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▶ 株式会社前川製作所の特許一覧

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  • 特許-ワーク計測装置及び筋入れシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ワーク計測装置及び筋入れシステム
(51)【国際特許分類】
   A22C 21/00 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020083685
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021177710
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】芝間 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】桜山 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小泉 陽
(72)【発明者】
【氏名】赤羽根 元
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将臣
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08033897(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250193(US,A1)
【文献】特開2007-267693(JP,A)
【文献】特開2015-039310(JP,A)
【文献】特許第5384740(JP,B2)
【文献】特表2013-507101(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131357(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002630(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの姿勢を保持するための姿勢保持面と、
前記ワークを挟んで前記姿勢保持面と反対側から、前記姿勢保持面に対して前記ワークを押付け可能な第1ワーク押えと、
前記ワークに接触可能に設けられた接触子と、
前記第1ワーク押えによって前記姿勢保持面に押し付けられた前記ワークを前記接触子に対して相対移動させるための移動ユニットと、
を備え、
前記接触子は、前記移動ユニットによる前記ワークの相対移動方向において前記第1ワーク押えの下流側にて前記ワークに接触するように構成され、
前記移動ユニットによる前記接触子に対する前記ワークの相対移動時における前記接触子の軌跡から前記ワークの形態を計測するように構成された
ワーク計測装置。
【請求項2】
前記相対移動方向において前記第1ワーク押えの下流側にて、前記接触子とは反対側に設けられ前記接触子と共に前記ワークを挟む第2ワーク押えを備える
請求項1に記載のワーク計測装置。
【請求項3】
前記移動ユニットによる前記ワークの移動が開始される前に、前記第2ワーク押えを前記ワークから退避させるコントローラを備える請求項2に記載のワーク計測装置。
【請求項4】
前記第2ワーク押えに向けて前記接触子を前記姿勢保持面に沿う方向に付勢するための付勢ユニットを備える
請求項2又は3に記載のワーク計測装置。
【請求項5】
前記付勢ユニットは、前記接触子を弾性的に付勢するように構成されたエアシリンダを含む
請求項4に記載のワーク計測装置。
【請求項6】
前記移動ユニットは、
前記ワークを吊架可能なクランパと、
前記クランパを鉛直方向に沿って上昇させるための駆動部と、
を有する請求項1乃至5の何れか一項に記載のワーク計測装置。
【請求項7】
前記移動ユニットによる前記ワークの移動量を検出可能な移動量検出部と、
前記接触子の位置を検出する位置検出部と、
前記移動量検出部及び前記位置検出部の検出値を座標軸とした二次元座標上に前記接触子の軌跡をプロット可能な軌跡演算部と、
を備える
請求項1乃至6の何れか一項に記載のワーク計測装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のワーク計測装置と、
前記ワークが前記姿勢保持面及び前記第1ワーク押えで挟持されたときのワーク位置に対して進退可能に配置された筋入れ刃と、
