(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】光源ユニット
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02253 20210101AFI20240724BHJP
H01S 5/02212 20210101ALI20240724BHJP
H01S 5/02257 20210101ALI20240724BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240724BHJP
【FI】
H01S5/02253
H01S5/02212
H01S5/02257
G02B7/02 A
(21)【出願番号】P 2020124956
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大森 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】東浦 敦
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-297255(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0222403(US,A1)
【文献】特開平01-312521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0245089(US,A1)
【文献】特開2016-004989(JP,A)
【文献】特開2016-136626(JP,A)
【文献】特開2014-120560(JP,A)
【文献】特開平10-186196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 ー 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するエミッタ領域を有するレーザダイオードと、
前記レーザ光を透過する窓部材を有し、前記レーザダイオードを封止する半導体レーザパッケージと、
前記窓部材を透過した前記レーザ光を受け、前記エミッタ領域の像を像面に形成する第1レンズ系であって、コリメータレンズおよび結像レンズを有する第1レンズ系と、
前記像面を通過した前記レーザ光をコリメートビームまたは収束ビームに変換して出射する第2レンズ系と、
前記第1レンズ系を収容するレンズケースと
を備え、
前記レンズケースは、
前記半導体レーザパッケージに固定された第1スリーブと、
前記第1スリーブ内に固定され、前記コリメータレンズを保持する第1レンズ鏡筒と、
前記第1スリーブおよび前記第1レンズ鏡筒の少なくとも一方に接合された第2スリーブと、
前記第2スリーブ内に固定され、前記結像レンズを保持する第2レンズ鏡筒と、
を有する、光源ユニット。
【請求項2】
前記半導体レーザパッケージは、
前記レーザダイオードを直接または間接的に支持する上面と、下面とを有するベースと、
前記ベースに固定され、前記レーザダイオードを覆うキャップと、
を有し、
前記キャップは、前記窓部材が固定された側壁部を含み、
前記第1スリーブは、前記側壁部における前記窓部材の周囲の少なくとも一部に接合された中間板を介して前記半導体レーザパッケージに接合され、
前記中間板は、前記側壁部に接合された第1領域と、前記側壁部に隙間を介して対向する第2領域とを有し、前記第2領域は、前記第1領域よりも前記ベースの前記下面に近い、請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記中間板は、上端および下端を有しており、
前記中間板の前記第1領域と前記第2領域との境界は、前記上端と前記下端との間に位置し、前記第2領域は、前記下端から前記境界までの距離によって規定される高さを有している、請求項2に記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記第2領域の高さは、前記中間板の前記上端から前記下端までの距離の20%以上50%以下である、請求項3に記載の光源ユニット。
【請求項5】
前記第1スリーブおよび前記第2スリーブは、第1の金属材料から形成されており、
前記第1レンズ鏡筒および前記第2レンズ鏡筒は、前記第1の金属材料の線膨張係数よりも大きな線膨張係数を有する第2の金属材料から形成されている、請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記第1スリーブおよび前記第2スリーブは、第1の金属材料から形成されており、
前記第1レンズ鏡筒および前記第2レンズ鏡筒は、前記第1の金属材料の線膨張係数よりも大きな線膨張係数を有する第2の金属材料から形成されている、請求項2から4のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項7】
前記第1スリーブは前記中間板に溶接され、かつ、前記第2スリーブは前記第1レンズ鏡筒に溶接されている、請求項6に記載の光源ユニット。
【請求項8】
前記像面から前記第2レンズ系までの距離は、前記レーザダイオードの前記エミッタ領域から前記窓部材の外側表面までの距離よりも短い、請求項1から7のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項9】
前記第2レンズ系は、前記像面の側から順に配置された速軸コリメータレンズおよび遅軸コリメータレンズを含み、少なくとも前記速軸コリメータレンズは前記第2スリーブ上に固定されており、
前記像面から前記第2レンズ系までの前記距離は、前記像面から前記速軸コリメータレンズまでの距離である、請求項8に記載の光源ユニット。
【請求項10】
前記像面から前記第2レンズ系までの前記距離は、1.0ミリメートル以下である、請求項
8または9に記載の光源ユニット。
【請求項11】
前記コリメータレンズの直径と前記結像レンズの直径とが等しい、請求項1から10のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
高出力高輝度のレーザビームを用いて多様な種類の材料に切断、穴あけ、マーキングなどの加工を行ったり、金属材料を溶接したりすることが行われている。従来、このようなレーザ加工に使用されてきた炭酸ガスレーザ装置およびYAG固体レーザ装置の一部は、エネルギ変換効率の高いファイバレーザ装置に置き換わりつつある。ファイバレーザ装置の励起光源には、半導体レーザダイオード(以下、単にLDと記載する。)が使用されている。近年、LDの高出力化に伴い、LDを励起光源としてではなく、材料を直接に照射して加工するレーザビームの光源として用いる技術が開発されつつある。このような技術は、ダイレクトダイオードレーザ(DDL)技術と称されている。
【0003】
特許文献1は、複数のLDからそれぞれ出射された複数のレーザビームを結合(combine)して光出力を増大させるレーザ光源の一例を開示している。複数のレーザビームの結合は「空間ビーム結合」と称され、例えばファイバレーザ装置の励起光源およびDDL装置などの光出力を高めるために利用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空間ビーム結合に適した、より信頼性の高い光源ユニットが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光源ユニットは、実施形態において、レーザ光を出射するエミッタ領域を有するレーザダイオードと、前記レーザ光を透過する窓部材を有し、前記レーザダイオードを封止する半導体レーザパッケージと、前記窓部材を透過した前記レーザ光を受け、前記エミッタ領域の像を像面に形成する第1レンズ系であって、コリメータレンズおよび結像レンズを有する第1レンズ系と、前記像面を通過した前記レーザ光をコリメートビームまたは収束ビームに変換して出射する第2レンズ系と、前記第1レンズ系を収容するレンズケースとを備える。前記レンズケースは、前記半導体レーザパッケージに固定された第1スリーブと、前記第1スリーブ内に固定され、前記コリメータレンズを保持する第1レンズ鏡筒と、前記第1スリーブおよび前記第1レンズ鏡筒の少なくとも一方に接合された第2スリーブと、前記第2スリーブ内に固定され、前記結像レンズを保持する第2レンズ鏡筒とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態によれば、空間ビーム結合に適した、より信頼性の高い光源ユニットが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、チップ状態にあるLDから出射されたレーザ光をコリメートして出力する光源ユニット100Pの構成例を模式的に示す上面図である。
【
図2】
図2は、LD12の基本的な構成の一例を示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、パッケージ10に収容されたLD12から出射されたレーザ光をコリメートして出力する光源ユニット100Qの構成例を示すXZ面に平行な模式断面図である。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aに示される光源ユニット100QのYZ面に平行な模式断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における光源ユニット100の基本的な構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、光源ユニット100における一部のより詳細な模式断面図である。
【
図6】
図6は、パッケージ10の内部を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、パッケージ10の外部を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、光源ユニット100の主要部を拡大して示す図である。
【
図9】
図9は、第1レンズ系20の各レンズの実効焦点距離F1、F2を示す図である。
【
図10】
図10は、レンズケース40の構成要素のそれぞれを示す断面図である。
【
図11】
