請求項1に記載の増幅装置。
【請求項4】
前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第3の増幅器、を備える、
請求項1に記載の増幅装置。
【請求項5】
前記第3の増幅器に入力される高周波雑音成分を低減するローパスフィルタ回路、を備える、
請求項
4に記載の増幅装置。
【請求項6】
前記第3の増幅器は、
入力信号を増幅する第4の増幅器と、
前記第4の増幅器の出力を増幅する第5の増幅器と、
位相補償回路と、を含む、
請求項
4又は5に記載の増幅装置。
【請求項7】
前記第4の増幅器は、
入力信号を増幅する初段増幅器と、
前記初段増幅器の出力を増幅する1つ以上の増幅器と、を含む、
請求項
6に記載の増幅装置。
【請求項8】
前記第3の増幅器は、位相補償回路を含み、
前記ローパスフィルタ回路は、
前記第2のチョッパ変調器と前記第3の増幅器との間に接続された抵抗と、前記位相補償回路における容量とにより構成されるフィルタ回路を含む、
請求項
5に記載の増幅装置。
【請求項9】
前記第1ないし第5の増幅器のうちの少なくともいずれか一つは、相互コンダクタンス増幅器を含む、
請求項1、
4、
6のうちのいずれか一項に記載の増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅器は、センサ信号等の増幅に広く用いられているが、いくつかの応用例では、増幅器内部のオフセット成分及び低周波雑音成分が非常に小さいことを要求される。従来の増幅器では、オフセット成分及び低周波雑音成分がその要求を満たすことができないため、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法が多く存在している。
【0003】
オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法の一例として、チョッパ安定化増幅器が存在している。チョッパ安定化増幅器は、チョッパ変調器を用いて入力段の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分のみが高周波帯域に変調するように構成することで、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法である。
【0004】
オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法の他の例として、オートゼロ増幅器が存在している。オートゼロ増幅器は、内蔵している校正回路によって増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法である。一般にオートゼロ増幅器は、スイッチによって入出力を切り替え、校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。そのため、一つのオートゼロ増幅器だけでは、校正モードの時に信号を増幅することができない。そこで、例えば非特許文献1に開示されているように、二つのオートゼロ増幅器を用意し、一方のオートゼロ増幅器が校正モードの時、もう片方が増幅モードとなり信号を増幅するように構成されたPing-Pongオートゼロ増幅器が採用されている。
【0005】
以上のように、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法の例として、チョッパ安定化増幅器とオートゼロ増幅器とが存在する。しかし、チョッパ安定化増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分が高周波帯域に変調され、それがリップルノイズとなり、リップルノイズによる高周波雑音成分が生じる課題がある。また、オートゼロ増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減するような信号を校正回路がサンプリングする必要があるため、サンプリングの際に生じるエイリアシング雑音が発生し、エイリアシング雑音による低周波雑音成分が生じる課題がある。このため、これらの課題を改善するための手法がいくつか存在している。
【0006】
一例として、特許文献1に開示されているように、チョッパ安定化増幅器とPing-Pongオートゼロ増幅器の動作を組み合わせた手法が存在する。この手法を用いた場合、Ping-Pongオートゼロ増幅器によって発生したエイリアシング雑音は、チョッパ変調器によって高周波帯域に変調されるため、低周波雑音成分を大きく低減できる。また、チョッパ変調器によって高周波帯域に変調されたオフセット成分及び低周波雑音成分は、Ping-Pongオートゼロ増幅器によって大きく低減される。このため、オフセット成分及び低周波雑音成分が高周波帯域に変調されることによって発生するリップルノイズによる高周波雑音成分も大きく低減することができる。
【0007】
他の例として、特許文献2に開示されているように、チョッパ安定化増幅器の後段にスイッチドキャパシタ型のノッチフィルタを使用する手法が存在する。この手法を用いることによって、チョッパ安定化増幅器によって発生したリップルノイズはノッチフィルタによって低減され、結果としてオフセット成分及び低周波雑音成分だけではなく、高周波雑音も低減することができる。
【0008】
さらに他の例として、特許文献3、特許文献4に開示されているように、フィードバック手法を用いることで、チョッパ安定化増幅器のリップルノイズを低減する手法が存在する。この手法は、リップルノイズをフィードバック回路の入力の増幅器やカップリング容量によって検出した後に、フィードバック回路内部のチョッパ変調器によってリップルノイズをオフセット成分及び低周波雑音成分に復調し、入力段の増幅器の出力に負帰還させるものである。このフィードバックにより、入力段の増幅器によって発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。この手法により、チョッパ変調器によって変調されるオフセット成分及び低周波雑音成分が低減され、結果としてリップルノイズ、つまり高周波雑音成分を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第6476671号明細書
