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特許7525819ポリアミック酸エステル中の金属不純物を除去する金属吸着剤及び金属除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ポリアミック酸エステル中の金属不純物を除去する金属吸着剤及び金属除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20240724BHJP
   B01J 45/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B01J20/26 E
B01J45/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020044615
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021142514
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博昭
(72)【発明者】
【氏名】孫 軍
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131629(WO,A1)
【文献】特開2011-059656(JP,A)
【文献】特開2001-089524(JP,A)
【文献】特開2013-208542(JP,A)
【文献】特開2008-222858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
B01J 39/00-49/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸エステル溶液中の金属不純物を、キレート樹脂(A)のみと接触させて除去する金属除去方法であって、
前記キレート樹脂(A)は式(A-1)乃至式(A-4)で表される単位構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の単位構造を有する高分子物質からなる金属吸着剤であることを特徴とする金属除去方法。
【化1】
(式中、A は架橋化多孔質ポリスチレンを構成する骨格構造であり、A は単結合又はA とチオウレア基又はチオウロニウム基を結びつける連結基であり、該連結基は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含んでいても良い炭素原子数1乃至10のアルキレン基であり、A はヒドロキシル基および/又は炭素数1乃至3のアルキル基で置換されていても良いフェニル基である。)
【請求項2】
前記ポリアミック酸エステルは下記一般式(1)からなる構造単位を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属除去方法。
【化2】
[式中、Xは、4価の有機基であり、Yは、2価の有機基であり、R及びRは、それぞれ独立に、1価の有機基である。]
【請求項3】
前記キレート樹脂(A)が分子量1000を超える高分子物質からなる金属吸着剤である請求項1又は請求項2に記載の金属除去方法。
【請求項4】
前記金属除去方法が前記ポリアミック酸エステル溶液をキレート樹脂(A)のみと接触させる金属除去操作とポリアミック酸エステル溶液をフィルターに通液する濾過操作との組み合わせを含む請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の金属除去方法。
【請求項5】
前記フィルターは孔径が10μm以下のフィルターである請求項4に記載の金属除去方法。
【請求項6】
前記ポリアミック酸エステル溶液がテトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる有機溶剤を含有する溶液である請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の金属除去方法。
【請求項7】
前記キレート樹脂(A)が除去する金属不純物が国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)が定めた表示法による周期表の第3周期乃至第7周期で第1族乃至第14族の金属、その多価金属イオン、又はそれらの金属水酸化物若しくは金属酸化物のコロイド物質である、請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の金属除去方法。
【請求項8】
前記キレート樹脂(A)が除去する金属不純物が国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)が定めた表示法による周期表の第3周期乃至第7周期で第3族乃至第14族の金属、その多価金属イオン、又はそれらの金属水酸化物若しくは金属酸化物のコロイド物質である、請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の金属除去方法
【請求項9】
精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液を準備する工程、
前記被精製材料溶液及び請求項1乃至請求項8のいずれかの金属除去方法に用いる前記キレート樹脂(A)を容器に充填する工程、
得られた被精製材料及びキレート樹脂(A)を含む溶液を撹拌する工程、及び
前記被精製材料及びキレート樹脂(A)を含む溶液から前記キレート樹脂(A)を除去し、精製材料溶液を得る工程を含む、
金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項10】
前記精製すべき被精製材料は、ポリアミック酸エステルである請求項9に記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項11】
精製する全工程がバッチ処理で為す請求項9又は請求項10に記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項12】
精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液を準備する工程、及び
請求項1乃至請求項8のいずれかの金属除去方法に用いる前記キレート樹脂(A)を充填したカラムに前記被精製材料溶液を通液して精製材料溶液を得る工程を含む、
金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項13】
前記精製すべき被精製材料は、ポリアミック酸エステルである請求項12に記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項14】
精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液をタンクに入れる工程と、
該タンクと請求項1乃至請求項8のいずれかの金属除去方法に用いる前記キレート樹脂(A)が充填されたカラムとを接続する循環路内で被精製材料溶液を循環し、被精製材料溶液中の多価金属元素、金属イオン又はそれら金属のコロイド物質を前記キレート樹脂(A)に吸着させて除去し、精製材料溶液を得る工程とを含む、
金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項15】
前記精製すべき被精製材料は、ポリアミック酸エステルである請求項14に記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項16】
前記精製すべき被精製材料を溶解する液体が、有機溶剤である請求項9乃至請求項15のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項17】
前記被精製材料溶液の循環が閉鎖系内で行われる請求項14乃至請求項16のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項18】
前記精製すべき被精製材料を溶解する液体が、前処理液体である請求項9乃至請求項17のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項19】
前記被精製材料溶液が半導体製造のパッケージング工程で使用される塗布用組成物である請求項9乃至請求項18のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項20】
前記精製材料溶液中の金属イオン又はそれら金属のコロイド物質が100ppb以下になるまで行われる請求項9乃至請求項19のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法。
【請求項21】
前記精製材料溶液中に国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)が定めた表示法による第3周期乃至第7周期で第1族乃至第14族の金属、その多価金属イオン、又はそれらの金属水酸化物若しくは金属酸化物のコロイド物質が100乃至500ppt含まれる請求項9乃至請求項19のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法
【請求項22】
前記精製材料溶液中に国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)が定めた表示法による第3周期乃至第7周期で第3族乃至第14族の金属、その多価金属イオン、又はそれらの金属水酸化物若しくは金属酸化物のコロイド物質が100乃至500p