図11は、パッケージ10に接合される第1スリーブ42Aを模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、第1スリーブ42Aが中間板50を介してパッケージ10に接続される形態を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、中間板50の正面(左側)および断面(右側)を示す図である。
【
図15】
図15は、光源ユニット100の中間板50を示す図である。
【
図16】
図16は、動作中の熱膨張によって光源ユニットの一部が変形したきの光軸ずれを誇張して示す断面図である。
【
図17】
図17は、サンプル2について、像(仮想光源)E’の位置ずれΔYの大きさと、中間板50における第2領域50Bの高さh2との関係を示すグラフである。
【
図18】
図18は、光源ユニット100の第1レンズ系20の光軸上における幾つかの評価点位置を示す断面図である。
【
図19】
図19は、サンプル1~3について、評価点Z0を基準(0.0μm)とするとき、LD12が発する熱による各評価点Z1~Z5の変位の大きさを示すグラフである。
【
図20A】
図20Aは、本実施形態におけるレーザ光源モジュール200をXZ面の法線方向からみた模式的な上面図である。
【
図20B】
図20Bは、本実施形態におけるレーザ光源モジュール200の一部をYZ面の法線方向からみた模式的な側面図である。
【
図20C】
図20Cは、本実施形態におけるレーザ光源モジュール200をXY面の法線方向からみた模式的な正面図である。
【
図21】
図21は、9個の光源ユニット100を備える他の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図23A】
図23Aは、5本のコリメートビームBが速軸収束レンズFAFに入射する場合におけるビーム断面形状を模式的に示す図である。
【
図23B】
図23Bは、9本のコリメートビームBが速軸収束レンズFAFに入射する場合におけるビーム断面形状を模式的に示す図である。
【
図23C】
図23Cは、9本×2列のコリメートビームBが速軸収束レンズFAFに入射する場合におけるビーム断面形状を模式的に示す図である。
【
図24】
図24は、レーザ光源モジュール200の他の構成例を示す斜視図である。
【
図25】
図25は、レーザ光源モジュール200の他の構成例を示す図である。
【
図26】
図26は、本開示によるダイレクトダイオードレーザ(DDL)装置の実施形態の構成例を示す図である。
【
図27】
図27は、本開示によるファイバレーザ装置の実施形態の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態を説明する前に、本発明者等が見出した知見およびその技術背景を説明する。
【0010】
図1Aは、チップ状態にあるLDから出射されたレーザ光をコリメートして出力する光源ユニット100Pの基本的な構成の一例を模式的に示す上面図であり、
図1Bは、その側面図である。添付図面には、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を基底とするXYZ座標系が模式的に示されている。
【0011】
図示されている光源ユニット100Pは、レーザ光Lを出射するLD12と、レーザ光Lをコリメートする光学系30Pとを備えている。図の例において、光学系30Pは、LD12に近い位置から光軸上に順番に配置された速軸コリメータレンズFACおよび遅軸コリメータレンズSACを含んでいる。速軸コリメータレンズFACおよび遅軸コリメータレンズSACは、いずれも、シリンドリカルレンズ(例えば円筒面平凸レンズ)である。シリンドリカルレンズは、平行な光線束を直線(焦点)上に収束する曲面を有している。曲面は、円柱の外周表面の一部に相当する形状を有しており、円柱の軸方向における曲率はゼロである。それぞれが図示された構成を備える複数の光源ユニット100Pを用いて空間ビーム結合が実行され得る。空間ビーム結合の詳細については後述する。
【0012】
図2は、LD12の基本的な構成の一例を示す斜視図である。図示されている構成は、説明のために単純化されている。
図2の例において、LD12は、上面に形成されたストライプ状のp側電極12Pと、下面に形成されたn側電極12Nと、端面12Fに位置するエミッタ領域Eとを有している。レーザ光Lはエミッタ領域Eから出射される。LD12は、半導体基板と、半導体基板上に成長した複数の半導体層(半導体積層構造)を有している。半導体積層構造は、レーザ発振を行って発光する発光層を含み、公知の様々な構成を有し得る。この例におけるLD12は、ブロードエリア型であり、エミッタ領域Eは、X軸方向のサイズ(例えば50μm以上)がY軸方向のサイズ(例えば約2μm)よりも格段に大きな形状を有している。エミッタ領域EのY軸サイズは、LD12の半導体積層構造(具体的には導波路およびクラッド層の厚さ、屈折率比など)によって規定される。エミッタ領域EのX軸サイズは、発光層を横切る方向に電流が流れる領域のX軸サイズ、具体的にはリッジ構造(不図示)の幅(利得導波路幅)などによって規定される。
【0013】
図2に示されるように、エミッタ領域Eから出射されるレーザ光Lのビーム形状はX軸方向とY軸方向で非対称になる。
図2では、レーザ光Lのファーフィールド(遠方界)パターンが模式的に示される。レーザ光Lは、Y軸方向ではシングルモードのガウシアンビームに近似されるビーム形状を有するが、X軸方向では全体として発散角の小さなマルチモードのビーム形状を有する。Y軸方向の発散半角θ
y0は、X軸方向の発散半角θ
x0よりも大きい。Y軸方向におけるレーザ光Lは、ガウシアンビームに近似できるため、Y軸方向のビームウエスト位置におけるビーム半径をω
o、レーザ光Lの波長をλとすると
、θ
y0=tan
-1(λ/πω
o)≒λ/(πω
o)ラジアンが成立する。λが可視光域にあるブロードエリア型レーザダイオードの場合、θ
y0は例えば20度、θ
x0は例えば5度である。その結果、レーザ光LのY軸サイズは、Z軸方向に沿って伝搬するときに相対的に「速く」発散して拡大する。このため、Y軸は「速軸」、X軸は「遅軸」と呼ばれる。遅軸方向におけるビーム品質は、マルチモードであるため、速軸方向におけるビーム品質に比べて相対的に劣化している。その結果、ビーム品質を規定するビームパラメータ積BPP(Beam Parameter Product)は、速軸方向における値に比べると、遅軸方向で相対的に大きくなる。なお、BPPは、ビームウエスト半径と遠方界における発散半角の積である。
【0014】
図の例において、Z軸はLD12から出射されるレーザ光Lの伝搬方向(ビーム中心軸)に平行である。単一のLDの動作を説明する場合、XYZ座標系の原点をエミッタ領域Eの中心に一致させることが便利である。しかし、複数のLDについて空間ビーム結合を説明する場合、XYZ座標系の原点は、いずれかのLDに関連づけて定める必要はない。また、空間ビーム結合に用いられる複数のLDの向きは相互に平行である必要はないし、個々のレーザビームが異なるミラーによって反射されて伝搬方向を変える場合もある。このため、本開示における「速軸方向」および「遅軸方向」の用語は、それぞれ、グローバルなXYZ座標系における「Y軸方向」および「X軸方向」に対して平行であるとは限らず、各レーザビームが有するビーム品質の非対称性に依存して決まる。すなわち、レーザビームの伝搬方向に直交する断面において、BPPが最も低い方向が「速軸」であり、速軸に直交する方向が「遅軸」である。
【0015】
再び、
図1Aおよび
図1Bを参照する。これらの図では、簡単のため、レーザ光LおよびコリメートビームBが3本の代表的な光線によって単純化されて表されている。3本の光線のうち、中央の光線はレンズの光軸上にあり、他の2本の光線は、ビーム直径を規定する位置を模式的に示している。ビーム直径は、ビーム中心の光強度に対して例えば1/e
2以上の光強度を持つ領域のサイズによって規定され得る。ここで、eはネイピア数(約2.71)である。ビーム直径またはビーム半径は、他の基準によって定義されてもよい。
【0016】
速軸コリメータレンズFACは、
図1Bに示されるように、レーザ光Lの伝搬方向(Z軸)および速軸方向(Y軸)を含む平面(YZ面)内でレーザ光Lをコリメートする。遅軸コリメータレンズSACは、
図1Aに示されるように、伝搬方向(Z軸)および遅軸方向(X軸)を含む平面(XZ面)内でレーザ光Lをコリメートする。これらのコリメートを行うため、速軸コリメータレンズFACおよび遅軸コリメータレンズSACは、それぞれの前側焦点にエミッタ領域Eの中心が位置するように配置されている。
【0017】
図2に模式的に示されているレーザ光Lの断面は、近傍界では、エミッタ領域Eの形状を反映して遅軸方向に比べて速軸方向に短い形状を有している。しかし、速軸方向の発散半角が大きいため、速軸方向のサイズは、エミッタ領域Eから離れるについて急速に拡大する。このため、光学系30Pを通過した後におけるコリメートビームBの断面の形状およびサイズは、レーザ光Lの光路上における速軸コリメータレンズFACおよび遅軸コリメータレンズSACの位置に依存する。より正確には、速軸方向の発散半角θ
y0(または速軸コリメータレンズFACの開口数)と速軸コリメータレンズFACの焦点距離によってコリメートビームBの速軸サイズが規定される。同様に、遅軸方向の発散半角θ
x0(または遅軸コリメータレンズSACの開口数)と遅軸コリメータレンズSACの焦点距離によってコリメートビームBの遅軸サイズが規定される。
【0018】
一般に、速軸コリメータレンズFACがLD12の端面12F、より具体的にはエミッタ領域E、に近いほど、コリメートビームBの速軸サイズを小さくすることができる。言い換えると、速軸コリメータレンズFACがLD12の端面12F(エミッタ領域E)から離れているほど、コリメートビームBの速軸サイズは大きくなる。同様に、遅軸コリメータレンズSACがLD12の端面12F(エミッタ領域E)から離れているほど、コリメートビームBの遅軸サイズも大きくなる。なお、レーザ光Lの光路上における速軸コリメータレンズFACおよび遅軸コリメータレンズSACの位置を変更する場合、コリメータレンズFAC、SACの口径および焦点距離を適切に変更する必要がある。エミッタ領域Eの中心は、常にコリメータレンズFAC、SACのそれぞれの前側焦点に配置される。
【0019】
