IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ AIメカテック株式会社の特許一覧

特許7526490脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置
<>
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図1
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図2
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図3
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図4
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図5
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図6
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図7
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図8
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図9
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図10
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図11
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図12
  • 特許-脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B01D19/00 101
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021092993
(22)【出願日】2021-06-02
(65)【公開番号】P2022185361
(43)【公開日】2022-12-14
【審査請求日】2023-09-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011226
【氏名又は名称】AIメカテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 士朗
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-039735(JP,U)
【文献】特開2006-346633(JP,A)
【文献】特開2012-024717(JP,A)
【文献】特開平07-328314(JP,A)
【文献】特開昭52-100667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00-19/04
B05C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の液体が供給され、内部を減圧雰囲気に設定される処理容器と、
前記処理容器の内壁に設けられ、前記液体が前記内壁を伝って流れ落ちるように前記液体を供給する液体投入部と、を備え
前記液体投入部によって供給された液体は、前記減圧雰囲気に晒らされながら前記内壁を伝って流れ落ちることで脱泡及び脱気処理される、脱泡・脱気装置。
【請求項2】
前記液体投入部は、前記内壁との間で前記液体を下方に吐出させるスリットを形成させるスリット形成部材を備える、請求項1に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項3】
処理対象の液体が供給され、内部を減圧雰囲気に設定される処理容器と、
前記処理容器の内壁に設けられ、前記液体が前記内壁に沿って流れるように前記液体を供給する液体投入部と、を備え、
前記液体投入部は、
前記内壁との間で前記液体を吐出させるスリットを形成させるスリット形成部材と、
前記内壁に沿って設けられ、前記処理容器内に供給された前記液体を一時的に滞留させる滞留空間と、を備え、
前記スリットは、前記滞留空間内の液体を吐出させ、
前記スリットの幅は、前記滞留空間の幅よりも狭い、脱泡・脱気装置。
【請求項4】
前記スリット形成部材は、前記処理容器の内壁全周にわたって前記スリットを形成させる、請求項2に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項5】
前記液体投入部は、
前記内壁に沿って設けられ、前記処理容器内に供給された前記液体を一時的に滞留させる滞留空間を備え、
前記スリットは、前記滞留空間内の液体を吐出させ、
前記スリットの幅は、前記滞留空間の幅よりも狭い、
請求項2又は請求項に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項6】
前記スリット形成部材は、前記スリットに続く部分を下方に向けて傾斜させた傾斜部を備える、請求項2から請求項のいずれか一項に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項7】
前記処理容器は、前記内壁と前記スリット形成部材との間に前記液体を供給する複数の供給口を備える、請求項2から請求項のいずれか一項に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項8】
前記処理容器は、前記スリットより下方の前記内壁が下方に向けて波状に形成される、請求項2から請求項のいずれか一項に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項9】
前記処理容器は、前記スリットより下方の前記内壁が内側に向けて傾斜するように設けられる、請求項2から請求項のいずれか一項に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項10】
複数の前記処理容器が直列又は並列に接続される、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項11】
前記処理容器から排出された前記液体を通過させるフィルタを備える、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項12】
前記処理容器から排出された前記液体を前記液体投入部に送る循環部を備える、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項13】
前記循環部は、前記処理容器から排出された前記液体を前記液体投入部に送る管路と、前記液体を取り出す管路とを切り替える切り替え部を備える、請求項12に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項14】
