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特許7526572サンプリング装置、培養装置、及び培養物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】サンプリング装置、培養装置、及び培養物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20240725BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020045380
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021145559
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将太
(72)【発明者】
【氏名】松田 博行
(72)【発明者】
【氏名】都倉 知浩
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/017407(WO,A1)
【文献】特開2019-138853(JP,A)
【文献】特開2019-136005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 - 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された液体の一部を採取するサンプリング装置であって、
前記容器から採取された前記液体の一部を回収する回収部に向けて、前記液体を流通させるサンプリング流路と、
前記サンプリング流路の少なくとも一部の区間に設定される洗浄可能区間に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
前記洗浄可能区間から前記洗浄液を排出する洗浄液排出部と、
を備え、
前記サンプリング流路のうち、前記容器から前記洗浄可能区間までの間に容器側区間を有し、
前記サンプリング流路のうち、前記容器側区間には、前記洗浄可能区間から前記容器への流通を阻止する一方向弁を有し、
前記サンプリング流路のうち、前記一方向弁よりも前記容器側に、前記サンプリング流路を殺菌する紫外線照射装置を配置してなり、
前記容器から前記洗浄可能区間への前記液体の流通と、前記洗浄液供給部から前記洗浄可能区間への前記洗浄液の流通とが、択一的に選択可能であり、かつ、
前記洗浄可能区間から前記回収部への前記液体の流通と、前記洗浄可能区間から前記洗浄液排出部への前記洗浄液の流通とが、択一的に選択可能であることを特徴とするサンプリング装置。
【請求項2】
前記サンプリング流路には前記液体の送液装置が配置され、前記洗浄液供給部又は前記洗浄液排出部には前記洗浄液の送液装置が配置されていることを特徴とする請求項に記載のサンプリング装置。
【請求項3】
前記液体の送液装置又は前記洗浄液の送液装置は、送液量を任意に設定可能であることを特徴とする請求項に記載のサンプリング装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のサンプリング装置と、
前記サンプリング流路に前記容器として接続された培養容器と、
を備えていることを特徴とする培養装置。
【請求項5】
請求項4に記載の培養装置を用いて、前記培養容器に液体培地を供給して培養物を培養する培養工程と、
前記サンプリング装置を用いて、前記培養容器に収容された培養液の一部を採取するサンプリング工程と、
前記サンプリング装置を用いて、前記洗浄可能区間に前記洗浄液を供給して前記洗浄可能区間を洗浄する洗浄工程と、
を有することを特徴とする培養物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング装置、培養装置、及び培養物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品、化粧品、化学物質の製造等においては、液状の原料、培地等を容器に収容して、撹拌する操作が多用されている。例えば、微生物、細胞等の培養物を培養する場合、又は、培養された微生物、細胞等が産生する物質等の培養産生物を得る場合には、培養物と液体培地を含む培養液を容器に収容して、培養液を撹拌しながら培養を進行させる。例えば、特許文献1~3には、培養液をサンプリングするため、培養容器にポートやチューブを接続することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-120495号公報
