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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 19/04 20060101AFI20240724BHJP
   F28F 3/12 20060101ALI20240724BHJP
   F28F 3/06 20060101ALI20240724BHJP
   F28D 1/03 20060101ALI20240724BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240724BHJP
   B32B 15/085 20060101ALI20240724BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240724BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240724BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20240724BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240724BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20240724BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240724BHJP
   H01M 10/613 20140101ALN20240724BHJP
【FI】
F28F19/04 Z
F28F3/12 Z
F28F3/06 A
F28D1/03
B32B7/027
B32B15/085 Z
B32B15/08 E
B32B3/30
H01M10/6551
H01M10/6556
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
H01M10/613
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020000949
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021110471
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】野口 雅之
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0003505(US,A1)
【文献】特開2000-108255(JP,A)
【文献】特開2014-130845(JP,A)
【文献】特開2014-082283(JP,A)
【文献】特開2015-143107(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178343(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/112600(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0259267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 15/06
F28F 1/00 - 99/00
H05K 7/20
H01L 23/34 - 23/473
H01M 10/52 - 10/667
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口および出口が設けられた外包体と、前記外包体内に設けられ、かつ凹凸部を有するインナーフィンとを備え、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するようにした熱交換器であって、
前記外包体が、金属製の伝熱層の内面側に樹脂製の熱融着層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記外包体の熱融着層が、ポリプロピレン樹脂によって構成され、
前記インナーフィンが、金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンの凹凸部の熱融着層と、前記外包体の熱融着層とが接合一体化され、
前記インナーフィンの熱融着層が、ポリプロピレン樹脂によって構成され、
前記外包体の熱融着層として、ランダムポリプロピレン樹脂またはホモポリプロピレン樹脂が用いられ
前記インナーフィンの熱融着層として、ランダムポリプロピレン樹脂またはホモポリプロピレン樹脂が用いられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記外包体の熱融着層が、ブロックポリプロピレン樹脂層の両面にランダムポリプロピレン樹脂層が積層された積層体によって構成されている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記インナーフィンの熱融着層が、ブロックポリプロピレン樹脂層の両面にランダムポリプロピレン樹脂層が積層された積層体によって構成されている請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記外包体の熱融着層は、融点が10℃以上異なる低融点層と高融点層とを含み、
前記低融点層が前記高融点層に対し内面側に配置されている請求項1~のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記インナーフィンの熱融着層は、融点が10℃以上異なる低融点層と高融点層とを含み、
前記低融点層が前記高融点層に対し内面側に配置されている請求項1~のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記外包体は、中間領域に前記インナーフィンを収容するための凹陥部が形成されたトレイ部材と、前記トレイ部材の凹陥部を閉塞するように配置されるカバー部材とによって構成されている請求項1~のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記外包体は、前記インナーフィンを介して重ね合わせて配置される一対の前記外包ラミネート材によって構成されている請求項1~のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の伝熱層に樹脂製の熱融着層が積層されたラミネートシート等のラミネート材を用いて製作される熱交換器およびその外包ラミネート材に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の電子機器における小型高性能化に伴い、電子機器のCPU回りの発熱対策も重要となり、機種によっては水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、CPU等の電子部品に対する熱負荷を軽減するとともに、筐体内に熱をこもらせないようにして、熱による悪影響を回避する技術が従来より提案されている。