前記液体は、粘度が1,000cpから10,000cpである、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の脱泡・脱気装置。
【請求項15】
処理容器の内部を減圧雰囲気に設定する工程と、
前記処理容器の内壁から、前記内壁を伝って流れ落ちるように処理対象の液体を供給する工程と、を含み、
前記内壁を伝って流れ落ちるように処理対象の液体を供給する工程は、前記減圧雰囲気に晒らされながら前記内壁を伝って流れ落ちることで脱泡及び脱気処理されることを含む、脱泡・脱気方法。
【請求項16】
処理容器内に供給された処理対象の液体脱泡・脱気方法であって、
前記処理容器は、前記処理対象の液体を一時的に滞留させる滞留空間と、前記処理容器の内壁との間で前記液体を吐出させるスリットと、を備え、
前記スリットの幅は、前記滞留空間の幅よりも狭く設定されており、
前記処理容器の内部を減圧雰囲気に設定する工程と、
前記滞留空間内に一時的に滞留させた前記液体を前記スリットから前記内壁を伝って流れるように前記液体を供給する工程と、を含む、脱泡・脱気方法。
【請求項17】
基板に塗布液を塗布するノズルと、
前記ノズルに供給する前記塗布液に対して脱泡・脱気処理を行う、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の脱泡・脱気装置と、を備える、塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体又はガラスなどの基板に薄膜を形成するため、基板上に塗布液をノズルから吐出して、基板上に塗布する塗布装置が用いられる。薄膜を形成する際に使用される塗布液(液体)には、高粘度の液体が使用される場合がある。高粘度の液体は気体が溶存しやすく、また液体中に気泡が含まれている場合が多い。このように液体中に気体又は気泡が多く残っていると塗布の際に場所によって塗布ムラが生じて、均一な薄膜を形成することができなくなる。従って、塗布する液体中から溶存する気体の脱気、及び液体中の気泡を除去(脱泡)することが必要となる。このような液体中から脱泡・脱気させる構成として、脱泡・脱気装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の脱泡・脱気装置は、真空雰囲気とした処理容器内に回転体が設けられ、この回転体に液体を供給して回転体の回転による遠心力により液体を処理容器の内壁に飛ばして液体中から脱泡・脱気を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-205322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の脱泡・脱気装置は、液体が供給される回転体を回転させる構成のため、処理容器内に回転体を回転可能に支持する軸受け等が存在し、回転体の回転に伴って生じた異物が液体中に混入するおそれがあることから好ましくない。さらに、処理容器の内壁に液体をぶつけるので、液体中に新たに気体が溶け込み、又は液中に気泡が新たに生じてしまうといった問題がある。また、この脱泡・脱気装置をメンテナンスのために洗浄等を行う場合、回転体の取り外し作業、軸受け部分の洗浄作業等が面倒であり、メンテナンスに手間がかかるといった問題がある。
【0005】
本発明は、効率よく液体中から脱泡・脱気することが可能であり、さらにメンテナンス等を容易に行うことが可能な脱泡・脱気装置、脱泡・脱気方法、及び塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る脱泡・脱気装置は、処理対象の液体が供給され、内部を減圧雰囲気に設定される処理容器と、処理容器の内壁に設けられ、液体が前記内壁を伝って流れ落ちるように液体を供給する液体投入部と、を備え、液体投入部によって供給された液体は、減圧雰囲気に晒らされながら内壁を伝って流れ落ちることで脱泡及び脱気処理される。また、本発明の態様に係る脱泡・脱気装置は、処理対象の液体が供給され、内部を減圧雰囲気に設定される処理容器と、処理容器の内壁に設けられ、液体が前記内壁に沿って流れるように液体を供給する液体投入部と、を備え、液体投入部は、内壁との間で前記液体を吐出させるスリットを形成させるスリット形成部材と、内壁に沿って設けられ、処理容器内に供給された前記液体を一時的に滞留させる滞留空間と、を備え、スリットは、滞留空間内の液体を吐出させ、スリットの幅は、滞留空間の幅よりも狭い。
【0007】
本発明の態様に係る脱泡・脱気方法は、処理容器の内部を減圧雰囲気に設定する工程と、処理容器の内壁から、内壁を伝って流れ落ちるように処理対象の液体を供給する工程と、を含み、内壁を伝って流れ落ちるように処理対象の液体を供給する工程は、減圧雰囲気に晒らされながら内壁を伝って流れ落ちることで脱泡及び脱気処理されることを含む。また、本発明の態様に係る脱泡・脱気方法は、処理容器内に供給された処理対象の液体脱泡・脱気方法であって、処理容器は、処理対象の液体を一時的に滞留させる滞留空間と、処理容器の内壁との間で液体を吐出させるスリットと、を備え、スリットの幅は、滞留空間の幅よりも狭く設定されており、処理容器の内部を減圧雰囲気に設定する工程と、滞留空間内に一時的に滞留させた液体を前記スリットから内壁を伝って流れるように液体を供給する工程と、を含む。
【0008】
本発明の態様に係る塗布装置は、基板に塗布液を塗布するノズルと、ノズルに供給する塗布液に対して脱泡・脱気処理を行う、上記した態様の脱泡・脱気装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記した態様の脱泡・脱気装置、及び脱泡・脱気方法によれば、液体を処理容器の内壁に沿って流すので、液体中に新たに気体が溶け込むこと、及び、新たに気泡が生じることを抑制しつつ、液体中から効率よく脱泡・脱気することができる。また、回転体などの可動部分を有しないので、メンテナンス等における洗浄等が容易となり、作業者の負担を軽減できる。
【0010】
また、上記した態様の塗布装置によれば、上記した態様の脱泡・脱気装置を備えるので、ノズルから吐出される塗布液中から効率よく脱泡・脱気を行うことができ、その結果、基板に形成される薄膜の塗布ムラが軽減され、膜厚が均一化された薄膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る脱泡・脱気装置の一例を示す断面図である。
図2図1のA-A線に沿った断面図である。
図3】(A)は、スリット形成部材の一例を示す平面図、(B)は、スリット形成部材の一例を示す断面図である。
図4】液体投入部の他の例を示す平面図である。
図5】第2実施形態に係る脱泡・脱気装置の一例を示す断面図である。
図6】第3実施形態に係る脱泡・脱気装置の一例を示す断面図である。
