(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240724BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240724BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2023031584
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2021154400の分割
【原出願日】2013-06-07
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】島口 龍介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特許第6630933(JP,B2)
【文献】特許第6669823(JP,B2)
【文献】特許第6669824(JP,B2)
【文献】特許第6951488(JP,B2)
【文献】特許第7239660(JP,B2)
【文献】特開2009-79205(JP,A)
【文献】特開2010-180378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体と、架橋剤と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、基材の片面上に形成した粘着フィルムであって、
前記アクリル系共重合体が、次のアクリル系共重合体(1)~アクリル系共重合体(4)、
前記アクリル系共重合体(1);(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、を共重合させた共重合体、
前記アクリル系共重合体(2);(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、を共重合させた共重合体、
前記アクリル系共重合体(3);(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも2種以上を共重合させた共重合体、
前記アクリル系共重合体(4);(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種と、を共重合させた共重合体、
からなるアクリル系共重合体群から選択した1種であり、
前記架橋剤が、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤であり、
前記帯電防止剤が、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するジアルキルメチルベンジルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するトリアルキルベンジルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルホスホニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するジアルキルメチルベンジルホスホニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するトリアルキルベンジルホスホニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するテトラアルキルホスホニウム塩、炭素数14~20のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数14~20のアルキル基を有するアルキルジメチルエチルアンモニウム塩からなる化合物群(但し、これらのアルキル基は、不飽和結合を有するアルケニル基であってもよい。)から選択した1種以上であり、かつ、25℃の水100gに対する溶解度が5g以下である疎水性を有する化合物として前記化合物群の中から選択され、さらに、その選択された化合物の中から融点30~50℃の化合物として選択されてなる4級オニウム塩であり、
前記アクリル系共重合体100重量部に対して、前記4級オニウム塩が0.1~10重量部含有することを特徴とする表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性能を有する粘着剤組成物、粘着フィルム及び表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、帯電防止剤として、疎水性の4級オニウム塩を含有する粘着剤組成物に関し、粘着性能を損なわずに帯電防止性に優れた粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルム及び表面保護フィルムを提供することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材の製造工程においては、光学部材の表面を一時的に保護するための表面保護フィルムが貼着される。このような表面保護フィルムは、光学部材を製造する工程のみに使用され、光学部材を液晶ディスプレイに組み込む時点で、光学部材から剥離して除去される。このような光学部材の表面を保護するための表面保護フィルムは、製造工程においてのみに使用されるため、一般には、工程フィルムと呼ばれることもある。
【0003】
このように、光学部材を製造する工程において使用される表面保護フィルムは、光学的に透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に粘着剤層が形成されているが、光学部材に貼り合わせるまで、その粘着剤層を保護するための剥離処理された剥離フィルムが、粘着剤層の上に貼り合わされている。
また、偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材は、表面保護フィルムを貼り合わされた状態で、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う製品検査を行うため、表面保護フィルムに対する要求性能としては、粘着剤層に気泡や異物が付着していないことが求められている。
また、近年では、偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときに、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念され、粘着剤層に対して優れた帯電防止性能が求められている。
また、偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材に表面保護フィルムを貼り合わせるときには、各種の理由により、一旦、表面保護フィルムを剥がして、再度、表面保護フィルムを貼り直すことがあり、そのときに被着体の光学部材から剥がし易いこと(リワーク性)が求められている。また、このとき、被着体を汚染しないこと、いわゆる糊残りが起こらないことが求められている。
また、最終的に偏光板、位相差、反射防止フィルム板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときには、速やかに剥離できることが求められている。いわゆる、高速度での剥離によっても、速やかに剥離できるように、粘着力が剥離速度によっても変化が少ないことが求められている。