【文献】特開2016-136928号公報
【文献】特開2016-202089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポートやチューブから培養液の一部を採取する際、例えばセプタム、ゴム栓等の封止部材からシリンジ等を用いて培養液を抜き取ることがある。しかし、封止部材の変形、劣化、コアリング等が起こると、外気や異物等の侵入による培養液の汚染(コンタミネーション)が発生したり、培養液の採取を繰り返し行うことができなくなったりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、容器から液体を容易に採取することが可能なサンプリング装置、培養装置、及び培養物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、容器に収容された液体の一部を採取するサンプリング装置であって、前記容器から採取された前記液体の一部を回収する回収部に向けて、前記液体を流通させるサンプリング流路と、前記サンプリング流路の少なくとも一部の区間に設定される洗浄可能区間に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、前記洗浄可能区間から前記洗浄液を排出する洗浄液排出部と、を備え、前記容器から前記洗浄可能区間への前記液体の流通と、前記洗浄液供給部から前記洗浄可能区間への前記洗浄液の流通とが、択一的に選択可能であり、かつ、前記洗浄可能区間から前記回収部への前記液体の流通と、前記洗浄可能区間から前記洗浄液排出部への前記洗浄液の流通とが、択一的に選択可能であることを特徴とするサンプリング装置である。
【0007】
前記容器と前記洗浄可能区間との間において、前記サンプリング流路に、前記洗浄可能区間から前記容器への流通を阻止する一方向弁が配置されていてもよい。
前記サンプリング流路には前記液体の送液装置が配置され、前記洗浄液供給部又は前記洗浄液排出部には前記洗浄液の送液装置が配置されていてもよい。
前記液体の送液装置又は前記洗浄液の送液装置は、送液量を任意に設定可能であってもよい。
前記容器と前記洗浄可能区間との間において、前記サンプリング流路を殺菌する紫外線照射装置が配置されていてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様は、前記サンプリング装置と、前記サンプリング流路に前記容器として接続された培養容器と、を備えていることを特徴とする培養装置である。
また、本発明の一態様は、培養容器に液体培地を供給して培養物を培養する培養工程と、前記サンプリング装置を用いて、前記培養容器に収容された前記培養液の一部を採取するサンプリング工程と、前記サンプリング装置を用いて、前記洗浄可能区間に前記洗浄液を供給して前記洗浄可能区間を洗浄する洗浄工程と、を有することを特徴とする培養物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器に接続されたサンプリング流路を洗浄液により洗浄することができ、さらに容器の汚染を抑制することができるので、サンプリングを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態のサンプリング装置のサンプリング工程を例示する構成図である。
図2】実施形態のサンプリング装置の洗浄工程を例示する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0012】
図1及び図2に、実施形態のサンプリング装置100を示す。このサンプリング装置100は、培養装置等の液体処理装置10において、容器12に収容された液体11の一部を採取する。この液体処理装置10は、液体11を収容する容器12と、容器12が設置される容器設置部13とを備えている。容器12は、培養、化学反応等の操作工程において、液体11の操作容器(液体処理容器)として用いることができる。
【0013】
液体11としては、水性液体、油性液体、溶液、電解液、分散液、乳濁液など各種の液体が挙げられる。液体11中には、気泡、粒子、粉末、粒状物、細胞、微生物などが含まれていてもよい。容器12は、外気に開放された構造であってもよいが、外気から密閉されていることが好ましい。容器12が培養容器である場合には、例えば、液体培地中で細胞、微生物などの培養物を培養して得られる培養液が液体11に含まれる。容器12内には、気体がヘッドスペースに存在し、又は気体が液体11中に溶存していてもよい。
