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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】光照射方法及び光照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240725BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H01L21/30 571
G03F7/40 501
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023028972
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2024-01-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011226
【氏名又は名称】AIメカテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】丸山 健治
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-104169(JP,A)
【文献】特開2017-037169(JP,A)
【文献】特開2022-093112(JP,A)
【文献】特開昭63-062232(JP,A)
【文献】特開2013-069962(JP,A)
【文献】特開2002-001251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたレジスト膜に対して露光及び現像することでパターンを形成することと、
前記パターンに対して光源から光を照射して前記パターンを硬化させることと、を含み、
前記光源からの光の照射は、
前記光源と前記パターンとの間を第1距離に設定して前記光源から光を照射する第1照射工程と、
前記第1照射工程の後、前記光源と前記パターンとの間を前記第1距離より小さい第2距離として前記光源から光を照射する第2照射工程と、を含み、
前記第1照射工程は、前記光源と前記パターンとの間に配置されたフィルタにより波長330nm以上の領域を減衰させた光を照射することにより行う、光照射方法。
【請求項2】
前記第1照射工程及び前記第2照射工程は、前記パターンに対して前記光源を移動させつつ光を照射することにより行う、請求項1に記載の光照射方法。
【請求項3】
前記第1照射工程と前記第2照射工程とのそれぞれにおいて、前記光源は、基板までの距離を維持しながら移動させつつ前記基板へ光を照射する、請求項1又は請求項2に記載の光照射方法。
【請求項4】
前記第2距離は、前記第1距離に対して80%以上100%未満の長さである、請求項1又は請求項2に記載の光照射方法。
【請求項5】
前記光源からの光の照射に先立って、基板をステージに載置し、前記ステージに備える加熱装置により基板を加熱することを含む、請求項1又は請求項2に記載の光照射方法。
【請求項6】
前記ステージに基板を載置した際、前記ステージに備える吸着装置により基板を前記ステージに吸着させる、請求項5に記載の光照射方法。
【請求項7】
前記第1照射工程は、前記ステージに載置した基板に対して行う、請求項5に記載の光照射方法。
【請求項8】
前記第2照射工程は、前記ステージに備えるリフトピンによって前記ステージから上昇させた基板に対して行う、請求項5に記載の光照射方法。
【請求項9】
前記光源は、前記第1照射工程と前記第2照射工程とで、異なる照射エネルギで光を照射する、請求項1又は請求項2に記載の光照射方法。
【請求項10】
前記光源は、前記第1照射工程と前記第2照射工程とで、同一の照射エネルギで光を照射する、請求項1又は請求項2に記載の光照射方法。
【請求項11】
前記第1照射工程と前記第2照射工程とで照射する光の波長が異なる、請求項1又は請求項2に記載の光照射方法。
【請求項12】
前記第1照射工程と前記第2照射工程とで照射する光の波長が同一である、請求項1又は請求項2に記載の光照射方法。
【請求項13】
前記光源と前記パターンとの間にフィルタを進退させることにより、前記第1照射工程と前記第2照射工程とで照射する光の波長を変更する、請求項11に記載の光照射方法。
【請求項14】
前記第1照射工程及び前記第2照射工程では、加熱装置がステージを所定の温度に維持し、
前記第1照射工程では、前記ステージ上に載置された前記基板に対して前記光を照射するとともに、前記加熱装置によって前記基板を加熱し、
前記第2照射工程では、前記ステージから上方へ離間させた前記基板に対して前記光を照射することで、前記加熱装置による加熱ではなく当該光の照射によって前記基板を前記第1照射工程のときよりも高い温度に加熱する、請求項1又は2に記載の光照射方法。
【請求項15】
前記第2照射工程は、前記光源と前記パターンとの間から前記フィルタを退避させた状態で行う、請求項13に記載の光照射方法。
【請求項16】
前記第2照射工程での基板温度は、前記第1照射工程での基板温度より50~200℃高い、請求項1又は2に記載の光照射方法。
【請求項17】
基板上に形成されたレジストパターンに対して光源から光を照射させることで前記レジストパターンを硬化させる光照射装置であって、
前記光源と前記レジストパターンとの間を第1距離に設定して前記光源から光を照射する第1照射と、前記第1照射の後、前記光源と前記レジストパターンとの間を前記第1距離より小さい第2距離に設定して前記光源から光を照射する第2照射と、を行い、
前記第1照射及び前記第2照射は、前記レジストパターンに対して前記光源を移動させつつ光を照射し、
前記第1照射は、前記光源と前記レジストパターンとの間に配置されたフィルタにより波長330nm以上の領域を減衰させた光を照射することにより行う、光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射方法及び光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レジストパターン形成後の製造工程におけるレジストの耐熱性等の性能向上のために、基板に形成したレジスト膜を露光した後、現像により形成したプレパターンを硬化させる工程で、紫外線及び可視光線のうち波長330nm未満の領域を減衰させた光でプレパターンを照射する第1照射工程と、第1照射工程の後、紫外線及び可視光線の両方を含む光でプレパターンを照射する第2照射工程と、を含む方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-93112