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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】加工システム及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/02 20060101AFI20240725BHJP
   B24B 7/00 20060101ALI20240725BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20240725BHJP
   B24B 53/02 20120101ALI20240725BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B24B49/02 Z
B24B7/00 A
B24B53/12 A
B24B53/02
H01L21/304 622M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020136912
(22)【出願日】2020-08-14
(65)【公開番号】P2022032755
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】福永 信貴
(72)【発明者】
【氏名】鎗光 正和
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-141949(JP,A)
【文献】実開平04-060655(JP,U)
【文献】特開2002-001660(JP,A)
【文献】特開2001-018162(JP,A)
【文献】特開2018-149621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/02
B24B 7/00
B24B 53/12
B24B 53/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象体の加工システムであって、
前記処理対象体を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記処理対象体を研削する研削具と、前記研削具を前記処理対象体に対して移動させる移動機構とを備えた研削部と、
前記処理対象体の厚みを測定する測定部と、
前記処理対象体の研削状況を表示する表示部と、を備え、
前記処理対象体はドレスボードであり、
前記表示部は、
前記処理対象体に対する前記研削具の移動量と、
前記処理対象体の研削前の厚みと研削後の厚みとの差分と、
を表示し、
前記差分、又は前記移動量から前記差分を引いた前記研削具のドレス量に基づいて、前記処理対象体の研削の正常又は異常を判定し、
前記判定における前記差分の閾値は、前記処理対象体と前記研削具との組み合わせに応じて設定される、加工システム。
【請求項2】
前記表示部は、前記移動量から前記差分を引いた値を表示する、請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記研削部は複数設けられ、
前記研削部の各々の前記研削具に応じて、前記処理対象体が複数準備される、請求項1又は2に記載の加工システム。
【請求項4】
処理対象体の加工方法であって、
前記処理対象体はドレスボードであり、
研削前の前記処理対象体の厚みを測定することと、
保持部に保持された前記処理対象体に対して研削具を移動させ、前記研削具を用いて前記処理対象体を研削することと、
研削後の前記処理対象体の厚みを測定することと、
前記処理対象体の研削前の厚みと研削後の厚みの差分を算出することと、
前記差分、又は前記処理対象体を研削する際の前記研削具の移動量から前記差分を引いた前記研削具のドレス量に基づいて、前記処理対象体の研削の正常又は異常を判定することと、を含む、加工方法。
【請求項5】
前記移動量と前記差分とを表示部に表示することを含む、請求項に記載の加工方法。
【請求項6】
前記表示部は、前記移動量から前記差分を引いた値を表示する、請求項に記載の加工方法。
【請求項7】
前記判定における前記差分の閾値は、前記処理対象体と前記研削具との組み合わせに応じて設定される、請求項のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項8】
前記研削具を備えた研削部は複数設けられ、
