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特許7526093表面処理銅箔、銅張積層板及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】表面処理銅箔、銅張積層板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/06 20060101AFI20240724BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20240724BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20240724BHJP
   C25D 5/16 20060101ALI20240724BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C25D7/06 A
B32B15/01 H
C25D5/12
C25D5/16
H05K1/09 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020516358
(86)(22)【出願日】2019-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2019017096
(87)【国際公開番号】W WO2019208525
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2018087551
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018087554
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018105116
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018136096
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 宣明
(72)【発明者】
【氏名】三木 敦史
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】井上 猛
【審判官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/06
B32B 15/08
C25D 5/12
C25D 5/16
H05K 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔と、前記銅箔の一方の面に形成された第一表面処理層とを有し、
前記第一表面処理層は、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqが1025°であり、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線のクルトシスRkuが2.0~8.0である表面処理銅箔。
【請求項2】
前記RΔqが15~23°である、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項3】
前記Rkuが3.5~5.8である、請求項1又は2に記載の表面処理銅箔。
【請求項4】
前記第一表面処理層は、CIE L***表色系のa*が3.0~28.0である、請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項5】
前記a*が5.0~23.0である、請求項に記載の表面処理銅箔。
【請求項6】
前記第一表面処理層は、Ni付着量が20~200μg/dm2、Zn付着量が20~1000μg/dm2である、請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項7】
前記第一表面処理層は、XPSのデプスプロファイルにおいて、スパッタリングレート2.5nm/分(SiO2換算)で7分スパッタリングを行ったときのC、N、O、Zn、Cr、Ni、Co、Si及びCuの元素の合計量に対するCu濃度が80~100atm%である、請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項8】
前記第一表面処理層は、以下の(A)~(F)の少なくとも1つを満たす、請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
(A)JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線のクルトシスRkuが2.0~8.0である
(B)JIS Z8730:2009の幾何条件Cに基づき測定されるCIE L***表色系のa*が3.0~28.0である
(C)XPSのデプスプロファイルにおいて、スパッタリングレート2.5nm/分(SiO2換算)で7分スパッタリングを行ったときのC、N、O、Zn、Cr、Ni、Co、Si及びCuの元素の合計量に対するCu濃度が80~100atm%である
(D)JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線要素の平均長さRSmが5~10μmである
(E)JIS B0631:2000に基づく粗さモチーフの平均長さARが6~20μmである
(F)JIS B0601:1994に基づく十点平均粗さRzが0.3~1.5μmである
【請求項9】
前記表面処理銅箔の、前記第一表面処理層と反対側の面の十点平均粗さRzが0.3~1.0μmである、請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項10】
前記銅箔が圧延銅箔である、請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の表面処理銅箔と、前記表面処理銅箔の第一表面処理層に接着された絶縁基材とを備える銅張積層板。
【請求項12】
請求項11に記載の銅張積層板の前記表面処理銅箔をエッチングして形成された回路パターンを備えるプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面処理銅箔、銅張積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化などのニーズの増大に伴い、電子機器に搭載されるプリント配線板に対する回路パターン(「導体パターン」ともいう)のファインピッチ化(微細化)が要求されている。
プリント配線板の製造方法としては、サブトラクティブ法、セミアディティブ法などの様々な方法が知られている。その中でもサブトラクティブ法では、銅箔に絶縁基材を接着させて銅張積層板を形成した後、銅箔表面にレジストを塗布及び露光して所定のレジストパターンを形成し、レジストパターンが形成されていない部分(不要部)をエッチングにて除去することによって回路パターンが形成される。
【0003】