pt含まれる請求項9乃至請求項19のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミック酸エステル中の金属不純物を除去する金属吸着剤と、その金属除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造には多くの化学物質が用いられる。例えば、半導体デバイス製造時のパッケージング工程に用いられる感光性絶縁膜としてポリアミック酸エステルが用いられる。このポリアミック酸エステル中に金属イオンや、金属若しくは金属酸化物に由来する帯電性コロイド物質が残存した場合、最終製品や、その製造工程中で予想外の悪影響を及ぼすことがある。
【0003】
上記金属不純物は原料由来の不純物であったり、有機反応時に用いられる金属触媒が残存したものであったり、ポリマー合成時に使用した反応釜由来の不純物であったりする。これら金属成分はアルカリ金属、アルカリ土類金属であればイオン交換樹脂により多くは除去が可能である。しかし、多価金属イオンやそれら金属の帯電性金属酸化物コロイド粒子は、イオン交換樹脂では容易に吸着除去することが難しく、これらの除去の目的でキレート樹脂が用いられている(特許文献1、特許文献2を参照。)。一方で、金属イオンや帯電性金属酸化物コロイド粒子は、イオン強度やイオン半径や粒子径が多種多様であり、またキレート樹脂も官能基の種類により金属種の形態にフィットせずに十分な金属吸着能を発揮しない場合があり、対象となる樹脂中の金属不純物を数種除去するためにはキレート樹脂を組み合わせて用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開パンフレットWO2015-146307号公報
【文献】特表2008-502470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属不純物の除去にはスチレン、ジビニルベンゼンの共重合体から成るマイクロポーラス型の担持体を有する、スルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂を用いることが一般的であるが、スルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂を用いた金属除去方法は、半導体デバイス製造時のパッケージング工程に用いられる感光性絶縁膜としてポリアミック酸エステルが使用される場合は、ポリアミック酸エステルのイミド化を引き起こし、ポリアミック酸エステルが変性するため、好ましくない。
【0006】
本願発明は半導体デバイス製造時のパッケージング工程に用いられる感光性絶縁膜として使用されるポリアミック酸エステルを吸着、変性することなく、金属不純物を特定のキレート樹脂を用いた金属除去処理、及び特定のキレート樹脂を用いた金属除去処理と特定の孔径以下のフィルターを用いた濾過の組み合わせにより、被精製材料が溶解した組成物中から除去し、高純度化された精製材料組成物を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は第1観点として、ポリアミック酸エステル溶液中の金属不純物を、キレート樹脂(A)と接触させて除去する金属除去方法に関する、
前記キレート樹脂(A)はチオウレア基又はチオウロニウム基を含む高分子物質からな
る金属吸着剤であることを特徴とする。
第2観点として、前記ポリアミック酸エステルは下記一般式(1)からなる構造単位を有する化合物であることを特徴とする第1観点に記載の金属除去方法に関する。
【化1】
[式中、Xは、4価の有機基であり、Yは、2価の有機基であり、R及びRは、それぞれ独立に、1価の有機基である。]
第3観点として、キレート樹脂(A)が、式(A-1)乃至式(A-4):
【化2】
(式中、Aは架橋化多孔質ポリスチレンを構成する骨格構造であり、Aは単結合又はAとチオウレア基又はチオウロニウム基を結びつける連結基であり、該連結基は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含んでいても良い炭素原子数1乃至10のアルキレン基であり、Aはヒドロキシル基および/又は炭素数1乃至3のアルキル基で置換されていても良いフェニル基である)で表される単位構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の単位構造を有する、分子量1000を超える高分子物質を含む金属吸着剤である第1観点又は第2観点に記載の金属除去方法に関する。
第4観点として、前記金属除去方法が前記ポリアミック酸エステル溶液をキレート樹脂(A)と接触させる金属除去操作とポリアミック酸エステル溶液をフィルターに通液する濾過操作との組み合わせを含む第1観点乃至第3観点の何れか一つに記載の金属除去方法に関する。
第5観点として、前記フィルターは孔径が10μm以下のフィルターである第4観点に記載の金属除去方法に関する。
第6観点として、前記ポリアミック酸エステル溶液が有機溶剤を含有する溶液である第1観点乃至第5観点の何れか一つに記載の金属除去方法に関する。
第7観点として、前記キレート樹脂(A)が除去する金属不純物が国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)が定めた表示法による周期表の第3周期乃至第7周期で第1族乃至第14族の金属、その多価金属イオン、又はそれらの金属水酸化物若しくは金属酸化物のコロイド物質である、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の金属除去方法に関する。
第8観点として、前記キレート樹脂(A)が除去する金属不純物が国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)が定めた表示法による周期表の第3周期乃至第7周
期で第3族乃至第14族の金属、その多価金属イオン、又はそれらの金属水酸化物若しくは金属酸化物のコロイド物質である、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の金属除去方法に関する。

第9観点として、精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液を準備する工程、前記被精製材料溶液及び第1観点乃至第8観点のいずれかの金属除去方法に用いる前記キレート樹脂(A)を容器に充填する工程、得られた被精製材料及びキレート樹脂(A)を含む溶液を撹拌する工程、及び前記被精製材料及び前記キレート樹脂(A)を含む溶液から前記キレート樹脂(A)を除去し、精製材料溶液を得る工程を含む、金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第10観点として、前記精製すべき被精製材料は、ポリアミック酸エステルである第9観点に記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第11観点として、精製する全工程がバッチ処理で為す第9観点又は第10観点に記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第12観点として、精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液を準備する工程、及び第1観点乃至第8観点のいずれかの金属除去方法に用いる前記キレート樹脂(A)を充填したカラムに前記被精製材料溶液を通液して精製溶液を得る工程を含む、金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第13観点として、前記精製すべき被精製材料は、ポリアミック酸エステルである第12観点に記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第14観点として、精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液をタンクに入れる工程と、該タンクと第1観点乃至第8観点のいずれかの金属除去方法に用いる前記キレート樹脂(A)が充填されたカラムとを接続する循環路内で被精製材料溶液を循環し、被精製材料溶液中の多価金属元素、金属イオン又はそれら金属のコロイド物質を前記キレート樹脂(A)に吸着させて除去し、精製材料溶液を得る工程とを含む、金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第15観点として、前記精製すべき被精製材料は、ポリアミック酸エステルである第14観点に記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第16観点として、前記精製すべき被精製材料を溶解する液体が、有機溶剤である第9観点乃至第15観点のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第17観点として、前記被精製材料溶液の循環が閉鎖系内で行われる第14観点乃至第16観点の何れか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第18観点として、前記精製すべき被精製材料を溶解する液体が、前処理液体である第9観点乃至第17観点のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第19観点として、前記被精製材料溶液が半導体製造のパッケージング工程で使用される塗布用組成物である第9観点乃至第18観点のいずれか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第20観点として、精製材料溶液中の金属イオン又はそれら金属のコロイド物質が100ppb以下になるまで行われる第9観点乃至第19観点の何れか一つに記載の金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。