前記研削部の各々の前記研削具に応じて、前記処理対象体が複数準備される、請求項のいずれか一項に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工システム及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、研削ホイールの研削砥石をドレッシングするドレッシングボードが開示されている。ドレッシングボードは、支持プレートに接着される第一の層と、研削砥石で研削される第二の層と、から構成される。第一の層と第二の層とは異なる色相を示し、第二の層の摩耗によって第一の層が表出する事で使用限界を色によって識別できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-217935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、研削具の加工処理を適切に行う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、処理対象体の加工システムであって、前記処理対象体を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記処理対象体を研削する研削具と、前記研削具を前記処理対象体に対して移動させる移動機構とを備えた研削部と、前記処理対象体の厚みを測定する測定部と、前記処理対象体の研削状況を表示する表示部と、を備え、前記処理対象体はドレスボードであり、前記表示部は、前記処理対象体に対する前記研削具の移動量と、前記処理対象体の研削前の厚みと研削後の厚みとの差分と、を表示し、前記差分、又は前記移動量から前記差分を引いた前記研削具のドレス量に基づいて、前記処理対象体の研削の正常又は異常を判定し、前記判定における前記差分の閾値は、前記処理対象体と前記研削具との組み合わせに応じて設定される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、研削具の加工処理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかる加工装置の構成の概略を示す平面図である。
図2】各研削部及びチャックの構成の概略を示す側面図である。
図3】ドレスボードの構成の概略を示す平面図である。
図4】ドレスボードの構成の概略を示す側面図である。
図5】粗研削砥石をドレッシングする様子を示す説明図である。
図6】粗研削砥石がドレッシングされた様子を示す説明図である。
図7】測定部でドレスボードの厚みを測定する様子を示す説明図である。
図8】本実施形態にかかる表示パネルの表示例を示す説明図である。
図9】粗研削砥石のドレッシング処理の主な工程を示すフロー図である。
図10】粗研削砥石のドレッシングにおける粗研削砥石のドレス量Dとドレスボードの厚み差分Tとの関係を示す説明図である。
図11】他の実施形態にかかる表示パネルの表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
近年、半導体デバイスの製造工程においては、表面に複数の電子回路等のデバイスが形成された半導体基板(以下、「ウェハ」という。)に対し、当該ウェハの裏面を研削して、ウェハを薄化することが行われている。ウェハの裏面の研削は、例えば保持部でウェハの研削面の反対面を保持した状態で当該保持部を回転させながら、ウェハの裏面に研削部の研削砥石を当接させることにより行われる。
【0009】
ウェハの研削を行うと、当該研削の進行に伴い、研削砥石が目つぶれや目詰まりを起こす。このため、研削精度を維持するには研削砥石のドレッシングを行い、研削砥石の表面状態を調整する必要がある。
【0010】
特許文献1には、研削砥石のドレッシングに用いられるドレッシングボードが開示されている。このドレッシングボードは第一の層と第二の層とから構成され、第二の層の摩耗によって第一の層が表出する事で使用限界を色によって識別し、ドレスボード(ドレッシング工具)の使用限界を識別することを図っている。
【0011】
ここで、研削砥石のドレッシングを適切に行うためには、当該ドレッシングによる研削砥石の状態を適切に把握する必要がある。しかしながら、従来、例えば特許文献1に開示されているようにドレスボードの使用限界を把握するための対策は行われているが、研削砥石の状態を把握することまでは行われていない。すなわち、ドレッシングが正常に行われたか否かを判定するには至っていない。したがって、従来の研削砥石のドレッシングには改善の余地がある。
【0012】
本開示にかかる技術は、研削具の加工処理を適切に行う。以下、本実施形態にかかる加工システムとしての加工装置、及び加工方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
本実施形態にかかる加工装置1では、ウェハWの薄化が行われる。ウェハWは、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハ等の半導体ウェハであり、表面にはデバイスが形成されている。そして加工装置1においてはウェハWの裏面に対して研削等の処理が行われ、これにより当該ウェハWが薄化される。また、加工装置1では、研削砥石のドレッシングが行われる。
