(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ラメラの搭載方法および解析システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240725BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240725BHJP
G01N 23/2202 20180101ALI20240725BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20240725BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20240725BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H01L21/66 D
G01N1/28 F
G01N23/2202
H01J37/20 Z
H01J37/305 A
H01J37/317 D
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2022577943
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003203
(87)【国際公開番号】W WO2022162863
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉健
(72)【発明者】
【氏名】河西 晋佐
(72)【発明者】
【氏名】野間口 恒典
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛幸
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-333387(JP,A)
【文献】特表2010-507783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0017904(US,A1)
【文献】特開2003-194681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 1/00 - 1/44
G01N 21/84 -21/958
G01N 23/225-23/2258
H01J 37/305
H01J 37/317
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線装置を用いて解析されるラメラを、ピンセットによってメッシュに搭載するためのラメラの搭載方法であって、
(a)ウェハの一部に作製されている前記ラメラを前記ピンセットによって把持し、前記ウェハから前記ラメラを取り出す工程、
(b)前記(a)工程後、前記ラメラが前記ピンセットによって把持された状態で、前記ラメラを前記メッシュに含まれる第1膜に押し付けるように、前記ピンセットを移動することで、前記ラメラを前記第1膜に密着させる工程、
を備え、
前記ラメラは、本体、および、前記本体の一部に設けられた解析領域を含み、
第1方向における前記解析領域の幅は、前記第1方向における前記本体の幅と異なり、
前記(b)工程後、前記ラメラは、前記解析領域が前記第1膜と対向するように、前記第1膜に密着され、
前記ラメラの搭載方法は、前記ラメラを把持するための前記ピンセット、および、前記ラメラを搭載するための前記メッシュを有するラメラ搭載装置を用いて行われ、
前記ラメラ搭載装置は、前記ラメラの形状に関する第1情報を有し、且つ、前記第1情報に基づいて、前記ラメラを前記メッシュへ搭載させるための複数の搭載方法のうち前記ラメラの形状に応じた搭載方法を実行できる、ラメラの搭載方法。
【請求項2】
請求項1に記載のラメラの搭載方法において、
(c)前記(b)工程後、前記ピンセットから前記ラメラを開放する工程、
(d)前記(c)工程後、前記ピンセットを移動させ、前記ピンセットを前記ラメラに接触させることで、前記ラメラの向きを変更する工程、
を更に備え、
前記(b)工程では、前記解析領域は前記第1膜と対向しておらず、
前記(d)工程によって、前記ラメラは、前記解析領域が前記第1膜と対向するように、前記第1膜に密着される、ラメラの搭載方法。
【請求項3】
請求項2に記載のラメラの搭載方法において、
前記ラメラは、前記第1方向において前記本体から突出する突出部を更に含み、
前記(b)工程では、前記突出部が前記第1膜に密着される、ラメラの搭載方法。
【請求項4】
請求項2に記載のラメラの搭載方法において、
前記本体は、前記第1方向における幅が前記解析領域から離れるに連れて連続的に減少する切り欠き領域を含み、
前記(b)工程では、前記切り欠き領域が前記第1膜に密着される、ラメラの搭載方法。
【請求項5】
請求項2に記載のラメラの搭載方法において、
前記ラメラは、前記第1方向において前記本体から突出する突出部を更に含み、
前記メッシュは、前記第1膜上に設けられた突起物を更に含み、
前記(b)工程では、前記突起物に前記突出部を接触させながら、前記ラメラが前記第1膜に密着される、ラメラの搭載方法。
【請求項6】
請求項5に記載のラメラの搭載方法において、
前記メッシュは、2つの前記突起物を含み、
前記(b)工程では、2つの前記突起物の間に前記突出部を位置させながら、前記ラメラが前記第1膜に密着される、ラメラの搭載方法。
【請求項7】
請求項2に記載のラメラの搭載方法において、
前記(d)工程において、前記第1膜と前記ラメラとの密着力は、前記ピンセットが前記ラメラに接触した際における前記ピンセットと前記ラメラとの密着力よりも大きい、ラメラの搭載方法。
【請求項8】
請求項1に記載のラメラの搭載方法において、
前記ラメラは、前記第1方向において前記本体から突出する突出部を更に含み、
前記(a)工程では、前記突出部がピンセットによって把持され、
前記(b)工程では、前記突出部がピンセットによって把持された状態で、前記解析領域が前記第1膜と対向するように、前記本体が前記第1膜に密着される、ラメラの搭載方法。
【請求項9】
請求項1に記載のラメラの搭載方法において、
前記(b)工程において、前記第1膜と前記ラメラとの密着力は、前記ピンセットが前記ラメラを把持している際における前記ピンセットと前記ラメラとの密着力よりも大きい、ラメラの搭載方法。
【請求項10】
イオンビームカラムを有するラメラ作製装置と、
ラメラを把持するためのピンセット、および、前記ラメラを搭載するためのメッシュを有するラメラ搭載装置と、
電子源を含む電子ビームカラム、試料ステージ、および、前記試料ステージに設けられたホルダを有するラメラ解析装置と、
前記ラメラ作製装置、前記ラメラ搭載装置および前記ラメラ解析装置を統括する制御部と、
を備える解析システムであって、
(a)前記ラメラ作製装置において、前記イオンビームカラムからウェハへイオンビームを照射し、前記ウェハの一部をエッチングすることで、本体、および、前記本体の一部に設けられた解析領域を含む前記ラメラを作製する工程、
(b)前記(a)工程後、前記ラメラが作製されている前記ウェハを、前記ラメラ作製装置から前記ラメラ搭載装置へ搬送する工程、
(c)前記(b)工程後、前記ラメラ搭載装置において、前記ウェハの一部に作製された前記ラメラを前記ピンセットによって把持し、前記ウェハから前記ラメラを取り出す工程、
(d)前記(c)工程後、前記ラメラ搭載装置において、前記ラメラが前記ピンセットによって把持された状態で、前記ラメラを前記メッシュに含まれる第1膜に押し付けるように、前記ピンセットを移動することで、前記ラメラを前記第1膜に密着させる工程、
(e)前記(d)工程後、前記ラメラが搭載されている前記メッシュを、前記ラメラ搭載装置から前記ラメラ解析装置へ搬送する工程、
(f)前記(e)工程後、前記ラメラ解析装置において、前記解析領域が前記電子源と向き合うように、前記メッシュが前記ホルダ上に載置された状態で、前記電子源から前記解析領域へ電子ビームを照射することで、前記解析領域の解析を行う工程、
を備え、
第1方向における前記解析領域の幅は、前記第1方向における前記本体の幅と異なり、
前記(d)工程後であって前記(e)工程前に、前記ラメラは、前記解析領域が前記第1膜と対向するように、前記第1膜に密着され、
前記制御部は、前記ラメラの形状に関する第1情報を前記ラメラ作製装置から取得でき、
前記制御部は、取得された前記第1情報に基づいて、前記ラメラを前記メッシュへ搭載させるための複数の搭載方法のうち前記ラメラの形状に応じた搭載方法を、前記ラメラ搭載装置へ指定できる、解析システム。
【請求項11】
請求項10に記載の解析システムにおいて、
(g)前記(d)工程と前記(e)工程との間に、前記ピンセットから前記ラメラを開放する工程、
(h)前記(g)工程と前記(e)工程との間に、前記ピンセットを移動させ、前記ピンセットを前記ラメラに接触させることで、前記ラメラの向きを変更する工程、
前記(d)工程では、前記解析領域は前記第1膜と対向しておらず、
前記(h)工程によって、前記ラメラは、前記解析領域が前記第1膜と対向するように、前記第1膜に密着される、解析システム。
【請求項12】
請求項11に記載の解析システムにおいて、
前記ラメラは、前記第1方向において前記本体から突出する突出部を更に含み、
前記(d)工程では、前記突出部が前記第1膜に密着される、解析システム。
【請求項13】
請求項11に記載の解析システムにおいて、
前記ラメラは、前記第1方向において前記本体から突出する突出部を更に含み、
前記メッシュは、前記第1膜上に設けられた突起物を更に含み、