第21観点として、国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)が定めた表示法による第3周期乃至第7周期で第1族乃至第14族の金属、その多価金属イオン、又はそれらの金属水酸化物若しくは金属酸化物のコロイド物質が100乃至500ppt含まれる被精製材料溶液に関する。
第22観点として、国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)が定めた表示法による第3周期乃至第7周期で第3族乃至第14族の金属、その多価金属イオン、
又はそれらの金属水酸化物若しくは金属酸化物のコロイド物質が100乃至500ppt含まれる被精製材料溶液に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、キレート樹脂(A)を用いてポリアミック酸エステル溶液中の金属不純物を除去する金属除去方法が提供される。
例えば、半導体デバイス製造時のパッケージング工程に用いられる感光性絶縁膜としてポリアミック酸エステルが用いられる。このポリアミック酸エステル中に金属イオンや、金属若しくは金属酸化物に由来する帯電性コロイド物質が残存した場合、最終製品や、その製造工程中で予想外の悪影響を及ぼすことがある。
金属不純物の除去にはスチレン、ジビニルベンゼンの共重合体から成るマイクロポーラス型の担持体を有する、スルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂を用いることが一般的であるが、スルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂を用いた金属除去方法は、ポリアミック酸エステルのイミド化を引き起こし、ポリアミック酸エステルが変性するため、好ましくない。
本発明の金属除去方法は半導体デバイス製造時のパッケージング工程に用いられる感光性絶縁膜として使用されるポリアミック酸エステルを吸着、変性することなく、金属不純物を特定のキレート樹脂により被精製材料が溶解した組成物中から除去し該溶液中の金属不純物を低減することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、キレート樹脂(A)を用いて溶液中の金属不純物を除去する金属除去方法であって、溶液は、主にポリアミック酸エステル溶液である。
【0010】
[ポリアミック酸エステル]
ポリアミック酸エステルは、感光性樹脂組成物に含まれる樹脂成分であり、下記一般式(1)で表される単位構造を有する。
【0011】
【化3】
[式中、Xは、4価の有機基であり、Yは、2価の有機基であり、R及びRは、それぞれ独立に、1価の有機基である。]
【0012】
上記一般式(1)中、Xは、4価の有機基であれば特に限定されないが、耐熱性と感光特性とを両立するという観点で、好ましくは、炭素原子数6~40の4価の有機基であり、より好ましくは、-COOR基及び-COOR基と-CONH-基とが互いにオルト位置にある芳香族基、又は脂環式脂肪族基である。また、Xで表される4価の有機基は、芳香族環を含有する炭素原子数6~40の有機基であることがより好ましい。
【0013】
さらに好ましくは、Xは、下記式(5)又は下記式(5-1)~(5-7)で表される4価の有機基である。
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
【化6】
【0017】
また、Xの構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0018】
上記一般式(1)中、Yは、炭素原子数6~40の2価の有機基であれば限定されないが、耐熱性と感光特性とを両立するという観点で、置換されていてもよい芳香族環又は脂肪族環を1~4個有する環状有機基、又は環状構造を持たない脂肪族基又はシロキサン基であることが好ましい。より好ましくは、Yは、下記一般式(6)、下記一般式(7)又は下記式(8)で表される構造である。
【0019】
【化7】
【0020】
【化8】
【0021】
(式中、Aは、それぞれ独立に、メチル基(-CH)、エチル基(-C)、プロピル基(-C)又はブチル基(-C)を表す。}
【0022】
【化9】
【0023】
また、Yの構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0024】
上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、1価の有機基であれば特に限定されない。例えば、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~30、又は炭素原子数5~22の1価の脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とが結合した基、若しくはそれらの基がハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、アセトキシ基などで置換された基とすることができる。ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iが典型的である。
【0025】
好ましくは、R及びRは、それぞれ独立に、下記一般式(2):
【0026】
【化10】
【0027】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の1価の有機基であり、そしてmは、1~10の整数である。*は、一般式(1)のポリアミド酸主鎖に存在するカルボン酸との結合部位である。)
で表されることが好ましい。
【0028】
及びRは、それぞれ独立に、下記一般式(3):
【化11】
【0029】
(式中、Rは、炭素原子数1~30のアルキル基から選択される1価の基である。*は上記と同一である。)
で表される1価の有機基が含まれていてもよい。
【0030】
上記一般式(1)におけるR及びRは、各々1種又は2種以上の組み合わせでもよいが、好ましくは3種以下の組み合わせであり、好ましくは2種の組み合わせであり、最も好ましくは1種である。
【0031】
上記一般式(1)において、感光性樹脂組成物の感光特性及び機械特性の観点から、R及びRの全てに対する上記一般式(2)で表される1価の有機基と上記一般式(3)で表される1価の有機基の合計の割合は、好ましくは80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上であり、好ましくは100モル%である。
【0032】
上記一般式(1)において、感光性樹脂組成物の感光特性及び機械特性の観点から、R及びRの全てに対する上記一般式(2)で表される1価の有機基の合計の割合は、好ましくは80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上であり、好ましくは100モル%である。
【0033】
上記一般式(2)中のRは、水素原子又は炭素原子数1~3の1価の有機基であれば限定されないが、感光性樹脂組成物の感光特性の観点で、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0034】
上記一般式(2)中のR及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の1価の有機基であれば限定されないが、感光性樹脂組成物の感光特性の観点から水素原子であることが好ましい。
【0035】
上記一般式(2)中のmは、1以上10以下の整数であり、感光特性の観点から好ましくは2以上4以下の整数である。
【0036】
上記一般式(3)におけるRは、炭素原子数1~30のアルキル基から選択される1価の有機基であれば限定されない。炭素原子数が5~30のアルキル基が好ましく、炭素原子数が8~30のアルキル基が好ましく、炭素原子数が9~30のアルキル基が好ましく、炭素原子数が10~30のアルキル基が好ましく、炭素原子数が11~30のアルキ
ル基がさらに好ましく、炭素原子数が17~30のアルキル基がさらに好ましい。直鎖構造のみならず、分岐構造、環状構造を有していてもよい。
【0037】
