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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】伸縮性導電性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20240724BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240724BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C09D11/52
H01B1/22 A
H01B1/00 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021541528
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2019067102
(87)【国際公開番号】W WO2020149977
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】62/794,167
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】クロス、 ロバート ピー.
(72)【発明者】
【氏名】イッサリ、 バハラーム
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 ウェンファ
(72)【発明者】
【氏名】ハールバート、 リネット エム.
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン、 ジャンボ
(72)【発明者】
【氏名】オルデンゼイル、 ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル メーレン、 インゲ
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143094(JP,A)
【文献】特開2019-189680(JP,A)
【文献】特開2015-079724(JP,A)
【文献】特開2018-198133(JP,A)
【文献】Jiangxin et al.,Printable Superelastic Conductors with Extreme Stretchability and Robust Cycling Endurance Enabled by Liquid-Metal Particles,Advanced Materials,2018年04月20日,Volume 30, Issue 16,1706157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
H01B 1/22
H01B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤、
導電性粒子および
低融点金属または合金を含む伸縮性導電性インク組成物であって、
結合剤は、熱可塑性ポリウレタンであり、
導電性粒子が、組成物全体の20~90体積%の量で存在し、
低融点金属または合金が、組成物全体の1~50体積%の量で存在し、
低融点金属または合金が、ガリウムまたはガリンスタンであり、
初期抵抗率は伸長前に測定し、
伸縮性導電性インク組成物の抵抗率は、50%の伸びで、初期抵抗率の10倍未満である伸縮性導電性インク組成物。
【請求項2】
導電性粒子が、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、炭素、グラファイトフレークである、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項3】
低融点金属または合金が、組成物全体の10~40体積%の量で存在する、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項4】
ビーズをさらに含む、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項5】
ビーズが、導電性である、請求項に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項6】
ビーズが、銀ビーズである、請求項に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項7】
溶媒をさらに含む、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項8】
導電性粒子が、フレークである、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項9】
導電性フレークが、10μm未満である、請求項に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項10】
導電性フレークが、銀フレークである、請求項に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項11】
初期抵抗率が、1×10-3~1×10-5オーム*cmの範囲である、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項12】
100%の伸びで、抵抗率が、100オーム*cm未満である、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項13】
伸びが50%を超えるまで導電性が失われない、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項14】
