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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】炒め調理済み麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240723BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20240723BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L23/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021537336
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020029949
(87)【国際公開番号】W WO2021025047
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2019144020
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 葉
(72)【発明者】
【氏名】尾家 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武紀
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-204413(JP,A)
【文献】特開平04-311360(JP,A)
【文献】特開2004-298148(JP,A)
【文献】レシピサイト「cookpad」に掲載された「ソーセージのマヨネーズ・ソース焼きそば」のレシピ, [オンライン],2019年02月16日,[検索日 2020.09.23],インターネット: <URL:https://cookpad.com/recipe/5401915>, レシピID:5401915
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L7/109-7/113, 23/00-25/10, 35/00
cookpad,楽天レシピ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化処理した麺類を炒め調理する麺類の製造方法であって、
(1)α化処理した麺類をソースAと共に炒め調理する工程、
(2)炒め調理の加熱を止め、ソースBを追加して麺類と混合する工程、
(3)ソースと混合した麺類の上に、さらにソースCを追加して載置する工程
を含
前記ソースA~Cが互いに同系統のソースである、炒め調理済み麺類の製造方法。
【請求項2】
前記同系統のソースが、ホワイト系ソース、トマト系ソース、ブラウン系ソース及びカレーソースからなる群から選択される1種であり、
前記ホワイト系ソースは、クリームソース及びカルボナーラソースからなる群から選択される1種以上であり、
前記トマト系ソースは、ミートソース、ナポリタンソース及びアラビアータソースからなる群から選択される1種以上であり、
前記ブラウン系ソースは、中濃ソース及びとんかつソースからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法によって得られた炒め調理済み麺類を冷蔵又は凍結保存する、保存用炒め調理済み麺類の製造方法。
【請求項4】
工程(3)を、工程(2)での混合時に使用した調理器具とは別の容器中で行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(2)において、工程(1)で使用した加熱調理器具中に麺類を保持したまま加熱を止め、該加熱調理器具の余熱中でソースBを追加して麺類と混合する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(1)に供する前のα化処理した麺類100質量部に対して、ソースAが5~50質量部、ソースBが5~50質量部、ソースCが5~50質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(1)の前に、