前記Rは、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基(アミル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(パルミチル基)、ヘプタデシル基(マルガリル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、ノナデシル基、イコシル基(アラキル基)、ヘンイコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)、トリコシル基、テトラコシル基(リグノセリル基)、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、sec-イソアミル基、イソヘキシル基、ネオへキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-エチルペンチル基、ヘプタン-3-イル基、ヘプタン-4-イル基、4-メチルヘキサン-2-イル基、3-メチルヘキサン-3-イル基、2,3-ジメチルペンタン-2-イル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、4,4-ジメチルペンタン-2-イル基、6-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクタン-2-イル基、6-メチルヘプタン-2-イル基、6-メチルオクチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、ノナン-4-イル基、2,6-ジメチルヘプタン-3-イル基、3,6-ジメチルヘプタン-3-イル基、3-エチルヘプタン-3-イル基、3,7-ジメチルオクチル基、8-メチルノニル基、3-メチルノナン-3-イル基、4-エチルオクタン-4-イル基、9-メチルデシル基、ウンデカン-5-イル基、3-エチルノナン-3-イル基、5-エチルノナン-5-イル基、2,2,4,5,5-ペンタメチルヘキサン-4-イル基、10-メチルウンデシル基、11-メチルドデシル基、トリデカン-6-イル基、トリデカン-7-イル基、7-エチルウンデカン-2-イル基、3-エチルウンデカン-3-イル基、5-エチルウンデカン-5-イル基、12-メチルトリデシル基、13-メチルテトラデシル基、ペンタデカン-7-イル基、ペンタデカン-8-イル基、14-メチルペンタデシル基、15-メチルヘキサデシル基、ヘプタデカン-8-イル基、ヘプタデカン-9-イル基、3,13-ジメチルペンタデカン-7-イル基、2,2,4,8,10,10-ヘキサメチルウンデカン-5-イル基、16-メチルヘプタデシル基、17-メチルオクタデシル基、ノナデカン-9-イル基、ノナデカン-10-イル基、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン-7-イル基、18-メチルノナデシル基、19-メチルイコシル基、ヘンイコサン-10-イル基、20-メチルヘンイコシル基、21-メチルドコシル基、トリコサン-11-イル基、22-メチルトリコシル基、23-メチルテトラコシル基、ペンタコサン-12-イル基、ペンタコサン-13-イル基、2,22-ジメチルトリコサン-11-イル基、3,21-ジメチルトリコサン-11-イル基、9,15-ジメチルトリコサン-11-イル基、24-メチルペンタコシル基、25-メチルヘキサコシル基、ヘプタコサン-13-イル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、1,6-ジメチルシクロヘキシル基、メンチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、ボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-4-イル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル基、シクロドデシル基等の脂環式アルキル基が挙げられる。
【0038】
好ましくは、前記Rが、下記式(4):
【0039】
【化12】
【0040】
(Zは水素、又は炭素原子数1~14のアルキル基であり、
は炭素原子数1~14のアルキル基であり、
は炭素原子数1~14のアルキル基であり、
但し、Z、Z及びZは相互に同じでも異なってもよく、
、Z及びZの炭素原子数の合計が4以上である。)で表されるものであることが好ましい。
【0041】
が水素であることが好ましい。
、Z及びZは炭素原子数2~12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数2~10のアルキル基であることが好ましい。
、Z及びZの炭素原子数の合計は5以上であることが好ましく、6以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、12以上であることが好ましく、14以上であることが好ましく、15以上であることが好ましく、16以上であることが好ましい。
、Z及びZの炭素原子数の合計は6以上20以下であることが好ましい。
、Z及びZの炭素原子数の合計の上限は28であることが好ましい。
【0042】
また、前記Rが、以下の式(3-1)~式(3-7)から選ばれるものであってもよい。
【0043】
【化13】
【0044】
【化14】
【0045】
前記Rは、上記式(3-1)~式(3-7)から選ばれることが好ましい。
【0046】
[ポリアミック酸エステルの調製方法]
本実施形態における上記一般式(1)で表されるポリアミック酸エステルは、例えば、前述の炭素数6~40の4価の有機基Xを含むテトラカルボン酸二無水物と、(a)上記一般式(2)で表される1価の有機基と水酸基とが結合して成るアルコール類、及び(b)上記一般式(3)で表される1価の有機基と水酸基とが結合して成るアルコール類を反応させて、部分的にエステル化したテトラカルボン酸(以下、アシッド/エステル体ともいう)を調製し、続いて前述の炭素数6~40の2価の有機基Yを含むジアミン類と重縮合させることにより得られる。
【0047】
(アシッド/エステル体の調製)
本実施形態において、炭素数6~40の4価の有機基Xを含むテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、ジフェニルエーテル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(=4,4’-オキシジフタル酸二無水物)、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルメタン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)プロパン、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。
また、下記式(5-1-a)~式(5-7-a)で表されるテトラカルボン酸二無水物も例示される。
【0048】
【化15】
【0049】
これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して、使用されることができる。
【0050】
本実施形態において、(a)上記一般式(2)で表される構造を有するアルコール類としては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルアルコール、1-アクリロイルオキシ-3-プロピルアルコール、メチロールビニルケトン、2-ヒドロキシエチルビニルケトン、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルアクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルアルコール、1-メタクリロイルオキシ-3-プロピルアルコール、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0051】
(b)上記一般式(3)で表される構造を有する炭素原子数1~30の脂肪族アルコール類として、例えば、上記炭素原子数1~30のアルキル基の水素原子をヒドロキシ基で置換したアルコール類等を挙げることができる。
【0052】
また上記式(3-1)~式(3-6)の構造を有するアルコール類を使用してもよい。以下の市販品を使用してもよい。
式(3-1)の構造を含むアルコール類:ファインオキソコール(登録商標)180(日産化学株式会社製)、
式(3-2)の構造を含むアルコール類:ファインオキソコール(登録商標)2000(日産化学株式会社製)、
式(3-3)の構造を含むアルコール類:ファインオキソコール(登録商標)180N(日産化学株式会社製)、
式(3-4)又は式(3-5)の構造を含むアルコール類:ファインオキソコール(登録商標)180T(日産化学株式会社製)、
式(3-6)の構造を含むアルコール類:ファインオキソコール(登録商標)1600K(日産化学株式会社製)。
これらのアルコール類として、上記式(3-1)~式(3-6)の構造を有するアルコール類を使用することが好ましい。
【0053】
感光性樹脂組成物中の上記(a)成分と(b)成分の合計した含有量は、上記一般式(1)におけるR及びRの全ての含有量に対し、80モル%以上が好ましく、低誘電率化及び低誘電正接化のために、(b)成分の含有量はR及びRの全ての含有量に対し、1モル%~90モル%が好ましい。
【0054】
上記のテトラカルボン酸二無水物と上記のアルコール類とを、ピリジン等の塩基性触媒の存在下、反応溶媒中、反応温度0~100℃で10~40時間に亘って撹拌、溶解及び混合することにより、酸二無水物のハーフエステル化反応が進行し、所望のアシッド/エステル体を得ることができる。
【0055】
上記反応溶媒としては、該アシッド/エステル体、及び該アシッド/エステル体とジアミン類との重縮合生成物であるポリアミック酸エステルを溶解するものが好ましく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ガンマブチロラクトン、ケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,4-ジクロロブタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは必要に応じて、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0056】