【文献】米国特許第7292095号明細書
【文献】米国特許第7764118号明細書
【文献】米国特許第8120422号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Ion E. Opris and Gregory T.A. Kovacs, “A Rail-to-Rail Ping-Pong Op-Amp”, IEEE J0. Solid-State Circuits, vol. 31, no 9, pp. 1320-1324, Sep. 1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような従来例の手法では、リップルノイズを高精度に低減できない場合がある。例えば、フィードバック手法を用いてリップルノイズを負帰還させる構成では、フィードバック回路の増幅器におけるオフセット成分及び低周波雑音成分の影響によって、リップルノイズを十分に低減できないことがある。また、フィードバック回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するために、Ping-Pongオートゼロ増幅器を用いると、スイッチ及びクロック信号の配線の増加により、回路面積を増大させる課題が生じる。また、スイッチ及びクロック信号の配線の寄生容量の増加により、増幅回路の性能を劣化させてしまう場合がある。
【0012】
本発明は、簡易な構成によってリップルノイズをより高精度に低減することが可能な増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、入力信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、前記第2のチョッパ変調器の出力に入力が接続され、前記第2のチョッパ変調器の入力に出力が接続され、前記第2のチョッパ変調器の出力の高周波雑音成分を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するリップル校正回路と、を備え、前記リップル校正回路は、前記リップル校正回路に入力される高周波雑音成分を検出するハイパスフィルタ回路と、前記ハイパスフィルタ回路の出力を増幅する増幅回路を有し、前記高周波雑音成分を低周波成分に復調する機能と前記増幅回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能とを有する位相反転オートゼロ増幅器と、前記位相反転オートゼロ増幅器の出力の高周波成分を低減するフィルタ回路と、前記フィルタ回路の出力を増幅し、前記リップル校正回路の出力とする第2の増幅器と、を有する、増幅装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記位相反転オートゼロ増幅器は、前記位相反転オートゼロ増幅器の入力を反転増幅する第1のオートゼロ増幅回路と、前記位相反転オートゼロ増幅器の入力を非反転増幅する第2のオートゼロ増幅回路と、を備え、前記第1のオートゼロ増幅回路及び前記第2のオートゼロ増幅回路は、自回路における増幅器と、容量と、前記増幅器と、前記ハイパスフィルタ回路及び前記フィルタ回路との接続をオンオフする第1のスイッチと、前記増幅器の入力の短絡をオンオフする第2のスイッチと、前記容量と、前記増幅器の出力との接続をオンオフする第3のスイッチと、を備え、前記第1のスイッチをオフ、前記第2のスイッチ及び前記第3のスイッチをオンして、前記増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正信号を前記容量によりサンプリングする校正モードと、前記第1のスイッチをオン、前記第2のスイッチ及び前記第3のスイッチをオフして、前記校正信号によりオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された前記増幅器によって入力信号を増幅する増幅モードと、を有し、前記第1のオートゼロ増幅回路が前記増幅モードとして反転増幅動作するとき、前記第2のオートゼロ増幅回路が前記校正モードとして動作する第1の状態と、前記第2のオートゼロ増幅回路が前記増幅モードとして非反転増幅動作するとき、前記第1のオートゼロ増幅回路が前記校正モードとして動作する第2の状態と、を有し、前記第2のチョッパ変調器の動作に連動して、前記スイッチを所定の動作クロックによって駆動して前記校正モードと前記増幅モードとを交互に動作させ、前記リップル校正回路が負帰還構成となるように前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替え、前記位相反転オートゼロと、前記ハイパスフィルタ回路との間には、前記ハイパスフィルタ回路の出力のリップルノイズを低周波成分に変調するチョッパ変調器が設けられていない、増幅装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記ハイパスフィルタ回路は、結合容量と抵抗とにより構成される容量結合回路を含む、増幅装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記フィルタ回路は、増幅器と容量とにより構成される積分回路を含む、増幅装置を提供する。
【0017】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第3の増幅器、を備える、増幅装置を提供する。
【0018】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記第3の増幅器に入力される高周波雑音成分を低減するローパスフィルタ回路、を備える、増幅装置を提供する。