上記の構成を有する複数の光源ユニット100Pを用いて空間ビーム結合を行う場合、発振波長が近赤外域よりも短いLD12を採用し、その光出力を高めていくと、光集塵効果によって動作中のエミッタ領域Eに雰囲気中の塵埃などが付着して光出力が低下し得るというおそれがある。エミッタ領域に付着する物質は、塵埃に限られず、揮発した有機物がレーザ光Lと化学的に反応して生成される堆積物の可能性もある。レーザ光Lの波長が短くなり、光出力が高くなるほど、付着物に起因する劣化が顕著になる。このような問題を回避するため、複数のLD12を筐体内に収容するとき、筐体内に塵埃が混入しないように留意して筐体の組立を行い、筐体そのものを封止することが考えられる。しかし、空間ビーム結合に必要なレンズ系およびミラーなどの部品に塵埃などが付着していることがあり、また、筐体全体の気密性を高くすることは難しいため、長期にわたって光出力を高く維持することは困難であることがわかった。
【0020】
他の問題解決手段として、個々のLD12を封止された半導体レーザパッケージ内に収容することが考えられる。LDのパッケージ技術は高度に進んでおり、長期間、信頼性の高い動作が実現している。しかし、半導体レーザパッケージの内部にLD12を収容した場合、速軸コリメータレンズFACをLD12のエミッタ領域に近づけようとしても、半導体レーザパッケージが物理的に干渉するため、十分に近づけることができず、焦点距離が相対的に長い速軸コリメータレンズFACしか採用できなくなるおそれがある。以下、この点を説明する。
【0021】
図3Aは、半導体レーザパッケージ10に収容されたLD12から出射されたレーザ光をコリメートして出力する光源ユニット100Qの構成例を示すXZ面に平行な模式断面図であり、
図3Bは、そのYZ面に平行な模式断面図である。以下、半導体レーザパッケージを単にパッケージと称する場合がある。
【0022】
図からわかるように、LD12のエミッタ領域Eと速軸コリメータレンズFACとの間にパッケージ10の窓部材14が位置しており、速軸コリメータレンズFACを図示されている状態よりもLD12のエミッタ領域Eに近づけることはできない。前述した光源ユニット100Pの場合、LD12のエミッタ領域Eから速軸コリメータレンズFACまでの距離を、例えば0.3ミリメートル(mm)にすることができる。これに対して、パッケージ10の内部に収容されたLD12のエミッタ領域Eから速軸コリメータレンズFACまでの距離(後述する「光学距離」を意味する)は、例えば1.5mm程度に増加する。エミッタ領域Eの中心は速軸コリメータレンズFACの前側焦点に位置する必要があるため、速軸コリメータレンズFACの焦点距離を長くする必要があり、必然的にコリメートビームBの速軸(Y軸)方向サイズが数倍に増加してしまう。コリメートビームBの速軸サイズが増加すると、空間ビーム結合を行うために使用される収束光学系が大型化するなどの不都合が生じる。この不都合の詳細は後述する。
【0023】
本開示の実施形態によれば、このような不都合を解決することが可能になる。以下、本開示の実施形態における光源ユニット100の基本的な構成例を説明する。
【0024】
<実施形態>
光源ユニット
図4は、本実施形態における光源ユニット100の基本的な構成例を示す図である。
図5は、光源ユニット100における一部のより詳細な模式断面図である。
【0025】
まず、
図4を参照して、光源ユニット100の概略的な構成を説明する。図示されている例において、光源ユニット100は、パッケージ10と、第1レンズ系20と、第2レンズ系30とを備える。
【0026】
パッケージ10は、半導体レーザパッケージであって、レーザ光Lを出射するエミッタ領域Eを有するLD12と、レーザ光Lを透過する窓部材14とを有し、LD12を封止する。
【0027】
第1レンズ系20は、窓部材14を透過したレーザ光Lを受け、エミッタ領域Eの像E’を像面22に形成する。第1レンズ系20は、コリメータレンズ24および結像レンズ26を有する。
【0028】
第2レンズ系30は、像面22を通過したレーザ光Lをコリメートビームまたは収束ビームに変換して出射する。
図4の例において、第2レンズ系30は、レーザ光Lの伝搬方向(Z軸)および速軸方向(Y軸)を含む平面(YZ面)内でレーザ光Lをコリメートする速軸コリメータレンズFACと、Z軸および遅軸方向(X軸)を含む平面(XZ面)内でレーザ光Lをコリメートする遅軸コリメータレンズSACとを有する。
【0029】
次に
図5を参照して、光源ユニット100の構成例を説明する。
図5に示されるように、光源ユニット100は、第1レンズ系20を収容するレンズケース40を備える。レンズケース40は、第1スリーブ42Aと、第1レンズ鏡筒44Aと、第2スリーブ42Bと、第2レンズ鏡筒44Bとを有する。
【0030】
第1スリーブ42Aは、パッケージ10に固定されている。第1レンズ鏡筒44Aは、第1スリーブ42A内に固定され、コリメータレンズ24を保持する。第2スリーブ42Bは、第1スリーブ42Aおよび第1レンズ鏡筒44Aの少なくとも一方に接合されている。第2レンズ鏡筒44Bは、第2スリーブ42B内に固定され、結像レンズ26を保持する。
【0031】
なお、
図5の例において、像面22は、レンズケース40から離れた位置に存在しているが、本開示の実施形態は、このような例に限定されない。像面22はレンズケース40の端面、または端面よりもレンズケース40の内側に位置していてもよい。その場合、第2レンズ系30を構成するレンズの少なくともひとつがレンズケース40、具体的には第2スリーブ42Bまたは第2スリーブ42Bが有する窓部(透光性部材)上に固定され得る。
【0032】
以下、光源ユニット100の構成例をより詳細に説明する。
【0033】
パッケージ10
図6は、パッケージ10の内部を模式的に示す斜視図であり、
図7は、パッケージ10の外部を模式的に示す斜視図である。
【0034】
パッケージ10は、レーザ光Lを出射するエミッタ領域Eを端面12Fに有するLD12と、レーザ光Lを透過する窓部材14とを含む。本実施形態において、パッケージ10は、金属などの熱伝導性が高い材料から形成されたベース15と、ベース15上に配置されたLD12を覆うキャップ16とを有している。
図6に示されるように、本実施形態におけるベース15は、XZ面に平行に拡がるプレート状部分15Aと、プレート状部分15AからY軸方向に突出する台状部分15Bとを有している。LD12は、端面12Fが窓部材14に近接して対向するように、台状部分15Bの上面15Cに接合されている。ベース15の下面(底面)15Dは、不図示のヒートシンクなどの放熱部材に熱的に接触する。ベース15は、例えば、銅(Cu)または窒化アルミニウム(AlN)から形成されている。なお、図示される例において、LD12はベース15の上面に直接に支持されているが、LD12はベース15の上面に間接的に支持されていてもよい。例えば、LD12とベース15との間にサブマウントまたはヒートスプレッダが配置されていてもよい。サブマウントまたはヒートスプレッダも、例えばCu、AlNなどの高熱伝導率材料から形成され得る。
【0035】
LD12とベース15との間は絶縁層によって電気的に絶縁されていることが好ましい。LD12を駆動するための配線(ワイヤ、導電層など)、および保護ダイオード素子などの回路要素は、簡単のため、図示されていない。これらの回路要素は、公知の構成を採用し得る。
図6および
図7には、給電のための複数のリード端子19が記載されている。各リード端子19は、上記の配線を介してLD12に電気的に接続されている。
【0036】
図7に示されるように、キャップ16は、例えば、上面部16A、および、上面部16Aに接続された側壁部16Sを有し、その概略形状は、下方が開放された直方体であり得る。上面部16Aおよび側壁部16Sは、同一の材料から形成されていてもよいし、異なる材料から形成された複数のパーツの組み合わせであってもよい。キャップ16は、半田付けまたはろう付けによってプレート状部分15Aに接合され得る。
【0037】
キャップ16の側壁部16Sのうちの正面側に位置する部分には、開口16Wが設けられており、その開口16Wは窓部材14によって塞がれている。窓部材14の典型例は、光学ガラス(屈折率:1.4以上)から形成された薄板である。窓部材14がキャップ16に取り付けられる形態は任意である。窓部材14は、光学ガラスを金属枠に嵌めた形態を有していてもよい。窓部材14は、キャップ16の内側に固定されていてもよいし、外側に固定されていてもよい。また、キャップ16の開口16Wの内部に窓部材14の全部または一部が位置していてもよい。なお、キャップ16は、セラミックスまたは金属材料から形成され得るが、線膨張係数が窓部材14を構成する光学ガラスの線膨張係数に近いコバールなどの材料から形成されることが好ましい。
【0038】
キャップ16の側壁部16Sのうちの背面側に位置する部分には、LD12を駆動するためのリード端子を通す貫通孔(不図示)が設けられ得る。
【0039】
パッケージ10の内部は、クリーン度の高い窒素ガスまたは希ガスなどの不活性ガスによって充填され、気密に封止され得る。LD12は、例えば窒化物半導体系材料から形成された近紫外、青紫、青色、または緑色のレーザ光を出力する半導体レーザ素子であり得る。具体的には、LD12の発振波長(中心波長)は、例えば350nm以上550nm以下の範囲にある。
【0040】
再び、
図4および
図5を参照する。前述したように、第1レンズ系20は、窓部材14を透過したレーザ光Lを受け、エミッタ領域Eの像E’を像面22に形成する。像面22は、エミッタ領域Eの各点から発せられた光線が第1レンズ系20の屈折作用によって一点に収束して結像する面である。エミッタ領域Eと像面22上の像E’は、共役の位置またはその近傍にある。本開示の実施形態において、エミッタ領域Eの中心を通るレーザ光Lの光軸と第1レンズ系20の光軸とは一致している。本開示では、第1レンズ系20の光軸に垂直な平面のうち、エミッタ領域Eの各点から発せられた光線が第1レンズ系20によって収束する点の中心を通る平面を「像面」と定義する。像面22にスクリーンを置いた場合、そのスクリーン上にはエミッタ領域Eの像E’が形成される。しかし、現実には像面22にはスクリーンは配置されていないため、像E’は、自由空間中に位置する仮想光源として機能する。このような仮想光源を、エミッタ領域Eの中間像、再現像または転写像と呼んでもよい。
【0041】