(ポリアミック酸エステルの調製)
上記アシッド/エステル体(典型的には上記反応溶媒中の溶液)に、氷冷下、既知の脱水縮合剤、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン、1,1-カルボニルジオキシ-ジ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド等を投入混合してアシッド/エステル体をポリ酸無水物とした後、これに、炭素数6~40の2価の有機基Yを含むジアミン類を別途溶媒に溶解又は分散させたものを滴下投入し、重縮合させることにより、実施の形態で用いることができるポリアミック酸エステルを得ることができる。
【0057】
炭素数6~40の2価の有機基Y1を含むジアミン類としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,
4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、オルト-トリジンスルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、及びこれらのベンゼン環上の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ハロゲン等で置換されたもの、例えば3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、及びその混合物等が挙げられる。
また、下記式(8-1)で表されるジアミン類も挙げられる。
【0058】
【化16】
【0059】
本願に使用されるジアミン類は、これらに限定されるものではない。
【0060】
実施の形態では、感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって基板上に形成される感光性樹脂層と各種の基板との密着性を向上させるために、ポリアミック酸エステルの調製時に、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン等のジアミノシロキサン類を共重合することもできる。
【0061】
上記重縮合反応終了後、当該反応液中に共存している脱水縮合剤の吸水副生物を、必要に応じて濾別した後、水、脂肪族低級アルコール、又はその混合液等の貧溶媒を、反応液に投入して重合体成分を析出させ、さらに、再溶解、再沈析出操作等を繰り返すことにより、重合体を精製し、真空乾燥を行い、実施の形態で用いることのできるポリアミック酸エステルを単離する。
【0062】
ポリアミック酸エステルの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量で測定した場合に、5,000~150,000であることが好ましく、7,000~50,000であることがより好ましい。重量平均分子量が5,000以上である場合には、機械物性が良好であるため好ましく、一方で、150,000以下である場合には、現像液への分散性及びレリーフパターンの解像性能が良好であるため好ましい。
【0063】
[キレート樹脂(A)]
本発明は、キレート樹脂(A)を用いて溶液中の金属不純物を除去する金属除去方法であって、キレート樹脂(A)はチオウロニウム基、チオウレア基、又はそれらの組み合わせを含む担体を含む金属吸着剤である。
【0064】
キレート樹脂(A)中の担体は、ポリスチレン、又は架橋化多孔質ポリスチレン等の担体の表面に、キレート官能基(チオウレア基又はチオウロニウム基等)を結合させたものである。多孔質担体の場合は細孔の内部にキレート官能基を結合させることが可能である。担体の表面にキレート官能基を結合させることにより、溶液中で金属不純物と効率よく接触することができる。ポリスチレンをキレート性官能基で修飾する場合、ポリスチレンにクロロメチル化剤(例えば、クロロメチルメチルエーテル)によってポリスチレン粒子表面にクロロメチル基を導入し、クロロメチル基をキレート性官能基と更に反応させることにより、ポリスチレンにキレート性官能基を導入することができる。ポリスチレンにキレート官能基をつけた形態のキレート樹脂は、粒子状としてそのままカラムに充填して使用することができる。
【0065】
キレート樹脂(A)中の担体としてポリスチレンを用いる場合、ポリスチレンは、不純物の溶出を避けるために高度に架橋させた架橋化多孔質ポリスチレンを用いることが可能である。架橋剤としてはジビニル化合物が用いられ、例えばジビニルベンゼン、ジビニルメタン等を使用することができる。
また、吸着剤として比表面積が大きなポリスチレンを用いることが好ましく、この観点から多孔性のポリスチレンを用いることができる。ポリスチレンの多孔化はスチレンの重合の時に非溶剤を少量加えて重合することにより、多孔性のポリスチレンを得ることができる。
【0066】
キレート樹脂(A)中の担体としては、シリカ、又はシリカ成分含有物質を用いることもできる。シリカ、シリカ成分含有物質は合成品、天然品のいずれも可能であるが、不純物の溶出のない担体であることが好ましく、例えば高純度アルコキシシランを加水分解して得られるシリカを成形して焼成して製造される合成石英(SiO)を用いることができる。シリカ成分含有物質はフォルステライト(2MgO・SiO)、ジルコン(ZrO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、コーデュエライト(2MgO・2Al・5SiO)等を用いることができる。
【0067】
シリカ、又はシリカ成分含有物質をキレート性官能基で修飾する場合、キレート性官能基の末端と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤を用い、これがシリカ、又はシリカ成分含有物質粒子の表面のシリカ成分と反応することにより表面を修飾して、キレート性官能基を導入することが可能である。キレート性官能基の末端と反応可能な官能基としては、例えばビニル基、アリル基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、エポキシ基、チオール基等が挙げられる。シランカップリング剤は1個乃至3個の加水分解性基(例えばメトキシ基、エトキシ基など)を有することができるが、担体への密着性から3個の加水分解性基を有することができる。シリカ粒子にキレート性官能基を付けたキレート樹脂は、カ
ラムに詰めてそのまま使用することが可能である。
【0068】
上述したように、上記担体は粒子状で使用することが可能である。粒子状にて使用する場合、又は架橋化多孔質ポリスチレンの場合には、例えば粒子径が1μm乃至10mm、又は1μm乃至1mm、又は10μm乃至1mm程度の形状にて用いることができる。なお、シリカ、又はシリカ成分含有物質の場合には、粒子径が1μm乃至1mm、又は1μm乃至500μm、又は10μm乃至100μm程度の形状にて用いることができる。
【0069】
キレート樹脂(A)は、式(A-1)乃至式(A-4)の単位構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤である。
は担体としてのシリカ、シリカ成分含有物質、ポリスチレン、又は架橋化多孔質ポリスチレンを構成する骨格構造であり、Aは単結合を表すか、又はAと官能基を結びつける連結基を表し、該連結基は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基を挙げることができる。特にAとして炭素原子数1乃至10、又は1乃至5、特には炭素原子数3の炭化水素基が挙げられる。Aはヒドロキシル基および/又は炭素数1乃至3のアルキル基で置換されていても良いフェニル基である。Aはポリスチレン、又は架橋化多孔質ポリスチレンが好ましく、架橋化多孔質ポリスチレンが特に好ましい。
【化17】
【0070】
本発明において、キレート樹脂(A)は一般的に以下の金属吸着能を示す。
【0071】
式(A-1)と式(A-2)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCa、Cd、Cr、Cs、Cu、Fe、Ir、La、Mg、Os、Pd、Pt、Rh、Ru、Sc、Sn、Zn等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。特にSn、そのイオン、その金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に最適である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(A-1)のキレート樹脂は室町ケミカル社からキレート樹脂、商品名MuromacXMS-5418として入手することができる。式(A-2)のキレート樹脂はピュロライト社からキレート樹脂、商品名S920として入手することができる。
【0072】
