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特許7526636ウェーハユニットの保持テーブル、及び、保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ウェーハユニットの保持テーブル、及び、保持方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240725BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H01L21/78 P
H01L21/68 N
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020175597
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066966
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
(72)【発明者】
【氏名】山本 直子
(72)【発明者】
【氏名】久保 敦嗣
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-206417(JP,A)
【文献】特開2016-119399(JP,A)
【文献】特開2017-37992(JP,A)
【文献】国際公開第2009/022495(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面取り部が外周に形成されたウェーハにテープが貼着されるとともに、該テープの外周がフレームに装着されたウェーハユニットを保持するためのウェーハユニットの保持テーブルであって、
ウェーハと該ウェーハの外側の該テープの一部を吸引により保持する保持面が形成されるウェーハ保持部を備え、
該保持面には、
保持するウェーハの該面取り部に対応する位置に環状吸引溝が形成される、
ウェーハユニットの保持テーブル。
【請求項2】
面取り部が外周に形成されたウェーハにテープが貼着されるとともに該面取り部に該テープが貼り付き、該テープの外周がフレームに装着されたウェーハユニットの保持方法であって、
ウェーハと該ウェーハの外側の該テープの一部を吸引により保持する保持面が形成されるウェーハ保持部を備え、該保持面には、保持するウェーハの該面取り部に対応した位置に環状吸引溝が形成される保持テーブルを準備する準備ステップと、
ウェーハユニットのテープ側を該保持テーブル上に載置して該テープを介してウェーハが該保持テーブルに載置された状態にする載置ステップと、
該環状吸引溝に負圧を作用させることでウェーハの該面取り部に貼り付いた該テープを吸引して引き剥がしつつ、該テープを介してウェーハを保持する保持ステップと、
を備えたウェーハユニットの保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハにテープが貼着されるとともに、ウェーハを囲むようにテープの外周にフレームが装着されてなるウェーハユニットを保持する保持テーブル、及び、保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空マウンタを用いてテープに被加工物であるウェーハを貼着するとともに、ウェーハを囲むようにテープの外周にフレームが装着されてなるウェーハユニットを構成することが知られており、例えば、特許文献1では、このウェーハユニットをハンドリングしてウェーハを加工する加工装置について開示がされている。
【0003】
特許文献1では、ウェーハの被保持面側を撮像するために、ガラス等の透明物質からなる保持パットを有する保持テーブルを備える構成としている。保持パットの保持面には、保持面の複数箇所に吸引孔(細孔)が所定の間隔で配置され、各吸引孔の箇所にて局所的に吸引が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-087141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェーハユニットを形成する段階において、真空マウンタを用いることによれば、ウェーハとテープの間に気泡を形成することなく、テープを貼着することが可能である。
【0006】
しかしながら、例えば、図12に示すように、半導体ウェーハなどのウェーハ90には、破損防止の観点から、外周縁に断面が円弧状の面取り部90mが形成されることがあり、この面取り部90mに沿うようにテープ92がせり上がって貼り付いてしまう恐れがある。
【0007】
そして、このせり上がった状態で貼り付いたテープ92の接着部分94は、ウェーハ90を切削ブレードでフルカット(厚み方向の完全な切断)した際に切断されてしまい、テープ92に穴が形成されてしまうことになる。さらに、この穴を起点として、テープ92が破断してしまう恐れが生じることになる。
