(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】採血装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/151 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61B5/151
(21)【出願番号】P 2021004748
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓
(72)【発明者】
【氏名】徐 若棋
(72)【発明者】
【氏名】入江 隆史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 公一
(72)【発明者】
【氏名】村上 正浩
(72)【発明者】
【氏名】滝 美樹
(72)【発明者】
【氏名】横川 健
(72)【発明者】
【氏名】保刈 純平
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006184(JP,A)
【文献】特開2019-047893(JP,A)
【文献】特開2019-088391(JP,A)
【文献】特開2021-016581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体のセットされた対象部位の穿刺痕から流出する血液を収容する光透過性の採血管を保持する採血管ホルダと、
前記採血管ホルダについての高さを含む位置を変更する機構と、
前記採血管ホルダの一部を通じて、前記採血管の一部に対し、光を照射する光源と、
前記採血管からの反射光の光強度を検出するセンサと、
前記
採血管ホルダの高さを含む位置を変更しながら、前記対象部位からの前記血液を前記採血管内に採血する際に、前記光強度に基づいて前記採血管内の血液量を導出する制御機構と、
を備
え、
前記光が前記採血管内の血液に照射されている時の前記反射光の光強度と、前記光が前記採血管内の血液に照射されていない時の前記反射光の光強度とを、前記センサが検出することに基づいて、前記採血管内の血液量を導出する、
採血装置。
【請求項2】
請求項1記載の採血装置において、
前記センサは、前記光が前記採血管内の血液に照射されている時の前記反射光の光強度と、前記光が前記採血管内の血液に照射されていない時の前記反射光の光強度とを検出し、
前記制御機構は、前記センサの出力値から、前記光が前記採血管内の血液に照射されている時の前記反射光の光強度となる時間に基づいて、前記採血管内の血液量を導出する、
採血装置。
【請求項3】
請求項1記載の採血装置において、
前記制御機構は、
前記導出した血液量を含むデータを記録および出力し、
前記センサの出力値と前記採血管の高さを含む位置とを関連付けて前記データとして記録および出力する、
採血装置。
【請求項4】
請求項1記載の採血装置において、
前記対象部位の圧迫および解放を行う圧迫機構を備え、
前記制御機構は、前記採血の際に、前記位置の変更に合わせて、前記圧迫および解放を行うように制御する、
採血装置。
【請求項5】
請求項1記載の採血装置において、
前記制御機構は、前記導出した血液量に応じて、前記採血に係わる動作のタイミングを制御する、
採血装置。
【請求項6】
請求項1記載の採血装置において、
前記採血管内に採取される血液が流れる経路に対し、前記光源からの前記光の光路、および前記センサへの前記反射光の光路が、交わらないように、前記光源および前記センサの位置および向きが設定されている、
採血装置。
【請求項7】
請求項1記載の採血装置において、
前記生体のセットされた前記対象部位に対し穿刺する穿刺器を保持する穿刺器ホルダと、
前記穿刺器および前記採血管を含む複数の種類のモジュールにおける、前記穿刺器ホルダおよび前記採血管ホルダを含む複数のホルダを保持するカートリッジと、
を備え、
前記機構は、前記カートリッジにおける選択されたホルダを、前記カートリッジの軸回転を含む移動によって、前記対象部位に対する所定の領域に配置し、前記所定の領域において前記選択されたホルダについての高さを含む位置を変更する、
採血装置。
【請求項8】
請求項1記載の採血装置において、
前記制御機構は、前記生体に応じた条件の設定情報と、前記導出した血液量とに基づいて、前記機構による前記位置の変更を制御する、
採血装置。
【請求項9】
請求項1記載の採血装置において、
前記採血管ホルダの長軸に対し前記採血管の長軸が斜めの関係で保持され、
前記光の光路は、水平方向に配置されている、
採血装置。
【請求項10】
請求項1記載の採血装置において、
前記採血管ホルダの長軸に対し前記採血管の長軸が斜めの関係で保持され、
前記光の光路は、前記採血管の側面に対し垂直となるように、非水平方向に配置されている、
採血装置。
【請求項11】
請求項1記載の採血装置において、
前記採血管ホルダの一部に形成された高さ計測用のマーカと、
前記高さ計測用のマーカに対し光を照射する高さ計測用光源と、
前記高さ計測用のマーカからの前記光の反射光を検知する高さ計測用センサと、
を備え、
前記制御機構は、前記採血管ホルダの高さを含む位置を変更しながら、前記高さ計測用センサの出力値に基づいて、前記採血管ホルダの高さを含む位置を導出する、
採血装置。
【請求項12】
請求項7記載の採血装置において、
前記複数のホルダの各々のホルダの一部に形成された、モジュール判別用のマーカと、
前記モジュール判別用のマーカに対し光を照射するモジュール判別用光源と、
前記モジュール判別用のマーカからの前記光の反射光を検知するモジュール判別用センサと、
を備え、
前記制御機構は、前記カートリッジの軸回転を含む移動に伴い、前記モジュール判別用センサの出力値に基づいて、前記ホルダの種類を識別する、
採血装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
採血装置は、対象者の指等の対象部位から採血を行う装置である。血糖値測定等の自己検査のための採血として実施されることが多い採血方法が、毛細血管採血である。毛細血管採血は、対象部位として例えば指に専用の皮膚穿刺器具(穿刺器と記載する場合がある)を押し当てることで、指の毛細血管を穿刺(言い換えると穿孔)し、穿刺箇所(言い換えると穿刺痕)から流出した血液を採取する方法である。毛細血管採血は、静脈血管採血よりも簡便な採血方法である。しかし、この方法は、確保できる血液量(言い換えると採血量)が比較的少ないため、採血量を十分に確保するためには、採血の際に指を圧迫して絞る等の作業を必要とする。
【0003】
ここで、特許文献1には、採血装置が生体の穿刺対象部位の状態に基づいて、穿刺対象部位に対する採血動作を制御する制御部を備える旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような採血装置は、指からの採血(言い換えると採血作業)の自動化を図ることができ、採血の効率化を図ることができる。この採血装置は、例えば、穿刺器や採血管等の複数のモジュールを保持するカートリッジを備え、カートリッジの位置を変化させて、穿刺器等の選択されたモジュールを指先に押し当てる動作を行わせる。この採血装置は、指の圧迫後に穿刺器で指先を穿刺し、穿刺痕から採血管に血液を採取し、圧迫の解放後に絆創膏で穿刺痕を止血する。この採血装置は、採血の際に、穿刺痕と採血管との相対的距離を変動させる。これにより、穿刺痕より流出する血液の液滴を採血管内に効率的に採取し、穿刺痕での凝固反応を抑制することで、採血量を増大できる等の利点がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1のような採血装置では、被採血者や採血日時等の条件に応じて、単位時間当たりの採血量が異なる。そのため、例えば所望の採血量に対応させて採血の終了や止血の開始のタイミングを検知するには、採血中に、採血管内に採取された血液量をなるべく正確に計測する機能等を備える採血装置が求められる。
【0007】
本発明の目的は、採血装置の技術に関して、被採血者や採血日時等の条件に依らずに、安全かつ簡便に採血を実現でき、採血中に採血量をなるべく正確に計測できる技術を提供することである。上記以外の課題、構成および効果等については、[発明を実施するための形態]において示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち代表的な実施の形態は以下に示す構成を有する。実施の形態の採血装置は、生体のセットされた対象部位の穿刺痕から流出する血液を収容する光透過性の採血管を保持する採血管ホルダと、前記採血管ホルダについての高さを含む位置を変更する機構と、前記採血管ホルダの一部を通じて、前記採血管の一部に対し、光を照射する光源と、前記採血管からの反射光の光強度を検出するセンサと、前記ホルダの高さを含む位置を変更しながら、前記対象部位からの前記血液を前記採血管内に採血する際に、前記光強度に基づいて前記採血管内の血液量を導出する制御機構と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、採血装置の技術に関して、被採血者や採血日時等の条件に依らずに、安全かつ簡便に採血を実現でき、採血中に採血量をなるべく正確に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図9】二本採取工程として第1種採血工程のフロー図。
【
図10】二本採取工程として第2種採血工程のフロー図。
【
図11】採血装置への指の固定方法のその1を示す図。
【
図12】採血装置への指の固定方法のその2を示す図。
【
図15】上下移動の際の指と穿刺器の位置関係の例を示す図。
【
図16】採血管の高さおよびカフ圧力の時間変化を示す図。
【
図17】血液量用光センサから採血管を見た位置関係を示す図。
【
図18】血液量用光センサと採血管ホルダとの位置関係の上面図。