【0003】
また電気自動車やハイブリッド車に搭載される電池モジュールは、充電と放電とを繰り返し行うために電池パックの発熱が大きくなる。このため電池モジュールにおいても上記の電子機器と同様に、水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、熱による悪影響を回避する技術が提案されている。
【0004】
さらにシリコンカーバイト(SiC)製等のパワーモジュールも発熱対策として冷却板やヒートシンクを組み付ける等の対策が提案されている。
【0005】
ところで、上記のスマートフォンやパーソナルコンピュータのような電子機器では筐体が薄く、その薄い筐体内における限られたスペースに多数の電子部品や冷却器が組み込まれるため、冷却器自体も薄型のものが用いられることになる。
【0006】
従来において、小型の電子機器に組み込まれるヒートパイプ等の薄型の冷却器は一般的に、アルミニウム等の伝熱性が高い金属を加工して得られた複数の金属加工部品をろう付けや拡散接合等で接合することにより製作するようにしている(特許文献1~3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-59693号公報
【文献】特開2015-141002号公報
【文献】特開2016-189415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の小型電子機器用冷却器は、各構成部品が、鋳造や鍛造等の塑性加工や、切削等の除去加工等の金属加工(機械加工)によって製作されているが、このような金属加工は、面倒で制約も厳しいため、薄型化に限界があり、現行以上に薄型化を図ることが困難であるという課題があった。
【0009】
また従来の小型電子機器用冷却器は、各構成部品を接合する際に難易度の高いろう付けや拡散接合等の金属加工(金属間接合)を用いて製作する必要があり、製作が困難であるばかりか、生産効率が低下してコストも増大するという課題があった。
【0010】
その上さらに、従来の冷却器は、制約のある金属加工を用いて製作するため、形状や大きさを簡単に変更することができず、設計の自由度に乏しく、汎用性に欠けるという課題も抱えている。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、十分な薄型化を図ることができるとともに、設計の自由度が高く汎用性に優れる上さらに、効率良く簡単に製作できてコストも削減することができる熱交換器およびその外包ラミネート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0013】
[1]入口および出口が設けられた外包体と、前記外包体内に設けられ、かつ凹凸部を有するインナーフィンとを備え、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するようにした熱交換器であって、
前記外包体が、金属製の伝熱層の内面側に樹脂製の熱融着層が設けられた外包ラミネート材によって構成され、
前記外包体の熱融着層が、ポリプロピレン樹脂によって構成されていることを特徴とする熱交換器。
【0014】
[2]前記外包体の熱融着層は、2層以上の積層体によって構成されている前項1に記載の熱交換器。
【0015】
[3]前記外包体の熱融着層は、融点が10℃以上異なる低融点層と高融点層とを含み、
前記低融点層が前記高融点層に対し内面側に配置されている前項2に記載の熱交換器。
【0016】
[4]前記インナーフィンが、金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンの凹凸部の熱融着層と、前記外包体の熱融着層とが接合一体化され、
前記インナーフィンの熱融着層が、ポリプロピレン樹脂によって構成されている前項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0017】
[5]前記インナーフィンの熱融着層は、2層以上の積層体によって構成されている前項4に記載の熱交換器。
【0018】
[6]前記インナーフィンの熱融着層は、融点が10℃以上異なる低融点層と高融点層とを含み、
前記低融点層が前記高融点層に対し外面側に配置されている前項4または5に記載の熱交換器。
【0019】
[7]前記インナーフィンが、金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層が設けられた内芯ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンの凹凸部の熱融着層と、前記外包体の低融点層とが接合一体化されている前項3に記載の熱交換器。
【0020】
[8]前記外包体は、中間領域に前記インナーフィンを収容するための凹陥部が形成されたトレイ部材と、前記トレイ部材の凹陥部を閉塞するように配置されるカバー部材とによって構成されている前項1~7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0021】
[9]前記外包体は、前記インナーフィンを介して重ね合わせて配置される一対の前記外包ラミネート材によって構成されている前項1~7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0022】
[10]入口および出口が設けられた外包体と、前記外包体内に設けられ、かつ凹凸部を有するインナーフィンとを備え、前記入口から流入した熱交換媒体が前記外包体内のインナーフィン設置部を通って前記出口から流出するようにした熱交換器における前記外包体を形成するための外包ラミネート材であって、
金属製の伝熱層と、
前記伝熱層の内面側に設けられた樹脂製の熱融着層とを備え、
前記熱融着層が、ポリプロピレン樹脂によって構成されていることを特徴とする熱交換器の外包ラミネート材。
【発明の効果】
【0023】
発明[1]の熱交換器によれば、外包体の内面側に設けられた熱融着層が、耐薬品性および耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂によって構成されているため、特殊な溶剤等が含有されたクーラント(冷媒)等の熱交換媒体を使用しても、あるいは高温環境下で使用しても、接着性を十分に維持できて、熱交換媒体の液漏れ等の不具合を確実に防止でき、良好な熱交換性能を長期間維持できて、十分な耐久性を確保することができる。また本発明の熱交換器においては、ラミネート材等を熱融着して製作するものであるため、面倒な金属加工を用いる必要がなく、効率良く簡単に製作できてコストを削減できるとともに、十分な薄型化を図ることができる。さらに本発明の熱交換器において、外包体やインナーフィンとしてのラミネート材はその形状や大きさを簡単に変更できるため、設計の自由度が増して、汎用性を向上させることができる。