第2レンズ系30は、像面22を通過したレーザ光LをコリメートビームBまたは収束ビームに変換して出射する。第2レンズ系30は、像面22に位置するエミッタ領域Eの像(仮想光源)E’から光を取り込むため、パッケージ10の構造による物理的な制約(干渉)を受けることなく、第2レンズ系30の焦点距離を短縮できる。
【0042】
次に、
図8および
図9を参照して第1レンズ系20の機能をより詳しく説明する。
図8に示される例においては、窓部材14と同様の構成およびサイズを有する第2窓部材18が第1レンズ系20の光路上に配置されている。第2窓部材18は、第1レンズ系20に関して窓部材14の位置と対称な位置に配置されている。第2窓部材18は、窓部材14がレーザ光Lに及ぼす影響を補償し、像面22に形成される像E’の形状がエミッタ領域Eの形状を正確に再現することに寄与する。例えば、第2窓部材18をX軸に平行な軸またはY軸に平行な軸を中心として回転(傾斜またはチルト)させることにより、コマ収差を低減することが可能である。第2窓部材18は、第1レンズ系20は第2窓部材18または第2窓部材18の機能を発揮し得る光学部材を有していることが好ましい。
【0043】
また、
図8には、LD12の端面12Fから窓部材14の外側表面14Sまでの距離L0と、像面22から第2レンズ系30までの距離L2が示されている。
図8に示される例では、L0>L2となるように、第2レンズ系30の速軸コリメータレンズFACが配置されている。こうして、パッケージ10の構造による物理的な制約を受ける場合に比べて、第2レンズ系30(具体的には速軸コリメータレンズFAC)の焦点距離を短縮し、コリメートビームBの直径を小さくできる。ここでの「距離」は、「光学距離」を意味する。光学距離は、光線の経路に沿って線素dsと屈折率nの積であるn・dsを積分した値であり、「光学的距離」または「光路長」とも呼ばれる。距離L0は、窓部材14の厚さが同じであっても、窓部材14の屈折率に応じて異なり得る。窓部材14の屈折率は空気の屈折率(約1.0)よりも高いため、窓部材14の存在は光学距離を実質的に増加させる。窓部材14の厚さは、典型的には0.25mm程度である。窓部材14が例えば屈折率1.52のガラスから形成されている場合、窓部材14だけで光学距離は0.38(=0.25×1.52)mmに達し得る。更にLD12と窓部材14との間には所定のギャップが存在するため、距離L0は1.0mm以上になることもある。なお、像面22から第2レンズ系30までの距離は、第2レンズ系30に含まれるレンズなどの1個または複数個の光学素子が有する表面のうちで像面22に最も近い位置にある表面と、像面22との間の光学距離を意味する。本実施形態において、像面22から第2レンズ系30までの距離L2は、速軸コリメータレンズFACの「前側焦点距離」、「ワーキングディスタンス」、および「BFL:Back Focal Length」に相当する。
【0044】
本実施形態によれば、距離L2、すなわち速軸コリメータレンズFACの「前側焦点距離」を1.0mm以下、典型的には0.8mm以下にできるし、0.5mm以下の値(例えば約0.3mm)にすることも可能である。こうして、LD12を、封止されたパッケージ10の内部に収容しながら、コリメートビームBの速軸(Y軸)方向サイズを小さく維持できる。その結果、空間ビーム結合を行うときに収束のための光学系を大型化することなく、長期信頼性を高めることが可能になる。
【0045】
本開示の実施形態では、
図9に示すように、第1レンズ系20がコリメータレンズ24と結像レンズ26とを含むリレーレンズである。コリメータレンズ24と結像レンズ26を用いることにより、無限遠補正光学系を形成することができる。第1レンズ系20は、さらに他のレンズを含んでいてもよい。コリメータレンズ24および結像レンズ26も、それぞれ、組レンズであってもよい。組レンズを採用することにより、収差を低減してビーム品質の劣化を抑制することができる。
【0046】
図9の例において、LD12のエミッタ領域Eは、コリメータレンズ24の前側焦点に位置している。像面22は、結像レンズ26の後側焦点に位置している。本開示の実施形態において、結像レンズ26の実効焦点距離F2は、コリメータレンズ24の実効焦点距離F1以上である。実効焦点距離は、レンズの主点から焦点までの距離を意味する。像面22に形成される像の横倍率は、F2/F1であるため、像面22におけるエミッタ領域Eの像E’の大きさは、エミッタ領域Eの大きさのF2/F1倍である。F2がF1よりも大きいと、拡大されたエミッタ領域Eの像E’が仮想光源として機能する。ここで、仮想光源の速軸方向(Y軸)のサイズ、すなわち像面22における速軸方向ビーム径を2×ω
y1とする。また、仮想光源から出射されたビームの速軸方向発散半角(遠方界における発散半角)をθ
y1とする。一方、実際のエミッタ領域Eの速軸サイズ、すなわちエミッタ領域Eにおける速軸方向ビーム径を2×ω
y0とする。また、エミッタ領域Eから出射されたビームの速軸方向発散半角(遠方界における発散半角)をθ
y0とする。ビーム品質が劣化しない条件のもとでは、ω
y0×θ
y0=ω
y1×θ
y1の関係が成立する。したがって、F2/F1が1より大きいと、ω
y0よりもω
y1が大きくなり、θ
y1がθ
y0よりも小さくなる。その結果、第2レンズ系30(速軸コリメータレンズFACおよび遅軸コリメータレンズSAC)の開口数を小さくして、実効焦点距離を長くすることが可能になる。このことの技術的意義については、後述する。
【0047】
なお第2レンズ系30は、コリメートビームを出射する光学系に限定されず、収束ビームを出射する光学系であってよい。
【0048】
本実施形態において、像面22から第2レンズ系30までの距離L2は、像面22から速軸コリメータレンズFACまでの距離によって規定される。ここで、像面22から速軸コリメータレンズFACまでの距離とは、速軸コリメータレンズFACの表面のうちで像面22に最も近い位置にある表面と像面22との間の光学距離を意味する。非球面レンズを用いず、速軸コリメータレンズFACおよび遅軸コリメータレンズSACを用いることにより、速軸および遅軸のそれぞれについて個別に適切なコリメートを実現できる。本開示の実施形態によれば、像面22に近い位置に速軸コリメータレンズFACを配置することにより、速軸コリメータレンズFACの実効焦点距離を短くし、コリメートビームBの速軸サイズを小さくすることができる。
【0049】
本開示の実施形態において、第2レンズ系30が、像面22の側から順に配置された速軸コリメータレンズFACおよび遅軸コリメータレンズSACを含む場合、速軸コリメータレンズFACの実効焦点距離EFLを1.0mm以下にすることにより、コリメートビームBの速軸サイズを、例えば1.0mm以下(例えば0.8mm程度)にすることが可能になる。コリメートビームBの速軸サイズが小さいと、複数のコリメートビームBを空間的に結合するための光学系および装置(ビームコンバイナ)を小さくすることができる。
【0050】
なお、像面22の位置に開口絞りを配置してもよい。仮想光源として機能するエミッタ像E’の周辺部における不要な光を開口絞りによって遮断することができる。コリメートビームBが光ファイバに入射するとき、ファイバ結合にとって不要な干渉光(エアリディスクの外側に形成される干渉光)が、上記の開口絞りの働きによって取り除かれる。
【0051】
レンズケース40
次に
図10を参照して、本開示の実施形態におけるレンズケース40の構成例を説明する。
【0052】
前述したように、レンズケース40は、第1スリーブ42Aと、第1レンズ鏡筒44Aと、第2スリーブ42Bと、第2レンズ鏡筒44Bとを有する。これらの各要素は、いずれも、概略的には、一点鎖線で示すレンズ光軸Cの周りに軸対称な形状を有している。このため、レンズケース40の外形は、ほぼ円柱状であり得る。
【0053】
第1スリーブ42Aおよび第2スリーブ42Bは、それぞれ、金属材料から形成され得るが、例えば室温で線膨張係数が略ゼロの小さな値を示すインバーなどの金属材料から形成されることが好ましい。インバーは、36%程度のニッケルを含有する鉄基合金の一種であり、常温付近で熱膨張率が極小値を示す低熱膨張材である。一方、第1レンズ鏡筒44Aおよび第2レンズ鏡筒44Bは、それぞれ、金属材料から形成され得るが、線膨張係数がレンズ用ガラスの線膨張係数に近いコバールなどの材料から形成され得る。第1レンズ鏡筒44Aがコリメータレンズ24に接合され、第2レンズ鏡筒44Bが結像レンズ26に接合される場合、線膨張係数が近い材料を使用する方が接合の劣化が生じにくいからである。
【0054】
第1レンズ鏡筒44Aは、第1スリーブ42A内に固定され、コリメータレンズ24を保持している。第2スリーブ42Bは、第1スリーブ42Aおよび第1レンズ鏡筒44Aの少なくとも一方に接合されている。第2レンズ鏡筒44Bは、第2スリーブ42B内に固定され、結像レンズ26を保持している。 ある実施形態において、第1レンズ鏡筒44Aの内側面とコリメータレンズ24の外側面とは、例えば紫外線硬化樹脂または低融点ガラスなどによって接合され得る。同様に、第2レンズ鏡筒44Bの内側面と結像レンズ26の外側面とは、例えば紫外線硬化樹脂または低融点ガラスなどによって接合され得る。他の実施形態において、第1レンズ鏡筒44Aとコリメータレンズ24の固定は、第1レンズ鏡筒44Aとコリメータレンズ24を一体成型することによって行われ得る。具体的には、第1レンズ鏡筒44Aおよび金型内にレンズ材料を入れ、レンズ材料を加熱してプレス加工をすることで第1レンズ鏡筒44Aとコリメータレンズ24が一体化される。同様に、第2レンズ鏡筒44Bと結像レンズ26との固定も、一体成型によって行われ得る。そのような一体成型を行う場合、鏡筒材料の線膨張係数はガラスの線膨張係数より大きいことが望ましい。一体成型の工程時に鏡筒材料およびガラスを加熱し、その後の冷却過程時に熱収縮する鏡筒材料でレンズを押圧する効果を得るためである。このような効果により、レンズが鏡筒から脱落することを抑制できる。ガラスの線膨張係数より大きな鏡筒材料の例は、フェライト系ステンレス鋼(SUS430、SF20F)を含む。
【0055】
第1レンズ鏡筒44Aの外側面と第1スリーブ42Aの内側面とは、例えばYAGレーザもしくはファイバレーザによる溶着によって接合され得る。同様に、第2レンズ鏡筒44Bの外側面と第2スリーブ42Bの内側面とは、例えばYAGレーザもしくはファイバレーザによる溶着によって接合され得る。
【0056】