【
図19】血液量用光センサと採血管ホルダとの位置関係の側面図。
【
図20】変形例における、血液量用光センサと採血管ホルダとの位置関係の側面図。
【
図21】血液量用光センサと採血管内の血液量との位置関係の例を示す図。
【
図22】血液量用光センサの出力値と採血管の高さとの関係を示す図。
【
図23】変形例における、複数の血液量用光センサと採血管ホルダとの位置関係の側面図。
【
図24】実施の形態2の採血装置における、高さ計測用光センサと穿刺器ホルダおよびマーカとの位置関係の側面図、および、高さ計測用光センサの出力値とホルダの高さとの関係を示す図。
【
図25】実施の形態3の採血装置における、カートリッジ、ホルダ、モジュール判別用光センサ、およびマーカの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、各構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、および範囲等を表していない場合があり、本発明は、図面に開示された位置、大きさ、形状、および範囲等には限定されない。実施の形態は、例示であって、適宜に説明が省略される。特に限定しない場合、各構成要素は単数でも複数でもよい。説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリ等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。プロセッサは、所定の演算が可能な装置や回路で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC等が適用可能である。プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてインストールされてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体でもよい。プログラムは、複数のプログラムモジュールから構成されてもよい。各種の要素について識別するためのデータや情報は、識別情報、識別子、ID、名、番号等の表現で説明する場合があるが、これらの表現は互いに置換可能である。
【0012】
<実施の形態1>
図1~
図23を用いて、本発明の実施の形態1の採血装置について説明する。血液検査の実施のためには、対象者からの採血が必須である。そのため、誰でも安全かつ簡単に採血ができることが好ましい。特に、複雑な操作・作業を要せずに簡単で迅速に採血ができることが好ましい。それを踏まえ、本発明者は、採血(言い換えると体液捕集)の自動化や効率化を種々検討した結果、実施の形態の採血装置を想到した。
【0013】
図1等に示す実施の形態1の採血装置1は、対象者の生体の対象部位(本例では指先)の穿刺痕より流出する体液(本例では血液)を捕集する容器(本例では採血管。例えば血算用採血管21)の高さを含む3次元空間内の位置を変化させる機構(
図2の駆動機構12等)を備える。採血装置1は、その容器(容器内に捕集される体液を含む)に対し光を照射する光源と、その照射光に基づいた容器からの反射光を検知する検知機構(本例では
図2の血液量用光センサ5)とを備える。採血装置1は、対象部位の穿刺痕より流出する体液を容器内に捕集する際に、容器の高さ位置を変化させることで、捕集される体液量(本例では採血量)を増大させる。採血装置1は、その捕集の際に、容器の高さを含む位置と、反射光の光強度を表す出力値とを含む情報を、同時に関連付けて記録し、容器内の体液量を導出・計測し、データとして出力する。
【0014】
図2等に示すように、採血装置1は、カートリッジ11(言い換えると共通台)に装着される複数の種類のモジュール20を有する。本例では、複数の種類のモジュール20として、穿刺器21と、血算用採血管22や生化学・免疫用採血管23と、ガーゼ24と、シール(言い換えると絆創膏)25とを有する。穿刺器21は、対象者の生体の対象部位(例えば指先)を穿刺する穿孔針を含む皮膚穿刺器具である。採血管(22,23)は、対象部位の穿刺痕より流出する体液である血液を捕集する容器である。ガーゼ24は、穿刺痕に接触して体液を吸着する。シール25は、穿刺痕を封止・止血する。
【0015】
採血装置1は、カートリッジ11等の駆動制御に基づいて、所定の位置(指置き場131)にセットされた対象部位である指先と各モジュール20との水平面上の相対位置を変化させ、かつ、対象部位とモジュール20との垂直方向(言い換えると高さ方向)の相対位置を変化させる。採血装置1は、対象部位の一部を圧迫するための圧迫機構(本例ではカフ機構130)を備える。採血装置1は、指の圧迫とともに、モジュール20の上下移動を制御することで、採血管に採取される血液量を増大させる。採血装置1は、採血管(21,22)のホルダ(111,112)の上下移動の際に、血液量用光センサ5による検出に基づいて、採血管内の採血量を導出する。採血装置1の制御機構16(
図2)は、操作者が入力した動作内容等の情報や、血液量用光センサ5を用いて導出した体液量に基づいて、駆動機構12や圧迫機構の動作を制御する。例えば、制御機構16は、現在の計測値である血液量が、指定された所定の量以上になった場合・時に、採血の動作を終了させる。
【0016】
[採血装置]
まず、
図1および
図2を用いて、実施の形態1の採血装置1の基本構成を説明する。
図1は、実施の形態1の採血装置1の外観の構成を示す。
図2は、実施の形態1の採血装置1のケース(言い換えると筐体)100を外した状態での内部構成を示す。なお、説明上、方向および座標系として、(x,y,z)を示す。x方向とy方向は、水平面を構成する直行する2つの方向であり、z方向は、それらに垂直な鉛直方向である。特に、x方向は、対象指が配置される方向に対応した第1水平方向であり、y方向は、第2水平方向である。
【0017】
採血装置1は、ケース100、カートリッジ11、カートリッジホルダ122(
図2)、カートリッジ用容器101、駆動機構12(
図2)、カフ機構指固定部13、圧力調整機構17(
図2)、指先用光センサ4(
図2)、血液量用光センサ5(
図2)、および制御機構16等を備える。
【0018】
カートリッジ11は、言い換えるとモジュール装着部、回転台、共通台であり、複数の種類のモジュール20(21~25)を装着する。カートリッジ11は、複数の種類のモジュール20、本例では5種類のモジュール20として、穿刺器21と、血算用採血管22(第1種採血管とも記載する)と、生化学・免疫用採血管23(第2種採血管とも記載する)と、ガーゼ24と、シール25とを有する。各モジュール20は、操作者によってカートリッジ11の所定の位置に装着可能である。カートリッジホルダ122(
図2)には、カートリッジ11がセットされ、カートリッジ11を可動に保持する部分である。
【0019】
駆動機構12(
図2)は、制御機構16からの制御に基づいて、カートリッジ11やモジュール20等を移動させる。駆動機構12の動力源には、外部電源や内蔵電池等の電気的なエネルギーの他、ぜんまい等の機械的な動力源を使用してもよい。ぜんまいを動力源とした場合は、電気の供給が難しい地域でも使用可能である。
【0020】
駆動機構12は、
図2の回転方向駆動機構120と垂直方向駆動機構121とを有する。回転方向駆動機構120は、カートリッジホルダ122を介してカートリッジ11をカートリッジ用容器101内で回転させる。この回転は、z方向に対応するz軸が回転軸であり、水平面での回転である。このカートリッジ11の回転移動により、指置き部131の採血窓1311の直下の領域R1の位置に、選択された1つのモジュール20(21~25)が配置される。
【0021】
垂直方向駆動機構121は、押し棒1211を備え、押し棒1211を介して、採血窓1311の直下の領域R1の位置に配置されたモジュール20を、垂直方向であるz方向の上方に移動させることで、対象の指(
図11での中指153)に近付けるか、もしくは押し付ける。モジュール20が穿刺器21である場合、穿刺器21の上端を指の対象箇所に押し付けることで、穿刺針によって対象箇所を穿刺する。モジュール20が採血管(血算用採血管22または生化学・免疫用採血管23)である場合、その採血管を指に近付けることで、穿刺箇所から出血した血液を周囲に飛散させずに回収・捕集する。モジュール20がガーゼ24である場合、ガーゼ24を指に押し付けることで、余分な血液をふき取る。モジュール20がシール25である場合、シール25を指に押し付けることで、穿刺箇所を止血する。
【0022】
カフ機構指固定部13は、カフ機構130と、指置き部131とを有して構成されている。カフ機構130は、採血対象である指の周囲を締め付けるためのカフを備える。指置き部131は、採血対象の指先を置くための部分である。さらに、指置き部131には、使い捨ての指置き用板部品1312が、指先と接触する箇所に設置される。指置き用板部品1312は、採血用の空隙である採血窓1311を有する。
【0023】
圧力調整機構17(
図2)は、カフ機構130の圧力を調整するための機構である。圧力調整機構17は、カフ機構130のカフの内圧を計測するためのカフ内圧用圧力センサ171と、カフ内圧を制御するためのカフ用バルブ172およびカフ用ポンプ173とを有して構成される。圧力調整機構17は、カフの内圧を制御することで、採血対象の指の締め付け圧力を調整できる。
【0024】
指先用光センサ4(第1センサとも記載する)は、指置き場131にセットされる指先からの反射光を検知する光センサである。採血装置1は、これにより、指置き場131における指先の状態を把握できる。
【0025】
血液量用光センサ5(第2センサとも記載する)は、所定の領域R1に配置されている採血管(血算用採血管22や生化学・免疫用採血管23)からの反射光を検知する。採血装置1は、モジュール20の上下移動の制御に伴い、血液量用光センサ5の出力値に基づいて、採血中の血液量を略リアルタイムで計測する。実施の形態1で、1個の血液量用光センサ5は、所定の位置に設置されている。本例では、