【0008】
特に、上述した特許文献1に開示されるような保持テーブルの構成では、吸引される箇所が吸引孔(細孔)が保持面に点在しており、ウェーハの面取り部に対応する位置が積極的に吸引がされず、テープがせり上がったままの状態が生じやすいものとなる。このように、従来の保持テーブルの構成では、ウェーハの面取り部にテープが接着したまま残ってしまうことが懸念される。
【0009】
本願発明は、以上の問題に鑑み、ウェーハの面取り部にせり上がって貼り付いてしまったテープの接着部位について、この部分を解消することを可能とする新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
本発明の一態様によれば、
面取り部が外周に形成されたウェーハにテープが貼着されるとともに、該テープの外周がフレームに装着されたウェーハユニットを保持するためのウェーハユニットの保持テーブルであって、
ウェーハと該ウェーハの外側の該テープの一部を吸引により保持する保持面が形成されるウェーハ保持部を備え、
該保持面には、
保持するウェーハの該面取り部に対応する位置に環状吸引溝が形成される、
ウェーハユニットの保持テーブルとする。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、
面取り部が外周に形成されたウェーハにテープが貼着されるとともに該面取り部に該テープが貼り付き、該テープの外周がフレームに装着されたウェーハユニットの保持方法であって、
ウェーハと該ウェーハの外側の該テープの一部を吸引により保持する保持面が形成されるウェーハ保持部を備え、該保持面には、保持するウェーハの該面取り部に対応した位置に環状吸引溝が形成される保持テーブルを準備する準備ステップと、
ウェーハユニットのテープ側を該保持テーブル上に載置して該テープを介してウェーハが該保持テーブルに載置された状態にする載置ステップと、
該環状吸引溝に負圧を作用させることでウェーハの該面取り部に貼り付いた該テープを吸引して引き剥がしつつ、該テープを介してウェーハを保持する保持ステップと、
を備えたウェーハユニットの保持方法とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、ウェーハの面取り部にせり上がって貼り付いてしまった接着部位を吸引により引き剥がして解消することができ、ウェーハを切削ブレードでフルカットした際にテープに穴が形成され、この穴を起点としてテープが破断してしまう恐れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施に使用される切削装置の一実施形態の斜視図。
図2】支持ボックス及び保持テーブル部分の分解斜視図。
図3】(A)は支持ボックス上に搭載された保持テーブルの斜視図。(B)は下方撮像機構及びその支持構造の斜視図。
図4】保持テーブルの断面形状等について示す図。
図5】保持テーブルの保持部材に形成される環状吸引溝の配置について説明する図。
図6】(A)はウェーハの面取り部等について説明する図。(B)はウェーハユニットを保持した状態について示す図。
図7】(A)はウェーハの面取り部と環状吸引溝の配置について説明する図。(B)は面取り部からテープを引き剥がした状態について示す図。
図8】加工方法を実施する際の各ステップの順番について説明するフローチャート。
図9】(A)はウェーハの一例について示す図。(B)はウェーハユニットの構成について説明する図。
図10】切削予定ライン検出ステップについて説明する図である。
図11】切削ステップについて説明する図。
図12】ウェーハの面取り部にテープが貼り付いてしまっている状態について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施に使用される切削装置2の一実施形態について示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、切削装置2の基台4には、保持テーブル27が移動機構23(図3(A))によりX軸方向に往復動可能に配設されている。保持テーブル27の周囲にはウォーターカバー14が配設されており、このウォーターカバー14と基台4にわたり蛇腹16が連結されている。
【0017】
図1に示すように、基台4の前側角部には、後述する被加工物を収容するカセット20を載置するためのカセット載置台21が設けられる。
【0018】