第2スリーブ42Bは、第1スリーブ42Aおよび第1レンズ鏡筒44Aの少なくとも一方に接合されている。この接合は、これらの要素が金属材料から形成されている場合、溶接によって行うことができる。
【0057】
次に
図11を参照する。
図11に示されるように、第1スリーブ42Aがパッケージ10に固定される。より詳細には、第1スリーブ42Aは、キャップ16の正面側に位置する側壁部16Sの窓部材の周囲に固定され得る。この固定は、キャップ16および第1スリーブ42Aの両方が金属材料から形成されている場合、溶接によって行うことができる。
【0058】
レンズケース40は、パッケージ10に対して堅牢に固定されることが好ましい。本実施形態では、レンズケース40がパッケージ10に固定されているため、レンズケース40に収容されている第1レンズ系20に含まれるコリメータレンズ24および/または結像レンズ26の位置および向きにアライメントずれが発生しにくい。また、パッケージ10のキャップ16とレンズケース40の第1スリーブ42Aが金属材料から形成されている場合は、両者を溶接によって強固に接合することができるので、より堅牢性を高めることが可能になる。
【0059】
光源ユニット100の動作中は、パッケージ10内のLD12が発する熱によって、パッケージ10の一部が膨張して変形が生じ得る。そのような場合、コリメータレンズ24および/または結像レンズ26の位置および向きにアライメントずれが発生し得る。このようなアライメントずれは、光源ユニット100から出射されるコリメートビームまたは収束ビームのビーム品質を低下させる可能性がある。
【0060】
図12および
図13を参照して、パッケージ10が熱膨張によって変形しても光源ユニット100から出射されるレーザビームの方向がずれにくい構成例を説明する。
図12は、第1スリーブ42Aが中間板50を介してパッケージ10に接続される形態を模式的に示す断面図である。
図13は、中間板50の正面(左側)および断面(右側)を示す図である。
【0061】
この例において、中間板50は、パッケージ10の側壁部16Sにおける窓部材14の周囲の少なくとも一部に接合されている。この接合は、例えば半田付け、ロウ付けなどによって行われ得る。中間板50は、中央に開口50Wを有している。中間板50は、金属材料から形成されていることが好ましく、パッケージ10の側壁部16Sに接合される第1領域50Aと、側壁部16Sに隙間を介して対向する第2領域50Bとを有している。中間板50の第2領域50Bは、第1領域50Aよりもベース15の下面15Dに近く、第2領域50Bは第1領域50Aよりも薄い。このような中間板50を介して、第1スリーブ42Aはパッケージ10に接合される。
【0062】
パッケージ10の側壁部16Sから中間板50の第2領域50Bまでの距離、すなわち、上記の隙間の大きさは、LD12が動作していないとき、例えば500μm~350μm程度である。LD12が動作時に発熱すると、ベース15が熱膨張するため、XZ面に平行な平面内におけるパッケージ10の寸法は、上部よりも下部において、相対的に大きくなる。
図12では、ベース15が熱膨張するとき、ベース15のプレート状部分15Aが矢印Jの方向に延びる様子を模式的に示している。
【0063】
上記の構成を備える中間板50を用いることにより、LD12が動作中に発する熱によってベース15がZ軸方向に膨張しても、中間板50の第2領域50Bとパッケージ10の側壁部16Sとの間に存在する隙間が干渉抑制のための空間として機能する。その結果、ベース15の熱膨張に起因するレンズケース40の変形を抑制することが可能になる。
【0064】
中間板50は、
図13に示されるように、上端50Tおよび下端50Dを有している。中間板50の第1領域50Aと第2領域50Bとの境界50Xは、上端50Tと下端50Dとの間に位置している。第1領域50Aは、上端50Tから境界50Xまでの距離によって規定される高さh1を有している。言い換えると、高さh1は、中間板50がパッケージ10に接触している領域のY軸方向におけるサイズである。第2領域50Bは、下端50Dから境界50Xまでの距離によって規定される高さh2を有している。第2領域50Bの高さh2は、例えば、中間板50の上端50Tから下端50Dまでの距離(h1+h2)の20%以上50%以下である。第2領域50Bの高さh2が、距離(h1+h2)の50%を超えて大きくなると、中間板50とパッケージ10との接合面の面積が小さくなって接合強度が不十分になる可能性がある。このため、高さh2は、中間板50の上端50Tから下端50Dまでの距離(h1+h2)の50%以下であることが好ましい。一方、高さh2が小さすぎると、熱膨張によってZ軸方向に延びるベース15との干渉を抑制する効果が得られにくくなる。このため、高さh2は、中間板50の上端50Tから下端50Dまでの距離(h1+h2)の20%以上であることが好ましい。
【0065】
中間板50の第1領域50Aの厚さは、例えば0.4~1.0mm程度であり、第2領域50Bは、例えば0.3~0.9mm程度である。
【0066】
第1スリーブ42Aおよび第2スリーブ42Bが第1の金属材料から形成されている場合、第1レンズ鏡筒44Aおよび第2レンズ鏡筒44Bは、第1の金属材料の線膨張係数よりも大きな線膨張係数を有する第2の金属材料から形成されていることが好ましい。ベース15の熱膨張によってLD12のエミッタ領域Eから第1レンズ系20までの距離が短縮した場合、熱によってレンズ鏡筒44A、44Bがスリーブ42A、42Bよりも横方向(Z軸方向)に長く膨張する。このため、結像レンズ26から第2スリーブ42Bの先端までの距離が短縮される。このことは、LD12のエミッタ領域Eからコリメータレンズ24までの距離の短縮を相殺または補償する。その結果、熱による、第2スリーブ42Bに対する像面の位置ずれが生じにくくなり(アサーマル効果)、ビーム品質の劣化が抑制される。このアサーマル効果は、後述する実施例について、より詳細に説明する。
【0067】
本開示の実施形態において、第1スリーブ42Aは中間板50に溶接され、かつ、第2スリーブ42Bは第1レンズ鏡筒44Aに溶接され得る。溶接による固定を行うことより、堅牢な光源ユニットが実現し、取り付け中または動作中に、アライメントずれが生じにくくなる。
【0068】
図13に示される中間板50は、概略的には、リング形状を有しているが、中間板50の形状は、この例に限定されない。パッケージ10内のLD12から出射されたレーザ光を透過させることが可能な形状およびサイズの開口50Wが設けられていれば、中間板50の概略形状は、矩形であってもよいし、六角形などの多角形であってもよい。開口50Wの形状も円である必要はなく、楕円または多角形であってよい。
【0069】
なお、
図12において、Z軸の「負」の方向から見える中間板50の面(背面側の面)は、第1領域50Aと第2領域50Bとの境界50Xに段差を有しているが、Z軸の「正」の方向から見える中間板50の面(正面側の面)は、平坦である。中間板50の正面側の平坦な面は、第1スリーブ42Aの端面に接合される。この接合は、例えば溶接によって行われる。なお、中間板50の正面側の面に段差および/または凹部が形成されていてもよい。
【0070】
図12および
図13の例において、中間板50の第2領域50Bは、ほぼ一様な厚さを有しているが、パッケージ10のキャップ16およびベース15と干渉しないように、さらに厚さが減じられた部分を含んでいてもよい。例えば、ベース15のプレート状部分15Aがキャップ16のZ軸方向に側壁部16Sよりも突出している形態では、そのようなプレート状部分15Aに対しても隙間を形成して熱膨張時の干渉を避けるように、中間板50の第2領域50Bの形状および厚さが調整され得る。中間板50の第1領域50Aも、全体が平坦である必要はなく、十分な広さの接触面積が確保できている限り、相対的に薄い領域を部分的に含んでいてもよい。
【0071】
<実施例>
次に、
図14から
図16を参照して、本開示による実施例に係る光源ユニット100を説明する。
図14は、光源ユニット100の断面図である。
図15は、光源ユニット100の中間板50の構成を示す図である。
図16は、動作中の熱膨張によって光源ユニットの一部が変形したときの光軸ずれを誇張して示す断面図である。
【0072】
本実施例では、コリメータレンズ24および結像レンズ26は、同一の光学ガラスから形成され、同一の形状およびサイズを有している。このため、F2/F1=1の関係が成立する(
図9参照)。本実施例における光源ユニット100の各構成要素は、それぞれ、前述した実施形態における各構成要素に対応している。対応する構成要素には同一の参照符号を付し、各構成要素の説明は繰り返さない。
【0073】
本実施例では、LD12とベース15との間にサブマウント17が配置されている。また、コリメータレンズ24および結像レンズ26は、それぞれ、レーザ光が透過しない周辺部分をカットした形状を有している。このような形状を有するレンズ24、26の外側面にレンズ鏡筒44A、44Bの内側面は整合している。
【0074】
本実施例における中間板50は、
図15に示されるように、パッケージ10の側壁部16Sに接合される第1領域50Aと、側壁部16Sに隙間を介して対向する第2領域50Bとを有している。第1領域50Aの高さはh1、第2領域50Bの高さはh2である。第2領域50Bは、厚さがt0である第1領域50Aよりも全体として薄く、厚さがt1である領域と厚さがt2である領域を含んでいる。ここで、t0>t1>t2が成立している。本実施例の中間板50では、第1領域50Aと第2領域50Bとの間に境界50X1が位置し、第2領域50Bの相対的に厚い部分(厚さt1)と相対的に薄い部分(厚さt2)との間に境界50X2が位置している。第2領域50Bの相対的に薄い部分は、ベース15のプレート状部分15Aと中間板50との間に隙間を確保する厚さおよび形状を有している。
【0075】
このように中間板50の形状およびサイズは、上部でパッケージ10に接合され、下部でパッケージ10から離間するように、パッケージ10の外形に応じて調整され得る。
【0076】
本実施例では、パッケージ10の側壁部16Sおよびベース15のプレート状部分15Aの端面から中間板50の第2領域50Bまでの距離、すなわち、上記の隙間の大きさが、LD12が動作していないとき、例えば50μm~350mm程度である。LD12が動作時に発熱すると、ベース15が熱膨張するため、XZ面に平行な平面内におけるパッケージ10の寸法は、上部よりも下部において、相対的に大きくなるが、前述した構成を中間板50が有しているため、パッケージ10の形状の変化によるレンズケース40のアライメントずれは生じにくい。