図2のように、血液量用光センサ5は、スタンド501に固定されている。
【0026】
制御機構16(
図2)は、電子回路基板等で構成され、駆動機構12や圧力調整機構17等の動作を制御する機能を備える。制御機構16は、プロセッサ、メモリ、通信インタフェースや入出力インタフェース、およびバス等を備える。制御機構16は、プロセッサによってプログラムに従った処理を実行することで、各種の機能を実現する。
【0027】
採血装置1には、外部の入出力器が接続可能である。入出力器としては、カメラまたはカメラ画像を取り込むためのデバイスや、制御機構16に操作者による指示や設定等の入力を行うための入力デバイス、制御機構16からの出力結果を表示するための表示デバイス、外部のサーバやスマートフォン等の装置と通信するための通信デバイス等が挙げられる。入出力器として、PCやタブレット端末やスマートフォン等を用いてもよい。また、採血装置1に入出力器が一体で実装されてもよい。
【0028】
採血装置1の制御機構16は、通信インタフェース装置を介して、外部装置、例えばPCやサーバ等と通信し、出力データ(少なくとも対象者の計測された採血量を含むデータ)を送信できる。外部装置は、その出力データを受信する。採血装置1は、基本的な用途では、少なくとも、対象者の採血量を計測・算出して、データとして記憶および出力する機能を有する。これに限らず、採血装置1は、制御上で把握している、光センサ5の出力値(光強度の時間変化)と、採血管等のモジュール20の高さ位置とを含む各情報を、同時に連動、関連付けて、データとして記憶および出力してもよい。また、採血装置1を構成要素として、採血管理等の機能を有するコンピュータシステムが構成されてもよい。例えば、外部装置であるサーバは、血液検査の採血管理等の機能を有する。
【0029】
採血装置1は、制御機構16に基づいて実現される機能として以下の機能を有する。採血装置1は、指先位置特定機能と、血液量計測機能とを有する。採血装置1は、これらの機能を用いて、指先設置位置や採血量を把握し、指先設置位置や採血量の情報に応じて、自動的に動作を変更等制御することができる。指先位置特定機能は、指先用光センサ4の出力値に基づいて指先設置位置等を特定する機能である。血液量計測機能は、血液量用光センサ5の出力値および駆動機構12による動作量(モジュール20等の高さ位置)に基づいて、採血管内に採取された血液量を計測する機能である。
【0030】
採血装置1は、採血中に採血量を高めるための採血管等の上下移動動作中に、血液量用光センサ5を用いた後述の仕組みで、略リアルタイムで採血管内の採血量を計測できる。また、採血装置1は、その採血量の把握に応じて、採血の終了や止血の開始等のタイミングについての自動的な制御を行う。例えば、採血装置1は、計測された採血量が、設定された所望の量に達した時に、自動的に迅速に採血動作を終了させて止血を開始する。これにより、採血の効率化が実現できる。
【0031】
[光源およびセンサ]
図2で、血液量用光センサ5は、例えば採血装置1の筐体の下部から鉛直方向に延在するように設けられたスタンド501の所定の位置に固定されている。この血液量用光センサ5の位置や向きは、予め採血装置1における固定的な位置や向きとして設計・設定されている。この血液量用光センサ5の位置および光軸の向きは、後述するが、カートリッジ用容器101の所定の領域R1の位置に配置される採血管に向けて光を照射できる位置および向きとして設計・設定されている。
【0032】
なお、変形例として、採血装置1における血液量用光センサ5の位置や向きを調節できる機構を備えてもよい。例えば、スタンド501において、血液量用光センサ5の高さ位置を上下に移動して調節できる構成や、血液量用光センサ5の光軸の向きを可変調節できる構成としてもよい。
【0033】
実施の形態1では、光源は、光センサである血液量用光センサ5に内蔵されている。言い換えると、光センサである血液量用光センサ5は、発光部と受光部とを内蔵したセンサである。これに限らず、採血装置1において、光源と受光部(言い換えると検知機構)とが別の位置に設置されている構成としてもよい。その場合、光源が配置される位置および向きは、上記カートリッジ用容器101の所定の領域R1のモジュール20に対し光を照射できる位置および向きとして設計・設定される。
【0034】
実施の形態1では、血液量用光センサ5は、例えばフォトダイオード等で構成される。血液量用光センサ5等の光センサは、対象部位からの反射光の光強度を検出できるセンサであればよく、詳細を限定しない。血液量用光センサ5としては、所定の波長域の光を出射および受光するセンサを適用できる。血液量用光センサ5として、赤外線センサ等を適用してもよい。
【0035】
血液量用光センサ5は、採血管(22,23)の一部に対し光を照射し、採血管の一部からの反射光の強度を検出できるセンサである。反射光は、詳しくは、採血管内の血液等の物質からの反射光を含む。採血管の主要部は、光透過性部材で構成されているので、血液量用光センサ5からの照射光や物質からの反射光を透過する。血液量用光センサ5は、検出した光強度を表す電気信号を出力する。制御機構16は、その電気信号を入力して処理し、光強度(あるいは対応する輝度等)の情報を得る。血液量用光センサ5は、これに限らず、簡易なセンサとしては、反射光の有無を2値で検出できるセンサ等としてもよい。例えば、照射光が血液に照射され反射して反射光有りの場合には値1、照射光が血液に照射されずに反射光無しの場合には値0となる。
【0036】
[カートリッジ]
図3を用いて、カートリッジ11の構成例を説明する。
図3は、カートリッジ11の組図であり、5種類のモジュール20(21~25)が装着される様子を模式的に示す。カートリッジ11は、5種類のホルダとして、穿刺器21を保持する穿刺器ホルダ111と、血算用採血管22を保持する血算用採血管ホルダ112と、生化学・免疫用採血管23を保持する生化学・免疫用採血管ホルダ113と、ガーゼ24を保持するガーゼホルダ114と、シール25を保持するシールホルダ115とを有する。それらのホルダ(111~115)は、カートリッジケース110内における対応する所定の位置の保持穴(301~305)に挿入されて上部で架設されるようにして保持される。例えば、穿刺器ホルダ111は保持穴301に装着される。各保持穴は、貫通穴であり、ホルダの側面を隠し保護するように円筒部分を有する。各保持穴の中心は、カートリッジ11の回転軸(図示の一点鎖線)を中心とした円周(図示の破線矢印)上にある。また、各保持穴の開口の径に対し、対応するホルダ(111~115)の上部のフランジの径の方が大きい。そのため、各ホルダ(111~115)は、各保持穴から落下せずに、フランジで架設されるようにして定位置で保持される。また、各モジュール20のホルダは、対応する保持穴に対し、所定の向きで設置される。例えば、血算用採血管22のホルダ112は、菅の口が傾いている方向(後述の開口が設けられている方向)が、円周の径方向での外側向きとなるように設計されている。
【0037】
穿刺器21は、穿刺針と穿刺針を内蔵するケースとを有して構成されている、一回使用の皮膚穿刺器具である。穿刺器21の構造は公知であるため詳細説明を省略する。穿刺器21の先端が指に押し付けられると、穿刺針が一瞬飛び出して、指の皮膚および毛細血管を穿刺する。
【0038】
血算用採血管22や生化学・免疫用採血管23は、血液採取用の容器である。採血管の口(言い換えると開口部)が指の穿孔箇所に押し付けられることで、穿孔箇所から出血した血液が採血管内に採取・捕集される。血算用採血管22は、内面に抗凝固剤が塗布された採血管であり、採血後の血液の凝固反応を抑制する。生化学・免疫用採血管23は、分離剤を内蔵した採血管であり、採血後に遠心力がかけられることで比重差から血球と血清との分離ができる。
【0039】
ガーゼ24は、体液を吸着する性質を持つ布であり、指に押し当てられることで、余分な血液を穿孔箇所からふき取る。シール25は、例えば粘着性シートの中心に吸収性パッドを備えた絆創膏であり、指の穿孔箇所を覆って封止する。シール25は、シールホルダ115へのセットの際には、粘着面を上向きにして取り付けられる。
【0040】
駆動機構12による駆動に基づいて、モジュール20(例えば穿刺器21)とそれに対応するホルダ(例えばホルダ111)とが一体で、回転方向や上下方向等に移動する。駆動機構12は、例えばホルダを対象として駆動するが、ホルダに固定されているモジュール20も一体で移動する。
【0041】
[採血工程]
図4~
図10は、採血装置1を用いて指からの採血を行う採血工程(blood sampling process)のフロー図である。このフロー図は、採血装置1による処理や動作、および操作者による操作や作業を含む。フロー図中で、白抜きのブロックは、操作者の操作や動作を示し、二重枠線(およびドットパターン)のブロックは、採血装置1の処理や動作を示す。処理や動作の主体は主に制御機構16である。この採血工程は、概略的に複数の工程から構成される。この採血工程は、(1)
図4の動作チェック工程P1、(2)
図5の指セット工程P2、(3)
図6の穿刺工程P3、(4)
図7の採血工程P4、(5)
図8の止血工程P5を有し、これらが順に実施される。また、
図7の採血工程P4は、詳しくは例えば、
図9の二本採取工程としての第1種採血工程P41と、
図10の二本採取工程としての第2種採血工程P42とを有する。採血装置1の操作は、本例では対象者(言い換えると被採血者)とは別の操作者(言い換えると採血者)が行うものとするが、これに限らず、対象者が自ら操作者として操作することも可能である。
【0042】
[(1)動作チェック工程P1]