前記(d)工程では、前記突起物に前記突出部を接触させながら、前記ラメラが前記第1膜に密着される、解析システム。
【請求項14】
請求項10に記載の解析システムにおいて、
前記ラメラは、前記第1方向において前記本体から突出する突出部を更に含み、
前記(c)工程では、前記突出部がピンセットによって把持され、
前記(d)工程では、前記突出部がピンセットによって把持された状態で、前記解析領域が前記第1膜と対向するように、前記本体が前記第1膜に密着される、解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラメラの搭載方法および解析システムに関し、特に、荷電粒子線装置を用いて解析されるラメラを、ピンセットを用いてメッシュへ搭載するための搭載方法、および、その搭載方法が適用される解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの分野では、微細化による性能の向上が成されてきた。近年、化合物半導体などのようなシリコンに代わる新規材料の利用、三次元構造の促進、および、微細化以外の方法によるデバイス性能の向上技術などが注目されている。これらの新たな取り組みでは、異種材料間の界面状態および積層構造を解析するための技術の重要性が増している。
【0003】
例えば、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置のようなラメラ作製装置によって、半導体などからなるウェハの一部からラメラ(薄片試料)を作製し、ラメラ搭載装置によって、ラメラをラメラキャリアへ搭載し、ラメラ解析装置(荷電粒子線装置)によって、ラメラキャリア上のラメラを解析する手法が行われている。荷電粒子線装置は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM: Scanning Electron Microscope)、透過電子顕微鏡(TEM: Transmission Electron Microscope)または走査型透過電子顕微鏡(STEM: Scanning Transmission Electron Microscope)である。
【0004】
通常、作製されたラメラは、ラメラキャリアなどに搭載され、ラメラを搭載するラメラキャリアは、荷電粒子線装置に搬送される。例えば、特許文献1には、凹状の嵌合部を有する試料ホルダを用意し、荷電粒子ビームによって半導体ウェハの一部から作製されたラメラを凹状の嵌合部に嵌め込むことで、ラメラを試料ホルダに固定する方法が開示されている。また、特許文献2には、荷電粒子ビームによって半導体ウェハの一部からラメラを作製し、ピンセットによってラメラを把持した状態で、ラメラを試料ホルダに搭載する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-115582号公報
【文献】特開2009-133833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウェハ内の界面情報および積層構造を取得する一連の流れを自動で行うことで、ウェハの品質評価を行うことが望まれている。例えば、一つのウェハから複数のラメラを作製し、複数のラメラを一つのラメラキャリアに纏めて搭載し、複数のラメラを荷電粒子線装置で順次解析するような解析システムを構築することができれば、ウェハの品質評価のスループットの向上が果たせる。
【0007】
一般的なラメラの搭載例として、ピンセットによって把持されたラメラを、ハーフムーン型のラメラキャリアに搭載することが行われている。しかし、ハーフムーン型のラメラキャリアでは、例えばフルムーン型に代表されるメッシュと比較して、ラメラの搭載数が少ない。それ故、ラメラの解析時において、ラメラキャリアを頻繁に交換する必要がある。
【0008】
ハーフムーン型のラメラキャリアよりも多くのラメラを搭載できるメッシュに、ピンセットを用いてラメラを搭載することができれば、搬送スループットを向上させることができる。
【0009】
本願の目的の一つは、搬送スループットの向上を図れるラメラの搭載方法を提供することである。そして、その搭載方法を適用することで、ウェハの品質評価のスループットの向上を果たすことができる解析システムを提供する。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
一実施の形態におけるラメラの搭載方法は、荷電粒子線装置を用いて解析されるラメラを、ピンセットによってメッシュに搭載するための方法である。また、ラメラの搭載方法は、(a)ウェハの一部に作製されている前記ラメラを前記ピンセットによって把持し、前記ウェハから前記ラメラを取り出す工程、(b)前記(a)工程後、前記ラメラが前記ピンセットによって把持された状態で、前記ラメラを前記メッシュに含まれる第1膜に押し付けるように、前記ピンセットを移動することで、前記ラメラを前記第1膜に密着させる工程、を備える。ここで、前記ラメラは、本体、および、前記本体の一部に設けられた解析領域を含み、第1方向における前記解析領域の幅は、前記第1方向における前記本体の幅と異なり、前記(b)工程後、前記ラメラは、前記解析領域が前記第1膜と対向するように、前記第1膜に密着されている。
【0012】
一実施の形態における解析システムは、イオンビームカラムを有するラメラ作製装置と、ラメラを把持するためのピンセット、および、前記ラメラを搭載するためのメッシュを有するラメラ搭載装置と、電子源を含む電子ビームカラム、試料ステージ、および、前記試料ステージに設けられたホルダを有するラメラ解析装置と、を備える。また、解析システムは、(a)前記ラメラ作製装置において、前記イオンビームカラムからウェハへイオンビームを照射し、前記ウェハの一部をエッチングすることで、本体、および、前記本体の一部に設けられた解析領域を含む前記ラメラを作製する工程、(b)前記(a)工程後、前記ラメラが作製されている前記ウェハを、前記ラメラ作製装置から前記ラメラ搭載装置へ搬送する工程、(c)前記(b)工程後、前記ラメラ搭載装置において、前記ウェハの一部に作製された前記ラメラを前記ピンセットによって把持し、前記ウェハから前記ラメラを取り出す工程、(d)前記(c)工程後、前記ラメラ搭載装置において、前記ラメラが前記ピンセットによって把持された状態で、前記ラメラを前記メッシュに含まれる第1膜に押し付けるように、前記ピンセットを移動することで、前記ラメラを前記第1膜に密着させる工程、(e)前記(d)工程後、前記ラメラが搭載されている前記メッシュを、前記ラメラ搭載装置から前記ラメラ解析装置へ搬送する工程、(f)前記(e)工程後、前記ラメラ解析装置において、前記解析領域が前記電子源と向き合うように、前記メッシュが前記ホルダ上に載置された状態で、前記電子源から前記解析領域へ電子ビームを照射することで、前記解析領域の解析を行う工程、を備える。ここで、第1方向における前記解析領域の幅は、前記第1方向における前記本体の幅と異なり、前記(d)工程後であって前記(e)工程前に、前記ラメラは、前記解析領域が前記第1膜と対向するように、前記第1膜に密着されている。
【発明の効果】
【0013】
一実施の形態によれば、搬送スループットの向上を図れるラメラの搭載方法を提供できる。また、その搭載方法を適用することで、ウェハの品質評価のスループットの向上を果たすことができる解析システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1における解析システムを示す模式図である。
【
図2】実施の形態1におけるラメラ作製装置を示す模式図である。
【
図3】実施の形態1におけるラメラ搭載装置を示す模式図である。
【
図4】実施の形態1におけるラメラ解析装置を示す模式図である。
【
図5】実施の形態1におけるラメラ解析装置の一例を示す模式図である。
【
図6】実施の形態1におけるラメラ解析装置の他の一例を示す模式図である。
【
図7】実施の形態1におけるウェハおよびラメラを示す斜視図である。
【
図8】実施の形態1におけるラメラの取り出し方法を示す斜視図である。
【
図9】実施の形態1におけるメッシュを示す平面図である。
【
図10】実施の形態1における解析システムの処理フロー図である。
【
図11】実施の形態1および2におけるラメラの搭載方法の処理フロー図である。
【
図12】実施の形態1におけるラメラの搭載方法を示す側面図である。
【
図14】実施の形態2におけるラメラを示す斜視図である。
【
図15】実施の形態2におけるラメラの搭載方法を示す側面図である。
【
図17】実施の形態3および4におけるラメラの搭載方法の処理フロー図である。
【
図18】実施の形態3におけるラメラの搭載方法を示す側面図である。
【
図20】実施の形態4におけるラメラを示す斜視図である。
【
図21】実施の形態4におけるラメラの搭載方法を示す側面図である。
【
図23】実施の形態5におけるメッシュを示す平面図である。
【
図24】実施の形態5におけるメッシュを示す側面図である。
【
図25】実施の形態5および6におけるラメラの搭載方法の処理フロー図である。
【
図27】実施の形態6におけるメッシュを示す平面図である。
【
図28】実施の形態6におけるメッシュを示す側面図である。
【
図29】実施の形態6におけるラメラの搭載方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0016】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は互いに交差し、直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向または高さ方向として説明する場合もある。
