(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】発光装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20240724BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20240724BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20240724BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240724BHJP
C09K 11/64 20060101ALI20240724BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20240724BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240724BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20240724BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240724BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/60
H01L33/54
H01L33/00 L
C09K11/64
C09K11/80
G02B5/20
F21V9/32
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020120769
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】木島 直人
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212617(JP,A)
【文献】特開2014-179652(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050650(WO,A1)
【文献】特開平10-188649(JP,A)
【文献】特開2020-058264(JP,A)
【文献】特開2016-076719(JP,A)
【文献】特開2016-171227(JP,A)
【文献】特開2020-107584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267647(US,A1)
【文献】特開2006-066657(JP,A)
【文献】実開昭63-24858(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
F21V 1/00-15/04
C09K 11/00-11/89
G02B 5/20-5/28
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-45/70
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体の一面に配置された配線部と、前記配線部を被覆し、その一部に前記配線部を露出させる開口を有する被覆部と、を備えた基板、
前記被覆部から露出した前記配線部に接続された発光素子、
前記発光素子の上又は上方に配置された波長変換部材、
前記発光素子と前記波長変換部材とを覆う透光性部材、
前記被覆部を覆い、入射する光の少なくとも一部を前記被覆部の方向へ散乱させる光散乱部材、
及び
前記発光素子又は前記透光性部材と前記光散乱部材との間に配置された、入射する光の少なくとも一部を前記被覆部の方向へ反射させる光反射材を備えており、
前記被覆部は、蓄光材を含む、発光装置。
【請求項2】
前記透光性部材が、前記発光素子の主面に垂直な方向の発光強度が最大値に対して0.9以下である発光強度分布を有する請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記透光性部材が、バットウィング配光を行うレンズ形状を有する請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子の発光面の面積に対して、前記被覆部の面積が50倍以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子の発光ピーク波長が、410nm以上490nm以下の範囲内にある請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記波長変換部材が、希土類アルミン酸塩蛍光体又は窒化物系蛍光体を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記蓄光材は、常用光源D
65を用い200ルクスの照度で20分間照射した後、消灯後20分経過後の残光輝度が10mcd/m
2以上である蛍光体を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記蓄光材は、アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を含む請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記蓄光材は、組成がSr
4Al
14O
25:Eu,Dyで表される蛍光体を含む請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記光散乱部材は、透光率が75%以上である請求項1から9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光素子の側面を被覆する光反射部材をさらに備える請求項1から10のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1項に記載の発光装置を備えた照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源の消灯時に残光を得るために、残光特性を有する蓄光材が、発光素子を用いた光源に利用されている。
例えば、基板と、基板上に載置された発光素子の一部を被覆するように、蓄光蛍光体を含む層が配置された発光装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、消灯時により長時間にわたる残光輝度を確保することが求められている。
本開示は、発光装置を消灯した後に、残光輝度をより長時間にわたって確保することができる発光装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の発明を含む。
(1)基体と、前記基体の一面に配置された配線部と、前記配線部を被覆し、その一部に前記配線部を露出させる開口を有する被覆部とを備えた基板、
前記被覆部から露出した前記配線部に接続された発光素子、
前記発光素子の上又は上方に配置された波長変換部材、及び
前記被覆部を覆い、入射する光の少なくとも一部を前記被覆部の方向へ散乱させる光散乱部材を備えており、
前記被覆部は蓄光材を含む、発光装置。