を備える筋入れシステム。
【請求項9】
前記ワークは骨付き肢肉であって、
前記移動ユニットは、
前記骨付き肢肉を吊架可能なクランパと、
前記クランパを鉛直方向に沿って上昇させるための駆動部と、
を有し、
前記骨付き肢肉は前記クランパに肢首部でクランプされ、
前記筋入れ刃は前記肢首部に挿入されるように構成された
請求項8に記載の筋入れシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワーク計測装置及び筋入れシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
食肉用家畜屠体の解体作業は、人手で行うと重労働となりかつ効率も悪いため、自動化が進められている。本出願人は、この分野において長年自動化技術の開発を行ってきている。特許文献1では、解体途中の骨付き肉の自動脱骨技術を提案し、特許文献2では、搬送中に骨付き肉の全長測定を行う自動測定技術を提案している。また、特許文献3では、搬送中に骨付き肉の筋入れを行う自動筋入れ技術を提案し、特許文献4では、処理効率を高めた自動脱骨技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3483710号公報
【文献】国際公開第2019/131357号
【文献】国際公開第2019/131362号
【文献】国際公開第2019/131363号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食肉用家畜屠体の自動解体技術は、食肉の需要増加に伴い、食肉用家畜屠体が解体された骨付き肉をさらに骨部と肉部とに分離する際に、その脱骨効率(単位時間当たりの処理数の増加など)の向上、自動化装置のコンパクト化、汎用性、さらには、肉部の歩留まり向上等が求められている。肉部の歩留まりを向上するためには脱骨工程中に、個々のワークの大きさを計測し、その計測値に基づいてワーク毎に木目細かい脱骨処理を行う必要がある。特許文献2には、個々の骨付き肉の全長測定を行うに際し、計測用の第1の押え板をワークに当て、第1の押え板の軌跡を検出することで、骨付き肉の全長を含む形態を計測するようにしている。しかし、第1の押え板はワーク押え用の第2の押え板がワークを押える位置付近でワークに接触するため、第1の押え板は第2の押え板の押圧力により変形したワークの表面を倣うことになる。そのため、変形前のワークの真の形態を正確に計測できない場合がある。
【0005】
本開示は、上述する課題に鑑みてなされたもので、骨付き肉の自動脱骨工程などにおいて骨付き肉の大きさ、形状及び全長等を含む形態(以下、単に「形態」とも言う。)を正確に計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るワーク計測装置は、ワークの姿勢を保持するための姿勢保持面と、前記ワークを挟んで前記姿勢保持面と反対側から、前記姿勢保持面に対して前記ワークを押付け可能な第1ワーク押えと、前記ワークに接触可能に設けられた接触子と、前記第1ワーク押えによって前記姿勢保持面に押し付けられた前記ワークを前記接触子に対して相対的に移動させるための移動ユニットと、を備え、前記接触子は、前記移動ユニットによる前記ワークの相対移動方向において前記第1ワーク押えの下流側にて前記ワークに接触するように構成されている。
なお、本明細書において、「ワーク」とは、食肉用家畜屠体を解体して得られた骨付き肉(骨部と肉部とに完全に分離される前の段階のものであり、例えば、うで肉、モモ肉等の骨付き肢肉)を言う。
【0007】
本開示に係る筋入れシステムは、上述のワーク計測装置と、前記ワークが前記姿勢保持面及び前記第1ワーク押えで挟持されたときのワーク位置に対して進退可能に配置された筋入れ刃と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るワーク計測装置によれば、個々のワークの形態を正確に計測できるため、例えば、自動脱骨装置に適用されたとき、個々のワークの骨部から分離された肉部の歩留まりを向上できる。また、本開示に係る筋入れシステムによれば、個々のワークの形態計測と筋入れとを同時に行うことができるため、例えば、自動脱骨装置に適用されたとき、処理効率を向上できると共に、自動脱骨装置をコンパクト化できると共に、個々のワークの全長を測定することで、その後の骨肉分離工程で肉部の歩留まりを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るワーク計測装置及び筋入れ装置の斜視図である。