図7】第4実施形態に係る脱泡・脱気装置の一例を示す模式図である。
図8】第5実施形態に係る脱泡・脱気装置の一例を示す模式図である。
図9】第6実施形態に係る脱泡・脱気装置の一例を示す模式図である。
図10】実施形態に係る脱泡・脱気方法の一例を示すフローチャートである。
図11】実施形態に係る塗布装置の一例を模式的に示す側面図である。
図12】本発明の実施例における脱泡・脱気処理時間と酸素溶存率の関係を表したグラフである。
図13】比較例における脱泡・脱気処理時間と酸素溶存率の関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態を説明するが、本発明は以下に説明する内容に限定されない。図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造又は形状、縮尺等が異なっている場合がある。図11においては、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。水平面はXY面である。水平面における一方向をX方向と表記する。X方向は、後述するステージ20とノズル30との相対移動方向である。水平面においてX方向に直交する方向をY方向と表記する。X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向と表記する。なお、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図11中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向と反対の方向が-方向である。
【0013】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る脱泡・脱気装置10の一例を示す断面図である。図2は、図1のA-A線に沿った断面図である。本実施形態の脱泡・脱気装置10は、処理対象である液体Lに対して脱泡・脱気処理を行う。脱泡・脱気装置10は、図1及び図2に示すように、処理容器11と真空ポンプP1とを備える。処理容器11は、脱泡・脱気処理する液体Lが投入される。なお、液体Lは、例えば、脱泡・脱気処理前では液体L中に多くの気体が溶存し又は多くの気泡を含んでおり、脱泡・脱気処理後では液体L中に溶存する気体の量が減少し又は気泡の量が減少している。本明細中において、液体Lは、脱泡・脱気処理の前後で状態が異なっているが、統一して液体Lと表記している。
【0014】
真空ポンプP1は、処理容器11の内部を減圧する。真空ポンプP1は、例えばターボポンプ、ダイアフラムポンプなど、公知のポンプが使用できる。処理容器11の一部には、真空ポンプP1と接続される不図示の接続管が設けられている。
【0015】
処理容器11は、図1に示すように、胴部12と蓋部13とを備える。処理容器11は、内部が減圧されるので、耐圧性を有する材質、寸法等に形成される。処理容器11は、例えば、金属製、樹脂製などで形成される。また、処理容器11は、処理対象の液体Lが有機溶剤等を含む場合、例えば耐腐食性等を考慮すると例えば金属製であることが好ましい。また、処理容器11の内面には、液体Lに対する耐腐食性を向上させる目的で被膜等が形成されてもよい。
【0016】
胴部12は、上部が開放された有底の筒形状に形成されている。胴部12は、図2に示すように断面が円形状であるが、この形態に限定されず、例えば、断面が楕円形状、長円形状、四角形状等の多角形状であってもよい。処理容器11の内径及び高さ等の寸法については、投入する液体Lの量(単位時間あたりの投入量)などにより適宜設定される。蓋部13は、胴部12の上端部に取り付けられ、胴部12の上端を封止することにより処理容器11内を密閉状態とする。蓋部13は、胴部12に対して取り外し可能であってもよい。蓋部13の材質は、特に限定されないが、胴部12と同様の材質が好ましく、例えば、金属、樹脂等が使用される。
【0017】
胴部12には、排出口14と、液体投入部15と、が設けられている。胴部12の下部は、脱泡・脱気処理された液体Lが流れやすいように、下方に向かってやや丸みを帯びた底部112を形成している。排出口14は、底部112のほぼ中央に設けられている。なお、胴部12の下部は、やや丸みを帯びた底部112とする形状に限定されず、例えば、水平面に平行な平面であってもよいし、排出口14に向けて傾斜するような底部とする形状であってもよい。
【0018】
排出口14には、処理容器11から液体Lを排出するための排出管14aが接続されている。排出管14aの一部には、管路を開閉する不図示の開閉バルブが設けられている。この開閉バルブを開閉することにより、脱泡・脱気処理された液体Lの処理容器11からの排出量又は排出タイミング、さらには処理容器11における液体Lの貯留量が調整される。なお、排出口14は、1カ所であることに限定されず、2カ所以上設けられてもよい。
【0019】
液体投入部15は、供給口151と、スリット形成部材17と、を備える。供給口151は、処理対象の液体Lを処理容器11内に供給するために、胴部12の内壁16に開口するように設けられる。供給口151は、胴部12の上部において1か所に設けられている。供給口151は、スリット形成部材17に向けて開口する位置に設けられる。なお、供給口151が複数か所に設けられる形態については後述する。供給口151には、処理容器11に液体Lを供給するための供給管151aが接続されている。供給管151aの一部には、管路を開閉する不図示の開閉バルブが設けられている。この開閉バルブを開閉することにより、液体Lの処理容器11への供給量又は供給タイミングが調整される。液体Lの供給量は、例えば、供給管151aに設けられた不図示の流量計の検出結果に基づいて、単位時間あたりの液体Lの供給量が設定されてもよい。
【0020】
スリット形成部材17は、供給口151の上方及び側方を覆うような形状を有する。スリット形成部材17は、胴部12の内壁16との間で内壁16の全周にわたって下向きのスリットSを形成させる。スリットSは、液体Lを下向きに吐出させる。すなわち、液体投入部15は、供給口151から液体Lが内壁16とスリット形成部材17との間に供給されることにより、スリットSを介して内壁16に沿って液体Lを吐出する。液体Lは、内壁16を伝わりながら流れ落ちることになる。
【0021】
図3は、スリット形成部材17の一例を示す図である。図3に示すように、スリット形成部材17は、環状に形成され、内壁16と当接する上側の当接部171と、内壁16に当接しない下側の先端部172とを有している。上記したスリットSは、内壁16と先端部172との間で形成される。また、スリット形成部材17は、当接部171と先端部172との外周側に切り欠き部173が設けられる。切り欠き部173は、断面が略半円形状に切り欠かれて設けられる。内壁16と切り欠き部173とで形成される空間は、供給口151から供給された液体Lを一時的に滞留させる滞留空間Kとなる。滞留空間Kは、内壁16に沿って環状に形成されている。