【0014】
容器12の容量(大きさ)は特に限定されないが、例えば0.1L~5000Lの大きさとすることができる。容器12は、シングルユース(使い捨て)であってもよい。容器設置部13は、容器12を支持する支持台でもよく、容器12を揺動させる揺動装置、容器12の重量を測定する重量計などの機能を備えてもよい。容器12を樹脂等のフィルム状容器から構成して、容器12を硬質の外装容器に収容してもよい。この場合は、容器12を収容した外装容器を、容器設置部13上に設置してもよい。
【0015】
サンプリング装置100は、液体11の一部を採取するためのサンプリング部20を有する。サンプリング部20は、容器12から採取された液体11の一部を回収する回収部30に向けて、液体11を流通させるサンプリング流路21を有する。容器12とサンプリング流路21との間は、接続ポート14を用いて接続されている。液体処理装置10が培養装置等である場合には、無菌接続が可能な無菌接続ポート、無菌接続コネクタ等から接続ポート14を構成することが好ましい。
【0016】
サンプリング流路21の少なくとも一部の区間には、洗浄可能区間21Bが設定されている。洗浄可能区間21Bは、容器12から回収部30に到るサンプリング流路21のうち1箇所に設定されてもよく、2箇所以上に設定されてもよい。実施形態の説明において、サンプリング流路21のうち、容器12から洗浄可能区間21Bまでの間を容器側区間21A、洗浄可能区間21Bから回収部30までの間を回収部側区間21Cという場合がある。
【0017】
回収部30は、サンプリング流路21を流通した液体11を回収容器33に回収することができる。回収部30の構成は特に限定されないが、サンプリング流路21の回収部側区間21Cの端部にノズル31を接続し、採取した液体11をノズル31から回収容器33に吐出してもよい。この場合、ノズル31から吐出される液体11の出始めは、サンプリング流路21を流通する際に影響を受けている場合があることから、液体11を回収容器33に回収する代わりに、廃液容器32に廃棄してもよい。適量の液体11を廃棄した後で、ノズル31から吐出される液体11を回収容器33に回収することで、採取による液体11の影響を抑制することができる。
【0018】
所定量の液体11を回収容器33に回収する後でノズル31から吐出される液体11は、廃液容器32に廃棄してもよい。支持台35は、ノズル31の下に廃液容器32と回収容器33のいずれが配置されるかを切り替えが可能であることが好ましい。回収容器33が試験管、アンプル、ビーカー等である場合は、支持台35上にホルダ34を設置し、ホルダ34に回収容器33を収容してもよい。ホルダ34又は支持台35に、2以上の回収容器33を設置し、ノズル31から吐出される液体11を、2以上の回収容器33で順に受けてもよい。
【0019】
なお、回収部30において、ノズル31を設ける代わりに、サンプリング流路21と回収容器33とを直接接続してもよい。また、サンプリング流路21の回収部側区間21Cの端部に分岐部(図示せず)を設け、この分岐部に廃液容器32と回収容器33を切り替え可能に接続してもよい。回収容器33は、シリンジ、注射器等の可動部を有する装置であってもよい。
【0020】
サンプリング装置100は、洗浄可能区間21Bに洗浄液41を供給する洗浄液供給部40と、洗浄可能区間21Bから洗浄液41を排出する洗浄液排出部50と、を備えている。洗浄可能区間21Bに洗浄液41を供給し、さらに洗浄液41の廃液51を洗浄液排出部50に排出する洗浄工程は、サンプリング工程の前、サンプリング工程の後、又はサンプリング工程の前後両方で行うことができる。
【0021】
洗浄液供給部40は、洗浄液41を収容した洗浄液供給容器42と、洗浄液供給容器42から洗浄可能区間21Bに向けて洗浄液41を流通させる洗浄液供給流路43とを備えている。洗浄液41は、サンプリングの際に洗浄可能区間21Bに残留し得る液体11等を洗浄するために用いられる。
【0022】
