(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ウナギ目魚類仔魚用の飼料
(51)【国際特許分類】
A23K 50/80 20160101AFI20240724BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20240724BHJP
【FI】
A23K50/80
A23K10/20
(21)【出願番号】P 2023048907
(22)【出願日】2023-03-24
【審査請求日】2023-03-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼2022年3月27日「令和4年度日本水産学会春季大会」にて発表 ▲2▼2022年3月26日「令和4年度日本水産学会春季大会」にて配布
(73)【特許権者】
【識別番号】506422870
【氏名又は名称】株式会社 いらご研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三河 直美
(72)【発明者】
【氏名】笹原 亮
(72)【発明者】
【氏名】山田 祥朗
(72)【発明者】
【氏名】岡村 明浩
(72)【発明者】
【氏名】堀江 則行
(72)【発明者】
【氏名】須▲崎▼ 健太
(72)【発明者】
【氏名】山本 紘義
(72)【発明者】
【氏名】堀内 萌未
(72)【発明者】
【氏名】塚本 勝巳
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083798(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059429(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/201035(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105265344(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106360108(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00-50/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏卵黄のグラニュール画分を含むウナギ目魚類仔魚用飼料。
【請求項2】
前記グラニュール画分の主成分が高密度リポタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載のウナギ目魚類仔魚用飼料。
【請求項3】
前記グラニュール画分は、鶏卵黄の沈殿物から得られる請求項1に記載のウナギ目魚類仔魚用飼料。
【請求項4】
6日齢からシラスウナギに変態するまでの期間
のウナギの仔魚に給餌するための請求項1に記載のウナギ目魚類仔魚用飼料。
【請求項5】
請求項3に記載のウナギ目魚類
仔魚用飼
料の製造方法であって、
液卵黄と水を加えて攪拌する攪拌工程、
前記攪拌で得た液卵黄を遠心分離し、上澄み区分および沈殿物に分離する分離工程、
前記沈殿物を乾燥または冷凍する工程からなる、ウナギ目魚類仔魚用飼料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウナギ目魚類仔魚の飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
ウナギ目魚類仔魚用飼料の主原料として、アブラツノザメの卵(サメ卵)を用いる。アブラツノザメは成熟までに10年以上を要し、産仔数も少ないため、漁獲圧力に耐えられない虞がある。またアブラツノザメは、絶滅危惧種に指定されている生物である。そのためアブラツノザメに代わるウナギ目魚類仔魚用飼料の原料の開発が望まれている。たとえば、特許文献1には、乳タンパク質及び鶏卵黄末を含有するウナギ仔魚用飼料が開示されている。この飼料においては、アブラツノザメ卵に代え、ウナギ仔魚用飼料の原料として利用されていなかった脱脂粉乳などの乳タンパク質を用い、これらに鶏卵黄末や酵素処理魚粉を配合した飼料を作製する。また非特許文献1には、アブラツノザメの卵に代えて、鶏卵卵黄および外骨格を有しないナンキョクオキアミを含有するウナギ仔魚用飼料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Aquaculture Res. 2013, 44:1531-1538. Hen egg yolk and skinned krill as possible foods for rearing leptocephalus lavae of Anguilla japonica Temmincke & Schlegel.