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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20240725BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
G01N35/02 E
G01N35/02 G
G01N35/00 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023522584
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2022018574
(87)【国際公開番号】W WO2022244597
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2021083767
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌史
(72)【発明者】
【氏名】圷 正志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
(72)【発明者】
【氏名】古川 麻季
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-148516(JP,A)
【文献】特開平8-94641(JP,A)
【文献】特開2011-179954(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176296(WO,A1)
【文献】特開2021-50975(JP,A)
【文献】特開2010-60441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬を反応させ、この反応させた反応液の物性を測定する自動分析装置であって、
前記試薬を吸引、吐出するノズルを有する分注機構と、
前記試薬が充填した試薬容器を保管する保管庫と、
前記分注機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
分析項目に応じて使用する前記試薬を切り替えながら分析を行い、分析オペレーション中に所定条件を満たしたときに、対象の前記試薬容器の吸引口に対して前記ノズルを下降して通過させ、上昇するコンディショニング動作を実行するよう前記分注機構を制御する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記所定条件を、特定の前記試薬容器に対して設定される時間情報とする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記所定条件を、対象の前記試薬に対する前記コンディショニング動作の実施完了からの経過時間、または前記コンディショニング動作の計画完了からの経過時間、および対象の前記試薬を分析に使用する依頼情報とする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記経過時間を超過し、かつ対象の前記試薬を使用する分析項目の分注が行われることになった場合、新たな経過時間のカウントを開始する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記経過時間を超過していない場合に対象の前記試薬を使用する分析項目の分注が行われることになった場合は、経過時間のカウントをリセットせずに継続する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記経過時間を超過する前に対象の前記試薬を使用する分析項目の分注が行われることになった場合、新たな経過時間のカウントを開始する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記自動分析装置の立ち上げ時に、前記経過時間が経過したと強制的にみなす
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記所定条件を、対象の前記試薬に対する前記コンディショニング動作の実施完了からの経過時間、または前記コンディショニング動作の計画完了からの経過時間とする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項8に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記自動分析装置の立ち上げ時に、前記経過時間が経過したと強制的にみなす
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記所定条件を、対象の前記試薬を分析に使用する依頼情報とする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記コンディショニング動作を実行する対象の前記試薬を、前記吸引口での結晶化による分析精度に影響が及ぶ特定の試薬とする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記コンディショニング動作は、分注サイクルを2サイクル以上分を使用するものとする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項12に記載の自動分析装置において、