上記のファインピッチ化の要求に対し、例えば、特許文献1には、銅箔の表面に銅-コバルト-ニッケル合金めっきによる粗化処理を行った後、コバルト-ニッケル合金めっき層を形成し、更に亜鉛-ニッケル合金めっき層を形成することにより、回路パターンのファインピッチ化が可能な表面処理銅箔が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2849059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の表面処理銅箔は、表面処理層(めっき層)のエッチング速度が銅箔のエッチング速度に比べて遅いため、銅箔表面(トップ)から絶縁基材(ボトム)側に向かって末広がりにエッチングされてしまい、回路パターンのエッチングファクタが低下するという問題がある。そして、回路パターンのエッチングファクタが低いと、隣接する回路間のスペースを広くする必要があるため、回路パターンのファインピッチ化が難しくなる。
【0006】
また、回路パターンには絶縁基材から剥がれ難いことも一般に要求されるが、回路パターンのファインピッチ化によって絶縁基材との接着性を確保することが難しくなっている。そのため、回路パターンと絶縁基材との接着性を高めることも必要となっている。
【0007】
本発明の実施形態は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、絶縁基材との接着性に優れると共に、ファインピッチ化に適した高エッチングファクタの回路パターンを形成することが可能な表面処理銅箔及び銅張積層板を提供することを目的とする。
また、本発明の実施形態は、絶縁基材との接着性に優れる高エッチングファクタの回路パターンを有するプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、銅箔の一方の面に形成された表面処理層において、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqを特定の範囲に制御することにより、絶縁基材に対する回路パターンの接着性及び回路パターンのエッチングファクタの両方を高め得ることを見出し、本発明の実施形態に至った。
【0009】
すなわち、本発明の実施形態は、銅箔と、前記銅箔の一方の面に形成された第一表面処理層とを有し、前記第一表面処理層は、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqが1025°であり、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線のクルトシスRkuが2.0~8.0である表面処理銅箔に関する。
また、本発明の実施形態は、表面処理銅箔と、前記表面処理銅箔の第一表面処理層に接着された絶縁基材とを備える銅張積層板に関する。
さらに、本発明の実施形態は、前記銅張積層板の前記表面処理銅箔をエッチングして形成された回路パターンを備えるプリント配線板に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、絶縁基材との接着性に優れると共に、ファインピッチ化に適した高エッチングファクタの回路パターンを形成することが可能な表面処理銅箔及び銅張積層板を提供することができる。
また、本発明の実施形態によれば、絶縁基材との接着性に優れる高エッチングファクタの回路パターンを有するプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の表面処理銅箔を用いた銅張積層板の断面図である。
図2】エッチング残渣を説明するための回路パターンのSEM像である。
図3】第二表面処理層をさらに有する本発明の実施形態の表面処理銅箔を用いた銅張積層板の断面図である。
図4】サブトラクティブ法によるプリント配線板の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、改良などを行うことができる。この実施形態に開示されている複数の構成要素は、適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、この実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の表面処理銅箔を用いた銅張積層板の断面図である。
表面処理銅箔1は、銅箔2と、銅箔2の一方の面に形成された第一表面処理層3とを有する。また、銅張積層板10は、表面処理銅箔1と、表面処理銅箔1の第一表面処理層3に接着された絶縁基材11とを有する。
【0014】
第一表面処理層3は、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqが5~28°である。
ここで、RΔqは、表面の凹凸形状の傾きを表す指標である。RΔqが大きくなると、凹凸形状の傾きが大きくなるため、表面処理銅箔1の絶縁基材11に対する接着力は強くなるが、エッチング処理で溶け残る部分が発生し易くなる。すなわち、エッチング処理によってボトム部が裾を引いたような台形形状の回路パターンになり易く、エッチングファクタが低下する傾向にある。一方、RΔqが小さくなると、上記と逆の傾向になり易い。
【0015】
そこで、絶縁基材11に対する接着性の向上とエッチング性の向上とを両立させるために、第一表面処理層3のRΔqを上記の範囲に制御している。このようなRΔqの制御を行うことにより、第一表面処理層3の表面を、絶縁基材11に対する接着性の向上とエッチング性の向上とを両立させるのに適した表面形状にすることができる。具体的には、第一表面処理層3の表面の凹凸形状の傾きが適切な状態となるため、回路パターンのエッチングファクタ及び絶縁基材11に対する接着性を高めることができる。このような効果を安定して得る観点からは、RΔqを10~25°に制御することが好ましく、15~23°に制御することがより好ましい。
【0016】
第一表面処理層3は、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線のクルトシスRkuが2.0~8.0であることが好ましい。
ここで、Rkuは、表面の凹凸分布の尖りの度合いを表す指標である。Rkuが大きいことは、粒子高さの分布が平均近くに集中していること、すなわち、粒子高さのばらつきが抑えられていることを意味する。したがって、Rkuが大きくなると、表面処理銅箔1の絶縁基材11に対する接着力は強く、且つエッチング処理で溶け残る部分が発生し難くなる。すなわち、エッチング処理によってボトム部が裾を引いたような台形形状の回路パターンになり難く、エッチングファクタが向上する傾向にある。一方、Rkuが小さくなると、上記と逆の傾向になり易い。すなわち、エッチングファクタが低下し、且つ表面処理銅箔1の絶縁基材11に対する接着力が低下する傾向にある。
そこで、絶縁基材11に対する接着性の向上とエッチング性の向上とを両立させるために、第一表面処理層3のRkuを上記の範囲に制御することが望ましい。このようなRkuの制御を行うことにより、第一表面処理層3の表面を、絶縁基材11に対する接着性の向上とエッチング性の向上とを両立させるのに適した表面形状にすることができる。
【0017】
また、第一表面処理層3のRkuは、エッチング残渣とも関連している。エッチング残渣は、回路パターンをエッチングによって形成した後に回路パターンの周囲に残る絶縁基材11上の残渣のことであり、図2に示すような回路パターンのSEM像(3000倍)によって確認することができる。エッチング残渣が多くなると、回路幅の狭い回路パターンでは短絡が生じ易くなるため、回路パターンのファインピッチ化の観点からは好ましくない。そこで、エッチング残渣を少なくするために、Rkuを上記の範囲に制御することが好ましい。