(2)上記発光装置を備えた照明装置。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、発光装置を消灯した後に、残光輝度をより長時間にわたって確保することができる発光装置及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】一実施形態に係る発光装置を示す概略平面図である。
【
図2】別の実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
【
図3】さらに別の実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
【
図4】さらに別の実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
【
図5A】さらに別の実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
【
図5B】さらに別の実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
【
図6A】照明装置の実施形態を示す概要平面図である。
【
図7】別の実施形態に係る照明装置を示す概要断面図である。
【
図8】照明装置の点灯/消灯時の相対発光スペクトルを比較例とともに示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する実施の形態は、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示を以下のものに限定されない。一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。各図面が示す部材の大きさ、厚み、位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。同じ材料、同じ機能を有する部材には、同じ符号を用いることがある。
【0009】
〔発光装置〕
本発明の一実施形態の発光装置は、基板、発光素子、波長変換部材及び光散乱部材を備える。基板は、基体と、基体の一面に配置された配線部と、配線部を被覆し、その一部に配線部を露出させる開口を有し、かつ蓄光材を含む被覆部とを備える。発光素子は、被覆部から露出した配線部に接続されている。波長変換部材は、発光素子の上又は上方に配置されている。光散乱部材は、被覆部を覆い、入射する光の少なくとも一部を被覆部の方向へ散乱させる。
このような構成によって、発光素子から発せられた光は、光散乱部材を通過する際に適度に光散乱しながら発光装置の外部に出射されるため、良好な光取り出し効率を確保することができる。同時に、発光素子から発せられた光は、その一部が光散乱部材を通過する際に反射して、基板側に戻る。その際に蓄光材に照射される。よって、点灯時に蓄光材への蓄光を確保することができる。その結果、点灯時の全光束又は輝度の低減と、蓄光性とのバランスを図り、点灯時における全光束又は輝度の低減を抑制して、良好な光取り出し効率を確保することができるとともに、長時間にわたって、残光輝度を確保することが可能となる。つまり、発光素子から出射した光又は光散乱部材によって反射した光の一部のみが蓄光材に照射され、かつ蓄光材への光の入射面が蓄光材による残光の出射面となる構成によって、これらの効果を効率的に発揮させることができる。また、このような全光束又は輝度と残光特性との間のバランスを、発光素子周辺への蓄光材の配置というシンプルな手段によって容易に図ることができるために、安価でありながら、高性能の発光装置を提供することができる。
【0010】
(基板)
例えば、
図1A、1B、2、3、4に示す発光装置1、1A、1B及び1Cにおいては、基板10は、少なくとも、基体11と、基体11の一面に配置された配線部12と、配線部12を被覆し、その一部で配線部12を露出させる開口13aを有する被覆部13とを備える。
(基体)
基体11は、発光装置の母体となる部材であり、目的及び用途等に応じて、また、発光素子の実装、光反射率、他の部材との密着性等を考慮して、適切な材料を用いて形成することができる。基体の材料としては、例えば、セラミックス(Al
2O
3、AlN等)、ガラスエポキシ、樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等)、金属板、金属箔等の絶縁性又は導電性材料が挙げられる。特に、発光素子の実装にはんだを用いる場合には、耐熱性の高いポリイミドを用いることが好ましい。基体の厚みは、例えば、10μm以上3mm以下とすることができる。基体11は、リジッド基板であっても、可撓性を有するものであってもよい。
基体11は、目的及び用途等に応じて、適切な形状(大きさ、長さ)とすることができる。基体11は、例えば、平面視、四角形、長方形、多角形、円形、楕円形及びそれらを組み合わせた形状等が挙げられる。本開示の発光装置を直管の蛍光灯などの代替装置として使用する場合には、長手方向に延長した細長い形状とすることが好ましい。例えば、長手方向の長さと短手方向の長さとの比は、5以上50以下:1が挙げられる。可撓性の基体は、湾曲又は屈曲など、変形させて用いることができるため、直管型照明の幅、長さよりも、2mm以上3cm以下の大きいものを用いることができる。また、シーリングライトとして使用する場合には、その大きさは、照明を設置する部屋等の大きさなどによって、適宜調整することができ、直径又は一辺が20cm以上300cm以下の基体とすることができる。
【0011】
(配線部)
配線部12は、導電部材として形成されており、基体11の一面上に配置され、発光素子に直接又は間接的に接続される。配線部12は、例えば、金、銀、銅又はアルミニウム等の金属又は合金の単層又は積層構造の導電膜によって形成することができる。配線部12は、基体11の一面上のみならず、基板の種類によって、基体11の内部又は他面に配置されていてもよい。
配線部12の厚みは特に限定されるものではなく、当該分野で通常使用される基板が備える配線部12の厚みを適用することができる。例えば、2μm以上3mm以下が挙げられる。特に、上述したように、可撓性を有する基体11を用いる場合には、配線部12は、その可撓性を損なわない厚みであることが好ましく、例えば、8μm以上150μm以下が挙げられる。
配線部12の形状は、発光素子を搭載する基板等における配線の形状又はパターンに相当する形状等が挙げられ、さらに放熱性又は強度等を考慮した形状等とすることが好ましい。例えば、クランク形状、三角形、四角形等の多角形、円、楕円等の角のない形状、これらの形状に部分的に凹凸を有する形状等の1種又はこれらを組み合わせた形状が挙げられる。
配線部12は、正負一対として構成されていればよい。導電に寄与する正負一対の配線部12の数は適宜設定することができる。
発光素子に直接又は間接的に電気的に接続される配線部12に加えて、同様又は異なる形状等であって、通電に寄与しない配線部が配置されていてもよい。この通電に寄与しない配線部は、放熱部材又は発光素子の載置部として機能させることができる。このような配線部は、基体の一面において、できるだけ広い面積で設けられることにより、放熱性を高めることができる。さらに、配線部は、配線部への電源の供給を可能とする端子を配置することが好ましい。これにより、外部電源から発光素子に給電することができる。
【0012】
(被覆部)