【0022】
また、切り欠き部173により、先端部172の上面側は、水平面に対して下方に向けて角度θで傾斜した傾斜部173aが形成される。傾斜部173aは、スリットSに続く先端部172を下方に向けて傾斜させた曲面として形成されている。この傾斜部173aにより、滞留空間Kの液体Lは、スリットSから流れ落ち、滞留空間Kに液体Lが残存するのを防止することができる。なお、本実施形態では、切り欠き部173を半円形状に切り欠くことで曲面状の傾斜部173aとしているが、この形態に限定されない。例えば、傾斜部173aは、傾斜した平面状に形成されてもよい。
【0023】
スリット形成部材17の材質は、特に限定されないが処理容器11と同様に金属が好ましい。使用される液体Lに対する耐腐食性を有していれば、スリット形成部材17の材質は、樹脂であってもよい。スリット形成部材17は、当接部171を供給口151上方の内壁16に当接させた状態でボルト等の締結部材により胴部12に固定される。供給口151から投入された液体Lは、滞留空間Kに一時的に溜められ、スリットSから内壁16を伝って流れ落ちる。
【0024】
スリットSの幅は、例えば、0.1mmから5.0mmの範囲に設定されることが好ましい。スリットSの幅がこの範囲であれば、液体Lが内壁16を伝って流れ落ちる際、液体Lを薄膜化することができる。液体Lの粘度は、例えば、1,000cpから10,000cpである。本実施形態において脱泡・脱気処理する液体Lとしては、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂溶液が挙げられる。
【0025】
続いて、脱泡・脱気装置10の使用状態について説明する。供給口151から供給された液体Lは、スリット形成部材17の滞留空間Kに溜められつつ環状に拡がり、同時にスリットSから吐出される。液体Lは、内壁16を伝って流れ落ちる際に膜状となる。また、液体Lは内壁16を伝って流れるので落下速度は空中を落下するより遅くなる。その結果、液体Lを広くかつ長い時間減圧雰囲気下に晒すことができ、液体Lに対して効率よく脱泡・脱気することが可能となる。なお、液体Lに対する脱泡・脱気処理は、内壁16を流れ落ちた後、底部112に溜まっている間にも継続して行われる。
【0026】
処理容器11への液体Lの供給は、連続して行ってもよいし、所定量ずつ定期的に(バッチ式で)行ってもよい。液体Lの供給を連続して行う場合、排出口14から液体Lを連続して排出させる。また、液体Lの供給を所定量ずつ定期的に行う場合、例えば、液体LがスリットSから流れ落ちて所定時間が経過したタイミングで排出口14から液体Lを排出させる。
【0027】
このように、本実施形態の脱泡・脱気装置10によれば、液体Lを処理容器11の内壁16に沿って流すので、液体L中から効率よく脱泡・脱気することができる。また、内壁16に伝って流れる液体Lの流速が遅いので、液体L中に新たに気体が溶け込むこと、及び、新たに気泡が生じることを抑制できる。また、回転体などの可動部分を有しないので、メンテナンス等における洗浄等が容易となり、作業者の負担を軽減できる。
【0028】
なお、上記した実施形態では、スリット形成部材17が内壁16の一周にわたって設けられる形態を例に挙げて説明しているが、この形態に限定されない。例えば、スリット形成部材17が内壁16の一周のうち部分的に設けられる形態であってもよい。この場合、供給口151の近傍に、部分的なスリット形成部材17が設けられる形態であってもよい。すなわち、滞留空間Kが内壁16の一周のうち部分的に設けられてもよい。また、液体投入部15は、スリット形成部材17を備えなくてもよい。例えば、液体Lが供給口151から処理容器11に投入される際、液体Lが内壁16を伝わるようにすれば、スリット形成部材17は設けられなくてもよい。
【0029】
また、上記した実施形態では、供給口151が1カ所に設けられているが、この形態に限定されず、供給口151が複数カ所に設けられてもよい。供給口151が複数カ所に設けられる場合、複数の供給口151は、等間隔で配置されてもよいし、等間隔で配置されなくてもよい。図4は、液体投入部15の他の例を示す平面図である。図4に示すように、液体投入部15は、4カ所に供給口151を備える構成であってもよい。4カ所の供給口151は、内壁16の一周にわたって約90度の間隔をもって設けられている。また、排出口14に接続される排出管14aは、平面視で2つの供給口151の間の中央部分(約45度の位置)を通るように配置されている。
【0030】
このように供給口151が4カ所に等間隔で設けられることにより、内壁の一周にわたる滞留空間Kに対してバランスよく液体Lを供給することができる。その結果、スリットSからバランスよく液体Lが吐出され、内壁16に沿って均一な液体Lの膜を形成させることができる。
【0031】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態に係る脱泡・脱気装置10Aの一例を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。また、図5では、図1に記載されている真空ポンプP1の記載を省略している。脱泡・脱気装置10Aは、図5に示すように、胴部12Aの一部が波状に形成されている。脱泡・脱気装置10Aにおいて、第1実施形態の脱泡・脱気装置10と異なる点は、胴部12Aの形態であり、その他の構成は、上記した脱泡・脱気装置10と同様である。
【0032】
胴部12Aは、スリットSより下方かつ底部112Aより上方の部分が波状に形成されている。胴部12Aが波状に形成されることにより、内壁16Aも波状に形成されている。このように、内壁16Aを波状とすることにより、スリットSから吐出された液体Lは、膜状となって波状の内壁16Aを伝って流れ落ちることになる。従って、図1に示す胴部12と、図5に示す胴部12Aとが同じ高さである場合、液体Lが胴部12の内壁16を流れ落ちる距離よりも、内壁16Aを流れ落ちる距離が長くなる。さらに液体Lが波状の内壁16Aを流れることから流速が遅くなる。その結果、液体Lが減圧雰囲気下に晒される時間が長くなるため、液体Lに対する脱泡・脱気処理の効率を向上させることができる。
【0033】
なお、胴部12A(内壁16A)の波形の形状、個数は、任意である。また、胴部12A(内壁16A)の波形の形状は、液体Lが内壁16Aから剥がれ落ちないような形状であってもよいし、内壁16Aの一部から液体Lが剥がれ落ちるような形状であってもよい。また、胴部12A(内壁16A)の波形の形状は、同一の波形が連続する形態でもよいし、異なる波形が接続された形態であってもよい。また、胴部12A(内壁16A)の波形の形状は、下方に向けて波形が大きく又は小さくなる形態であってもよい。