上記のような効果(絶縁基材11に対する接着性の向上とエッチング性の向上との両立、及びエッチング残渣の低減)を安定して得る観点からは、Rkuを3.5~5.8に制御することがより好ましい。
【0018】
第一表面処理層3は、JIS Z8730:2009の幾何条件Cに基づき測定されるCIE L***表色系のa*(以下、「a*」ともいう。)が3.0~28.0であることが好ましい。a*は赤色を表現する値であり、銅は赤色に近い色を呈する。そのため、a*を上記の範囲内に制御することにより、第一表面処理層3中の銅の量を、エッチング液への溶解性が良好な範囲に調整することができるため、回路パターンのエッチングファクタを高めることができる。このような効果を安定して得る観点からは、a*を5.0~23.0に制御することが好ましい。
【0019】
第一表面処理層3は、XPSのデプスプロファイルにおいて、スパッタリングレート2.5nm/分(SiO2換算)で7分スパッタリングを行ったときのC、N、O、Zn、Cr、Ni、Co、Si及びCuの元素の合計量に対するCu濃度が80~100atm%(原子%)であることが好ましい。この範囲にCu濃度を制御することにより、エッチング液に対する溶解性を調節することができるため、回路パターンのエッチングファクタを高めることができる。このような効果を安定して得る観点からは、Cu濃度を85~100atm%に制御することが好ましい。
ここで、本明細書において「スパッタリングレート2.5nm/分(SiO2換算)で7分スパッタリングを行った」とは、「SiO2をスパッタリングした場合に、SiO2がスパッタリングレート2.5nm/分で7分スパッタリングされる条件下でスパッタリングを行った」ことを意味する。より具体的には、本発明の実施形態においては、本発明の実施形態に係る表面処理銅箔1の第一表面処理層3を、高真空下、3kVで加速したAr+によってスパッタリングを行ったことを意味する。
【0020】
第一表面処理層3は、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線要素の平均長さRSmが5~10μmであることが好ましい。
ここで、RSmは、表面の凹凸形状の平均間隔を表す指標である。一般的に、第一表面処理層3を形成する粒子のサイズが大きくなると、表面の凹凸間隔が広くなるためRSmが大きくなる。RSmが大きくなると、表面処理銅箔1の絶縁基材11に対する接着力は強くなるが、エッチング処理で溶け残る部分が発生し易くなる。すなわち、エッチング処理によってボトム部が裾を引いたような台形形状の回路パターンになり易く、エッチングファクタが低下する傾向にある。一方、第一表面処理層3を形成する粒子のサイズが小さくなると、上記と逆の傾向になり易い。すなわち、エッチングファクタは向上するが、表面処理銅箔1の絶縁基材11に対する接着力が低下する傾向にある。
【0021】
そこで、絶縁基材11に対する接着性の向上とエッチング性の向上とを両立させるために、第一表面処理層3のRSmを上記の範囲に制御することが望ましい。このようなRSmの制御を行うことにより、第一表面処理層3の表面を、絶縁基材11に対する接着性の向上とエッチング性の向上とを両立させるのに適した表面形状にすることができる。具体的には、第一表面処理層3の表面の凹凸形状が適切なバランスで形成されるため、回路パターンのエッチングファクタ及び絶縁基材11に対する接着性を高めることができる。このような効果を安定して得る観点からは、RSmを5~9μmに制御することがより好ましい。
【0022】
第一表面処理層3は、JIS B0631:2000に基づく粗さモチーフの平均長さARが6~20μmであることが好ましい。
ここで、ARは、表面の微細な凹凸形状を表す指標である。一般的に、第一表面処理層3を形成する粒子のサイズが大きくなると、表面の凹凸間隔が広くなるためARが大きくなる。ARが大きくなると、表面処理銅箔1の絶縁基材11に対する接着力は強くなるが、エッチング処理で溶け残る部分が発生し易くなる。すなわち、エッチング処理によってボトム部が裾を引いたような台形形状の回路パターンになり易く、エッチングファクタが低下する傾向にある。一方、第一表面処理層3を形成する粒子のサイズが小さくなると、上記と逆の傾向になり易い。すなわち、エッチングファクタは向上するが、表面処理銅箔1の絶縁基材11に対する接着力が低下する傾向にある。
【0023】
そこで、絶縁基材11に対する接着性の向上とエッチング性の向上とを両立させるために、第一表面処理層3のARを上記の範囲に制御することが望ましい。このようなARの制御を行うことにより、第一表面処理層3の表面を、絶縁基材11に対する接着性の向上とエッチング性の向上とを両立させるのに適した表面形状にすることができる。具体的には、第一表面処理層3の表面の凹凸形状が適切なバランスで形成されるため、回路パターンのエッチングファクタ及び絶縁基材11に対する接着性を高めることができる。このような効果を安定して得る観点からは、ARを7~18μmに制御することがより好ましい。
【0024】
第一表面処理層3のRzは、特に限定されないが、好ましくは0.3~1.5μm、より好ましくは0.4~1.2μm、さらに好ましくは0.5~0.9μmである。第一表面処理層3のRzを上記範囲内とすることにより、絶縁基材11との接着性と回路形成性の両立を図ることができる。
ここで、本明細書において「Rz」とは、JIS B0601:1994に規定される十点平均粗さを意味する。
【0025】
第一表面処理層3は、付着元素としてNi及びZnを少なくとも含むことが好ましい。
Niはエッチング液に溶解し難い成分であるため、第一表面処理層3のNi付着量を200μg/dm2以下に制御することにより、第一表面処理層3がエッチング液に溶解し易くなる。その結果、回路パターンのエッチングファクタを高めることが可能になる。このエッチングファクタを安定して高める観点からは、第一表面処理層3のNi付着量を、好ましくは180μg/dm2以下、より好ましくは100μg/dm2以下に制御する。一方、第一表面処理層3による所定の効果(例えば、耐熱性など)を確保する観点から、第一表面処理層3のNi付着量を20μg/dm2以上に制御する。
また、回路パターンを形成した後には金めっきなどの表面処理が行われることがあるが、その前処理として、回路パターンの表面から不要な物質を取り除くソフトエッチングを行うと、回路パターンのエッジ部にソフトエッチング液が染み込むことがある。Niは、このソフトエッチング液の染み込みを抑制する効果がある。この効果を十分に確保する観点からは、第一表面処理層3のNi付着量を、30μg/dm2以上に制御することが好ましく、40μg/dm2以上に制御することがより好ましい。
【0026】
Znは、Niに比べてエッチング液に溶解し易いため、比較的多く付着させることができる。そのため、第一表面処理層3のZn付着量を1000μg/dm2以下に制御することにより、第一表面処理層3が溶解し易くなる結果、回路パターンのエッチングファクタを高めることが可能になる。このエッチングファクタを安定して高める観点からは、第一表面処理層3のZn付着量を、好ましくは700μg/dm2以下、より好ましくは600μg/dm2以下に制御する。一方、第一表面処理層3による所定の効果(例えば、耐熱性、耐薬品性など)を確保する観点から、第一表面処理層3のZn付着量を20μg/dm2以上、好ましくは100μg/dm2以上、より好ましくは300μg/dm2以上に制御する。例えば、Znは銅の熱拡散を防止するバリア効果があるため、粗化粒子及び銅箔中の銅が熱拡散によって表層に出てくることを抑制することができる。その結果、銅がソフトエッチング液などの薬液に直接触れ難くなるため、回路パターンのエッジ部にソフトエッチング液が染み込むことを抑制することが可能になる。