カセット20内にはウェーハユニット8が複数枚収容され、搬送ユニット40によってカセット20から一対のガイドレール71上へと搬入される。また、加工の終わったウェーハユニット8は、搬送ユニット40によって一対のガイドレール71上からカセット20へと搬出される。ウェーハユニット8は、テープTにウェーハ10とフレームFを貼着することで構成されるものであり、ウェーハ10には、切削予定ラインが格子状に設計されている。
【0019】
一対のガイドレール71は、保持テーブル27の上方に配置され、ウェーハユニット8を一時的に仮置するための仮置領域18を構成する。
【0020】
図1に示すように、搬送ユニット40は、X軸方向、及び、Z軸方向に移動する略L字状の第一アーム41の下部に設けた水平部41aに備えられる。
【0021】
第一アーム41の水平部41aには、ガイドレール71と保持テーブル27の間でウェーハユニット8を移動させるための第一搬送手段47が構成される。この第一搬送手段47は、X軸方向に伸びる二本のアーム部47aと、アーム部47aの両端に設ける吸着部47bと、を有して構成される。吸着部47bによって、ウェーハユニット8のフレームFが吸着保持される。
【0022】
図1に示すように、基台4上には門型形状のコラム24が立設されており、コラム24にはY軸方向に伸長する一対のガイドレール26が固定されている。ガイドレール26には、Y軸移動ブロック28が移動可能に設けられており、ボールねじ30とパルスモータ32とからなるY軸移動機構34によって、Y軸移動ブロック28がガイドレール26に案内されてY軸方向に移動する。
【0023】
図1に示すように、Y軸移動ブロック28にはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール36が固定されている。ガイドレール36に対しZ軸移動ブロック38が移動可能に設けられており、ボールねじ40とパルスモータ42とからなるZ軸移動機構44によって、Z軸移動ブロック38がガイドレール36に案内されてZ軸方向に移動する。
【0024】
図1に示すように、Z軸移動ブロック38には切削ユニット46及び上方撮像機構52が取付けられている。切削ユニット46は、図示せぬモータにより回転駆動されるスピンドルの先端部に切削ブレードB1を着脱可能に装着して構成されている。
【0025】
図1に示すように、基台4上には、スピンナーテーブル56を有するスピンナー洗浄ユニット54が設けられており、切削加工後の被加工物をスピンナーテーブル56で吸引保持してスピンナー洗浄するとともに、スピン乾燥できるようになっている。
【0026】
図1に示すように、第一搬送手段47の側方には、保持テーブル27とスピンナー洗浄ユニット54との間でウェーハユニットを移動させる第二搬送手段50が設けられる。
【0027】
図1に示すように、切削装置2はコントローラ80を備え、各種の駆動部の動作制御が行われる。また、タッチパネル等からなる表示モニター60が設けられ、切削装置2を制御するための各種入力作業や、情報表示に用いられる。
【0028】
図2は、保持テーブル27の構成について説明する図である。
保持テーブル27は環状ベース62と、円盤状の保持部材74とを有する。環状ベース62は、嵌合部64と、嵌合部64より大径のベルト巻回部66と、嵌合部64軸方向に貫通する貫通部65と、貫通部65を塞ぐ透明部材68と、を有する。
【0029】
図2に示すように、環状ベース62の上面には、円盤状の保持部材74の枠部74bを載置して固定するための被装着領域70が設けられる。
【0030】
図2に示すように、保持部材74は、円盤状のウェーハ保持部74aと、その周囲を取り囲む枠部74bを有して構成される。ウェーハ保持部74aは、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等の透明部材にて構成されている。なお、透明部材の「透明」とは、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」ことをいうものであり、後述する切削予定ライン検出ステップの実行を可能とするものであればよく、着色されたものであってもよい。また、保持部材74の一部の必要な範囲にのみ透明領域を構成することとしてもよい。以上のようにして、保持部材74のウェーハ保持部74aにて、保持テーブル27に透明領域が構成される。なお、ウェーハ保持部74aと枠部74bは、一枚のガラス板などにより一体的に構成することができる。
【0031】
図4及び図5に示すように、ウェーハ保持部74aの上面は、ウェーハ10を保持する保持面74cを形成する。保持面74cにおいて、ウェーハ保持部74aの外周縁に近い箇所には、環状の外側吸引溝76が同心状に複数設けられており(本実施例では3列)、この外側吸引溝76にテープT(図4)が吸着保持される。最外周に設けられる外側吸引溝76の底面には、吸引源89(図4)に通じる複数の吸引孔79が形成されており、保持部材74が環状ベース62に取付けられた状態で吸引孔79を通じて外側吸引溝76が吸引源89に接続される。