(0)α化処理した麺類100質量部に対して、油脂及び増粘剤の混合物1~10質量部を加えて炒め調理する工程を行う、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記油脂及び増粘剤の混合物が水を含有しない、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炒め調理済みの麺類の製造方法に関し、詳細には、炒めたソースの香ばしさと、ソースそのもののまろやかな風味の両方を一度に楽しめる、炒め調理済み麺類を簡便に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類は、通常は茹で調理を行い、たれ、つゆ又はソース等と共に喫食する。一方、炒め調理した麺類も従来知られており、その例としては、中華麺をウスターソースと共に炒め調理した焼きそばや、スパゲティをケチャップソースやトマトソースと共に炒め調理したナポリタンスパゲティ等を例示することができる。これらの炒め調理済み麺類は、麺類をソースと共に炒めることで、ソースが麺の表面に固着すると同時に焼けこげ、一部がメーラード反応等により新たな香味成分を生じ、独特の好ましい風味となる。また、麺類が炒め調理により引き締まることで、部分的に硬い食感が加わり、食感も通常の麺類とは異なる。
【0003】
これまでにも、炒め調理を行ったスパゲティの炒め感や風味を高める技術が提案されている。特許文献1には、茹でパスタをソテー後、パスタの上にソースを載せて凍結するソテーパスタの製造方法が記載されている。特許文献2には、茹で麺を炒め、ソースと和えた後に真空冷却するソース和え炒め麺の製造方法が記載されている。しかしながら、炒めたソースの香ばしさと、ソースそのもののまろやかな風味の両方を、いっそう同時に楽しめる炒め調理済み麺類を提供する方法が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-186852号公報
【文献】特開2016-42824号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、ソース本来のまろやかな風味と、炒め調理した香ばしい風味を有し、炒めた麺の歯ごたえがあり、ソースと麺が一体となった良好な食感を有する麺類を、簡便に製造することができる方法を提供することにある。
【0006】
本発明は、α化処理した麺類を炒め調理する麺類の製造方法であって、
(1)α化処理した麺類をソースAと共に炒め調理する工程、
(2)炒め調理の加熱を止め、ソースBを追加して麺類と混合する工程、
(3)ソースと和えた麺類の上に、さらにソースCを追加して載置する工程
を含む、炒め調理済み麺類の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明では、先ず工程(1)において、α化処理した麺類(以下、単に「α化処理麺類」ということもある)をソースAと共に炒め調理する。工程(1)で用いる麺類は、通常食用に供される麺類であれば特に制限されず、どのような麺類でも用いることができる。その例としては、スパゲティ、マカロニ等のパスタ、中華そば、うどん、そば、ビーフン等が挙げられる。これらの中でも、炒め調理して喫食するタイプの麺類が好ましく、最終的な炒め調理済み麺類の種類としては、ナポリタンスパゲティ、ペペロンチーノスパゲティ、焼きそば、焼きうどん、焼きビーフン等を例示することができる。
【0008】
工程(1)で用いる麺類の原料や製造方法も特に限定されず、小麦粉、そば粉、米粉、澱粉等を原料粉として用い、常法に従って麺として製造したものであればよい。製造された麺類は、そのまま(生麺のまま)α化処理に供してもよく、熟成処理後にα化処理に供してもよい。ここで、熟成処理としては、従来から行われている麺類の風味を改善する方法を適宜選択して行うことができ、その例としては、乾燥処理や、水分を添加しない加熱処理が挙げられる。また、α化処理に供する麺類として、市販されている乾麺や生麺等の未調理の麺類を用いてもよい。
【0009】
工程(1)では、このような麺類をα化処理してから用いるところ、α化処理としては、通常の茹で調理や蒸し調理を行えばよい。その際、麺類に含まれる澱粉が、水分の存在下で加熱されて50質量%以上α化されるまでα化処理を行えばよい。本発明においては、後の炒め調理によっても麺類が加熱されることから、麺類に含まれる澱粉が全てα化されるまでα化処理を行う必要は、必ずしもない。一方で、澱粉がα化後も加熱されると、澱粉粒が崩壊して麺類の食感が低下する場合があるため、好ましくは、麺類に含まれる澱粉が最大で80質量%までα化されるまでα化処理を行う。より好ましくは最大で65質量%まで、さらに好ましくは最大で60質量%までα化されるまでα化処理を行う。
【0010】
工程(1)では、このようにα化処理した麺類をソースAと共に炒め調理する。本工程は、主として香ばしさとメーラード反応生成物による香味を付与するために行われるものである。炒め調理は常法で行えばよく、加熱したフライパンや中華鍋等の加熱調理器具に少量の油脂を入れて十分に加熱し、α化処理麺類及びソースAを加えて、全体に均一に混合するように攪拌しながら炒め調理すればよい。炒め調理の加熱温度は例えば130~180℃、加える油脂の量は、工程(1)に適用する直前のα化処理麺類100質量部に対して、例えば1~15質量部である。また炒め調理する時間は、調理に供するα化処理麺類の量及び添加するソースAの量等によっても異なるが、例えば1~10分である。