洗浄液41は、液体11又はその溶質等の成分を溶解させる水、有機溶媒等の溶媒を含むことが好ましい。また、洗浄液41は、洗浄剤、界面活性剤、分解剤、殺菌剤等を含有してもよい。液体11が培養液である場合には、洗浄液41の成分が洗浄可能区間21Bに残留しても、サンプリング流路21を流通する液体11への影響が抑制されることが好ましい。例えば、緩衝液、生理食塩水などが培養液の洗浄液41として好適である。2以上の洗浄液供給部40をサンプリング流路21に接続して、2種類以上の洗浄液41を洗浄可能区間21Bの洗浄に使用してもよい。
【0023】
洗浄液供給容器42と洗浄液供給流路43との間は、接続ポート46を用いて接続されている。サンプリング流路21に流通される液体11が培養液等である場合には、無菌接続が可能な無菌接続ポート、無菌接続コネクタ等から接続ポート46を構成することが好ましい。洗浄液供給容器42は、洗浄液41を補給するための洗浄液供給ポート47を有してもよい。
【0024】
洗浄液排出部50は、洗浄可能区間21Bから排出された洗浄液41の廃液51を収容する洗浄液排出容器52と、洗浄可能区間21Bから洗浄液排出容器52に向けて洗浄液41の廃液51を流通させる洗浄液排出流路53とを備えている。洗浄液41の廃液51は、洗浄可能区間21Bを通過した洗浄液41である。また、洗浄液41の廃液51には、洗浄可能区間21Bから除去された異物等が含まれ得る。このため、以下の説明では、洗浄可能区間21Bを通過した洗浄液41を、単に洗浄液41という場合もあれば、廃液51という場合もある。
【0025】
洗浄液排出流路53には、廃液51の流量を確認するための流量計56を設けてもよい。洗浄液排出容器52は、廃液51を取り出すための廃液ポート57を有することができる。洗浄液排出流路53に流通される洗浄液41の量、洗浄液排出容器52に収容される廃液51の量などを制御することにより、廃液51が洗浄液排出容器52から溢れてサンプリング流路21に逆流することを抑制することができる。
【0026】
実施形態のサンプリング装置100においては、容器12から洗浄可能区間21Bへの液体11の流通と、洗浄液供給部40から洗浄可能区間21Bへの洗浄液41の流通とが、択一的に選択可能に構成されている。例えば、サンプリング流路21の容器側区間21Aに配置したバルブ22と、洗浄液供給流路43に配置したバルブ44,45とを切り替え、バルブ22及びバルブ44,45が同時に開かないように制御してもよい。容器側区間21Aのバルブ22と洗浄液供給流路43のバルブ44とが、別々に構成されてもよく、又は、一体的に連動可能なバルブV1を構成してもよい。また、洗浄液供給流路43がサンプリング流路21に合流する位置に、3以上の出入口を有してバルブ22,44の機能を兼ね備える三方弁等の流路切替え装置を配置することもできる。
【0027】
また、実施形態のサンプリング装置100においては、洗浄可能区間21Bから回収部30への液体11の流通と、洗浄可能区間21Bから洗浄液排出部50への洗浄液41の流通とが、択一的に選択可能に構成されている。例えば、サンプリング流路21の回収部側区間21Cに配置したバルブ23,24と、洗浄液排出流路53に配置したバルブ54とを切り替え、バルブ23,24及びバルブ54が同時に開かないように制御してもよい。回収部側区間21Cのバルブ23と洗浄液排出流路53のバルブ54とが、別々に構成されてもよく、又は、一体的に連動可能なバルブV2を構成してもよい。また、サンプリング流路21から洗浄液排出流路53が分岐する位置に、3以上の出入口を有してバルブ23,54の機能を兼ね備える三方弁等の流路切替え装置を配置することもできる。
【0028】
図1に示すように、サンプリング工程においては、サンプリング流路21の容器側区間21A及び回収部側区間21Cに配置したバルブ22,23,24が同時に開いている状態で、洗浄液供給流路43に配置したバルブ44及び洗浄液排出流路53に配置したバルブ54が閉じている。この場合、ポンプ等の送液装置25を動作させることで、容器12から回収部30に向けて液体11を流通させることができる。
【0029】
液体11の送液装置25は、サンプリング流路21の少なくとも1箇所、例えば、容器側区間21A、洗浄可能区間21B、回収部側区間21Cに配置することができる。洗浄可能区間21Bには送液装置25を配置せず、容器側区間21A又は回収部側区間21Cに送液装置25を配置すると、洗浄可能区間21Bの洗浄時に送液装置25の洗浄が不要になる。液体11の送液装置25は、送液量を任意に設定可能できることが好ましい。これにより、液体11のサンプリング工程を容易に自動化することができる。