図2】一実施形態に係るワーク計測装置及び筋入れ装置の斜視図である。
図3】一実施形態に係るワーク計測装置及び筋入れ装置の斜視図である。
図4】一実施形態に係るワーク計測装置及び筋入れ装置の制御系を示すブロック線図である。
図5】一実施形態に係る接触子の軌跡を二次元座標上に表した線図である。
図6】クランパに吊架された骨付き肢肉を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
図1図3は、一実施形態に係るワーク計測装置10と共に、ワーク計測装置10を組み込んだ筋入れシステム60を、操作手順に沿って順に示す斜視図である。図1に示すように、ワーク計測装置10は、ワークWの姿勢をワーク計測が可能な姿勢に保持するための姿勢保持面12aを有する姿勢保持板12を備えている。第1ワーク押え14は、ワークWを挟んで姿勢保持面12aと反対側の位置に配置されている。第1ワーク押え14は、第1ワーク押え14を姿勢保持面12aに接近又は離隔する方向に移動させる駆動部16を有する。第1ワーク押え14は、駆動部16によって姿勢保持面12aに接近してワークWを姿勢保持面12aに押付け可能に構成されている。
【0012】
さらに、ワークWに接触可能に設けられた接触子19を備えると共に、ワークWを支持しワークWを移動させるための移動ユニット20とを備えている。移動ユニット20は、姿勢保持面12aに押し付けられたワークWを接触子19に対して相対的に移動可能にするように構成され、かつ接触子19は、接触子19に対してワークWが相対移動する方向において第1ワーク押え14の下流側でワークWに接触可能に構成されている。
なお、本明細書において、「下流側」とは、移動ユニット20によりワークWが接触子19に対して相対移動する方向における下流側を意味する。
【0013】
上記構成において、移動ユニット20によってワークWが接触子19に対して相対移動したとき、接触子19はワークWの表面に接触しながらワークWの表面を倣うことができる。そのため、接触子19の軌跡を検出することで、ワークWの形態を計測できる。しかし、第1ワーク押え14の押圧力によってワークWが変形した部位を接触子19が倣うと、ワーク形態の計測値に誤差が生じるおそれがある。本実施形態によれば、接触子19は第1ワーク押え14の下流側でワークWに接触するため、第1ワーク押え14の押圧力でワークWが変形する部位ではない部位を倣うことができる。そのため、ワークの真の形態を計測できる。また、接触子19は、ワークWが第1ワーク押え14の下流側でワークWに接触するため、ワークWの移動によってワークWのほぼ全長に近い領域を倣うことができる。そのため、ワークWのほぼ全長に近い形態を計測できる。
【0014】
上述のように、接触子19はワークWの形態を計測することができるが、ワークWに接触することによりワークWを所定位置に安定保持する機能も有している。
【0015】
一実施形態では、図1に示すように、第1ワーク押え14を駆動する駆動部16は、ピストンが第1ワーク押え14のリンク機構17に連結されたエアシリンダ18を有する。リンク機構17は、該ピストンの往復動によって第1ワーク押え14を姿勢保持板12に対して接近又は離隔する方向へ移動させる。なお、図2では、リンク機構17及びエアシリンダ18の図示を省略している。
【0016】
一実施形態では、図1に示すように、姿勢保持板12は支持部32を介して駆動部(不図示)に取り付けられている。姿勢保持板12は、該駆動部によって、計測位置でクランパ22に吊架されたワークWに対して接近又は離隔可能になっている。これによって、ワークWを所望の計測位置に保持できる。
【0017】
図2に示すように、移動ユニット20は、ワークWを吊架可能なクランパ22と、クランパ22を鉛直方向に沿って上昇可能にする駆動部24とを有している。このように、移動ユニット20は、ワークWを吊架して上昇させるクランパ22を有することで、移動ユニット20をコンパクト化できる。
【0018】
一実施形態では、クランパ22は、ワークWを挿入可能な開口22a(図6参照)を開閉するチャック26と、チャック26を駆動してクランパ22の開口22aを開閉する駆動部28とを有する。コントローラ30は、駆動部24を制御してクランパ22の上昇位置を制御すると共に、駆動部28を制御してチャック26の開閉時期を制御する。ワークWはクランパ22に吊架されて姿勢保持面12aの前面まで搬送され、姿勢保持面12aの前面で停止する。その後、第1ワーク押え14と姿勢保持面12aとで挟持されて計測位置に保持される。