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたような方法では、レジスト膜の膜厚等によっては、レジストパターンの内部までレジスト材料が十分に硬化せず、レジストパターンの形成後に熱処理などを行った際に、シワや熱変形が生じてしまうことがある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、レジストパターンの形成を良好な品質で行うことが可能な光照射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様では、基板上に形成されたレジスト膜に対して露光及び現像することでパターンを形成することと、前記パターンに対して光源から光を照射して前記パターンを硬化させることと、を含み、前記光源からの光の照射は、前記光源と前記パターンとの間を第1距離に設定して前記光源から光を照射する第1照射工程と、前記第1照射工程の後、前記光源と前記パターンとの間を前記第1距離より小さい第2距離として前記光源から光を照射する第2照射工程と、を含み、前記第1照射工程は、前記光源と前記パターンとの間に配置されたフィルタにより波長330nm以上の領域を減衰させた光を照射することにより行う、光照射方法が提供される。また、本発明の第2態様では、基板上に形成されたレジストパターンに対して光源から光を照射させることで前記レジストパターンを硬化させる光照射装置であって、前記光源と前記レジストパターンとの間を第1距離に設定して前記光源から光を照射する第1照射と、前記第1照射の後、前記光源と前記レジストパターンとの間を前記第1距離より小さい第2距離に設定して前記光源から光を照射する第2照射と、を行い、前記第1照射及び前記第2照射は、前記レジストパターンに対して前記光源を移動させつつ光を照射し、前記第1照射は、前記光源と前記レジストパターンとの間に配置されたフィルタにより波長330nm以上の領域を減衰させた光を照射することにより行う
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1照射工程に対して、第2照射工程で光源とパターンとを近づけて光源から光を照射することにより、光源から光によるレジスト膜への入熱量が多くなり、レジスト膜の効果が促進される。従って、レジストパターンの形成を良好な品質で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る光照射装置の一例を示す立面図である。
図2】光照射装置の一例を示す平面図である。
図3】光照射装置の一例を示す側面図である。
図4】フィルタユニットを示す平面図である。
図5】フィルタユニットをY方向から見た断面図である。
図6】複数枚のフィルタを保持するフィルタユニットを示す断面図である。
図7】フィルタユニットを進退させるフィルタ駆動部の構成を示す図であり、フィルタユニットを光源と基板との間に配置した状態を示す平面図である。
図8】フィルタ駆動部により、フィルタユニットを光源と基板との間の位置から退避させた状態を示す平面図である。
図9】フィルタ駆動部により、フィルタユニットを光源と基板との間に位置させた状態を示す立断面図である。
図10】フィルタ駆動部により、フィルタユニットを光源と基板との間の位置から退避させた状態を示す立断面図である。
図11】実施形態に係る光照射方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこの実施形態に限定されない。また、図面においては実施形態の各構成をわかりやすくするために、一部を大きく又は強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造又は形状、縮尺等が異なっている場合がある。以下の各図において、XYZ直交座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ直交座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面において基板100に対する光照射ユニット5のスキャン方向に平行な方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とする。また、XY平面に垂直な方向をZ方向(上下方向)と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向とは反対の方向が-方向であるとして説明する。
【0010】
<光照射装置>
実施形態に係る光照射装置1について説明する。図1は、実施形態に係る光照射装置の一例を示す立面図である。図2は、光照射装置の一例を示す平面図である。図3は、光照射装置の一例を示す側面図である。光照射装置1は、基板上に形成されたレジスト膜に対し、紫外線を含む光を照射する。図1図3に示すように、光照射装置1は、チャンバー部2と、基板リフト部4と、光照射ユニット5と、フィルタユニット6と、制御部(図示無し)と、を主に備える。光照射装置1は、ステージ20で載置した基板100に対し、紫外線を含む光を照射する。
【0011】
チャンバー部2はステージ20と、扉22と天窓24と、を備える。チャンバー部2は、不活性ガス(例えば、窒素)をチャンバー内に供給するガス供給ライン23aと、チャンバー内に供給された不活性ガスをチャンバー外に排出するガス排出ライン23bとが接続される。天窓24は、チャンバー部2の上部を覆うように設けられており、例えば石英等の材質により形成されている。扉22は、チャンバー部2の-X側の側面の一部に、Z方向に移動可能に設けられている。扉22は、基板100をチャンバー部2に搬入又はチャンバー部2から搬出する際に、下方(-Z方向)に移動し、チャンバー開口部21を形成する。基板100の搬入、搬出後は、扉22が上方(+Z方向)に移動し、チャンバー開口部21が閉じられる。
【0012】
ステージ20は、加熱装置26と、吸着部27と、を備える。ステージ20は、基板100を載置する。本実施形態では、基板100は、平面視において(上方から見て)、例えば円形状の円形基板であるが、円形基板に限定されず、平面視において、矩形状(長方形状、正方形状)の角形基板、楕円形状、長円形状等であってもよい。図1図3に示すように、ステージ20は、側面視において(-Y側から見て)凹形状をしている。また、上方から見て例えば円形状であるが、この形態に限定されず、例えば、矩形状(長方形状、正方形状)、多角形状、円形状、楕円形状、長円形状等であってもよい。ステージ20は、例えば、金属、樹脂、セラミックス等の材質により形成されている。ステージ20は、基板100より大きい外径寸法に設定されている。
【0013】