【0014】
図1に示すように加工装置1は、搬入出ステーション2と処理ステーション3を一体に接続した構成を有している。搬入出ステーション2では、例えば外部との間で複数のウェハWを収容可能なカセットCが搬入出される。処理ステーション3は、ウェハWに対して所望の処理を施す各種処理装置を備えている。
【0015】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10が設けられている。また、カセット載置台10のY軸正方向側には、当該カセット載置台10に隣接してウェハ搬送領域20が設けられている。ウェハ搬送領域20には、X軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されたウェハ搬送装置22が設けられている。
【0016】
ウェハ搬送装置22は、ウェハWを保持して搬送する搬送フォーク23を有している。搬送フォーク23は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。そして、ウェハ搬送装置22は、カセット載置台10のカセットC、アライメント部50、及び第1の洗浄部60に対して、ウェハWを搬送可能に構成されている。
【0017】
処理ステーション3では、ウェハWに対して研削や洗浄などの加工処理が行われる。処理ステーション3は、ウェハWの搬送を行う搬送部30、ウェハWの研削処理を行う研削部40、研削処理前のウェハWの水平方向の向きを調整するアライメント部50、研削処理後のウェハWを洗浄する第1の洗浄部60、及び研削処理後のウェハWを洗浄する第2の洗浄部70を有している。
【0018】
搬送部30は、複数、例えば3つのアーム31を備えた多関節型のロボットである。3つのアーム31は、それぞれが旋回自在に構成されている。先端のアーム31には、ウェハWを吸着保持する搬送パッド32が取り付けられている。また、基端のアーム31は、アーム31を鉛直方向に昇降させる昇降機構33に取り付けられている。そして、搬送部30は、研削部40の受渡位置A0、アライメント部50、第1の洗浄部60、及び第2の洗浄部70に対して、ウェハWを搬送可能に構成されている。
【0019】
研削部40には回転テーブル41が設けられている。回転テーブル41上には、ウェハWを吸着保持する保持部としてのチャック42が4つ設けられている。チャック42には例えばポーラスチャックが用いられ、ウェハWの表面を吸着保持する。チャック42の表面、すなわちウェハWの保持面は、側面視において中央部が端部に比べて突出した凸形状を有している。なお、この中央部の突出は微小であるため、以下の説明の図示においては、チャック42の凸形状を省略している。
【0020】
図2に示すように、チャック42はチャックベース43に保持されている。チャックベース43には、各研削部(粗研削部80、中研削部90及び仕上研削部100)とチャック42の相対的な傾きを調整する傾き調整部44が設けられている。傾き調整部44は、チャックベース43の下面に設けられた固定軸45と複数、例えば2本の昇降軸46を有している。各昇降軸46は伸縮自在に構成され、チャックベース43を昇降させる。この傾き調整部44によって、チャックベース43の外周部の一端部(固定軸45に対応する位置)を基点に、他端部を昇降軸46によって鉛直方向に昇降させることで、チャック42及びチャックベース43を傾斜させることができる。そしてこれにより、加工位置A1~A3の各研削部80、90、100とチャック42の表面との相対的な傾きを調整できる。
【0021】
なお、傾き調整部44の構成はこれに限定されず、各研削部(研削面)に対するチャック42の表面(保持面)の相対的な角度(平行度)を調整することができれば、任意に選択できる。
【0022】
4つのチャック42は、回転テーブル41が回転することにより、受渡位置A0及び加工位置A1~A3に移動可能になっている。また、4つのチャック42はそれぞれ、回転機構(図示せず)によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
【0023】
受渡位置A0では、搬送部30によるウェハWの受け渡しが行われる。加工位置A1には粗研削部80が配置され、ウェハWを粗研削する。加工位置A2には中研削部90が配置され、ウェハWを中研削する。加工位置A3には仕上研削部100が配置され、ウェハWを仕上研削する。
【0024】
図2に示すように、粗研削部80は、下面に環状の研削具としての粗研削砥石を備える粗研削ホイール81、当該粗研削ホイール81を支持するマウント82、当該マウント82を介して粗研削ホイール81を回転させるスピンドル83、及び、例えばモータ(図示せず)を内蔵する駆動部84を有している。また粗研削部80は、図1に示す支柱85に沿って鉛直方向に移動可能に構成されている。なお、本実施形態では、駆動部84と支柱85が本開示の移動機構を構成している。