【0034】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。図6は、第3実施形態に係る脱泡・脱気装置10Bの一例を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。また、図6では、図1に記載されている真空ポンプP1の記載を省略している。脱泡・脱気装置10Bは、図6に示すように、胴部12Bの一部が内側に向けて傾斜するように設けられている。脱泡・脱気装置10Bにおいて、第1実施形態の脱泡・脱気装置10と異なる点は、胴部12Bの形態であり、その他の構成は、上記した脱泡・脱気装置10と同様である。
【0035】
胴部12Bは、スリットSより下方かつ底部112Bより上方の部分が内側に向けて傾斜している。胴部12Aが内側に傾斜していることにより、内壁16Bも内側に傾斜している。このように、内壁16が内側に傾斜していることにより、スリットSから吐出された液体Lは、膜状となって傾斜する内壁16Bを伝って流れ落ちることになる。従って、図1に示す胴部12と、図6に示す胴部12Bとが同じ高さである場合、液体Lが胴部12の内壁16を流れ落ちる距離よりも、内壁16Bを流れ落ちる距離が長くなる。さらに液体Lが傾斜する内壁16Bを流れることから流速が遅くなる。その結果、液体Lが減圧雰囲気下に晒される時間が長くなるため、液体Lに対する脱泡・脱気処理の効率を向上させることができる。
【0036】
なお、胴部12B(内壁16B)の傾斜角度(水平方向に対する角度、又は鉛直方向対する角度)は、任意である。また、胴部12B(内壁16B)の傾斜する部分は、断面を見たときに直線状に傾斜する形態であってもよいし、曲線状に傾斜する形態であってもよい。また、胴部12B(内壁16B)の傾斜する部分は、途中から傾斜角度を変化させる形態であってもよい。
【0037】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。図7は、第4実施形態に係る脱泡・脱気装置10Cの一例を示す模式図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。なお、図7では処理容器11を模式化して示している。図7に示すように、脱泡・脱気装置10Cは、処理容器11と、真空ポンプP1と、液体タンクT1と、排出ポンプP2と、フィルタFと、管路L1、L2、L3、L4、L5、L6と、開閉バルブB1、B2、B3と、を備える。液体タンクT1は、処理対象の液体Lを貯留する。液体タンクT1の材質、寸法は任意であり、処理対象の液体Lを貯留するのに適した材質、寸法が適用される。
【0038】
排出ポンプP2は、処理容器11内で処理された液体Lを処理容器11内から排出する。排出ポンプP2は、例えば、ダイアフラムポンプなどが用いられる。なお、排出ポンプP2(ダイアフラムポンプ)は、真空ポンプP1と接続させて駆動させてもよいし、真空ポンプP1とは異なるポンプと接続させて駆動させてもよい。フィルタFは、排出ポンプP2によって処理容器11から排出された液体Lを通過させて、液体L中の異物を除去する。フィルタFは、例えば、商品名がプロセスガード、フロロガード、マイクロガード(以上、日本インテグリス社製)、ウルチクリーン、フォトクリーン(以上、日本ポール社製)等が用いられる。
【0039】
管路L1、L2、L3、L4、L5、L6は、所定の内径を有するパイプである。管路L1~L6の内径は、通過させる液体Lの流量により適宜設定される。管路L1~L6のの材質は、特に限定されないが金属、樹脂などが用いられる。管路L1は、液体タンクT1と処理容器11とを接続している。管路L1の一端は液体タンクT1内の液体L中に挿管されており、他端は液体投入部15の供給口151に接続されている。液体タンクT1内の液体Lは、処理容器11を減圧雰囲気とすることで吸い上げられ、管路L1を介して液体投入部15の供給口151から処理容器11内に投入される。なお、管路L1には、管路L1を開閉する不図示の開閉バルブを備えている。また、管路L1には、液体Lを液体タンクT1から処理容器11に送るための送液ポンプを備えてもよい。
【0040】
管路L2は、処理容器11内と真空ポンプP1とを接続している。管路L2の一端は処理容器11内に挿管されており、他端は真空ポンプP1に接続されている。管路L3は、処理容器11と排出ポンプP2とを接続している。管路L3の一端は処理容器11の排出口14に接続され、他端は排出ポンプP2に接続されている。管路L4は、排出ポンプP2並びに管路L5及び管路L6と、を連結している。管路L4の一端は排出ポンプP2に接続されている。管路L4の他端側は、分岐して管路L5と管路L6とを形成している。なお、管路L4の途中には上記したフィルタFが設けられている。
【0041】
管路L5は、管路L4と処理容器11とを接続連結している。管路L5の一端は管路L4の分岐部に接続され、他端は液体投入部15の供給口151に接続されている。管路L6は、管路L4と後述する塗布液供給装置40とを接続している。管路L6の一端は管路L4の分岐部に接続され、他端は塗布液供給装置40に接続されている。
【0042】
開閉バルブB1は、管路L3の途中に設けられており、処理容器11より排出される液体Lの流れを制御する。開閉バルブB2は、管路L5の途中に設けられており、フィルタFを通過して処理容器11に向かう液体Lの流れを制御する。開閉バルブB3は、管路L6の途中に設けられており、フィルタFを通過して塗布液供給装置40に向かう液体Lの流れを制御する。開閉バルブB1、B2、B3の開閉は、不図示の制御部を用いて自動で行ってもよいし、作業者による手動で行ってもよい。
【0043】
処理容器11から排出された液体Lの流れは、2つのルートが形成されている。1つのルートは、開閉バルブB2を開き、開閉バルブB3を閉じた場合、フィルタFを通過した液体Lは、処理容器11に投入される。すなわち、液体Lに対する循環部Cが形成される。この循環部Cにより液体Lは再度処理容器11に投入され、再度脱泡・脱気処理されるので、液体L中から確実に脱泡・脱気することができる。もう1つのルートは、開閉バルブB2を閉じ、開閉バルブB3を開いた場合、フィルタFを通過した液体Lは、塗布液供給装置40に供給される。すなわち、脱泡・脱気された液体Lは、塗布液供給装置40に送られる。
【0044】
続いて、脱泡・脱気装置10Cの使用状態について説明する。先ず、真空ポンプP1を駆動して処理容器11を減圧雰囲気とする。次いで、管路L1における不図示の開閉バルブを開いて、液体タンクT1の液体Lを処理容器11に投入する。このとき、管路L3の開閉バルブB1は閉じている。所定量が処理容器11に投入されると開閉バルブにより管路L1を閉じて、液体Lの投入を停止させる。液体Lを処理容器11に投入してる段階で、開閉バルブB1を開いて排出ポンプP2を駆動させる。このとき、管路L5の開閉バルブB2を開き、管路L6の開閉バルブB3を閉じて、循環部Cを形成させておく。排出ポンプP2により処理容器11から排出された液体Lは、管路L3から管路L4のフィルタFを介して管路L5に流れ込み、再度処理容器11に投入される。