【0024】
発明[2]の熱交換器によれば、外包体の熱融着層が積層体によって構成されているため、外包体の熱融着層に様々な特性を付与することができる。
【0025】
発明[3]の熱交換器によれば、外包体の熱融着層が、融点の温度差10℃以上異なる低融点層および高融点層を含んでいるため、厳しい熱融着条件において、低融点層が多く溶融したとしても、高融点側の層(高融点層)が残存する。このため、熱融着層の肉厚減少による外包体の伝熱層の露出を防止でき、その伝熱層と熱交換媒体との接触を防止できて、剥がれや変質を確実に防止できて、安定した熱交換性能を長期的に維持できて、耐久性を一層向上させることができる。
【0026】
発明[4]の熱交換器によれば、インナーフィンの熱融着層が、ポリプロピレン樹脂によって構成されているため、インナーフィンにおいても、特殊な熱交換媒体の使用や高温環境下での使用に対して、接着性を十分に維持できて、熱交換媒体の液漏れ等の不具合をより確実に防止でき、耐久性をより一層向上させることができる。
【0027】
発明[5]の熱交換器によれば、インナーフィンの熱融着層が積層体によって構成されているため、インナーフィンの熱融着層に様々な特性を付与することができる。
【0028】
発明[6]の熱交換器によれば、インナーフィンの熱融着層が、融点の温度差10℃以上異なる低融点層および高融点層を含んでいるため、厳しい熱融着条件において、低融点層が多く溶融したとしても、高融点側の層(高融点層)が残存する。このため、熱融着層の肉厚減少によるインナーフィンの伝熱層の露出を防止でき、その伝熱層と熱交換媒体との接触を防止できて、耐久性をなお一層向上させることができる。
【0029】
発明[7]の熱交換器によれば、外包体の熱融着層における低融点層にインナーフィンの熱融着層を接合一体化するものであるため、厳しい熱融着条件であっても、インナーフィンを外包体に確実に接合一体化することができる。
【0030】
発明[8][9]の熱交換器によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0031】
発明[10]の熱交換器の外包ラミネート材によれば、熱融着層が、耐薬品性および耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂によって構成されているため、この外包ラミネート材を用いて熱交換器を製作することによって、上記発明の熱交換器と同様の効果を奏する熱交換器を確実に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1はこの発明の第1実施形態である熱交換器を示す斜視図である。
図2図2は第1実施形態の熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する側面断面図、図(c)は図(a)のC-C線断面に相当する正面断面図である。
図3図3は第1実施形態の熱交換器を分解して示す斜視図である。
図4図4は第1実施形態の熱交換器に適用された外包体およびインナーフィンを説明するための正面断面図である。
図5図5は第1実施形態のインナーフィンを説明するための正面断面図である。
図6図6はこの発明の第2実施形態である熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する側面断面図、図(c)は図(a)のC-C線断面に相当する正面断面図である。
図7図7図6(c)の一部を拡大して示す断面図である。
図8図8は第2実施形態の熱交換器に適用されたインナーフィンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1実施形態>
図1図3はこの発明の第1実施形態である熱交換器を示す図である。以下の説明においては発明の理解を容易にするため、図2(a)の左右方向を「前後方向」として説明し、さらに図2(b)の上下方向を「上下方向(厚さ方向)」として説明する。
【0034】
図1図3に示すように、本第1実施形態の熱交換器は、伝熱パネルや伝熱チューブ等として用いられるものであり、ケーシング(容器)としての外包体1と、外包体1の内部に収容されるインナーフィン(内芯材)2と、外包体1の両端部内に収容される一対(両側)のヘッダー(ジョイント部材)3,3とを備えている。
【0035】
外包体1は、平面視矩形状のトレイ部材10と、平面視矩形状のカバー部材15とによって構成されている。
【0036】
トレイ部材10は、外包ラミネート材L1の成形品によって構成されており、外周縁部を除く中間領域全域が下方に深絞り成形や、押出成型等の冷間成形の手法を用いて凹陥形成されて、平面視矩形状の凹陥部11が形成されるとともに、凹陥部11の開口縁部外周に外方に突出するフランジ部12が一体に形成されている。
【0037】
またカバー部材15は、トレイ部材10における凹陥部11の前後両端部に対応して一対の出入口16,16が形成されている。言うまでもなく本実施形態においては、一対の出入口16のうち、一方の出入口16が入口として構成され、他方の出入口16が出口として構成されている。
【0038】
トレイ部材10およびカバー部材15は、柔軟性および可撓性を有するラミネートシートである外包ラミネート材L1によって構成されている。
【0039】
図4に示すように外包ラミネート材L1は、金属(金属箔)製の伝熱層51と、その伝熱層51の一面(内面)に接着剤を介して積層された熱融着性の樹脂フィルムないし熱融着性の樹脂シート製の熱融着層52と、伝熱層51の他面(外面)に接着剤を介して積層された耐熱性の樹脂フィルムないし耐熱性の樹脂シート製の保護層53とを備えている。なお本実施形態において、「箔」という用語は、フィルム、薄板、シートも含む意味で用いられている。
【0040】
外包ラミネート材L1における伝熱層51としては、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、ニッケルメッキ加工した銅箔、ニッケルと銅箔からなるクラッドメタル等を好適に用いることができる。なお本実施形態において、「銅」「アルミニウム」「ニッケル」「チタン」という用語は、それらの合金も含む意味で用いられている。
【0041】
伝熱層51は、集熱層とも称されるものであり、厚みが8μm~300μmのものを用いるのが良く、より好ましくは100μm以下のものを用いるのが良い。
【0042】
また伝熱層51は、化成処理等の表面処理を施しておくことにより、伝熱層51の腐食防止や、樹脂との接着性の向上など、より一層耐久性を向上させることができる。
【0043】
化成処理は、例えば次のような処理を施す。即ち、脱脂処理を行った金属箔の表面に、下記の1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0044】
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0045】