【0025】
中研削部90は粗研削部80と同様の構成を有している。すなわち中研削部90は、環状の研削具としての中研削砥石を備える中研削ホイール91、マウント92、スピンドル93、駆動部94、及び支柱95を有している。中研削砥石の砥粒の粒度は、粗研削砥石の砥粒の粒度より小さい。
【0026】
仕上研削部100は粗研削部80及び中研削部90と同様の構成を有している。すなわち仕上研削部100は、環状の研削具としての仕上研削砥石を備える仕上研削ホイール101、マウント102、スピンドル103、駆動部104、及び支柱105を有している。仕上研削砥石の砥粒の粒度は、中研削砥石の砥粒の粒度より小さい。
【0027】
また研削部40の受渡位置A0、及び加工位置A1~A3には、ウェハWの厚み又は後述するドレスボード140のドレス砥石141の厚みを測定するための測定部110が設けられている。測定部110には、例えば接触式の厚み測定機構が用いられる。なお、測定部110の構成は後述する。
【0028】
以上の加工装置1には、表示部としての表示パネル120が設けられている。表示パネル120は例えばモニターやタッチパネルであり、加工装置1に直接取り付けられてもよいし、又は遠隔で確認できるものであってもよい。表示パネル120には、ウェハ処理の状況や、研削砥石のドレッシングの状況等を表示する。なお、表示パネル120の構成は後述する。
【0029】
また、以上の加工装置1には制御部130が設けられている。制御部130は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、加工装置1におけるウェハWの加工処理を制御するプログラムが格納されている。またプログラム格納部には、後述するドレッシングを制御するプログラムがさらに格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部130にインストールされたものであってもよい。
【0030】
研削処理を複数のウェハWに対して行うと、当該研削処理の進行に伴い、各研削砥石(粗研削砥石、中研削砥石及び仕上研削砥石)が目つぶれや目詰まりを起こす。このため、研削精度を維持するには研削砥石のドレッシングを行い、研削砥石の表面状態を調整する必要がある。以下、加工装置1で行われる研削砥石のドレッシングについて説明する。
【0031】
研削砥石のドレッシングは、処理対象体としてのドレスボード140を用いて行われる。図3及び図4に示すように、ドレスボード140は、円板形状のドレス砥石141と、ドレス砥石141の下面側に設けられ、当該ドレス砥石141を支持する円板形状の台座142とを有している。
【0032】
ドレス砥石141には、各研削砥石(粗研削砥石、中研削砥石及び仕上研削砥石)との組み合わせに応じたドレス砥石が用いられる。すなわち、ドレス砥石141の砥粒の粒度は、各研削砥石の砥粒の粒度に応じて設定される。したがって、粗研削砥石、中研削砥石、仕上研削砥石のそれぞれに対して、複数のドレス砥石141(ドレスボード140)を準備してもよい。
【0033】
ドレスボード140を用いて粗研削砥石をドレッシングする際には、図5に示すようにチャック42でドレスボード140を保持する。続いて、粗研削ホイール81(粗研削砥石)をドレスボード140に対して鉛直下方に移動させ、粗研削砥石をドレスボード140に当接させる。そして、粗研削砥石とドレスボード140をそれぞれ回転させ、さらに粗研削砥石を鉛直下方に移動させる。そうすると、図6に示すように、粗研削ホイール81の粗研削砥石の表面が研削され、ドレッシングされる。すなわち、図6(a)に示すようにドレッシング前において粗研削砥石の表面が荒れていたのに対して、図6(b)に示すようにドレッシング後において粗研削砥石の表面状態が、次にウェハWの粗研削が適切に行われる状態に調整される。
【0034】
以下の説明において、粗研削砥石がドレスボード140に当接してからドレッシングが完了するまでの、粗研削砥石の鉛直下方への移動量を送り量という。また、粗研削砥石が研削される量をドレス量Dという。なお、中研削砥石及び仕上研削砥石のドレッシングもそれぞれ、粗研削砥石のドレッシングと同様の方法で行われる。
【0035】
以上のように、ドレスボード140を用いて各研削砥石のドレッシングが行われる。さらに本実施形態では、各研削砥石のドレッシングに際して、ドレッシング前後のドレスボード140に基づいて、当該ドレッシングが正常であったか、あるいは異常であったかを判定して確認する。なお、以下の説明において、各研削砥石を総称して、単に研削砥石という場合がある。
【0036】