【0027】
第一表面処理層3は、付着元素として、Ni及びZn以外にCo、Crなどの元素をさらに含むことができる。
第一表面処理層3のCo付着量は、第一表面処理層3の種類に依存するため特に限定されないが、好ましくは1500μg/dm2以下、より好ましくは500μg/dm2以下、さらに好ましくは100μg/dm2以下、特に好ましくは30μg/dm2以下である。第一表面処理層3のCo付着量を上記範囲内とすることにより、回路パターンのエッチングファクタを安定して高めることができる。なお、Co付着量の下限は、特に限定されないが、典型的に0.1μg/dm2、好ましくは0.5μg/dm2である。
また、Coは磁性金属であるため、第一表面処理層3のCo付着量を特に100μg/dm2以下、好ましくは0.5~100μg/dm2に抑えることにより、高周波特性に優れたプリント配線板を作製可能な表面処理銅箔1を得ることができる。
【0028】
第一表面処理層3のCr付着量は、第一表面処理層3の種類に依存するため特に限定されないが、好ましくは500μg/dm2以下、より好ましくは0.5~300μg/dm2、さらに好ましくは1~100μg/dm2である。第一表面処理層3のCr付着量を上記範囲内とすることにより、防錆効果を得るととともに、回路パターンのエッチングファクタを安定して高めることができる。
【0029】
第一表面処理層3の種類は、特に限定されず、当該技術分野において公知の各種表面処理層を用いることができる。第一表面処理層3に用いられる表面処理層の例としては、粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層などが挙げられる。これらの層は、単一又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その中でも第一表面処理層3は、絶縁基材11との接着性の観点から、粗化処理層を有することが好ましい。
ここで、本明細書において「粗化処理層」とは、粗化処理によって形成される層であり、粗化粒子の層を含む。また、粗化処理では、前処理として通常の銅メッキなどが行われたり、仕上げ処理として粗化粒子の脱落を防止するために通常の銅メッキなどが行われたりする場合があるが、本明細書における「粗化処理層」は、これらの前処理及び仕上げ処理によって形成される層を含む。
【0030】
粗化粒子としては、特に限定されないが、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金から形成することができる。また、粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体又は合金などで二次粒子及び三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。
【0031】
粗化処理層は、電気めっきによって形成することができる。その条件は、特に限定されないが、典型的な条件は以下の通りである。また、電気めっきは2段階に分けて行ってもよい。
めっき液組成:10~20g/LのCu、50~100g/Lの硫酸
めっき液温度:25~50℃
電気めっき条件:電流密度1~60A/dm2、時間1~10秒
【0032】
耐熱層及び防錆層としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の材料から形成することができる。なお、耐熱層は防錆層としても機能することがあるため、耐熱層及び防錆層として、耐熱層及び防錆層の両方の機能を有する1つの層を形成してもよい。
耐熱層及び/又は防錆層としては、ニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選択される1種以上の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物などのいずれの形態であってもよい)を含む層であることができる。耐熱層及び/又は防錆層の例としては、ニッケル-亜鉛合金を含む層が挙げられる。
【0033】
耐熱層及び防錆層は、電気めっきによって形成することができる。その条件は、特に限定されないが、典型的な耐熱層(Ni-Zn層)の条件は以下の通りである。
めっき液組成:1~30g/LのNi、1~30g/LのZn
めっき液pH:2~5
めっき液温度:30~50℃
電気めっき条件:電流密度1~10A/dm2、時間0.1~5秒
【0034】
クロメート処理層としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の材料から形成することができる。
ここで、本明細書において「クロメート処理層」とは、無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩又は二クロム酸塩を含む液で形成された層を意味する。クロメート処理層は、コバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素、チタンなどの元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物などのいずれの形態であってもよい)を含む層であることができる。クロメート処理層の例としては、無水クロム酸又は二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層、無水クロム酸又は二クロム酸カリウム及び亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層などが挙げられる。
【0035】
クロメート処理層は、浸漬クロメート処理、電解クロメート処理などの公知の方法によって形成することができる。それらの条件は、特に限定されないが、例えば、典型的な浸漬クロメート処理層の条件は以下の通りである。
クロメート液組成:1~10g/LのK2Cr27、0.01~10g/LのZn
クロメート液pH:2~5
クロメート液温度:30~50℃
【0036】
シランカップリング処理層としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の材料から形成することができる。
ここで、本明細書において「シランカップリング処理層」とは、シランカップリング剤で形成された層を意味する。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。シランカップリング剤の例としては、アミノ系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、メタクリロキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、イミダゾール系シランカップリング剤、トリアジン系シランカップリング剤などが挙げられる。これらの中でも、アミノ系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤が好ましい。上述のシランカップリング剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