【0030】
図2に示すように、洗浄工程においては、洗浄液供給流路43及び洗浄液排出流路53に配置したバルブ44,45,54が同時に開いている状態で、サンプリング流路21の容器側区間21Aに配置したバルブ22及び回収部側区間21Cに配置したバルブ23が閉じている。この場合、ポンプ等の送液装置55を動作させることで、洗浄液供給容器42から洗浄液排出容器52に向けて洗浄液41を流通させることができる。
【0031】
洗浄液41の送液装置55は、洗浄液供給部40、洗浄可能区間21B、又は洗浄液排出部50の少なくとも1箇所に配置することができる。洗浄可能区間21Bには送液装置55を配置せず、洗浄液供給部40又は洗浄液排出部50に送液装置55を配置すると、洗浄可能区間21Bの洗浄時に送液装置55の洗浄が不要になる。洗浄液41の送液装置55は、送液量を任意に設定可能できることが好ましい。これにより、サンプリング流路21の洗浄工程を容易に自動化することができる。
【0032】
実施形態のサンプリング装置100によれば、サンプリング流路21に洗浄液供給部40及び洗浄液排出部50を接続することにより、サンプリング流路21を洗浄液41により洗浄することができる。これにより、サンプリング流路21を清浄に保つことができるので、サンプリングを容易に行うことができる。また、容器12から洗浄可能区間21Bへの液体11の流通がバルブ22により切り替えられることにより、容器12の汚染を抑制することができる。
【0033】
サンプリング流路21のうち洗浄可能区間21Bが占める長さの割合は特に限定されないが、容器側区間21Aの長さ、回収部側区間21Cの長さ、又は、容器側区間21Aと回収部側区間21Cとの合計の長さに比べて、洗浄可能区間21Bの長さが長いことが好ましい。例えば、洗浄可能区間21Bがサンプリング流路21の長さの半分以上を占めてもよい。
【0034】
容器12の汚染は、サンプリング流路21内の液体11、洗浄液41、廃液51等がサンプリング流路21を介して容器12に逆流することが一因になり得る。このため、サンプリング流路21のうち容器側区間21Aには、洗浄可能区間21Bから容器12への流通を阻止する一方向弁26を配置することが好ましい。一方向弁26は、開閉を切り替えるバルブ24に比べて逆流を阻止する能力が高いため、容器12の汚染をより確実に防ぐことができる。
【0035】
サンプリング流路21のうち容器側区間21Aには、サンプリング流路21の内部を殺菌するための装置を配置してもよい。例えば、紫外線(UV)を照射する紫外線照射装置27によれば、高温や薬剤等を用いることなく、また、容器12内の液体11には紫外線が影響せずに、サンプリング流路21の外側からサンプリング流路21の内部を局所的に殺菌することができる。例えば、一時的な停電などで、サンプリング装置100の自動的な制御等に影響が生じた場合でも、紫外線照射装置27を動作させることにより、容器12内の液体11の汚染を抑制することができる。紫外線照射装置27を用いる場合、サンプリング流路21のうち、少なくとも紫外線が照射される区間においては、紫外線を透過可能な材質の流路が用いられる。
【0036】
サンプリング流路21の洗浄可能区間21Bには、光センサ28を配置してもよい。光センサ28を用いて、サンプリング流路21の外側からサンプリング流路21の内部を検査することにより、洗浄可能区間21Bの状況を確認することができる。光センサ28で用いる検査光の波長(種類)は、可視光に限らず、赤外線、紫外線等であってもよい。光センサ28を用いる場合、サンプリング流路21のうち、少なくとも検査光が照射される区間においては、検査光を透過可能な材質の流路が用いられる。
【0037】
洗浄液供給流路43は、流路が分岐した分岐部43Aを有してもよい。分岐部43Aには、バルブ48やポート49等を配置することができる。例えば、洗浄液供給流路43に過剰な洗浄液41が滞留した場合等において、分岐部43Aが洗浄液供給流路43から分岐する箇所の前後に設けたバルブ44,45を閉じた状態で、分岐部43Aのバルブ48を開き、ポート49から不要な洗浄液41を抜き取ることができる。バルブ45,48が、別々に構成されてもよく、又は、一体化されたバルブV3を構成してもよい。
【0038】