【0019】
一実施形態では、第1ワーク押え14は板状体で構成されている。また、クランパ22が鉛直方向に移動するため、姿勢保持板12及び第1ワーク押え14も鉛直方向に沿って延在するように配置されると共に、姿勢保持板12及び第1ワーク押え14は、夫々の駆動部によって鉛直方向を向いたままワークWに対して進退可能に構成される。これによって、姿勢保持板12及び第1ワーク押え14はワークWの移動に干渉しない。
【0020】
一実施形態では、接触子19はクランパ22のクランプ位置近傍でワークWに接触するように配置されている。これによって、接触子19は、ワークWのほぼ全長に亘ってワーク表面を倣うことができ、ワークWのほぼ全長に近い形態を計測できる。
【0021】
一実施形態では、移動ユニット20によってワークWが接触子19に対して相対移動する場合、第1ワーク押え14の下流側において、接触子19とは反対側に第2ワーク押え34が設けられる。第2ワーク押え34は、接触子19と共にワークWを挟持可能に構成されている。姿勢保持板12と第1ワーク押え14とで挟持されたワークWを、さらに接触子19と第2ワーク押え34とで挟持することで、ワークWを所望位置に精度良く安定して位置決めできる。これによって、ワークWの形態計測を円滑に行うことができる。
【0022】
一実施形態では、図1に示すように、第2ワーク押え34は、軸36を中心に回動可能に姿勢保持板12の上部に取り付けられる。第2ワーク押え34の一方の端部は、エアシリンダ38のピストン38aに連結されている。ピストン38aが伸縮することで、第2ワーク押え34は軸36を中心として計測位置にあるワークWに対して進退可能になっている。
【0023】
一実施形態では、クランパ22に吊架されて姿勢保持面12aの前面まで搬送されてきたワークWは、姿勢保持面12aの前面で停止する。その後、ワークWに向かって、姿勢保持板12、第2ワーク押え34、接触子19及び第1ワーク押え14の順で前進し、ワークWを固定する。
【0024】
一実施形態では、図3に示すように、第2ワーク押え34に向けて接触子19を姿勢保持面12aに沿う方向に付勢するための付勢ユニット40を備えている。これによって、接触子19をワークWの表面に付勢力をもって倣わせることができる。そのため、ワークWの表面形状が変化しても、接触子19を常にワークWの表面に沿わせることができる。これによって、ワーク表面形状を正確に計測できる。
【0025】
また、上記実施形態では、付勢ユニット40によって接触子19は姿勢保持面12aに沿う方向に付勢されるため、接触子19及び第2ワーク押え34によるワークWに対する押え力と、姿勢保持板12及び第1ワーク押え14によるワークWに対する押え力とは、互いに直交する方向へ作用している。これによって、ワークWを所定位置へさらに精度良く安定して位置決めできる。
【0026】
一実施形態では、図3に示すように、付勢ユニット40は、接触子19を弾性的に付勢するように構成されたエアシリンダ41を含む。これによって、付勢ユニット40をコンパクト化できると共に、エアシリンダ41の内部空気圧を調整することで、接触子19がワークWに加える付勢力を調整できる。
【0027】
一実施形態では、エアシリンダ41は、姿勢保持面12aに対して姿勢保持板12の反対側の面に固定されている。これによって、エアシリンダ41は姿勢保持板12と共に移動するため、ワークWの移動のじゃまにならないように配置できる。
【0028】
一実施形態では、図3に示すように、接触子19は、姿勢保持板12の姿勢保持面12aに取り付けられた軸46と、一端が軸46に取り付けられ軸46を中心に回動可能なアーム48と、軸46と反対側のアーム48の先端部に取り付けられた接触バー50とで構成されている。接触バー50は鉛直方向と交差する方向(図1では、ほぼ水平方向)に延在するため、クランパ22で鉛直方向に吊架されたワークWが水平方向へ多少ずれても確実にワークWに接触できる。
また、一実施形態では、エアシリンダ41のピストンの先端部は軸46に取り付けられたアーム44の一端部に軸42を介して軸中心に回動可能に取り付けられている。これによって、該ピストンの伸縮によって、アーム48を軸46回りに回動させることができる。
【0029】
一実施形態では、図2に示すように、ワークWが姿勢保持面12a上に固定された状態で、クランパ22の上昇が開始する前に、コントローラ30によって、第2ワーク押え34がワークWから退避するように動作させる。これによって、クランパ22の上昇が開始する前に、第2ワーク押え34をワークWから退避できるため、第2ワーク押え34が上昇するワークWに干渉しない。これによって、ワークWの上昇をスムーズに行うことができる。