【0019】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記第3の増幅器は、入力信号を増幅する第4の増幅器と、前記第4の増幅器の出力を増幅する第5の増幅器と、位相補償回路と、を含む、増幅装置を提供する。
【0020】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記第4の増幅器は、入力信号を増幅する初段増幅器と、前記初段増幅器の出力を増幅する1つ以上の増幅器と、を含む、増幅装置を提供する。
【0021】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記第3の増幅器は、位相補償回路を含み、前記ローパスフィルタ回路は、前記第2のチョッパ変調器と前記第3の増幅器との間に接続された抵抗と、前記位相補償回路における容量とにより構成されるフィルタ回路を含む、増幅装置を提供する。
【0022】
また、本発明は、上記いずれかの増幅装置であって、前記第1ないし第5の増幅器のうちの少なくともいずれか一つは、相互コンダクタンス増幅器を含む、増幅装置を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スイッチ及びクロックの配線の数を削減した簡易な構成によってリップルノイズをより高精度に低減することが可能な増幅装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態の増幅装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の増幅装置におけるハイパスフィルタ回路及びフィルタ回路の具体的な構成例を含む増幅装置を示す図である。
【
図3】
図2の増幅装置における第1の状態のスイッチの接続を示す図である。
【
図4】
図2の増幅装置における第2の状態のスイッチの接続を示す図である。
【
図5】本実施形態の増幅装置におけるクロック信号の動作波形の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態の増幅装置による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
【
図7】第2の実施形態の増幅装置の構成を示す図である。
【
図8】第3の実施形態の増幅装置の構成を示す図である。
【
図9】増幅装置の出力段に設ける増幅器の変形例の構成を示す図である。
【
図10】増幅装置において用いられるチョッパ変調器の構成例を示す図である。
【
図11】チョッパ安定化増幅器を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
【
図12】
図11の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
【
図13】オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する増幅回路の第1比較例の構成を示す図である。
【
図14】オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する増幅回路の第2比較例の構成を示す図である。
【
図15】
図14の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る増幅装置を具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
(本実施形態に至る背景)
図10は、増幅装置において用いられるチョッパ変調器の構成例を示す図である。チョッパ変調器100は、二つの入出力間の経路に接続されるスイッチΦaと、二つの入出力を反転させた経路に接続されるスイッチΦbとを備える。チョッパ変調器100は、スイッチΦaとスイッチΦbの一方をオン、他方をオフとして交互にオンとオフを繰り返し、入力端Chopinと出力端Chopoutの間の経路の接続を交互に切り替える。これにより、チョッパ変調器100は、入力信号の低周波成分を高周波成分に変調し、入力信号の高周波成分を低周波成分に復調する。例えば、チョッパ変調器100を駆動するチョッピング周波数を100kHzとする。この場合、入力信号の低周波成分は100kHz近辺の高周波成分に変調され、入力信号の100kHz近辺の高周波成分は低周波成分に復調される。
【0027】
図11は、チョッパ安定化増幅器を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
図11では基本的なチョッパ安定化増幅器の構成を示している。チョッパ安定化増幅器は、チョッパ変調器1001、増幅器1002、チョッパ変調器1003を備える。
図11の構成において、増幅器1002にはオフセット成分(Voffset)及び低周波雑音成分(1/f noise)が発生する。そこで、チョッパ変調器1001によって低周波帯域の信号成分を増幅器1002のオフセット成分及び低周波雑音成分が少ない高周波帯域に変調し、増幅器1002にて増幅した後、チョッパ変調器1003によって高周波帯域の信号成分を低周波帯域に復調する。これにより、チョッパ安定化増幅器の全体のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。しかし、チョッパ変調器1003によって高周波帯域に変調されたオフセット成分及び低周波雑音成分はリップルノイズとなり、高周波雑音成分が発生する課題が生じる。
【0028】
図12は、
図11の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
図12では、信号成分、雑音成分、オフセット成分のそれぞれについて、時間波形と周波数分布の変化過程のイメージを示している。