洗浄液供給流路43の洗浄液供給容器42から洗浄可能区間21Bまでの間で、2箇所以上にバルブ44,45を配置した場合は、サンプリング工程の際は少なくとも洗浄可能区間21Bに近い側のバルブ44を閉じることが好ましい。これにより、洗浄液供給流路43中に入るサンプリング用の液体11の量を抑制して、サンプリングの制御を容易にすることができる。洗浄液排出流路53の2箇所以上にバルブ54を配置する場合も同様である。
【0039】
サンプリング流路21、洗浄液供給流路43、洗浄液排出流路53等の流路の構成は特に限定されず、フレキシブルなチューブ、ホース等でもよく、硬質のパイプ等でもよい。これらの流路の材質としては、樹脂、ゴム、エラストマー、金属等が挙げられる。各流路には、フィルター、フローモニター、流量計等を設けてもよい。
【0040】
流路に設けるバルブ22,23,24,44,45,48,54の構成は特に限定されないが、操作性、信頼性、利便性等の観点から適宜選択することができる。フレキシブルなチューブ、ホース等に対しては、チューブ、ホース等を外側から圧縮することで流路を閉鎖するピンチバルブを用いると、流路の内容液に対する影響、汚染を抑制できることから好ましい。同じ理由により、送液装置25,55としては、チューブ、ホース等を外側から圧縮する動作により、流路の内容液に動力を付与するチューブポンプを用いることが好ましい。
【0041】
容器12、洗浄液供給容器42、洗浄液排出容器52等の容器の構成は特に限定されず、フィルム状容器等のフレキシブルな容器でもよく、硬質な容器でもよい。フィルム状容器としては、平坦なフィルムを2枚重ね合わせて周囲を封止した平袋、平坦なフィルム2枚の間に2つ折り状のガゼット部を接合して封止したガゼット袋、両端が開口した筒状フィルムの少なくとも一方の開口部に平坦なフィルムを接合して封止した筒状フィルム容器などが挙げられる。
【0042】
筒状フィルム容器は、ドラム缶ライナーのように、円筒状フィルムの両端に円形の平坦なフィルムを接合した構造であってもよい。筒状フィルムの一方の開口部のみに平坦なフィルムを接合する場合は、反対側の開口部において筒状フィルムを径方向に潰して、筒状フィルムの内面同士を直接接合してもよい。筒状フィルム容器は、円筒状に限らず、水平面上の断面形状が四角形等の多角形である角筒状に構成してもよい。容器を二重袋や三重袋など多重の袋で構成すると、容器の内容物(液体11、洗浄液41、廃液51等)が漏れにくくなるので好ましい。
【0043】
前記フィルム状容器を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル等の熱可塑性樹脂や、これらの積層体が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、高分子構造が脂肪族構造でも芳香族構造でもよく、あるいは環状構造でも非環状構造でもよい。前記フィルム状容器は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の汎用性の高い熱可塑性樹脂を主体とする場合、大型容器でも比較的安価に製造でき、シングルユースの需要にも応じやすくなるので好ましい。
【0044】
前記フィルム状容器に各種の管路等として、チューブ、ホース、注出口、注入口等の付属部品を接続する場合は、付属部品の材質が前記フィルム状容器にヒートシール可能な樹脂、ゴム、エラストマー等の有機材料であることが好ましい。これにより、付属部品をヒートシールにより容易にフィルム状容器に接続することができる。また、付属部品を含めたフィルム状容器をシングルユースに構成することも容易になる。
【0045】
フレキシブルな容器を硬質な外装容器に収容する場合は、外装容器は、フレキシブルな容器を機械的に保護することが可能な硬さ(剛性)を有することが好ましい。外装容器の材質は特に限定されず、樹脂、ゴム、ガラス、金属、木材、繊維強化プラスチック等から構成することができる。フレキシブルな容器の周囲を外装容器で保護することにより、フレキシブルな容器の形状を容易に維持することができる。内容物を収容した容器の側面が外装容器の内面に密着して、容器の重量が外装容器に支持されてもよい。外装容器は、容器に収容された内容物の温度を調整するため、加熱器、冷却器、放熱器、熱媒体を流通させる熱交換器、温度計等を備えてもよい。
【0046】