加熱装置26は、例えば、内部に電熱線等の熱源を有するホットプレートである。なお、加熱装置26は、シート状の熱源を挟んで積層された積層構造体であってもよい。加熱装置26は、ステージ20を所定の温度に加熱することで、ステージ上に支持される基板100を加熱する。
【0014】
図3に示すように、吸着部27は、ステージ20に形成された基板吸着溝27mを有する。基板吸着溝27mは、ステージ20の上面に同心円状に複数形成される。複数の基板吸着溝27mは、ステージ20の内部に形成された吸着流路27rを介し、真空ポンプ(図示無し)等の負圧発生源に接続される。真空ポンプで発生した負圧を複数の基板吸着溝27mに作用させることで、ステージ20上に載置された基板100は吸着保持される。
【0015】
基板リフト部4は、ステージ20の下方に設けられる。基板リフト部4は、ステージ20の上方において基板100を支持し、この基板100を昇降させる。基板リフト部4は、複数のリフトピン41と、移動部42と、リフトピン駆動部43と、を有する。複数のリフトピン41は、例えばチャンバー部2の中央部に配置される。リフトピン41は、ステージ20をZ方向に貫通する。複数のリフトピン41は、基板100の中央部に下方から突き当たることで、基板100を支持する。複数のリフトピン41の上端の高さは同一又はほぼ同一に揃えられている。リフトピン41は、例えば、非導電性を有する材質(例えば樹脂、金属、セラミックスなど)で形成されてもよい。
【0016】
移動部42は、複数のリフトピン41の下端に連結されている。リフトピン駆動部43は、移動部42、及び複数のリフトピン41をZ方向に昇降させる。リフトピン駆動部43は、例えば電動の回転モータ、リニアモータ、エアシリンダ装置、油圧シリンダ装置などが用いられ、図示しない伝達機構により駆動力が移動部42に伝達される。複数のリフトピン41は、リフトピン駆動部43により、ステージ20の上面41aから上方に出没する。移動部42を下降させた状態では、複数のリフトピン41は、ステージ20の上面41aから突出していない。
【0017】
複数のリフトピン41が、ステージ20の上面41aより上方に突出していない状態では、基板100は、ステージ20の上面41aに接触する。リフトピン駆動部43を伸長させ、複数のリフトピン41をステージ20の上面41aから上方に突出させると、ステージ20上に載置された基板100が、複数のリフトピン41によって上方にリフトアップされ、ステージ20の上面41aから上方に離間する。
【0018】
光照射ユニット5は、ステージ20の上方に設けられる。図1図3に示すように、光照射ユニット5は、ステージ20に支持されるステージ20上の基板100に光を照射する。光照射ユニット5は、フレーム51と、フレーム支持部51aと、光源52と、シャッター53とを主に備える。フレーム51は、光源52を囲むように配置される。フレーム支持部51aは、架台25上に設けられる一対のガイド部材28に沿って、X方向に移動可能に設けられる。
【0019】
一対のガイド部材28は、X方向から見て、ステージ20に対してY方向の両側に配置される。各ガイド部材28は、X方向に延びる。各ガイド部材28は、例えば、リニアガイドである。各ガイド部材28は、リニアガイドに限らず、ガイドレール等であってもよい。各ガイド部材28上には、スライドベース29が設けられる。スライドベース29は、ボールネジ等の駆動機構(図示無し)により、ガイド部材28に沿ってX方向にスライド移動可能に設けられる。フレーム支持部51aは、一対のスライドベース29上に支持される。これにより、光照射ユニット5は、一対のスライドベース29の移動により、スライドベース29と一体にX方向にスライド移動可能に構成される。光照射ユニット5は、後述の光源52の長手方向(Y方向)と直交するX方向に移動する。
【0020】
光源52は、基板100に対して紫外線及び可視光線の一方又は両方の光を照射する。光源52としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、又はメタルハライドランプ等が挙げられる。光源52は、ステージ20上の基板100に対し、上方に離間した位置に配置される。光源52は、管状で、Y方向に延びる。光源52は、フレーム支持部51aに、適宜のブラケット(図示無し)を介して支持される。光源52は、紫外線及び可視光線の一方又は両方の光を、下方に向けて照射する。光源52は、フレーム支持部51aと一体に、光源52の長手方向(Y方向)と直交するX方向にスライド移動する。これにより、光源52は、ステージ20上の基板100に対し、光をX方向にスキャンさせながら照射可能とされる。
【0021】
シャッター53は、光照射ユニット5内に、+X方向、-X方向に移動可能に設けられている。基板100に対して、光源52からの紫外線及び可視光線の一方又は両方の光を照射しない場合は、閉じられており(図1参照)、照射する場合は、中央より+X方向、-X方向に移動して両開きとなるように設けられている(図9参照)。
【0022】
フィルタユニット6は、Z方向において、ステージ20上の基板100と、光源52との間に配置される。フィルタユニット6は、光照射ユニット5に設けられる。フィルタユニット6は、フィルタ200を支持する。フィルタ200は、光源52から照射される光(紫外線及び可視光線の一方又は両方)の一部の波長域を減衰させるバンドパスフィルタである。
【0023】
図4は、フィルタユニットを示す平面図である。図5は、フィルタユニットをY方向から見た断面図である。図6は、複数枚のフィルタを保持するフィルタユニットを示す断面図である。図4図5に示すように、フィルタユニット6は、支持フレーム61を有する。支持フレーム61は、フィルタ200を支持する。支持フレーム61は、上方から見て矩形の板状で、上下に貫通する開口部61kを有している。したがって、支持フレーム61は、開口部61kを有する枠形状を有している。
【0024】
本実施形態において、支持フレーム61は、例えば5枚のフィルタ200をY方向に並べた状態で支持する。各フィルタ200は、X方向の両側で、支持フレーム61上に開口部61kを跨ぐように載置される。各フィルタ200は、X方向の両側において支持フレーム61に固定部材62により固定される。固定部材62は、例えばビス等により、支持フレーム61に着脱可能である。図5に示すように、固定部材62は、支持フレーム61のX方向の両側から上方に立ち上がる基部62aと、基部62aの上端からY方向に延びる固定部62bと、を一体に有する。固定部材62は、支持フレーム61と固定部62bとの間にフィルタ200の外周端部を挟み込んで固定する。
【0025】