シランカップリング剤は、公知の方法によって製造することができるが、市販品を用いてもよい。シランカップリング剤として利用可能な市販品の例としては、信越化学工業株式会社製のKBMシリーズ、KBEシリーズなどが挙げられる。市販品のシランカップリング剤は、単独で用いてもよいが、第一表面処理層3と絶縁基材11との接着性(ピール強度)の観点から、2種以上のシランカップリング剤の混合物とすることが好ましい。その中でも好ましいシランカップリング剤の混合物は、KBM603(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)とKBM503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)との混合物、KBM602(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシシラン)とKBM503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)との混合物、KBM603(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)とKBE503(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)との混合物、KBM602(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシシラン)とKBE503(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)との混合物、KBM903(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)とKBM503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)との混合物、KBE903(3-アミノトリエトキシシラン)とKBM503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)との混合物、KBE903(3-アミノトリエトキシシラン)とKBE503(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)との混合物、KBM903(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)とKBE503(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)との混合物である。
2種以上のシランカップリング剤の混合物とする場合、その混合比率は、特に限定されず、使用するシランカップリング剤の種類に応じて適宜調整すればよい。
【0038】
また、表面処理銅箔1は、図3に示すように、銅箔2の他方の面に形成された第二表面処理層4をさらに有することができる。
第二表面処理層4の種類は、特に限定されず、第一表面処理層3と同様に、当該技術分野において公知の各種表面処理層を用いることができる。また、第二表面処理層4の種類は、第一表面処理層3と同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
第二表面処理層4は、付着元素として、Ni、Zn、Crなどの元素を含むことができる。
第二表面処理層4のNi付着量に対する第一表面処理層3のNi付着量の比は、好ましくは0.01~2.5、より好ましくは0.6~2.2である。Niはエッチング液に溶解し難い成分であるため、Ni付着量の比を上記の範囲とすることにより、銅張積層板10をエッチングする際に、回路パターンのボトム側となる第一表面処理層3の溶解を促進すると共に、回路パターンのトップ側となる第二表面処理層4の溶解を抑制することができる。そのため、トップ幅とボトム幅との差が小さく、エッチングファクタが高い回路パターンを得ることが可能になる。
【0040】
第二表面処理層4のNi付着量は、第二表面処理層4の種類に依存するため特に限定されないが、好ましくは0.1~500μg/dm2、より好ましくは0.5~200μg/dm2、さらに好ましくは1~100μg/dm2である。第二表面処理層4のNi付着量を上記範囲内とすることにより、回路パターンのエッチングファクタを安定して高めることができる。
【0041】
第二表面処理層4のZn付着量は、第二表面処理層4の種類に依存するため特に限定されないが、第二表面処理層4にZnが含有される場合、好ましくは10~1000μg/dm2、より好ましくは50~500μg/dm2、さらに好ましくは100~300μg/dm2である。第二表面処理層4のZn付着量を上記範囲内とすることにより、耐熱性及び耐薬品性の効果を得るとともに、回路パターンのエッチングファクタを安定して高めることができる。
【0042】
第二表面処理層4のCr付着量は、第二表面処理層4の種類に依存するため特に限定されないが、第二表面処理層4にCrが含有される場合、好ましくは0μg/dm2超過500μg/dm2以下、より好ましくは0.1~100μg/dm2、さらに好ましくは1~50μg/dm2である。第二表面処理層4のCr付着量を上記範囲内とすることにより、防錆効果を得るとともに、回路パターンのエッチングファクタを安定して高めることができる。
【0043】
銅箔2としては、特に限定されず、電解銅箔又は圧延銅箔のいずれであってもよい。電解銅箔は、硫酸銅メッキ浴からチタン又はステンレスのドラム上に銅を電解析出させることによって一般に製造されるが、ドラム側に形成される平坦なS面(シャイン面)と、S面の反対側に形成されるM面(マット面)とを有する。一般に、電解銅箔のM面は凹凸を有しているため、第一表面処理層3を電解銅箔のM面、第二表面処理層4を電解銅箔のS面に形成することにより、第一表面処理層3と絶縁基材11との接着性を高めることができる。
【0044】
銅箔2の材料としては、特に限定されないが、銅箔2が圧延銅箔の場合、プリント配線板の回路パターンとして通常使用されるタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)、無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020又はJIS H3510 合金番号C1011)などの高純度の銅を用いることができる。また、例えば、Sn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMgなどを添加した銅合金、Ni及びSiなどを添加したコルソン系銅合金のような銅合金も用いることができる。なお、本明細書において「銅箔2」とは、銅合金箔も含む概念である。
【0045】
銅箔2の厚みは、特に限定されないが、例えば1~1000μm、或いは1~500μm、或いは1~300μm、或いは3~100μm、或いは5~70μm、或いは6~35μm、或いは9~18μmとすることができる。
【0046】
表面処理銅箔1の、第一表面処理層3と反対側の面の十点平均粗さRzは、特に限定されないが、好ましくは0.3~1.0μm、より好ましくは0.4~0.9μm、さらに好ましくは0.5~0.7μmである。ここで、第一表面処理層3と反対側の面とは、第二表面処理層4が設けられているときは第二表面処理層4の表面であり、第二表面処理層4が設けられていないときは、銅箔2の表面である。