図4で、動作チェック工程P1は以下の通りである。この工程は、概略的に、ステップS1a~S1fを有する。まず、ステップS1aで、採血装置1の電源がオンにされる。すると、
図2の駆動機構12の回転方向駆動機構120および垂直方向駆動機構121がプレ動作として動作し、各駆動機構部分の動作確認が実施される。各駆動機構部分としては、モータやアクチュエータ等がある。この動作確認で異常がある場合(N)には動作中止とされ、異常が無い場合(Y)にはステップS1bに移る。
【0043】
ステップS1bで、操作者は、カートリッジ用容器101の蓋を開けて、カートリッジ11をカートリッジホルダ122にセットする。カートリッジ11が正常にセットされた後、操作者は、所定のボタンを押す。採血装置1には操作用の各種のボタンが設けられている。その後、ステップS1cに移る。
【0044】
ステップS1cで、採血装置1は、カートリッジ11のチェックを行う。この際、駆動機構12の回転方向駆動機構120および垂直方向駆動機構121が動作し、カートリッジ11の
図3の各モジュール20(21~25)の各ホルダ(111~115)が異常無く動作することが確認される。動作に異常が無い場合(Y)、操作者は、入出力器から制御機構16に対し、被採血者のID等の情報を入力する。操作者は、所望の採血量等を設定・入力してもよい。採血装置1は、被採血者ID毎の採血条件を、制御機構16内のメモリに記録する。被採血者毎に異なる採血条件を設定できる。この採血条件は、例えば指を圧迫する圧力や、穿刺の際の穿刺条件等がある。被採血者ID毎の採血条件がメモリに記録されていない場合、もしくは採血条件を変更する場合には、操作者は、採血条件を入出力器より入力する。採血条件が設定された後、あるいは採血条件に変更が無い場合には、指セット工程P2に移る。
【0045】
[採血条件]
ステップS1dは、採血条件を入力するステップである。実施の形態1で、採血条件については以下の通りである。ステップS1dでは、採血条件として、(1)採血管の種類、(2)穿刺時の条件、(3)採血時の条件が入力・設定される。
【0046】
(1)採血管の種類は、第1種採血管としての血算用採血管22と、第2種採血管としての生化学・免疫用採血管23とがある。例えば、採血管種類毎の有無が1/0で設定される。
【0047】
(2)穿刺時の条件は、共通採血条件として、穿刺前のカフによる圧迫時間(Tc1とする)および穿刺後のカフによる圧迫時間(Tc2とする)と、その穿刺の際のカフの圧力(Pcとする)とがある。
【0048】
(3)採血時の条件は、第1種採血管である血算用採血管22での採血時の条件(ステップS1e)と、第2種採血管である生化学・免疫用採血管23での採決時の条件(ステップS1f)とがある。第1種採血管での条件としては、採血量(V1とする)と、採血時におけるカフの圧迫・解放の繰り返し数(N1とする)と、カフの圧迫前の待機時間(Tw1とする)と、カフの圧迫中の圧迫時間(Tp1とする)と、カフの解放時間(Tr1とする)と、カフの圧迫中の圧力(Pc1)とがある。同様に、第2種採血管での条件としては、採血量(V2とする)と、採血時におけるカフの圧迫・解放の繰り返し数(N2とする)と、カフの圧迫前の待機時間(Tw2とする)と、カフの圧迫中の圧迫時間(Tp2とする)と、カフの解放時間(Tr2とする)と、カフの圧迫中の圧力(Pc2とする)とがある。必要に応じてこれらの入力・設定の終了後、指セット工程P2に移る。
【0049】
また、各種の採血管での採血時の条件の1つとして以下も設定可能である。すなわち、後述するが、採血時に採血量を多くするためにモジュール20等を上下移動動作させる機能に関する条件として、動作時間と移動距離とがある。動作時間は、採血管種類毎に、圧迫前の待機時の動作時間(Aw1,Aw2とする)と、圧迫中の動作時間(Ap1,Ap2とする)と、圧迫後の解放時の動作時間(Ar1,Ar2とする)とがある。これらの添え字の数字は第1種と第2種との区別を示す。移動距離は、モジュール20の上下移動の距離であり、採血管種類毎に移動距離(D1,D2とする)がある。
【0050】
[(2)指セット工程P2]
図5は、指セット工程P2を示す。指セット工程P2での動作については、後述の
図11および
図12に示す。指セット工程P2は、概略的にステップS2a,S2bを有する。ステップS2aで、操作者は、所定のボタンを押す。被採血者は、指置き部131に採血対象の指(例えば
図11の中指153)をセットする。被採血者および操作者は、指先位置が適切(OK)かどうかを確認する。この確認の際には、指先用光センサ4を利用できる。指先位置がOKでない場合には調整される。指先位置がOKになった後、操作者は、カフ機構指固定部13を押し込む。この動作は、
図11から
図12への遷移で示される。カフ機構指固定部13における手首側にある軸を中心に、指および指置き部131の側が下側に回動する。押し込み後、操作者は、指先位置が適切かを確認し、OKである場合には、所定の開始ボタンを押す。
【0051】
[指セット工程-動作]
図11および
図12は、指セット工程P2での動作例として、採血装置1のカフ機構指固定部13において中指153を固定する場合の概要を示す。本例では、中指153からの採血とするが、採血対象の指は薬指や人差し指等でもよい。
【0052】
始めに、被採血者は、中指153の指先を指置き部131に置く。この際、採血装置1は、指先用光センサ4の出力値に基づいて、指先が置かれた位置が適切かを確認する。指先用光センサ4は、指置き部131を下から覗き込むような位置および向きで配置されている。指先用光センサ4からは、照射光に対する反射光の検出に基づいて、
図11の吹き出しに示すように、指置き部131の他、指置き用板部品1312や採血窓1311を見ることができる。指先用光センサ4としては、カメラを適用してもよい。その場合、指先用光センサ4は、指置き部131の方を撮像した画像を得る。採血装置1は、指先用光センサ4による検出に基づいて、採血窓1311から覗いて見える指先の固定や位置等の状態についての可否を判断する。なお、吹き出しで示しているように、指先の部位に対応させて、リング状のテープ157を張っておき、そのテープ157のリングの中心と、採血窓1311の中心とを合わせるようにしてもよい。これにより、指先位置のより正確な位置合わせが可能である。この指先位置確認は、操作者による目視で行ってもよいし、採血装置1による指先用光センサ4を用いた画像認識技術等によって自動的に行ってもよい。
【0053】
指先用光センサ4としては、光を利用した変位センサを適用してもよい。指先用光センサ4からの出力光が採血窓1311の中心に照射されるように、予め指先用光センサ4の位置および向きが設定される。これにより、採血装置1は、指先からの反射光の強度から、指先位置等の可否を確認できる。また、テープ157として、指先用光センサ4からの照射光を反射する特性を持つテープを使用してもよい。これにより、指先位置等の可否を精度良く決定できる。
【0054】
図11のように指先のセットが完了した後、
図12のように、被採血者は、カフ機構指固定部13を図示の矢印の方向に回動するように押し込む。この押し込みによって、機械的な仕組みで、カフ機構130のカフが指周りを締め付けるように閉じる。
図12の状態では、カフ機構130のカフが中指153の一部の周囲を覆っている。カフ機構指固定部13の位置および回動の状態が
図11から
図12のように変わることで、手15における指先、甲、および手首の間の高度差が大きくなる。これにより、採血時に指先から出血する血液の量を増大させることができる。
【0055】
指セット工程P2の完了後、操作者が入出力器を介して開始指示を入力する。これに応じて、採血装置1は、
図6の穿刺工程P3に移る。
【0056】
[(3)穿刺工程P3]
図6は、穿刺工程P3を示す。穿刺工程P3は、概略的にステップS3a,S3bを有する。穿刺工程P3での動作例については
図14等に示される。ステップS3aで、採血装置1は、圧力調整機構17により、カフ機構130のカフの内圧を上げ、採血対象の中指153の一部を圧迫して指先に血液を集める。詳しくは以下である。採血装置1は、採血を開始すると、開始表示ランプ(例えばLED等で構成される)をオンにし、指圧迫用ポンプをオンにし、指圧迫用バルブを閉じる。採血装置1は、カフの圧力が、設定された圧力(Pc)になるまで待つ。その圧力(Pc)になった後、採血装置1は、設定された時間(Tw)[sec]で穿刺前圧迫を行う。ステップS3bで、採血装置1は、穿刺表示ランプをオンにし、駆動機構12のアクチュエータをオンにして、穿刺に伴う上下移動動作を行わせる(後述の
図14等)。採血装置1は、穿刺工程P3の完了後、採血工程P4に移る。
【0057】
[穿刺工程P3-動作]
図13は、採血装置1の上面図であり、指置き場131の採血窓1311と、カートリッジ11の各モジュール20(21~25)との位置関係等を示す。
図2の回転方向駆動機構120により、カートリッジ11は、軸1201を中心に矢印で示す方向に回転する。この回転により、各モジュール20は、カートリッジ11の円周(図示の破線矢印)上で回動する。この回転により、採血窓1311の直下の所定の領域R1の位置に、選択された1つのモジュール20(21~25)を配置することができる。以下の例(
図14)では、所定の領域R1に穿刺器21のホルダ111が配置される場合を説明する。
【0058】
なお、本例では、中指153における第一関節から根本までの範囲が圧迫される。この範囲は、毛細血管が密集する範囲である。このような範囲を圧迫する方が、より多くの血液を指先に集められるため、圧迫範囲として好適である。
【0059】
採血装置1は、カフでの圧迫と並行して、
図2の回転方向駆動機構120により、カートリッジ11を回転させ、採血窓1311の直下の領域R1の位置に、モジュール20としてまず穿刺器21(およびそれに対応するホルダ111)を配置するように動かす。
【0060】