【0004】
例えば、優れた帯電防止性能については、表面保護フィルムに帯電防止性を付与させるための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが示されている。
帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献1)。
また、近年では、このような帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布するのではなく、直接に粘着剤層に含有させたりすることが提案されている。
【0005】
また、リワーク性能については、例えば、アクリル樹脂中に、イソシアネート系化合物の硬化剤と、特定のシリケートオリゴマーをアクリル系樹脂100重量部に対して0.0001~10重量部で配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献2)。
特許文献2では、アルキル基の炭素数が2~12程度のアクリル酸アルキルエステルやアルキル基の炭素数が4~12程度のメタクリル酸アルキルエステル等を主モノマー成分とし、例えば、カルボキシル基含有モノマーなどの他の官能基含有モノマー成分を含むことができるとしている。一般的には、上記主モノマーを50重量%以上含有させることが好ましい、又、官能基含有モノマー成分の含有量は0.001~50重量%であって、好ましくは0.001~25重量%、更に好ましくは0.01~25重量%であることが望まれる、としている。このような特許文献2に記載の粘着剤組成物は、高温下又は高温高湿下でも凝集力及び接着力の経時変化が小さく、かつ、曲面に対する接着力にも優れた効果を示すことから、リワーク性を有するとしている。
一般に、粘着剤層を柔らかい性状のものにすると、糊残りが発生し易くなり、リワーク性が低下し易い。すなわち、誤って貼合したときに剥離し難く、貼り直しが困難となり易い。このことから、カルボキシル基などの官能基を有するモノマーを主剤に架橋させて、粘着剤層を一定の硬さにすることが、リワーク性を持たせるためには必要と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-070629号公報
【文献】特開平8-199130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、粘着フィルムとして帯電防止機能を求められることが多く、色々な種類の帯電防止剤が試みられてきた。しかし、特に光学フィルムの用途においては、帯電防止機能は持たせることができるが、透明性が悪いなどの欠点があり、さらには帯電防止剤の粘着剤への相溶性不足などから帯電防止剤のブリードアウトや粘着フィルムを剥がした際に、被着体に汚染が生じてしまうなどのリワーク性が悪い等の欠点が多かった。これら、性能を満足できても、コストが高くなってしまうなどの問題もあり、低コストでこれら欠点を克服出来る帯電防止剤を含んだ粘着剤が必要とされて来た。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、優れた帯電防止性能を備え、粘着剤との相溶性に優れるためブリードアウトや粘着フィルムを剥がした際に、被着体に汚染が生じてしまうなどのリワーク性の欠点を改善した、粘着剤組成物、粘着フィルム、及び表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、帯電防止性能を有する粘着剤組成物であって、帯電防止剤として、融点30~50℃の疎水性の4級オニウム塩を含有することを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
【0010】
前記4級オニウム塩が、25℃の水100gに対する溶解度が5g以下であることが好ましい。
【0011】
粘着剤成分が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物であり、前記共重合組成物の100重量部に対して、(C)前記4級オニウム塩を0.1~10重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0012】
粘着剤成分が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物であり、前記共重合組成物の100重量部に対して、(C)前記4級オニウム塩を0.1~10重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0013】
粘着剤成分が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも2種以上からなる共重合組成物であり、前記共重合組成物の100重量部に対して、(C)前記4級オニウム塩を0.1~10重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0014】
粘着剤成分が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物であり、前記共重合組成物の100重量部に対して、(C)前記4級オニウム塩を0.1~10重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0015】
基材の片面上に、前記粘着剤組成物を積層して形成された粘着剤層において、前記粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤組成物を用いて粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記粘着剤組成物を用いて粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0018】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、表面保護フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、偏光板用の表面保護フィルムを提供する。
【0020】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、光学用の表面保護フィルムを提供する。
【0021】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた偏光板とディスプレイパネルの貼り合わせ用フィルムを提供する。
【0022】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた偏光板を構成する材料の貼り合わせ用フィルムを提供する。
【0023】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられたタッチパネル用フィルムを提供する。