【0032】
図4に示すように、外側吸引溝76は、ウェーハ10を保持した状態で、ウェーハ10よりも外周側に形成される。なお、本実施例では、外側吸引溝76を設ける構成としたが、外側吸引溝76を設けない構成においても本発明は適用可能である。
【0033】
図5に示すように、保持部材74の保持面74cには、半径方向に伸びる直線状吸引溝77が形成される。本実施例では、円盤形状の保持部材74の中心を通過し、互いに直交する二本の直線状吸引溝77が形成されている。各直線状吸引溝77は、同心状に設けられる各外側吸引溝76に接続されつつ、最外周に位置する外側吸引溝76まで伸び、この外側吸引溝76を介して同心状に設けられる各外側吸引溝76同士が接続される。
【0034】
図5に示すように、保持部材74の保持面74cは、仮想線で示されるウェーハ10よりも広く構成され、二本の直線状吸引溝77の長さは、それぞれウェーハ10の直径以上の長さで構成される。直線状吸引溝77はウェーハ10の外周側に位置する環状の外側吸引溝76に連通され、吸引源89に接続される。
【0035】
なお、図5に示すように、本実施例のように保持部材74の中心を通過して直交する二本の直線状吸引溝77とすることによれば、被加工物であるウェーハの広範囲を均等に吸引保持できる点で好ましいが、溝の本数や配置場所については、特に限定されるものではない。
【0036】
図2及び図4に示すように、環状ベース62の上面には、保持部材74の周囲を取り囲むように、ウェーハユニット8のフレームFを下側から支持するフレーム支持部72が4箇所に設けられる。
【0037】
図2及び図4に示すように、フレーム支持部72は、フレームFを支持する支持面を構成する支持ブロック72aと、フレームFの下側から吸着保持する吸着部72bと、を有し、吸着部72bは、吸引源89に接続される。
【0038】
図2及び図4に示すように、保持テーブル27の環状ベース62には、保持部材74のウェーハ保持部74aとほぼ同径の貫通部65が形成されており、貫通部65の下部が透明部材68(例えば、ガラス)にて閉鎖される。これにより、下側から順に、透明部材68、貫通部65、保持部材74のウェーハ保持部74aが配置され、これらの部位において光が透過することで、詳しくは後述するように、保持テーブル27の下方からの撮像が可能となる。なお、透明部材68は省略することとしてもよい。
【0039】
図2に示すように、保持部材74を環状ベース62の被装着領域70上に搭載し、環状ベース62から下方に突設される環状の嵌合部64を支持ボックス15の円形開口15aに嵌合させることで、図3(A)に示すように保持テーブル27が支持ボックス15に回転可能に搭載された状態となる。
【0040】
図3(A)に示すように、支持ボックス15の連結板15bにはモータ17が取り付けられており、モータ17の出力軸に連結されたプーリー17aと環状ベース62のベルト巻回部66に渡りベルト29が巻回される。モータ17を駆動すると、ベルト29を介して保持テーブル27が回転される。
【0041】
図3(A)に示すモータ17は、例えばパルスモータから構成され、アライメント遂行時にモータ17を所定パルスで駆動すると、保持テーブル27が所定量回転(θ回転)されて、図1に示すウェーハ10の切削予定ラインのアライメントを行うことができる。
【0042】
図3(A)に示すように、支持ボックス15は、X軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール31にスライド可能に載置されており、移動機構23によりX軸方向に移動される。移動機構23は、ガイドレール31の間に平行に配置されるボールネジ23aと、パルスモータ23bを有して構成される。支持ボックス15(保持テーブル27)が移動するX軸方向は加工送り方向であり、この加工送り方向と、ウェーハ10の切削予定ラインが平行とされた状態で切削加工が行われる。
【0043】
図3(A)に示すように、ボールネジ23aは支持ボックス15の下板15eの下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ23bを駆動してボールネジ23aを回転させることで、支持ボックス15がX軸方向に移動する。支持ボックス15の近傍には、保持テーブル27に保持された半導体ウェーハ等の被加工物を保持部材74の下側から撮像する下方撮像機構82が設けられ、下方撮像機構82が支持ボックス15に内に進入し、保持テーブル27の下方に位置づけられる。
【0044】