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の問題点を解決し、シラスウナギ作出実績のある鶏卵黄をベースとした飼料を、飼育成績の良い飼料に改良したウナギ目魚類仔魚用の飼料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に従うウナギ目魚類仔魚用の飼料は、鶏卵黄のグラニュール画分を含むウナギ目魚類仔魚用飼料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のウナギ目魚類仔魚用の飼料によれば、シラスウナギ作出実績のある鶏卵黄ベース飼料を飼育成績の良い飼料に改良することができるため、シラスウナギの生産性をより増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ウナギ目魚類の仔魚用の飼料に用いられる鶏卵黄のグラニュール画分の製造方法の一例を示す概略フローチャートである。
【
図2a】ウナギ仔魚の短期飼育(20日齢)における仔魚の全長および体高のLot.Aのグラフである。
【
図2b】ウナギ仔魚の短期飼育(20日齢)における仔魚の全長および体高のLot.Bのグラフである。
【
図3】ウナギ仔魚の長期飼育(207日齢)における仔魚の全長および体高のグラフである。
【
図4a】ウナギ仔魚の長期飼育(207日齢)における仔魚の全長の分布のグラフである。
【
図4b】ウナギ仔魚の長期飼育(207日齢)における仔魚の体高の分布のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態の飼料の製造方法の各工程について説明する。
実施形態によれば、ウナギ目魚類の仔魚用の飼料が提供される。
【0010】
図1は、実施形態に従うウナギ目魚類の仔魚用の飼料に用いられる鶏卵黄のグラニュール画分の製造方法の一例を示す概略フローチャートである。当該製造方法は、鶏卵黄の液卵黄を攪拌し、遠心分離し、上澄みおよび沈殿物に分離する分離工程および得られた沈殿物を乾燥させる、又は冷凍させる工程を含む。
【0011】
各工程について、以下に詳しく説明する。
分離工程において、鶏卵黄の液卵黄を用意する。液卵黄に水を加えて攪拌し、十分に均一化させて液卵黄溶液を得る。水は液卵黄と等量であることが好ましい。また液卵黄の攪拌時間は好ましくは5~30分間であり、より好ましくは30分間である。
その後、攪拌によって得た液卵黄溶液を遠心分離し、上澄み区分および沈殿物を得る。上澄み区分および沈殿物は、例えば10℃の環境下において、10,000Gで30分間、遠心分離を行うことによって得る。
【0012】
本発明において、鶏卵黄の遠心分離によって得られる上澄み区分は、プラズマ画分といい、主成分は低密度リポタンパク質(LDL)である。一方、鶏卵黄の遠心分離によって得られる沈殿物は、グラニュール画分といい、主成分は高密度リポタンパク質(HDL)である。
【0013】
鶏卵黄を遠心分離して得たプラズマ画分およびグラニュール画分の成分の組成の一例を表1に示す。
【0014】
【0015】
表1に示す通り、プラズマ画分は脂質含量が高い。一方グラニュール画分は脂質含量が低い。また鶏卵黄のプラズマ画分は比重が低く、一方鶏卵黄のグラニュール画分は比重が高いため、これらの成分の比重差を利用することにより、遠心分離で分離することができる。
【0016】
以上のようにして、鶏卵黄に由来するグラニュール画分を得る。
【0017】
本発明の鶏卵黄のグラニュール画分を含むウナギ目魚類仔魚用の飼料は、鶏卵黄のグラニュール画分に添加物として、ペプチド類、糖類、ミネラル、ビタミン、アミノ酸類などを加えてもよい。ペプチド類としては、鶏卵分解物、例えば卵白分解物や卵黄分解物などやその他動植物原料由来の分解物が添加可能である。
ウナギ目魚類仔魚用の飼料に含まれる鶏卵黄のグラニュール画分の割合は、好ましくは5~80%であり、より好ましくは10~50%である。
【0018】
次に、ろ過工程について説明する。分離工程によって得られた沈殿物に水を加え、十分に攪拌し、均一化させる。水は沈殿物と等量であることが好ましい。攪拌は好ましくは、1~10℃、さらに好ましくは4℃の環境で行い、攪拌時間は10~60分間行うことが好ましい。その後、攪拌によって得られた沈殿物溶液をろ過し、ろ過溶液を得る。ろ過に使用するフィルターは、例えば、ろ過フィルターの材質がステンレス性で、ろ過フィルターのメッシュサイズが30メッシュで、ろ過フィルターのメッシュ線径が0.3mmで、ろ過フィルターのメッシュの目の開きが0.55mmで、ろ過フィルターのメッシュ開孔率が41.9%のフィルターを使用することが好ましい。ろ過速度は好ましくは、10~50m/s、さらに好ましくは30m/sである。
【0019】
その後、ろ過工程で得られたろ過溶液を乾燥または冷凍させて、鶏卵黄のグラニュール画分を得る。ろ過溶液の乾燥はスプレードライなどで行うことができる。なお、前記分離工程で得られた沈殿物を直接乾燥または冷凍させて、鶏卵黄のグラニュール画分を得ることもできる。
【0020】