【0045】
液体Lは、循環部Cにより再度処理容器11に投入されることで脱泡・脱気処理される。この状態で所定時間が経過したタイミングで、開閉バルブB2を閉じ、開閉バルブB3を開くことで、フィルタFを通過した液体Lは、塗布液供給装置40に送られる。なお、液体Lを循環させる所定時間は、予め実験等により設定されていてもよいし、フィルタFを通過した液体Lをサンプリングして、液体Lの酸素溶存率、脱気度等を計測し、所望の値が得られたタイミングであってもよい。
【0046】
このように、処理容器11から排出された液体Lは、再度処理容器11に投入されるといった循環部Cにより、液体Lから脱泡・脱気処理が繰り返して行われる。その結果、液体Lに対して確実に脱泡・脱気処理を行うことができる。なお、上記した形態では、処理容器11に所定量の液体Lを投入し、この液体Lを循環部Cで循環させた後に塗布液供給装置40に送るといったバッチ式で処理を行っているが、この形態に限定されない。例えば、液体タンクT1から液体Lを連続して処理容器11に投入しつつ、一部を循環部Cで処理容器11に戻し、他の一部を塗布液供給装置40に送る形態であってもよい。また、管路L6により液体Lを塗布液供給装置40に送ることに代えて、保管用のタンクに液体Lを送ってもよい。
【0047】
[第5実施形態]
第5実施形態について説明する。図8は、第5実施形態に係る脱泡・脱気装置10Dの一例を示す模式図である。なお、上記した第4実施形態の脱泡・脱気装置10Cと同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。図8に示すように、脱泡・脱気装置10Dは、2台の処理容器11A、11Bを直列に接続している。2台の処理容器11A、11Bは、それぞれ管路L2で1台の真空ポンプP1に接続されている。すなわち、真空ポンプP1は、2台の処理容器11A、11Bで兼用される。なお、処理容器11C、11Dで異なる真空ポンプP1が用いられてもよい。処理容器11Aは、管路L1を介して液体タンクT1の液体Lが投入される。
【0048】
処理容器11Aから排出された液体Lは、管路L5を介して処理容器11Aに戻す循環部Cのルートと、管路L6Aを介して処理容器11Bに送るルートと、の2ルートで送られる。管路L6Aは、管路L4の分岐部と処理容器11Bとを接続している。管路L6Aの途中には、開閉バルブB3Aが設けられている。開閉バルブB2を閉じ、開閉バルブB3Aを開くことで、処理容器11Aから排出された液体Lは、管路L6Aを介して処理容器11Bに送られる。なお、循環部Cのルートについては、上記した脱泡・脱気装置10Cと同様であるため説明を省略する。
【0049】
また、処理容器11Bは、処理容器11Aから排出された液体Lに対して脱泡・脱気処理を行う。処理容器11Bから排出された液体Lは、管路L5を介して処理容器11Bに戻す循環部Cのルートと、管路L6を介して塗布液供給装置40に送るルートと、の2ルートで送られる。なお、液体Lが送られる2ルートについては、上記した脱泡・脱気装置10Cと同様であるため説明を省略する。
【0050】
この脱泡・脱気装置10Dによれば、前段の処理容器11Aで液体Lの脱泡・脱気処理を行い、その液体Lをさらに後段の処理容器11Bで液体Lの脱泡・脱気処理を行っている。従って、2台の処理容器11A、11Bを用いるので、それぞれの脱泡・脱気処理時間を短くすることができ、単位時間あたりにおける液体Lの脱泡・脱気処理の効率を向上させることができる。なお、図8では2台の処理容器11A、11Bを用いているが、3台以上の処理容器11が直列に接続された形態であってもよい。
【0051】
[第6実施形態]
第6実施形態について説明する。図9は、第6実施形態に係る脱泡・脱気装置10Eの一例を示す模式図である。なお、上記した第4実施形態の脱泡・脱気装置10Cと同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。図9に示すように、脱泡・脱気装置10Eは、2台の処理容器11C、11Dを塗布液供給装置40に対して並列に接続している。2台の処理容器11C、11Dは、それぞれ管路L2で1台の真空ポンプP1に接続されている。すなわち、真空ポンプP1は、2台の処理容器11C、11Dで兼用される。なお、処理容器11C、11Dで異なる真空ポンプP1が用いられてもよい。
【0052】
2台の処理容器11C、11Dは、それぞれ液体タンクT1の液体Lが投入される。なお、図9では2台の液体タンクT1からそれぞれ処理容器11C、11Dに液体Lが供給される形態を示しているが、この形態に限定されない。例えば1台の液体タンクT1から2台の処理容器11C、11Dに液体Lが供給される形態であってもよい。処理容器11C、11Dは、それぞれ循環部Cにより管路L5を介して液体Lを処理容器11C、11Dに戻すルートと、管路L6を介して液体Lを塗布液供給装置40に送るルートとを備えている。この2つのルートについては、上記した脱泡・脱気装置10Cと同様であるため説明を省略する。
【0053】
この脱泡・脱気装置10Eによれば、2台の処理容器11C、11Dが並列に配置されているので、単位時間あたりにおける液体Lの脱泡・脱気処理の効率を向上させることができる。また、2台の処理容器11C、11Dのいずれか一方がメンテナンス等のため稼働を停止させる場合であっても、処理容器11C、11Dのいずれか他方の稼働を停止させる必要がないため、液体Lの脱泡・脱気処理を継続して行うことができる。なお、図9では2台の処理容器11A、11Bを用いているが、3台以上の処理容器11が並列に接続された形態であってもよい。
【0054】
[脱泡・脱気方法]
次に、実施形態に係る脱泡・脱気方法の一例について説明する。図10は、実施形態に係る脱泡・脱気方法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートを説明するに際して、上記した第4実施形態の脱泡・脱気装置10Cを参照するが、他の実施形態でも同様である。図10のフローチャートに示す各処理は、不図示の制御部の指示により行ってもよいし、又は作業者の手動により行ってもよい。図10に示すように、先ず、処理容器11の内部を減圧する(ステップS01)。制御部等は、真空ポンプP1を駆動させ、処理容器11の内部の気体を管路L2を介して真空ポンプP1に吸引し、処理容器11を減圧させる。なお、処理容器11内の圧力をどの程度にするかは、液体Lの種類により異なるが、通常は-30kpa~-100kpaの範囲に調整する。
【0055】