第一表面処理層3と反対側の面の十点平均粗さRzを上記範囲内とすることにより、高周波特性に優れたプリント配線板を作製可能な表面処理銅箔1を得ることができる。
【0047】
上記のような構成を有する表面処理銅箔1は、当該技術分野において公知の方法に準じて製造することができる。ここで、第一表面処理層3及び第二表面処理層4のNi付着量、Ni付着量の比は、例えば、形成する表面処理層の種類、厚みなどを変えることによって制御することができる。また、第一表面処理層3のRzは、例えば、第一表面処理層3の形成条件などを調整することによって制御することができる。
【0048】
銅張積層板10は、表面処理銅箔1の第一表面処理層3に絶縁基材11を接着することによって製造することができる。
絶縁基材11としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。絶縁基材11の例としては、紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂、ガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマー、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0049】
表面処理銅箔1と絶縁基材11との接着方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法に準じて行うことができる。例えば、表面処理銅箔1と絶縁基材11とを積層させて熱圧着すればよい。
【0050】
上記のようにして製造された銅張積層板10は、プリント配線板の製造に用いることができる。プリント配線板の製造方法としては、特に限定されず、サブトラクティブ法、セミアディティブ法などの公知の方法を用いることができる。その中でも銅張積層板10は、サブトラクティブ法で用いるのに最適である。
【0051】
図4は、サブトラクティブ法によるプリント配線板の製造方法を説明するための断面図である。
図4において、まず、銅張積層板10の表面処理銅箔1の表面にレジストを塗布、露光及び現像することによって所定のレジストパターン20を形成する(工程(a))。次に、レジストパターン20が形成されていない部分(不要部)の表面処理銅箔1をエッチングによって除去する(工程(b))。最後に、表面処理銅箔1上のレジストパターン20を除去する(工程(c))。
なお、このサブトラクティブ法における各種条件は、特に限定されず、当該技術分野において公知の条件に準じて行うことができる。
【実施例
【0052】
以下、本発明の実施形態を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
厚さ12μmの圧延銅箔(JX金属社製HA-V2箔)を準備し、一方の面に第一表面処理層として粗化処理層、耐熱層及びクロメート処理層を順次形成すると共に、他方の面に第二表面処理層として耐熱層及びクロメート処理層を順次形成することによって表面処理銅箔を得た。各層を形成するための条件は下記の通りである。
【0054】
<第一表面処理層の粗化処理層>
電気めっきによって粗化処理層を形成した。電気めっきは2段階に分けて行った。
(1段目の条件)
めっき液組成:11g/LのCu、50g/Lの硫酸
めっき液温度:25℃
電気めっき条件:電流密度42.7A/dm2、時間1.4秒
(2段目の条件)
めっき液組成:20g/LのCu、100g/Lの硫酸
めっき液温度:50℃
電気めっき条件:電流密度3.8A/dm2、時間2.8秒
【0055】
<第一表面処理層の耐熱層>
電気めっきによって耐熱層を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度1.1A/dm2、時間0.7秒
【0056】
<第一表面処理層のクロメート処理層>
電気めっきによってクロメート処理層を形成した。
めっき液組成:3.0g/LのK2Cr27、0.33g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:50℃
電気めっき条件:電流密度2.1A/dm2、時間1.4秒
【0057】
<第二表面処理層の耐熱層>
電気めっきによって耐熱層を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度2.8A/dm2、時間0.7秒
【0058】
<第二表面処理層のクロメート処理層>
浸漬クロメート処理によってクロメート処理層を形成した。
クロメート液組成:3.0g/LのK2Cr27、0.33g/LのZn
クロメート液pH:3.6
クロメート液温度:50℃
【0059】
(実施例2)
第一表面処理層の耐熱層の形成条件を下記の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理銅箔を得た。
<第一表面処理層の耐熱層>
電気めっきによって耐熱層を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度1.6A/dm2、時間0.7秒
【0060】
(実施例3)
第一表面処理層の耐熱層の形成条件を下記の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理銅箔を得た。
<第一表面処理層の耐熱層>
電気めっきによって耐熱層を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度2.6A/dm2、時間0.7秒
【0061】
(実施例4)
第一表面処理層の耐熱層の形成条件を下記の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理銅箔を得た。
<第一表面処理層の耐熱層>
電気めっきによって耐熱層を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度3.2A/dm2、時間0.7秒
【0062】
(実施例5)
第一表面処理層の耐熱層の形成条件を下記の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理銅箔を得た。
<第一表面処理層の耐熱層>
電気めっきによって耐熱層を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度4.2A/dm2、時間0.7秒
【0063】
(実施例6)
第一表面処理層及び第二表面処理層の耐熱層の形成条件を下記の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理銅箔を得た。
<第一表面処理層の耐熱層>
電気めっきによって耐熱層を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度2.1A/dm2、時間0.7秒
<第二表面処理層の耐熱層>
電気めっきによって耐熱層を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度3.3A/dm2、時間0.7秒
【0064】
(比較例1)
厚さ12μmの圧延銅箔(JX金属社製HA-V2箔)を準備し、一方の面に第一表面処理層として粗化処理層、耐熱層及びクロメート処理層を順次形成すると共に、他方の面に第二表面処理層として耐熱層及びクロメート処理層を順次形成することによって表面処理銅箔を得た。各層を形成するための条件は下記の通りである。