【0017】
また、本願の主要な特徴は、ラメラ搭載装置60において、ラメラ10をナノピンセット62によってメッシュ20に搭載するための搭載方法と、その搭載方法が適用された解析システム30とである。まず、解析システム30についての説明を行い、その後、ラメラ10の搭載方法についての詳細な説明を行う。
【0018】
(実施の形態1)
<解析システムの構成>
以下に
図1~
図6を用いて、実施の形態1における解析システム30について説明する。
【0019】
図1に示されるように、解析システム30は、ラメラ作製装置40、ラメラ搭載装置60、ラメラ解析装置70および上位制御部C0を備える。
【0020】
解析システム30では、半導体製造ラインからラメラ作製装置40へウェハ1が搬送され、ラメラ作製装置40においてウェハ1の一部をエッチング加工することで、ラメラ(薄片試料)10が作製される。作製されたラメラ10を有するウェハ1は、ラメラ搭載装置60へ搬送され、ラメラ搭載装置60においてメッシュ(キャリア)20へ搭載される。その後、ラメラ10を搭載するメッシュ20は、ラメラ解析装置70へ搬送され、ラメラ解析装置70においてラメラ10の解析が行われる。
【0021】
なお、ラメラ作製装置40、ラメラ搭載装置60およびラメラ解析装置70の間で行われる搬送作業では、ウェハ1およびメッシュ20は、窒素などの不活性ガスが充満された容器(FOUP)の内部に保管され、搬送完了後に各装置の内部で容器から取り出される。また、これらは、ラメラ作製装置40またはラメラ解析装置70に挿入可能なカートリッジに搭載させてもよい。また、ウェハ1またはメッシュ20の取り扱いの全部または一部は、ユーザによって行われてもよいし、ロボットによって行われてもよい。
【0022】
以下に、解析システム30の主な構成要素である、ラメラ作製装置40、ラメラ搭載装置60、ラメラ解析装置70および上位制御部C0について説明する。
【0023】
<ラメラ作製装置>
図2は、実施の形態1におけるラメラ作製装置40を示す模式図である。ラメラ作製装置40は、例えばFIB-SEM装置のような荷電粒子線装置によって構成される。
【0024】
ラメラ作製装置40は、イオンビームカラム41、電子ビームカラム42、試料室43、ウェハステージ44、サブステージ45、荷電粒子検出器46、X線検出器47、プローブユニット48および各制御部C1~C8を有する。また、ラメラ作製装置40の内部または外部には、入力デバイス50およびディスプレイ51が設けられている。
【0025】
イオンビームカラム41は、イオンビーム(荷電粒子ビーム)IBを発生させるためのイオン源、イオンビームIBを集束するためのレンズ、および、イオンビームIBを走査し、且つ、シフトするための偏向系など、FIB装置として必要な構成要素を全て含む。イオンビームIBとして、一般にガリウムイオンが使用されるが、加工および観察の目的に応じてイオン種は適宜変更してもよい。また、イオンビームIBは、集束イオンビームに限られず、ブロードなイオンビームにマスクを備えたものでもよい。
【0026】
イオンビームカラム制御部C2は、イオンビームカラム41を制御する。例えば、イオン源からのイオンビームIBの発生および偏向系の駆動などが、イオンビームカラム制御部C1によって制御される。
【0027】
電子ビームカラム42は、電子ビーム(荷電粒子ビーム)EB1を発生させるための電子源、電子ビームEB1を集束するためのレンズ、および、電子ビームEB1を走査し、且つ、シフトするための偏向系など、SEM装置として必要な構成要素を全て含む。
【0028】
電子ビームカラム制御部C3は、電子ビームカラム42を制御する。例えば、電子源からの電子ビームEB1の発生および偏向系の駆動などが、電子ビームカラム制御部C3によって制御される。
【0029】
イオンビームカラム41から照射されるイオンビームIB、および、電子ビームカラム42から照射される電子ビームEB1は、主にイオンビームカラム41の光軸OA1と電子ビームカラム42の光軸OA2との交点であるクロスポイントCP1にフォーカスされる。
【0030】
なお、実施の形態1においては、イオンビームカラム41を垂直配置し、電子ビームカラム42を傾斜配置しているが、これに限られず、イオンビームカラム41を傾斜配置し、電子ビームカラム42を垂直配置してもよい。また、イオンビームカラム41および電子ビームカラム42の双方を傾斜配置してもよい。
【0031】
また、イオンビームカラム41および電子ビームカラム42は、これらの代わりに、ガリウム集束イオンビームカラム、アルゴン集束イオンビームカラムおよび電子ビームカラムを備えたトリプルカラムによって構成されていてもよい。
【0032】
また、電子ビームカラム42は、電子ビームEB1をウェハ1に照射し、電子ビームEB1の照射位置におけるウェハ1の構造を観察するために設けられている。しかし、電子ビームカラム42の代わりに、光学顕微鏡または原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)のような観察システムを適用してもよい。また、イオンビームカラム41のみで、ウェハ1の加工および観察を兼ねた構成としてもよい。
【0033】
ウェハステージ44は、試料室43内において、ウェハ1にイオンビームIBおよび電子ビームEB1が照射される位置に設けられている。サブステージ45は、メッシュ20を載置可能であり、ウェハステージ44上に設けられている。サブステージ45の駆動は、サブステージ制御部C5によって制御される。
【0034】
ウェハステージ44の駆動は、ウェハステージ制御部C4によって制御される。このため、ウェハステージ44は、平面移動、垂直移動、回転移動および傾斜移動を行うことができる。ウェハステージ44を駆動することによって、ウェハ1およびサブステージ45の各々の位置および向きを自由に変更することができる。例えば、ウェハ1上の所望の箇所が、イオンビームIBの照射位置または電子ビームEB1の照射位置に位置するように、ウェハステージ44は移動する。
【0035】
荷電粒子検出器46は、イオンビームIBおよび電子ビームEB1をウェハ1またはラメラ10に照射した際に発生する荷電粒子を検出する。この時、X線検出器47は、ウェハ1またはラメラ10から発生するX線を検出する。また、ラメラ作製装置40には、荷電粒子検出器46として、電子だけでなくイオンの検出も可能な複合荷電粒子検出器が設けられていてもよい。
【0036】
検出器制御部C6は、荷電粒子検出器46を制御でき、荷電粒子検出器46からの検出信号を演算処理し、画像化する回路または演算処理部を備える。X線検出器制御部C7は、X線検出器47を制御でき、検出したX線のエネルギーを識別し、スペクトルを得るための演算処理部を備える。
【0037】
なお、
図2に示されるように、荷電粒子検出器46および検出器制御部C6が電子ビームカラム42に設けられている場合もある。
【0038】
プローブユニット48は、ウェハ1に作製されたラメラ10を取り出す際に用いられ、プローブユニット制御部C8によって制御される。また、プローブユニット48をウェハ1の表面に接触させることで、ウェハ1へ電位を供給したりすることもできる。なお、ラメラ10を取り出すという目的であれば、プローブユニット48の代わりにナノピンセットを適用しても良い。
【0039】
統合制御部C1は、イオンビームカラム制御部C2、電子ビームカラム制御部C3、ウェハステージ制御部C4、検出器制御部C4、サブステージ制御部C5、検出器制御部C6、X線検出器制御部C7およびプローブユニット制御部C8のそれぞれと互いに通信可能であり、ラメラ作製装置40全体の動作を制御する。
【0040】
統合制御部C1は、上位制御部C0からの指示に従って、各制御部C2~C8を制御し、各制御部C2~C8にウェハ1の加工条件および観察条件などを指示する。また、ラメラ作製装置40で得られた加工情報および観察結果は、統合制御部C1から上位制御部C0へ伝達される。
【0041】
なお、本願では説明を判り易くするため、各制御部C2~C8は、各々に関連する制御対象の近くに個別に図示されているが、各制御部C2~C8は、統合制御部C1の一部として一つの制御ユニットに纏められていてもよい。
【0042】
入力デバイス50は、例えば、解析対象の情報の入力、イオンビームIBおよび電子ビームEB1の照射条件の変更、並びに、ウェハステージ44およびサブステージ45の位置の変更などの指示を、ユーザが入力するためのデバイスである。入力デバイス50は、例えばキーボードまたはマウスなどである。
【0043】
ディスプレイ51には、GUI画面52などが表示される。GUI画面52は、ラメラ作製装置40の各構成を制御するための画面である。入力デバイス50によってGUI画面52に各種指示が入力された場合、上記指示は、上位制御部C0を介して統合制御部C1に送信される。ディスプレイ51は、GUI画面52として、例えば、解析対象の情報を入力する画面、ラメラ作製装置40の各構成の状態を示す画面、観察により取得された解析対象の情報を表示する画面、イオンビームIBおよび電子ビームEB1の照射条件を変更するための指示画面、並びに、ウェハステージ44の位置を変更するための指示画面などを表示することができる。ディスプレイ51は、一つ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。
【0044】