【0011】
工程(1)で用いるソースAは、液状又はペースト様の性状のものである。ソースAは、所望の炒め調理済み麺類の種類に応じて選択することができ、その具体例としては、クリームソース、カルボナーラソース等のホワイト系ソース、ミートソース、ナポリタンソース、アラビアータソース等のトマト系ソース、中濃ソース、とんかつソース等のブラウン系ソース、カレーソース、ラー油つゆ等が例示できる。ソースAには固形具材が入っていてもよいが、加熱による変質やソースAと麺類との混合に影響を及ぼす可能性を考えると、固形具材は全く含まないか、ほとんど含まないことが好ましい。尚、ここでいう固形具材とは、最大の差し渡し長さが概ね5mm以上の具材を指し、その種類としては、肉類、魚類、野菜類、根菜類、キノコ類等、炒め調理済み麺類に通常用いられるものが挙げられる。
【0012】
工程(1)で用いるソースAの量は、工程(1)に適用する直前のα化処理麺類100質量部に対して、好ましくは5~50質量部であり、さらに好ましくは10~45質量部である。5質量部未満であると、香ばしさの風味が物足りなくなる場合があり、50質量部を超えると、ソースが麺類の表面で固まり、麺類の食感が硬く粘ついたものになる傾向がある。工程(1)では、炒め調理の最初からソースAを加えてもよく、最初はα化処理した麺類を炒め、途中からソースAを加えて炒め調理を行ってもよい。最初にα化処理した麺類のみを炒めた場合には、麺類とフライパンや中華鍋等の加熱調理器具(即ち、炒め用調理器具)とが、炒め油の薄膜を介して直接接触し、接触部分が熱せられて引き締まった硬さの食感になる。一方、α化処理した麺類を最初からソースAと共に炒めた場合には、麺類と加熱調理器具との間にソースA層が介在するため、ソースAの方が麺類よりも強く熱せられる結果、ソースAの水分が揮発して濃縮され、ソースに粘ついた硬さが付与されることになる。また同時に、ソースAをより長時間炒めることになり、ソースAの焦げやメーラード反応がより多く起こることになる。この調節は、所望の風味や食感に応じて適宜行えばよい。
【0013】
次いで、炒め調理後の麺類を工程(2)に供する。工程(2)においては、炒め調理の加熱を止め、ソースBを追加して麺類と混合する。工程(1)では、ソースAと麺類を加熱しながら混合したが、工程(2)は加熱を行わずにソースBと麺類を混合する点が異なる。本工程は、主としてソース本来のまろやかな風味を麺類に付与するために行われるものである。工程(1)終了後のソースAと混合された麺類は、そのまま、工程(1)で使用した加熱調理器具中で加熱を止めた状態でソースBと混合してもよく、一旦別の容器に取り出した後、該容器中でソースBと混合してもよい。工程(1)で加熱しながら麺類と混合されたソースAと、本工程で加えるソースBとの一体感を高めるとの観点からは、工程(1)で使用した加熱調理器具中に麺類を保持したまま加熱を止め、該加熱調理器具の余熱中でソースBを追加して麺類と混合すると、麺類表面のソースAにさらにソースBが重層されるため好ましい。
【0014】
工程(2)で用いるソースBは、工程(1)で用いるソースAと同一であってもよく、異なっていてもよいが、風味の一体感を向上させる観点からは、同系統のソースであることが好ましく、同一のソースであることがより好ましい。即ち、ソースBは、液状又はペースト様の性状のものであり、クリームソース、カルボナーラソース等のホワイト系ソース、ミートソース、ナポリタンソース、アラビアータソース等のトマト系ソース、中濃ソース、とんかつソース等のブラウン系ソース、カレーソース、ラー油つゆ等から適宜選択して利用することができる。ソースBには固形具材が入っていてもよいが、加熱による変質やソースBと麺類との混合に影響を及ぼす可能性を考えると、固形具材は全く含まないか、ほとんど含まないことが好ましい。尚、ここでいう固形具材とは、工程(1)において述べたとおりである。
【0015】
ソースBの量は、工程(1)に適用する直前のα化処理麺類100質量部に対して、好ましくは5~50質量部であり、さらに好ましくは10~45質量部である。5質量部未満であると、ソースAとソースBの一体感が物足りなくなる場合があり、50質量部を超えると、麺類の食感がべたついたものとなる傾向がある。
【0016】
次いで、ソースBと混合した麺類を工程(3)に供する。工程(3)においては、麺類の上に、さらにソースCを追加して載置する。工程(1)及び(2)は主として、麺類と一体化したソースの風味を向上させることを目的としているが、本工程(3)は麺塊状にした麺類の上にソースCを載置することで、喫食する際の調理済み麺類においてソースのむらを作りソースCで風味の強弱をつけ、喫食する際に風味が単調になるのを防止すると共に、調理済み麺類全体の一体感をより高めることを目的とする。また、本発明の調理済み麺類を冷凍するなど保存した場合に、ソースCと麺類が接触する箇所において、ソース中の水分が麺類に移行して麺類の食感が低下しやすいが、ソースCと接触する麺類を部分的にすることで、そのような食感の低下を防止することができる。