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0046】
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0047】
上記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m~50mg/mに設定するのが好ましく、特に2mg/m~20mg/mに設定するのがより一層好ましい。
【0048】
本実施形態において、熱融着層52は、ポリプロピレン樹脂のフィルムないしシートによって構成されている。さらに熱融着層52としては、厚みが20μm~5000μmのもの、より好ましくは20μm~1000μmのものを用いるのが良い。なお熱融着層52を構成するポリプロピレン樹脂については、後に詳述するものとする。
【0049】
外包ラミネート材L1における伝熱層51の外面側に設けられる保護層53としては、耐熱性樹脂であるポリエステル樹脂(PET)、ポリアミド樹脂(ONY)等によって構成されるフィルムないしシートを好適に用いることができる。
【0050】
さらに保護層53としては、厚みが6μm~100μmのものを用いるのが良い。
【0051】
また外包ラミネート材L1を構成する伝熱層51、熱融着層52および保護層53の各間を接着するための接着剤としては、厚みが1μm~5μmのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、オレフィン系接着剤等を好適に用いることができる。
【0052】
なお本実施形態においては、外包体1を構成するラミネート材L1として、3層構造のシートを用いるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、4層以上の構造のシートを用いるようにしても良い。例えば保護層と伝熱層との間に他の層を介在させたり、伝熱層と熱融着層との間に他の層を介在したりして、4層以上の構造のシートを採用するようにしても良い。
【0053】
以上の構成の外包ラミネート材L1によって、外包体1のトレイ部材10およびカバー部材15が構成されている。そして後に詳述するようにカバー部材15がトレイ部材10にその凹陥部11の開口を閉塞するように取り付けられることによって、外包体1が形成されるものである。
【0054】
図2図5に示すように外包体1の中空部(凹陥部)11内に収容されるインナーフィン2は、柔軟性ないし可撓性を有するラミネートシートである内芯ラミネート材L2によって構成されている。
【0055】
図4および図5に示すように内芯ラミネート材L2は、金属箔製の伝熱層61と、伝熱層61の両面に接着剤を介して積層された樹脂フィルムないし樹脂シート製の熱融着層62,62とを備えている。
【0056】
本実施形態において、内芯ラミネート材L2における伝熱層61としては、上記外包ラミネート材L1の伝熱層51と同様の構成を備えている。
【0057】
さらに内芯ラミネート材L2における熱融着層62としても、上記外包ラミネート材L1の熱融着層52と同様の構成を備えている。
【0058】
また内芯ラミネート材L2を構成する伝熱層61および熱融着層62の各間を接着するための接着剤としては、上記外包ラミネート材L1と同様、厚みが1μm~5μmのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、オレフィン系接着剤等を好適に用いることができる。
【0059】
なお本実施形態においては、インナーフィン2を構成するラミネート材L2として、3層構造のシートを用いるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、4層以上の構造のシートを用いるようにしても良い。例えば熱融着層と伝熱層との間に他の層を介在させることによって、4層以上の構造のシートを採用するようにしても良い。
【0060】
またインナーフィン2の加工方法は、切削加工、射出成型、シート成形(真空成形、圧空成形等)の他、コルゲート加工やエンボス加工を用いることができる。なお言うまでもなく、インナーフィン2の加工方法は限定されるものではない。
【0061】
図2図5に示すようにインナーフィン2は、凹部25および凸部26が交互に連続して形成された波形に形成されており、凹部底面(底壁)および凸部頂面(頂壁)が平坦に形成され、かつ隣り合う凹部底壁および凸部頂壁間の立ち上がり壁が垂直に形成された角波形状(矩形波形状)、いわゆるデジタル信号波形に形成されている。さらにインナーフィン2は、隣り合う凹凸部25,26において凹部25の中心線から凸部26の中心線までの間隔をフィンピッチ(ハーフピッチ)Pfとしたとき、等ピッチで配置されている。換言すると、凹部底壁の幅寸法(図5の紙面に向かって左右方向の幅寸法)W11と、凸部頂壁の幅方向W12の寸法とが等しく設定されている。
【0062】
本実施形態において、インナーフィン2のフィン高さHfを0.1mm~50mmに設定するのが好ましい。
【0063】
また本実施形態においては、フィンピッチPfを1mm~5mmに設定するのが良い。すなわちフィンピッチPfが狭過ぎると、加工が困難になるとともに、熱交換媒体の圧力損失も大きくなり、好ましくない。逆にフィンピッチPfが広過ぎると、外圧によって変形し易くなり、耐圧性の低下を招くおそれがあり、好ましくない。
【0064】
本実施形態においては、上記のインナーフィン2が、トレイ部材10の凹陥部11内に収容される。この場合、インナーフィン2は、トレイ部材10の凹陥部11における前後両端部を除いた中間部に収容される。さらにインナーフィン2は、その山筋方向および谷筋方向がトレイ部材10の前後方向(図1の左右方向)に一致するように配置される。これにより、インナーフィン2の山筋部および谷筋部によって形成されるトンネル部および溝部が、熱交換流路として構成されている。この熱交換流路は、トレイ部材10の前後方向(長さ方向)に沿うように配置され、かつ幅方向(左右方向)に並列に複数配置されており、熱交換媒体(熱媒体)が各熱交換流路を通って均等に分散しながら外包体1の前後方向一端側から他端側に向けてスムーズに流通できるように構成されている。
【0065】
一方図2および図3に示すように、外包体1の両端部に配置される一対のヘッダー3,3は、合成樹脂の成形品によって構成されている。
【0066】
ヘッダー3を構成する樹脂としては、上記外包体1およびインナーフィン2の熱融着層52,62を構成する樹脂と同種の樹脂を用いるのが好ましい。
【0067】
ヘッダー3は、一側面に開口部32を有する箱状の取付箱部31と、取付箱部31の上壁に設けられたパイプ部33とを備えている。パイプ部33は取付箱部31内に連通しており、パイプ部33の内部と取付箱部31の内部との間で熱交換媒体が往来できるように構成されている。
【0068】
このヘッダー3の取付箱部31がトレイ部材10の凹陥部11におけるインナーフィン2の両側に配置される。さらにヘッダー3のパイプ部33が上向き配置されるとともに、取付箱部31の開口部32が内側に向けて、つまりインナーフィン2に対向して配置される。