続いて、処理容器11に液体Lを供給する(ステップS02)。処理容器11内が減圧雰囲気となることで、液体タンクT1から吸い出され、管路L1を介して処理対象の液体Lが供給される。液体Lは、液体投入部15の供給口151から処理容器11の胴部12内に投入される。このとき、液体Lは、スリット形成部材17によって形成されている滞留空間K(図1参照)に流れ込み、スリットSから内壁16に沿って流れ落ちる。液体Lが内壁16を流れ落ちる間、及び底部112(図1参照)に溜まっている間、減圧雰囲気下に晒されることにより液体L中に溶存している気体、及び液体L中に含まれる気泡が除去される(脱泡・脱気される)。液体Lは、膜状となって内壁16の全体に広がった状態で流れ落ちるので、減圧雰囲気に晒らされる液体Lの面積が広くなり、液体L中から効率よく脱泡・脱気処理される。なお、処理容器11に所定量の液体Lを溜めるため、開閉バルブB1は閉じた状態としている。
【0056】
続いて、処理容器11から液体Lを排出する(ステップS03)。開閉バルブB1を開いて、排出ポンプP2を駆動することで、液体Lが、排出口14(図1参照)から管路L3を介して排出される。排出ポンプP2を通過した液体Lは、管路L4を流れてフィルタFにより異物等が除去される。続いて、フィルタFを通過した液体Lについて、再度脱泡・脱気処理を行うか否かを判断する(ステップ04)。例えば、制御部は、処理開始から所定時間が経過するまで、液体Lに対して再度脱泡・脱気処理を行うと判断する。また、制御部は、フィルタFを通過した液体Lの酸素溶存率、脱気度等をセンサ等により取得して、所定値に達するまで再度脱泡・脱気処理を行うと判断する。
【0057】
再度脱泡・脱気処理を行うと判断した場合(ステップS04のYES)は、ステップS02に戻り、液体Lは、再度処理容器11に投入され、上記したように脱泡・脱気処理が行われる。すなわち、液体Lは、循環部C(図1参照)により処理容器11の内外を循環する。このとき、管路L6の開閉バルブB3が閉じられ、管路L5の開閉バルブB2が開いた状態となっている。液体Lは、管路L4から管路L5を介して、再度処理容器11に投入される。
【0058】
一方、再度脱泡・脱気処理を行わないと判断した場合(ステップS04のNO)は、液体Lを塗布液供給装置40へ移送する(ステップ05)。このとき、管路L5の開閉バルブB2が閉じられ、管路L6の開閉バルブB3が開いた状態となっている。液体Lは、管路L4から管路L6を介して、塗布液供給装置40へ移送される。液体Lが塗布液供給装置40へ移送されることで、一連の処理が終了する。なお、上記したステップS04は、実行されなくてもよい。すなわち、ステップS03で処理容器11から液体Lを輩出した後、ステップS05で液体Lを塗布液供給装置40へ移送させてもよい。
【0059】
[塗布装置]
塗布装置について説明する。図11は、実施形態に係る塗布装置100の一例を模式的に示す側面図である。図11に示すように、塗布装置100は、脱泡・脱気装置10と、ステージ20と、ノズル30と、塗布液供給装置40と、を備える。ステージ20は、例えば平面視で矩形状であり、上面(+Z側の面)に基板Aを載置する載置面20aを有する。なお、ステージ20は、載置された基板Aを吸着して保持させる吸着機構を備えていてもよい。ステージ20の載置面20aには、例えば、基板搬送装置等により搬送された基板Aが載置される。
【0060】
ノズル30は、ステージ20の上方に設けられている。ノズル30は、例えばスリットノズルである。ノズル30は、先端(下端)のスリット(開口部)から、基板Aの表面に所定の薄膜を形成するための塗布液Q1を基板Aに向けて(-Z方向に向けて)吐出する。ノズル30とステージ20とは、不図示の駆動装置により相対的にX方向に移動可能である。例えば、ステージ20が固定され、ノズル30がX方向に移動可能な構成であってもよいし、ノズル30が固定され、ステージ20がX方向に移動可能な構成であってもよい。また、ノズル30とステージ20との双方がX方向に移動可能な構成であってもよい。
【0061】
塗布液供給装置40は、塗布液Q1をノズル30へ供給する。塗布液供給装置40は、ノズル30の内部に設けられている不図示の塗布液保持部に塗布液Q1を供給する。塗布液供給装置40は、塗布液Q1をノズル30に送るための不図示のディスペンスポンプ等を備える。塗布液供給装置40は、脱泡・脱気装置10により脱泡・脱気処理された液体Lが供給され、塗布液Q1としてディスペンスポンプ等によりノズル30へ供給する。このように、塗布液Q1として、脱泡・脱気処理された液体Lが用いられるので、ノズル30から吐出される塗布液Q1は、溶存する気体がなく(又は少なく)、気泡が除去されている。
【0062】
塗布装置100の動作について説明する。ノズル30の先端を基板Aの上面に対して所定の間隔となるように、ノズル30の高さ(Z方向の位置)を調整する。続いて、ノズル30とステージ20とを相対的にX方向に移動させつつ、ノズル30から塗布液Q1を吐出させる。この動作により、基板Aの上面には、塗布液Q1による薄膜が形成される。ノズル30の高さ調整、ノズル30とステージ20とを相対的な移動、及びノズル30からの塗布液Q1の吐出は、不図示の制御装置等により制御される。
【0063】
このように、塗布装置100によれば、塗布液Q1から溶存する気体、気泡が除去されているので、基板Aの上面に塗布ムラがない均一な薄膜を形成することができる。なお、脱泡・脱気装置10は、塗布液供給装置40と別の装置として塗布装置100に設けられてもよいし、塗布液供給装置40の一部として設けられてもよい。また、1台の脱泡・脱気装置10から複数台の塗布装置100(塗布液供給装置40)に液体Lを供給するような塗布システムが形成されてもよい。
【実施例
【0064】
実施例について説明する。本実施例では、上記した第4実施形態の脱泡・脱気装置10Cを用いて試験を行った。本実施例において、上記した実施形態に係る脱泡・脱気方法を、壁面脱泡・脱気方法と称する。初期状態で酸素溶存率の異なる液体Lを各4kgずつ3種類用意し、試料N1、N2、N3とした。液体Lとしては、商品名U-ワニスS(宇部興産社製ポリイミド系樹脂溶液)を使用した。処理容器11は、内壁16に設けられたスリット形成部材17により、スリットSの幅を2.0mmとした。処理容器11内の圧力は、-70kpaに設定した。
【0065】
試料N1、N2、N3に対して脱泡・脱気処理するため、各試料N1、N2、N3を液体タンクT1からスリットSを介して処理容器11内の内壁16に沿って流れるように投入した。そして、投入直後、30分後、2時間後、24時間後の試料中に溶存している酸素の割合(以下、酸素溶存率という)を測定した。なお、試料N2については、24時間後は測定していない。本実施例では、上記した循環部Cを使用する方法を採用しており、循環速度(液体Lが流れる速度)を800g/minとして、実験を行った。各試料N1、N2、N3の脱泡・脱気処理後の酸素溶存率についての結果を表1及び図12に示す。図12において、縦軸は酸素溶存率、横軸は脱泡・脱気処理時間である。
【0066】
【表1】
【0067】
[比較例1]