ここで、フィルタ200と支持フレーム61との間、及びフィルタ200と固定部62bとの間には、保護シート301を挟み込むようにしてもよい。また、図6に示すように、フィルタユニット6は、複数枚(例えば2枚)のフィルタ200を重ねて支持することもできる。この場合、上下に重なるフィルタ200同士の間に、保護シート302を挟み込むのが好ましい。保護シート302は、中央部に開口302kを有し、互いに上下に位置するフィルタ200の外周部同士の間のみに配置するようにしてもよい。このような保護シート301、302としては、例えば、PTFE(polytetrafluoroethylene/ポリテトラフルオロエチレン)製のものが用いられる。
【0026】
本実施形態では、フィルタ200として、例えば、波長330nm以上の領域の光を減衰させる第1フィルタ200Aと、波長330nm未満の領域を減衰させる第2フィルタ200Bとが選択的に使用可能である。フィルタ200としての第1フィルタ200A、第2フィルタ200Bは、固定部材62を第1枠部61aに対して着脱することで、支持フレーム61に対して交換可能とされる。つまり、フィルタ200として第1フィルタ200Aを用いる場合、固定部材62により第1フィルタ200Aを支持フレーム61に取り付ける。フィルタ200として第2フィルタ200Bを用いる場合、固定部材62により第2フィルタ200Bを支持フレーム61に取り付ける。
【0027】
本実施形態では、フィルタユニット6は、複数設けられるようにしてもよい。すなわち、フィルタ200として第1フィルタ200Aが支持フレーム61に取り付けられたフィルタユニット6と、フィルタ200として第2フィルタ200Bが支持フレーム61に取り付けられたフィルタユニット6とを個別に用意しておいてもよい。第1フィルタ200Aを用いる場合、第1フィルタ200Aが予め取り付けられたフィルタユニット6を光照射装置1に装着する。第2フィルタ200Bを用いる場合、予め第2フィルタ200Bが取り付けられたフィルタユニット6を光照射装置1に装着する。また、フィルタユニット6には、異なるフィルタを装着するようにしてもよい。
【0028】
図7は、フィルタユニットを進退させるフィルタ駆動部の構成を示す図であり、フィルタユニットを光源と基板との間に配置した状態を示す平面図である。図8は、フィルタ駆動部により、フィルタユニットを光源と基板との間の位置から退避させた状態を示す平面図である。図9は、フィルタ駆動部により、フィルタユニットを光源と基板との間に位置させた状態を示す立断面図である。図10は、フィルタ駆動部により、フィルタユニットを光源と基板との間の位置から退避させた状態を示す立断面図である。フィルタユニット6は、フィルタ駆動部66により、X方向に進退される。光照射ユニット5の移動方向と、フィルタユニット6の進退方向は、いずれも同じX方向である。図7図8に示すように、フィルタ駆動部66は、一対のガイドレール67と、駆動部材68と、を備える。
【0029】
一対のガイドレール67は、支持フレーム61に対してY方向の両側に配置される。各ガイドレール67は、ブラケット69を介して、スライドベース29に支持される。各ガイドレール67は、X方向に延びる。支持フレーム61は、リニアブッシュ70を介してガイドレール67に支持される。リニアブッシュ70は、ガイドレール67に沿ってX方向にスライド移動自在である。これにより、支持フレーム61は、リニアブッシュ70とともに、光照射ユニット5に対して、ガイドレール67に沿ってX方向にスライド移動自在とされる。
【0030】
駆動部材68は、例えばエアシリンダ、油圧シリンダ、ボールネジ等であり、支持フレーム61をX方向に進退駆動させる。本実施形態において、駆動部材68は、エアシリンダである。駆動部材68の一端は、ブラケット72を介してスライドベース29に固定される。駆動部材68の他端は、ブラケット73を介して支持フレーム61に連結される。駆動部材68は、X方向に伸縮することで、支持フレーム61をガイドレール67に沿ってX方向に進退駆動させる。これにより、フィルタユニット6は、光照射ユニット5に対してX方向に相対的に進退移動可能となる。
【0031】
このようなフィルタ駆動部66により、支持フレーム61は、図7図9に示すように、光照射ユニット5内に位置した状態P1と、図8図10に示すように、光照射ユニット5内からX方向に退避した状態P2との間で、進退される。光照射ユニット5内に位置した状態P1では、支持フレーム61に支持されたフィルタ200は、光源52とステージ20上の基板100との間に配置される。この状態P1で、光源52からの光は、フィルタ200を透過して基板100に照射される。状態P2では、支持フレーム61に支持されたフィルタ200は、光源52とステージ20上の基板100との間の位置からX方向に退避する。この状態P2で、光源52からの光は、フィルタ200を透過せず、直接基板100に照射される。
【0032】
<光照射方法>
図11は、実施形態に係る光照射方法の流れを示す図である。光照射装置1は、予め設定されたプログラムに基づいて制御部(図示無し)が各部の動作を制御することで、以下に示すような光照射方法を実現する。図11に示すように、本実施形態の光照射方法は、パターンを形成する工程S1と、パターンを硬化させる工程S2と、を含む。
【0033】
<パターンを形成する工程S1>
パターンを形成する工程S1では、基板100上に形成されたレジスト膜に対して露光及び現像することでパターンを形成する。工程S1では、レジスト組成物を用いて基板100に形成したレジスト膜を露光した後、現像によりパターニングしてパターン(プレパターン)を形成する。なお、本発明において「パターン」とは、工程S1で形成されるレジストパターンをいう。パターンの形成は、例えば以下のようにして行うことができる。
【0034】
まず、基板100上に、レジスト組成物をスピンナーなどで塗布する。次いで、レジスト組成物が塗布された基板100に対し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を施す。ベーク処理は、たとえば90~130℃の温度条件にて、好ましくは40~120秒間、より好ましくは60~90秒間実施する。これにより、基板100上にレジスト膜が形成される。その際、レジスト膜の厚さは、0.5~30μm程度が好ましく、より好ましくは1.0~20μm程度である。
【0035】
次に、基板100上に形成されたレジスト膜に対し、紫外線を発光する光源、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ等を用い、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介して選択的露光を行う。その後、露光後のレジスト膜を現像処理する。現像処理では、まず、例えば、1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液のようなアルカリ性水溶液を、基板100の一方の端部から他方の端部に液盛りする、又は、中心付近の上部に設置された現像液滴下ノズルより基板100表面全体に行き渡らせる。