式(A-3)と式(A-4)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばAg、Cu、Fe、Os、Pd、Rh、Sc、Sn等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。特に有機溶剤中のパラジウムイオンの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(A-3)または式(A-4)のキレート樹脂はピュロライト社からキレート樹脂商品名S914として入手することができる。また室町ケミカル社からキレート樹脂、商品名MuromacXMS-5812とし
て入手することができる。
【0073】
キレート樹脂に用いられる官能基としては、式(A-1)乃至式(A-4)に示す、チオウロニウム基、チオウレア基が好ましいが、式(B-1)乃至式(B-15)のキレート樹脂を用いることも可能であり。キレート樹脂の構造は式(A-1)乃至式(A-4)に限定されるものではない。
【化18】
【0074】
式(B-1)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばAg、Cu、Hg、Ir、Os、Pb、Pd、Pt、Ru、Sc、Sn等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-1)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばSiliCycle社から金属スカベンジャー、商品名Si-Thiolとして入手することができる。
【0075】
式(B-2)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCo、Ni、Cu、Ag、W、Pb等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉するに有効である。特にRu、そのイオン、その金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に最適である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-2)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばSiliCycle社から金属スカベンジャー、商品名Si-TMTとして入手することができる。
【0076】
式(B-3)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばAg、Cu、Fe、Os、Pd、Rh、Sc、Sn等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-3)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばオルガノ(株)からキレート樹脂、商品名IRC76-HGとして入手することができる。
【0077】
式(B-4)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCd、Co、Cr、Cu、Fe、Hg、Ni、Pb、Pd、Pt、Ru、W、Zn等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。特にPd、Pt、Cr、W、Zn等の金属、そのイオン、その金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に最適である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-4)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばSiliCycle社から金属スカベンジャー、商品名Si-Amineとして入手することができる。
【0078】
式(B-5)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばFe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Os、Pt、Hg等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-5)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えば三菱化学(株)製、商品名CR20として入手することができる。
【0079】
式(B-6)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばMg、Al、K、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、As、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ba、W、Pb、Co等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-6)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例
えばSiliCycle社から金属スカベンジャー、商品名Si-Trisamineとして入手することができる。
【0080】
式(B-7)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCd、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、Os、Pd、Rh、W、Zn等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。特にFe、そのイオン、その金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に最適である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-7)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばSiliCycle社から金属スカベンジャー、商品名Si-Imidazoleとして入手することができる。
【0081】
式(B-8)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCo、Cr、Fe、Pd等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。特にCo、Crの金属の捕捉に最適である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-8)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばSiliCycle社から金属スカベンジャー、商品名Si-TBDとして入手することができる。
【0082】
式(B-9)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCo、Cr、Fe、Pd等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-9)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばピュロライト(社)からキレート樹脂、商品名S910として入手することができる。
【0083】
式(B-10)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばFe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Os、Pt、Hg等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-10)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばSiliCycle社から金属スカベンジャー、商品名Si-PHIとして入手することができる。
【0084】
式(B-11)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCo、Cr、Fe、Pd等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-11)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばReaxa QuadraPure社から金属スカベンジャー、商品名MPAとして入手することができる。
【0085】
式(B-12)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCo、Cr、Cs、Fe、Ni、Os、Pd、Rh、Sc、Sn等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。特に金属パラジウムの捕捉に最適である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-12)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばSiliCycle社から金属スカベンジャー、商品名Si-TAAcOHとして入手することができる
【0086】
式(B-13)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCo、Cr、Fe、Pd等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-13)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばオルガノ(株)から金属スカベンジャー、商品名IRC748として入手することができる。