【0069】
こうしてヘッダー3,3をトレイ部材10内に収容して、カバー部材15をトレイ部材10にその開口部を閉塞するように配置する。この場合、カバー部材15の出入口16内に、ヘッダー3,3の上向きのパイプ部33,33を挿通配置する。
【0070】
そしてこの熱交換器仮組品を加熱することによって、接触し合う部材同士を熱融着して接合一体化する。
【0071】
まず、外包体1におけるトレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部との重ね合わせ部分を、上下一対の加熱シール型によって挟み込みながら加熱する(外包体融着工程)。これにより、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部との熱融着層52同士を熱融着(熱接着)して、外包体1の中空部を気密ないし液密状態に封止する。
【0072】
続いて、外周縁部を熱溶着した外包体1の中間領域を上下一対の加熱板によって挟み込みながら加熱する。これにより、インナーフィン2の山頂部および谷底部の熱融着層62と、トレイ部材10の底壁およびカバー部材15の中間領域(上壁)の熱融着層52とを熱接着(熱融着)により接合一体化して、液密ないし気密状態に封止する(フィン融着工程)。さらにこのフィン融着工程においては、ヘッダー3,3の取付箱部31,31の外周面と、それに対応するトレイ部材10およびカバー部材15の熱融着層52とを熱融着(熱接着)により接合一体化して、液密ないし気密状態に封止する。
【0073】
こうして組み付けられた熱交換器は、外包体1における両端部の上壁(カバー部材15)からヘッダー3,3のパイプ部33,33が上方に突出するように配置されている。
【0074】
なお本実施形態において、熱融着処理(加熱処理)を減圧下で行うことで、トレイ部材10とカバー部材15との間、トレイ部材10およびカバー部材15とそれらと接触しているインナーフィン2およびヘッダー3,3との間の熱接着を強く行うことができる。従って熱融着処理を減圧下で行うのが好ましい。
【0075】
本実施形態において、熱融着処理時の加熱温度(溶着温度)は、140℃~250℃に設定するのが良く、より好ましくは160℃~200℃に設定するのが良い。さらに熱融着時の圧力(溶着圧力)は、0.1MPa~0.5MPaに設定するのが良く、より好ましくは0.15MPa~0.4MPaに設定するのが良い。さらに融着時間(溶着時間)は、2秒~10秒に設定するのが良く、より好ましくは3秒~7秒に設定するのが良い。
【0076】
また本実施形態においては、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部とを熱融着する外包体融着工程と、インナーフィン2およびヘッダー3,3と外包体1とを熱融着するフィン融着工程とを別々の熱処理で行うようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、外包体融着工程と、フィン融着工程とを同じ熱処理で行うようにしても良い。
【0077】
次に、外包ラミネート材L1および内芯ラミネート材L2の熱融着層52,62を構成するポリプロピレン樹脂の詳細について説明する。
【0078】
ポリプロピレン樹脂には、プロピレンのみを重合したホモポリマーがあり、このホモポリマーは、剛性、耐熱性、耐薬品性等に優れている。ホモポリマーの中にゴム相で覆われたポリエチレンが分散して混入された構造を持っているブロックコポリマーは、ホモポリマーよりも、耐寒性、耐衝撃性等が改良されている。ホモポリマーに少量のエチレンを共重合したランダムコポリマーは、ホモポリマーの透明性、耐衝撃性等を改良したものであり、比較的低温でも熱融着が可能であり、ヒートシール性に優れている特徴がある。
【0079】
これらのポリプロピレン樹脂を押出し機で成膜し、未延伸ポリプロピレンフィルムを生産する時は、ホモポリマー、ブロックポリマー、ランダムポリマーをそれぞれ単独で成膜して、ホモPP単層フィルム、ブロックPP単層フィルム、ランダムPP単層フィルムとする場合や、共押出し機で成膜し、3層(ランダムPP/ブロックPP/ランダムPP)の共押しフィルムや、3層(ランダムPP/ホモPP/ランダムPP)の共押しフィルムのような多層フィルムとする場合がある。
【0080】
また、上記のようなポリプロピレン樹脂を用いたコーティング剤を、ロールコート法等で、金属製伝熱層51,61の表面に塗布・乾燥して、金属製伝熱層51,61の表面にポリプロピレン樹脂層(熱融着層)52,62を形成することも可能である。
【0081】
また、本実施形態の熱交換器を冷却器と想定した場合は、LLCと呼ばれるエチレングリコールに防錆剤、酸化抑制剤を添加したロングライフクーラントと水とを混合し、例えばLLC:水=3:7~6:4の比率で混合したものを熱交換媒体(冷却液)として使用する場合が多くなっている。このLLCを含む熱交換媒体を長期間使用したときに、60℃以下の温度領域では影響は少ない。しかしながら、60℃を超える高温領域で長期間使用すると、LLCと接触している熱交換器の熱融着層52,62が、仮にポリエチレン樹脂によって構成されている場合は、高温環境でエチレングリコール等の溶剤の影響を受け、熱融着層としてのポリエチレン樹脂が膨潤したり、ポリエチレン樹脂のシール強度が低下し、熱交換性能が低下する可能性がある。
【0082】
このように熱融着層が、仮にポリエチレン樹脂やポリエチレン成分を多く含む樹脂によって構成されている場合には、60℃を超える高温領域で、熱交換媒体の溶剤等の影響を受け、熱融着層の膨潤、シール強度低下が起こる可能性が高くなる。
【0083】
そこで本実施形態においては、LLC等の熱交換媒体に接触する熱交換器の外包体1およびインナーフィン2の樹脂製の熱融着層52,62の材料として、既述した通り耐熱性、耐溶剤性のあるポリプロピレン樹脂を選択し、これにより良好な熱交換性能を長期間維持することが可能となる。
【0084】
また本実施形態において、熱融着層52,62として、少なくとも融点が10℃以上異なる2層以上の層を有するポリプロピレン多層フィルムを採用すると、厳しい熱融着条件において、低融点側の層(低融点層)が多量に溶融したとしても、高融点側の層(高融点層)が残存する。このため、熱融着層52,62の肉厚減少による外包体1や、後述のインナーフィン2の金属層(伝熱層)51,61の露出や、外包体1とインナーフィン2の金属層(伝熱層)51,61同士の接触を回避することができ、熱交換器の腐食を確実に防止することができる。
【0085】
さらに本実施形態においては、熱融着層52,62として用いられるポリプロピレン樹脂の中でも、エラストマー成分が含有されていないランダムPPやホモPPを用いるのが好ましく、熱融着による密封性を考慮すると、シール性に優れるランダムPPを用いるのがより一層好ましい。
【0086】
さらに熱融着層52,62を構成するポリプロピレン樹脂は、少なくとも2層以上の多層フィルム(積層体)が好ましく、特に多層フィルムは、融点が10℃以上異なるポリプロピレン樹脂層を含まれているのが好ましい。