図3(A)(B)に示すように、下方撮像機構82は、Y軸移動ブロック83に立設されるコラム96に設けられる。Y軸移動ブロック83は、Y軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール81にスライド可能に載置されており、駆動手段87によりY軸方向に移動される。駆動手段87は、ガイドレール81の間に平行に配置されるボールネジ85aと、パルスモータ87bを有して構成される。
【0045】
図3(A)に示すように、ボールネジ85aはY軸移動ブロック83の下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ87bを駆動してボールネジ85aを回転させることで、Y軸移動ブロック83がY軸方向に移動する。
【0046】
図3(B)に示すように、下方撮像機構82は、プリズム機構Pと、撮像カメラCと、図示せぬ光源を有して構成される。光源からウェーハに照射された光はウェーハで反射し、プリズム機構Pにより90度回折されて撮像カメラCに入射する。
【0047】
図3(B)に示すように、下方撮像機構82を構成するプリズム機構Pや撮像カメラCは、支持プレート94により支持され、支持プレート94の基端部はZ軸移動ブロック98に固定されている。Y軸移動ブロック83(図3(A))に立設されるコラム96には、ボールねじ100及びパルスモータ102から構成されるZ軸移動手段104が設けられ、Z軸移動ブロック98が一対のガイドレール106に沿ってZ軸方向(上下方向)に移動され、これに伴って、下方撮像機構82もZ軸方向(上下方向)に移動される。
【0048】
次に、図5に示す保持部材74のウェーハ保持部74aの構成について、詳細に説明する。
図5及び図6(A)に示すように、ウェーハ保持部74aには、保持するウェーハ10の外周部の面取り部10mに対応する位置に、環状吸引溝75が形成される。本実施例では、ガラス等の透明部材にて構成される円盤状の保持部材74の保持面74cにおいて、保持部材74と同心円状に環状吸引溝75が形成される。
【0049】
図5に示すように、環状吸引溝75は、保持面74cにおいて半径方向に伸びる直線状吸引溝77を介し、環状吸引溝75よりもさらに外側に配置される外側吸引溝76に連通される。これにより、外側吸引溝76に生じる負圧を、直線状吸引溝77を通じて環状吸引溝75にも発生させることができるように構成される。なお、外側吸引溝76や直線状吸引溝77を介さずに、環状吸引溝75を直接的に吸引源89に接続することとしてもよい。
【0050】
以上のように構成することで、図7(A)に示すように、ウェーハ10の面取り部10mにテープTが貼り付き、せり上がった接着部位Tbが形成されてしまっている場合において、図7(B)に示すように、環状吸引溝75にて吸引することで引き剥がし接着部位Tbを解消することができる。
【0051】
なお、図7(A)に示すように、環状吸引溝75の溝幅75wの範囲内に、ウェーハ10の外周縁10g(ウェーハ中心から最も離れた位置)が配置されるように構成されるものであり、特に、環状吸引溝75の幅方向の略中央にウェーハ10の外周縁10gが位置する関係が実現されることが好ましい。
【0052】
次に、以上に説明した装置構成を用いた加工方法について説明する。以下の実施例では、図8に示すフローチャートの順で各ステップが実行される。
【0053】
<準備ステップ>
図5及び図6(A)に示すように、ウェーハ10の面取り部10mに対応する環状吸引溝75を有する保持テーブル27を準備するステップである。
【0054】
図9(A)(B)は、加工対象となるウェーハ10の一例を示すものである。なお、加工対象は、半導体ウェーハの他、LED等の光デバイスが形成された光デバイスウェーハ、電子部品に使用される各種セラミック基板やガラス基板などが考えられる。
【0055】
図9(A)に示すように、ウェーハ10の表面10aには、デバイス11が格子状に配列され、切削予定ライン13に沿って切削加工が施される。図9(B)に示すように、ウェーハ10の裏面10b側を上側にして露出させるとともに、ウェーハ10の表面10aをテープTに貼着する。ウェーハ10を取り囲むようにフレームFをテープTに貼着し、フレームFとウェーハ10が一体となったウェーハユニット8が構成される。なお、本実施例では、デバイス11が形成されるウェーハ10の表面10a側を下側にしてテープTに貼着することとするが、本発明は、デバイス11が形成されるウェーハ10の表面10aを上側に露出して裏面10b側をテープTに貼着される場合にも適用できる。
【0056】
テープTは透明、即ち、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」特性を有することとし、後述する切削予定ライン検出ステップにおいて切削予定ラインの検出を可能としている。テープTは着色されたもであってもよく、伸縮性のある樹脂製のテープにて構成することができる。
【0057】
<載置ステップ>