基板10は、配線部12の上に被覆部13を配置している。被覆部13は、少なくとも後述する発光素子を配線部12に接続するために、一部の配線部12を露出する開口13aを有する。開口13aは、発光素子をフリップチップ実装する場合、1つの開口内に正負一対の配線部12を露出させることが好ましい。被覆部13は、開口13aを除いて、基板10の表面の略全面又は配線部12の表面の略全面を被覆していることが好ましい。開口の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、発光素子の配線部への電気的な接続を可能とする最小限の大きさが好ましい。
1つの基板における開口の数は、例えば、1つの基板に搭載する発光素子の数に応じて適宜決定することができる。
通常、発光装置としての出力及び配光等に応じて必要な発光素子の数及び配置が調整され、それによって開口の数及び位置が決定される。開口は、搭載する発光素子の数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、1つの発光素子を1つの開口内に載置する場合は、被覆部13には1つの開口が配置される。基板上に発光素子を20搭載する場合であって、1つの発光素子を1つの開口内に載置する場合は、被覆部には20の開口が配置される。あるいは、1つの開口に2以上の発光素子を載置させる場合、10個以下の開口が配置される。ただし、必ずしも開口内に発光素子が載置されていなくてもよい。例えば、発光装置をいくつかのランク(例えば、出力の異なる発光装置)に作り分ける場合、同じ基板(すなわち、被覆部に設けられる開口の数及び配置が同じもの。)を用いて、開口内に搭載する発光素子の数を変えることで、出力を異ならせることができる。この場合、発光素子が搭載されていない開口が存在してもよい。また、上述した端子など、発光素子に通電させるための部材等を配置する領域に、被覆部のない領域(開口)が配置されていてもよい。
被覆部13は、例えば、樹脂によって形成することができる。樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂又はこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂が挙げられる。
被覆部13は、例えば、単層又は積層構造にかかわらず、0.01mm以上0.5mm以下の厚みで配置することが挙げられる。
被覆部は、後述するように、蓄光材14を含むが、蓄光材のほか、光散乱材又は光反射材等(BaSO4、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2、MgO等)を含有していてもよい。
被覆部は、例えば、上述した樹脂に、任意にフィラー等を混合し、配線部の上にスクリーン印刷機等で印刷し、加熱硬化して固着させることができる。あるいは、フィラー等を混合した樹脂をシート状に加工し、配線部の上に接着剤を介して貼り付けてもよい。シートは、ドクターブレード成形、押出成形、射出成形、圧縮成形等の当該分野で公知の方法によって形成することができる。
【0013】
このように構成される基板10は、可撓性を有するものが好ましい。これによって、種々の適用に対して、発光素子が搭載されたそのままの形態で又は適宜形状を変形させて利用することができる。基板の合計厚みは、上述した各構成部材の厚みによって調整することができ、例えば、50μm以上500μm以下が挙げられ、70μm以上300μm以下とすることが好ましい。
基板10は、発光素子の数にかかわらず、発光素子の発光面の面積に対して十分な大きさを有することが好ましい。例えば、発光素子の発光面の面積に対して、50倍以上の面積を有する基板10又は被覆部13とすることが好ましく、100倍以上であることがより好ましく、300倍以上であることがさらに好ましい。言い換えると、被覆部に含まれる蓄光材の量、発光素子の発光面の大きさ又は輝度等によるが、被覆部13の面積が、後述する光散乱部材19の面積の50%以上95%以下となるように基板10の大きさとすることが好ましい。これにより、後述する蓄光材14を含む被覆部13について、適度な面積を確保することができる。それによって、蓄光材14を、発光素子の周辺に適切に配置することが可能となるとともに、光散乱部材からの散乱光が照射し、発光装置の消灯時において、十分な残光輝度を有する発光装置を提供することができる。
【0014】
(蓄光材)
被覆部13は、蓄光材14を含む。
蓄光材14は、被覆部13の一面上であって、発光素子周辺に配置される。特に、発光素子が配置されている基板上であって、上面視、発光素子と重ならない限り、被覆部13の全面にわたって含有されていることが好ましい。例えば、蓄光材14又は被覆部13の端部が、上面視、発光素子の外周と一致していてもよいが、発光素子の外周から若干の間隔(例えば、2μm以上30μm以下)をあけて配置されていることが好ましい。特に、後述するように、発光素子が反射部材、波長変換部材、任意に透光性部材等に被覆されている場合には、それらの外周の端部が、上面視、蓄光材14又は被覆部13の端部と一致していてもよいし、若干の間隔(例えば、2μm以上30μm以下)があいていてもよい。このような配置により、蓄光材14を適所に配置することができる。その結果、発光素子から出射された光を効率的に蓄光材に照射することが可能となる。
被覆部13が単層構造の場合には、蓄光材14は、被覆部13全体に均一に含有又は分散されていることが好ましい。この場合、蓄光材14は、被覆部13を構成する材料中に埋もれていてもよいが、被覆部13の表面に、蓄光材14が被覆部13から脱落しない程度に蓄光材14の一部が露出していることが好ましい。また、積層構造の場合には、積層構造の最表面において蓄光材を均一に含む層が配置していることが好ましい。また、最表面側から、蓄光材を均一に含む層、次にフィラーを含むなどして反射率を高めた層(光反射性を有する層)の順に積層してもよい。これにより蓄光材からの光が配線部12に吸収されることを抑制し、光取り出し効率を高めることができる。この最表面における蓄光材を含む層は、上述したように、基板10の一面上の被覆部であって全面にわたって配置されていることが好ましいが、基板10の一面上の被覆部において部分的に、浮島状、縞状、格子状等の種々の形態で配置されていてもよい。
【0015】
蓄光材14は、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、硫化物系蛍光体、アルミン酸塩系蛍光体、アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、酸硫化物系蛍光体、アルカリ土類珪窒化物系蛍光体等のいずれであってもよい。具体的には、特開2005-330459号に記載されているもの等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、国際照明委員会(CIE)により定義された標準光源である常用光源D65を用い200ルクス(lx)の照度で20分間照射した後、消灯後20分経過後の残光輝度が30mcd/m2以上である蛍光体が挙げられ、40mcd/m2以上である蛍光体が好ましい。具体的には、アルミン酸塩系蛍光物質、特にSr4Al14O25:Eu,Dy又はSrAl2O4:Eu,Dyであることが好ましい。なかでもSr4Al14O25:Eu,Dy(以下、本明細書中で「SAE」と呼ぶことがある。)は、発光素子として多用される青色LEDからの青色光で励起されやすく、また、発光装置を点灯している際にピーク波長490nmの青緑色の蛍光を発することで照明に使用する際に照明点灯時の480nm近傍の発光スペクトルの谷間を浅くして照明の演色性を向上できる。さらに、発光装置を消灯した後の残光が後述の暗所視での視感度が高いために残光が見やすくなるため、最も好ましい。蓄光材14の濃度は、例えば、被覆部13を構成する材料において、5質量%以上90質量%以下が挙げられ、30質量%以上70質量%以下が好ましい。蓄光材は、例えば、平均粒径が5μm以上200μm以下のものが挙げられ、10μm以上100μm以下が好ましく、15μm以上40μm以下がより好ましい。この範囲とすることにより、蓄光時間を長く維持することができるとともに、シートの成形が容易となる。