【0030】
図4は、一実施形態に係るワーク計測装置10の制御系を示す。図4に示すように、移動ユニット20によるワークWの移動量を検出可能な移動量検出部52と、ワークWの表面に倣う接触子19の位置を検出する位置検出部53とを備えている。また、コントローラ30は、軌跡演算部54を内蔵し、軌跡演算部54は、移動量検出部52及び位置検出部53の検出値を座標軸とした二次元座標上に接触子19の軌跡をプロット可能に構成されている。これによって、二次元座標上に表示された接触子19の軌跡から、ワークWの形態を正確に把握できる。
【0031】
一実施形態では、位置検出部53はエンコーダで構成される。図3に示すように、該エンコーダは姿勢保持板12の裏面に設けられ、軸46は姿勢保持板12を貫通するように配置され、該エンコーダに連結されている。該エンコーダは、軸46の回動角から接触子19の位置を検出する。
【0032】
一実施形態では、図4に示すように、コントローラ30は表示部56を備え、二次元座標上に表示された接触子19の軌跡は表示部56に表示される。図5は、表示部56に表示された接触子19の軌跡の一例を示す。同図中、A点は、姿勢保持板12及び第1ワーク押え14によってワークWが姿勢保持面12aに接するように挟持され、移動ユニット20によってワークWが上昇する前の接触子19の位置を示す。また、B点は、ワークWが上昇して接触子19がワークWから離れた瞬間の接触子19の位置を示す。長さLは、ワークWが移動する前に、接触子19が接触していた位置から、クランパ22によるクランプ位置側と反対側のワークWの最下端までの長さを示している。長さLからワークWの全長を演算できる。
【0033】
上記実施形態では、接触子19は、接触子19に対してワークWが相対移動する方向において第1ワーク押え14の下流側でワークWに接触するよう構成されている。即ち、図1図3に示すように、移動ユニット20によってワークWが上昇する実施形態においては、接触子19はクランパ22によってワークWが吊架させる位置の近傍でワークWに接触するので、長さLは、ワークWのほぼ全長に近い。従って、接触子19の軌跡によってワークWのほぼ全長に近い形態を正確に計測できる。
【0034】
一実施形態に係る筋入れシステム60は、上述の各実施形態に係るワーク計測装置10と、ワークWが姿勢保持面12a及び第1ワーク押え14の間で挟持されたときのワーク位置に対して進退可能に配置された筋入れ刃62と、を備えている。筋入れシステム60は、例えば、骨付き肉を筋入れから完全に肉部と骨部とに分離する自動脱骨装置に適用される。この場合、ワークWを吊架したクランパ22は、自動脱骨装置を構成する複数の処理ステーションに順々に移動してワークWの脱骨処理を行う。筋入れシステム60は自動脱骨装置の筋入れステーションを構成する。
【0035】
ワークWがクランパ22で筋入れシステム60に搬送され、姿勢保持板12の前面に位置したとき、姿勢保持面12a及び第1ワーク押え14の間でワークWを挟持する。そして、クランパ22と共にワークWが移動する前に、筋入れ刃62をワークWに挿入する。その後、ワークWが接触子19及び筋入れ刃62に対して相対移動すると、ワークWの形態計測と筋入れとを同時に行うことができる。従って、筋入れシステム60が自動脱骨装置に適用された場合、自動脱骨装置をコンパクト化できる。また、個々のワークWの全長を測定することで、その後の骨肉分離工程で肉部の歩留まりを向上できる。
【0036】
一実施形態では、筋入れ刃62は支持部64に支持され、姿勢保持面12a上の筋入れ位置(ワーク計測位置と同じ位置)に保持されたワークWに対して接近又は離隔可能に構成されている。
一実施形態では、筋入れ刃62は、接触子19に対してワークWが相対移動する方向において第1ワーク押え14の下流側でワークWに挿入可能に構成されている。これによって、クランパ22の近傍から最下部までほぼワーク全長に筋入れできる。
図1図3に示す実施形態では、筋入れ刃62は接触子19及び第2ワーク押え34で挟持される位置の付近に筋入れ刃62を挿入できる。これによって、ワークWのほぼ全長に亘り筋入れが可能になる。
【0037】