図示はしないが、試料室43には、上記以外にも、ガスデポジションユニットが搭載されていてもよい。ガスデポジションユニットは、それぞれその駆動を制御する制御部を有する。ガスデポジションユニットは、ウェハ1への保護膜の作製またはマーキングに使用され、荷電粒子線の照射によって堆積膜を形成するデポガスを貯蔵する。デポガスは、必要に応じてノズル先端から供給することができる。また、試料室43には、真空排気するための減圧装置、コールドトラップまたは光学顕微鏡などが搭載されていてもよい。また、試料室43には、三次電子検出器、STEM検出器、後方散乱電子検出器または低エネルギー損失電子検出器などの他の検出器が搭載されていてもよい。
【0045】
<ラメラ搭載装置>
図3は、実施の形態1におけるラメラ搭載装置60を示す模式図である。ラメラ搭載装置60は、例えば二本の電子ビームカラムを備えるSEM装置のような荷電粒子線装置によって構成される。なお、ラメラ搭載装置60に含まれる多くの構成と、それらの動作とは、ラメラ作製装置40の場合とほぼ同じであるため、ここではそれらの詳細な説明を省略する。
【0046】
ラメラ搭載装置60は、ラメラ作製装置40のイオンビームカラム41およびイオンビームカラム制御部C2の代わりに、電子ビームカラム61および電子ビームカラム制御部C9を有する。また、ラメラ搭載装置60は、ナノピンセット(ピンセット)62およびナノピンセット制御部C10を有する。
【0047】
電子ビームカラム61は、電子ビームカラム42と同様に、電子ビーム(荷電粒子ビーム)EB2を発生させるための電子源、電子ビームEB2を集束するためのレンズ、および、電子ビームEB2を走査し、且つ、シフトするための偏向系など、SEM装置として必要な構成要素を全て含む。また、ラメラ搭載装置60で用いられる電子ビームカラム61の電子源は、電界放出型、ショットキー型または熱電子型でもよい。
【0048】
電子ビームカラム制御部C9は、電子ビームカラム61を制御する。例えば、電子源からの電子ビームEB2の発生および偏向系の駆動などが、電子ビームカラム制御部C9によって制御される。
【0049】
また、電子ビームカラム42から照射された電子ビームEB1および電子ビームカラム61から照射された電子ビームEB2は、主に電子ビームカラム42の光軸OA2と電子ビームカラム61の光軸OA3との交点であるクロスポイントCP2にフォーカスされる。ラメラ搭載装置60が、電子ビームカラム42および電子ビームカラム61を有するので、ウェハ1、ラメラ10およびメッシュ20を二方向から観察することが可能になる。
【0050】
なお、実施の形態1では、二本の電子ビームカラムが用いられるが、二方向からのウェハ1、ラメラ10およびメッシュ20の像観察が可能であれば、二本の電子ビームカラムの代わりに、イオンビームカラム、光学顕微鏡またはAFMなどが用いられてもよい。また、二本の電子ビームカラムの一方または両方が、イオンビームカラムであってもよい。
【0051】
ナノピンセット62は、ウェハ1に作製されたラメラ10を取り出す際に用いられ、プローブユニット制御部C10によって制御される。また、ナノピンセット62には、ウェハ1の表面への接触検知機能または応力センサーなどが備えられていてもよい。
【0052】
メッシュ20は、サブステージ45に載置されている。ウェハステージ44が平面移動、垂直移動、回転移動および傾斜移動することによって、ウェハ1、サブステージ45およびメッシュ20の各々の位置および向きを自由に変更することができる。
【0053】
ウェハステージ44上において、ナノピンセット62によってウェハ1から複数のラメラ10が順次取り出され、ナノピンセット62に把持されたラメラ10は、メッシュ20へ搭載される。
【0054】
統合制御部C11は、上位制御部C0からの指示に従って、各制御部C3~C6、C9、C10を制御し、各制御部C3~C6、C9、C10に、ラメラ10の搭載条件などを指示する。また、ラメラ搭載装置60で得られた搭載結果は、統合制御部C11から上位制御部C0へ伝達される。なお、各制御部C3~C6、C9、C10は、統合制御部C11の一部として一つの制御ユニットに纏められていてもよい。
【0055】
<ラメラ解析装置>
図4は、実施の形態1におけるラメラ解析装置70を示す模式図である。ラメラ解析装置70は、例えばTEM装置またはSTEM装置のような荷電粒子線装置によって構成される。
【0056】
ラメラ解析装置70は、電子ビームカラム71、試料ステージ72、ホルダ73、荷電粒子検出器74、蛍光板75、カメラ76、X線検出器77および各制御部C12~C17を有する。また、ラメラ解析装置70の内部または外部には、入力デバイス50およびディスプレイ51が設けられている。
【0057】
電子ビームカラム71は、電子ビームを発生させるための電子源、電子ビームを集束するためのレンズ、および、電子ビームを走査し、且つ、シフトするための偏向系など、TEM装置またはSTEM装置として必要な構成要素を全て含む。電子ビームカラム71を通過する電子ビームは、メッシュ20に搭載されたラメラ10に照射される。
【0058】
電子ビームカラム制御部C12は、電子ビームカラム71を制御する。具体的には、電子ビームカラム71の電子源による電子ビームの発生および偏向系の駆動が、電子ビームカラム制御部C12によって制御される。
【0059】
試料ステージ72にはホルダ73が設けられ、ホルダ73にメッシュ20を載置することができる。試料ステージ72は、試料ステージ制御部C13によってその駆動が制御され、平面移動、垂直移動または回転移動を行うことができる。試料ステージ72を駆動することによって、ホルダ73の位置および向きが変更し、メッシュ20に搭載されているラメラ10の位置および向きが変更する。
【0060】
荷電粒子検出器74は、電子ビームをラメラ10に照射した際に発生する荷電粒子を検出する。荷電粒子検出器74には、電子だけでなくイオンの検出も可能な複合荷電粒子検出器が用いられてもよい。X線検出器77は、ラメラ10が発するX線を検出する。
【0061】
検出器制御部C14は、荷電粒子検出器74を制御でき、荷電粒子検出器74からの検出信号を演算処理し、画像化する回路または演算処理部を備える。X線検出器制御部C16は、X線検出器77を制御でき、検出したX線のエネルギーを識別し、スペクトルを得るための演算処理部を備える。
【0062】
ラメラ10を透過した透過電子は蛍光板75に衝突し、透過型電子顕微鏡像が投影される。カメラ76は、蛍光板75を撮像する。カメラ制御部C15は、カメラ76の動作を制御する。
【0063】
統合制御部C17は、電子ビームカラム制御部C12、試料ステージ制御部C13、検出器制御部C14、カメラ制御部C15およびX線検出器制御部C16のそれぞれと互いに通信可能であり、ラメラ解析装置70全体の動作を制御する。
【0064】
統合制御部C17は、上位制御部C0からの指示に従って、各制御部C12~C16を制御し、各制御部C12~C16にラメラ10の解析条件などを指示する。また、ラメラ解析装置70で得られた解析結果は、統合制御部C17から上位制御部C0へ伝達される。なお、各制御部C12~C16は、統合制御部C17の一部として一つの制御ユニットに纏められていてもよい。
【0065】
また、メッシュ20(ラメラ10)の近傍には、コールドトラップが配置されてもよいし、ホルダ73には、冷却機構、加熱機構またはガス導入機構などが設けられていてもよい。
【0066】
図5は、ラメラ解析装置70がTEM装置である場合の模式図であり、
図6は、ラメラ解析装置70がSTEM装置である場合の模式図である。
【0067】
図5および
図6に示されるように、電子ビームカラム71は、電子ビームを発生させるための電子源78、電子ビームをラメラ10に照射するための照射レンズ群79、対物レンズ80、透過電子を投影するための投影レンズ群81、ラメラ10から放出されたX線を検出するX線検出器82、電子エネルギー損失分光器(EELS)83、および、EELS用検出器84を備える。
【0068】
また、電子ビームカラム71は、電子ビームを走査またはシフトするための偏向系85、広角に散乱された透過電子を検出するための円環状検出器86、透過電子を検出する透過電子検出器87、および、電子ビームの開き角を制御するための絞り88など、解析に必要な要素を全て搭載している。
【0069】
TEMモードの場合、
図5に示されるように、電子ビームを試料上の観察領域全面に広げて照射し、投影像、干渉像および回折パターンなどを得ることで、ラメラ10の情報が取得される。一方、STEMモードの場合、
図6に示されるように、電子ビームをラメラ10上にフォーカスし、観察領域を走査することで、ラメラ10の情報が取得される。
【0070】
<上位制御部>
図1に示されるように、上位制御装置C0は、メモリC0a、ラメラ10の作製結果を評価する加工終了判定部C0b、および、ラメラ10の解析結果を評価する解析結果判定部C0cを備える。メモリC0aは、不揮発性メモリまたはハードディスクなどで構成される記憶装置である。
【0071】
メモリC0aには、ラメラ10に対応するFIB加工条件が保存されている。FIB加工条件には、例えば、イオンビームの加速電圧、ビーム電流、ウェハ1上の加工領域、および、加工順序などが含まれる。
【0072】
また、メモリC0aには、各ラメラ10に対応する解析条件が保存されている。解析条件には、複数の項目が含まれる。
【0073】
TEMモードの場合、解析条件には、例えば、観察モード、TEM倍率、カメラ長およびプローブ電流量(照射系の絞り径の大きさ)などが含まれる。観察モードは、例えば、TEM画像観察、回折パターン観察、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)および電子エネルギー損失分光分析(EELS分析)などである。