図12において、上段は時間波形、下段は周波数特性をそれぞれ示している。チョッパ変調器1001及びチョッパ変調器1003のチョッピング周波数をfchとする。信号成分は、一度チョッパ変調器1001によって高周波帯域に変調された後に、増幅器1002にて増幅され、増幅器1002のオフセット成分及び低周波雑音成分が加算される。その後、チョッパ変調器1003を通すことにより信号成分は復調され、オフセット成分及び低周波雑音成分は高周波帯域に変調される。このように、チョッパ安定化増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調することによってリップルノイズが発生してしまうため、低雑音化を図るためには、リップルノイズの原因となるオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する必要がある。
【0029】
図13は、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する増幅回路の第1比較例として、リップル低減回路を用いた増幅回路の構成例を示す図である。本明細書では、
図13に示すような高周波雑音成分を負帰還してリップルノイズ成分を低減する回路をリップル低減(Ripple Reduction)回路と呼ぶことにする。第1比較例の増幅回路は、チョッパ変調器101、相互コンダクタンス増幅器111、チョッパ変調器102、増幅器120、及びリップル低減回路200を備える。第1比較例の構成において、相互コンダクタンス増幅器111にはオフセット成分及び低周波雑音成分が発生する。そこで、
図11の増幅回路と同様に、チョッパ変調器101によって低周波帯域の信号成分を相互コンダクタンス増幅器111のオフセット成分及び低周波雑音成分が少ない高周波帯域に変調し、相互コンダクタンス増幅器111にて増幅した後、チョッパ変調器102によって高周波帯域の信号成分を低周波帯域に復調する。このとき、チョッパ変調器102の出力にリップルノイズが発生する。このため、リップル低減回路200によって、チョッパ変調器102の出力に発生したリップルノイズを検出してチョッパ変調器102の入力に負帰還させることにより、リップルノイズを低減する。
【0030】
リップル低減回路200は、ハイパスフィルタ回路331a、チョッパ変調器103、相互コンダクタンス増幅器211、フィルタ回路332a、及び相互コンダクタンス増幅器213を備える。ハイパスフィルタ回路331aは、例えば、結合容量C1、抵抗R1、結合容量C2、抵抗R2を有する容量結合回路により構成され、リップル低減回路200の入力の低周波成分を低減し、リップルノイズを検出する。チョッパ変調器103は、ハイパスフィルタ回路331aの出力のリップルノイズを低周波成分に復調する。相互コンダクタンス増幅器211は、チョッパ変調器103の出力を増幅する。フィルタ回路332aは、例えば、相互コンダクタンス増幅器212、容量C3、容量C4を有して構成された積分回路が用いられ、相互コンダクタンス増幅器211の出力の高周波成分を低減する。相互コンダクタンス増幅器213は、フィルタ回路332aの出力を増幅し、リップル低減回路200の出力として信号を出力し、チョッパ変調器102の入力に負帰還する。リップル低減回路200は、
図13の増幅回路において常に負帰還状態となるように接続される。
【0031】
この第1比較例では、リップル低減回路200を用いることにより、チョッパ変調器102の出力に現れるリップルノイズを低減することができる。しかし、リップル低減回路200において、相互コンダクタンス増幅器211のオフセット成分及び低周波雑音成分がリップル低減回路200によるリップルノイズの低減機能を制限してしまう課題がある。
【0032】
図14は、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する増幅回路の第2比較例として、リップル低減回路にPing-Pongオートゼロ増幅器を用いた増幅回路の構成例を示す図である。第2比較例は、
図13の第1比較例における相互コンダクタンス増幅器211をPing-Pongオートゼロ増幅器600に置き換えたリップル低減回路200aを有する増幅回路の構成例を示す。Ping-Pongオートゼロ増幅器600は、オートゼロ増幅回路610及びオートゼロ増幅回路620を備える。オートゼロ増幅回路610及びオートゼロ増幅回路620は、自身の入力を増幅する増幅モードと、自身のオフセット成分及び低周波雑音成分を内蔵する校正回路により低減する校正モードとを備える。Ping-Pongオートゼロ増幅器600は、オートゼロ増幅回路610及びオートゼロ増幅回路620が交互に増幅モードと校正モードとを切り替えて動作することにより、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減させた状態で増幅が可能である。
【0033】
図15は、
図14の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の一例を示す図である。
図15のクロック信号は、チョッパ変調器101、102、103のスイッチΦ1、Φ2、Φ3、Φ4、Φ5、Φ6、及び、オートゼロ増幅回路610、620のスイッチΦ611a、Φ611b、Φ612、Φ613、Φ621a、Φ621b、Φ622、Φ623をそれぞれ駆動する動作クロックの波形を示している。
図14の増幅回路では、チョッパ変調器101、102、103とオートゼロ増幅回路610、620とが動作クロックによって連動して切り替え動作する。Ping-Pongオートゼロ増幅器600は、オートゼロ増幅回路610が増幅モードであるとき、オートゼロ増幅回路620は校正モードとして動作し、オートゼロ増幅回路620が増幅モードであるとき、オートゼロ増幅回路610は校正モードとして動作するように制御される。
【0034】
この第2比較例では、Ping-Pongオートゼロ増幅器600はオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された増幅器であるため、リップル低減回路200aによるリップルノイズの低減をより高精度に実現できる。しかし、Ping-Pongオートゼロ増幅器を用いる場合、スイッチ及びクロック信号の配線の数が増加してしまう。スイッチ及びクロック信号の配線の数の増加は、回路面積を増大させるだけでなく、スイッチ及びクロック信号の配線の寄生容量の増加により、信号ラインやオートゼロ増幅器の校正回路にクロック信号がリークし、増幅回路の性能を劣化させてしまう場合がある。この課題を解決するには、スイッチ及びクロックの配線の数を削減した簡潔な回路構成が必要となる。