【0087】
以上の構成の熱交換器は、電池等を冷却対象部材(熱交換対象部材)として冷却する冷却器(冷却装置)として用いられる。すなわち熱交換器の一方のパイプ部33に、熱交換媒体(冷媒)としての冷却液(冷却水、不凍液等)を流入するための流入管が連結されるとともに、他方のパイプ部33に、冷却液を流出するための流出管が連結される。さらに熱交換器の外包体1の外表面に冷却対象部材としての電池を接触させた状態に配置する。そしてその状態で一方のパイプ部33から冷却液を一方のヘッダー3を介して外包体1の内部に流入し、その冷却液をインナーフィン2の部分を流通させて、他方のヘッダー3を介して他方のパイプ部33から流出させる。こうして冷却液を外包体1に循環させることにより、その冷却液と電池との間でインナーフィン2および外包体1の上下壁を介して熱交換されて、電池が冷却されるものである。
【0088】
本実施形態の熱交換器は、その使用形態は特に限定されるものではなく、1つだけで使用することもできるし、2つ以上で使用することもできる。1つでの使用は、既述した通り、熱交換器の上下面に熱交換対象部材を接触させて使用するものである。2つで使用する場合には、例えば2つの熱交換器によって熱交換対象部材を挟み込むように配置して使用することができる。さらに2つ以上で使用する場合、熱交換器と熱交換対象部材とを交互に重ね合わせるように配置して使用することもできる。
【0089】
以上のように本第1実施形態の熱交換器によれば、外包体1の内面側に設けられた熱融着層52が、耐薬品性および耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂によって構成されているため、特殊な溶剤等が含有されたクーラント(冷媒)等の熱交換媒体を使用しても、あるいは60℃を超える高温領域で使用しても、接着性を十分に維持できて、熱交換媒体の液漏れ等の不具合を確実に防止でき、良好な熱交換性能を長期間維持できて、十分な耐久性を確保することができる。
【0090】
また本実施形態において、外包体1の熱融着層52およびインナーフィン2の熱融着層62として、融点の温度が10℃以上異なる低融点層および高融点層を含み、かつ高融点層に対し低融点層が熱交換媒体と接触する側に配置される場合には、厳しい熱融着(ヒートシール)条件において、低融点層が多く溶融したとしても、高融点側の層(高融点層)が残存する。このため、熱融着層52,62の肉厚減少による金属層(伝熱層)51,61の露出や、外包体1とインナーフィン2の金属層(伝熱層)51,61同士の接触を回避することができ、熱交換器の腐食を確実に防止することができる。その上さらに、外包体1の熱融着層52とインナーフィン2の熱融着層62との接着性も向上し、外包体1およびインナーフィン2の接着部において、熱交換媒体との接触により、剥がれや変質を防止できて、安定した熱交換性能をより長期的に維持できて、より一層耐久性を向上させることができる。
【0091】
また本実施形態の熱交換器においては、インナーフィン2を角波形状に形成しているため、外包体1との接触面積を十分に確保でき、外包体1の外面に接触する冷却対象部材との間の熱交換効率を向上させることができ、高い熱交換性能を得ることができる。さらにインナーフィン2と外包体1との接着面積を大きく確保できるため、インナーフィン2の外包体1に対する取付強度を向上でき、接触不良の発生等をより確実に防止することができる。
【0092】
また本実施形態の熱交換器においては、インナーフィン2の位置をヘッダー3,3によって規制することができるため、熱交換媒体の流通によってインナーフィン2が揺れ動いたり、ばたついたりすることがなく、その動きによって発生する熱交換媒体の滞留を防止することができる。このため熱交換媒体の流動性を向上させることができ、熱交換性能を一層向上させることができる。
【0093】
また本実施形態の熱交換器によれば、構成部材としてのトレイ部材10、カバー部材15、インナーフィン2およびヘッダー3が合成樹脂を基に製作されているため、各構成部材を適宜熱融着するだけで簡単に製作することができる。このため本実施形態の熱交換器は、ろう付け接合等の難易度が高くて面倒な接合加工によって製作する従来の金属製の熱交換器に比べて、コストの削減および生産性の向上を図ることができる。
【0094】
さらに本実施形態の熱交換器は、金属の塑性加工や切削加工等の面倒かつ制約のある金属加工を用いる場合と異なり、より一層生産効率の向上およびコストの削減を図ることができる。
【0095】
また本実施形態の熱交換器は、薄型のラミネートシート(ラミネート材)L1からなるトレイ部材10およびカバー部材15を貼り合わせて形成するものであるため、十分な薄肉化および軽量化を確実に図ることができる。
【0096】
また本実施形態の熱交換器によれば、外包体1の内部にインナーフィン2を配置して、外包体1の内部に冷媒流通用空間(熱交換流路)を確保するものであるため、内圧および外圧のいずれの圧力に対しても高い強度を確保でき、動作信頼性を向上させることができる。
【0097】
さらに本実施形態の熱交換器は、外包体1がラミネート材L1であるため、熱交換器自体の形状や大きさを簡単に変更できるとともに、既述した通り、厚みや強度、熱交換性能等も簡単に変更できるので、熱交換器取付位置等に合わせて適切な構成に簡単に仕上げることができ、設計の自由度が増し、汎用性も向上させることができる。
【0098】
<第2実施形態>
図6はこの発明の第2実施形態である熱交換器を示す図、図7図6(c)の一部を拡大して示す断面図、図8は第2実施形態の熱交換器に適用されたインナーフィン2を示す斜視図である。これらの図に示すようにこの熱交換器は、袋状の外包体1と、その外包体1の内部に配置されるインナーフィン2とを備え、外包体1の前端および後端に、出入口16,16が設けられている。
【0099】
外包体1は、上記第1実施形態と同様の3層構造の外包ラミネート材L1によって構成されている。そして本実施形態の外包体1は、後述するように矩形状に形成された一対(2枚)のシート状の外包ラミネート材L1が上下に重ね合わされて、外周縁部の熱融着層52同士が熱融着(ヒートシール)によって接合一体化されることにより、袋状に形成されている。
【0100】
また外包体1における出入口16,16にはジョイントパイプ33,33が設けられる。本実施形態においてジョイントパイプ33,33は例えば、上記第1実施形態のヘッダー3と同様の合成樹脂成形品によって構成されている。
【0101】