前記コンディショニング動作を、すべてのサイクルで同じとする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項14】
請求項12に記載の自動分析装置において、
前記コンディショニング動作を、1つ以上のサイクルで異なるものとする
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの多成分を含む試料中の目的成分の濃度又は活性値を測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬容器内の試薬の液面付近の部分が劣化したり、試薬容器内に試薬の濃度勾配が生じても、可能な限り試薬のデッドボリュームの増加しないように試薬を有効に利用することができる自動分析装置の一例として、特許文献1には、試薬容器の試薬を用いて試料の分析を行う自動分析装置は、試薬容器の試薬を吸引するために吸引具であるピペットを下降して吸引具が試薬液面から侵入する際の吸引具の標準侵入量と、標準侵入量よりも大きい少なくとも1つの試薬異常検出用の侵入量と、を保持し、試薬の精度管理またはキャリブレーション用の測定要求が発行された際に、標準侵入量を用いた試薬の分注による測定に加え、試薬異常検出用の侵入量を用いた試薬の分注による測定を追加する測定情報生成部を備える、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-10863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動分析装置は、血液、尿、髄液等の生体試料を分析する装置であり、例えば特許文献1のようなものがある。
【0005】
自動分析装置では、試料用ノズルが付いた試料専用の分注機構、および試薬用ノズルが付いた試薬専用の分注機構を用いて、試料、試薬をそれぞれの保存容器から反応容器内へ分注し、試料試薬の混合液を撹拌した後、同反応液の色調変化を光度計により計測し、その計測したデータから、試料内の目的の物質を定量して結果を出力する機能を有する。
【0006】
試料や試薬の保存容器は様々な形状があり、中には吸引するためにノズルがアクセスする吸引口が狭い形状のものもある。特に、試薬の保存容器は、蒸発による濃縮影響や空気との接触の影響を抑制して保存安定性を高めるために、吸引口を狭くした形状が望まれている。
【0007】
また、試薬の保管容器は、充填された試薬の液量が規定量(デッドボリューム)に達するまで、繰り返し分析に使用される。デッドボリュームに達した試薬容器は、装置から排出して廃棄する。
【0008】
自動分析装置では、測定間隔が空いたとしても同一試料、試薬を使用した場合、常に安定した精度のデータを出力することが重要な要求の一つである。
【0009】
近年の自動分析装置に対しては、様々な検査項目に対応するために、多種多様な試料、試薬を扱うことが求められる。また、低液量化による試薬ランニングコストの低減が求められる一方で、出力されるデータの精度および長期間のデータの安定性に対しては、より要求が厳しくなっている。これらの要求を満たすために、自動分析装置の分注機構には、繰り返しの分注精度だけでなく時間が空いた際の日内データや日を跨いだ日差データの安定性が求められている。
【0010】
自動分析装置では、ユーザーが装置に試料をセットしたタイミングから試料測定の工程が開始される。つまり、試料の測定間隔はユーザー側の装置への試料設置タイミングにより変動する。また各試料に対して依頼される測定項目は、健診や患者の病態などの目的により変わる。このような理由により、自動分析装置内に設置された試薬容器の使用頻度も、ユーザーの運用や患者の病態、検査目的によって変動する。
【0011】
容器の入り口が狭い試薬容器の場合、試薬吸引のために試薬ノズルが試薬容器に下降し、試薬吸引後上昇した際、ノズルの外側に付着した試薬が容器入口に付着することがある。
【0012】
試薬容器を使用後に、当該容器に収容された試薬を用いる次の測定がなかなか入らない場合、容器入口に付着した試薬が時間と共に乾燥、濃縮していき、粘度上昇や結晶化といった性状の変化が生じる恐れがある。
【0013】
特に、試薬成分によっては、乾燥、濃縮した試薬が結晶もしくはフィルム状に固着する場合がある。固着した試薬は、次回の吸引時にノズルの内側もしくは外側に引き込まれることがある。その状態で反応容器に試薬を吐出すると、固着した成分濃度の高い試薬が反応液に混ざり、試料と試薬との反応速度に影響を与えることがある。
【0014】
これらのような現象が生じると、本来の試料濃度から想定される吸光度変化と異なる変化を示すことから、測定値が異常値となる可能性がある。この問題は、試薬分注精度に敏感な分析項目において顕著であると考えられ、現象により異常値を発生させることがあることが考えられる。
【0015】
これらの事情から、濃縮、あるいは固着した試薬に対する対策を取ることが求められる。
【0016】