蓄光材14を被覆部13に含ませる方法としては、上述した樹脂による膜を形成した後、その上に蓄光材を含有する溶液又は樹脂溶液等を塗布する方法、上述した樹脂と蓄光材、任意にフィラー等を含有する樹脂溶液とを共押出等する方法、上述した樹脂による膜に、蓄光材を含有する樹脂溶液等を全面又は部分的に印刷法により塗布する方法、加工された形状(例えば、シート状)の蓄光材を含有する層を貼り付ける方法など、種々の方法によって形成することができる。
なお、蓄光材が基板の一面上の被覆部において部分的に配置される場合には、蓄光効率をより高めるために、後述する波長変換部材の上面(最上面又は点)よりも下にのみ存在するように、蓄光材を配置することが好ましい。これにより、発光素子からの光が効率的に蓄光材に照射されるとともに、蛍光体からの光を蓄光材が吸収することによる光損失を回避することができる。
【0016】
このように蓄光材を基板の一面上、つまり被覆部に、かつ発光素子周辺に配置することにより、発光装置の点灯時には、発光素子から出射される光の一部は被覆部に照射される。後述するように透光性部材が配置されている場合には、発光素子から出射される光の一部は透光性部材から出射されて被覆部に照射される。そして、発光素子から出射された光、波長変換された光、被覆部により反射した光等の一部は、光散乱部材によって反射又は散乱し、再度被覆部側に戻って、被覆部に照射される。これらの光が、蓄光材の励起に寄与し得る。一方、発光素子から出射されるほとんどの光が、後述する波長変換部材により波長変換され、任意に透光性部材、さらに光散乱部材を通過するため、蓄光材によって遮られることなく、また、蓄光材による吸収を最小限にとどめて、外部に出射されることとなる。その結果、全光束又は輝度をほとんど低減させることなく、通常の発光効率を発揮させることができる。
発光装置の消灯時には、被覆部に含まれる蓄光材からの残光が光散乱部材を通過して外部に出射されることとなり、蓄光材からの残光の出射経路に蛍光体が配置しないため、その残光が蛍光体により吸収されたり、閉じ込められたりすることを回避又は抑制することができる。よって、残光の強度を向上させることができる。このような作用は、発光素子から出射した光及び光散乱部材によって反射した光の一部が、蓄光材に照射され、かつ蓄光材への光の入射面が蓄光材による残光の出射面となる構成によって、効果的に発揮される。
【0017】
(発光素子)
発光素子15は、被覆部13から露出した配線部12に電気的に接続されて配置されている。発光素子は、例えば、
図1A、1B、2、3、4に示す発光装置1、1A、1B、1Cのように、1つの基板上に1つのみ配置されていてもよいし、
図6A及び6Bに示す照明装置2、2Cのように、複数配置されていてもよい。また、発光素子は、1つの開口13a内に1つのみ配置されていることが好ましいが、1つの開口13a内に複数配置されていてもよい。特に、発光素子は、基体11上の被覆部13の開口13a内において、一対の配線部12を跨いでフリップチップ実装又は1つの配線部上にフェイスアップ実装で配置されることが好ましい。このような配置により、発光素子を正負一対の配線部に容易に電気的に接続することができる。
複数の発光素子は、発光装置として必要な出力又は配光を充足するように、その個数、色調、配置を設定することができる。従って、これに応じて、上述したように、配線部又は被覆部の開口部等の形状及び位置等が調整され、そこに、発光素子が載置される。
発光素子は、半導体構造と、p側電極と、n側電極とを有する。
半導体構造は、例えば、透光性を有するサファイア基板上に、青色光を発するように、積層された窒化物半導体からなるn型層、活性層及びp型層等によって形成することが好ましい。なかでも、発光素子の発光ピーク波長が、380nm以上490nm以下の範囲内となるものを選択することが好ましい。蓄光材としてSr
4Al
14O
25:Eu,Dyを使用する場合には、発光素子の発光ピーク波長が、410nm以上460nm以下の範囲内となるものを選択することが、発光素子の発光効率と蓄光材の励起効率のバランスが良く、発光装置の残光特性が良くなるので特に好ましい。
n側電極及びp側電極は、公知の電極材料の単層膜又は積層膜によって形成することができる。フリップチップ実装される場合には、発光素子のp側電極及びn側電極は、一対の接合部材を介して一対の配線部にそれぞれ接続される。接合部材としては、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu系、Au-Sn系等のはんだ、Au等の金属のバンプ等を用いることができる。フェイスアップ実装される場合には、発光素子は、樹脂などの絶縁性接合部材、上述の導電性の接合部材によって基体上(配線部上)に固定され、ワイヤによって配線部に電気的に接続される。発光素子の基板が導電性の場合は、上述の接合部材によって電気的に接続される。
【0018】
(波長変換部材)
発光素子15の上又は上方には、波長変換部材16、16Aが配置されている。
波長変換部材16は、発光素子15の光出射面である上面を被覆するように配置されていることが好ましい。
図1A、1B、
図2及び
図4に示すように、1つの発光素子15は、1つの波長変換部材16、16Aで被覆されていることが好ましく、2つ以上の発光素子が1つの波長変換部材に被覆されていてもよい。波長変換部材16、16Aには、発光素子から発せられる波長の光を可視光に変換するものが好ましい。
波長変換部材は、蛍光体を含む。蛍光体としては、当該分野で公知のものを使用することができる。このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム、セリウム等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、より具体的には、ユーロピウムで賦活されたα又はβサイアロン型蛍光体、各種アルカリ土類金属窒化シリケート蛍光体、ユーロピウム等のランタノイド系元素、マンガン等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類のハロシリケート蛍光体、アルカリ土類金属シリケート蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属硫化物、アルカリ土類金属チオガレート、アルカリ土類金属窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、セリウム等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩又はユーロピウム等のランタノイド系元素で主に賦活される有機物及び有機錯体等が挙げられる。