有機溶媒をさらに含む、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【請求項15】
シランをさらに含む、請求項1に記載の伸縮性導電性インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
印刷された導電性材料を必要とする新しい商用アプリケーションは、エレクトロニクス産業で継続的に発生している。これらの商用アプリケーションのいくつかは、無線周波数識別(「RFID」)タグ用のプリントアンテナ、プリントトランジスタ、太陽電池、インモールド電子機器、およびウェアラブル電子機器である。これらの印刷された導電性材料は、通常、特定の印刷プロセスを使用して導電性インクを印刷することによって製造される。
【0002】
導電性インクは、通常、導電性粒子に基づく粒子ベースであり、通常、別々に合成されてから、インク配合物に組み込まれる。導電性インクは通常、導電性フレークが分散した連続ポリウレタン相で構成される。得られた導電性インクの特性は、特定の印刷プロセスと最終用途に合わせて調整される。通常、印刷プロセスでは、組成物の印刷を可能にするために特定の粘度が必要である。導電性インクは、これらの特定の印刷プロセスの1つによって、目的の基材に選択的に塗布できる。
【0003】
特に、伸縮性導電性インクは、2つの主要な分野で需要がある。1)アプライアンス用のパネル、自動車および航空宇宙アプリケーション用のダッシュボードとボタン、および工業制御用のインターフェイスを含むインモールドアプリケーション、および2)テキスタイルアプリケーションやウェアラブル医療機器を含むがこれに限定されないウェアラブルアプリケーション。インモールドおよびウェアラブルアプリケーション向けの既存の導電性インクの有用性は、インクの導電性が比較的低い伸びで失われる、すなわち、インクの伸縮性がないために制限される。
【0004】
市販の導電性粒子には、一般にステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸で表面改質された銀フレークが含まれ、粉砕を可能にし、保管中の冷間溶着を防ぐ。しかし、この表面処理は、組成物の伸びまたは導電性を改善せず、マトリックス中に粉末を分散させるためにのみ有用である。
【0005】
導電性インク組成物の導電性は、連続的な導電性経路を形成するための導電性充填剤間の接触に依存する。導電性インク組成物を伸ばしながらこれらの連続経路を維持することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、伸長後に導電性を維持し、電気的および機械的不具合に対してより高い伸びを有する伸縮性導電性インクの必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書には、結合剤、導電性粒子および低融点金属または合金を含む伸縮性導電性インク組成物が開示される。結合剤は、ポリマー、開始剤との反応性モノマー、オリゴマー、またはそれらの組み合わせである。伸縮性導電性インク組成物の抵抗率は、50%の伸びで、初期抵抗率の10倍未満である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ガリウムの融点を超えて加熱したときのガリウムを含む対照例Aの伸び率に対する抵抗(オーム)のプロットを示す。
図2図2は、熱ランプを備えたガリウム単一サイクルを含む対照例Aの伸び率に対する抵抗(オーム)のプロットを示す。
図3図3は、約23℃での固体ガリウムを含む対照例Aの伸び率に対する抵抗(オーム)のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<発明の詳細な説明>
本明細書に開示される導電性インク組成物は、組成物に含まれる導電性フレーク間の接触を維持する低融点金属または合金を含むことによって伸長されたときに組成物の導電性を維持することによって驚くほど伸縮性を高める。具体的には、本明細書に開示される伸縮性導電性インク組成物は、ポリマー、反応性モノマー、オリゴマー、またはそれらの組み合わせ、導電性フレーク;そして低融点の金属または合金を含む。本明細書に開示される伸縮性導電性インク組成物は、固体導電性充填剤がその中に分散されたポリマーマトリックス中の三相系液体金属または合金を含む。伸縮性導電性インク組成物の抵抗率は、50%の伸びで、初期抵抗率の10倍未満である。
【0010】
<導電性粒子>
本明細書で使用される導電性粒子は、当技術分野で知られている様々な導電性粒子から選択することができる。導電性粒子は、熱伝導性、導電性、断熱性、電気絶縁性、またはそれらの様々な組み合わせであり得る。好ましい実施形態では、導電性粒子は導電性フレークである。
【0011】
導電性粒子は、組成物のポリマーマトリックス内の離散相のままである。
【0012】
例示的な導電性充填剤には、銀、銅、金、パラジウム、白金、ニッケル、金または銀被覆ニッケル、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、アルミニウム、インジウムスズ酸化物、銀被覆銅、銀被覆アルミニウム、金属被覆ガラス球、金属被覆充填剤、金属被覆ポリマー、銀被覆繊維、銀被覆球、アンチモンドープ酸化スズ、導電性ナノ球、ナノ銀、ナノアルミニウム、ナノ銅、ナノニッケル、カーボンナノチューブおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。導電性フレークは、金属または炭素で作ることができる。好ましくは、導電性フレークは、銀、アルミニウム、炭素、ニッケル、銅、グラファイトフレーク、またはそれらの組み合わせである。より好ましくは、導電性フレークは銀フレークである。一実施形態では、導電性フレークは、Ferroから市販されているSF-80、Metalorから市販されているSF-AA0101との混合物など、異なるサイズの銀フレークの混合物である。