一実施形態では、ワークWは骨付き肢肉である。図6は、一例として食鳥の骨付き肢肉を示している。この骨付き肢肉Mbは、骨部bと骨部bの周囲に付着する肉部mを有している。軸方向中央部にひざ部Nを有し、ひざ部Nの内側にひざ関節部nが存在する。移動ユニット20は骨付き肢肉Mbを吊架可能なクランパ22と、クランパ22を鉛直方向に沿って上昇させる駆動部24とを有している。そして、筋入れ刃62は肢首部fに挿入されるように構成されている。クランパ22の開口22aに肢首部fが挿入されて吊架され、矢印a方向へ上昇する過程でワークWの形態計測と筋入れとが同時に行われる。筋入れ刃62は肢首部fに挿入されるため、骨付き肢肉Mbの全長に亘り筋入れできる。従って、自動脱骨装置に適用された場合、自動脱骨装置をコンパクト化できると共に、個々のワークWの全長を測定することで、その後の骨肉分離工程で肉部の歩留まりを向上できる。
【0038】
一実施形態では、ワークWが相対移動するとワークWが第2ワーク押え34に干渉するので、上述のように、ワークWが移動する前に、第2ワーク押え34はワークWから離れる。この場合、接触子19のみの押えとなるので、ワークWが接触子19と反対方向へ移動しやすい。これを抑制するため、一実施形態では、図6に示すように、筋入れ刃62を接触子19と反対側の骨部bの表面に接触するように挿入する。これによって、ワークWに作用する接触子19の付勢力は、筋入れ刃62が第2ワーク押え34の代わりに骨部bを支持することで受け止めるため、筋入れ時におけるワークWの水平方向のぶれを抑制できる。この状態でワークWを矢印a方向へ相対移動させることで、骨部bと肉部mとの間に精度良く切れ目cを形成できる。
【0039】
一実施形態では、クランパ22と共にワークWが上昇する時、コントローラ30は、接触子19のワークWに対する付勢力を上昇前より減少させる。これによって、適度な力でワークWを筋入れ刃62に押し当てることができるため、骨部bに沿った筋入れが可能になる。
【0040】
骨付き肢肉Mbが食鳥の骨付き肢肉である場合、骨付き肢肉Mbの一方の面は皮で覆われた皮面とないR、他方の面は皮がなく肉面が露出した肉面となる。一実施形態では、図1図3に示すように、肉面s1が筋入れ刃62側を向くように姿勢保持面12a上に固定し、筋入れ工程では、肉面s1に筋入れ刃62が挿入されるようにする。これによって、皮面に傷が付かないので、正肉としての価値を高めることができる。
【0041】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0042】
1)一態様に係るワーク計測装置(10)は、ワーク(W)の姿勢を保持するための姿勢保持面(12a)と、前記ワーク(W)を挟んで前記姿勢保持面(12a)と反対側から、前記姿勢保持面(12a)に対して前記ワークを押付け可能な第1ワーク押え(14)と、前記ワークに接触可能に設けられた接触子(19)と、前記第1ワーク押え(14)によって前記姿勢保持面(12a)に押し付けられた前記ワーク(W)を前記接触子(19)に対して相対的に移動させるための移動ユニット(20)と、を備え、前記接触子(19)は、前記移動ユニット(20)による前記ワーク(W)の相対移動方向において前記第1ワーク押え(14)の下流側にて前記ワーク(W)に接触するように構成されている。
【0043】
このような構成によれば、接触子は、移動ユニットによるワークの相対移動方向において第1ワーク押えの下流側でワークに接触するため、第1ワーク押えの押圧力でワークが変形する部位ではない部位を倣うことができる。そのため、ワークの真の形態を計測できる。また、接触子は、移動ユニットによるワークの相対移動方向において第1ワーク押えの下流側でワークに接触するため、ワークの移動によってワークのほぼ全長に近い領域を倣うことができ、そのため、ワークのほぼ全長に近いワーク形態を計測できる。
【0044】
2)別な態様に係るワーク計測装置(10)は、1)に記載のワーク計測装置であって、前記相対移動方向において前記第1ワーク押え(14)の下流側にて、前記接触子(19)とは反対側に設けられ前記接触子(19)と共に前記ワーク(W)を挟む第2ワーク押え(34)を備える。
【0045】
このような構成によれば、第1ワーク押えの下流側で接触子と第2ワーク押えとでワークを両側から挟むため、ワークを移動ユニットの支持位置近傍で支持でき、これによって、ワークを安定して所定位置に保持できる。
【0046】
3)さらに別な態様に係るワーク計測装置(10)は、2)に記載のワーク計測装置であって、前記移動ユニット(20)による前記ワーク(W)の移動が開始する前に、前記第2ワーク押え(34)を前記ワーク(W)から退避させるコントローラ(30)を備える。
【0047】
このような構成によれば、移動ユニットによるワークの移動が開始する前に、第2ワーク押えをワークから退避できるため、第2ワーク押えが上昇するワークに干渉しない。これによって、ワークの上昇をスムーズに行うことができる。