なかでも、発光素子として青色発光する窒化ガリウム系発光素子を用いる場合、希土類アルミン酸塩蛍光体又は窒化物系蛍光体が好ましい。具体的には、青色光を吸収して黄色から緑色系発光する(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce(本明細書中で「YAG」と呼ぶことがある。)、Lu
3(Al,Ga)
5O
12:Ce(本明細書中で「LAG」と呼ぶことがある。)、緑色発光するβサイアロン、赤色発光する(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu(本明細書中で「SCASN」と呼ぶことがある。)、CaAlSiN
3:Eu(本明細書中で「CASN」と呼ぶことがある。)から選択された少なくとも一種の蛍光体を用いることが好ましい。
【0019】
特に、照明用途としては、YAG又はLAGの蛍光体とSCASN又はCASN蛍光体とを組み合わせて用いることが好ましい。蛍光体は、上述した蓄光材より、発光ピークが長波長であるものが好ましい。例えば、蓄光材として、上述したアルミン酸塩系蛍光物質、特にSAEを用いる場合には、SAEからの光よりも視感度の高い光を発光する蛍光体の少なくとも1種を用いることが好ましい。ここで、視感度とは、分光視感効果度とも呼ばれ、ヒトの目が波長ごとに光を感じ取る強さの度合を表すものであり、ヒトの目が最も強く感じる波長555nmの光を1として、他の波長の明るさを感じる度合いを、比を用いて表現したものである。多数のヒトの視感度を平均化し、CIE(国際照明委員会)が合意して定めたものを標準比視感度(比視感度)といい、本明細書では、この値を指すものとする。なお、視感度には明所視と暗所視があるが、本明細書では、明るい環境でのヒトの目の感じ方である明所比視感度のことを指す。「SAEからの光よりも視感度の高い光」とは、SAEの発光ピーク波長(495nm付近)における視感度(約0.25)よりも高い視感度となる波長帯(495nm以上635nm以下)の光を意味する。よって、SAEの発光ピーク波長よりも視感度の高い黄色から赤色領域の光が挙げられる。このような光を発する蛍光体としては、例えば、YAG、CASN又はこれらの組み合わせが挙げられる。これにより、良好な平均演色評価数Raを得ることができる。ここでの平均演色評価数Raとは、再表2004/081140号公報によって示されている値であり、良好なRaとは、75以上95以下の値であることを意味する。
また、蛍光体とともに又は蛍光体に代えて、半導体材料、例えば、II-VI族、III-V族、IV-VI族半導体、具体的には、CdSe、コアシェル型のCdSxSe1-x/ZnS、GaP等のナノサイズの高分散粒子であるいわゆるナノクリスタル、量子ドットと称される発光物質を用いてもよい。なかでも、発光素子から出射される青色光を可視光に変換する蛍光体を用いることが好ましい。
【0020】
波長変換部材は、蛍光体と樹脂とによって形成されるものでもよいし、蛍光体の結晶又は焼結体、蛍光体と無機物の結合材との焼結体等であってもよい。樹脂としては、被覆部で例示したものと同様のものが挙げられる。
蛍光体が樹脂に含有される場合には、例えば、蛍光体は波長変換部材の全重量に対して5質量%以上90質量%以下で含有させることができる。
波長変換部材の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、層状、凹状、凸状等種々の形状とすることができる。波長変換部材の大きさは、発光素子の輝度、指向性等を考慮して適宜設定することができる。波長変換部材は、平面形状が、発光素子の光出射面である上面より大きくてもよいし、小さくてもよいし、同程度の大きさでもよい。厚みは、用いる蛍光体等の種類及び量等によって適宜設定することができる。例えば、30μm以上500μm以下が挙げられる。
波長変換部材は、発光素子を被覆する限り、発光素子に直接接触していてもよいし、発光素子との間に空洞を有していてもよいし、接着剤等を介して被覆するように配置されていてもよい。発光素子の上方では、発光素子に接触するが、発光素子の外周では、基板を構成する被覆部及び配線部と必ずしも直接接触せず、後述する光反射部材等を介して配置されていてもよい。
例えば、波長変換部材16は、
図1A、1B及び4に示すように、発光素子15の平面積よりも大きな平面積を有し、発光素子15の側面を被覆するか又は後述する光反射部材の上面を被覆していてもよい。その形状は凸状等の形状を有していてもよい。また、
図2に示すように、波長変換部材16Aは、発光素子15の平面積と略同じ平面積を有し、発光素子15の上にのみ、層状又は板状の平坦面を有していてもよい。この場合、発光素子15の側面とともに波長変換部材16Aの側面も、後述する光反射部材等に被覆されていることが好ましい。さらに、
図3に示すように、波長変換部材と透光性部材とを別個に設けることなく、蛍光体を含有させた透光性部材18Bを発光素子上に配置して、波長変換部材と兼用させてもよい。この場合、蛍光体を含有する部位は、その構成上、蛍光体が下方に偏って配置することとなるため、透光性部材18B自体が、発光素子のみならず、蛍光体を含有する部位を波長変換部材として覆うことになる。
【0021】
本明細書において、波長変換部材中に含まれる蛍光体は、常用光源D65を用い200ルクス(lx)の照度で20分間照射した後、消灯後20分経過後の残光輝度が1mcd/m2以下である点で、蓄光材とは区別される。つまり、波長変換部材中に含まれる蛍光体は、消灯後には発光を視認されない蛍光体である。
【0022】
(光散乱部材)
光散乱部材19は、例えば、
図1A、1B、2、3、4の発光装置1、1A、1B及び1Cに示すように、基板10の一面上の被覆部13を覆う部材である。また、光散乱部材19は、
図1A、1B、2、3の発光装置1、1A及び1Bに示すように、透光性部材18を備える場合には、透光性部材をも、被覆部13とともに覆う部材である。基板10上に、発光素子15が1つのみの場合、光散乱部材19は、その発光素子の全体を取り囲むように配置されていることが好ましい。また、
図6A及び6B、
図7の照明装置2、2Cに示すように、基板10上に、発光素子15が複数配置されている場合、光散乱部材19は、それらの発光素子の全ての全体を取り囲むように配置されていることが好ましい。
光散乱部材19は、光透過性であるが、そこに入射する少なくとも一部の光を被覆部13の方向へ散乱させる機能を有する。特に、光散乱部材19は、発光素子から出射される光の一部のみを反射し、蓄光材に入射させるとともに、波長変換部材16によって波長変換された光及び蓄光材によって反射された光を通過させるものが好ましい。光散乱部材19は、発光素子から出射される光、波長変換部材16によって波長変換された光及び蓄光材によって反射された光の透光率が75%以上であるものが好ましく、80%以上であるものがより好ましい。蓄光材の励起効率が高くなるように、発光素子の発光ピーク波長と蓄光材の励起強度を適宜選択することにより、波長変換部材を透過する発光素子からの光のうち、少なくとも1%の光を被覆部の方向へ散乱させる光散乱部材とすることで十分な残光輝度を得ることもできる。
【0023】