本発明は、試料測定時に固着または濃縮した試薬による分注精度不良を従来に比べて低減することが可能な自動分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、試料と試薬を反応させ、この反応させた反応液の物性を測定する自動分析装置であって、前記試薬を吸引、吐出するノズルを有する分注機構と、前記試薬が充填した試薬容器を保管する保管庫と、前記分注機構の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、分析項目に応じて使用する前記試薬を切り替えながら分析を行い、分析オペレーション中に所定条件を満たしたときに、対象の前記試薬容器の吸引口に対して前記ノズルを下降して通過させ、上昇するコンディショニング動作を実行するよう前記分注機構を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、試料測定時に固着または濃縮した試薬による分注精度不良を従来に比べて低減することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例の自動分析装置の概略図。
図2】実施例の自動分析装置の上面の概略図。
図3】自動分析装置で用いられる試薬容器の概略図。
図4】実施例の自動分析装置の分注機構の概略図。
図5】試薬固着による異常値発生メカニズムの概要図。
図6】実施例の自動分析装置のコンディショニング動作の基本概要図。
図7】実施例の自動分析装置の高効果コンディショニング動作の第1サイクルの概要図。
図8】実施例の自動分析装置の高効果コンディショニング動作の第2サイクルの概要図。
図9】実施例の自動分析装置の高効果コンディショニング動作の第1サイクルの他の概要図。
図10】実施例の自動分析装置の高効果コンディショニング動作の第1サイクルの他の概要図。
図11】実施例の自動分析装置におけるコンディショニング情報の設定の一例を示す図。
図12】実施例の自動分析装置におけるコンディショニング情報の設定の他の一例を示す図。
図13】実施例の自動分析装置におけるコンディショニング動作タイミング情報の選択の一例を示す図。
図14】実施例の自動分析装置におけるコンディショニング動作タイミング情報の選択の一例を示す図。
図15】実施例の自動分析装置におけるコンディショニング制御の制御パターンAの概要を示す図。
図16】実施例の自動分析装置におけるインターバル時間カウントのイメージ図。
図17】実施例の自動分析装置における制御パターンAでのコンディショニング動作のフローチャート。
図18】実施例の自動分析装置におけるコンディショニング制御の制御パターンA1の概要を示す図。
図19】実施例の自動分析装置におけるコンディショニング制御の制御パターンBの概要を示す図。
図20】実施例の自動分析装置における制御パターンBでのコンディショニング動作のフローチャート。
図21】実施例の自動分析装置におけるコンディショニング制御の制御パターンB1の概要を示す図。
図22】実施例の自動分析装置におけるコンディショニング制御の制御パターンCの概要を示す図。
図23】実施例の自動分析装置における制御パターンCでのコンディショニング動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の自動分析装置の実施例について図1乃至図23を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0021】
最初に、自動分析装置の全体構成について図1乃至図4を用いて説明する。図1は自動分析装置の各機構の概観を示したものであり、図2は上面からの自動分析装置の概観を示したものである。図3は自動分析装置で用いられる試薬容器の概略図である。図4は分注機構の概略図である。
【0022】
図1および図2に示す自動分析装置100は、血液等の試料と試薬とを混合して反応させ、この反応させた反応液の物性を測定するための装置であり、反応ディスク1、試薬ディスク3、試料搬送機構8、試薬分注機構11,13、試料分注機構9、洗浄機構15、分光光度計16、撹拌機構17,18、試料ノズル洗浄槽19、試薬ノズル洗浄槽20,21、撹拌機構洗浄槽22,23、制御コンピュータ24等を備えている。
【0023】
反応ディスク1には、試料と試薬とを混合して反応させるための反応容器2が円周上に複数個並んでいる。反応容器2の周りは、37度に温度管理された熱伝導性の媒体、例えば水で満たされた反応槽に浸かっており、恒温水が反応槽5内を循環することにより、反応容器2の温度は常に37度前後に保たれている。
【0024】
反応ディスク1(反応槽)の近くには血液等の試料が含まれた試料容器6を載せたラック7を移動する試料搬送機構8が設置されている。
【0025】
反応ディスク1と試料搬送機構8の間には、回転および上下動可能な試料分注機構9が設置されており、それぞれ試料ノズル10を備えている。試料ノズル10は回転軸を中心に円弧を描きながら移動して試料搬送機構8により試料分注位置に搬送された試料容器6から反応容器2への試料分注を行う。
【0026】
試料分注機構9の稼動範囲には試料ノズル10を洗浄水により洗浄する試料ノズル洗浄槽19および特別な洗浄水により洗浄する洗浄容器(図示省略)が配置されている。
【0027】
試薬ディスク3は、その中に複数の試薬容器4が円周上に載置可能な構造である。試薬ディスク3は保冷されており、吸引口(図示省略)が設けられたカバーによって覆われている。試薬容器4は、試料の分析に用いる試薬が充填された容器である。