【0013】
粒子の任意の形状およびサイズが企図される。導電性粒子はフレークであり得、例えば、フレークは、フレーク、樹枝状、または針型充填剤フレークの幾何学的形態であり得る。導電性粒子はまた、球形、立方体、または不規則な形状であり得る。導電性粒子はまた、異なる形状の導電性充填剤の組み合わせ、例えばフレーク粒子と球状粒子の組み合わせであり得る。
【0014】
導電性粒子は、硬化した組成物がより硬くなり、したがって伸縮性が低くなると、インクの粘度が高くなる。しかし、導電性粒子の充填量が増加すると、組成物の導電性も増加する。したがって、組成物に含める導電性粒子の適切な量を決定するとき、これらの2つの因子のバランスをとる必要がある。好ましくは、導電性粒子は、組成物全体の約20体積%~約90体積%、例えば、約30体積%~約70体積%、例えば、約40~約60体積%の量で組成物中に存在する。
【0015】
<導電性ビーズ>
本明細書に開示される組成物は、任意選択で、導電性ビーズをさらに含むことができる。導電性ビーズは、インク組成物全体にわたって導電性経路を維持しながら、導電性フレークが互いに移動することを可能にする。
【0016】
さらに、導電性ビーズを含めることによって導電性充填剤の配向のランダム性が増加すると、導電性充填剤の接触効率が改善される。アスペクト比が約0.9~約1.1の非球形導電性充填剤と低アスペクト比の球形ビーズ(アスペクト比が約0.9~約1.1)を組み合わせると、導電性充填剤の配向のこのランダム性を高め、導電性充填剤の接触効率を増やすことができる。充填剤の配向のランダム性を高めるために、ビーズとフレークのサイズ比を最適化することもできる。
【0017】
ビーズは導電性であり、銀、銅、金、パラジウム、白金、ニッケル、金または銀被覆ニッケル、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、アルミニウム、インジウムスズ酸化物、銀被覆銅、銀被覆アルミニウム、金属被覆ガラス球、金属被覆充填剤、金属被覆ポリマー、銀被覆繊維、銀被覆球、アンチモンドープ酸化スズ、導電性ナノ球、ナノ銀、ナノアルミニウム、ナノ銅、ナノニッケルで作ることもできる。ビーズは、導電性フレークと同じ材料または異なる導電性材料で作ることができる。
【0018】
本明細書に開示される組成物に含まれる導電性ビーズは、アスペクト比が0.9~1であり、直径が1μm未満であり得る。
【0019】
さらに、フレークのサイズに対するビーズの直径のサイズ比は、約0.5~約2.0の範囲、例えば、約0.85~約1.15であり得る。
【0020】
さらに、組成物に含まれる導電性ビーズに対する導電性フレークの体積比は、体積で約98:2~約55:95、好ましくは約70:30の範囲である。
【0021】
<ポリマー>
本明細書に開示される導電性インク組成物に有用なポリマーは、印刷方法および組成物の最終用途によって制限される。ポリマーは、例えば、硬化温度、硬化時間、粘度、および硬度などの組成物の所望の特性に基づいて選択することができる。本明細書で使用されるポリマーは、例えば、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、およびエラストマーであり得る。
【0022】
有用な熱可塑性ポリマーには、ポリアクリレート、ABS、ナイロン、PLA、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、テフロン(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
有用な熱硬化性ポリマーには、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素/ポリウレタン、加硫ゴム、ベークライト、フェノール-ホルムアルデヒド、デュロプラスト、尿素-ホルムアルデヒド、メラミン、フタル酸ジアリル(DAP)、エポキシ、エポキシノボラック、ベンゾオキサジン、ポリイミド、ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリシアヌレート、フラン、シリコーン、チオライト、ビニルエステルが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
有用なエラストマーには、ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレン、ポリクロロプレン、ネオプレン、バイプレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレンブタジエン、水素化ニトリル、サーバン、ゼトポールなどの不飽和ゴム;エチレンプロピレン(EPM)、エチレンプロピレンジエン(EPDM、エピクロロヒドリン(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フルオロエラストマー、バイトン(viton)、テクノフロン(tecnoflon)、フローレル(fluorel)、アフラス(aflas)、ダイエル(Dai-El)、パーフルオロエラストマー、テクノフロン(tecnoflon)PFR、Kalrez、Chemaz、Perlast、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ハイパロン(Hypalon)、エチレン酢酸ビニル(EVA)などの飽和ゴム;熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レシリンおよびエラスチン、ポリサルファイドゴム、エラストオレフィン、弾性繊維などの他の4Sエラストマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