【0035】
本実施形態では、上記事情に鑑み、リップルノイズをより高精度に低減することが可能であり、スイッチ及びクロックの配線の数を削減した簡潔な構成の増幅回路を実現できる増幅装置の構成例を示す。
【0036】
以下の実施形態では、チョッパ変調器及びオートゼロ増幅器を用いたチョッパ安定化増幅器を含む増幅装置の構成例を例示する。
【0037】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の増幅装置の構成を示す図である。
【0038】
第1の実施形態の増幅装置は、チョッパ変調器101、相互コンダクタンス増幅器111、チョッパ変調器102、及びリップル校正回路300を備える。増幅装置は、入力端より入力される入力信号Vinを増幅し、出力端より増幅後の出力信号Voutを出力する。本明細書では、
図1に示すような高周波雑音成分を負帰還してリップルノイズ成分を低減する回路をリップル校正(Ripple Calibration)回路と呼ぶことにする。
【0039】
チョッパ変調器101は、入力端より入力される入力信号を高周波帯域に変調する。相互コンダクタンス増幅器111は、チョッパ変調器101の出力を増幅する。チョッパ変調器102は、相互コンダクタンス増幅器111の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する。
図10のチョッパ変調器100と同様に、チョッパ変調器101はスイッチΦ1及びΦ2を有して構成され、チョッパ変調器102はスイッチΦ3及びΦ4を有して構成される。
【0040】
第1の実施形態の増幅装置は、チョッパ変調器102の出力を増幅し、増幅装置の出力端に出力する第3の増幅器としての増幅器120を備えてよい。この場合、2段の増幅回路が構成され、増幅器120の出力が増幅装置の出力端となり、出力信号Voutが出力される。
【0041】
リップル校正回路300は、チョッパ変調器102の出力に入力が接続され、チョッパ変調器102の入力に出力が接続される。リップル校正回路300は、チョッパ変調器102の出力の高周波雑音成分を負帰還して低減させる機能を備える。リップル校正回路300は、ハイパスフィルタ回路331、位相反転オートゼロ増幅器400、フィルタ回路332、及び相互コンダクタンス増幅器213を備える。本明細書では、二つのオートゼロ増幅回路が互いに信号経路を反転して接続された構成のオートゼロ増幅器を位相反転オートゼロ増幅器と呼ぶことにする。
【0042】
ハイパスフィルタ回路331は、リップル校正回路300に入力される低周波信号成分を低減し、高周波雑音成分を検出する。位相反転オートゼロ増幅器400は、ハイパスフィルタ回路331の出力の高周波雑音成分を低周波成分に復調する。また、位相反転オートゼロ増幅器400は、Ping-Pongオートゼロ増幅器と同様の動作によって自身のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能を有する。フィルタ回路332は、位相反転オートゼロ増幅器400の出力の高周波成分を低減する。相互コンダクタンス増幅器213は、フィルタ回路332の出力を増幅し、リップル校正回路300の出力として信号を出力し、チョッパ変調器102の入力に負帰還する。
【0043】
図2は、
図1の増幅装置におけるハイパスフィルタ回路331及びフィルタ回路332の具体的な構成例を含む増幅装置を示す図である。ハイパスフィルタ回路331aは、例えば、結合容量C1、抵抗R1、結合容量C2、抵抗R2によって構成される容量結合回路を含んでよい。フィルタ回路332aは、例えば、相互コンダクタンス増幅器212、容量C3、容量C4によって構成される積分回路を含んでよい。
【0044】
本実施形態の位相反転オートゼロ増幅器400について、詳細に説明する。
【0045】
位相反転オートゼロ増幅器400は、位相反転オートゼロ増幅器400の入力を反転増幅するよう接続された第1のオートゼロ増幅回路としてのオートゼロ増幅回路410と、位相反転オートゼロ増幅器400の入力を非反転増幅するよう接続された第2のオートゼロ増幅回路としてのオートゼロ増幅回路420と、を備える。オートゼロ増幅回路410及びオートゼロ増幅回路420は、自身の入力を増幅する増幅モードと、自身のオフセット成分及び低周波雑音成分を内蔵する校正回路により低減する校正モードとを備える。位相反転オートゼロ増幅器400は、オートゼロ増幅回路410が増幅モードとなって位相反転オートゼロ増幅器400の入力を反転増幅し、オートゼロ増幅回路420が校正モードとなる第1の状態と、オートゼロ増幅回路420が増幅モードとなって位相反転オートゼロ増幅器400の入力を非反転増幅し、オートゼロ増幅回路410が校正モードとなる第2の状態と、を有する。
【0046】
オートゼロ増幅回路410は、スイッチΦ11a、Φ11b、Φ12、Φ13、相互コンダクタンス増幅器411、412、容量C11、C12を有して構成される。オートゼロ増幅回路410は、校正モードにおいて、相互コンダクタンス増幅器412によって相互コンダクタンス増幅器411のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減できるような信号(校正電圧等の校正信号)を、容量C11、C12によりサンプリングする。また、オートゼロ増幅回路410は、増幅モードにおいて、校正モードでサンプリングされた校正信号を印加した相互コンダクタンス増幅器412により、相互コンダクタンス増幅器411のオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された状態となる。そして、オートゼロ増幅回路410は、増幅モードにおいて、オフセット成分及び低周波雑音成分が低減された相互コンダクタンス増幅器411により、入力信号を反転増幅する。