図14は、側面から見た状態(x-z面に相当する)で、穿刺直前の中指153の指先と穿刺器21およびホルダ111等との位置関係を示す。採血装置1は、中指153の圧迫中に、
図2の垂直方向駆動機構121により、ホルダ111を中指153の指先があるz方向の上方に押し上げる。言い換えると、この動作は、上移動動作であり、例えば穿刺器21の上端を下限位置Z1から上限位置Z2まで移動させる動作である。これにより、穿刺器21の上端が、採血窓1311から覗いている中指153の指先の下側の部位に押し付けられ、穿刺器21の穿刺針によって穿刺箇所が穿刺される。穿刺後、ホルダ111がz方向で下方に押し下げられる。言い換えると、この動作は、下移動動作であり、例えば穿刺器21の上端を上限位置Z2から下限位置Z1まで移動させる動作である。
【0061】
制御機構16による駆動制御に基づいて、モジュール20である血算用採血管21とそれに対応するホルダ111とが一体で、所定の範囲である下限位置Z1から上限位置Z2までの範囲内で上下移動する。なお、モジュール20およびホルダの高さ位置に関する、絶対座標としての把握に関しては、予め所定の位置が基準として設定されている。例えば、ホルダまたはモジュール20の上端が下限(例えば下限位置Z2)にある場合の位置を、高さ基準位置として0の位置としてもよい。ホルダまたはモジュール20の他の箇所、例えば下端が下限にある場合の位置を高さ基準位置として0の位置としてもよい。採血装置1の筐体の底面等の位置を高さ基準位置として0の位置としてもよい。
【0062】
[(4)採血工程P4]
図7は、採血工程P4の概要を示す。採血工程P4は、ステップS4a,S4b,S4cを含む。ステップS4aは、二本採取工程として第1種採血管および第2種採血管での採血工程である。ステップS4bは、一本採取工程として第1種採血管での採血工程である。ステップS4cは、一本採取工程として第2種採血管での採血工程である。採血工程P4の内容は、動作チェック工程P1で入力・設定された採血管の条件に応じて、ステップS4aの二本採取工程と、ステップS4b,S4cの一本採取工程との各採血工程に分かれる。二本採取は、第1種採血管と第2種採血管との両方で採血するものであり、一本採取は、第1種採血管と第2種採血管との選択された一方で採血するものである。本例では、二本採取の場合について説明する。採血工程P4の二本採取工程の詳細は、
図9および
図10で示され、動作例については
図14以降で示される。
【0063】
[(4-1)二本採取工程]
図9は、ステップS4aの二本採取工程のうちの、第1種(血算用)採血管の採血工程(P41とする)を示す。この採血工程P41は、概略的に、ステップS41a,S41b,S41cを有する。ステップS41aで、採血装置1は、カートリッジ11を回転させ、指置き場131の直下の所定の領域R1の位置に血算用採血管22のホルダ112を配置する。採血装置1は、穿刺後の圧迫を指定の時間で行い、第1種採血管の表示ランプをオンにする。採血装置1は、第1種採血管への採血を、複数回の上下移動動作に分けて、1回ずつ順に実施する。その回数が繰り返し回数Nである。最初、N=1に設定される。採血装置1は、回毎に、採取された血液量Vや、繰り返し回数Nを確認する。採血装置1は、血液量Vが、条件で指定された血液量V1未満の場合(Y)には、回毎の採血動作を同様に繰り返す。血液量Vが血液量V1以上になった場合、採血工程P42に移る。また、採血装置1は、繰り返し回数Nが、指定された回数N1になった場合、採血工程P42に移る。その後、採血装置1は、各回の上下移動を伴う採血動作の際に、カフ機構130を用いたカフ動作を行うべきか、第1種採血管の上下動作を行うべきかを判断し、カフ動作の場合にはステップS41bへ、上下動作の場合にはステップS41cへ進む。採血装置1は、例えばカフ動作と上下動作とを交互に行う。
【0064】
ステップS41bでは、採血装置1は、指定の圧迫前待機時間(Tw1)後、圧迫表示ランプをオンにし、カフ圧力が指定の圧力(P1)になるまで圧力を上げ、そのカフ圧力で指定の圧迫時間(Tp1)の間、指先の圧迫を行う。その後、採血装置1は、圧迫表示ランプをオフにし、解放表示ランプをオンにし、指定の開放時間(Tr1)で指先を開放する。これにより、1回のカフ動作が終了する。
【0065】
ステップS41cでは、採血装置1は、指定の上下移動前時間(Aw1)の後、駆動機構12により、採血時の上移動動作を行う。すなわち、採血装置1は、第1種採血管を下限位置Z1から上方へ所定の速度で上昇させる。採血装置1は、この上移動動作の際、後述の仕組みで、その時に第1種採血管内に採取されている血液の量を検出・計測する。採血装置1は、この上移動の移動距離Dが、指定の移動距離D1(上限位置Z2に達する距離)になるまで同様に動作させる。上限位置Z2では、第1種採血管の上端の口が指先に接触する(
図14)。採血装置1は、移動距離D1で上限位置Z2になった状態を、指定の接触時間(Ap1)の間、維持する。この間、出血した血液が第1種採血管内に捕集される。その後、採血装置1は、駆動機構12により、採血時の下移動動作を行う。すなわち、採血装置1は、第1種採血管を上限位置Z2から下方へ所定の速度で下降させ、下限位置Z1に戻す。採血装置1は、第1種採血管が指から乖離した状態を、指定の乖離時間(Ar1)の間、維持する。
【0066】
上記ステップS41bやステップS41cの後、1回の採血動作が終了したので、採血装置1は、繰り返し回数Nを1増加させ、血液量Vの確認に戻り、次の回を同様に制御する。
【0067】
[(4-2)動作]
採血装置1は、
図2の回転方向駆動機構120により、カートリッジ11を回転させ、採血窓1311の直下の領域R1の位置に血算用採血管22を配置する。続いて、採血装置1は、垂直方向駆動機構121により、血算用採血管ホルダ112を中指153の指先があるz方向の上方に押し上げることで、血算用採血管22の上端の口を中指153の穿刺箇所に近付ける。指先の穿刺箇所から出血した血液が血算用採血管22の口に触れると、口の濡れ性により、血液が血算用採血管22内に入る。
【0068】
図15は、上記第1種採血工程P41での動作例として、指先と血算用採血管22との位置関係等の遷移例を示す。
図15の(A)~(D)は、採血開始からの4つの時点(0秒、2秒、4.5秒、7秒)における指先と血算用採血管22との位置関係や指先からの血液の様子を示す。(A)は、開始から0秒の状態を示し、血算用採血管22が下方位置Z1にあり指先には触れていない。(B)は、2秒の状態を示し、血算用採血管22が上昇して、指先から血液156が液滴として出ている。(C)は、4.5秒の状態を示し、血算用採血管22が上方位置Z2にあり指先からの血液156の液滴が口の中に捕集されている。(D)は、7秒の状態を示し、血算用採血管22が下降して下方位置Z1に戻っている。なお、本例では、血算用採血管22およびホルダ112の高さ位置は、血算用採血管22の口の上端を基準として、下方位置Z1や上方位置Z2を示している。上記のような上下移動動作の制御によって、指先から採血管内に捕集できる血液量を多くすることができる。
【0069】
[(4-3)動作方法]
図16を用いて、採血量を増大させる効果がある、指先圧迫方法および採血管上下移動動作方法等の詳細を説明する。
図16のグラフは、
図15の例に対応したグラフであり、(a)のグラフは、採血時のカフの内圧(P[kPa]で表す)の時間変化を示し、(b)のグラフは、血算用採血管22の高さ位置(Z[mm]で表す)の時間変化を示す。(a)で、カフの内圧Pは、例えば、圧迫時に90kPaで5秒の時間1601と、解放時に0kPaで2.5秒の時間1602との合計で7.5秒の周期1600で変化する。ここでの圧力は大気圧との差圧である。一方、このようなカフ内圧制御に合わせて、採血管も、z方向の高さ位置の範囲(下限位置Z1から上限位置Z2までの範囲)間での例えば5mmの移動距離での上下移動を7秒の周期1610で変化する。
【0070】
指先の圧迫直後である0秒の時点ta(
図15での(A))では、指先から出血する血液は少ないが、カフで指先を圧迫することにより指先に血液が集まる。これにより、2秒の時点tb(
図15での(B))では、穿刺箇所より出血した血液156が指先に液滴を形成する。カフによる圧迫を続けることで、血液156の液滴はさらに大きくなる。カフの圧迫終了直前に、4.5秒の時点tc(
図15での(C))では、血算用採血管22の口を指先に近付け、血液156の液滴を血算用採血管22に接触させる。接触により、血液156の液滴の一部は血算用採血管22の側面を伝って底に落ち、一部の血液は指先と血算用採血管22の口との間に残る。接触後、カフの内圧を0kPaにして指先を圧迫から解放する。この操作により、締め付けられていた指の血管が開くため、血液は再び指先に流れる。続いて、7秒の時点td(
図15での(D))では、採血算用採血管22の口を指先から離す。この操作により、指先と血算用採血管22の口との間に溜まった血液を血算用採血管22の口側に切り離すことができる。切り離された血液は、重力により、血算用採血管22の側面を伝って底側に移動する。このように、この方法では、カフの圧迫・解放と、上下移動による指先と血算用採血管22との相対距離の変動とを繰り返し実施し、血算用採血管22内への採血を行う。
【0071】
上記のように、カフによる圧迫・解放を繰り返すことで、指先からの出血促進と、指先への血液の補充とを繰り返すことができる。また、血算用採血管22と指先との距離を変えない場合、指先と血算用採血管22の口との間に溜まった血液内で凝固反応が進み、穿刺箇所からの出血が滞るが、本例のように、上下移動によって血算用採血管22と指先との距離を変え、指先と血算用採血管22の口との間に溜まった血液を一定時間間隔で取り除く。これにより、穿刺箇所の凝固反応を抑制することができる。結果として、カフによる圧迫・解放と、血算用採血管22と指先との距離の変動とを繰り返し実施することで、採血量の増大の効果をもたらす。本例では、採血時の条件として、カフの圧迫・解放を7.5秒の周期1600とし、血算用採血管22の上下移動を振幅5mmで7.5秒の周期1610としたが、これに限らず、被採血者の状態や採血日時等に応じて条件を変更することが好ましい。