実施形態のサンプリング装置100は、容器12を培養容器とした場合に、液体処理装置10を培養装置として用いることができる。培養装置は、液体培地を容器12に供給して培養物を培養する。容器12に液体培地を供給し、微生物、細胞等の培養物の培養を行うとき、容器12に収容された液体11が培養液となる。培養液は、培養工程に用いられる液体であればよい。培養工程の進行状況に応じて、培養液の状態には、液体培地を主とする状態、液体培地に培養物が播種された状態、液体培地中で培養物が増殖した状態、培養物の産生物や老廃物等が分泌された状態等、様々な状態があり得る。
【0047】
また、培養容器に液体培地を供給して培養物を培養する培養工程において、サンプリング工程を実施する際に、サンプリング装置100を用いて培養容器に収容された培養液の一部を採取することができる。サンプリングした培養液の検査、分析等により培養液の状態を確認することができる。また、上述したように、サンプリング工程の前又は後で洗浄工程を実施することにより、サンプリング流路21を清浄に保ち、サンプリングの信頼性を維持することができる。特に、培養工程を大規模に実施する場合は、培養液のサンプリングを通じて、培養液に収容された大量の培養液の状態を的確に把握することができ、状況に応じた対処が容易になる。
【0048】
培養工程において、培養容器の内容物を撹拌するため、培養容器内に撹拌翼、撹拌棒、磁気撹拌子等の撹拌部材を配置してもよく、培養容器の外側から揺動装置を用いて培養容器を揺動させてもよい。揺動装置を用いる場合は、揺動装置の部分を培養液に接触させることなく、培養液を撹拌することができる。撹拌部材を用いる場合と比べて、撹拌部材の損傷、劣化等による培養液の汚染、撹拌部材の交換の手間等を回避することができる。
【0049】
揺動装置は、容器12を往復運動させることにより液体11を揺動させてもよい。揺動装置は、容器12を回転運動させることにより液体11を揺動させてもよい。往復運動又は回転運動の方向は、水平方向(左右方向)、鉛直方向(上下方向)、又はこれらの間の傾斜方向であってもよい。回転運動においては、回転軸が液体11の重心を通る自転運動であってもよく、回転軸が液体11の重心から離れた位置を通る公転運動であってもよい。揺動装置は、運動の種類又は方向が異なる2種類以上の運動を同時に重ね合わせて容器12に作用させてもよい。また、揺動装置は、時間軸に対して周期的又は不定期に、運動の種類又は方向を変更してもよい。
【0050】
培養工程において培養される微生物、細胞等の培養物としては、特に限定されないが、菌類、細菌類、ウイルス、酵母、藻類、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞、バイオ医薬製造用のCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞や、HeLa細胞、COS細胞、再生医療用途のiPS細胞、間葉系幹細胞を始めとした幹細胞、分化させた組織細胞などの動物細胞、などが挙げられる。また、培養工程においては、微生物、細胞等の培養物を目的物として得る場合に限らず、培養物が産生した酵素、抗体、化学物質等の産生物を培養液から回収することも可能である。
【0051】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0052】
上記実施形態では、サンプリング流路21が1つの容器12と1つの回収部30との間を接続するものとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、サンプリング流路21の容器側区間21Aを2以上に分岐して、2以上の容器12をサンプリング流路21に接続してもよい。また、サンプリング流路21の回収部側区間21Cを2以上に分岐して、2以上の回収部30をサンプリング流路21に接続してもよい。
【0053】
例えば、同種の培養物を複数の容器12を用いて培養する場合には、採取した培養液の回収に用いる構成(回収部30、回収部側区間21C等)、及び、サンプリング流路21の洗浄に用いる構成(洗浄液供給部40、洗浄可能区間21B、洗浄液排出部50等)を共通化すると、スペースやコスト等を抑制することができる。
【符号の説明】
【0054】
10…液体処理装置、11…液体、12…容器、20…サンプリング部、21…サンプリング流路、21B…洗浄可能区間、25…液体の送液装置、26…一方向弁、27…紫外線照射装置、30…回収部、40…洗浄液供給部、41…洗浄液、42…洗浄液供給容器、43…洗浄液供給流路、50…洗浄液排出部、51…洗浄液の廃液、52…洗浄液排出容器、53…洗浄液排出流路、55…洗浄液の送液装置、100…サンプリング装置。
図1
図2