【0024】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた電子ペーパー用フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、融点30~50℃の疎水性の4級オニウム塩を帯電防止成分として粘着剤に併用することで、粘着剤との相溶性に優れるためブリードアウトや粘着フィルムを剥がした際に、被着体に汚染が生じてしまうなどのリワーク性の欠点である課題を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性能を有する粘着剤組成物であって、帯電防止剤として、融点30~50℃の疎水性の4級オニウム塩を含有することを特徴とする。
【0027】
本発明の粘着剤組成物に用いる粘着剤成分としては、アクリル系共重合体などの共重合組成物が好ましい。特に、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種を主成分とする共重合体が好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0028】
本発明に用いる粘着剤成分の共重合組成物として、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、他の共重合性モノマーの少なくとも1種とからなる共重合組成物を採用することもできる。この場合、他の共重合性モノマーとしては、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーや、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマー、芳香族系モノマーが挙げられる。
【0029】
水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなどが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
芳香族系モノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル類のほか、スチレン等が挙げられる。
上記以外の共重合性ビニルモノマーとしては、アクリルアミド、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの各種ビニルモノマーが挙げられる。
【0030】
また、本発明に用いる粘着剤成分の共重合組成物として、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物、等が挙げられる。
また、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも2種以上からなる共重合組成物を採用することもできる。この場合、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー以外の共重合性ビニルモノマーを用いなくても共重合組成物とすることができる。
【0031】
アクリル系共重合体等の共重合組成物の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。アクリル系共重合体の重量平均分子量は、20万~200万であることが好ましい。
【0032】
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する際に前記共重合組成物を架橋することが好ましい。架橋をするため、粘着剤組成物が既知の架橋剤を含んでも良く、紫外線(UV)など光架橋で架橋しても良い。架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤が好ましい。架橋剤を用いる場合は、前記共重合組成物の100重量部に対して、0.1~5重量部含有することが好ましい。
【0033】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性能を付与するため、帯電防止剤を含有する。帯電防止剤は、常温(例えば30℃)で固体であることが好ましく、より具体的には、帯電防止剤の融点が、30~50℃のイオン化合物である。本発明は、帯電防止剤として、融点30~50℃の疎水性の4級オニウム塩を含有することを特徴とする。
これらの帯電防止剤は、融点が低いため、また、長鎖のアルキル基を有するため、アクリル系ポリマーとの親和性は高いと推測される。
【0034】
融点30~50℃の疎水性の4級オニウム塩である帯電防止剤としては、例えば、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するジアルキルメチルベンジルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するトリアルキルベンジルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルホスホニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するジアルキルメチルベンジルホスホニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するトリアルキルベンジルホスホニウム塩、炭素数8~18のアルキル基を有するテトラアルキルホスホニウム塩、炭素数14~20のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数14~20のアルキル基を有するアルキルジメチルエチルアンモニウム塩などの、水に難溶性の4級オニウム塩の中から、融点30~50℃のものを選択して用いることができる。これらのアルキル基は、不飽和結合を有するアルケニル基であってもよい。
【0035】
炭素数8~18のアルキル基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。天然油脂に由来する混合アルキル基であってもよい。炭素数8~18のアルケニル基としては、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、リノレイル基などが挙げられる。
炭素数14~20のアルキル基としては、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などが挙げられる。天然油脂に由来する混合アルキル基であってもよい。炭素数14~20のアルケニル基としては、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、リノレイル基、ノナデセニル基、イコセニル基などが挙げられる。
【0036】
4級オニウム塩のカウンターアニオンとしては、クロリド(Cl-)、ブロミド(Br-)、メチルサルフェート(CH3OSO3
-)、エチルサルフェート(C2H5OSO3
-)、パラトルエンスルホネート(p-CH3C6H4SO3
-)等が挙げられる。
【0037】
4級オニウム塩の具体例としては、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、トリオクチルベンジルアンモニウムクロリド、トリオクチルベンジルアンモニウムブロミド、トリオクチルベンジルホスホニウムクロリド、トリオクチルベンジルホスホニウムブロミド、トリス(デシル)ベンジルアンモニウムクロリド、トリス(デシル)ベンジルアンモニウムブロミド、トリス(デシル)ベンジルホスホニウムクロリド、トリス(デシル)ベンジルホスホニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムクロリド、テトラオクチルホスホニウムブロミド、テトラノニルアンモニウムクロリド、テトラノニルアンモニウムブロミド、テトラノニルホスホニウムクロリド、テトラノニルホスホニウムブロミド、テトラキス(デシル)アンモニウムクロリド、テトラキス(デシル)アンモニウムブロミド、テトラキス(デシル)ホスホニウムクロリド、テトラキス(デシル)ホスホニウムブロミド、等が挙げられる。