【0047】
オートゼロ増幅回路420は、スイッチΦ21a、Φ21b、Φ22、Φ23、相互コンダクタンス増幅器421、422、容量C21、C22を有して構成される。オートゼロ増幅回路420は、校正モードにおいて、相互コンダクタンス増幅器422によって相互コンダクタンス増幅器421のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減できるような信号(校正電圧等の校正信号)を、容量C21、C22によりサンプリングする。また、オートゼロ増幅回路420は、増幅モードにおいて、校正モードでサンプリングされた校正信号を印加した相互コンダクタンス増幅器422により、相互コンダクタンス増幅器421のオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された状態となる。そして、オートゼロ増幅回路420は、増幅モードにおいて、オフセット成分及び低周波雑音成分が低減された相互コンダクタンス増幅器421により、入力信号を非反転増幅する。
【0048】
図3は、
図2の増幅装置における第1の状態のスイッチの接続を示す図である。
【0049】
第1の状態では、チョッパ変調器101のスイッチΦ1がオンでスイッチΦ2がオフ、チョッパ変調器102のスイッチΦ3がオンでスイッチΦ4がオフとなる。位相反転オートゼロ増幅器400は、チョッパ変調器101、102に連動して、オートゼロ増幅回路410のスイッチΦ11a、Φ12がオンでスイッチΦ11b、Φ13がオフとなる反転増幅の増幅モードで動作するとき、オートゼロ増幅回路420のスイッチΦ21a、Φ22がオフでスイッチΦ21b、Φ23がオンとなる校正モードで動作する。このとき、リップル校正回路300が負帰還構成となるようにチョッパ変調器101、102と位相反転オートゼロ増幅器400とが連動する。
【0050】
図4は、
図2の増幅装置における第2の状態のスイッチの接続を示す図である。
【0051】
第2の状態では、チョッパ変調器101のスイッチΦ1がオフでスイッチΦ2がオン、チョッパ変調器102のスイッチΦ3がオフでスイッチΦ4がオンとなる。位相反転オートゼロ増幅器400は、チョッパ変調器101、102に連動して、オートゼロ増幅回路410のスイッチΦ11a、Φ12がオフでスイッチΦ11b、Φ13がオンとなる校正モードで動作するとき、オートゼロ増幅回路420のスイッチΦ21a、Φ22がオンでスイッチΦ21b、Φ23がオフとなる非反転増幅の増幅モードで動作する。このとき、リップル校正回路300が負帰還構成となるようにチョッパ変調器101、102と位相反転オートゼロ増幅器400とが連動する。
【0052】
図5は、本実施形態の増幅装置におけるクロック信号の動作波形の一例を示す図である。
図5のクロック信号は、チョッパ変調器101、102のスイッチΦ1、Φ2、Φ3、Φ4、及び、オートゼロ増幅回路410、420のスイッチΦ11a、Φ11b、Φ12、Φ13、Φ21a、Φ21b、Φ22、Φ23をそれぞれ駆動する動作クロックの波形を示している。
図2の増幅装置では、チョッパ変調器101、102と位相反転オートゼロ増幅器400のオートゼロ増幅回路410、420とが動作クロックによって連動して切り替え動作する。このとき、増幅装置は、チョッパ変調器102の動作に連動して、リップル校正回路300が常に負帰還構成となるように、位相反転オートゼロ増幅器400の第1の状態と第2の状態とが切り替わる。
【0053】
位相反転オートゼロ増幅器400は、動作クロックによって二つのオートゼロ増幅回路410、420のスイッチが切り替え制御され、オートゼロ増幅回路410、420が交互に増幅モードと校正モードとに切り替わるPing-Pong動作を行う。このとき、二つのオートゼロ増幅回路410、420が互いに反転接続されているため、位相反転オートゼロ増幅器400は、オートゼロ増幅器とチョッパ変調器の機能を兼ねる構成となっている。
【0054】
図6は、本実施形態の増幅装置による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
図6では、信号成分、雑音成分、オフセット成分のそれぞれについて、時間波形と周波数分布の変化過程のイメージを示している。
図6において、上段は時間波形、下段は周波数特性をそれぞれ示している。チョッパ変調器101及びチョッパ変調器102のチョッピング周波数をfchとする。
【0055】
信号成分は、チョッパ変調器101によって高周波帯域に変調された後に、相互コンダクタンス増幅器111にて増幅される。その後、チョッパ変調器102を通すことにより信号成分は復調され、増幅器120にて増幅されて出力される。本実施形態では、リップル校正回路300によって、図中の破線→実線で示すように、増幅装置の入力段の相互コンダクタンス増幅器111のオフセット成分及び低周波雑音成分が低減される。このため、増幅器120の出力において、増幅装置の出力として最終的に出力されるリップルノイズが低減される。
【0056】
前述した
図13に示す第1比較例の増幅回路は、リップル低減回路200を用いることにより、チョッパ変調器102の出力に現れるリップルノイズを低減することが可能である。しかし、相互コンダクタンス増幅器221のオフセット成分及び低周波雑音成分がリップル低減回路200によるリップルノイズの低減機能を制限してしまう課題がある。
【0057】
また、前述した
図14に示す第2比較例の増幅回路は、第1比較例の増幅回路における相互コンダクタンス増幅器221をPing-Pongオートゼロ増幅器600に置き換えることで、リップル低減回路200によるリップルノイズの低減をより高精度に実現できる。しかし、スイッチ及びクロック信号の配線の数が増加してしまう課題がある。スイッチ及びクロック信号の配線の数の増加は、回路面積を増大させるだけでなく、寄生容量の増加により信号ラインやオートゼロ増幅器の校正回路にクロック信号がリークし、増幅回路の性能を劣化させてしまう場合がある。このため、スイッチ及びクロックの配線の数を削減した簡潔な回路構成が必要となる。