【0036】
その後、50~90秒間程度静置し、露光後のレジスト膜を現像する。現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、例えば、パターン表面に残った現像液を、リンス液(純水、有機溶剤など)を用いて洗うことにより行う。また、現像処理後又はリンス処理後、加熱(ポストベーク)処理を施してもよい。これにより、基板100上に形成されたレジスト膜にパターンが形成される。
【0037】
基板100としては、特に限定されず、従来公知のものが用いられる。基板100としては、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が例示される。より具体的には、基板100として、例えば、シリコンウエハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
【0038】
また、基板100としては、その表面に、無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。
【0039】
すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細なパターン形成が可能となる。多層レジスト法には、基本的に、上層レジスト膜と下層有機膜との二層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)と、に分けられる。
【0040】
露光は、特に限定されず、例えばg線、h線、i線等の放射線を用いて行うことができる。また、放射線としては、g線、h線若しくはi線の単独光、又は、これらのうち任意の2種以上の混合光などを採用できる。混合光を採用することにより、露光時間を短縮できる。各光線のスペクトル強度は、基板の種類等により適宜選択可能である。
【0041】
現像処理は、アルカリ現像に限定されず、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて行う溶剤現像も挙げられ、レジスト組成物に合わせて選択すればよい。アルカリ現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。溶剤現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、レジスト組成物中の基材成分を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、又は炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0042】
<パターンを硬化させる工程S2>
パターンを硬化させる工程S2では、紫外線及び可視光線の一方又は両方を照射してパターンを硬化させる。ここで、「紫外線」とは、波長範囲の下限が1nm程度、上限が可視光線の短波長端の光を意味し、「可視光線」とは、波長範囲の下限が360~400nm程度、上限が760~830nm程度の光を意味する。
【0043】
パターンを硬化させる工程S2は、基板加熱工程S21と、第1照射工程S22と、第2照射工程S23と、を含む。本実施形態では、第1照射工程S22と、第2照射工程S23とで、照射する光の波長域が異なる。また、本実施形態では、第1照射工程S22と、第2照射工程S23とで、照射に際しての光源52からパターンまでの距離が異なる。
【0044】
基板加熱工程S21では、まず、光源52からの光の照射に先立って、基板100をステージ20に載置する。次いで、ステージ20に基板100を載置した際、ステージ20に備える吸着部27により、基板100をステージ20に吸着させる。なお、吸着部27により、基板100をステージ20に吸着させなくてもよい。その後、ステージ20に備える加熱装置26により、基板100を加熱する。基板100を加熱する温度は、例えば、好ましくは50~150℃、より好ましくは80~120℃である。本実施形態では、基板100を、例えば100℃程度に加熱する。なお、基板加熱工程S21で加熱した基板100は、第1照射工程S22、及び第2照射工程S23の間、その温度を維持させる。
【0045】
第1照射工程S22では、光源52からの光のうち選択された波長の光を照射する。第1照射工程S22では、紫外線及び可視光線のうち、一部の波長領域を減衰させた光で、パターンを照射する。これには、図7図9に示すように、フィルタユニット6の支持フレーム61を、光照射ユニット5に対してX方向に進行させ、光照射ユニット5内に位置した状態P1とする。これにより、フィルタ200を、光源52とステージ20上の基板100との間に配置する。この状態P1で、光源52からの光は、フィルタ200を透過して基板100に照射される。
【0046】
本実施形態において、第1照射工程S22では、波長330nm未満の領域を減衰させた光でパターンを照射する。このため、第1照射工程S22では、波長330nm未満の領域を減衰させる第1フィルタ200Aを、光源52と基板100との間に配置しておく。また、実施形態において、第1照射工程S22では、波長330nm以上の領域を減衰させた光でパターンを照射するようにしてもよい。この場合、第1照射工程S22では、波長330nm以上の領域を減衰させる第2フィルタ200Bを、光源52と基板100との間に配置しておく。
【0047】
また、第1照射工程S22では、ステージ20に載置した基板100に対して光を照射する。この場合、図9に示すように、第1照射工程S22では、光源52とパターンとの間を第1距離D1に設定して光源52から光を照射する。第1照射工程S22では、基板100上のパターンに光を照射することで、パターンの表層部を硬化させる。
【0048】
第2照射工程S23では、第1照射工程S22の後、光源52からの光でパターンを照射する。第2照射工程S23では、紫外線及び可視光線の両方を含む光でパターンを照射する。第2照射工程S23では、図8図10に示すように、フィルタユニット6の支持フレーム61を、光照射ユニット5に対してX方向に進行させ、光照射ユニット5内からX方向に退避した状態P2とする。状態P2では、支持フレーム61に支持されたフィルタ200を、光源52とステージ20上の基板100との間からX方向に退避させる。この状態P2で、光源52からの光は、フィルタ200を透過せず、直接基板100に照射される。