【0017】
工程(2)終了後のソースBと混合された麺類は、工程(2)での混合時に使用した調理器具(即ち、工程(1)で使用した加熱調理器具、又は該加熱調理器具から麺類を取り出して移した別の容器)中でそのままソースCを載置してもよく、別の容器に取り出してからソースCを載置してもよい。しかし、上述のようにソースのむらを作るとの観点からは、ソースCを載置した麺類を揺動したり、かき混ぜたりすることは、ソースCが麺類の下方に移動する恐れがありできる限り避ける必要がある。従って、工程(3)を、工程(2)での混合時に使用した調理器具とは別の容器中で行うことが好ましく、より詳細には、工程(2)での混合時に使用した調理器具から、喫食用の容器又は保存用の容器に麺類を移し、該容器中で麺類を麺塊状にし、その上にソースCを載置することが好ましい。
【0018】
工程(3)で用いるソースCは、工程(1)で用いるソースA及び/又は工程(2)で用いるソースBと同一であってもよく、異なっていてもよいが、風味の一体感を向上させる観点からは、ソースA及びソースBと同系統のソースであるのが好ましく、ソースA及びソースBと同一のソースであるのがより好ましい。即ち、ソースCは、液状又はペースト様の性状のものであり、クリームソース、カルボナーラソース等のホワイト系ソース、ミートソース、ナポリタンソース、アラビアータソース等のトマト系ソース、中濃ソース、とんかつソース等のブラウン系ソース、カレーソース、ラー油つゆ等から適宜選択して利用することができる。ソースCには固形具材が入っていてもよく、入っていなくてもよい。尚、ここでいう固形具材とは、工程(1)において述べたとおりである。
【0019】
ソースCの量は、工程(1)に適用する直前のα化処理麺類100質量部に対して、好ましくは5~50質量部であり、さらに好ましくは10~40質量部である。5質量部未満であると、調理済み麺類全体の一体感が物足りなくなる場合があり、50質量部を超えると、ソースCがべちゃべちゃして麺の食感が感じにくくなる結果、調理済み麺類全体の一体感が低下する傾向がある。
【0020】
本発明の工程(1)の前に、工程(0)として、α化処理した麺類100質量部に対して、油脂及び増粘剤の混合物1~10質量部を加えて炒め調理する工程を行うと、工程(1)の際に麺同士が接着して、ソースAがα化処理麺類全体に行き渡らないという問題が発生することを防止できるため好ましい。この際に油脂のみを用いると、油脂が麺類に染み込んで油っぽい食感が付与されてしまうが、油脂を増粘剤と共に用いると、麺類への油脂の染み込みを防止することができる。また、この混合物に水が加わると、増粘剤の粘性が高まって、工程(1)の際に麺類に硬い食感が付与されてしまうため、該混合物は水を含有しないことが好ましい。油脂と増粘剤は例えば質量比100:0.1~100:5で混合すればよく、該混合物の使用量は、工程(1)に適用する前のα化処理麺類100質量部に対して、より好ましくは2~8質量部である。
【0021】
油脂としては、食用に用いられるものを特に制限なく使用することができ、サラダ油、綿実油、落花生油等を例示することができる。また増粘剤も食用に用いられるものを特に制限なく使用することができ、その例としては、キサンタンガム、ローカストビーンガム等のガム類、増粘多糖類を例示することができる。工程(0)を行う場合、続く工程(1)で炒め調理の際に加える油脂の量を、工程(0)で加える油脂の量を考慮して適宜減らすことができる。また炒め調理する時間は、調理に供するα化処理麺類の量及び添加するソースAの量等によっても異なるが、工程(0)及び工程(1)を合計して、例えば1~10分である。
【0022】
以上のように、工程(1)、(2)及び(3)、さらに必要に応じて工程(1)の前に工程(0)を行うことで、炒め調理済み麺類を製造することができる。得られた炒め調理済み麺類は、そのまま喫食することができ、また、必要に応じて、工程(3)の後に、上述したような固形具材をトッピングしてもよい。
【0023】
本発明の方法により製造された炒め調理済み麺類は、前述したようにそのまま喫食してもよいが、これを冷蔵又は凍結保存して、保存用炒め調理済み麺類とすることもできる。この保存用炒め調理済み麺類を常法により再度電子レンジ等の加熱手段で再加熱すると、あたかも炒めたての炒め調理済み麺類のような香ばしい風味と食感を有する麺類を簡便に得ることができる。
【0024】
冷蔵又は凍結は、炒め調理済み麺類に対して通常行われる冷蔵処理又は凍結処理を採用することにより行うことができる。例えば、本発明の方法により得られた炒め調理済み麺類を、必要に応じて風冷却や真空冷却等により予備冷却し、冷蔵又は凍結処理に付すのが好ましい。