なお、「トリス(デシル)」、「テトラキス(デシル)」は、炭素数10のアルキル基であるデシル基を3個又は4個有することを意味し、炭素数13のアルキル基であるトリデシル基や、炭素数14のアルキル基であるテトラデシル基とは区別される。
【0038】
前記4級オニウム塩が、25℃の水100gに対する溶解度が5g以下であることが好ましい。前記4級オニウム塩は、共重合組成物の100重量部に対して、(C)前記4級オニウム塩を0.1~10重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0039】
粘着剤組成物に帯電防止剤を添加して帯電防止性能を持たせる場合、前記粘着剤組成物を積層して形成された粘着剤層において、前記粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗率が大きいと、剥離時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣る。そのため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する、静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の制御用電子回路等に影響することを抑制することができる。
【0040】
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する際に共重合組成物を架橋させることが好ましい。粘着剤層の共重合組成物を架橋させるために、粘着剤組成物が既知の架橋剤を含んでいることが好ましい。本発明で使用される架橋剤は、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤であることが好ましい。架橋剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて併用してもよい。
【0041】
2官能以上のイソシアネート系化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンやグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
また、3官能以上のイソシアネート化合物が、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であり、特にヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体からなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
2官能以上のイソシアネート系架橋剤は、アクリル系共重合体の100重量部に対して、0.01~5.0重量部含まれることが好ましく、さらに好ましくは0.02~3.0重量部含まれるのがよい。
【0042】
2官能以上のエポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等のなどのエポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、2官能のビスフェノールA型およびビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂が、低粘度の液状であり取り扱い易いことからより好ましい。
また、2官能以上のエポキシ系化合物は、具体的には、グリセリンポリ(例えばジ、トリ)グリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリ(例えばジ、トリ、テトラ)グリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
2官能以上のエポキシ系化合物は、アクリル系共重合体の100重量部に対して、0.01~5.0重量部含まれることが好ましく、さらに好ましくは0.02~3.0重量部含まれるのが良い。
【0043】
共重合組成物がカルボキシル基または水酸基を有している場合には、これらの官能基とアルミニウムキレート系化合物との架橋を生じる。このため、アルミニウムキレート系化合物を架橋剤として使用することができる。
本発明で使用できるアルミニウムキレート系化合物としては、アセチルアセトンアルミニウム塩、アセト酢酸エチルアルミニウム塩などのケトエノール互変異性体アルミニウム塩が好ましく、ケトエノール互変異性体アルミニウム塩の中でもアセチルアセトンアルミニウム塩は、架橋剤としての機能に優れるものとして好適に用いられる。
ケトエノール互変異性体アルミニウム塩に用いられる、ケトエノール互変異性体としては、アセチルアセトン等のβ-ジケトンや、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸アルキル等のβ-ケトカルボン酸エステル等が挙げられる。
ケトエノール互変異性体アルミニウム塩としては、具体的には、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0044】
さらに、その他の成分として、シランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0045】
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。また、本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を、基材の両面に形成することもできる。
粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
剥離フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
偏光板や位相差フィルムなどの各種光学フィルムを、液晶セルなどの光学部品及び他の光学フィルムに貼り合せる、粘着フィルムの粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。また、偏光板用の表面保護フィルムなどの光学用の表面保護フィルムの場合は、基材フィルム及び粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
【0046】
粘着フィルムが基材フィルムを有する場合、本発明の粘着フィルムは、例えば、表面保護フィルム、偏光板用の表面保護フィルム、光学用の表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルム、粘着剤付き偏光板などに好適に用いることができる。
【0047】
粘着フィルムが基材フィルムを有しない場合、1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を露出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