比較例1として、処理容器内に回転体を備えた脱泡タンクで液体の脱泡・脱気処理を行った。液体Lを4kg用意し、試料N4とした。液体Lとしては、試料N1等と同一の液体を使用した。脱泡タンクは、商品名TZB-21-F0036(ユニコントロールズ社製)を用いた。この脱泡タンク内は、液体を撹拌するための回転体が備えられている。脱泡タンク内の圧力は、-75kpaに設定した。また、試料N4においては、回転体の回転数を約100rpmとして実験を行った。
【0068】
各試料N4を、脱泡タンクに投入し、回転体を回転させて脱泡・脱気処理を行い、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、17時間後の試料中の酸素溶存率を測定した。試料N4の脱泡・脱気処理後の酸素溶存率についての結果を表2及び図13に示す。また、表2中の溶存低下率については、初期状態と17時間後の値から算出した。図13において縦軸は酸素溶存率、横軸は脱泡・脱気処理時間である。なお、比較例1に係る脱泡・脱気方法を、回転脱泡・脱気方法と称する。また、以下の説明では、溶存低下率(%)を、所定時間経過後の酸素溶存率(%)/初期状態の酸素溶存率(%)で算出している。
【0069】
[比較例2]
比較例2として、初期状態の酸素溶存率を測定した液体Lを用意し、試料N5とした。この試料N5を、減圧雰囲気(-90kpa)としたクォート瓶(Qt瓶)に、滴下速度1.0g/2.0secで滴下して、脱泡・脱気処理を行った。液体Lとしては、試料N1等と同一の液体を使用した。そして、17時間後の試料N5中の酸素溶存率を測定した。酸素溶存率についての結果を表2及び図13に併せて示している。また、表2中の溶存低下率については、初期状態と17時間後の値から算出した。なお、比較例2に係る脱泡・脱気方法を、滴下脱泡・脱気方法と称する。
【0070】
【表2】
【0071】
壁面脱泡・脱気方法を用いた場合、表1より、投入直後(内壁を1回通過)の溶存低下率は、試料N1では54.07%、試料N2では52.80%、試料N3では50.00%となっている。すなわち、試料N1では45.93%、試料N2では47.20%、試料N3では50.00%の酸素が、脱泡・脱気されている。この結果から、試料N1、N2、N3は、投入直後という短時間で、45%から50%の酸素が脱泡・脱気されることが確認された。
【0072】
表1より、投入から30分経過後の溶存低下率は、試料N1では34.07%、試料N2では26.09%、試料N3では35.06%となっている。すなわち、循環部Cを使用して30分間試料を壁面脱泡・脱気処理すると、初期状態に対して試料N1では65.93%、試料N2では73.91%、試料N3では64.94%の酸素が、脱泡・脱気されことが確認できた。すなわち、各試料N1等は、投入から30分後には約65%から74%の酸素が脱泡・脱気されている。
【0073】
表1より、酸素溶存率の値は、投入から2時間経過後、24時間経過後で30分経過後と比べると大幅に変化していない。ちなみに、投入から2時間経過後の溶存低下率は、試料N1が31.85%、試料N2が26.09%、試料N3が29.22%である。図12からもわかるように、各試料N1、N2、N3とも、溶存酸素量は、投入直後から30分経過後までは急激に減少し、その後は、ほぼ平衡状態となっている。つまり、投入から30分経過で試料からほぼ脱泡・脱気されているといえる。
【0074】
比較例1の回転脱泡・脱気方法を用いた場合、表2より、試料N4の溶存低下率は、1時間後では46.61%、2時間後では33.05%、3時間後では33.05%、4時間後では29.87%、17時間後では29.87%である。すなわち、試料N4は、初期状態から、1時間後には53.39%、2時間後には66.95%、3時間後には66.95%、4時間後には70.13%、17時間後は、70.13%の酸素が脱泡・脱気されることが確認された。また、投入から4時間経過後では、数値に変化がなく、4時間経過して試料中からほぼ脱泡・脱気されているといえる。図13からもわかるように、試料N4は、投入から2時間経過後までは溶存率が低下していき、その後は、ほぼ平衡状態になっている。
【0075】
比較例2の滴下脱泡・脱気方法を用いた試料N5の場合は、滴下開始から17時間経過後であっても、溶存低下率は57.69%である。つまり、滴下開始から17時間経過しても42.31%しか脱泡・脱気が進んでいないことが確認された。
【0076】
このように、本実施例を適用した試料N1、N2、N3は、投入から30分程度で約65%から約74%の気泡が脱泡・脱気されており、比較例1及び比較例2と比較して脱泡・脱気処理の時間が短縮され、脱泡・脱気処理の効率が向上していることが確認された。
【0077】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態及び実施例で説明した範囲には限定されない。上記した実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記した実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、上記した実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、特許請求の範囲、明細書及び図面において示した処理の実行順序は、前の処理の結果を後の処理で用いるのでない限り、各処理は、任意の順序で実現することができる。特許請求の範囲、明細書及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず」、「続いて」等を用いて説明しても、この順で実施することが必須であることを意味しない。
【0078】
また、上記した実施形態において、処理容器11の胴部12を加熱してもよい。例えば、処理容器11の胴部12にヒータが設けられ、内壁16を流れ落ちる液体Lを加熱するようにしてもよい。また、処理容器11に電磁波(マイクロ波)発生器が設けられ、この電磁波発生器からの電磁波により液体Lを加熱するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10、10A、10B、10C、10D、10E・・・脱泡・脱気装置
11、11A、11B・・・処理容器
12、12A、12B・・・胴部
13・・・蓋部
14・・・排出口
15・・・液体投入部
16、16A、16B・・・内壁
17・・・スリット形成部材
20・・・ステージ
30・・・ノズル
40・・・塗布液供給装置
100・・・塗布装置
151・・・供給口
171・・・当接部
172・・・先端部
173・・・切り欠き部
A・・・基板
B1、B2、B3、B3A・・・開閉バルブ
C・・・循環路
K・・・滞留空間
L・・・液体
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L6A・・・管路
P1・・・真空ポンプ
P2・・・排出ポンプ
Q1・・・塗布液
S・・・スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13