【0074】
STEMモードの場合、解析条件には、例えば、観察倍率、プローブ径(光学系の縮小率)、ラメラ10への照射角、検出器(透過電子検出器、円環状検出器、二次電子検出器等)の選択、および、検出器の取り込み角などが含まれる。
【0075】
加工終了判定部C0bおよび解析結果判定部C0cは、ハードウェアにより構成されてもよいし、ソフトウェアの実行によりプロセッサ上に実現されるものでもよいし、ハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせて構成されたものでもよい。
【0076】
上位制御部C0のメモリC0aは、
図1に示される解析位置データD1、ラメラ作製位置データD2、ラメラ搭載位置データD3および解析データD4を保持できる。
【0077】
解析位置データD1は、ウェハ1上において断面解析を行う予定の位置を示すデータであり、ラメラ10の加工条件および観察条件を含む。ラメラ作製位置データD2は、ウェハ1上においてラメラ10の作製に成功した位置を示すデータであり、ラメラ10の加工情報および観察結果を含む。ラメラ搭載位置データD3は、メッシュ20に搭載されているラメラ10の位置を示すデータであり、ラメラ10の搭載条件を含む。解析データD4は、解析結果を含むデータであり、電子ビームに照射されたラメラ10からの荷電粒子またはX線の検出信号、および、上記検出信号から得られた観察像などを含むデータである。
【0078】
また、解析位置データD1、ラメラ作製位置データD2、ラメラ搭載位置データD3および解析データD4は、それぞれの情報が紐付けられている。つまり、ウェハ1上の所定位置に作製されたラメラ10が、メッシュ20上のどの位置に搭載され、そのラメラ10の解析結果がどのようになったかを知ることができる。
【0079】
なお、後述するように、様々な形状を有する複数のラメラ10が存在しているが、各データD1~D4には、位置データだけでなく、ラメラ10が何れの形状であるかを示す形状データも含まれる。
【0080】
例えば、メモリC0aには、各ラメラ10の形状に対応する複数の搭載方法が保存されている。上位制御部C0は、ラメラ作製位置データD2に基づいて、ラメラ10の形状に関する情報をラメラ作製装置40から取得できる。そして、上位制御部C0は、ラメラ10をメッシュ20へ搭載させるための複数の搭載方法のうちラメラ10の形状に応じた搭載方法を、ラメラ搭載装置60へ指定できる。
【0081】
ところで、上位制御部C0は、ラメラ作製装置40の総合制御部C1、ラメラ搭載装置60の総合制御部C11およびラメラ解析装置70の総合制御部C17を統括し、これらで行われる各動作を制御できる。従って、本願では、各制御部C1~C17を統括する制御ユニットとして、上位制御部C0を単に「制御部」と表現する場合もある。
【0082】
<ラメラ>
以下に
図7を用いて、実施の形態1で使用されるラメラ10について説明する。
【0083】
図7に示されるように、ラメラ10は、ラメラ作製装置40によって、ウェハ1の一部をエッチングすることで作製される。作製時には、ラメラ10は、接続箇所1aによってウェハ1に接続されている。接続箇所1aは、1つだけでなく、2つ以上であってもよい。
【0084】
図7の時点ではラメラ10、接続箇所1aおよびウェハ1は一体化しているが、
図8に示されるように、ラメラ10をメッシュ20へ搭載する際に、ラメラ10は、ナノピンセット62によって把持され、取り上げられる。これにより、ラメラ10は、接続箇所1aから分離する。
【0085】
なお、実施の形態1におけるウェハ1は、p型またはn型の不純物領域が形成された半導体基板、上記半導体基板上に形成されたトランジスタなどの半導体素子、および、上記半導体素子上に形成された配線層などで構成されている。また、ウェハ1の状態は、半導体基板、上記半導体素子および上記配線層などが完成されている場合も含むし、これらが製造途中である場合も含む。ラメラ10はウェハ1の一部から取得された薄片であるので、ラメラ10の構造は、上記半導体基板、上記半導体素子および上記配線層のうち全部または一部を含んでいる。また、実施の形態1では、主に半導体製造ラインで製造されるウェハ1について説明しているが、ウェハ1は、半導体技術以外で用いられる構造体でもよい。
【0086】
ラメラ10は、Y方向における幅が、X方向における幅およびZ方向における幅よりも薄い薄片試料である。ラメラ10は、本体10a、および、本体10aの一部に設けられた解析領域11を含む。解析領域11は、ラメラ解析装置70において解析対象となる領域である。Y方向における解析領域11の幅は、Y方向における本体10aの幅と異なり、Y方向における本体10aの幅よりも薄い。
【0087】
また、本体10aは、Y方向における幅が解析領域11から離れるに連れて連続的に減少する切り欠き領域12を含む。切り欠き領域12は、ラメラ10をナノピンセット62によって取り出す際に、ラメラ10がウェハ1から離脱し易いように加工された領域である。
【0088】
なお、ウェハ1のサイズは、直径100mm~300mmである。ラメラ10のサイズについては、X方向における幅およびZ方向における幅が、それぞれ数μm~数10μm程度であり、Y方向における幅が、数μm程度である。解析領域11のY方向における幅は、数nm~数10nmである。
【0089】
<メッシュ>
以下に
図9を用いて、実施の形態1で使用されるメッシュ20について説明する。
【0090】
図9では、複数のラメラ10がメッシュ20に搭載された様子が示されている。メッシュ20は、多数の孔が形成され、格子形状(グリッド)を成している基体21と、基体21上に形成された膜22とを含む。膜22は、例えば、カーボン膜または高分子樹脂膜であり、電子を透過させる性質を有する。この膜22に、ラメラ10が密着され、支持される。また、膜22は平坦面を成し、ラメラ10は平坦面に支持される。
【0091】
なお、膜22自体を格子形状にすることで、膜22のみでメッシュ20を構成することもできる。また、1つの格子に1つのラメラ10が支持されてもよいが、1つの格子に複数のラメラ10が支持されてもよい。また、
図9のメッシュ20は、フルムーン型であり、円形状を成している。しかし、メッシュ20の形状は、円形状に限られず、多角形状であってもよいし、任意の形状を取り得る。
【0092】
<解析システムの処理フロー>
図10は、実施の形態1における解析システム30の処理フロー図である。なお、
図10では、各ステップが、ラメラ作製装置40、ラメラ搭載装置60、上位制御部C0およびラメラ解析装置70に対応して示されている。
【0093】
ステップS1では、断面解析を行いたいウェハ1を、半導体製造ラインからラメラ作製装置40へ搬送し、搬送されたウェハ1をラメラ作製装置40のウェハステージ44上に設置する。
【0094】
ステップS2では、上位制御部C0は、解析位置データD1を含まれるラメラ10の加工条件および観察条件を読み出す。また、ラメラ10の形状に関するデータも読み出される。
【0095】
ステップS3では、上位制御部C0は、読み出した情報をラメラ作製装置40へ出力する。ステップS4では、ラメラ作製装置40は、出力された情報を基に、ラメラ10の加工条件を設定する。
【0096】
ステップS5では、加工条件に基づいて、ウェハステージ44が解析位置に移動する。次に、イオンビームカラム41からウェハ1へイオンビームIBを照射し、ウェハ1上の断面解析を行いたい領域の周辺をエッチングし、ラメラ10の外形となる本体10aを作製する。次に、本体10aの一部にエッチングを行うことで、ラメラ10の上部に解析領域11を作製する。解析領域11には、後に解析を行うための仕上げ面処理などが施される。
【0097】
ステップS6では、ラメラ作製装置40は、ラメラ10の加工情報および観察結果をラメラ作製位置データD2として上位制御部C0へ出力する。ラメラ作製位置データD2には、ラメラ10の形状に関する情報も含まれる。なお、これらの情報は、例えばSEM画像でもよいし、特定箇所における電気信号の強度変化などでもよい。電気信号の強度変化は、ラメラ10の厚さに依存する信号でもよいし、ラメラ10を構成する構造物が露出および消失を繰り返すことによる強度変化でもよい。
【0098】
ステップS7では、上位制御部C0の加工終了判定部C0bは、上記情報に基づいて、ウェハ1の加工を継続させるか、終了させるかの要否判定を行う。この要否判定は、例えば画像マッチング法などが用いられる。画像マッチング法では、例えばラメラ10の加工断面像(SEM像)が、予め準備された参照画像と一致するか否かで、加工の要否が判定される。
【0099】
ラメラ10の加工断面像と参照画像とが一致しない場合(NO)、加工が終了していないと判断され、ステップS5に戻りFIB加工が継続される。一方、ラメラ10の加工断面像と参照画像とが一致した場合(YES)、加工が終了したと判断され、ステップS8が実行される。
【0100】
また、上述のようなウェハステージ44の移動およびラメラ10の作製は、加工中のウェハ1において解析位置データD1に対応する全ての領域に対して実施される。すなわち、解析位置データD1に対応する全てのラメラ10の作製が終了するまで、ステップS5~S7が繰り返される。
【0101】
ステップS8では、ラメラ10の作製が終了したウェハ1を、ラメラ作製装置40から取り出す。また、ラメラ作製装置40は、ウェハ1の情報を上位制御部C0へ出力し、ステップS9において、上位制御部C0は、ウェハ1の情報を取得する。なお、ウェハ1の情報の出力と、ウェハ1の取り出しとは、同時に行われなくてもよい。