【0058】
これに対し、本実施形態では、リップル校正回路300において設けられる位相反転オートゼロ増幅器400がオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された増幅器であるため、帰還ループにおける増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減でき、リップルノイズをより高精度に低減することが可能である。更に、位相反転オートゼロ増幅器400を用いることで、オートゼロ増幅器とチョッパ変調器の機能を合わせ持つ構成を実現でき、
図14におけるチョッパ変調器103を省略することが可能である。このため、スイッチ及びクロックの配線の数を削減して回路面積を低減でき、寄生容量からリークするクロック信号の影響を低減できるので、簡潔な回路構成でリップルノイズを高精度に低減することが可能である。したがって、本実施形態によれば、位相反転オートゼロ増幅器を用いて、簡易な構成によってリップルノイズをより高精度に低減可能な増幅装置を提供できる。
【0059】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の増幅装置の構成を示す図である。
【0060】
第2の実施形態の増幅装置は、チョッパ変調器102の後段に設ける出力段の増幅器の構成を変更した第1変形例である。第2の実施形態では、増幅器120の内部回路を増幅器120aとする。チョッパ変調器101、102、及びリップル校正回路300の構成は第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0061】
増幅器120aは、2段の増幅器により構成され、第4の増幅器としての相互コンダクタンス増幅器121と、第5の増幅器としての増幅器122とを備える。この場合、増幅装置全体として3段の増幅回路が構成される。増幅器120aにはチョッパ変調器102の出力が入力される。増幅器120aにおいて、相互コンダクタンス増幅器121は増幅器120aの入力を増幅し、増幅器122は相互コンダクタンス増幅器121の出力を増幅する。増幅器122の出力が増幅器120aの出力、すなわち第2実施形態の増幅装置の出力端となる。
【0062】
また、増幅器120aは、入れ子型ミラー補償構成となるように接続された容量Cc1、Cc2、Cc3を有してよい。また、チョッパ変調器101の入力と増幅器122の入力との間に接続されフィードフォワードアンプとして機能する相互コンダクタンス増幅器130を有してよい。この場合、増幅装置の安定性の更なる向上を図るために、フィードフォワード構成となるように相互コンダクタンス増幅器130の出力は増幅器122の入力に接続される。これらの容量Cc1、Cc2、Cc3と相互コンダクタンス増幅器130のフィードフォワードアンプとによって位相補償回路が構成される。
【0063】
第2の実施形態では、増幅装置を3段構成の増幅回路とすることで、増幅装置の直流利得をより大きくすることができる。また、入れ子型ミラー補償構成の容量とフィードフォワードアンプによる位相補償回路を用いることで、リップル校正回路300を備えた増幅装置の安定性を向上させることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態の増幅装置の構成を示す図である。
【0065】
第3の実施形態の増幅装置は、チョッパ変調器102の後段に設ける出力段の増幅器の構成を変更した第2変形例である。第3の実施形態では、増幅器120の内部回路を増幅器120bとする。なお、
図7の第2の実施形態と同様の構成については説明を省略し、異なる構成要素を中心に説明する。
【0066】
増幅器120bは、2段の増幅器により構成され、ローパスフィルタ回路500と、相互コンダクタンス増幅器121と、増幅器122とを備える。この場合、増幅装置全体として3段の増幅回路が構成される。また、第2の実施形態と同様に、容量Cc1、Cc2、Cc3と相互コンダクタンス増幅器130のフィードフォワードアンプとによって構成される位相補償回路を備える。増幅器122の出力が増幅器120bの出力、すなわち第3実施形態の増幅装置の出力端となる。
【0067】
ローパスフィルタ回路500は、相互コンダクタンス増幅器121に入力される高周波雑音成分を低減する。ローパスフィルタ回路500は、増幅器120bの入力部、すなわちチョッパ変調器102と相互コンダクタンス増幅器121との間に挿入された抵抗R3、R4と、位相補償回路における容量Cc2、Cc3とによって構成されたフィルタ回路を含んでよい。
【0068】
第3の実施形態では、チョッパ変調器102の後段の増幅器120として、ローパスフィルタ回路500を備えた増幅器120bを用いる構成の増幅装置としている。この構成により、チョッパ変調器102の出力においてリップル校正回路300によるリップルノイズの低減後も残る残留リップルノイズを、更に低減することが可能となる。
【0069】
(第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例)
図9は、増幅装置の出力段に設ける増幅器の変形例の構成を示す図である。
【0070】
前述した第2の実施形態及び第3の実施形態において、増幅器120a又は増幅器120bの前段に設ける相互コンダクタンス増幅器121を、位相補償回路を備えた2段構成とした相互コンダクタンス増幅器121aとすることも可能である。相互コンダクタンス増幅器121の内部回路を相互コンダクタンス増幅器121aとする。この場合、増幅器120a又は増幅器120bが3段構成の増幅器となり、増幅装置全体として4段構成の増幅回路が実現される。
【0071】