以上に説明した実施形態の飼料の製造方法によれば、ウナギ目魚類の仔魚の成長率をより簡便に向上することができ、シラスウナギの生産性を増大させることが可能になる。
【0021】
以下に、図面を参照しながら種々の実施形態について説明する。
ウナギの仔魚とは、例えば、ウナギの卵から孵化後0日目~5日目から、約400日目までのウナギの仔魚である。ウナギの仔魚は、例えば、ウナギの孵化仔魚と呼ばれる仔魚(プレレプトセファルス)、或いはレプトセファルスからシラスウナギに至るまでのウナギの仔魚である。ウナギの仔魚は、以下単に「仔魚」とも称する。
【0022】
ウナギの仔魚は、給餌時以外の時間は飼育水の入った水槽に収容されている。例えば、給餌時以外の時間とは、孵化から餌を食べる成長段階までの間、例えば、孵化後0日目~5日目までの間である。或いはそれ以降の成長段階における給餌時以外の時間である。
【0023】
飼育水として、例えば、希釈海水(例えば淡水に対する海水の割合50~99%)を用いることができるが、50%希釈海水(塩分濃度17~18‰)であることが好ましい。飼育水の温度は、例えば、20~27℃であることが好ましく、より好ましくは、23~25℃である。
【0024】
ウナギの仔魚は、例えば6~60mmの大きさを有する。このような大きさのウナギの仔魚の飼育水中の密度は、例えば、19Lのクライゼル水槽を用いる場合、1槽あたりに500~2000尾であることが好ましい。
【0025】
水槽として、例えば、角柱型水槽、円筒型水槽、クライゼル水槽(以下、「太鼓型水槽」とも称する)、楕円型水槽、又はボール型水槽などを用いることが可能である。水槽の大きさは、所望の仔魚の数や密度によって選択されればよい。水槽は、飼育水の給水及び排水ができるものであれば、飼育水をより簡単に清潔な状態で維持することができる。また例えば、水槽は、飼育水の給水及び排水により水流を起こすことができるものであれば、更に簡単に清潔な状態で維持することができる。水槽として、クライゼル水槽を用いることが好ましい。
【0026】
給餌回数は、例えば、1日5回繰り返すことによって、ウナギ仔魚は十分に餌を摂取することができる。
【0027】
以下に、実施形態のウナギ目魚類用仔魚用飼料の効果を評価した例を記載する。
【0028】
例1 短期飼育(6~20日齢)における、各飼料を与えたウナギ仔魚の成長の比較
・実験方法
[試験用飼料の材料組成]
まず、飼料を調製した。飼料の材料の組成を表2に示す。
【0029】
【0030】
表2の各飼料をウナギ仔魚に与え、20日齢での仔魚の全長および体高を測定し、比較した。
【0031】
・実験結果
ウナギ仔魚の短期飼育(20日齢)における仔魚の全長および体高の比較を
図2aおよび
図2bに示す。
鶏卵黄をベースとした飼料を与えた仔魚、鶏卵黄のプラズマ画分をベースとした飼料を与えた仔魚、鶏卵黄のグラニュール画分をベースとした飼料を与えた仔魚、およびサメ卵をベースとした飼料を与えた仔魚の、全長および体高をそれぞれ測定し、各仔魚の比較を行った。実験には異なる親魚由来の仔魚ロット、Lot.AおよびLot.Bを供した。
【0032】
Lot.Aの20日齢における、仔魚の全長および体高の平均値および多重比較検定の結果を
図2aに示す。グラフ上のアルファベットは多重比較検定の結果を示しており、異なるアルファベットが記載された実験区画間には有意差があり、同じアルファベットが記載された実験区画間には有意差がないことを示している。
【0033】
鶏卵黄ベースの飼料を与えたウナギ仔魚は、全長の平均値±標準偏差が8.72±0.69mm、体高の平均値±標準偏差が0.56±0.13mm、また鶏卵黄のプラズマ画分ベースの飼料を与えたウナギ仔魚は、全長の平均値±標準偏差が8.31±0.85mm、体高の平均値±標準偏差が0.47±0.09mmであった。一方、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えたウナギ仔魚では、全長の平均値±標準偏差が9.75±0.86mm、体高の平均値±標準偏差が0.67±0.19mmであった。鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料は、鶏卵黄ベースの飼料および鶏卵黄のプラズマ画分ベースの飼料と比べて、優れた成長効果であることが示された。
またサメ卵ベースの飼料を与えたウナギ仔魚では、全長の平均値±標準偏差が9.62±0.60mm、体高の平均値±標準偏差が0.64±0.10mmであった。鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料は、サメ卵ベースの飼料と同等の成長効果があることが示され、全長および体高の平均値に有意差がなかった。
【0034】
Lot.Bの20日齢における仔魚の全長および体高の平均値および多重比較検定の結果を
図2bに示す。
図2aと同様、グラフ上のアルファベットは多重比較検定の結果を示しており、異なるアルファベットが記載された実験区画間には有意差があり、同じアルファベットの実験区画間には、有意差がないことを示している。