【0049】
また、第2照射工程S23では、基板リフト部4のリフトピン41によって基板100をステージ20から上昇させる。第2照射工程S23では、ステージ20から上昇させた基板100のパターンに光を照射する。図10に示すように、第2照射工程S23では、光源52とパターンとの間を、第1距離D1より小さい第2距離D2として光源52から光を照射する。ここで、第2距離D2は、第1距離D1に対して80%以上100%未満の長さとするのが好ましい。さらに、第2距離D2は、第1距離D1に対して90%以上95%以下の長さとするのが特に好ましい。
【0050】
このように、第2照射工程S23では、基板100をステージ20から上昇させることで、光源52までの距離(第2距離D2)が、第1照射工程S22よりも小さくなる。従って、光源52からの光によって加熱される基板100(パターン)の温度が、第1照射工程S22よりも高くなる。第2照射工程S23での基板温度は、第1照射工程S22での基板温度より50~200℃高くなる。これにより、基板100上のパターン全体の硬化が第1照射工程よりも更に促進される。第2照射工程S23での基板温度は、第1照射工程S22での基板温度よりも、例えば40~60℃高くなるように、第2距離D2を設定するのがより好ましい。
【0051】
このようにして、基板加熱工程S21で基板100を例えば100℃程度に加熱しておき、第1照射工程S22で光源52から第1距離D1での光の照射を行なった後に、第2照射工程S23で光源52から第2距離D2での光の照射を行う。このとき、第2距離D2を、第1距離D1に対して小さくするほど、つまり基板100をステージ20から上昇させる寸法が大きくなるほど、光源52からの光により基板温度が上昇する。一方、基板100をステージ20から上昇させる距離が過度に大きくなると、基板100を複数のリフトピン41で支持した状態での基板100の安定性が低下する。
【0052】
このため、第2距離D2は、第1距離D1に対し、例えば、0.5mm~20mm程度小さくするのが好ましい。つまり、基板100をステージ20から0.5mm~20mm上昇させる(リフトアップさせる)のが好ましい。これにより、第2照射工程S23での基板温度が、第1照射工程S22での基板温度に対し、例えば、50~110℃程度高くなる。従って、第2距離D2は、第1距離D1に対して、例えば0.5mm~20mm程度小さくなるように、第2照射工程S23で基板100をステージ20から上昇させるのが好ましい。特に、第2距離D2が、第1距離D1に対して、例えば5mm~10mm程度小さくなるように、第2照射工程S23で基板100をステージ20から上昇させるのが好ましい。
【0053】
このように、第1照射工程S22と第2照射工程S23とでは、光源52からの光によって加熱される温度が異なる。第1照射工程S22における基板温度よりも、第2照射工程S23における基板温度よりも高くなる。これにより、第1照射工程S22では、基板100上のパターンの表層部のみを硬化させた後、第2照射工程S23で、パターンの全体を硬化させる。
【0054】
第1照射工程S22及び第2照射工程S23は、パターンに対して光源52を移動させつつ光源52から光を照射してパターンを硬化させる。このとき、第1照射工程S22と第2照射工程S23との各々において、光源52は、基板100までの距離を維持しながら移動する。つまり、第1照射工程S22では、光源52は、基板100までの距離を第1距離D1に維持しながら移動する。第2照射工程S23では、光源52は、基板100までの距離を第2距離D2に維持しながら移動する。これにより、基板100上のパターンに対し、光を均等に照射する。
【0055】
また、第1照射工程S22と第2照射工程S23とでは、照射する光の波長が異なる。なお、照射する光の波長については同じであってもよい。第1照射工程S22と第2照射工程S23とでは、光源52とパターンとの間にフィルタ200を進退させることにより、照射する光の波長を異ならせる。第1照射工程S22と第2照射工程S23とでは、光源52から光を照射する際、光源52からの光と、光源52からの光のうち選択された波長の光とのいずれかを照射するために、光源52とパターンとの間に対してフィルタ200を進退させる。このとき、光源52は、第1照射工程S22と第2照射工程S23とで、異なる照射エネルギで光を照射するようにしてもよい。また、光源52は、第1照射工程S22と第2照射工程S23とで、同一の照射エネルギで光を照射するようにしてもよい。
【0056】
(レジスト組成物)
本開示の実施形態で用い得るレジスト組成物は、工程S1での露光及び現像により、露光部が溶解除去されてプレパターンを形成するポジ型レジスト組成物である。レジスト組成物は、工程S1での露光及び現像により、未露光部が溶解除去されてプレパターンを形成するネガ型レジスト組成物であってもよい。かかるレジスト組成物としては、例えば、以下に例示するレジスト組成物(r1)~(r4)が挙げられる。
【0057】
<レジスト組成物(r1)>
レジスト組成物(r1)は、樹脂と、感度向上剤として特定のフェノール化合物と、感光性成分としてキノンジアジドエステル化物と、を有機溶剤に溶解してなるポジ型レジスト組成物である。レジスト組成物(r1)において、樹脂は、被膜形成物質として通常用いられ得るものの中から任意に選ぶことができる。例えば、ポジ型レジスト組成物の被膜形成用樹脂として知られているフェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレンとアクリル酸との共重合体、ヒドロキシスチレンの重合体、ポリビニルフェノール、ポリα-メチルビニルフェノール等が挙げられる。これらの中でも、特にフェノール樹脂が好ましく用いられ、中でも膨潤することなくアルカリ水溶液に容易に溶解し現像性に優れるノボラック樹脂が好適である。
【0058】
<レジスト組成物(r2)>
レジスト組成物(r2)は、下記の一般式(1)で表される繰返し単位及び一般式(2)で表される繰返し単位を有する共重合体と、感光性成分と、を含有するポジ型レジスト組成物である。レジスト組成物(r2)によって形成されるレジスト膜を、例えばマイクロレンズに適用した場合には、耐熱性、耐薬品性の良好なマイクロレンズを形成することができる。
【0059】
【化1】
【0060】
式(1)、(2)中、Rは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。R21は、単結合又は炭素数1~5のアルキレン基を表す。R22は、炭素数1~5のアルキル基を表す。R23は、熱架橋性を有する1価の有機基を表す。pは1~5の整数を表し、qは0~4の整数を表し、かつ、p+qは5以下である。但し、繰返しにおける複数のR同士及びR22同士は、互いに異なっていてもよい。