光散乱部材は、光透過性樹脂に微粒子を添加することによって形成することができる。光透過性樹脂としては、波長変換部材で例示したものから選択して用いることができる。微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子又はこれらの組み合わせであってよい。有機微粒子は、アクリル系ポリマー、スチレンポリマー、スチレン-アクリルポリマー及びその架橋体、メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、フッ素系ポリマー、これらの共重合体からなる微粒子を含む。無機微粒子は、スメクタイト、カオリナイト、タルクなどの粘土化合物粒子;シリカ、酸化チタン、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化ストロンチウムなどの無機酸化物からなる微粒子;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩化バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウムなどの無機化合物からなる微粒子及びこれら2種以上の無機酸化物を焼結して得られるガラス材料からなる微粒子等が挙げられる。微粒子は、2種以上の有機微粒子と無機微粒子の組み合わせであってもよい。
光散乱部材は、その表面又は裏面に凹凸を有していてもよい。これによって、効果的に光散乱効果を付与することができる。
光散乱部材は、単層でもよいし、積層構造でもよい。光散乱部材は、いずれにおいても、例えば、0.1mm以上5mm以下の厚みを有するものが挙げられる。
光散乱部材は、シート状又は板状に形成されていることが好ましい。光散乱部材は、発光素子及び蓄光材から出射される光を透過、反射又は散乱させるように、発光素子及び蓄光材を被覆することが好ましい。そのために、基板上に配置された発光素子の側方及び上方の全てを取り囲むように配置されていることが好ましく、基板の側面及び裏面の一部又は全部を取り囲むように配置されていてもよい。
このように光散乱部材を配置することにより、発光素子からの光及び波長変換されたほとんどの光を外部に効率的に出射させることができるとともに、それらの光の一部のみを被覆部13の方向に反射又は散乱して、効率的に蓄光材に照射し、残光特性を付与することができる。
【0024】
(透光性部材)
図4に示すように、発光装置1Cは、発光素子15の上方が必ずしも透光性部材で被覆されていなくてもよいが、
図1A、1B、2、3の発光装置1、1A及び1Bに示すように、発光素子15を波長変換部材16、16Aとともに被覆する透光性部材18、18Bを備えていることが好ましい。
透光性部材18、18Bは、基板10上において、
図1A、1B及び2に示すように、発光素子15と波長変換部材16、16Aとを被覆する。あるいは、
図3に示すように、透光性部材18Bは、蛍光体を含有した部位を波長変換部材として、別途波長変換部材を設けることなく、発光素子15とともに被覆していてもよい。1つの発光素子15は、1つの透光性部材18で被覆されていることが好ましいが、2つ以上の発光素子が1つの透光性部材18で被覆されていてもよい。透光性部材18は、発光素子からの光に対して透光性で、かつ、耐光性及び絶縁性を有するものが好ましい。ここでの透光性とは、発光素子の出射光の60%程度以上を透過する性質、好ましくは70%以上又は80%以上の光を透過する性質を意味する。この透光性部材18は、上述した被覆部の開口13aの一部を被覆しないように配置されていてもよいが、開口13aの全てを被覆するように配置されていることが好ましい。また、透光性部材18は、蛍光体の有無にかかわらず、被覆部13を被覆しないように配置させることが好ましい。
透光性部材は、具体的には、被覆部の樹脂として例示した材料を用いて形成することができる。また、透光性部材には、上述した波長変換部材で例示した蛍光体、光散乱材等を含有していてもよい。
【0025】
透光性部材18は、発光素子の主面に垂直な方向の発光強度が最大値に対して0.9以下である発光強度分布を与える指向特性を有するものが好ましい。発光素子の主面に垂直な方向の発光強度が最大値となるような指向特性を有する発光強度分布の透光性部材は、後述の光散乱部材19を通して発光装置から出射される光が部分的に明るくなるために照明に使用する際には眩しく見えるなどの不具合が発生するとともに、光散乱部材19から被覆部13への散乱光量が減少するために蓄光材14を十分に励起できず残光量が減少する不具合も発生する。従って、発光装置内の発光素子の位置、複数の発光素子を使用する場合には発光素子間の間隔、及び、発光素子と光散乱部材との距離などを考慮して、透光性部材からの発光強度分布を与える指向特性を調整する。例えば、透光性部材は、凹レンズ、凸レンズ、半球状の凸レンズ及びこれら2以上を組み合わせたものが挙げられる。特に、バットウィング配光を行うレンズ形状を有しているものが好ましい。このような指向特性を有する場合、発光素子から出射された光は略全てが透光性部材18に出射されるが、透光性部材から、広い配光によって、その一部の光のみを効率的に発光素子周辺の被覆部における蓄光材へ直接的に又は光散乱部材19を介して間接的に照射することができる。
透光性部材の大きさは、基板として可撓性基板を用いる場合には、可撓性基板の可撓性を損なわない程度の大きさであることが好ましい。例えば、発光素子の全てを被覆することができる平面積又は厚みよりも大きく、好ましくは、発光素子、波長変換部材、任意に後述する光反射部材の全てを被覆することができる平面積又は厚みよりも大きいことが好ましい。透光性部材の大きさは、例えば、一辺(直径)が1mm以上4mm以下であり、厚みが0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。
透光性部材18は、その外縁が、被覆部上に配置されていてもよいが、被覆部の開口内に配置されていることが好ましい。特に、透光性部材が被覆部の開口内に配置されている場合は、その外縁が、被覆部の開口13aの縁に接触していることがより好ましい。つまり、発光装置の表面において、透光性部材と被覆部とが切れ目なく配置されていることが好ましい。これにより、発光装置の消灯時においても、残光の輝度ムラを低減することができる。
透光性部材は、発光素子を被覆する限り、発光素子に直接接触していなくてもよく、発光素子との間に空洞を有していてもよいし、発光素子の上方では、発光素子に接触するが、発光素子の外周では、基板を構成する被覆部及び配線部と必ずしも直接接触せず、後述する光反射部材を介して配置されていてもよい。
【0026】
上述したように、透光性部材は、発光素子から出射される光を吸収して異なる波長の光に変換する蛍光体等を含有して、波長変換部材の機能を兼用させてもよい(
図3の18B参照)。
透光性部材は、蓄光材が含有されていないことが好ましい。これによって、発光素子から出射され、波長変換を経て外部に出射される光の進行方向において、蓄光材を配置することがないため、発光素子からの光の略全てを蛍光体に照射することができ、効率的に波長変換することが可能となる。また、蓄光材に発光素子からの光が照射されることを回避することができる。その結果、外部に取り出される光の励起効率をより向上させることができる。つまり、発光素子が青色領域の光を出射し、蓄光材が、例えばSAEである場合、蓄光材によりその光が青緑領域の光に変換され、さらに、この変換光が蛍光体に出射されると、蛍光体の励起効率が低減することとなるが、このような蛍光体の励起効率の低減を確実に回避することができる。
【0027】
(光反射部材)