好ましくは、熱可塑性ウレタン(TPU)がポリマーとして使用される。
【0026】
具体的には、たとえば、ESTANE(登録商標)5715、ESTANE(登録商標)5703(Lubrizolによって製造される)が本明細書に記載の組成物には有用である。塩化ビニルコポリマー、たとえば、VINNOL(登録商標)E15/48A(Wacker Chemie AGによって製造される)もまた有用である。
【0027】
<オリゴマー>
有用なオリゴマーは、ポリアクリレート、ABS、ナイロン、PLA、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、テフロン(登録商標)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素/ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレン、ポリクロロプレン、ネオプレン、バイプレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレンブタジエン、水素化ニトリル、サーバン、ゼトポールなどの不飽和ゴム:エチレンプロピレン(EPM)、エチレンプロピレンジエン(EPDM、エピクロロヒドリン(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フルオロエラストマー、バイトン(viton)、テクノフロン(tecnoflon)、フローレル(fluorel)、アフラス(aflas)、ダイエル(Dai-El)、パーフルオロエラストマー、テクノフロン(tecnoflon)PFR、Kalrez、Chemaz、Perlast、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ハイパロン(Hypalon)、エチレン酢酸ビニル(EVA)などの飽和ゴム;熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レシリンおよびエラスチン、ポリサルファイドゴム、エラストオレフィン、弾性繊維などの他の4Sエラストマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
<反応性モノマー>
有用な反応性モノマーには、エポキシモノマー、アクリルモノマー、および(メタ)アクリレートが含まれ得る。適切なモノマーの具体例には、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t-ブチル、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、アクリル酸エチル、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アクリルアミド、n-メチルアクリルアミドが含まれる。さらなる例には、単官能化または多官能化され、ヒドロキシル基とは別に、アミド、シアノ、クロロ、およびシラン置換基を含むモノマーを含むアクリレートまたはメタクリレートが含まれる。
【0029】
本発明の組成物に含めることができる特に有用な反応性モノマーには、(メタ)アクリレートモノマーが含まれる。組成物に使用される(メタ)アクリレートモノマーのタイプは、所望の硬化特性に基づいて変更することができる。例えば、より速いUVまたは熱硬化のために、アクリレートモノマーを使用することができる。好ましくは、アクリレートモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、1-ビニル-2-ピロリジノン、ラウリルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、またはそれらの組み合わせを含む群から選択され、その構造は以下に再現される。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
好ましくは、反応性モノマーは、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5,2,1,0]デカンジメタノールジアクリレート(商品名SR833S)およびジシクロペンタニルアクリレートなどの硬い縮合環構造を有し、以下に示す。
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
【0038】
<開始剤>
有用な開始剤は、以下のタイプの化学物質、過酸化ジアクリル、ジアルキルペルオキシジカーボネート、tert-アルキルペルオキシエステル、ジ-tert-アルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、t-アミルペルオキシド、およびアゾビスイソブチロニトリルの単一またはこの混合物を含むがこれらに限定されない。
【0039】
<低融点の金属または合金>
本明細書で使用される低融点金属または合金は、銀フレーク間に導電性ブリッジを提供し、これは、引き伸ばされたときに導電性を維持することによって、インクの伸縮性を驚くほど改善する。低融点の金属または合金自体は低い導電率を有する
【0040】
本明細書に開示される組成物に含まれる低融点金属または合金は、ポリマー中に分散可能でなければならず、導電性フレークとの金属間相互作用(「濡れ」)を示さなければならない。