【0087】
式(B-14)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、種々の条件下で多くの金属を捕捉することができ、例えばCo、Cr、Fe、Pd等の金属、金属イオンや、それらの金属水酸化物コロイド、金属酸化物コロイドの捕捉に有効である。官能基量は金属吸着剤1g当たり、0.1ミリモル乃至5ミリモル程度の割合で含有することができる。式(B-14)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えばオルガノ(株)から金属スカベンジャー、商品名IRC747UPSとして入手することができる。
【0088】
式(B-15)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤は、例えば三菱ケミカル(株)製、商品名CRB03、CRB05として入手することができる。
【0089】
[ゲル型の担持体を有するスルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂(C)]
また、本発明の金属除去方法において、キレート樹脂(A)はゲル型スルホン酸イオン交換樹脂と混合し使用することもできる。キレート樹脂(A)は1種を単独にて使用することも、又は2種以上の組み合わせにてしようすることも可能である。
【0090】
ゲル型の担持体を有するスルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂(C)において、担体としては、例えばポリスチレン、又は架橋化ポリスチレン等を用いることができる。多孔質型の担体の場合、マイクロポーラスのサイズは一般的に20Å乃至1000Åであるが、上記ゲル型の担体は、マイクロポーラスのサイズが20Å乃至500Åが好ましい。しかし、マイクロポーラスのサイズは使用する溶媒種によっても異なるため、上記値に限定されるものではない。
【0091】
ゲル型の担持体を有するスルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂(C)は、好ましくは式(C-1)の単位構造を有する高分子物質を含む金属吸着剤である。スルホ基がCを介してCに結合している。担持体のマイクロポアサイズとしては、20Å乃至1000Åが好ましく、20Å乃至500Åがより好ましい。
は単結合を表すか、又はCと官能基を結びつける連結基を表し、該連結基は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基を挙げることができる。特にCとして炭素原子数1乃至5、又は1乃至3、特には炭素原子数1のアルキレン基を介して、単体の単位構造Cに連結している構造が挙げられる。
【0092】
式(C-1)のゲル型の担持体を有するスルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂において、担体としては、ポリスチレン、又は架橋化ポリスチレンであることが好ましい。従って、Cとしてはポリスチレンの単位構造を挙げることができる。
式(C-1)のゲル型の担持体を有するスルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂は、例えばオルガノ(株)製、商品名ORLITE DS-1、室町ケミカル社製XSC-1115-Hとして入手することができる。
【化19】
【0093】
本発明の溶液中の金属不純物を除去する金属吸着剤は、有機溶剤を含用する溶液中における使用において有効である。
【0094】
処理する溶液のpHは、高い酸性度やアルカリ度ではなく、中性付近が好ましいが、例えばpH3乃至11、又は4乃至10、又は5乃至9、又は6乃至8の付近で用いることが可能である。
【0095】
本発明の金属吸着剤において、ゲル型の担持体を有するスルホ基含有カチオン性イオン交換樹脂(C)とキレート樹脂(A)を、0.1乃至100:1、又は1乃至50:1、又は、1乃至10:1の質量割合にて含有することができる。
【0096】
溶液中の除去される金属不純物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属以外の金属が主な対象であるが限定されない。例えば多価金属元素、そのイオン、その水酸化物コロイド、その酸化物コロイドが吸着除去される対処である。それらは金属が第3周期乃至第7周期であり、且つ第1族乃至第14族の多価金属元素、多価金属イオン、又はそれらの金属水酸化物若しくは金属酸化物のコロイド物質である。多価金属元素は触媒として0価金属を用い、それがイオン化することなく、生成物中に金属として残存する場合がある。
【0097】
[金属不純物が低減された材料溶液の製造方法]
本発明は、精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液を準備する工程、上記の金属吸着剤と共にポリエチレン容器に上記被精製材料溶液及び該金属吸着剤を充填する工程、被精製材料及び金属吸着剤を含む溶液を撹拌する工程、及び被精製材料及び金属吸着剤を含む溶液から金属吸着剤を除去して精製溶液を得る工程を含む、材料溶液の精製方法も対象とする。
また、上記精製する全工程がバッチ処理で為す材料溶液の精製方法も対象とする。
また、精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液を準備する工程、及び上記の金属吸着剤を充填したカラムに上記被精製材料溶液を通液して精製溶液を得る工程を含む、材料溶液の精製方法も対象とする。
【0098】
精製すべき被精製材料とは、原材料として用いる物質に天然物として本来含まれている金属不純物、高純度化処理を行ったが、なおも残存する金属不純物、その原材料を合成する時に触媒として用いた金属不純物などを含む材料が挙げられる。
特に、被精製材料がポリアミック酸エステルの場合、一般的な金属除去法として、マイクロポーラス型のスルホン酸イオン交換樹脂を使用して不純物除去する方法が考えられるが、ポリアミック酸エステルの変性を引き起こす為、適用が困難であり、本発明の方法が特に有効である。このポリアミック酸エステルは不純物としてNa、K、Al、Cr、Cu、Fe、Ni、Pb等の金属、その金属イオン、金属水酸化物若しくは金属酸化物のコ
ロイドを含んでいて、これら金属不純物を本発明の金属吸着剤で吸着して除去し、不純物を低減させることができる。
【0099】
精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液には、被精製材料に由来する金属不純物がその溶液中に数ppm乃至数百ppm含有されており、本願発明の金属吸着剤を適用することで、その溶液中の金属不純物を数ppb乃至100ppb以下に低減されるまで適用することができる。
【0100】
本発明はまた、不純物が低減された材料溶液の製造方法も対象とする。本製造方法は、詳細には、精製すべき被精製材料を液体に溶解した被精製材料溶液がタンクに入れる工程と、上記タンクと上記の金属吸着剤が充填されたカラムとを接続する循環路内で被精製材料溶液を循環し、被精製材料溶液中の多価金属元素、金属イオン又はそれら金属のコロイド物質を前記金属吸着剤に吸着させて除去し、精製材料溶液を得る工程を含む、金属不純物が低減された材料溶液の製造方法に関する。このタンクとカラムとを配管で結ぶ流路の一部に精製された材料を含む精製材料溶液の取り出し口が設けられ、バルブで開閉することが可能であり、精製材料溶液を配管で結ばれた流路から取り出すことが可能である。また、配管の一部にはポンプを設置し、そのポンプを通じて被精製材料溶液を循環することが可能である。被精製材料溶液の循環は外部からの不純物の混入を避けるために閉鎖系で行われることが好ましい。
【0101】
本発明では精製すべき被処理材料を溶解する液体(有機溶剤)が、予め精製された液体(又は前処理液体と称する)とすることができる。前処理液体を用いることで被精製材料溶液(精製前の組成物溶液)とした場合に、より効率的に高度に不純物が低減された材料溶液(精製後の組成物溶液)が得られる。
【0102】
不純物が低減された材料溶液は、その材料溶液から溶媒を除去し不純物が低減された材料を得ることが可能である。また、不純物が低減された材料溶液をそのまま材料が含有された組成物溶液とすることもできる。
【0103】
前処理液体を用いる場合に、精製された液体の精製が、精製すべき材料の被精製材料溶液を精製する閉鎖系で予め行われる方法(1)、又は上記閉鎖系とは別の閉鎖系で予め行われ精製すべき材料の被精製材料溶液を精製する閉鎖系にパイプで送られる方法(2)が挙げられる。
【0104】
前記方法(1)は液体(有機溶剤)の精製と精製すべき材料の被精製材料溶液とを、同一の装置で行う場合であり、液体(有機溶剤)の精製を行った後に材料を仕込み、被精製材料溶液とした後に、再びその装置で被精製材料溶液の精製が行われる方法である。
【0105】
前記方法(2)は液体(有機溶剤)の精製と精製すべき材料の被精製材料溶液とを、別の装置で行う方法である。液体(有機溶剤)の精製を別の精製系で行った後、一旦タンクに液体を保管するか、又は直接に配管(パイプ)で精製すべき材料の被精製材料溶液の精製を行う精製系に送液する方法である。
【0106】