発光素子15は、その側面を光反射部材17によって被覆されていることが好ましい。特に、発光素子15が被覆部13の開口13a内に配置される場合、発光素子15の周囲であって、露出した配線部12を被覆するように光反射部材17が配置されていることが好ましい。また、光反射部材17は、配線部12の有無にかかわらず、例えば、一対の配線部12の間又は発光素子15の直下、つまり、発光素子15と基板10との間に配置されていてもよい。
通常、発光素子の基板上への搭載は、接合部材等を用いて行うが、この接合部材又は基体の一部表面(例えば、配線部)等は、光反射部材を構成する材料よりも、通常、光による劣化が生じやすい場合がある。その場合は、発光素子の近傍において、この接合部材又は基体の一部表面等が光反射部材に被覆されるように配置されることが好ましい。これによって、発光素子から出射される比較的強い光を接合部材又は基体等に直接照射されることがなくなるため、発光装置を構成する部材の光劣化を効果的に防止することができる。
また、光反射部材を使用することにより、発光素子の側面からの発光を上面へと反射させることで、発光素子からの光を波長変換部材に効率良く照射し、発光効率の高い発光装置を得ることができる。
なお、光反射部材17は、
図2に示すように、波長変換部材16Aの側面を被覆していてもよい。
【0028】
透光性部材18、18Bを備える場合、光反射部材17は、被覆部13に設けられた開口13a内に配置されているのであれば、発光素子と反対側の端部が、上述した透光性部材の外縁内にのみ配置していてもよいし、外縁と一致するように配置していてもよい。
光反射部材17の大きさ、つまり、発光装置を光取り出し方向から見た場合の平面積は、発光素子の平面積を除いた透光性部材18の平面積に対して、大きくてもよいが、同等又は小さいことが好ましい。特に、発光素子の平面積を除いた透光性部材18の平面積の1/5以上1倍以下、1/4以上1倍以下が好ましく、1/3以上1倍以下がより好ましい。このように、光反射部材17が配置する平面積が大きければ、透光性部材18との接触面積が増大するため、両者の密着性により、発光装置の透光性部材18の密着性をより一層強固なものとすることができる。
また、
図4に示すように、透光性部材が配置されていない場合には、光反射部材17は、上述した被覆部の開口13aの一部を被覆しないように配置されていてもよいが、開口13aの全てを被覆するように配置されていることが好ましい。そして、光反射部材17の外縁が、開口13aを構成する被覆部13の縁と接していることが好ましい。
【0029】
光反射部材17は、例えば、2μm以上300μm以下の範囲内の膜厚で配置することができる。特に、発光素子に接触する部分は、発光素子の側面の高さに相当する膜厚以下であることが好ましいが、
図2に示すように、波長変換部材16Aの側面を被覆する場合には、発光素子及び波長変換部材の側面の合計高さに相当する膜厚以下であることが好ましい。光反射部材17が、開口13a内全体に配置される場合には、開口13aの外縁と接触する部分は、開口13aの深さに相当する膜厚以下であることが好ましい。特に、発光素子から、その外側(発光素子の中心に対して外側)に向かって減少する厚みであってもよい。
【0030】
光反射部材17は、例えば、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂によって形成することができる。また、光反射部材17は、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2、MgOなどの反射材又は拡散材を含有しており、これにより、効率よく光を反射させることができる。光反射部材17を構成する材料は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これにより、光の反射率を調整することができ、また、樹脂の線膨張係数を調整することが可能となる。透光性部材18、18Bを備える場合、光反射部材17を構成する材料は、透光性部材18、18Bを構成する材料を含むことが好ましく、特に、透光性部材18、18Bを構成する樹脂と同一の樹脂を含むことがより好ましい。これにより、透光性部材18、18Bの基板10への密着性をより確保することができる。
【0031】
基板10の一面、内部又は裏面には、発光素子15のみならず、ツェナーダイオードのような保護素子又は関連部品(例えば、上述した外部接続用の端子、ヒューズ、抵抗等)が配置されていてもよい。このような保護素子及び関連部品は、発光素子が載置された開口内に、発光素子と一緒に配置してもよいし、別途開口を設け、その開口内に配置してもよい。ただし、発光素子からの光を吸収しない位置に配置することが好ましい。例えば、複数個の発光素子が直列接続された配線部に1つの保護素子を、発光素子の配置に関係なく、端子付近に載置させるなど、任意の位置に載置させることが好ましい。
【0032】
本開示の発光装置では、点灯時においては、発光素子から出射した光は、任意にその一部は透光性部材18、18Bにより側方に出射され、効率的に被覆部13に含まれる蓄光材14に照射されることとなる。また、光散乱部材19によって、外部に向かう光の一部を、基板10側に反射することにより、効率的に被覆部13に含まれる蓄光材14に照射されることとなる。一方、発光素子から出射される光の上記一部を除いて、ほぼ全てが波長変換部材16、16A、任意に透光性部材18、18Bに出射されるため、発光素子から出射された光は、効率的に蛍光体を励起させることができる。また、光を外部へ出射するための進行方向に蓄光材が配置しないために、蓄光材による光の吸収を回避することができる。従って、発光装置の点灯時において、蓄光材による光の吸収による全光束及び輝度の低下を効果的に防止することが可能となる。
そして、消灯時においては、蓄光材から発せられる残光が、基板上、つまり被覆部上の略全面によって出射されるとともに、波長変換部材中等の蛍光体にあたる経路を最小限にとどめることができるため、残光が波長変換部材中等の蛍光体による吸収又は閉じ込めを抑制し、残光の強度を向上させることができ、残光輝度を長時間にわたって確保することができる。
さらに、本開示の発光装置では、発光素子が基板の配線部に直接電気的に接続されるように配置されているため、広配光の光、特に透光性部材によってより一層広がった広配光の光を、基板を構成する被覆部の蓄光材に効率的に照射させることができる。これにより、蓄光材が被覆部のいずれの部位に配置されているとしても、輝度ムラの少ない残光を得ることができる。また、蓄光材を配線部に近接して配置させることができるため、熱引きが良好となり、蓄光材の劣化を抑制することが可能となる。
【0033】
(光反射材)
図5A、5Bに示すように、本開示の発光装置1D、1Eは、光反射材20D、20Eを備えてもよい。光反射材20D、20Eは、発光素子15又は透光性部材18と、光散乱部材19との間に配置する。例えば、
図5Aに示すように、光反射材20Dは、発光素子15の直上であって、光散乱部材19の内面の一部に配置してもよい。また、