この場合、本発明の粘着フィルムは、偏光板とディスプレイパネルの貼り合わせに用いることができる。ディスプレイパネルとしては液晶表示装置や有機EL等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の粘着フィルムは、偏光板を構成する材料の貼り合わせ用粘着フィルム、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用フィルム、電子ペーパー用フィルム、有機EL用フィルム等に用いることができる。
【0048】
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。
例えば、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を露出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、粘着剤層が層間の貼合に用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例をもって、本発明を具体的に説明する。
【0050】
<アクリル系共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2-エチルヘキシルアクリレート100重量部、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート1.5重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を100部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で8時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1のアクリル系共重合体溶液1を得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
単量体の組成を各々、表1の(A)、(A′)、及び(B)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系共重合体溶液1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~3に用いるアクリル系共重合体溶液を得た。
【0051】
<粘着剤組成物及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造したアクリル系共重合体溶液1(そのうちアクリル系共重合体が100重量部)に対して、コロネートHX 1.5重量部と、トリオクチルホスホニウムベンジルクロリド2.0重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着フィルムを得た。
その後、一方の面に帯電防止及び防汚処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に粘着フィルムを転写させ、「帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の「架橋剤」及び(C)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2~6及び比較例1~3の粘着フィルムを得た。
【0052】
表1において、各成分の配合比は、(A)と(A′)との合計量を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。また、表2(C)群には、帯電防止剤の25℃における水100gへの溶解度(g)、及び融点(℃)を合わせて示した。
なお、コロネート(登録商標)HX、同HLは日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、TETRAD(登録商標)-Xは三菱ガス化学株式会社の商品名であり、デュラネート(登録商標)24A-100は旭化成ケミカルズ株式会社の商品名である。
【0053】
【0054】
【0055】
<試験方法及び評価>
実施例1~6及び比較例1~3における粘着フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を露出させた粘着フィルムを、表面抵抗率の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を露出させた粘着フィルムを、粘着剤層を介して液晶セルに貼られた偏光板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力の測定試料とした。
【0056】
<粘着剤層の表面抵抗率>
エージングした後、偏光板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を露出させ、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0057】
<粘着力>
上記で得られた粘着剤層を露出させた粘着フィルムを、25mm幅の粘着フィルムに裁断し、偏光板の表面に貼り合わせた後、180°方向に引張試験機を用いて30m/minの剥離速度において剥がして測定した剥離強度を粘着力(N/25mm)とした。
【0058】
<耐汚染性>
上記で得られた粘着剤層を露出させた粘着フィルムを、偏光板に貼り合せた後、60℃90%RHの雰囲気下に250時間放置後、室温に取り出し、さらに12時間放置した後、試料を30m/minの引張速度で180°剥離した際に偏光板表面に汚染移行の無いことを確認した。評価目標基準は、偏光板に汚染移行の無い場合を「○」、少なくとも一部汚染移行が確認された場合を「△」、全面に汚染移行が確認された場合を「×」と評価した。
【0059】
表3に、評価結果を示す。なお、粘着剤層の表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0060】
【0061】
実施例1~6の粘着剤組成物及び粘着フィルムは、粘着剤組成物の中に帯電防止剤として融点30~50℃の疎水性の4級オニウム塩を含有するため、表面抵抗率が十分に低く、耐汚染性が良好であった。帯電防止性については、表3に示すとおり、表面抵抗率がいずれも、1.0×10+12Ω/□以下となっており、剥離帯電圧の低減効果を有している。
また、比較例1の粘着剤組成物及び粘着フィルムは、粘着剤組成物の中に帯電防止剤を含まないため、表面抵抗率が高く、しかも、耐汚染性に問題があった。
比較例2、3の粘着剤組成物及び粘着フィルムは、粘着剤組成物の中の帯電防止剤として、融点が50℃を越える親水性の4級オニウム塩を含有するため、表面抵抗率が高く、しかも、耐汚染性に問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の粘着剤組成物は、疎水性の4級オニウム塩を帯電防止成分として粘着剤に併用することで、粘着剤との相溶性に優れるためブリードアウトや粘着フィルムを剥がした際に、被着体に汚染が生じてしまうなどのリワーク性の欠点である課題を改善することができ、産業上の利用価値が大である。