このジョイントパイプ33,33は、外包体1を構成する2枚の外包ラミネート材L1の前端部間および後端部間に挟み込まれるように配置されて、各ジョイントパイプ33,33の外周面(熱融着層)が、それに対応する外包ラミネート材L1の熱融着層52に熱融着によって接合一体化されている。これによりジョイントパイプ33,33が外包体1の出入口16,16の位置において外包体1の前端部および後端部を貫通した状態で外包体1に固定されている。この状態では、ジョイントパイプ33,33の外周面全域と外包ラミネート材L1の熱融着層52との間は熱融着によって封止されている。さらに各ジョイントパイプ33,33の一端側は外包体1の外部に配置されるとともに、他端側は外包体1の内部に配置されており、熱交換媒体としての冷媒を一方のジョイントパイプ33を介して外包体1の内部に導入できるとともに、外包体1の内部の冷媒を他方のジョイントパイプ33を介して外部に導出できるようになっている。
【0102】
インナーフィン2は、上記第1実施形態と同様の3層構造の内芯ラミネート材L2によって構成されている。
【0103】
本実施形態においてインナーフィン2は、略円弧状の凹部25および凸部26が交互に連続して配置される一般的な波形状(正弦波形状)、いわゆるアナログ信号波形に形成されている。なおインナーフィン2の加工方法は特に限定されるものではないが、例えばシート状の内芯ラミネート材L2を一対のエンボスロールまたは一対のコルゲートロールによって挟み込みつつ、その一対のロール間に通過させて、凹凸部を成形する方法を好適に採用することができる。
【0104】
この構成のインナーフィン2が既述した通り、外包体1の内部に収容されている。そしてインナーフィン2の凹部底面および凸部頂面と、外包体1の熱融着層(内面層)52とが熱融着により接合一体化されている。
【0105】
本第2実施形態の熱交換器において、他の構成は、上記第1実施形態の熱交換器と実質的に同様であるため、同一または相当部分に、同一符号を付して重複説明は省略する。
【0106】
この第2実施形態の熱交換器の製造手順は、一方(下側)の外包ラミネート材L1の中間領域に、インナーフィン2を設置し、さらに外包ラミネート材L1の外周縁部における前端縁部および後端縁部にジョイントパイプ33,33を設置する。
【0107】
続いて他方(上側)の外包ラミネート材L1を、インナーフィン2およびジョイントパイプ33,33を覆うようにして、下側の外包ラミネート材L1上に配置する。こうして上下の外包ラミネート材L1の外周縁部における互いの熱融着層52同士を重ね合わせて、その重ね合わせ部を上記第1実施形態と同様、一対の加熱シール型によって挟み込みながら加熱して、当該重ね合わせ部を熱融着して接合一体化する(外包体融着工程)。なおジョイントパイプ33,33の部分は、ジョイントパイプ33,33の外周面を上下の外包ラミネート材L1の外周縁部における熱融着層52に熱融着して接合一体化する。
【0108】
さらに外包体1の一対の外包ラミネート材L1,L1の中間領域を上下一対の加熱板によって挟み込みながら加熱する。これによりインナーフィン2の山頂部および谷底部の熱融着層62を、一対の外包ラミネート材L1,L1の熱融着層52に熱融着により接合一体化する(フィン融着工程)。
【0109】
なお本実施形態においても外包体融着工程と、フィン融着工程とを別々に行っても良いし、同時に行っても良い。
【0110】
こうして本第2実施形態の熱交換器が製造される。本第2実施形態においても、外包体融着工程と、フィン融着工程とを別々に行っても良いし、同時に行っても良い。
【0111】
この第2実施形態の熱交換器においては、一方のジョイントパイプ33から冷却液等の熱交換媒体を外包体1内に流入させて、他方のジョイントパイプ33から流出させることにより、冷却液を外包体1内に循環させるとともに、循環する冷却液と、外包体1の外表面に接触させた熱交換対象部材との間で熱交換させて、熱交換対象部材を冷却するものである。
【0112】
この第2実施形態の熱交換器において、他の構成は上記第1実施形態の熱交換器と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0113】
以上の構成の第2実施形態の熱交換器においても、上記第1実施形態の熱交換器と同様の効果を得ることができる。
【実施例
【0114】
1.外包ラミネート材L1および内芯ラミネート材L2の準備
<実施例1>
外包ラミネート材:PET12/接着剤/AL120/接着剤/CPP40
CPP:3層(ランタ゛ムPP/フ゛ロックPP/ランタ゛ムPP)共押フィルム(ランタ゛ムPPの融点140℃、フ゛ロックPPの融点160℃)
内芯ラミネート材:BF40/接着剤/AL120/接着剤/BF40
BF:PP-PEフ゛レント゛フィルム(融点130℃)
実施例1の外包ラミネート材L1は、厚さ120μmのAl箔からなる伝熱層51と、その伝熱層51の内面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ40μmのCPPフィルムからなる熱融着層52と、伝熱層51の外面側に接着剤を介して積層され、かつ厚さ12μmのPETフィルムからなる保護層とを備えている。実施例1の熱融着層51を構成するCPPは、3層(ランダムPP/ブロックPP/ランダムPP)の共押フィルムであり、ランダムPPの融点は140℃であり、ブロックPPの融点は160℃である。
【0115】
実施例1の内芯ラミネート材は、厚さ120μmのAl箔からなる伝熱層61と、その伝熱層61の両面側に、接着剤を介して積層され、かつ厚さ40μmのBF(PPとPEのブレンドフィルム)からなる熱融着層62,62とを備えている。BFの融点は130℃である。
【0116】
<実施例2>
外包ラミネート材:PET12/接着剤/AL120/接着剤/CPP40
CPP:ホモPP単層フィルム(融点165℃)
内芯ラミネート材:CPP40/接着剤/AL120/接着剤/CPP40
CPP:ホモPP単層フィルム(融点165℃)
外包ラミネート材L1および内芯ラミネート材L2における熱融着層52,62として、融点が165℃のホモPP単層フィルムを使用し、それ以外は上記実施例1と同様に、実施例2の外包ラミネート材1および内芯ラミネート材L2を作製した。
【0117】
<実施例3>
外包ラミネート材:PET12/接着剤/AL120/接着剤/CPP40
CPP:3層(ランタ゛ムPP/フ゛ロックPP/ランタ゛ムPP)共押フィルム(ランタ゛ムPPの融点140℃、フ゛ロックPPの融点160℃)
内芯ラミネート材:CPP40/接着剤/AL120/接着剤/CPP40
CPP:3層(ランタ゛ムPP/フ゛ロックPP/ランタ゛ムPP)共押フィルム(ランタ゛ムPPの融点140℃、フ゛ロックPPの融点160℃)
内芯ラミネート材における熱融着層62として、3層(ランダムPP/ブロックPP/ランダムPP)の共押フィルムであり、ランダムPPの融点は140℃であり、ブロックPPの融点は160℃であるCPPを使用し、それ以外は上記実施例1と同様に、実施例3の外包ラミネート材1および内芯ラミネート材L2を作製した。
【0118】
<比較例1>
外包ラミネート材:PET12/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40(LLDPEの融点 120℃)
内芯ラミネート材:LLDPE40/接着剤/AL120/接着剤/LLDPE40