【0061】
<レジスト組成物(r3)>
レジスト組成物(r3)は、樹脂と、酸発生剤と、を含有するネガ型レジスト組成物である。レジスト組成物(r3)において、樹脂は、一般にネガ型の化学増幅型レジスト組成物のベース樹脂として用いられている樹脂を、露光に使用する光源52に応じて、従来公知のものの中から任意に選択して使用することが可能である。例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。樹脂は、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、アクリル樹脂などをそれぞれ単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。上記樹脂の含有量は、例えばレジスト組成物(r3)が樹脂と酸発生剤と後述の可塑剤とを含有する場合、樹脂と酸発生剤と可塑剤との固形分総量100質量部に対して30~99質量部が好ましく、より好ましくは65~95質量部の範囲である。
【0062】
<レジスト組成物(r4)>
レジスト組成物(r4)は、樹脂と、重合開始剤と、を含有するネガ型レジスト組成物である。レジスト組成物(r4)において、樹脂としては、多官能エポキシ樹脂が挙げられる。多官能エポキシ樹脂としては、厚膜のレジストパターンを形成するのに充分なエポキシ基を1分子中に有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されず、多官能フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、多官能オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能トリフェニル型ノボラック型エポキシ樹脂、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、該樹脂として、光硬化性を有する基材も用いることができる。さらに、該重合開始剤は、カチオン重合開始剤が好ましい。レジスト組成物(r4)は、増感剤を含むことが好ましい。
【0063】
上記レジスト組成物(r1)~(r4)の中でも、レジスト組成物(r1)又はレジスト組成物(r3)が好ましい。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る光照射方法は、光源52とパターンとの間を第1距離D1に設定して光源52から光を照射する第1照射工程S22の後、第2照射工程S23で、光源52とパターンとの間を第1距離D1より小さい第2距離D2として光源52から光を照射する。第2照射工程S23では、光源52からの光によって加熱される基板100(パターン)の温度が、第1照射工程S22よりも高くなる。これにより、基板100上のパターンの全体が硬化する。結果として、レジストパターンの形成を良好な品質で行うことが可能となる。加えて、ステージ温度を昇温・降温する時間が無くなるため複数枚連続処理する際に大幅にスループットが向上する。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者において明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。上記した実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記した実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、実施形態において示した各動作の実行順序は、前の動作の結果を後の動作で用いない限り、任意の順序で実現可能である。また、上記した実施形態における動作に関して、便宜上「先ず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。
【0066】
例えば、上記した実施形態では、第1フィルタ200A、第2フィルタ200Bを選択的にフィルタユニット6に装着する構成、第1フィルタ200Aを用いたフィルタユニット6と第2フィルタ200Bを用いたフィルタユニット6とを選択的に光照射装置1に装着する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第1フィルタ200Aを用いたフィルタユニット6と第2フィルタ200Bを用いたフィルタユニット6とのそれぞれを、上下に重ねて光照射ユニット5内に位置した状態P1と、図8図10に示すように、光照射ユニット5内からX方向に退避した状態P2との間で、進退できるような機構を備えるようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、第2照射工程S23で、基板100を基板リフト部4でリフトアップするようにしたが、基板100をステージ20からリフトアップできるのであれば、基板リフト部4の構成はいかなる構成としてもよい。
【0068】
また、第2照射工程S23で、基板100を載置したステージ20ごと、リフトアップさせるようにしてもよい。さらに、第2照射工程S23で、基板100に対して光源52を下降させ、光源52とパターンとの距離を小さくするようにしてもよい。
【0069】
(実施例)
上記したような光照射方法について検証を行ったので、その結果を以下に示す。
試験体として、表1に示すような、比較例1~7、及び実施例1~9を用意した。
【0070】
【表1】
【0071】
比較例1~3、及び実施例1~4、6~9は、基板上のレジスト膜の膜厚を2μmとし、比較例4~7、及び実施例5は、基板上のレジスト膜の膜厚を15μmとした。
【0072】
ここで、レジスト組成物(p1)~(p4)は、表2に示す各成分を混合して溶解することで調整した。
【0073】
【表2】
【0074】
表2における各略号はそれぞれ以下の意味を有する。また、表2において[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
A-(1):m-クレゾールとp-クレゾールが重量比35:65であるノボラック樹脂。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は4500、分散度(Mw/Mn)は1.2。
A-(2):m-クレゾールとp-クレゾールが重量比60:40であるノボラック樹脂。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は15000、分散度(Mw/Mn)は1.8。