【0077】
図16には、パッケージ10が矢印Jの方向に熱膨張することによって生じ得る、エミッタ領域Eの像面22上における像(仮想光源)E’の位置ずれΔYが誇張して示されている。このΔYは、
図16において不図示のレンズケース40がY軸の正方向に傾斜する程度、すなわち勾配角度θに比例する。このような傾斜は、
図16では、第1レンズ系20(不図示)の光軸が一点鎖線で示されている。この光軸がY軸の正方向に傾斜すると、勾配角度θで示される方向に像E’の位置がシフトする。この例において、勾配角度θの単位をラジアンとすると、勾配角度θは、例えば10
-4ラジアン程度の小さな値であるため、ΔYは、エミッタ領域Eから像E’までの距離と勾配角度θとの積に近似的に等しい。なお、ベース15の熱膨張によってLD12のエミッタ領域Eの位置がY軸の正方向に移動すると、エミッタ領域Eの像面22上における像(仮想光源)E’の位置ずれΔYは負の値を示すことがある。これは、第1レンズ系20が有する光学的な結像作用の結果として、エミッタ領域Eの位置が第1レンズ系20の光軸に対して垂直な方向にシフトしたとき、そのシフトの量×横倍率に等しい距離だけ、像面22における像(仮想光源)E’が反対の方向に移動するからである。ベース15の材料として熱膨張率が相対的に大きな材料、例えば銅を採用した場合、ベース15が矢印Jの方向に熱膨張することによって生じるレンズケース40の傾斜と、ベース15がY軸方向に熱膨張することによって生じる第1レンズ系20の光軸に対するシフトとの両方が仮想光源E’の位置ずれに影響を及ぼし得る。
【0078】
本実施例では、後述するサンプル1、2、3について、像面22上における像(仮想光源)E’の位置ずれΔYを評価した。その結果、サンプル2のΔYは約0.5μmであり、サンプル1、3のΔYは-1.0μm程度であった。ΔYの絶対値は、ベース15の熱膨張の程度に応じて増加する傾向がある。このため、ベース15は、熱伝導率が高く、線膨張係数が低い材料、例えばAlNから形成されていることが好ましい。サンプル2では、特に小さなΔYが実現した。その理由は、中間板50の存在がレンズケース40の傾斜を抑制する効果を発揮するためと考えられる。
【0079】
図17は、サンプル2について、LD12の位置を基準としたときの像(仮想光源)E’の位置ずれΔYの大きさと、中間板50における第2領域50Bの高さh2との関係を示すグラフである。この例において、中間板50の高さ(=h1+h2)は、6mmでった。h2=1.75mmのとき、像(仮想光源)E’の位置ずれΔYが最も小さくなった。前述したように、第2領域50Bの高さh2の好ましい値は、(h1+h2)の20%以上50%以下の範囲内である。
【0080】
本実施例では、速軸コリメータレンズFACがレンズケース40に固定されている。具体的には、速軸コリメータレンズFACは、レンズケース40の第2スリーブ42B上に固定されており、像面22から第2レンズ系30までの距離は、像面22から速軸コリメータレンズFACまでの距離に相当する。速軸コリメータレンズFACが第2スリーブ42B上に固定されることにより、第1レンズ系20に対する速軸コリメータレンズFACの位置がずれにくく、アライメントずれに起因するビーム品質低下を抑制することが可能になる。
【0081】
第2スリーブ42Bに対する速軸コリメータレンズFACの固定方法は任意である。例えば、X軸方向に延びる速軸コリメータレンズFACを、第2スリーブ42Bの端面に位置する開口を跨ぐように配置し、速軸コリメータレンズFACと第2スリーブ42Bの端面とを紫外線硬化樹脂によって接合してもよい。
図14には示されていないが、第2スリーブ42Bの端面に位置する開口は、
図8の第2窓部材18に相当するガラス部材が嵌め込まれていることが好ましい。
【0082】
本実施例において、像面22から第2レンズ系30までの距離は、1.0mm以下、具体的には100μm以下である。一方、LD12のエミッタ領域Eから窓部材14外側表面までの距離は、1.0mm程度である。このように、像面22から第2レンズ系30までの距離は、LD12のエミッタ領域Eから窓部材14外側表面までの距離よりも短い。その結果、従来のパッケージの構造による物理的な制約を受ける場合に比べて、第2レンズ系30の実効焦点距離を短縮し、コリメートビームの直径を小さくできる。
【0083】
本実施例では、以下の表1に示すように、ベース15はCuまたはAlNから形成され、中間板50、第1スリーブ42Aおよび第2スリーブ42Bは、ステンレス(SUS430)またはインバーから形成されている。第1レンズ鏡筒44Aおよび第2レンズ鏡筒44Bは、ステンレスおよびインバーのそれぞれの線膨張係数よりも大きな線膨張係数を有するコバールから形成されている。
【0084】
ベース15の下面15Dがヒートシンクに接している場合でも、動作時には部分的に70℃以上の温度に達するLD12から発せられる熱によってベース15の温度は室温よりも上昇する。このとき、ベース15の熱膨張によってLD12のエミッタ領域Eから第1レンズ系20までの距離が短縮する。この熱は、ベース15からキャップ16および中間板50を通ってレンズケース40に流れていく。その結果、レンズ鏡筒44A、44Bがスリーブ42A、42Bよりも横方向(Z軸方向)に長く膨張する。このため、レンズ鏡筒44A、44BのZ軸方向における合計の長さは、スリーブ42A、42BのZ軸方向における合計の長さよりも相対的に長くなり、結像レンズ26から第2スリーブ42Bの先端までの距離が短縮される。このことは、熱膨張に起因して生じるLD12のエミッタ領域Eからコリメータレンズ24までの距離の短縮を相殺する。
【0085】
【0086】
上記のサンプル1から3は、いずれも、以下の構成を備えている。
【0087】
ベース15の下面15Dのサイズは、6mm×6.9mm、台状部分15Bの上面15Cのサイズは、4mm×4.9mm、台状部分15Bの厚さは下面15Dから計測して2.9mm、プレート状部分15Aの厚さは0.7mmである。
【0088】
キャップ16はインバーから形成されており、キャップの高さは5.5mm、厚さは0.3mmである。
【0089】
中間板50の厚さt0、t1、t2は、それぞれ、0.5、0.42、0.2mmであり、高さh1およびh2は、それぞれ、4.25、1.75mmである。第1スリーブ42Aおよび第2スリーブ42Bの光軸方向長さは、それぞれ、2.4、8.19mmであり、第1レンズ鏡筒44Aおよび第2レンズ鏡筒44Bの光軸方向長さは、それぞれ、4.2mmである。
【0090】
第1および第2レンズ鏡筒44A、44Bの外径(直径)は、5.6mm、第1および第2スリーブ42A、42Bの外径(直径)は、6.1mm、コリメータレンズ24および結像レンズ26の外径(直径)は、4.2mmである。
【0091】
これらのサンプルでは、コリメータレンズ24の実効焦点距離は、結像レンズ26の実効焦点距離に等しく、3.0mmである。また、第1レンズ系20の横倍率は1である。
【0092】
図18は、光源ユニット100の第1レンズ系20の光軸上における幾つかの評価点位置を示す断面図である。図示される評価点Z0はLD12の光出射点、Z1はコリメータレンズ24の光入射点、Z2はコリメータレンズ24の光出射点、Z3は結像レンズ26の光入射点、Z4はコリメータレンズ24の光出射点、Z5は結像点である。
図18には、表2に示す各距離が記載されている。
【0093】
【0094】
なお、各サンプルでは、室温において、Ld=La+Lc+Lbである。
【0095】
図19は、上記のサンプル1~3について、評価点Z0を基準(0.0mm)とするとき、LD12が発する熱による各評価点Z1~Z5のZ軸方向における変位の大きさを示すグラフである。
図19において、三角のポイントを通る点線はサンプル1、円のポイントを通る太線はサンプル2、四角のポイントを通る細線はサンプル3における評価点の変位を示している。
【0096】
サンプル1に比べると、サンプル2、3では、各評価点の変位は小さい。
図19から分かるように、LD12の光出射点Z0を基準とするコリメータレンズ24の光入射点Z1の変位がマイナスである。このことは、ベース15の熱膨張により、LD12の光出射点Z0がZ軸の正方向にシフトし、LD12の光出射点Z0からコリメータレンズ24の光入射点Z1までの距離Laが短くなることを意味している。
【0097】
サンプル1において、評価点Z3、Z5が相対的に大きな値を示している。このことは、コリメータレンズ24の光出射点Z2から結像レンズ26の光入射点Z3までの距離と、結像レンズ26の光出射点Z4から結像点Z5までの距離が増加していることを意味している。このような距離の増加は、主として、スリーブ42A、42BのZ軸方向における熱膨張に起因する考えられる。
【0098】
一方、サンプル2、3においては、いずれの評価点の変位も1.0μm未満である。特に、サンプル1に比べて大きく異なる点は、結像レンズ26の光出射点Z4から結像点Z5までの距離がほとんど増加していないことにある。
図18を参照すると、LD12から発せられる熱により、距離Laは短くなるが、距離Lbはわずかに増加する。このような熱膨張による距離変化が相殺される効果を「アサ―マル効果」と呼ぶことができる。
【0099】
レーザ光源モジュール
次に、
図20A、
図20Bおよび
図20Cを参照して、本開示によるレーザ光源モジュールの実施形態を説明する。
図20Aは、本実施形態におけるレーザ光源モジュール200のXZ面の法線方向からみた模式的な上面図、
図20BはYZ面の法線方向からみたレーザ光源モジュール200の一部の模式的な側面図、
図20CはXY面の法線方向からみた模式的な正面図である。図示されている構成は、筐体(ハウジング)の内部に収容されている。
【0100】
レーザ光源モジュール200は、複数のレーザ光源100A、100B、100Cと、ビームコンバイナ120とを備えている。複数のレーザ光源100A、100B、100Cのそれぞれは、前述の光源ユニット100である。以下、簡単のため、レーザ光源100A、100B、100Cを総称して「光源ユニット100」と略記する場合がある。1個のレーザ光源モジュール200に含まれる光源ユニット100の個数は任意である。この例において、光源ユニット100の個数は3であるが、典型的には4以上である。