<第一表面処理層の粗化処理層>
電気めっきによって粗化処理層を形成した。
めっき液組成:15g/LのCu、7.5g/LのCo、9.5g/LのNi
めっき液pH:2.4
めっき液温度:36℃
電気めっき条件:電流密度31.5A/dm2、時間1.8秒
【0065】
<第一表面処理層の耐熱層(1)>
電気めっきによって耐熱層(1)を形成した。
めっき液組成:3g/LのCo、13g/LのNi
めっき液pH:2.0
めっき液温度:50℃
電気めっき条件:電流密度19.1A/dm2、時間0.4秒
【0066】
<第一表面処理層の耐熱層(2)>
電気めっきによって耐熱層(2)を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度3.5A/dm2、時間0.4秒
【0067】
<第一表面処理層のクロメート処理層>
浸漬クロメート処理によってクロメート処理層を形成した。
クロメート液組成:3g/LのK2Cr27、0.33g/LのZn
クロメート液pH:3.6
クロメート液温度:50℃
【0068】
<第二表面処理層の耐熱層>
電気めっきによって耐熱層を形成した。
めっき液組成:23.5g/LのNi、4.5g/LのZn
めっき液pH:3.6
めっき液温度:40℃
電気めっき条件:電流密度4.1A/dm2、時間0.4秒
【0069】
<第二表面処理層のクロメート処理層>
浸漬クロメート処理によってクロメート処理層を形成した。
クロメート液組成:3g/LのK2Cr27、0.33g/LのZn
クロメート液pH:3.6
クロメート液温度:50℃
【0070】
上記の実施例及び比較例で得られた表面処理銅箔について、下記の評価を行った。
<第一表面処理層及び第二表面処理層における各元素の付着量の測定>
Ni、Zn及びCoの付着量は、各表面処理層を濃度20質量%の硝酸に溶解し、VARIAN社製の原子吸光分光光度計(型式:AA240FS)を用いて原子吸光法で定量分析を行うことによって測定した。また、Crの付着量は各表面処理層を濃度7質量%の塩酸に溶解し、上記と同様に原子吸光法で定量分析を行うことによって測定した。
【0071】
<表面処理銅箔の第一表面処理層における粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔq及び平均長さRSm、並びに粗さ曲線のクルトシスRkuの測定>
JIS B0601:2013に準拠し、オリンパス株式会社製のレーザー顕微鏡(LEXT OLS4000)を用いてRΔq、RSm及びRkuを測定した。RΔq、RSm及びRkuは、任意の10か所で測定した値の平均値を測定結果とした。なお、測定時の温度は23~25℃とした。また、レーザー顕微鏡における主要な設定条件は下記の通りである。
対物レンズ:MPLAPON50LEXT(倍率:50倍、開口数:0.95、液浸タイプ:空気、機械的鏡筒長:∞、カバーガラス厚:0、視野数:FN18)
光学ズーム倍率:1倍
走査モード:XYZ高精度(高さ分解能:10nm)
取込み画像サイズ[画素数]:横257μm×縦258μm[1024×1024]
(横方向に測定するため、評価長さとしては257μmに相当)
DIC:オフ
マルチレイヤー:オフ
レーザー強度:100
オフセット:0
コンフォーカルレベル:0
ビーム径絞り:オフ
画像平均:1回
ノイズリダクション:オン
輝度むら補正:オン
光学的ノイズフィルタ:オン
カットオフ:無し(λc、λs、λf全て無し)
フィルタ:ガウシアンフィルタ
ノイズ除去:測定前処理
傾き補正:実施
最少高さの識別値:Rzに対する比の10%
【0072】
<表面処理銅箔の第一表面処理層のa*の測定>
測定器としてHunterLab社製のMiniScan(登録商標)EZ Model 4000Lを用い、JIS Z8730:2009に準拠してCIE L***表色系のa*の測定を行った。具体的には、上記の実施例及び比較例で得られた表面処理銅箔の第一表面処理層を測定器の感光部に押し当て、外から光が入らないようにしつつa*を測定した。また、a*の測定は、JIS Z8722の幾何条件Cに基づいて行った。なお、測定器の主な条件は下記の通りである。
光学系 d/8°、積分球サイズ:63.5mm、観察光源 D65
測定方式 反射
照明径 25.4mm
測定径 20.0mm
測定波長・間隔 400~700nm・10nm
光源 パルスキセノンランプ・1発光/測定
トレーサビリティ標準 CIE 44及びASTM E259に基づく、米国標準技術研究所(NIST)準拠校正
標準観察者 10°
また、測定基準となる白色タイルは、下記の物体色のものを使用した。
D65/10°にて測定した場合に、CIE XYZ表色系での値がX:81.90、Y:87.02、Z:93.76(これは、CIE L***表色系に数値を変換すると、L*:94.8、a*:-1.6、b*:0.7に相当する)である。
【0073】
<表面処理銅箔の第一表面処理層のXPSのデプスプロファイルにおける銅濃度の測定>
表面処理銅箔の第一表面処理層に対して深さ方向にXPS分析を行い、スパッタリングレート2.5nm/分(SiO2換算)で7分スパッタリングを行ったときの測定対象元素の合計量に対するCu濃度を測定した。その他の条件は以下の通りとした。
装置:アルバック・ファイ株式会社製5600MC
到達真空度:5.7×10-7Pa
励起源:単色化 MgKα
出力:400W
検出面積:800μmφ
入射角:81°
取り出し角:45°
中和銃なし
測定対象元素:C、N、O、Zn、Cr、Ni、Co、Si及びCu
<スパッタ条件>
イオン種:Ar+
加速電圧:3kV
掃引領域:3mm×3mm
【0074】
<表面処理銅箔の第一表面処理層における粗さモチーフの平均長さARの測定>
JIS B0631:2000に準拠し、オリンパス株式会社製のレーザー顕微鏡(LEXT OLS4000)を用いてARを測定した。ARは、任意の10か所で測定した値の平均値を測定結果とした。なお、測定時の温度は23~25℃とした。また、レーザー顕微鏡における主要な設定条件は下記の通りである。
対物レンズ:MPLAPON50LEXT(倍率:50倍、開口数:0.95、液浸タイプ:空気、機械的鏡筒長:∞、カバーガラス厚:0、視野数:FN18)
走査モード:XYZ高精度(高さ分解能:10nm)
光学ズーム倍率:1倍
取込み画像サイズ[画素数]:横257μm×縦258μm[1024×1024]
(横方向に測定するため、評価長さとしては257μmに相当)
DIC:オフ
マルチレイヤー:オフ
レーザー強度:100
オフセット:0
コンフォーカルレベル:0
ビーム径絞り:オフ
画像平均:1回
ノイズリダクション:オン
輝度むら補正:オン
光学的ノイズフィルタ:オン
カットオフ:無し(λc、λs、λf全て無し)
フィルタ:ガウシアンフィルタ
ノイズ除去:測定前処理
傾き補正:実施
モチーフパラメータ:粗さモチーフの上限高さA/うねりモチーフの上限高さB=0.1mm/0.5mm
【0075】
<表面処理銅箔の第一表面処理層及び第二表面処理層のRzの測定>
株式会社小坂研究所製の接触粗さ計Surfcorder SE-3Cを用い、JIS B0601:1994に準拠してRz(十点平均粗さ)を測定した。この測定は、測定基準長さを0.8mm、評価長さを4mm、カットオフ値を0.25mm、送り速さを0.1mm/秒とし、表面処理銅箔の幅方向に測定位置を変えて10回行い、10回の測定値の平均値を評価結果とした。