【0048】
4)さらに別な態様に係るワーク計測装置(10)は、2)又は3)に記載のワーク計測装置であって、前記第2ワーク押え(34)に向けて前記接触子(19)を前記姿勢保持面(12a)に沿う方向に付勢するための付勢ユニット(40)を備える。
【0049】
このような構成によれば、接触子をワークの表面に付勢力をもって倣わせることができるため、ワークの表面形状が変化しても、接触子を常にワークの表面に沿わせることができる。これによって、ワークの表面形状を正確に計測できる。
【0050】
5)さらに別な態様に係るワーク計測装置は、4)に記載のワーク計測装置であって、前記付勢ユニット(40)は、前記接触子(19)を弾性的に付勢するように構成されたエアシリンダ(41)を含む。
【0051】
このような構成によれば、付勢ユニットはエアシリンダを含むためコンパクト化できると共に、エアシリンダの空気圧を調整することで、ワークに対する接触子の付勢力を調整できる。
【0052】
6)さらに別な態様に係るワーク計測装置(10)は、1)乃至5)の何れかに記載のワーク計測装置であって、前記移動ユニット(20)は、前記ワーク(W)を吊架可能なクランパ(22)と、前記クランパ(22)を鉛直方向に沿って上昇させるための駆動部(24)と、を有する。
【0053】
このような構成によれば、移動ユニットがワークを吊架可能なクランパを含むことでコンパクト化できると共に、ワーク計測装置が自動脱骨装置に適用された場合、ワークを吊架したクランパをそのまま他の処理ステーションに移送させて脱骨処理を行うことができるため、ワークをクランパに吊架させたまま複数の処理工程を連続して行うことができる。
【0054】
7)さらに別な態様に係るワーク計測装置(10)は、1)乃至6)の何れかに記載のワーク計測装置であって、前記移動ユニット(20)による前記ワーク(W)の移動量を検出可能な移動量検出部(52)と、前記接触子(19)の位置を検出する位置検出部(53)と、前記移動量検出部(52)及び前記位置検出部(53)の検出値を座標軸とした二次元座標上に前記接触子(19)の軌跡をプロット可能な軌跡演算部(54)と、を備える。
【0055】
このような構成によれば、接触子の軌跡を二次元座標上に表すことができるため、ワークの表面形状を正確に把握でき、これによって、ワークの形態を正確に把握できる。
【0056】
8)一態様に係る筋入れシステム(60)は、上述のワーク計測装置と、前記ワーク(W)が前記姿勢保持面(12a)及び前記第1ワーク押え(14)で挟持されたときのワーク位置に対して進退可能に配置された筋入れ刃(62)と、を備える。
【0057】
このような構成によれば、上記筋入れ刃をワークに挿入した状態で、移動ユニットによりワークを接触子及び筋入れ刃に対して相対移動させることで、ワークの形態計測と同時に、ワークの筋入れを行うことができる。従って、自動脱骨装置に適用したとき、自動脱骨装置をコンパクト化できると共に、個々のワークの全長を測定することで、その後の骨肉分離工程で肉部の歩留まりを向上できる。
【0058】
9)別な態様に係る筋入れシステム(60)は、8)に記載の筋入れシステムであって、前記ワーク(W)は骨付き肢肉(Mb)であって、前記移動ユニット(20)は、前記骨付き肢肉(Mb)を吊架可能なクランパ(22)と、前記クランパ(22)を鉛直方向に沿って上昇させるための駆動部(24)と、を有し、前記骨付き肢肉(Mb)は前記クランパ(22)に肢首部(f)でクランプされ、前記筋入れ刃(62)は前記肢首部(f)に挿入されるように構成されている。
【0059】
このような構成によれば、筋入れ刃が肢首部に挿入された状態でワークを上昇させることで、骨付き肢肉をほぼ全長に亘り筋入れできる。
【符号の説明】
【0060】
10 ワーク計測装置
12 姿勢保持板
12a 姿勢保持面
14 第1ワーク押え
16、24、28 駆動部
17 リンク機構
18、38、41 エアシリンダ
38a ピストン
19 接触子
20 移動ユニット
22 クランパ
22a 開口
26 チャック
30 コントローラ
32、64 支持部
34 第2ワーク押え
36、42、46 軸
40 付勢ユニット
44、48 アーム
50 接触バー
52 移動量検出部
53 位置検出部
54 軌跡演算部
60 筋入れシステム
62 筋入れ刃
Mb 骨付き肢肉
N ひざ部
W ワーク
b 骨部
f 肢首部
m 肉部
n ひざ関節部
図1
図2
図3
図4
図5
図6