【0072】
[(4-4)血液量計測]
次に、
図17等を用いて、採血時の血液量の計測について説明する。採血装置1は、上記のような採血管の上下移動動作に伴い、血液量用光センサ5の出力値と、採血管の垂直方向の高さ位置とを用いて、採血管内に採取された血液量を略リアルタイムで導出する。
【0073】
図17は、血算用採血管22への採血時において、血液量用光センサ5側からカートリッジ用容器101を見た図であり、概略的にy-z面に相当する。カートリッジ用容器101には、
図12等の所定の領域R1に対応して、x方向の後側での所定の部位に、空隙・開口である採血量観察窓1011が設けられている。また、それに対応して、血算用採血管22を保持するホルダ112にも、後述の
図19等のように、空隙・開口である採血量観察窓1122が設けられている。血算用採血管22への採血時には、これらの空隙・開口(1011,1122)を介して、血液量用光センサ5から血算用採血管22に対する光照射および反射光の受光がされる。これにより、その時点で血算用採血管22内に採血されている血液1561の血液量を計測できる。これは生化学・免疫用採血管23についても同様である。
【0074】
図18は、血算用採血管22と血液量用光センサ5との水平面(x-y面に相当する)での配置関係を示す上面図である。本例では、A-A線をx方向として、そのx方向の後側の位置に合わせて、採血管のうちのやや斜めに配置された口の部分1801が配置されている。この口の部分1801は、例えば
図15のように血液156の液滴を受ける部分となる。採血の際、指の穿刺痕より出血した血液は、採血管の口の部分1801に入り、この口の部分1801の内側壁面1802を含む採血管の内側壁面の一部を伝って底の方に落ちる。そして、本例では、B-B線で示す血液量用光センサ5の光軸の方向は、x方向に対し角度1803の差をとった方向に設計されている。ホルダ112の側面のうちの部分1804には、照射光a1を通過させる空隙・開口である採血量観察窓1122(
図19)が設けられている。すなわち、この構造では、採取された血液が通る内側壁面1802に対応する位置に対して照射光a1が横切らないように、図示のように、血液量用光センサ5の位置および向きが設定されている。これにより、内側壁面1802を伝わる血液の影響を避けて、血液量用光センサ5によって、より高精度の検出・計測が可能である。なお、変形例としては、A-A線のx方向に合わせた位置および向きで血液量用光センサ5が配置されてもよい。
【0075】
図19は、血算用採血管22と血液量用光センサ5との垂直方向(x-z面に相当する)での配置関係を示す側面図である。
図19では、血液量用光センサ5の向きはx方向であるが、詳細には
図18のように角度1803をとって斜めの向きとなる。本例では、ホルダ112は長手方向がz方向に直立するように配置されている。それに対し、ホルダ112内に挿入されている血算用採血管22は、z方向に対し角度1901を持ってやや斜めに配置されている。この構造により、指先からの血液は、口の部分1801を通じて、内側壁面1802に付着しやすくなり、血液を内側壁面1802の一部である所定の動線を経由するように伝わせて、底側に効率的に捕集することができ、すなわち、採血管内により多くの血液を採取できる。
【0076】
血液量用光センサ5は、光軸の向きが水平方向にされており、照射光a1は、ホルダ112の側面に対しては垂直に照射され、血算用採血管22の側面に対しては斜めの関係で照射される。
【0077】
なお、変形例として、
図20のようにしてもよい。
図20で、血液量用光センサ5は、鉛直に対しやや斜めに傾いて配置された血算用採血管22の側面に対し、照射光a1が垂直に照射される関係となるように、水平方向に対し所定の角度2001で斜めの向きとして配置されている。
図19と
図20の構成での違いとしては以下がある。
図19の構成では、照射光a1が採血管内の血液1561の液面付近に照射される場合に、採血管の高さ位置に依らずに、光が血液1561の領域を通る長さが概略的に一定的になる。それに対し、
図20の構成では、同様の場合に、採血管の高さ位置に応じて、光が血液1561の領域を通る長さが変わる。
【0078】
図18および
図19等で、血液量光センサ5は、照射光a1を、観察窓1011およびホルダ112の観察窓1122を通じて、血算用採血管22の側面に照射し、血算用採血管22からの反射光a2を受光し、反射光a2の光強度を計測する。採血時には、前述のように、血算用採血菅22およびホルダ112が上下に移動する。そのため、その時の血算用採血菅22の高さ位置に応じて、照射光a1は、血算用採血管22内に採取されている血液1561に照射されて反射する場合と、照射されずに反射する場合とがある。血算用採血管22内に採取されている血液1561が、照射光a1を遮断する場合、反射光a2の光強度が変化する。
図18では、高さ位置ZAでの照射光a1が、血算用採血管22内の血液1561の上部に照射される場合を示している。
【0079】
採血管における血液が格納される部分は、光透過性部材で構成されているので、照射光a1および反射光a2を透過する。また、ホルダ112の一部は空隙・開口の観察窓1122となっているが、これに限らず、この部分に光透過性部材が設けられてもよい。
【0080】
図21は、所定の高さ位置ZAにある血液量光センサ5の照射光a1に対し、血算用採血管22の上下移動に応じた血液の液面との関係の例を示す。(A)は、採血管の高さ位置(例えば口の部分を基準とする)が、相対的に低い位置Zaにある場合であり、(B)は、採血管の高さ位置が、相対的に高い位置Zbにある場合である。(A)では、採血管内の血液b1は、液面が例えば光の位置ZAよりも低い高さ位置Zcにある(Zc<ZA)。(B)では、採血管内の血液b1は、液面が例えば光の位置ZAよりも高い高さ位置Zdにある(Zd>ZA)。(A)のように照射光a1が血液b1に照射されない場合の光強度と、(B)のように照射光a1が血液b1に照射される場合の光強度とでは、差異がある。採血装置1は、この差異が生じる時、すなわち位置ZAに血液の液面が来る時の、採血管の高さ位置に基づいて、その時の採血管内の血液量を簡単な計算で算出可能である。(A),(B)の場合で、採血装置1が計測し検出した血液量が、所望の血液量以上になった場合、その検出の時点で採血動作を終了させることができる。
【0081】
また、(C)は、(A),(B)の血液量の場合に対し、より少ない血液量の場合を示し、血液b2の液面がちょうど位置ZAに来た時の状態を示す。採血管は高さ位置Zeにある。(D)は、(A),(B)の血液量の場合に対し、より多い血液量の場合を示し、血液b3の液面がちょうど位置ZAに来た時の状態を示す。採血管は高さ位置Zfにある。(C)のような血液量を検出したい場合、(A),(B)の場合に比べ、採血管の上下移動の際の高さ位置をより上方に制御する必要がある。(D)のような血液量を検出したい場合、(A),(B)の場合に比べ、採血管の上下移動の際の高さ位置をより下方に制御する必要がある。(A)~(D)のような広い範囲で血液量(b1,b2,b3)を検出可能とする場合、採血管の上下移動の範囲をより広くする必要がある。
【0082】
また、実施の形態1では、血液量光センサ5の高さ位置(ZA)は固定であるが、変形例として、この位置を可変に調節できる形態としてもよい。その場合、検出対象の血液量に応じて血液量光センサ5の高さ位置を設定することができる。
【0083】
なお、上記血液量の計算の際には、予め設定されている採血管の内部の断面積や傾きの角度1901等の仕様値を用いて、所定の計算式で管内の血液の体積を計算すればよい。あるいは、予め実験で取得したデータに基づいて、その計算に対応するテーブルをルックアップテーブルとして作成し保持しておき利用してもよい。
【0084】
図22は、血算用採血管22内に採取された血液の量の違いによる血液量光センサ5の出力値の時間変化の違いを示す。(A)は、血液量が相対的に多い場合であり、(B)は血液量が相対的に少ない場合である。いずれも横軸を時間とし、縦軸を血液量光センサ5の出力値(すなわち光強度に相当する)としたグラフと、縦軸を血算用採血管22の高さ位置としたグラフとを示す。本例では、血液中の赤血球に反射されやすい赤色の光を照射光a1として使用し、反射光a2の強度を血液量光センサ5で計測する。
【0085】
(A)のように、血算用採血管22内に採取された血液の量が相対的に多い場合、血算用採血菅22を下限位置Z1から少し上昇しただけで、血液が照射光a1を遮断する。言い換えると、照射光a1が血液で反射される。グラフでは、時点t1で採血菅が下限位置Z1から上昇開始し、時点t2で高さ位置Zxとなった時を境に、光センサ出力値がローレベルL1からハイレベルL2に変化している。時点t3では上限位置Z2に達し、一定の保持後、時点t4から下降開始し、時点t5で同じく高さ位置Zxとなった時を境に、光センサ出力値がハイレベルL2からローレベルL1に変化している。時点t6で下限位置Z1に戻っている。そのため、(A)では、血液量光センサ5の出力値が高い時間2201が相対的に長くなる。一方、(B)のように、血算用採血管22内に採取された血液の量が相対的に少ない場合、血算用採血菅22を下限位置Z1から(A)よりも大きく上昇させないと、採取された血液が照射光a1を遮断しない。グラフでは、時点taで高さ位置Zy(Zy>Zx)となった時を境に、光センサ出力値がローレベルL1からハイレベルL2に変化している。そのため、(B)では、血液量光センサ5の出力値が高い時間2202が相対的に短くなる。
【0086】