ドレスボード140のドレス砥石141の厚みは、上述した測定部110を用いて測定される。図7に示すように測定部110は、台座側のハイトゲージ111、ドレス砥石側のハイトゲージ112、及び算出部113を有している。ハイトゲージ111はプローブ114を備え、プローブ114の先端が台座142の上面に接触することで、当該上面の高さ位置を測定する。ハイトゲージ112はプローブ115を備え、プローブ115の先端がドレス砥石141の上面に接触し、当該上面の高さ位置を測定する。算出部113は、ハイトゲージ112の測定値からハイトゲージ111の測定値を差し引くことで、ドレス砥石141の厚みを算出する。なお、以下の説明においては、ドレス砥石141の厚みをドレスボード140の厚みという場合がある。また、プローブ114の先端はチャック42の(枠の)上面に接触し、測定部110はドレスボード140の厚みを測定してもよい。
【0037】
図8に示すように表示パネル120は、研削砥石のドレッシングの状況を表示する。具体的に表示パネル120には、各研削ホイール81、91、101における研削砥石の送り量と、ドレスボード140の厚みとが表示される。
【0038】
研削砥石の送り量は、上述したように研削砥石がドレスボード140に当接してからドレッシングが完了するまでの研削砥石の移動量である。送り量は、例えばドレッシングの処理レシピの1つとして、オペレータにより入力される。なお、この処理レシピの入力画面は、図8に示した画面とは別画面として表示パネル120に表示される。
【0039】
ドレスボード140の厚みとしては、ドレッシング前のドレスボード140の厚み、ドレッシング後のドレスボード140の厚み、及びこれらの差分が表示される。ドレッシング前とドレッシング後のドレスボード140の厚みはそれぞれ、測定部110によって測定される。また、測定部110によるドレスボード140の厚み測定結果は制御部130に出力され、制御部130において、ドレッシング前後のドレスボード140の厚みの差分が算出される。すなわち、この差分はドレスボード140の消耗量であり、以下の説明では、ドレスボード140の厚み差分という。
【0040】
また、表示パネル120には、確認ボタンが表示される。オペレータは、研削砥石のドレッシングの状況を確認すると、当該確認ボタンを押すことで、次の画面に移動することができる。
【0041】
次に、加工装置1で行われるドレスボード140を用いた一連のドレッシング処理について説明する。以下の説明においては、粗研削砥石をドレッシングする場合について説明するが、中研削砥石及び仕上研削砥石のドレッシングも同様である。
【0042】
先ず、加工位置A1において、チャック42でドレスボード140を保持する(図9のステップS1)。ドレスボード140は、チャック42に対して自動で搬送してもよいし、手動で設置してもよい。ドレスボード140をチャック42に自動で搬送する場合には、例えば、加工装置1の外部から搬入出ステーション2にドレスボード140を搬入し、ウェハ搬送装置22と搬送部30を介してチャック42に受け渡してもよい。あるいは、加工装置1の内部にドレスボード140を保管しておき、チャック42に受け渡してもよい。
【0043】
次に、図7に示したように測定部110によって、ドレッシング前のドレスボード140の厚みを測定する(図9のステップS2)。ドレスボード140の厚み測定結果は、図8に示したように表示パネル120に表示される。本実施形態では、ドレッシング前のドレスボード140の厚みは3000μmである。
【0044】
次に、粗研削ホイール81(粗研削砥石)をドレスボード140に対して鉛直下方に移動させ、粗研削砥石をドレスボード140に当接させる。続いて、図5に示したように粗研削砥石とドレスボード140をそれぞれ回転させ、さらに粗研削砥石を鉛直下方に移動させる。そして、図6に示したように粗研削ホイール81の粗研削砥石の表面が研削され、ドレッシングされる(図9のステップS3)。
【0045】
ステップS3において、粗研削砥石の送り量は、上述したようにドレッシングの処理レシピの1つとして、オペレータにより入力される。本実施形態では、図8に示したように粗研削砥石の送り量は100μmである。
【0046】
また、ステップS3においてドレッシングの開始位置、すなわち粗研削砥石がドレスボード140に当接する位置は、ステップS2で測定されたドレスボード140の厚みに基づいて設定される。そして、ステップS3では、粗研削砥石がさらに100μm鉛直下方に移動して、当該粗研削砥石のドレッシングが行われる。
【0047】
次に、図7に示したように測定部110によって、ドレッシング後のドレスボード140の厚みを測定する(図9のステップS4)。ドレスボード140の厚み測定結果は、図8に示したように表示パネル120に表示される。本実施形態では、ドレッシング後のドレスボード140の厚みは2950μmである。
【0048】