外包ラミネート材L1および内芯ラミネート材L2の熱融着層52,62として、融点が120℃のLLDPEを使用し、それ以外は上記実施例1と同様に、比較例1の外包ラミネート材L1および内芯ラミネート材L2を作製した。
【0119】
2.熱交換器の作製
(1)トレイ部材10およびカバー部材15の作製
図1図3に示す第1実施形態に対応するトレイ部材10およびカバー部材を作製した。すなわち上記実施例および比較例の各外包ラミネート材L1に対し深絞り成形を行って、深さ4mm×幅90mm×長さ140mmの凹陥部11を有し、凹陥部11の開口縁部全周に幅10mmのフランジ部12が形成されたトレイ部材10を作製した。
【0120】
上記各外包ラミネート材L1を長さ160mm×幅110mmにカットしてカバー部材15を作製した。
【0121】
(2)インナーフィン2の作製
図2図5に示すように上記実施例および比較例の各内芯ラミネート材L2に対しコルゲート加工を行って、高さ4.2mm×幅90mm×長さ100mmの波形のインナーフィン2を作製した。
【0122】
(3)ヘッダー3の作製
図2および図3に示すように実施例1~3用として、CPPを素材として、長さ90mm×横20mm×高さ4mmの取付箱部31に、内径φ10mm、外径φ12mm、長さ3mmのパイプ部33が一体に形成されたヘッダー3を射出成型によって作製した。比較例1用として、LLDPEを素材とする以外は、上記と同様にしてヘッダー3を作製した。
【0123】
(4)部品の組み立ておよび接合
トレイ部材10の凹陥部11における両端部にヘッダー3,3を、各パイプ部33が上方に向くようにして収容した。さらに凹陥部11内におけるヘッダー3,3間にインナーフィン2を収容した。この際、既述した通り、実施例1~3に対応するものは、CPP製のヘッダー3を使用し、比較例1に対応するものは、LLDPE製のヘッダー3を使用した。
【0124】
トレイ部材10の凹陥部11を上から閉塞するようにカバー部材15を配置した。この際、カバー部材15の出入口16,16に、ヘッダー3,3のパイプ部33,33を挿通してカバー部材15の上方に突出させた。
【0125】
こうして非接合状態の熱交換器仮組品を作製し、その仮組品をヒートシール機によって、180℃×0.3MPa×7秒の熱融着条件で熱融着処理を行い、各部品間を熱接着(熱融着)することにより、上記実施例1~3および比較例1のラミネート材L1,L2に対応する実施例1~3および比較例1の熱交換器をそれぞれ作製した。
【0126】
3.熱交換性能の評価
アルミニウムブロックで作製した模擬セル(縦90mm×横100mm×厚さ20mm)を恒温槽で80℃に加熱し、その加熱した模擬セルを、実施例1~3および比較例1の熱交換器の上(カバー部材15の中間領域上)に載置した。その状態で、各熱交換器に対し、市販のLLC:水(水道水)=6:4に調整した熱交換媒体(冷却液)を、水温21℃、流量0.3L/minで循環させて模擬セルを冷却した。そして実施例1~3および比較例1の各熱交換器毎に、模擬セルにおける上面中央温度を所定の経過時間毎に測定し、その上さらに試験後に、目視にて液漏れの確認を行った。その結果を表1に示す。
【0127】
なお、LLC(ロングライフクーラント)とは、主成分がエチレングリコールで、各種金属(鉄、アルミニウム、銅系)に対する防錆添加剤が混入された不凍液である。
【0128】
【表1】
【0129】
表1を参照すると、実施例1~3および比較例1の熱交換器はいずれも所定の冷却性能(熱交換性能)を備え、さらに液漏れもなかった。
【0130】
4.シール強度の評価
実施例1~3および比較例1の外包ラミネート材L1および内芯ラミネート材L2から、幅15mm×長さ150mmの短冊状試験片(外包材片およびフィン材片)を切り出して作製した。
【0131】
実施例1~3および比較例1毎に、外包材片およびフィン材片の熱融着層52,62同士を、200℃×2sec×2MPaGのシール条件でヒートシール(熱融着)した。このヒートシール時には、シールバーへの付着防止のため、フィン材片側にはPETフィルムを間に挟んで実施した。
【0132】
ヒートシールした実施例1~3および比較例1の外包材片およびフィン材片(シール片)を、70℃に保温した試験液(LLC:水=6;4に調整した液)に、1~2週間浸漬した。
【0133】
そして各シール片毎に、試験液に浸漬前、浸漬1週間後、浸漬2週間後において、島津製作所製ストログラフ(AGS-5kNX)を使用して、速度100mm/分でT型剥離させた時の剥離強度を策定した。その結果を表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
表2から明らかなように、熱融着層52,62がポリエチレン樹脂の比較例1のシール片は、シール強度の低下が認められたが、熱融着層52,62がポリプロピレン樹脂の実施例1~3のシール片は、シール強度の低下が認められず、十分な接着強度を備えているのが判る。
【0136】
5.耐腐食性に関する評価
腐食液として、OY液(Cl:195ppm、SO 2-:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppmを含有するpH3の腐食液)を準備した。
【0137】
上記腐食液を、実施例1~3および比較例1の各熱交換器に対し、一方のパイプ部33から導入して内部を流通させて、他方のパイプ部33から流出させるように循環させた。この循環時の試験条件として、腐食液の温度は60℃とし、流速は1L/分とし、循環時間は連続250時間とした。
【0138】
そしてその試験後に、実施例1~3および比較例1の熱交換器の外観を目視により観察して評価した。その結果を表3に示す。
【0139】
【表3】
【0140】
表3から明らかなように、比較例1のように熱融着層52,62がポリエチレン樹脂の熱交換器では、全体にわたって、腐食の発生が認められ、耐腐食性にやや劣っていた。これに対し、実施例2のように、熱融着層52,62が単層のポリプロピレン樹脂の熱交換器では、一部でわずかに外包材1の腐食が見られたが、十分な耐腐食性を備えていた。中でも特に、実施例1,3のように熱融着層52,62が多層のポリプロピレン樹脂では、腐食等は全く認められず、外観良好であり、非常に優れた耐腐食性を備えていた。
【産業上の利用可能性】
【0141】
この発明の熱交換器は、スマートフォンやパーソナルコンピュータのCPU回り、電池回りの発熱対策、液晶テレビ、有機ELテレビ、プラズマテレビのディスプレイ回りの発熱対策、自動車のパワーモジュール回り、電池回りの発熱対策に用いられる冷却器(冷却装置)の他、床暖房、除雪に用いられる加熱器(加熱装置)として利用することができる。
【符号の説明】
【0142】
1:外包体
10:トレイ部材
11:凹陥部
15:カバー部材
16:出入口
2:インナーフィン
25:凹部
26:凸部
51:伝熱層
52:熱融着層
61:伝熱層
62:熱融着層
L1:外包ラミネート材
L2:内芯ラミネート材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8