【0035】
Lot.Bでは、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えたウナギ仔魚では、全長の平均値±標準偏差が9.47±0.64mm、一方でサメ卵ベース飼料を与えたウナギ仔魚では、全長の平均値±標準偏差が8.97±1.14mmであった。グラニュール画分ベースの飼料を与えたウナギ仔魚は、サメ卵ベースの飼料を与えたウナギ仔魚と比較して大きな値を示し、さらにこれらは有意差があった。
また、それ以外の各飼料を与えた仔魚の全長および体高の比較は、Lot.Aと同様の傾向を示した。
【0036】
Lot.Bの鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料は、鶏卵黄ベースの飼料および鶏卵黄のプラズマ画分ベースの飼料と比べて優れた成長効果が得ることができた。また鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料はサメ卵ベースの飼料と比べて同等以上の成長効果を得ることができた。
【0037】
したがって、ウナギ仔魚の短期飼育(6~20日齢)において、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料は鶏卵黄ベースの飼料および鶏卵黄のプラズマ画分ベースの飼料よりも優れたウナギ仔魚の成長効果を得ることができ、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料のウナギ仔魚の成長効果は、サメ卵ベースの飼料と同等以上であったことが明らかとなった。
【0038】
例2 長期飼育(6~250日齢)における各飼料を与えたウナギ仔魚の成長の比較
・実験方法
[試験用飼料の材料組成]
まず、飼料を調製した。飼料の材料の組成を表3に示す。
【0039】
【0040】
表3の各飼料をウナギ仔魚に与え、207日齢での生残率、仔魚の全長および体高、および250日齢でのシラスウナギ変態率を比較した。
・実験結果
生残率は、207日齢までに死亡したウナギの仔魚を数え、算出した。207日齢での生残率の結果を表4に示す。
【0041】
【0042】
鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えたウナギの仔魚の生残率は、207日齢において、20.1%であり、鶏卵黄ベースの飼料を与えたウナギの仔魚の生残率が14.1%であった。鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えたウナギ仔魚の方が、鶏卵黄ベースの飼料を与えたウナギ仔魚に比べて、生残率が優れていることが示された。
【0043】
207日齢での全長および体高の平均値および多重比較検定の結果を
図3に示す。
図2aおよび
図2bと同様、グラフ上のアルファベットは多重比較検定の結果を示しており、異なるアルファベットが記載された実験区画間には有意差があることを示し、同じアルファベットの実験区画間には有意差がないことを示している。
【0044】
鶏卵黄をベースとした飼料を与えた仔魚、鶏卵黄のグラニュール画分をベースとした飼料を与えた仔魚、およびサメ卵をベースとした飼料を与えた仔魚の全長および体高をそれぞれ測定し、各仔魚の比較を行った。鶏卵黄ベースの飼料を与えたウナギ仔魚は、全長の平均値±標準偏差が40.00±6.47mm、体高の平均値±標準偏差が4.36±1.06mmであった。一方、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えたウナギ仔魚では、全長の平均値±標準偏差が43.16±5.41mm、体高の平均値±標準偏差が5.15±1.14mmとなった。鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料は、鶏卵黄ベースの飼料より、優れた成長効果であることが示された。
【0045】
またサメ卵ベース飼料を与えたウナギ仔魚では、全長の平均値±標準偏差が43.47±8.03mm、体高の平均値±標準偏差が5.41±1.48mmとなった。鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えたウナギ仔魚は、サメ卵ベースの飼料を与えたウナギ仔魚と比較して、全長および体高の平均値に有意差がなく、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料はサメ卵ベース飼料と同等の成長効果が得られたことが示された。
【0046】
したがって、ウナギ仔魚の長期飼育(6~250日齢)において、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料は鶏卵黄ベースの飼料よりも優れたウナギ仔魚の成長効果を得ることができ、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料のウナギ仔魚の成長効果は、サメ卵ベースの飼料と同等であった。