次に、制御部130において、ステップS2で測定されたドレッシング前のドレスボード140の厚みと、ステップS4で測定されたドレッシング前のドレスボード140の厚みとの差分を算出する(図9のステップS5)。すなわち、ステップS5では、上述したようにドレスボード140の消耗量である厚み差分が算出される。ドレスボード140の厚み差分は、図8に示したように表示パネル120に表示される。本実施形態では、ドレスボード140の厚み差分は50μmである。
【0049】
次に、粗研削砥石の送り量(100μm)とドレスボード140の厚み差分(50μm)に基づいて、ドレッシングの正常又は異常を判定する(図9のステップS6)。
【0050】
例えば、ドレッシングが正常に行われる場合において、ドレスボード140の厚み差分の設定値は50μmであり、粗研削砥石のドレス量の設定値は50μmである。なお、本実施形態において、ドレスボード140の厚み差分の設定値と粗研削砥石のドレス量の設定値との比率は50:50であったが、これに限定されない。当該比率は、ドレスボード140と粗研削砥石の組み合わせに応じて設定される。
【0051】
また、ドレッシングの正常又は異常を判定する際の、ドレスボード140の厚み差分の閾値は、上記設定値である50μmから予め定めれた許容範囲内となる。例えば、許容範囲が±10μmである場合、図10に示すドレスボード140の厚み差分Tの閾値は40μm~60μmとなる。
【0052】
例えば、ドレスボード140の厚み差分Tが40μm~60μmであれば、ドレッシングは正常に行われたと判定される。すなわち、粗研削砥石のドレス量Dが60μm~40μmとなり、当該粗研削砥石の表面が適切に研削されたと判定される。本実施形態では、図8に示したようにドレスボード140の厚み差分が50μmであるため、ドレッシングは正常であったと判定される。
【0053】
一方、ドレスボード140の厚み差分Tが40μm未満又は60μmより大きい場合、ドレッシングは異常であったと判定される。すなわち、粗研削砥石のドレス量Dが60μmより大きい又は40μm未満となり、当該粗研削砥石の表面が適切に研削されなかったと判定される。
【0054】
こうして、一連の粗研削砥石のドレッシング処理が終了する。
【0055】
以上の実施形態によれば、研削砥石の送り量と、ドレスボード140の厚み差分とに基づいて、ドレッシングの正常又は異常を判定することができる。したがって、ドレッシングが正常と判定された場合には、当該研削砥石の表面状態が適切に調整されるため、次にウェハWの研削を適切に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態では、ドレスボード140の厚み差分が自動で算出され、さらにドレッシングの正常又は異常も自動で判定される。したがって、ドレッシングの正常又は異常判定を正確認に行うことができる。また、ドレッシングの正常又は異常判定を行うオペレータの手間を削減することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態では、表示パネル120に研削砥石の送り量と、ドレスボード140の厚み差分とが表示されることで、オペレータは視覚的にドレッシングの正常又は異常を確認することも可能となる。
【0058】
なお、以上の実施形態の表示パネル120には、研削砥石の送り量と、ドレスボード140の厚みとが表示されたが、表示項目はこれに限定されない。例えば図11に示すように、研削砥石の送り量からドレスボード140の厚み差分を差し引いた、研削砥石のドレス量を表示してもよい。かかる場合、オペレータは直接的にドレッシングの正常又は異常を確認することができる。
【0059】
また、以上の実施形態では、ドレスボード140のドレス砥石141の厚みを測定する測定部110には、接触式の厚み測定機構を用いたが、非接触式の厚み測定機構を用いてもよい。非接触式の厚み測定機構には、例えば光透過型のセンサや反射型のセンサが用いられる。
【0060】
また、以上の実施形態では、測定部110はドレスボード140の厚みを測定したが、各研削砥石の厚みを測定してもよい。
【0061】
また、以上の実施形態においては研削部40が3軸構成(粗研削部80、中研削部90、仕上研削部100)である場合を例に説明を行ったが、研削部40の構成はこれに限定されるものではない。例えば研削部は、粗研削部80と仕上研削部100のみが設けられた2軸構成であってもよいし、仕上研削部100のみが設けられた1軸構成であってもよい。
【0062】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 加工装置
42 チャック
80 粗研削部
81 粗研削ホイール
84 駆動部
85 支柱
90 中研削部
91 中研削ホイール
94 駆動部
95 支柱
100 仕上研削部
101 仕上研削ホイール
104 駆動部
105 支柱
110 測定部
120 表示パネル
140 ドレスボード
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11