図5Bに示すように、光反射材20Eは、発光素子15又は透光性部材18と、光散乱部材19との間に、他の部材との間隔を空けて配置することができる。光反射材20D、20Eは、例えば、板状又は湾曲板状等の形状とすることができ、その平面形状は、例えば、円状、角状、発光素子の列に沿った帯状から選択された少なくとも一種とすることができる。光反射材の反射率は、照明設計に悪影響を与えない程度に光散乱部材を透過する光の量が均一となる程度の反射率に調整される。このような光反射材を備えることにより、発光素子からの光を効率良く被覆部へ反射させて蓄光材を励起できる。また、発光装置から出射しようとする光の一部が光反射材に遮られることにより、発光素子の直上における照明の局所的な眩しさを低減することができる。
【0034】
〔照明装置〕
本開示の照明装置2、2Cは、
図6A及び
図6B並びに
図7に示すように、上述した発光装置1、1Cを複数配列して、一体的に構成し、光散乱部材19が、個々の発光素子15を含む発光装置ごとにではなく、複数の発光装置を一体的に被覆するように配置している。このような構成とすることにより、広い面積において被覆部13を配置することができるために、点灯時の全光束及び輝度の低減と、蓄光性とのバランスをより効果的に図ることができる。従って、点灯時における全光束及び輝度の低減を抑制して、良好な光取り出し効率を確保することができるとともに、長時間にわたって、残光輝度を広い面積において確保することが可能となる。
【0035】
以下に、本開示の発光装置を備えた照明装置についての具体的な実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態)
この実施の形態の照明装置2は、
図6A及び6Bに示すように、基板10、発光素子15、波長変換部材16、透光性部材18及び光散乱部材19を備えている。
基板10は、ポリイミド(膜厚25μm程度)からなる可撓性を有する基体11と、その一面に接着剤を介して設けられ、複数の配線部12(銅箔、膜厚35μm程度)と、その上に被覆された絶縁性を有し、蓄光材14が均一に分散された、単層の被覆部13とが積層構造によって形成されている。
被覆部13は、シリコーン系樹脂に、蓄光材14として、SAEを50質量%程度含有して、膜厚200μm程度で膜状に形成されている。
基板10は、81mm(長さ)×81mm(幅)×0.9mm(厚さ)のサイズを有する。
基板10は、発光素子15との電気的な接続のために、その一部領域において、直径5mmの開口13aによって配線部12を被覆部13から露出させている。
発光素子15は、半導体構造と、p側電極と、n側電極とを有する。半導体構造は、一部領域において、p型半導体層及び発光層が除去されて、n型半導体層が露出しており、その露出面にn側電極が形成されている。p型半導体層の上面にはp側電極が形成されている。従って、n側電極とp側電極とは、半導体構造に対して同じ面側に形成されている。
このような発光素子15は、基板10の被覆部13の開口13a内に露出した一対の配線部12に、n側電極及びp側電極が配置された面を下に向けて、接合部材によって電気的に接続されている。
発光素子15は、例えば、17.8mmの等間隔で、合計16個マトリクス状に配置されている。
【0036】
基板10表面の発光素子15が配置された領域の周囲には、光反射部材17が配置されている。光反射部材17は、例えば、酸化チタンが30質量%程度含有されたシリコーン樹脂によって形成されている。光反射部材17は、発光素子15の側面、かつ接合部材上から、発光素子の外周であって、被覆部13の開口13a内に配置している。光反射部材17の厚みは、発光素子15側においては、発光素子15の側面の高さと略同じ厚みであり、被覆部13の開口13aの外縁との接触面で、被覆部13と同等になるように徐々に薄くなる厚みを有している。
【0037】
発光素子15及びその周囲に配置された光反射部材17の上に、例えば、蛍光体として、LAG及びSCASNを、合計10質量%程度含有したシリコーン樹脂によって形成された波長変換部材16が配置されている。
発光素子15の上方であって、波長変換部材16及び発光素子15の周辺の光反射部材17を被覆するように、透光性部材18が配置されている。透光性部材18の外縁は、被覆部13の開口13aの外縁と一致している。透光性部材18は、バットウィング配光を行うレンズ形状を有している。具体的には、発光素子15の中央部において凹形状であり、発光素子15の外縁さらにその外側に向かって凸形状に成形されている。透光性部材18は、光反射部材17と同じ種類の樹脂を含有して配置されているため、両部材の密着性を確保することができる。
【0038】
このような照明装置2において、発光素子を5分間点灯時及び消灯後1分間経過した際の相対発光スペクトルを測定した。
また、照明装置2C(
図7参照)として、発光素子15の上方に透光性部材を配置しない以外は、照明装置2と同様の照明装置において、同様の相対発光スペクトルを測定した。
比較のために、上記照明装置2において、被覆部に蓄光材を含まない以外は実質的に同一構造の発光装置を準備した。それらの結果を
図8に示す。
図8から、照明装置2において、蓄光材が発光素子の蛍光スペクトルにわずかに寄与することが分かった。つまり、480nm付近の発光の谷間を埋めて、演色性及びメラノプシン細胞(ipRGC)への光刺激量を向上することが確認された。また、蓄光材によって、発光素子の点灯時における光束の低下は極め低いことが確認された。なお、照明装置2Cにおいても、実質的に同様の効果が得られる。
【0039】
このような照明装置2では、点灯時においては、発光素子から出射される光が波長変換部材又は透光性部材の方向に出射されるため、その光を、蛍光体に効率的に照射させることができる。また、波長変換部材及び透光性部材には、蓄光材が含有されていない。これによって、効率的に蛍光体を励起させることができ、蓄光材による光の吸収を回避することができる。
さらに、この照明装置では、発光素子は基板上に配置され、特有の配光性を有する透光性部材によって被覆されている場合には、透光性部材から広配光の光を、効率的に被覆部の蓄光材に照射して、効果的に蓄光材を励起することができる。そのため、波長変換部材中の蛍光体の励起と相まって、演色性を向上させることができるとともに、光を蓄積することが可能となる。
さらに、蓄光材が配線部に近接して配置していることから、光が照射されている間の熱引きが良好であり、蓄光材の劣化を抑制することが可能となる。
【0040】
照明装置の消灯時においては、透光性部材の外縁が、被覆部の開口の縁と一致する場合には、蓄光材から発せられる残光は、透光性部材中の蛍光体にあたる経路を最小限にとどめることができる。よって、残光の蛍光体による吸収又は閉じ込めを最小限にとどめることができ、残光の強度を向上させることができる。また、照明装置の表面において、蓄光材が切れ目なく配置していることにより、より広域の配光で、全体的に均一に高い輝度を実現しながら、残光を得ることができる。
さらに、被覆部13に蓄光材が含まれるため、蓄光材が発する光を効率的に取り出すことができる。
透光性部材に蓄光材が含有されていない場合には、特に、発光素子からの光の全てを蛍光体に照射することができ、蓄光材に発光素子からの光が照射され、かつ、吸収されることを最小限にとどめることができるために、励起効率をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1、1A、1B、1C、1D、1E 発光装置
2、2C 照明装置
10 基板
11 基体
12 配線部
13 被覆部
13a 開口
14 蓄光材
15 発光素子
16、16A 波長変換部材
17 光反射部材
18、18B 透光性部材
19 光散乱部材
20D、20E 光反射材