ここで、第二表面処理層のRzは、実施例3のみ実測した。その他の実施例については、それぞれの実施例において使用した圧延銅箔のロットが実施例3と同一であることから、Rzは同一の値であるとした。
【0076】
<エッチングファクタ及びエッチング残渣の評価>
表面処理銅箔の第一表面処理層上にポリイミド基板を積層して300℃で1時間加熱して圧着させることによって銅張積層板を作製した。次に、表面処理銅箔の第二表面処理層上に感光性レジストを塗布して露光及び現像することにより、L/S=29μm/21μm幅のレジストパターンを形成した。その後、表面処理銅箔の露出部(不要部)をエッチングによって除去することにより、L/S=25μm/25μm幅の銅の回路パターンを有するプリント配線板を得た。なお、前記回路パターンのL及びSの幅は、回路のボトム面、すなわちポリイミド基板に接している面の幅である。エッチングはスプレーエッチングを用いて下記の条件にて行った。
エッチング液:塩化銅エッチング液(塩化銅(II)2水和物400g/L、35%塩酸として200ml/L)
液温:45℃
スプレー圧:0.18MPa
次に、形成された回路パターンをSEM観察し、下記の式に基づいてエッチングファクタ(EF)を求めた。
EF=回路高さ/{(回路ボトム幅-回路トップ幅)/2}
エッチングファクタは、数値が大きいほど回路側面の傾斜角が大きいことを意味する。
EFの値は各実施例及び比較例につき5回実験した結果の平均値である。
【0077】
エッチング残渣は、回路パターンのSEM像を撮影し、3000倍のSEM像から、その発生状態を評価した。具体的には、図2に示すように、回路パターンに対して垂直に直線を引き、回路パターンのボトムからエッチング残渣が発生している部分までの距離の最大値を求めることによってエッチング残渣を評価した。この評価において、当該距離の最大値が1μm以下であったものを〇、当該距離の最大値が1μmを超えたものを×と表す。
【0078】
<ピール強度の評価>
90度ピール強度の測定は、JIS C6471:1995に準拠して行った。具体的には、回路(表面処理銅箔)幅を3mmとし、90度の角度で50mm/分の速度で市販の基材(FR-4プリプレグ)と表面処理銅箔との間を引き剥がしたときの強度を測定した。測定は2回行い、その平均値をピール強度の結果とした。なお、ピール強度は、0.5kgf/cm以上であれば、導体と基材との接着性が良好であるといえる。
なお、回路幅の調整は、塩化銅エッチング液を用いる通常のサブトラクティブエッチング方法によって行った。また、ピール強度の評価は、初期(エッチング直後)、及びはんだリフロー相当の熱履歴(260℃、20秒)後の2条件で評価した。
【0079】
上記の評価結果を表1及び2に示す。また、実施例1~6の第二表面処理層のRzは、0.61μmであった。なお、比較例1の第二表面処理層のRzは測定しなかった。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表1及び2に示されるように、第一表面処理層のRΔqが5~28°である実施例1~6は、エッチングファクタ及びピール強度が高かったのに対し、第一表面処理層のRΔqが28°を超えた比較例1は、エッチングファクタが低かった。また、実施例1~6は、初期だけでなく熱履歴後のピール強度も高く、エッチング残渣も少なかった。
【0083】
以上の結果からわかるように、本発明の実施形態によれば、絶縁基材との接着性に優れると共に、ファインピッチ化に適した高エッチングファクタの回路パターンを形成することが可能な表面処理銅箔及び銅張積層板を提供することができる。また、本発明の実施形態によれば、絶縁基材との接着性に優れる高エッチングファクタの回路パターンを有するプリント配線板を提供することができる。
【0084】
本発明の実施形態は以下の態様をとることもできる。
<1>
銅箔と、前記銅箔の一方の面に形成された第一表面処理層とを有し、
前記第一表面処理層は、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqが5~28°である表面処理銅箔。
<2>
前記RΔqが10~25°である、上記<1>に記載の表面処理銅箔。
<3>
前記RΔqが15~23°である、上記<1>に記載の表面処理銅箔。
<4>
前記第一表面処理層は、JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線のクルトシスRkuが2.0~8.0である、上記<1>~<3>のいずれか一つに記載の表面処理銅箔。
【0085】
<5>
前記Rkuが3.5~5.8である、上記<4>に記載の表面処理銅箔。
<6>
前記第一表面処理層は、CIE L***表色系のa*が3.0~28.0である、上記<1>~<5>のいずれか一つに記載の表面処理銅箔。
<7>
前記a*が5.0~23.0である、上記<6>に記載の表面処理銅箔。
<8>
前記第一表面処理層は、Ni付着量が20~200μg/dm2、Zn付着量が20~1000μg/dm2である、上記<1>~<7>のいずれか一つに記載の表面処理銅箔。
<9>
前記第一表面処理層は、XPSのデプスプロファイルにおいて、スパッタリングレート2.5nm/分(SiO2換算)で7分スパッタリングを行ったときのC、N、O、Zn、Cr、Ni、Co、Si及びCuの元素の合計量に対するCu濃度が80~100atm%である、上記<1>~<8>のいずれか一つに記載の表面処理銅箔。
【0086】
<10>
前記第一表面処理層は、以下の(A)~(F)の少なくとも1つを満たす、上記<1>~<9>のいずれか一つに記載の表面処理銅箔。
(A)JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線のクルトシスRkuが2.0~8.0である
(B)JIS Z8730:2009の幾何条件Cに基づき測定されるCIE L***表色系のa*が3.0~28.0である
(C)XPSのデプスプロファイルにおいて、スパッタリングレート2.5nm/分(SiO2換算)で7分スパッタリングを行ったときのC、N、O、Zn、Cr、Ni、Co、Si及びCuの元素の合計量に対するCu濃度が80~100atm%である
(D)JIS B0601:2013に基づく粗さ曲線要素の平均長さRSmが5~10μmである
(E)JIS B0631:2000に基づく粗さモチーフの平均長さARが6~20μmである
(F)JIS B0601:1994に基づく十点平均粗さRzが0.3~1.5μmである
【0087】
<11>
前記表面処理銅箔の、前記第一表面処理層と反対側の面の十点平均粗さRzが0.3~1.0μmである、上記<1>~<10>のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
<12>
前記銅箔が圧延銅箔である、上記<1>~<11>のいずれか一つに記載の表面処理銅箔。
<13>
上記<1>~<12>のいずれか一つに記載の表面処理銅箔と、前記表面処理銅箔の第一表面処理層に接着された絶縁基材とを備える銅張積層板。
<14>
上記<13>に記載の銅張積層板の前記表面処理銅箔をエッチングして形成された回路パターンを備えるプリント配線板。
【符号の説明】
【0088】
1 表面処理銅箔
2 銅箔
3 第一表面処理層
4 第二表面処理層
10 銅張積層板
11 絶縁基材
20 レジストパターン
図1
図2
図3
図4