相互コンダクタンス増幅器121aは、2段の増幅器により構成され、相互コンダクタンス増幅器1211(初段増幅器)と、相互コンダクタンス増幅器1212とを備える。相互コンダクタンス増幅器121aにおいて、相互コンダクタンス増幅器1211は相互コンダクタンス増幅器121aの入力を増幅し、相互コンダクタンス増幅器1212は相互コンダクタンス増幅器1211の出力を増幅する。相互コンダクタンス増幅器1212の出力が相互コンダクタンス増幅器121aの出力となる。また、相互コンダクタンス増幅器121aは、入れ子型ミラー補償構成となるように接続された容量Cc4、Cc5によって構成される位相補償回路を備えてよい。
【0072】
この変形例によれば、増幅装置を4段構成の増幅回路とすることで、直流利得の更なる向上を図ることができる。また、フィードフォワードアンプとして用いられる相互コンダクタンス増幅器130のオフセット成分及び低周波雑音成分の影響をより低減することができ、更なる高精度な増幅装置を実現することが可能となる。
【0073】
上述したように、本実施形態の構成によれば、オートゼロ増幅器とチョッパ変調器の機能を兼ね備える位相反転オートゼロ増幅器を有するリップル校正回路を設けることによって、負帰還ループにおけるオフセット成分及び低周波雑音成分を抑制しつつ、入力信号を増幅する増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減可能である。このため、Ping-Pongオートゼロ増幅器などを設けることなく、スイッチ及びクロックの配線の数を削減した簡潔な構成によってリップルノイズをより高精度に低減することができる。
【0074】
本実施形態では、増幅装置において、入力信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器101と、第1のチョッパ変調器101の出力を増幅する第1の増幅器としての相互コンダクタンス増幅器111と、相互コンダクタンス増幅器111の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器102とを備える。また、第2のチョッパ変調器102の出力に入力が接続され、第2のチョッパ変調器102の入力に出力が接続され、第2のチョッパ変調器102の出力の高周波雑音成分を負帰還して第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するリップル校正回路300を備える。リップル校正回路300は、リップル校正回路300に入力される高周波雑音成分を検出するハイパスフィルタ回路331と、ハイパスフィルタ回路331の出力を増幅する増幅回路を有し、高周波雑音成分を低周波成分に復調する機能と増幅回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能とを有する位相反転オートゼロ増幅器400と、位相反転オートゼロ増幅器400の出力の高周波成分を低減するフィルタ回路332と、フィルタ回路332の出力を増幅し、リップル校正回路300の出力とする第2の増幅器としての相互コンダクタンス増幅器213と、を有する。上記構成により、位相反転オートゼロ増幅器400を有するリップル校正回路300によって、相互コンダクタンス増幅器111において発生するリップルノイズをより高精度に低減できる。
【0075】
また、位相反転オートゼロ増幅器400は、位相反転オートゼロ増幅器400の入力を反転増幅するオートゼロ増幅回路410と、位相反転オートゼロ増幅器400の入力を非反転増幅するオートゼロ増幅回路420と、を備える。オートゼロ増幅回路410及びオートゼロ増幅回路420は、自回路における増幅器としての相互コンダクタンス増幅器411、421のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正信号をサンプリングする校正モードと、校正信号によりオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された相互コンダクタンス増幅器411、421によって入力信号を増幅する増幅モードと、を有し、校正モードと増幅モードとを切り替えるスイッチを備える。位相反転オートゼロ増幅器400は、オートゼロ増幅回路410が増幅モードとして反転増幅動作するとき、オートゼロ増幅回路420が校正モードとして動作する第1の状態と、オートゼロ増幅回路420が増幅モードとして非反転増幅動作するとき、オートゼロ増幅回路410が校正モードとして動作する第2の状態と、を有する。位相反転オートゼロ増幅器400は、第2のチョッパ変調器102の動作に連動して、スイッチを所定の動作クロックによって駆動して校正モードと増幅モードとを交互に動作させ、リップル校正回路300が負帰還構成となるように第1の状態と第2の状態とを切り替える。このように第1の状態と第2の状態とを切り替えることにより、オートゼロ増幅器とチョッパ変調器の機能を実現でき、スイッチ及びクロックの配線の数を削減した簡潔な回路構成によってオフセット成分及び低周波雑音成分を低減可能な負帰還ループを構成できる。
【0076】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、スイッチ及びクロックの配線の数を削減した簡易な構成によってリップルノイズをより高精度に低減することが可能となる効果を有し、例えばセンサ信号等を増幅する増幅回路、計装アンプ等の増幅装置に有用である。
【符号の説明】
【0078】
100、101、102、103、1001、1003:チョッパ変調器
111、121、121a、130、212、213、411、412、421、422、1211、1212:相互コンダクタンス増幅器
120、120a、120b、122、1002:増幅器
300:リップル校正回路
331、331a:ハイパスフィルタ回路
332、332a:フィルタ回路
400:位相反転オートゼロ増幅器
410、420:オートゼロ増幅回路
500:ローパスフィルタ回路
C1、C2:結合容量
C3、C4、C11、C12、C21、C22、Cc1、Cc2、Cc3、Cc4、Cc5:容量
R1、R2、R3、R4:抵抗
Φ1、Φ2、Φ3、Φ4、Φ11a、Φ11b、Φ12、Φ13、Φ21a、Φ21b、Φ22、Φ23、Φa、Φb:スイッチ