【0102】
ステップS10では、複数のラメラ10が作製されたウェハ1を、ラメラ作製装置40からラメラ搭載装置60へ搬送する。また、ステップS11では、メッシュ20をラメラ搭載装置60へ搬送する。ステップS10およびステップS11は、並走して行われる。
【0103】
ステップS12では、上位制御部C0は、ラメラ10の搭載方法を読み出す。ステップS13では、上位制御部C0は、ラメラ10の形状に関する情報に基づいて、ラメラ10をメッシュ20へ搭載させるための複数の搭載方法のうちラメラ10の形状に応じた搭載方法を、ラメラ搭載装置60へ指定する。また、上位制御部C0は、搭載方法と共に、受け取ったウェハ1に対応するラメラ作製位置データD2をラメラ搭載装置60へ出力する。
【0104】
なお、ラメラ搭載装置60が複数の搭載方法を記憶している場合、上位制御部C0に格納される搭載方法は、例えばIDのような、ラメラ搭載装置60が格納する搭載方法を特定するものでもよい。
【0105】
ステップS14では、ラメラ搭載装置60は、上位制御部C0から出力された情報を基づいて、上位制御部C0によって指定された搭載方法を行うために、ラメラ搭載装置60に含まれる各構成の駆動条件を設定する。
【0106】
ステップS15では、指定された搭載方法によって、ラメラ10をメッシュ20へ搭載する。なお、ラメラ10の搭載方法については、後で
図12~
図14を用いて詳細に説明する。また、ラメラ10の形状によって搭載方法が異なる場合がある、そのような他の搭載方法については、他の実施の形態において説明する。
【0107】
ステップS16では、ラメラ10の搭載結果を、ラメラ搭載位置データD3と共にラメラ搭載装置60から上位制御部C0へ出力する。ラメラ10を搭載したメッシュ20は、ラメラ搭載装置60から取り出される。
【0108】
ステップS17では、取り出されたメッシュ20をラメラ搭載装置60からラメラ解析装置70へ搬送する。ステップS18では、上位制御部C0は、メッシュ20の搬送情報を取得する。搬送情報は、例えばメッシュ20のIDでもよいし、メッシュ20に搭載されたラメラ10に対応するウェハ1のIDなどでもよい。ステップS17およびステップS18は、並走して行われる。
【0109】
ステップS19では、上位制御部C0は、メモリC0aから解析条件を読み出す。ステップS20では、上位制御部C0は、読み出された解析条件をラメラ解析装置70へ出力する。その後、ステップS21では、出力された解析条件に基づいて、ラメラ解析装置70は、解析条件の設定を行う。
【0110】
ステップS22では、メッシュ20をホルダ73上に載置し、試料ステージ72を駆動することで、メッシュ20を所定の観察位置まで移動させる。
【0111】
ステップS23では、解析領域11が電子源78と向き合うように、メッシュ20がホルダ73上に載置された状態で、設定された解析条件で電子源78から解析領域11へ電子ビームを照射することで、解析領域11の解析を行う。
【0112】
ステップS24では、ラメラ解析装置70は、ラメラ10の解析結果を解析データD4として上位制御部C0へ出力する。ステップS25では、上位制御部C0の解析結果判定部C0cは、解析データD4に基づいて、ラメラ10に対する評価を行う。メッシュ20に搭載された全てのラメラ10の評価が終了したら、メッシュ20をラメラ解析装置70から取り出す。
【0113】
<ラメラの搭載方法>
以下に
図11~
図13を用いて、ステップS15で示した実施の形態1におけるラメラ10の搭載方法について、詳細に説明する。
図11は、実施の形態1および2におけるラメラの搭載方法の処理フロー図である。
図12および
図13に示されるステップS101~S105は、
図11のステップS101~S105に対応している。
【0114】
ステップS101では、まず、ウェハ1の一部に作製されたラメラ10をナノピンセット62によって把持し、ウェハ1からラメラ10を取り出す。次に、ナノピンセット62をメッシュ20に近づける。ナノピンセット62をメッシュ20に近づけるためには、ナノピンセット制御器C10の制御によってナノピンセット62を移動してもよいし、サブステージ45およびウェハステージ44を併用してメッシュ20を移動してもよい。
【0115】
なお、メッシュ20は、サブステージ45に載置されているが、サブステージ45を駆動することで、メッシュ20を90度傾けるなど、メッシュ20の向きを自由に調整できる。また、メッシュ20を傾ける手段として、L字型のホルダを利用してもよい。
【0116】
ステップS102では、ラメラ10がナノピンセット62によって把持された状態で、ラメラ10をメッシュ20に含まれる膜22に押し付けるように、ナノピンセット62を移動する。これにより、ラメラ10が膜22に密着する。実施の形態1では、切り欠き領域12がメッシュ20に密着する。なお、この時点では、解析領域11は膜22と対向していない。
【0117】
ラメラ10を膜22の指定箇所に数秒間で押し付けることによって、ラメラ10の底面(切り欠き領域12)と膜22の指定箇所との間に分子間力などの力(密着力)が発生し、それによりラメラ10を膜22の指定箇所に密着させることができる。なお、膜22の指定箇所の情報は、上位制御部C0から出力された搭載条件に含まれている。
【0118】
なお、切り欠き領域12のような形状の場合、ラメラ10が膜22に対して垂直な状態でなく、傾斜した状態で、ラメラ10を膜22に密着される場合もある。
【0119】
また、ユーザは、ラメラ10の底面と膜22の指定箇所との接触を、ディスプレイ51のGUI画面52を見る、または、接触検知センサーなどを使用して検知するなどの方法で確認できる。
【0120】
ラメラ10と膜22との密着力は、分子間力だけでなく、クーロン力および静電気力なども含まれる。この密着力は、相対的に大きな力であり、ナノピンセット62がラメラ10を把持している際におけるナノピンセット62とラメラ10との密着力よりも大きい。言い換えれば、ラメラ10が膜22に密着している面積は、ナノピンセット62の先端部がラメラ10に接触している面積よりも大きい。
【0121】
そのため、ナノピンセット62からラメラ10を開放しても、ラメラ10は倒れない。例えば、メッシュ20(膜22)が重力と平行な方向に沿うように配置され、ラメラ10が重力と垂直な方向で膜22に密着された場合、ナノピンセット62からラメラ10を開放しても、ラメラ10は、落下せず、膜22に支持される。
【0122】
ステップS103では、ナノピンセット62の先端部を開き、ナノピンセット62からラメラ10を開放する。ここで、上述のように、ラメラ10は、膜22に支持されている。
【0123】
ステップS104では、ナノピンセット62を移動させ、ナノピンセット62をラメラ10に接触させることで、ラメラ10の向きを変更する。すなわち、ラメラ10を倒すように、ナノピンセット62を移動させる。
【0124】
また、膜22とラメラ10との密着力は、ナノピンセット62がラメラ10に接触した際におけるナノピンセット62とラメラ10との密着力よりも大きい。そのため、ナノピンセット62の移動に伴って、ラメラ10もナノピンセット62と一緒に移動し、ラメラ10の搭載位置が変更されてしまうような不具合を抑制できる。
【0125】
ステップS105では、ステップS104に続き、更にナノピンセット62を移動させる。これにより、ラメラ10が倒され、ラメラ10が膜22と水平になる。すなわち、ラメラ10は、解析領域11が膜22と対向するように、膜22に密着される。その後、ナノピンセット62を、メッシュ20から離れるように移動させる。
【0126】
以上で、ラメラ10をメッシュ20に搭載する工程が完了する。
【0127】
このように、実施の形態1におけるラメラ10の搭載方法によれば、ハーフムーン型のラメラキャリアよりも多くのラメラを搭載できるメッシュ20に、ナノピンセット62を用いて多くのラメラ10を搭載することができる。従って、ハーフムーン型のラメラキャリアを採用した場合と比較して、搬送スループットを向上させることができる。また、実施の形態1におけるメッシュ20は、市販の物(従来と同じ物)を利用できるので、ランニングコストの低減を図れる。
【0128】
そして、解析システム30にこの搭載方法を適用することで、ウェハの品質評価のスループットの向上を果たせる。更に、ラメラ10をメッシュ20へ搭載する工程を自動化できるので、搬送スループットを更に向上させることができ、ユーザの労力を軽減できる。
【0129】
(実施の形態2)
以下に
図14~
図16を用いて、実施の形態2におけるラメラ10、および、ラメラ10の搭載方法について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0130】
図14に示されるように、実施の形態2におけるラメラ10は、Y方向において本体10aから突出する突出部10bを更に含む。Y方向における突出部10bの幅は、Y方向における本体10aの幅よりも広い。このように、実施の形態2におけるラメラ10は、本体10aと突出部10bとで、L字型を成している。
【0131】
このようなラメラ10は、ラメラ作製装置40において作製され、ラメラ10の形状の情報は、ラメラ作製位置データD2の一部として保存される。上位制御部C0は、取得されたラメラ10の形状の情報に基づいて、L字型のラメラ10をメッシュ20へ搭載させるための搭載方法を、ラメラ搭載装置60へ指定する。
【0132】
以下に
図15および