図21は、9個の光源ユニット100を備える他の構成例を模式的に示す斜視図である。光源ユニット100の個数に比例して結合ビームの光出力および光強度を高めることが可能になる。限られた空間内を多数のコリメートビームで充填して充填率を高めるには、コリメートビームの速軸サイズを小さくして、Y軸(速軸)方向におけるコリメートビームBの中心間ピッチSを短縮することが好ましい。
【0101】
なお、コリメートビームBは、図面において完全な平行光として簡略的に記載されているが、現実のコリメートビームBは、ビームウエストで最小ビーム半径に達した後、所定の発散角で発散する。このため、
図21に示される例において、光源ユニット100の個数が多くなりすぎると、収束光学系160から離れた位置にある光源ユニット100からのコリメートビームBについては、その光路が長大になってビーム径が大きく発散する可能性がある。一例として、速軸コリメータレンズFACの実効焦点距離が0.3mmの場合、速軸コリメータレンズFACからコリメートビームBのビームウエストまでの距離は例えば50mm程度である。このような例では、光源ユニット100の個数が10を超えて多くなると、最大光路長が50mmを大きく超える。その結果、一部のコリメートビームBの発散が無視できず、コアサイズの小さな光ファイバに対して適切に集光することが難しくなる可能性がある。このため、空間ビーム結合によって結合するべきコリメートビームBの本数は、単純に多ければ多いほどよいわけではなく、条件に応じて適切な範囲に設定されることが望ましい。
【0102】
ビームコンバイナ120は、複数の光源ユニット100から出射された複数のコリメートビームBを空間的に結合する。本実施形態において、各光源ユニット100から出射されたコリメートビームBは、ほぼ同一の波長(例えば、約465nm±10nm)を有しているが、位相は相互に同期されていない。このため、複数のコリメートビームBは、インコヒーレントに結合される。
【0103】
本実施形態において、レーザ光源モジュール200は、基準平面Refから複数のコリメートビームBの中心までの距離(高さ)Hがそれぞれ異なるように複数の光源ユニット100を支持する支持基体(サポート)140を備える。サポート140は、
図20Bに示されるように、複数の段差を有する載置面140Tを有している。Y軸(速軸)方向におけるコリメートビームBの中心間ピッチSは、サポート140の載置面140Tにおける段差の大きさに相当する。中心間ピッチSは、例えば200μm以上350μmの範囲内に設定され得るが、わかりやすさのため、
図20B、
図20Cおよび
図21では、段差が誇張して大きく記載されている。光源ユニット100は、
図20Aに示されるように、Z軸方向に沿って中心間ピッチPで配列されている。
【0104】
本実施形態におけるビームコンバイナ120は、複数のコリメートビームBをそれぞれ反射する複数のミラーMを有するミラーアレイを含んでいる。具体的には、サポート140の載置面140Tが、光源ユニット100の個数に対応する個数のミラーMを異なる高さ(レベル位置)で支持している。各ミラーMの位置および向きは、対応するコリメートビームBを反射して収束光学系160に向けるようにアライメントされている。典型例において、ミラーMは、Y軸に平行な軸の周りにコリメートビームBを90度回転させる。こうして、本実施形態のミラーMのアレイは、反射された複数のコリメートビームBを基準平面Refに垂直な面(YZ面)に沿って伝搬させる。なお、ミラーMは、不図示の筐体壁に固定されていてもよいし、それぞれのミラーMの位置および向きを調整することが可能な部品を介して固定されていてもよい。なお、ミラーMの反射面は、入射するコリメートビームBの波長において選択的に高い反射率を有する多層膜から形成されていることが望ましい。
【0105】
Y軸方向におけるコリメートビームBの中心間ピッチSは、個々のミラーMのY軸方向におけるサイズよりも大きい。個々のミラーMのY軸方向におけるサイズは、典型例において、個々のコリメートビームBのY軸方向半径ω
y2の2倍以上に設定される。ここで、ω
y2は、厳密には、コリメートビームBのビームウエストにおける値であるが、発散半角が充分に小さいため、この例における光路上でコリメートビームBのY軸方向半径はω
y2にほぼ等しいと近似してもよい。本実施形態において、S>2×ω
y2が成立している。ω
y2が例えば100μmのとき、Sは例えば300μm(=3.0×ω
y2)に設定され得る。個々のコリメートビームBのY軸方向半径ω
y2が小さいほど、中心間ピッチSを小さくすることができる。ここで、本実施形態における光源ユニット100ではなく、
図3Bに示すような光源ユニット100Qを採用した場合、個々のコリメートビームBのY軸方向半径ω
y2は、1mm程度に達する。そのため、段差の大きさSも1mm程度以上にする必要があり、空間ビーム結合後のビーム径が大きくなりすぎる。また、このような問題は、例えば
図21に示すように、光源ユニット100の個数が大きくなるほど、顕著になる。しかし、本実施形態における光源ユニット100を用いることにより、この問題を解決できる。
【0106】
Y軸方向におけるコリメートビームBの中心間ピッチSを決定するとき、光源ユニット100どうしの物理的な干渉を気にする必要はない。これに対して、Z軸方向における中心間ピッチPは、隣接する2個の光源ユニット100が物理的に干渉しないように決定される。
【0107】
ビームコンバイナ120は、複数のミラーMによってそれぞれ反射された複数のコリメートビームBを収束する光学系160を含む。本実施形態における光学系160は、複数のコリメートビームBを不図示の光ファイバに光結合する。なお、ミラーMの反射面は平坦である必要はない。ミラーMは、光学系160が有する収束機能の少なくとも一部を担っていてもよい。また、ビームコンバイナ120は、ミラーM以外の光学部品、例えば波長選択性を有するフィルタ、を有していてもよい。
【0108】
図20A、
図20B、
図20C、および
図21に示されている構成は、不図示の筐体に収容され得る。筐体そのものをパッケージと呼ぶ場合があるが、前述の半導体レーザパッケージに比べると、内部に部品点数が多く、光集塵効果を十分に抑制するほどのクリーン度を達成して気密性を維持することは難しい。
【0109】
以下、
図22Aおよび
図22Bを参照して、複数のコリメートビームBを結合する光学系160の構成例について説明する。
図22Aおよび
図22Bは、それぞれ、速軸(Y軸)方向に沿って中心間ピッチSで並んだn本のコリメートビームBを収束する光学系160の構成例を示している。
図22Aの例と
図22Bの例との間にある相違点は、速軸コリメータレンズFACの違いにある。
【0110】
図示されている例において、nは3以上の奇数であるが、nは偶数であってもよい。また、簡単のため、コリメートビームBとして、完全に平行な光線が図面に記載されているが、前述したように、現実のコリメートビームBはビームウエストで最小ビーム半径に達した後、所定の発散角度で発散する。光学系160に入射するn本のコリメートビームBのY軸方向における全体サイズを2×RTYとすると、2×RTY=S×(n-1)+2×ωy2の関係が成立する。この関係は、RTY=S×(n-1)/2+ωy2に書き換えることができる。なお、n本のコリメートビームBは、速軸(Y軸)方向に沿って直線状に並んでいるため、n本のコリメートビームBのX軸方向における全体サイズは、個々のコリメートビームBのX軸方向におけるサイズ2×ωx2に等しい。
【0111】
図22Aおよび
図22Bの光学系160は、その収束点の位置(後側焦点)Qに近い側から順番に遅軸収束レンズSAFおよび速軸収束レンズFAFを含む。これらのレンズは、シリンドリカルレンズである。ここで、Z軸(一点鎖線)は光学系160の光軸に一致するとする。速軸収束レンズFAFは、Z軸および速軸方向(Y軸)を含む平面(YZ面)内で各コリメートビームBを収束させる。遅軸収束レンズSAFは、Z軸および遅軸方向(X軸)を含む平面(紙面に垂直なXZ面)内で各コリメートビームBを収束させる。
【0112】
速軸収束レンズFAFおよび遅軸収束レンズSAFは、それぞれの後側焦点が一致するように配置されている。結合レーザビームの収束位置QにおけるY軸方向半径ωy3は、仮想光源のY軸方向半径ωy1に倍率(EFLFAF/EFLFAC)を乗算した値を有する。ここで、EFLFACは、速軸コリメータレンズFACの実効焦点距離であり、EFLFAFは、速軸収束レンズFAFの実効焦点距離である。
【0113】
前述したように、本開示の実施形態において、結像レンズ26の実効焦点距離F2をコリメータレンズ24の実効焦点距離F1よりも長くすると、像面22に形成される像の横倍率は、F2/F1であるため、像面22におけるエミッタ領域Eの像E’の大きさは、実際のエミッタ領域Eの大きさのF2/F1倍に拡大する。また、仮想光源から出射されたビームの速軸方向発散半角(遠方界における発散半角)θ
y1は、F2/F1が大きいほど、小さくなる。仮想光源から出射されたビームの速軸方向発散半角(遠方界における発散半角)θ
y1が小さくなると、速軸コリメータレンズFACの開口数を小さくして、実効焦点距離を長くすることが可能になる。
図22Bの構成例は、
図22Aの構成例に比べてθ
y1が相対的に小さい。より実効焦点距離EFL
FACが長い速軸コリメータレンズFACを採用すると、速軸コリメータレンズFACおよび速軸収束レンズFAFによる収束位置Qにおける横倍率(EFL
FAF/EFL
FAC)が小さくなる。このように、収束位置Qにおける横倍率が小さくなると、光ファイバのコアに対する収束ビームスポットの位置ズレ許容度を上げることができる。
【0114】
なお、一例として、ωy1=2.0μm、EFLFAC=0.3mm、EFLFAF=10.0mmの場合、ωy3=66.7μmである。また、ωy1=4.0μm、EFLFAC=0.6mm、EFLFAF=10.0mmの場合、ωy3=66.7μmである。また、遅軸コリメータレンズSACの実効焦点距離をEFLSAC、遅軸収束レンズSAFの実効焦点距離EFLSAFとするとき、結合レーザビームの収束位置QにおけるX軸方向半径ωx3は、仮想光源のX軸方向半径ωx1に倍率(EFLSAF/EFLSAC)を乗算した値を有する。例えばωx1=80μm、EFLSAC=5.0mm、EFLSAF=4.0mmの場合、ωx3=64μmである。