本発明は更に被精製材料が溶解した組成物をキレート樹脂で処理した後にフィルターでろ過することにより、より効果的に金属不純物を除去することができる。
用いるフィルターの材質としては、PEもしくはPTFEが好ましく。PTFEが最も好ましいが、膜種を限定するものではない。
フィルターの孔径としてはより小さいほうが金属不純物を除去する効率が高いため好ましいが、被精製材料溶液の粘度を考慮すると10μm~0.2μmが好ましく、1μm~0.2μmがより好ましい。
また、被精製材料溶液を3nm~1nm程度の孔径のフィルターを通過する程度に希釈すれば、より効率よく金属不純物を除去することができる。
【0107】
本発明では、被精製材料溶液として、半導体製造のパッケージング工程で使用される感光性絶縁膜として使用されるポリアミック酸エステル溶液とすることができる。
【0108】
前記、被精製材料溶液が、有機溶剤を含用する溶液であるとき、精製すべき被精製材料を溶解する液体(すなわち溶剤)としては、例えば水;n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール、メチルイソブチルカルビノール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブ
チルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のアセテート系溶媒;N-メチルホルムアミド、N,N-ジ
メチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができる。これらの溶剤は1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。上述した溶媒の中でも特に4-メチル-2-ペンタノール、メチルイソブチルカルビノール等のものアルコール系溶媒;プロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のエーテル系溶媒;乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、アセト酢酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート等のエステル系溶媒;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン等のケトン系溶媒;N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等の含窒素系溶媒が好ましい。
【0109】
さらに、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンが最も好ましい。
【実施例
【0110】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0111】
下記、合成手順にてポリアミック酸エステルを合成した。本明細書の下記合成例に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する。)による測定結果である。測定には東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8320GPC)を用い、測定条件等は次のとおりである。
GPCカラム:KD-803,KD-805(Shodex製)
カラム温度:50℃
溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(関東化学,特級),臭化リチウム一水和物(関東化学,鹿特級)(30mM)/リン酸(Aldrich)(30mM)/テトラヒドロフラン(関東化学,特級)(1%)
流量:1.0mL/分
標準試料:ポリスチレン(ジーエルサイエンス製)
【0112】
本明細書の下記実施例に示すNMRスペクトルの測定は、1H-NMRスペクトルは、JNM-ECX500(500 MHz,日本電子株式会社製)により測定した。
【0113】
<製造例1> ジカルボン酸ジエステル(1)の合成
4,4’-ビフタル酸二無水物(東京化成工業株式会社)200.00g(0.68mol)を2リットル容量の四口フラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Aldrich)176.92g(1.366mol)とヒドロキノン(東京化成工業株式会社)0.74g(0.007mol)とγ―ブチロラクトン(関東化学,鹿特級)600gを入れて23℃で攪拌し、ピリジン(関東化学,脱水)108.63g(1.36mol)を加えた後に50℃まで昇温し、50℃で2時間撹拌することで、下記式(9)で表されるジカルボン酸ジエステル(1)を含む溶液を得た。
【化20】
【0114】
<製造例2> ポリアミック酸エステルとしてのポリマー(2)の合成
製造例1で調製した溶液82.46gとγ―ブチロラクトン19.45gを500ミリリットル容量の四口フラスコに入れ、約5℃において、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC,東京化成工業株式会社)13.13gをγ-ブチロラクトン30gに溶解した溶液を攪拌しながら0.5時間かけて反応液に滴下し、滴下後、0.5時間撹拌した。続いて2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(東京化成工業株式会社)19.68gをN-メチル-2-ピロリジノン(関東化学,鹿特級)30gに溶解したものを攪拌しながら2時間かけて滴下した。その後、約25℃に昇温し、6時間攪拌した後、エタノール(関東化学,特級)4.5gを加えて1時間攪拌した
【0115】
得られた反応混合物を1500gのメタノール(関東化学,特級)に加えて粗ポリマーから成る沈殿物を生成した。上澄み液をデカンテーションして粗ポリマーを分離し、N-メチル-2-ピロリジノン150.0gに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を2250gの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、メタノール600gで二回洗浄し、真空乾燥して粉状のポリマー(2)を得た。ポリマー(2)の分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は8,016であった。収率は73.6%であった。この反応生成物ポリマー(2)は、下記式(10)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化21】
【0116】
(対象となるポリアミック酸エステルの金属吸着剤による変性確認とメタル除去能評価)対象となるポリアミック酸エステルを有機溶媒に溶かし、ポリアミック酸エステル溶液を作製した。全容100mLのポリエチレン製ボトルにポリアミック酸エステル溶液と金属吸着剤を加え、実施例1乃至実施例5、及び比較例1として、評価サンプルを作製した。
(金属吸着剤の導入量はポリアミック酸エステル 溶液に対する質量%とした。)室温で4時間撹拌し、デカンテーションにより、精製溶液を作製した。
【0117】
溶媒としては、CYH(シクロヘキサノン)を用いた。ポリアミック酸エステルとしては、式(10)で表されるポリアミック酸エステル(以下、PAE-1と称する)を使用した。キレート樹脂としては、室町ケミカル社製XMS-5418、ピュロライト社製S920、ピュロライト社製S914用いた。比較例として多孔質型スルホン酸イオン交換樹脂オルガノ(株)製ORLITE DS-4を用いた。
ポリアミック酸エステルの変性の有無を確認するためGPC、NMRを測定し、ポリアミック酸エステルの変性の有無を評価した。GPC、NMRの測定値が処理前の値に対し、10%以下の変化率となる場合を変性無く、処理性良好と判断した。
GPCの測定条件は、GPC装置(商品名HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)、GPCカラム(商品名ShodexKF803L、KF802、KF801、昭和電工製)、カラム温度は50℃、溶離液(溶出溶媒)は溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(関東化学,特級),臭化リチウム一水和物(関東化学,鹿特級)(30mM)/リン酸(Aldrich)(30mM)/テトラヒドロフラン(関東化学,特級)(1%)、流量(流速)は1.0ml/min、標準試料はポリスチレン(ジーエルサイエンス製)を用いて行った。
NMRスペクトルの測定は、1H-NMRスペクトルは、JNM-ECX500(500 MHz,日本電子株式会社製)により測定した。
また、メタル含有量を測定するため、メタル精製品を1%に希釈し、Agilent社製ICP-MS7500を用いて6元素(Na、Al、K、Fe、Cu、Pb)のメタル分析を実施。溶質濃度に換算し、Na150ppb、Fe300ppb含有していることを確認。ターゲット値以下までメタル 各メタル100ppb以下まで濃度が低減したものをメタル除去能良好と評価した。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、半導体デバイス製造時のパッケージング工程に用いられる感光性絶縁膜として使用されるポリアミック酸エステルを吸着、変性することなく、キレート樹脂(A)により被精製材料が溶解した組成物中から金属不純物を除去し、高純度化された精製材料組成物を得ることができる。