従って、採血装置1は、上記のように血液量光センサ5の出力値が高い状態(ハイレベルL2)となる時間の長さを計測し、換算することで、血算用採血菅22内に採取された血液量を導出できる。あるいは、採血装置1は、光センサ出力値が変化した時の採血管の高さ位置を検出し、換算することで、同様に血液量を導出できる。
【0087】
上記方法を用いる場合、管内に採取された血液が照射光a1を遮断する時間の長さを正確に計測することが、血液量の計測値の精度を向上させる。そのため、血液中の赤血球に反射されやすい赤色の光を照射光a1に適用することが好ましい。
【0088】
採血装置1は、略リアルタイムで、採血された血液量がわかるので、その血液量等のデータを記憶および出力可能である。また、採血装置1は、採血された血液量が所定の値以上になったタイミングで、即時に所定の制御、例えば採血動作終了等を行うことができる。採血装置1は、回毎の上下移動を伴う採血動作の際に、採血された血液量Vを確認し、指定の採血量に達すると、その時点で回毎の採血動作を終了させることができる(
図9等)。
【0089】
採血装置1は、血液量用光センサ5の出力値(特にハイレベルの時間)と、採血管の高さ位置とから、採血管内の血液量が算出可能である。この算出は、前述の予め設計上で把握できる対応関係、例えば高さ位置と採血管の断面積等の仕様に基づいて、簡単な計算式やテーブルから可能である。
【0090】
[(4-5)第2種採血]
採血装置1は、上記方法によって計測した血液量として、指定された所望の採血量が得られたことが判明した段階・時点で、血算用採血管22への採血を終了させ、次の生化学・免疫用採血管23への採血に移る。採血装置1は、
図2の回転方向駆動機構120により、カートリッジ11を回転させ、採血窓1311の直下の所定の領域R1の位置に、生化学・免疫用採血管23のホルダ113を配置する。生化学・免疫用採血管23への採血は、血算用採血管22への採血と基本的に同様の処理・動作となる。
【0091】
図10は、第2種採血管である生化学・免疫用採血管23への採血工程P42のフロー図である。これは、
図9の採血工程P42と基本的に同様であり、各パラメータは第2種採血管用のパラメータとなる。採血量VがV2になった場合や、繰り返し回数NがN2になった場合には、止血工程P5に移る。
【0092】
また、時間的に先に血算用採血管22で採取した血液内では凝固反応が進行する。そのため、このフローでは、ステップS42aで、操作者は、生化学・免疫用採血管23への採血中に、採血完了済みの血算用採血管22を取り出し、転倒混和を行う。転倒混和により、血算用採血管22の内面に付着している抗凝固剤が血液と混ざり、凝固反応が抑制される。生化学・免疫用採血管23への採血が終了した後、止血工程P5に移る。
【0093】
[(5)止血工程P5]
図8は、止血工程P5のフロー図を示す。止血工程P5は、概略的にステップS5a,S5b,S5cを有する。ステップS5aで、採血装置1は、
図2の回転方向駆動機構120により、カートリッジ11を回転させ、採血窓1311の直下の所定の領域R1の位置にガーゼ24のホルダ114を配置する。続いて、採血装置1は、垂直方向駆動機構121により、ガーゼ24を中指153の指先があるz方向の上方に押し上げ、ガーゼ24を中指153の指先に接触させ、指先に残っている血液をふき取る。
【0094】
ステップS5bで、採血装置1は、カートリッジ11を回転し、採血窓1311の直下の所定の領域R1の位置にシール25のホルダ115を配置する。続いて、採血装置1は、垂直方向駆動機構121により、シール25を中指153の指先があるz方向の上方に押し上げ、シール25を中指153の指先に貼り付けて穿刺箇所を覆う。上記のように、シール25で穿刺箇所を覆う前に、ガーゼ24で指先に残った血液をふき取ることで、シール25からの血液の溢れを防止し、確実に指先にシール25を貼り付けることができる。その後、ステップS5cで、採血装置1は、採血終了表示ランプをオンにする。採血者は、中指153をカフ機構130から外す。その後、操作者は、血算用採血管22と同様の方法で、生化学・免疫用採血管23を取り出す。
【0095】
上記のようなフローにより、採血装置1を用いた血算用採血管22と生化学・免疫用採血管23との二本採取工程の採血が実施できる。本例では二本採取の場合を説明したが、血算用採血管22のみへの一本採血と、生化学・免疫用採血管23のみへの一本採血とについても、上記と同様に実現できる。血算用採血管22のみの採血の場合、血算用採血管22への採血工程P41が終了した後に止血工程P5へ移ればよい。生化学・免疫用採血管23のみへの採血の場合、穿刺工程P3が終了した後、生化学・免疫用採血管への採血工程P42に移り、それが終了した後に止血工程P5へ移ればよい。
【0096】
[効果等]
上記のように、実施の形態1の採血装置1によれば、被採血者や採血日時等の条件の違いに依らずに、安全かつ簡便に対象部位からの採血を実現でき、また、採血中に血液量を略リアルタイムに正確に計測でき、所望の採血量に対応させて採血終了等を好適に迅速に制御できる。実施の形態1によれば、略リアルタイムで現在の計測値である採血量が所望の採血量に達したことを検知・把握でき、それに合わせて即時に採血動作終了や止血開始等のタイミングを制御できるという極めて優れた効果を発揮する。
【0097】
[変形例1]
実施の形態1の変形例として以下も可能である。
図23は、変形例1の採血装置1における、血液量光センサ5と採血管(例えば血算用採血管22)等との配置関係をx-z面で示す。変形例1では、上下方向において、複数の血液量光センサ5として、本例では3個の血液量光センサ51,52,53が配置されている。本例では、z方向で下側から順に、高さ位置ZA1に光センサ51、高さ位置ZA2に光センサ52、高さ位置ZA3に光センサ53が配置されている。この構成の場合、採血管の上下移動の上昇量(前述の下限位置Z1から上限位置Z2までの距離)が比較的小さい場合でも、採血装置1は、複数の血液量光センサ5の出力値の時間変化を記録することで、採血菅内の採血量として、様々な量(例えば
図21)を計測可能である。
【0098】
変形例1による他の効果としては以下が挙げられる。第1に、採血管等を上下移動させる際の距離を短く設定することができる。例えば、
図23のように、上・中・下のような位置に3個の光センサ(51~53)を設置した場合、所定の血液量範囲に対応できる前提で、採血管の上下移動に必要な距離は、1個の光センサしかない構成に比べ、約三分の一に短くできる。第2に、対象の採血管の仕様や対象の採血量が異なる場合等にも、複数の高さ位置での検出によって対応可能である。例えば、上下位置の2個の光センサを用いる場合、採血管内の血液液面が比較的上方に来る場合と下方に来る場合との2種類の事例に対応できる。第3に、故障等を想定して冗長性を確保できる。例えば、複数のセンサのうち一部のセンサでは検出できない場合にも、他のセンサによって検出の対応ができる。
【0099】
[変形例2]
変形例2として以下も可能である。変形例2の採血装置1は、血液量光センサ5の配置の位置を可変調節できる構成とする。
図23を同様に用いて説明する。この構成では、対象の採血管の仕様や、対象の採血量等に合わせて、光センサ5の位置を例えば上下の高さ位置(例えば
図23での高さ位置ZA1,ZA2,ZA3等)に変更できる。この位置変更は、操作者による操作で行うものとしてもよいし、採血装置1が自動的に駆動機構によって行う構成としてもよい。
【0100】
<実施の形態2>
図24を用いて、実施の形態2について説明する。実施の形態2等における基本構成は実施の形態1と同様であり、以下では、実施の形態2等における実施の形態1とは異なる構成部分について説明する。以下では、カートリッジ11や構成部品について、より好ましい形状等を示す。始めに、前述の各モジュール20(21~25)の各ホルダ(111~115)についての好ましい形状等を示す。
【0101】
実施の形態1や2の採血装置1では、各ホルダ(111~115)を上下移動させることで、採血工程を自動化・効率化する。そのため、この採血装置1では、採血工程を実施する際に、各ホルダおよびモジュールの高さ位置を常に高精度に把握することが好ましい。実施の形態1の場合、制御機構16は、制御上、各ホルダおよびモジュールの上下移動の際の高さ位置を把握している。制御機構16は、少なくとも、その上下移動の制御の際の駆動機構の各部(例えばモータ)の駆動制御量を把握している。
図24の実施の形態2では、さらに、前述の血液量用光センサ5とは別に設けた高さ計測用光センサ6を用いて、各ホルダおよびモジュールの実際の高さ位置を検出・計測する。実施の形態2では、各ホルダ(111~115)は、特有の構成として、光を反射するマーカM1を備える。採血装置は、高さ計測用光センサ6によってそのマーカM1を検知することで、ホルダおよびモジュールの高さ位置を検知する。なお、ホルダとモジュールは所定の対応関係で保持等されるので(例えば
図19)、ホルダの高さ位置とモジュールの高さ位置とで一方から他方を算出可能である。
【0102】
図24の(A)は、実施の形態2の採血装置1において、モジュール20およびホルダの例として穿刺器21のホルダ111と、高さ計測用光センサ6とを側面から見た構成例を示す。このホルダ111は、所定の位置、本例ではz方向で比較的上端寄りの位置に、高さ計測用マーカであるマーカM1を備える。マーカM1は、高さ計測用光センサ6からの光である照射光a61を反射する性質を持つ。マーカM1は、例えば、光反射率が異なる複数の部分を有して構成されている。本例では、図示のように、マーカM1は、z方向において、光反射率が異なる2種類の部分として、幅が異なる複数の部分、例えば4種類の幅の部分が形成されている。これらは、例えば下側の部分ほど幅が狭く、上側の部分ほど幅が広い。
【0103】