図16を用いて、実施の形態2におけるラメラ10の搭載方法について説明する。
図11に示されるように、実施の形態2におけるラメラの搭載方法は、一部を除いて実施の形態1とほぼ同じ手法で行われる。
図15および
図16に示されるステップS101~S105は、
図11のステップS101~S105に対応している。
【0133】
ステップS101では、まず、ウェハ1の一部に作製されたラメラ10をナノピンセット62によって把持し、ウェハ1からラメラ10を取り出す。ここで、突出部10bが膜22に対向するように、本体10aをナノピンセット62によって把持する。次に、ナノピンセット62をメッシュ20に近づける。
【0134】
ステップS102では、ラメラ10の本体10aがナノピンセット62によって把持された状態で、ラメラ10を膜22に押し付けるように、ナノピンセット62を移動する。これにより、ラメラ10が膜22に密着する。実施の形態2では、突出部10bがメッシュ20に密着する。なお、この時点では、解析領域11は膜22と対向していない。
【0135】
実施の形態2でも、分子間力などの力によって、ラメラ10と膜22とを密着させる。実施の形態2では、突出部10bが膜22と密着しているので、実施の形態1の切り欠き領域12と比較して、ラメラ10と膜22との接触面積が増加する。従って、ラメラ10と膜22との密着力を増加させることができる。
【0136】
以降のステップS103~S105は、実施の形態1とほぼ同じである。ステップS103では、ナノピンセット62からラメラ10を開放する。ここで、上述のように、ラメラ10は、膜22に支持されている。ステップS104では、ナノピンセット62を移動させ、ナノピンセット62をラメラ10に接触させることで、ラメラ10の向きを変更する。
【0137】
ステップS105では、ステップS104に続き、更にナノピンセット62を移動させる。これにより、ラメラ10が倒され、ラメラ10が膜22と水平になる。すなわち、ラメラ10は、解析領域11が膜22と対向するように、膜22に密着される。その後、ナノピンセット62を、メッシュ20から離れるように移動させる。
【0138】
なお、実施の形態2のように、広い接触面積を確保できる突出部10bを設けることによって、膜22を立てた状態、すなわち膜22とラメラ10との接触面が重力場の向かう方向と平行な状態で、膜22にラメラ10を接触させることが可能となる。これは、後述する実施の形態3および4においても同様である。
【0139】
ラメラ10は、ウェハ1等からイオンビームIBによる切削加工によって切り出され、イオンビームIBによる切削加工後、上方に向かってナノピンセット62等のような把持機構によって摘み上げられる。膜22を立てた状態とすることによって、摘み上げた時点の把持状態を維持しつつ、ラメラ10を膜22に接触させることが可能となる。この接触後、膜22を倒す。すなわち、解析領域11の表面が電子ビームEB2の光軸OA3に垂直となるように、膜22の姿勢を変える。これにより、把持機構に複雑な動きをさせる、または、ラメラ10を持ち替えるなどの動作を行わずに、観察準備を行うことが可能となる。
【0140】
また、突出部10bと膜22との接触面の面積を、ピンセット62とラメラ10の接触面の面積より大きくすることによって、分子間力を用いたラメラ10の受け渡しを円滑に行うことが可能となる。
【0141】
(実施の形態3)
以下に
図17~
図19を用いて、実施の形態3におけるラメラ10の搭載方法について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態2との相違点について主に説明し、実施の形態2と重複する点については説明を省略する。
【0142】
実施の形態3で使用されるラメラ10は、実施の形態2と同様に、
図14のL字型のラメラ10である。実施の形態3では、上位制御部C0は、L字型のラメラ10をメッシュ20へ搭載させるための他の搭載方法を、ラメラ搭載装置60へ指定する。
【0143】
図17は、実施の形態3および4におけるラメラの搭載方法の処理フロー図である。
図18および
図19に示されるステップS201~S204は、
図17のステップS201~S204に対応している。
【0144】
ステップS201では、まず、ウェハ1の一部に作製されたラメラ10をナノピンセット62によって把持し、ウェハ1からラメラ10を取り出す。ここで、本体10aの解析領域11が膜22に対向するように、突出部10bをナノピンセット62によって把持する。次に、ナノピンセット62をメッシュ20に近づける。
【0145】
ステップS202では、ラメラ10の突出部10bがナノピンセット62によって把持された状態で、ラメラ10を膜22に押し付けるように、ナノピンセット62を移動する。これにより、解析領域11が膜22と対向するように、ラメラ10が膜22に密着する。実施の形態3では、本体10aがメッシュ20に密着する。
【0146】
ステップS203では、ナノピンセット62の先端部を開き、ナノピンセット62からラメラ10を開放する。ここで、ラメラ10は、膜22に支持されている。
【0147】
ステップS204では、ナノピンセット62を、メッシュ20から離れるように移動させる。
【0148】
このように、実施の形態3では、ナノピンセット62によって突出部10bを把持することで、解析領域11が膜22と対向するように、ラメラ10を膜22に密着させることができる。そのため、実施の形態3では、実施の形態1および2と比較して、搭載工程数を減らすことができるので、搬送スループットを更に向上させることができる。また、解析システム30としては、ウェハの品質評価のスループットを更に向上させることができる。
【0149】
また、ナノピンセット62の移動によってラメラ10の向きを変更する場合、ラメラ10の搭載位置が若干ずれる恐れも少なからずある。しかし、実施の形態3では、ラメラ10の向きを変更することなく、本体10aを直接膜22に密着させているので、そのような恐れを抑制できる。
【0150】
(実施の形態4)
以下に
図20~
図22を用いて、実施の形態4におけるラメラ10、および、ラメラ10の搭載方法について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態3との相違点について主に説明し、実施の形態3と重複する点については説明を省略する。
【0151】
図20に示されるように、実施の形態4におけるラメラ10は、実施の形態3と類似しており、Y方向において本体10aから突出する突出部10bを更に含む。Y方向における突出部10bの幅は、Y方向における本体10aの幅よりも広い。実施の形態4における突出部10bは、X方向における本体10aの中央付近に位置している。このように、実施の形態4におけるラメラ10は、本体10aと突出部10bとで、T字型を成している。
【0152】
このようなラメラ10は、ラメラ作製装置40において作製され、ラメラ10の形状の情報は、ラメラ作製位置データD2の一部として保存される。上位制御部C0は、取得されたラメラ10の形状の情報に基づいて、T字型のラメラ10をメッシュ20へ搭載させるための搭載方法を、ラメラ搭載装置60へ指定する。
【0153】
以下に
図21および
図22を用いて、実施の形態4におけるラメラ10の搭載方法について、詳細に説明する。
図17に示されるように、実施の形態4におけるラメラの搭載方法は、突出部10bの作製位置を除いて実施の形態3とほぼ同じ手法で行われる。
図21および
図22に示されるステップS201~S204は、
図17のステップS201~S204に対応している。
【0154】
ステップS201では、突出部10bをナノピンセット62によって把持しながら、ウェハ1からラメラ10を取り出し、ナノピンセット62をメッシュ20に近づける。ステップS202では、ラメラ10を膜22に押し付けるように、ナノピンセット62を移動する。これにより、解析領域11が膜22と対向するように、ラメラ10の本体10aが膜22に密着する。
【0155】
ステップS203では、ナノピンセット62の先端部を開き、ナノピンセット62からラメラ10を開放する。ここで、ラメラ10は、膜22に支持されている。ステップS204では、ナノピンセット62を、メッシュ20から離れるように移動させる。
【0156】
このように、実施の形態4でも、実施の形態3と同様に、実施の形態1および2と比較して、搭載工程数を減らすことができるので、搬送スループットを更に向上させることができる。また、解析システム30としては、ウェハの品質評価のスループットを更に向上させることができる。また、ラメラ10の向きの変更に伴って、ラメラ10の搭載位置がずれる恐れも抑制できる。
【0157】
(実施の形態5)
以下に
図23~
図26を用いて、実施の形態5におけるメッシュ20、および、ラメラ10の搭載方法について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1~4との相違点について主に説明し、実施の形態1~4と重複する点については説明を省略する。
図23および
図24は、実施の形態5におけるメッシュ20を示す平面図および側面図である。
【0158】
図23および
図24に示されるように、実施の形態5におけるメッシュ20は、膜22上に設けられた突起物23およびアライメントマーク24を更に含む。突起物23を構成する材料は、膜22と同じ材料でもよいが、膜22と異なる材料でもよい。アライメントマークは、基体21の一部を加工することで形成されている。また、ラメラ搭載箇所25は、解析領域11が膜22に対向した状態で、ラメラ10を膜22に密着させる予定の箇所である。