【0115】
本実施形態によれば、例えば開口数が0.2程度でコア径が100μmの多モード光ファイバにレーザビームを集光することができる。n本のレーザビームがインコヒーレントに結合するため、光強度はn倍に増大する。なお、
図3Bの構成では、SおよびR
TYが増大するため、収束光学系160を大型化する必要がある。
【0116】
図23A、
図23B、および
図23Cは、それぞれ、5本、9本、および9本×2列のコリメートビームBが速軸収束レンズFAFに入射する場合におけるビーム断面形状を模式的に示している。
図23Cの形態は、
図24に示すように、複数の光源ユニット100を2列に並べることによって得られる。
【0117】
光源ユニット100の配列の形態は、前述した例に限定されない。
図25は、更に他の例を示す上面模式図である。複数の光源ユニット100から出力されるビームが3列に並ぶように構成されてもよい。また、複数の光源ユニット100および/またはミラーMは、相互に平行である必要はなく、傾斜していてもよい。
【0118】
本開示の実施形態によれば、LD12がパッケージ内に収められているため、高出力短波長のレーザビームが引き起こし得る光集塵効果に起因するLD12の光出力低下が抑制され、信頼性が向上する。また、複数のコリメートビームBを高い空間密度で結合することが可能になるため、光出力を効果的に高めることができる。更に、コリメートビームBの速軸サイズの増加を抑えられるため、光源ユニット100の空間配置の自由度が高まり、多数のコリメートビームBを密に並べることが可能になる。その結果、高出力のレーザビームを光ファイバに高い効率で結合することが可能になる。
【0119】
上記の実施形態において、個々のパッケージ10には1個のLD12が収容されているが、各パッケージ10に複数のLD12が収容されていてもよい。また、各実施形態において、個々のLD12は、1個のエミッタ領域Eを有しているが、1つのLD12が複数のエミッタ領域Eを有していてもよい。このように、1個のパッケージ10の内部に複数のエミッタ領域E(エミッタアレー)が位置していても、本開示の実施形態による効果を得ることができる。すなわち、各パッケージ10の内部に位置するエミッタアレーの像を第1レンズ系20の像面22に転写することにより、自由空間中に仮想光源を形成すれば、パッケージ構造に制約されずに、第2レンズ系30を設計することが可能になる。
【0120】
ダイレクトダイオードレーザ装置
次に、
図26を参照して、本開示によるダイレクトダイオードレーザ(DDL)装置の実施形態を説明する。
図26は、本実施形態におけるDDL装置1000の構成例を示す図である。
【0121】
図示されているDDL装置1000は、4個のレーザ光源モジュール200と、加工ヘッド400と、レーザ光源モジュール200を加工ヘッド400に接続する光伝送ファイバ300とを備える。レーザ光源モジュール200の個数は、1個または複数個であり、4個に限られない。
【0122】
各レーザ光源モジュール200は、前述した構成と同様の構成を有している。各レーザ光源モジュール200に搭載されているLDの個数は特に限定されず、必要な光出力または放射照度に応じて決定される。各LDから放射されるレーザ光の波長も、加工対象の材料に応じて選択され得る。例えば、銅、真鍮、アルミニウムなど加工する場合、中心波長が350nm以上550nm以下の範囲に属するLDが好適に採用され得る。各LDから放射されるレーザ光の波長は同一である必要はなく、中心波長が異なるレーザ光が重畳されてもよい。また、中心波長が350nm以上550nm以下の範囲外にあるレーザ光を用いる場合にも、本発明による効果を得ることは可能である。
【0123】
図示されている例において、複数のレーザ光源モジュール200のそれぞれから延びる光ファイバ220が光ファイバ結合器230によって光伝送ファイバ300に結合されている。加工ヘッド400は、光伝送ファイバ300の先端から出射されたレーザビームを不図示の光学系によって対象物500に収束して照射する。1台のDDL装置1000がM個のレーザ光源モジュール200を備え、個々のレーザ光源モジュール200がN個のLDを搭載している場合において、1個のLDの光出力がPワットであれば、最大でP×N×Mワットの光出力を持ったレーザビームを対象物500上に収束させることができる。ここで、Nは2以上の整数、Mは正の整数である。例えばP=10ワット、N=9、M=12であれば、1キロワットを超える光出力が実現する。
【0124】
本実施形態によれば、レーザ光源モジュール内のLDが半導体レーザパッケージ内に収められているため、光集塵効果などに起因する光出力低下が抑制され、信頼性が向上する。また、ビーム径の小さな多数のコリメートビームを限られた空間内に充填できるため、小型の装置で高い光出力を達成でき、光ファイバにも結合しやすい。
【0125】
ファイバレーザ装置
次に、
図27を参照して、本開示によるファイバレーザ装置の実施形態を説明する。
図27は、本実施形態におけるファイバレーザ装置2000の構成例を示す図である。
【0126】
図示されているファイバレーザ装置2000は、励起光源として機能するレーザ光源モジュール200と、レーザ光源モジュール200から出射された励起光によって励起される希土類添加光ファイバ600とを備える。図示されている例において、複数のレーザ光源モジュール200のそれぞれから延びる光ファイバ220が光ファイバ結合器230によって希土類添加光ファイバ600に結合されている。希土類添加光ファイバ600は、共振器を規定する一対のファイバブラッググレーティングで挟まれている。希土類添加光ファイバ600にイッテルビウム(Yb)イオンがドープされている場合、波長が例えば915nmの励起光を生成するレーザ光源モジュール200が使用される。また、例えばプラセオジム(Pr)がドープされたフッ化物ガラスから形成された希土類添加光ファイバ600を使用する場合、青色の励起光による可視光レーザ発振を実現することが可能である。本開示の実施形態によるレーザ光源モジュール200は、そのような励起光源として有用である。本開示の実施形態によるレーザ光源モジュール200では、LDが半導体レーザパッケージに収容されているため、前述したように、特に青または緑色のレーザ光を出射するLDを採用するときに優れた効果を発揮し得る。
【0127】
加工ヘッド400は、希土類添加光ファイバ600の先端から出射されたレーザビームを不図示の光学系によって対象物500に収束して照射する。
【0128】
このように、本開示のレーザ光源モジュールは、非限定的で例示的な実施形態において、それぞれが前記光源ユニットである複数のレーザ光源と、前記複数のレーザ光源からそれぞれ出射された複数のコリメートビームを空間的に結合するビームコンバイナとを備える。
【0129】
ある実施形態において、基準平面から前記複数のコリメートビームの中心までの高さがそれぞれ異なるように前記複数のレーザ光源を支持するサポートを備える。前記ビームコンバイナは、前記複数のコリメートビームをそれぞれ反射する複数のミラーを有するミラーアレイであって、反射された前記複数のコリメートビームを前記基準平面に垂直な面に沿って伝搬させる、ミラーアレイと、前記複数のミラーによって反射された前記複数のコリメートビームを収束する光学系とを含む。
【0130】
また、本開示のダイレクトダイオードレーザ装置は、非限定的で例示的な実施形態において、少なくともひとつの前記レーザ光源モジュールと、前記レーザ光源モジュールから出射されたレーザビームを伝搬させ、前記レーザビームを出射する光ファイバと、前記光ファイバに結合された加工ヘッドであって、前記光ファイバから出射された前記レーザビームで対象物を照射する加工ヘッドとを備える。
【0131】
更に、本開示のファイバレーザ装置は、非限定的で例示的な実施形態において、少なくともひとつの前記レーザ光源モジュールと、前記レーザ光源モジュールから出射されたレーザビームによって励起される希土類添加光ファイバとを備える。
【0132】
なお、上記の各実施形態における光源ユニットのレーザダイオードは、端面出射型レーザダイオードであるが、本開示の実施形態は、この例に限定されない。光源ユニットのレーザダイオードは、端面出射型レーザダイオードに限られず、VCSEL(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)などの表面出射型レーザタイオードであってもよい。表面出射型レーザタイオードを用いる場合、エミッタ領域は、レーザダイオードの半導体基板の主面に平行であり、エミッタ領域から出射されたレーザビームの光軸は、半導体基板の主面に垂直である。表面出射型レーザタイオードを用いる場合、エミッタ領域から出射されるレーザ光は、光軸周りに対称なビーム形状を持ち得る。その場合、第1レンズ系20から像面を通過したレーザ光をコリメートビームまたは収束ビームに変換して出射する第2レンズ系30は、速軸コリメータレンズおよび遅軸コリメータレンズを有する必要はなく、1個のコリメータレンズによっても実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本開示の光源ユニットは、コリメートビームまたは収束ビームの速軸サイズを小さくすることが求められる様々な用途に利用され得る。特に複数のレーザビームを結合して高出力のレーザビームを実現するために用いられ得る。また、本開示のレーザ光源モジュールおよびダイレクトダイオードレーザ装置は、高出力のレーザ光源が必要とされる産業用分野、例えば各種材料の切断、穴あけ、局所的熱処理、表面処理、金属の溶接、3Dプリンティングなどに利用され得る。更に、本開示のレーザ光源モジュールは、DDL装置以外の用途、例えばファイバレーザ装置の励起光源としても利用され得る。
【符号の説明】
【0134】
10・・・半導体レーザパッケージ、12・・・LD、14・・・窓部材、20・・・第1レンズ系、22・・・像面、24・・・コリメータレンズ、26・・・結像レンズ、30・・・第2レンズ系、100・・・光源ユニット、120・・・ビームコンバイナ、140・・・サポート、160・・・収束光学系、300・・・光伝送ファイバ、400・・・加工ヘッド、1000・・・ダイレクトダイオードレーザ(DDL)装置、B・・・ビーム、M・・・ミラー、FAC・・・速軸コリメータレンズ、SAC・・・遅軸コリメータレンズ、FAF・・・速軸収束レンズ、SAF・・・遅軸収束レンズ