図6(A)(B)に示すように、ウェーハユニット8のテープTを保持テーブル27上に載置してテープTを介してウェーハ10が保持テーブルに載置された状態にするステップである。この際、図7(A)に示すように、ウェーハ10の面取り部10mが環状吸引溝75に対応する位置に配置されるようにする。
【0058】
<保持ステップ>
図7(A)(B)に示すように、環状吸引溝75に負圧を作用させることでウェーハ10の面取り部10mに貼り付いたテープTを吸引して引き剥がしつつ、テープTを介してウェーハ10を保持面74cにて保持するステップである。
【0059】
この保持ステップにより、図6(B)、図7(B)に示すように、せり上がった接着部位Tbも含め、テープTが保持面74cに密着し、また、テープTを介してウェーハ10が保持面74cに密着した状態となる。
【0060】
<切削予定ライン検出ステップ>
図10に示すように、保持ステップを実施した後、テープTを介して保持テーブル27で保持されたウェーハ10を下側から撮像カメラCで撮像して切削予定ライン(図9(A))の位置を検出するステップである。
【0061】
具体的には、図10に示すように、Y軸移動ブロック83を移動させることで、下方撮像機構82をウェーハ10の下方に位置付け、保持テーブル27の保持部材74、テープTを介して、ウェーハ10の表面10aを撮像するとともに、撮像画像をもとにウェーハ10の切削予定ラインが検出される。
【0062】
<切削ステップ>
図11に示すように、切削ユニット46の切削ブレードB1の位置を、切削予定ライン検出ステップで検出された切削予定ラインの位置に合わせるとともに、切削ユニット46を所定の高さに位置付け、保持テーブル27を加工送り方向(X軸方向)に移動させることで、フルカットによる切削加工が行われ、切削予定ラインに沿って溝が形成される。
【0063】
切削ブレードB1をインデックス送りしてウェーハ10の第1の方向に伸びるすべての切削予定ラインについて切削加工を行った後、保持テーブル27を90度回転させ、同様にウェーハ10の第2の方向に伸びるすべての切削予定ラインについて切削加工を行う。
【0064】
以上のようにして本発明を実現することができる。
即ち、図5乃至7に示すように、
面取り部10mが外周に形成されたウェーハ10にテープTが貼着されるとともに、テープTの外周がフレームFに装着されたウェーハユニット8を保持するためのウェーハユニット8の保持テーブル27であって、
ウェーハ10とウェーハ10の外側のテープTの一部を吸引により保持する保持面74cが形成されるウェーハ保持部74aを備え、
保持面74cには、
保持するウェーハ10の面取り部10mに対応する位置に環状吸引溝75が形成される、
ウェーハユニット8の保持テーブル27とする。
【0065】
また、図5乃至7に示すように、
面取り部10mが外周に形成されたウェーハ10にテープTが貼着されるとともに面取り部10mにテープTが貼り付き、テープTの外周がフレームFに装着されたウェーハユニット8の保持方法であって、
ウェーハ10とウェーハ10の外側のテープTの一部を吸引により保持する保持面74cが形成されるウェーハ保持部74aを備え、保持面74cには、保持するウェーハ10の面取り部10mに対応した位置に環状吸引溝75が形成される保持テーブル27を準備する準備ステップと、
ウェーハユニット8のテープT側を保持テーブル27上に載置してテープTを介してウェーハ10が保持テーブル27に載置された状態にする載置ステップと、
環状吸引溝75に負圧を作用させることでウェーハ10の面取り部10mに貼り付いたテープTを吸引して引き剥がしつつ、テープTを介してウェーハ10を保持する保持ステップと、を備えたウェーハユニット8の保持方法とする。
【0066】
以上によれば、ウェーハ10の面取り部10mにせり上がって貼り付いてしまった接着部位Tbを吸引により引き剥がして解消することができ、ウェーハ10を切削ブレードでフルカットした際にテープTに穴が形成され、この穴を起点としてテープTが破断してしまう恐れを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0067】
2 切削装置
8 ウェーハユニット
10 ウェーハ
10a 表面
10b 裏面
10m 面取り部
11 デバイス
13 切削予定ライン
14 ウォーターカバー
46 切削ユニット
74 保持部材
74a ウェーハ保持部
74b 枠部
74c 保持面
75 環状吸引溝
76 外側吸引溝
77 直線状吸引溝
79 吸引孔
82 下方撮像機構
83 Y軸移動ブロック
B1 切削ブレード
C 撮像カメラ
F フレーム
T テープ
Tb 接着部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12