【0047】
207日齢での全長および体高分布の比較を
図4に示す。
図4は、鶏卵黄をベースとした飼料を与えた仔魚、鶏卵黄のグラニュール画分をベースとした飼料を与えた仔魚、およびサメ卵をベースとした飼料を与えた仔魚の全長および体高をそれぞれ測定し、全長および体高を分布に示したグラフである。鶏卵黄ベースの飼料を与えたウナギ仔魚では、全長が35mmから40mmの区分に27.03%と最も高い分布を示し、次いで30mmから35mmの区分に25.68%の分布を示した。また体高は3mmから4mmの区分に36.49%と最も高い分布を示し、次いで2mmから3mmに24.32%の分布を示した。
鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えたウナギ仔魚では、全長が35mmから40mmの区分に38.39%の分布を示し、次いで40mmから45mmの区分に24.11%の分布を示した。また体高は4mmから5mmの区分に31.25%の分布を示し、次いで3mmから4mmの区分に27.68%の分布を示した。
サメ卵ベースの飼料を与えたウナギ仔魚では、全長が40mmから45mmの区分、および45mmから50mmの区分にそれぞれ24.31及び23.61%の分布を示した。また体高は、5mmから6mmの区分に27.08%と最も高い分布を示し、次いで4mmから5mmに22.29%の分布を示した。
したがって、ウナギ仔魚の長期飼育(6~250日齢)において、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えた仔魚は、鶏卵黄ベースの飼料を与えた仔魚と比較して、仔魚の全長および体高のどちらの値も大きい値に高い分布を示し、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料の成長効果が示された。
【0048】
250日齢でのシラスウナギ変態率の結果を表5に示す。
【0049】
【0050】
250日齢におけるシラスウナギへの変態率は、鶏卵黄ベースの飼料を与えたウナギの仔魚のシラスウナギへの変態率は、0.3%であり、鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えたウナギの仔魚のシラスウナギへの変態率が0.9%であり、サメ卵ベースの飼料を与えたウナギ仔魚のシラスウナギへの変態率は、4.1%であった。
【0051】
鶏卵黄のグラニュール画分ベースからなる飼料を与えたウナギ仔魚のシラスウナギ変態率は、鶏卵黄ベースからなる飼料を与えたウナギ仔魚のシラスウナギ変態率と比較して3倍向上した。鶏卵黄ベースの飼料を与えた仔魚のシラスウナギ変態率は、サメ卵ベースの飼料を与えた仔魚のシラスウナギ変態率の1/13であった。一方で鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えた仔魚のシラスウナギ変態率は、サメ卵ベースの飼料を与えた仔魚のシラスウナギ変態率の1/5となった。鶏卵黄のグラニュール画分ベースの飼料を与えた仔魚のシラスウナギ変態率は、鶏卵黄ベースの飼料を与えた仔魚の変態率と比較して、サメ卵ベースの飼料を与えた仔魚のシラスウナギ変態率により近い値となった。
【0052】
以上に説明した例から、鶏卵黄のグラニュール画分ベースのウナギ目魚類仔魚用飼料によれば、短期飼育および長期飼育において、鶏卵黄ベースの飼料と比べて高い成長効果を示し、サメ卵ベースの飼料と同等の成長効果が得られたことが明らかとなった。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
鶏卵黄のグラニュール画分を含むウナギ目魚類仔魚用飼料。
[2]
前記グラニュール画分の主成分が高密度リポタンパク質であることを特徴とする[1]に記載のウナギ目魚類仔魚用飼料。
[3]
前記グラニュール画分は、鶏卵黄の沈殿物から得られる[1]に記載のウナギ目魚類仔魚用飼料。
[4]
6日齢からシラスウナギに変態するまでの期間の前記ウナギの仔魚に給餌するための[1]に記載のウナギ目魚類仔魚用飼料。
[5]
[3]に記載のウナギ目魚類用飼料に記載の製造方法であって、
液卵黄と水を加えて攪拌する攪拌工程、
前記攪拌で得た液卵黄を遠心分離し、上澄み区分および沈殿物に分離する分離工程、
前記沈殿物を乾燥または冷凍する工程からなる、ウナギ目魚類仔魚用飼料の製造方法。
【要約】
【課題】 シラスウナギ作出実績のある鶏卵黄をベースとした飼料を、サメ卵をベースとした飼料と遜色ない栄養価の飼料に改良したウナギ仔魚用の飼料を提供すること。
【解決手段】 実施形態のウナギ仔魚用の飼料は、鶏卵黄のグラニュール画分を含む。前記グラニュール画分は、鶏卵黄の液卵黄を遠心分離することによって得る。
【選択図】
図1