【0159】
なお、アライメントマーク24は、実施の形態5に限られず、実施の形態1~4におけるメッシュ20に設けられていてもよい。その場合、後述のアライメントを行う工程も、実施の形態5に限られず、実施の形態1~4において行われてもよい。
【0160】
実施の形態5で使用されるラメラ10は、
図14のL字型のラメラ10である。実施の形態5では、上位制御部C0に保存されている複数の搭載方法には、
図23のような実施の形態1~4と異なるメッシュ20の場合に行う搭載方法も含まれている。従って、上位制御部C0は、L字型のラメラ10を
図23のメッシュ20へ搭載させるための搭載方法を、ラメラ搭載装置60へ指定できる。
【0161】
図25は、実施の形態5および6におけるラメラの搭載方法の処理フロー図である。
図26に示されるステップS301~S305は、
図25のステップS301~S305に対応している。
【0162】
ステップS301では、まず、メッシュ20のアライメントを行う。このアライメント工程では、メッシュ20の両端にあるアライメントマーク24を利用し、テンプレートマッチング処理などの画像処理手法を行うことで、メッシュ20の回転ずれが補正される。
【0163】
次に、ウェハ1の一部に作製されたラメラ10をナノピンセット62によって把持し、ウェハ1からラメラ10を取り出す。ここで、切り欠き領域12が膜22に対向するように、本体10aをナノピンセット62によって把持する。次に、ナノピンセット62をメッシュ20に近づける。
【0164】
ここで、ナノピンセット62によって把持されたラメラ10は、常に突起物23がある位置に搭載されることになる。従って、ラメラ10の搭載位置のトレースビリティを向上することが可能になる。
【0165】
ステップS302では、ラメラ10の本体10aがナノピンセット62によって把持された状態で、ラメラ10を膜22に押し付けるように、ナノピンセット62を移動する。これにより、ラメラ10が膜22に密着する。実施の形態5では、切り欠き領域12がメッシュ20に密着する。なお、この時点では、解析領域11は膜22と対向していない。
【0166】
また、ステップS302では、突起物23に突出部10bを引っ掛け、突起物23に突出部10bを接触させながら、ナノピンセット62を移動することで、ラメラ10が膜22に密着される。そのため、ラメラ10を膜22に押し付けている間、ラメラ10の挙動が安定するので、ラメラ10の搭載位置がずれ難くなる。
【0167】
以降のステップS303~S305は、実施の形態1のステップS103~S105とほぼ同じである。ステップS303では、ナノピンセット62からラメラ10を開放する。ここで、上述のように、ラメラ10は、膜22に支持されている。ステップS304では、ナノピンセット62を移動させ、ナノピンセット62をラメラ10に接触させることで、ラメラ10の向きを変更する。
【0168】
ステップS305では、ステップS304に続き、更にナノピンセット62を移動させる。これにより、ラメラ10が倒され、ラメラ10が膜22と水平になる。すなわち、ラメラ10の本体10aが、解析領域11が膜22と対向するように、膜22に密着される。この状態で、ラメラ10の搭載位置は、ラメラ搭載箇所25の内部となっている。その後、ナノピンセット62を、メッシュ20から離れるように移動させる。
【0169】
その後、ラメラ解析装置70において、メッシュ20に搭載されたラメラ10の解析が行われる。その際に、ラメラ10の近傍に位置する突起物23を、位置微調整用のマークとして使うこともできる。そのため、ラメラ解析装置70における観察精度を向上させることができる。
【0170】
(実施の形態6)
以下に
図27~
図29を用いて、実施の形態5におけるメッシュ20、および、ラメラ10の搭載方法について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態5との相違点について主に説明し、実施の形態5と重複する点については説明を省略する。
図27および
図28は、実施の形態5におけるメッシュ20を示す平面図および側面図である。
【0171】
図27および
図28に示されるように、実施の形態6におけるメッシュ20は、実施の形態5とほぼ同じであるが、2つの突起物23を含んでいる。
【0172】
実施の形態6で使用されるラメラ10は、
図20のT字型のラメラ10である。実施の形態6では、上位制御部C0に保存されている複数の搭載方法には、
図27のような実施の形態1~5と異なるメッシュ20の場合に行う搭載方法も含まれている。従って、上位制御部C0は、L字型のラメラ10を
図27のメッシュ20へ搭載させるための搭載方法を、ラメラ搭載装置60へ指定できる。
【0173】
以下に
図29を用いて、実施の形態6におけるラメラ10の搭載方法について説明する。
図25に示されるように、実施の形態6におけるラメラの搭載方法は、一部を除いて実施の形態5とほぼ同じ手法で行われる。
図29に示されるステップS301~S305は、
図25のステップS301~S305に対応している。
【0174】
ステップS301では、まず、実施の形態5と同様に、メッシュ20のアライメントを行う。次に、ウェハ1の一部に作製されたラメラ10をナノピンセット62によって把持し、ウェハ1からラメラ10を取り出す。ここで、切り欠き領域12が膜22に対向するように、突出部10bをナノピンセット62によって把持する。次に、ナノピンセット62をメッシュ20に近づける。
【0175】
ここで、ナノピンセット62によって把持されたラメラ10は、常に突起物23がある位置に搭載されることになる。従って、ラメラ10の搭載位置のトレースビリティを向上することが可能になる。
【0176】
ステップS302では、ラメラ10の突出部10bがナノピンセット62によって把持された状態で、ラメラ10を膜22に押し付けるように、ナノピンセット62を移動する。これにより、ラメラ10が膜22に密着する。実施の形態6では、切り欠き領域12がメッシュ20に密着する。なお、この時点では、解析領域11は膜22と対向していない。
【0177】
また、ステップS302では、2つの突起物23の間に突出部10bを位置させ、突起物23に突出部10bを接触させながら、ナノピンセット62を移動することで、ラメラ10が膜22に密着される。ここで、ラメラ10を膜22に押し付けている間、突出部10bは2つの突起物23に挟まれている。そのため、実施の形態6では、実施の形態5と比較して、ラメラ10の挙動が更に安定するので、ラメラ10の搭載位置が、更にずれ難くなる。
【0178】
以降のステップS303~S305は、実施の形態5のステップS303~S305とほぼ同じである。ステップS303では、ナノピンセット62からラメラ10を開放する。ここで、上述のように、ラメラ10は、膜22に支持されている。ステップS304では、ナノピンセット62を移動させ、ナノピンセット62をラメラ10に接触させることで、ラメラ10の向きを変更する。
【0179】
ステップS305では、ステップS304に続き、更にナノピンセット62を移動させる。これにより、ラメラ10が倒され、ラメラ10が膜22と水平になる。すなわち、ラメラ10の本体10aが、解析領域11が膜22と対向するように、膜22に密着される。この状態で、ラメラ10の搭載位置は、ラメラ搭載箇所25の内部となっている。その後、ナノピンセット62を、メッシュ20から離れるように移動させる。
【0180】
なお、実施の形態6においても、ラメラ解析装置70において、ラメラ10の近傍に位置する2つの突起物23を、位置微調整用のマークとして使うこともできる。
【0181】
以上、上記実施の形態に基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0182】
1 ウェハ
1a 接続箇所
10 ラメラ
10a 本体
10b 突出部
11 解析領域
12 切り欠き領域
20 メッシュ(キャリア)
21 基体
22 膜
23 突起物
24 アライメントマーク
25 ラメラ搭載箇所
30 解析システム
40 ラメラ作製装置
41 イオンビームカラム
42 電子ビームカラム
43 試料室
44 ウェハステージ
45 サブステージ
46 荷電粒子検出器
47 X線検出器
48 プローブユニット
50 入力デバイス
51 ディスプレイ
52 GUI画面
60 ラメラ搭載装置
61 電子ビームカラム
62 ナノピンセット
70 ラメラ解析装置
71 電子ビームカラム
72 試料ステージ
73 ホルダ
74 荷電粒子検出器
75 蛍光板
76 カメラ
77 X線検出器
78 電子源
79 照射レンズ群
80 対物レンズ
81 投影レンズ群
82 X線検出器
83 電子エネルギー損失分光器(EELS)
84 EELS用検出器
85 偏向系
86 円環状検出器
87 透過電子検出器
88 絞り
C0 上位制御部
C0a メモリ
C0b 加工終了判定部
C0c 加工結果評価部
C1 統合制御部
C2 イオンビームカラム制御部
C3 電子ビームカラム制御部
C4 ウェハステージ制御部
C5 サブステージ制御部
C6 検出器制御部
C7 X線検出器制御部
C8 プローブユニット制御部
C9 電子ビームカラム制御部
C10 ピンセット制御部
C11 統合制御部
C12 電子ビームカラム制御部
C13 試料ステージ制御部
C14 検出器制御部
C15 カメラ制御部
C16 X線検出器制御部
C17 統合制御部
CP1、CP2 クロスポイント
EB1、EB2 電子ビーム
IB イオンビーム
OA1~OA3 光軸