【0041】
組成物に含まれる低融点金属または合金は、その溶融温度および組成物の最終用途に基づいて選択することができる。具体的には、合金の溶融温度は、伸長プロセスが実行される温度よりも低い。例えば、低融点金属または合金は、約200℃未満、例えば、約0℃~約120℃、好ましくは約20℃~約60℃の融点を有する。
【0042】
好ましくは、低融点金属または合金は、ガリウム、水銀、鉛、フィールドメタル、ガリンスタン、またはSn、Ga、Bi、In、鉛の低融点合金またはそれらの組み合わせである。
【0043】
低融点金属または合金は、組成物全体の約0.1~約50体積%、例えば、約1~約50体積%、好ましくは約10~約40体積%の量で存在する。
【0044】
<溶媒>
組成物は、追加の任意の成分をさらに含むことができる。例えば、組成物は、溶媒、具体的には有機溶媒をさらに含むことができる。有機溶媒は、本明細書に開示される組成物に含まれる場合、エーテルまたはエステルベースの溶媒、トルエン、水、または他の典型的な有機溶媒またはそれらの組み合わせを含むことができる。溶媒は、室温で安定であり、組成物に含まれるポリマーに可溶でなければならない。さらに、インク組成物の硬化温度で、溶媒は急速に蒸発すべきである。
【0045】
<その他の添加剤>
組成物中に他の添加剤が可能である。例えば、界面活性剤を組成物に添加して、液体金属または合金の分散を助けることができる。
【0046】
<伸縮性導電性インク組成物>
本明細書に開示される本発明の伸縮性導電性インクは、より良好な単一および複数の伸長性能、伸長後のより高い導電性をもたらし、より高い量の導電性フレーク量を可能にし、柔軟性を高め、電気的および機械的不具合に対するより高い伸びを可能にする。
【0047】
具体的には、本明細書に開示されるインク組成物の初期抵抗率は、約1×10-3~約1×10-5オーム*cmの範囲である。さらに、約100%の伸びでの抵抗率は、約100オーム*cm未満である。
【0048】
導電率損失は、たとえばオームメーターの抵抗値が10+6オームを超える場合など、導電率を測定できない場合の開回路オームメーターによって定義される。本明細書に開示されるインク組成物の導電率は、伸びが約50%を超えるまで失われない。
【実施例
【0049】
<例>
導電性インク組成物は、室温で混合しながら、以下の表に記載されている順序で各成分を組み合わせることにより、ラボミキサーで調製した。対照例は、低融点金属または合金を含まないポリマーおよび導電性粒子を含む実験的な導電性インク配合物である。対照例の組成を以下の表1に示す。ここで、AMES GoldsmithからのSF-7AT、LubrizolからのEstane 5717、ブチルカルビトールはSigma Adrichからのものであり、そしてDow ChemicalからのDowanol PMAグリコールエーテルアセテートである。
【0050】
インク組成物の混合プロセス中に、低融点合金または金属が対照例に分散される。具体的には、約3グラムのガリウムを約8グラムの対照例とスピードミキサーで混合した。混合中、サンプル温度は40℃に上昇し、これはガリウムの融解温度を上回っている。したがって、液体ガリウム滴は、激しい混合プロセス中に複合材料に分散される。同様に、低融点合金のガリンスタン配合物も製造した。ガリンスタンの融点は-19℃であるため、室温での伸長が必要な用途に適する。
【0051】
得られた処方を表1に示す。
【表1】
【0052】
次に、これらの組成物を、以下の手順に従って伸縮性導電率について試験した:試料をステンシル印刷し、続いて約120℃で約20分間溶媒を除去することにより、厚さ15μm、幅3mmのダンベル形状のフィルム試料を得た。伸長中の電気的特性は、支持されていないフィルム上で約5mm/分で評価し、伸びと抵抗を同時に測定した。
【0053】
図1は、3つのテスト(対照例、室温で伸長したときの対照例+ガリウム、およびガリウムの融点である約30℃を超える40℃で伸長したときの対照例+ガリウム)の伸びに対する抵抗のグラフを示す。後者の場合、ヒートランプ(SATCO250W120VタイプRランプ)を使用してサンプルの温度を約40℃以上に加熱し、ガリウムが完全に溶融して液体状態になっていることを確認した。室温など、実験温度がガリウムの融点を下回る場合、サンプル中のガリウムは固体状態になる。図1に示されるデータは、ガリウムの融点(約30℃)より下の対照例に固体ガリウムを含めることは、組成物の伸縮性を改善するのに効果的ではないことを示す。40℃で伸長した場合、サンプルは導電性を維持しながら伸縮性の顕著な改善を示した。これらの結果は、液体ガリウムがストレッチ中の低抵抗を維持するのに非常に役立つことを示す。
【0054】
液体ガリウムを含む組成物は、室温に冷却した後、液体金属の凝集を示さなかった。
【0055】
図2は、40℃で伸長した後の対照例および対照例+ガリウムの伸びに対する抵抗のグラフを示す(サンプルを0~100%の伸びに伸ばし、0%に戻す)。
【0056】
図3は、ガリンスタンを添加した対照例の伸びに対する抵抗のグラフを示す。ガリンスタンの融点は-19℃であり、ガリンスタンは室温伸長の間液体状態のままであるため、サンプルは室温でテストした。対照例と比較して、ガリンスタンを添加したサンプルは、伸長中にはるかに低い抵抗を示した。
【0057】
図1~3は、金属が溶融状態にあるときに、ガリウムまたはガリンスタンを含む安定した分散液を分散できることを示す。さらに、これらの結果は、導電性インク組成物に液体ガリウムまたはガリンスタンを組み込むことにより、インク組成物が引き伸ばされたときに抵抗率の増加を防ぎ、すなわち導電性を保持することを示す。
図1
図2
図3