採血装置1は、前述の血液量用光センサ5(ここでは図示しない)とは異なる、所定の位置および向きで、高さ計測用光センサ6を備える。例えば、前述の血液量用光センサ5よりも上方の高さ位置に高さ計測用光センサ6を備える。本例では、高さ位置Z6に高さ計測用光センサ6の光軸が配置されている。ここでは、ホルダ111の上下移動に伴って、マーカM1がその高さ位置Z6を経由している状態を示している。採血装置1は、この高さ計測用光センサ6の光源から、前述の開口等を通じて、ホルダ111の側面のマーカM1に対し照射光a61を照射し、マーカM1からの反射光a62を受光部で検知する。
【0104】
以下では、高さ計測用光センサ6を用いて穿刺器21のホルダ111の高さ位置を計測する方法を示す。採血装置1は、垂直方向駆動機構121によりホルダ111を上下に移動させる。例えば、前述の下限位置Z1から上限位置Z2までの範囲で上下移動させるとする。これに伴ってマーカM1の高さ位置も上下に変化する。そのため、ホルダ111の高さ位置に応じて、マーカM1が照射光a61を遮断する。すなわち、照射光a61が照射されたマーカM1の部分に応じた反射光a62が生じる。すると、ホルダ111の高さ位置とそれに対応したマーカM1の部分(幅および光反射率が異なる部分)に応じて、高さ計測用光センサ6が検出する反射光a62の光強度が変化する。よって、採血装置1は、高さ計測用光センサ6の出力値である反射光a62の光強度を表すパターンを計測し判断することで、ホルダ111および穿刺器21の高さ位置を計測・把握できる。
【0105】
図24の(B)は、(A)の構成例に対応した、高さ計測用光センサ6の出力値のパターンの時間変化等を示す。下側の(b)のグラフは、ホルダ111の高さ位置の時間変化を示し、上側の(a)のグラフは、(b)と時点を対応させて、高さ計測用光センサ6の出力値を示す。本例では、ホルダ111でのマーカM1の位置は、上下移動の下限位置Z1と上限位置Z2とに合わせて設計されているとする。最初、高さ計測用光センサ6の位置Z6に対し、マーカM1は下側にある。(a)のように、時点t1から時点t2で、ホルダ111が下限位置Z1から上昇してゆく。すると、マーカM1のうち上側にある幅が広い部分から順に照射光a61に照射される。よって、(a)のように、出力値として、パルス状のパターン2401、特に立ち上がり部分の時間が次第に狭くなるパターン、が観測される。時点t2で上限位置Z2に達し、高さ計測用光センサ6の位置Z6に対し、マーカM1は上側にある。また、次に、時点t3から時点t4まで、ホルダ111が上限位置Z2から下降してゆく。この際にも同様に、上記パターン2401とは反転したパルス状のパターン2402が観測される。採血装置1は、これらの出力値を判断することで、ホルダ111の現在の高さ位置を把握でき、換算によって、ホルダ111内の穿刺器21の高さ位置を把握できる。例えば、時点txでは、パターン2401のうち第2のパルス部分が観測できるので、それに対応してマーカM1のうち上から2番目の部分が高さ位置Z6にあり、ホルダ111が高さ位置Zxにあることがわかる。同様に、他のモジュール20についても、同様のマーカから高さ位置を計測可能である。
【0106】
上記のように、実施の形態2によれば、高さ計測用光センサ6とマーカM1を用いることで、採血工程を実施する際に、上下移動の制御に伴い、各ホルダおよびモジュールの高さ位置を常に高精度に把握でき、前述の血液量用光センサ5を用いた血液量の計測をより正確に実現できる。実施の形態2では、例えば、モジュールおよびホルダが駆動機構12による上下移動に追従せずに誤った高さ位置になってしまった場合でも、上記仕組みによってモジュールおよびホルダの実際の高さ位置を把握でき、アラート出力ができる。よって、誤った高さ位置での動作を防止でき、安全性をより高めることができる。
【0107】
<実施の形態3>
図25を用いて、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、採血装置1内で、カートリッジ11の各モジュールの各ホルダ(111~115)を分別・識別できる構成を示す。実施の形態3は、実施の形態1または2に対し追加構成部分を有する。
【0108】
図25は、実施の形態3の採血装置1で、カートリッジ11に装着される複数の種類(5種類)のモジュール20(21~25)のホルダ(111~115)と、各ホルダに設けられたマーカ(M21~M25)と、モジュール判別用光センサ7とを示す。採血装置1は、前述の各光センサとは別に、所定の位置および向きに、モジュール判別用光センサ7を備える。モジュール判別用光センサ7の位置および向きは、カートリッジ11の回転2501に伴って複数のホルダ(111~115)が移動する際の範囲に対応させて、全ホルダのマーカ(M21~M25)に対し照射光a71を照射でき反射光a72を検知できるような位置および向きとして設計されている。また、図示のように、カートリッジ11の前述の各保持穴(301~305)には、ホルダのマーカが見えるように観察窓が設けられている。
【0109】
実施の形態3では、カートリッジ11の回転2501の方向に対し、各ホルダ(111~115)には、パターンが異なる複数の種類のマーカとして、各マーカM21,M22,M23,M24,M25が設けられている。例えば、穿刺器21のホルダ111にはマーカM21が、血算用採血管22のホルダ112にはマーカM22が設けられている。言い換えると、各マーカ(M21~M25)は、各ホルダおよびモジュールを識別できるIDとして機能する。例えば、これらのモジュール判別用マーカは、前述のマーカM1と同様に、光反射率が異なる複数の部分で構成され、各マーカの複数の部分のパターンが異なる。例えば、4種類の幅の部分を用いた組合せによってパターンが構成されている。このモジュール判別用マーカは、実施の形態2でのマーカM1とは役割が異なる。なお、実施の形態2のマーカM1と実施の形態3でのモジュール判別用マーカとを両方用いる形態とする場合、それらのマーカはホルダの異なる位置に異なるパターンのマーカとして設けられる。
【0110】
実施の形態3の採血装置1は、カートリッジ11の回転2501に伴う、モジュール判別用光センサ7の出力値のパターンを計測する。モジュール判別用光センサ7は、カートリッジ11の回転2501に伴って光軸(一点鎖線で示す)上の所定の位置2502に移動してくる各ホルダの各マーカに対し、照射光a71を照射し、反射光a72を検知する。反射光a72の光強度のパターンは、マーカに応じて異なる。採血装置1は、モジュール判別用光センサ7の出力値のパターンの違いから、所定の位置2502で光照射されたマーカがいずれのホルダのマーカであるかを判断できる。これにより、採血装置1は、所定の位置2502にあるホルダおよびモジュール20を弁別・識別できる。
【0111】
なお、本例では、モジュール判別用光センサ7は、図示のように、前述の指置き場の直下の領域R1に対して光照射できる位置とは別の位置に配置されているが、これに限らず、前述の指置き場の直下の領域R1に対して光照射できる位置に配置されてもよい。
【0112】
カートリッジ11では、回転方向の円周上で、例えば5種類のモジュール20のホルダ(111~115)が、所定の順序で配置されている。例えば、
図3と同様に、図示のように、所定の領域R1から右回りで順に、穿刺器21のホルダ111、血算用採血管22のホルダ112、シール25のホルダ115、ガーゼ24のホルダ114、および生化学・免疫用採血管23のホルダ113が配置される。血算用採血管22のホルダ112と、生化学・免疫用採血管23のホルダ113とは、回転軸を介して対向する位置に配置されている。操作者がこれらのホルダの装着・配置を誤る場合がある。例えば血算用採血管22のホルダ112を装着すべき位置に、誤って生化学・免疫用採血管23のホルダ113が配置される可能性がある。また、モジュール20毎に、さらに複数の種類のモジュール(および対応するホルダ)が存在する場合がある。例えば、仕様等が異なる複数の種類の穿刺器21や、複数の種類の血算用採血管22があり得る。この場合に、操作者が、所定の位置に装着されるモジュール20のホルダとして、所定の種類のモジュール(例えば第1穿刺器)のホルダを装着すべきところ、誤って違う種類のモジュール(例えば第2穿刺器)のホルダを装着してしまう可能性もある。
【0113】
これらの誤りの場合にも、実施の形態3の採血装置1は、モジュール判別用光センサ7を用いて、モジュール20のホルダの配置・装着の誤りを検知できる。採血装置1は、カートリッジ11上の所定の位置に配置されているモジュール20を識別できるので、所定の位置に誤ったモジュールのホルダが設置されている場合にそれを検知できる。その時、例えば、採血装置1は、入出力器を通じて、操作者に対し、誤りの旨のアラートを出力する。これにより、実施の形態3によれば、誤ったモジュールによる動作を防止でき、誤りを修正できる。これにより、採血作業の誤りを防止できる。実施の形態1,2,および3は、組み合わせた形態が可能である。
【0114】
[付記]
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。各実施の形態の構成要素および周知技術による構成要素についての追加、削除、置換等が可能である。実施の形態では採血の用途に適用した装置を示したが、これに限らず、生体から体液を採取・捕集する用途に同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1…採血装置、4…指先用光センサ、5…血液量用光センサ、11…カートリッジ、12…駆動機構、13…カフ機構指固定部、15…手、16…制御機構、17…圧力調整機構、18…駆動機構、21…穿刺器、22…血算用採血管、100…ケース、130…カフ機構、131…指置き場、111…穿刺器ホルダ、112…血算用採血管ホルダ、113…生化学・免疫用採血管ホルダ、114…ガーゼホルダ、115…絆創膏ホルダ。