A-(3):下記の高分子化合物(A-3)。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は4600、分散度(Mw/Mn)は1.2。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=85/15。
B-(1):下記の化合物(B-1)1モルと、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド2.34モルと、のエステル化物(エステル化率59モル%)。
B-(2):下記の化合物(B-2)。
B-(3):下記の化合物(B-3)。
D-(1):下記の化合物(D-1)。
C-(1):ヘキサメトキシメチル化メラミン。
C-(2):下記の化合物(C-2)。
W-(1):下記の化合物(W-1)。
W-(2):下記の高分子化合物(W-2)。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は10000、分散度(Mw/Mn)は1.9。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/o=60/20/20。
W-(3):ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製;シリコン系)。
S-(1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
【0075】
【化2】
【0076】
【化3】
【0077】
【化4】
【0078】
【化5】
【0079】
【化6】
【0080】
比較例1~7、実施例1~6については、表2に示すレジスト組成物を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施したシリコンウエハ上に、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で110℃、90秒間プレベークして乾燥させることにより、表1に示す膜厚のレジスト膜を形成した。次いで、露光装置(商品名G7E、株式会社ニコン製;NA0.54)により、所定のマスクパターンを介して露光した。その後、温度23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で65秒間のアルカリ現像を行った。その結果、ライン&スペースのプレパターンが形成された。
【0081】
実施例7~9については、表2に示すレジスト組成物を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施しシリコンウエハ上に、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で110℃、90秒間プレベークして乾燥させることにより、表1に示す膜厚のレジスト膜を形成した。次いで、露光装置(KrFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/850C波長248nm))により、所定のマスクパターンを介して露光した。その後、温度23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で65秒間のアルカリ現像を行った。その結果、ライン&スペースのプレパターンが形成された。
【0082】
比較例1、2、4~6及び実施例1~9の各々は、基板加熱工程S21で基板を100℃、比較例3、7の各々は、基板加熱工程S21で基板を200℃に加熱した状態で、第1照射工程S22で光源52からの光を照射した。このとき、比較例1,3、4、及び実施例1では、フィルタを用いずに光源52からの光を照射した。比較例2、及び実施例2~4、6~9では、フィルタ200として、波長330nm未満の領域の光を減衰する第1フィルタ200Aを用いて光源52からの光を照射した。比較例5~7、及び実施例5では、フィルタ200として、波長330nm以上の領域の光を減衰する第2フィルタ200Bを用いて光源52からの光を照射した。
【0083】
次いで、比較例1~3、6、7及び実施例1~9の各々に対し、第2照射工程S23で、光源52からの光を照射した。このとき、実施例1~9では、上記したように、第1距離D1を100%としたとき、第1距離D1に対して第2距離D2の割合を表2の通りになるように、基板100をステージ20から上昇させた状態で、光源52からの光を照射した。第2距離D2が100%とは、第1距離D1と第2距離D2が同一の場合である。比較例1~7では、基板100をステージ20から上昇させず、ステージ20に接触したママの状態で、光源52からの光を照射した。このうち、比較例1、2、4~6は、加熱装置26で、基板100を、100℃のままに維持し、比較例3、7では、加熱装置26で、基板100を200℃に昇温させた。
【0084】
比較例1~3、6、7、及び実施例1~9は、第2照射工程S23の後、250℃で熱処理を行った後、形成されたレジストパターンについて、発泡、シワ、変形(熱変形)の有無を評価した。表1に示すように、第2照射工程S23で、基板100をステージ20から上昇させ、光源52までの距離を近づけて光を照射した実施例1~9においては、発泡、シワ、変形のいずれも認められなかった。これに対し、比較例1~3、5~7については、発泡は認められなかったものの、シワ、及び変形の発生が認められた。比較例4では、レジストパターンの発泡が認められた。
【符号の説明】
【0085】
1・・・光照射装置、20・・・ステージ、26・・・加熱装置、27・・・吸着部、41・・・リフトピン、52・・・光源、100・・・基板、200・・・フィルタ、200A・・・第1フィルタ(フィルタ)、200B・・・第2フィルタ(フィルタ)、D1・・・第1距離、D2・・・第2距離
【要約】
【課題】レジストパターンの形成を良好な品質で行う。
【解決手段】光照射方法は、基板100上に形成されたレジスト膜に対して露光及び現像することでパターンを形成することと、パターンに対して光源52から光を照射してパターンを硬化させることと、を含み、光源52からの光の照射は、光源52とパターンとの間を第1距離D1に設定して光源52から光を照射する第1照射工程S22と、第1照射工程S22の後、光源52とパターンとの間を第1距離D1より小さい第2距離D2として光源52から光を照射する第2照射工程S23と、を含む。
【選択図】図11
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図2
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11