【実施例
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0026】
(製造例)
以下の実施例において使用するソースは下記の通りである。尚、以下においてソース粘度は、B型粘度計を用いて品温25℃、回転速度3~13rpmで測定した。
・ナポリタンソースX:鍋にトマトピューレ200g、ケチャップ200g、ウスターソース50g、牛乳50gを加えて、ソース粘度が約1000mPa・sとなるまで煮込み、塩で味をととのえた。
・ナポリタンソースY:ナポリタンソースXと同様に製造したが、より煮詰めて粘度を約5000mPa・sとした。
・中濃ソース:市販の中濃ソースを用いた。粘度は約1200mPa・sであった。
・濃厚ソース:市販のとんかつソースを用いた。粘度は約4400mPa・sであった。
【0027】
(実施例1)
市販の乾燥スパゲティ(日清フーズ製)を、歩留まり250%になるように熱湯で約10分間茹で調理して、茹でスパゲティを製造した。茹でスパゲティを湯から上げて湯切りし、200gを取り分けた。尚、この茹でスパゲティは、含まれる澱粉の約65質量%がα化されていた。
工程(1):中華鍋をコンロの火で約170℃に加熱しながら、鍋にオリーブ油15gを加えて鍋全体に回し、前記スパゲティ200gを加え、さらにソースAとしてナポリタンソースX60gを加えて、よくかき混ぜながらスパゲティ全体にソースが付着するようにして4分間炒め調理した。
工程(2):中華鍋を火から降ろして加熱を止めた後、鍋にソースBとしてナポリタンソースX60gを加えて、鍋の余熱中でスパゲティ全体にソースが付着するようにかき混ぜた。
工程(3):スパゲティを10cm×14cmの常温の耐熱性容器に盛り付け、その上にソースCとしてナポリタンソースY60gを載せた。
以上のようにしてナポリタンスパゲティを製造した。
【0028】
(実施例2)
実施例1において工程(1)の前に工程(0)として、オリーブ油14.5gとキサンタンガム0.5gの混合物を茹でスパゲティ200gにまぶして全体に付着させ、コンロの火で加熱しながら、中華鍋で1分間炒め調理する工程を行い、続いて工程(1)として、オリーブ油は加えず、ソースAとしてナポリタンソースX60gを加えて3分間炒めた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のナポリタンスパゲティを製造した。
【0029】
(実施例3)
実施例1において工程(1)の前に工程(0)として、水2g、オリーブ油12.5g及びキサンタンガム0.5gの混合物を茹でスパゲティ200gにまぶして全体に付着させ、コンロの火で加熱しながら、中華鍋で1分間炒める工程を行い、続いて工程(1)として、オリーブ油は加えず、ソースAとしてナポリタンソースX60gを加えて3分間炒めた以外は、実施例1と同様にして、実施例3のナポリタンスパゲティを製造した。
【0030】
(比較例1)
実施例1において工程(1)を行わず、工程(2)において茹でたスパゲティ全体にソースBとしてナポリタンソースX120gを付着させ、次いで工程(3)を行った以外は、実施例1と同様にして、比較例1のナポリタンスパゲティを製造した。
【0031】
(比較例2)
実施例1において工程(1)でソースAとしてのナポリタンソースXを加えずにスパゲティのみを炒め、工程(2)でソースBとしてナポリタンソースX120gを用い、次いで工程(3)を行った以外は、実施例1と同様にして、比較例2のナポリタンスパゲティを製造した。
【0032】
(比較例3)
実施例1において工程(2)を行わず、工程(1)でソースAとしてのナポリタンソースX120gと共に炒めたスパゲティを、そのまま工程(3)に供した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のナポリタンスパゲティを製造した。
【0033】
(比較例4)
実施例1において工程(3)を行わず、工程(1)をソースAとしてのナポリタンソースX90gを用いて行い、次いで工程(2)でソースBとしてナポリタンソースY90gを用いて容器に盛り付けた以外は、実施例1と同様にして、比較例4のナポリタンスパゲティを製造した。
【0034】
(比較例5)
実施例1において工程(2)及び工程(3)を行わず、工程(1)のみをソースAとしてナポリタンソースX180gを用いて行って容器に盛り付けた以外は、実施例1と同様にして、比較例5のナポリタンスパゲティを製造した。尚、比較例5は、ソースとともに炒め調理する通常のナポリタンスパゲティを想定したものである。
【0035】
(試験例1)
実施例1~3及び比較例1~5のナポリタンスパゲティを10名の訓練された専門パネラーが喫食し、ソース風味とスパゲティ食感を下記評価基準で評価した。尚、ソースとともに炒め調理する通常のナポリタンスパゲティを想定した比較例5のナポリタンスパゲティの製造直後の風味及び食感の評価点を、それぞれ3点とした。
また、実施例1~3及び比較例1~5のナポリタンスパゲティを、容器ごとポリエチレン製の袋に入れて-80℃で冷凍保存した。1週間後に冷凍庫から取り出し、電子レンジで500Wにて6分間再加熱し、同様にソース風味とスパゲティ食感を下記評価基準で評価した。
以上の評価結果をパネラー10名の評価点の平均値として表1に示す。
【0036】
(ソース風味の評価基準)
5:ソースの風味と香ばしい香りが極めて強く、非常に良好
4:ソースの風味と香ばしい香りが強く、良好
3:ソースの風味と香ばしい香りがあり、通常の炒めたソーススパゲティの風味
2:ソースの風味は感じられるが、香ばしい香りが弱く、不良
1:ソースの風味は感じられるが、香ばしい香りがほとんどなく、非常に不良
(スパゲティの食感の評価基準)
5:歯ごたえと弾力が強く、喫食中にソースとスパゲティが一体になった食感が持続し、非常に良好
4:歯ごたえと弾力があり、ソースとスパゲティの一体感がある食感が感じられ、良好
3:歯ごたえがあるがやや硬く、ソースとスパゲティの一体感がある食感が感じられ、通常の炒めたソーススパゲティの食感
2:歯ごたえが弱く硬い食感で、ソースとスパゲティの一体感が弱く、不良
1:歯ごたえがない硬い食感で、ソースとスパゲティの一体感がなく、非常に不良
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例4~9)
実施例1において、工程(1)で用いるソース量を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてナポリタンスパゲティを製造した。これを試験例1と同様に評価した。その結果を表2に示す。尚、表2には参考のため実施例1の結果を再掲する。
【0039】

【表2】
【0040】
(実施例10~15)
実施例1において、工程(2)で用いるソース量を表3のように変えた以外は、実施例1と同様にしてナポリタンスパゲティを製造した。これを試験例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。尚、表3には参考のため実施例1の結果を再掲する。
【0041】

【表3】
【0042】
(実施例16~21)
実施例1において、工程()で用いるソース量を表4のように変えた以外は、実施例1と同様にしてナポリタンスパゲティを製造した。これを試験例1と同様に評価した。その結果を表4に示す。尚、表4には参考のため実施例1の結果を再掲する。
【0043】

【表4】
【0044】
(実施例22)
実施例1において、工程(1)終了後のスパゲティを10cm×14cmの耐熱性容器に盛り付け、この容器中で工程(2)を行い、続いて工程(3)を行った以外は、実施例1と同様にしてナポリタンスパゲティを製造した。工程(2)を、余熱を持った中華鍋中で行った実施例1と、常温の容器中で行った実施例22とでは、実施例1の方が、製造直後のソースの風味と香ばしい香りの一体感が、より一層高く好ましいものであった。
【0045】
(実施例23)
実施例1において、工程(1)で用いるソースAとして中濃ソース60gを用いた以外は、実施例1と同様にしてソースナポリタンスパゲティを製造した。このスパゲティは、中濃ソースの甘い風味と焦げた風味を有し、かつそれらがナポリタンソースの酸味ある風味とよくマッチしていて、非常に美味であった。
【0046】
(実施例24)
市販の蒸し中華そばを用意した。尚、この蒸し中華そばは、含まれる澱粉の80質量%がα化されていた。
工程(1):中華鍋をコンロの火で約170℃に加熱しながら、鍋にサラダ油15gを加えて鍋全体に回し、ざく切りしたキャベツ150gを加えて全体に火が通るまで炒めた。ここに前記蒸し中華そば200gを加え、さらにソースAとして中濃ソース60gを加えて、よくかき混ぜながらそば全体にソースが付着するようにして4分間炒め調理した。
工程(2):中華鍋を火から降ろして加熱を止めた後、鍋にソースBとして中濃ソース60gを加えて、鍋の余熱中でそば全体にソースが付着するようにかき混ぜた。
工程(3):そばを10cm×14cmの耐熱性容器に盛り付け、その上にソースCとして濃厚ソース40gを載せた。
以上のようにして製造した焼きそばは、ソース本来のまろやかな風味と、炒め調理した香ばしい風味を有し、炒めた麺の歯ごたえがあり、ソースと麺が一体となった良好な食感を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、ソース本来のまろやかな風味と、炒め調理した香ばしい風味を有し、炒めた麺の歯ごたえがあり、ソースと麺が一体となった良好な食感を有する麺類を簡便に提供することができる。