【0028】
図3に試薬容器4の幾つかの形態の概略図を示す。試薬容器4には、図3に示すように、試薬を格納するスペースが1つの一試薬系試薬容器4A、スペースが2つの二試薬系試薬容器4B、スペースが3つの三試薬系試薬容器4C等がある。
【0029】
また、これらの試薬容器4の各々のスペースの上部には、試薬ノズル12,14を試薬容器4内に挿入して試薬を吸引するための吸引口4a,4b,4cが備えられている。
【0030】
試薬容器4内部に充填された試薬の濃縮や空気との接触を抑制するために、吸引口4a,4b,4cの開口はできるだけ狭い方が良い。例えば、試薬ノズル12,14の外径に近接するほど吸引口4b,4cを狭くする方法や、試薬容器4の蓋に穴をあけ、そこに試薬ノズル12,14を通す方法などがある。狭い吸引口4aに試薬ノズル12,14を通すために、吸引口4a周りをすり鉢状にして、吸引口4aに挿入しやすくする形状も可能である。
【0031】
より具体的には、試薬容器4のいずれの開口部も複数の形状があり、例えば吸引口4aのように試薬を収容するペースに向けて幅が狭まっており、ニードルなどによる開栓に好適な逆円錐状の形状や、吸引口4b,4cのように試薬ノズル12,14の断面積より少しだけ大きい開口面積の円柱形状がある。
【0032】
図1および図2に戻り、反応ディスク1と試薬ディスク3との間には回転および上下動可能な試薬分注機構11,13が設置されており、それぞれ試薬ノズル12,14を備えている。試薬ノズル12,14は回転軸を中心に円弧を描きながら移動して、吸引口から試薬ディスク3内にアクセスし、試薬容器4から反応容器2への試薬の分注を行う。
【0033】
図4に示すように、試薬分注機構11,13は給水ポンプ25から送水され、ギアポンプ26などの加圧ポンプを介して加圧された水を流路27に送り込む構造になっている。
【0034】
流路は給水ポンプ25を介して、すべて純水で満たされている。流路上にはシリンジポンプ28が配置されており、シリンジポンプ28とギアポンプ26との間には電磁弁29が配置されている。
【0035】
試薬分注時、電磁弁29は閉状態となり、試薬ノズル12,14先端にシリンジポンプ28の圧力を伝える構造になっており、洗浄時は電磁弁29を開状態にし、ギアポンプ26の圧力を試薬ノズル12,14の先端に伝え、試薬ノズル12,14内の水を高圧で送り出すようになっている。
【0036】
なお、試料分注機構9も略同様の構成である。
【0037】
図1および図2に戻り、試薬分注機構11、13の稼動範囲には試薬ノズル12,14を洗浄水により洗浄する試薬ノズル洗浄槽20,21が配置されている。
【0038】
反応ディスク1の周囲には、反応容器2に分注された試料と試薬との混合液(反応液)を撹拌する撹拌機構17,18、光源(図示省略)から反応容器2の反応液を介して得られる透過光を測定することにより反応液の吸光度や散乱光強度を測定する分光光度計16、使用済みの反応容器2を洗浄する洗浄機構15等が配置されている。
【0039】
撹拌機構17,18は、水平方向への回転動作および上下動作が可能なように構成されており、反応容器2に挿入することにより試料と試薬の混合液(反応液)の撹拌を行う。撹拌機構17,18の稼動範囲には、撹拌機構17,18を洗浄水により洗浄する撹拌機構洗浄槽22,23が配置されている。
【0040】
制御コンピュータ24は、上述された自動分析装置100内の機器に接続されており、試薬分注機構11,13を始めとした自動分析装置100内の各機器・機構の動作を制御する。この制御コンピュータ24は、CPUやメモリなどを備えたコンピュータであり、分光光度計16の検出結果から試料中の所定成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0041】
本実施例では、特には、制御コンピュータ24は、分析項目に応じて使用する試薬を切り替えながら分析を行い、分析オペレーション中に所定条件を満たしたときに、対象の試薬容器4の吸引口4a,4b,4cに対して試薬ノズル12,14を下降して通過させ、上昇するコンディショニング動作を実行するよう試薬分注機構11,13を制御する。その詳細は後述する。
【0042】
制御コンピュータ24による各機器の動作の制御は、記憶装置に記録された各種プログラムに基づき実行される。記憶装置には、試料の測定に用いる各種プログラムの他に、入力装置を介して入力された各種パラメータや測定対象試料の情報(試料種別情報など)、測定結果などが記憶される。
【0043】
なお、制御コンピュータ24で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。
【0044】
以上が本実施例の自動分析装置100の主な構成である。
【0045】
なお、自動分析装置100の構成は図1に示すような生化学の分析項目の分析を実行する生化学分析装置の場合に限られず、免疫の分析項目の分析を実行する免疫分析装置など、他の分析項目の分析を実行する分析装置とすることができる。また、生化学分析装置についても図1に示す形態に限られず、他の分析項目、例えば電解質を測定する分析機器を別途搭載したものとすることができる。
【0046】
また、自動分析装置100は図1に示すような単一の分析モジュール構成とする形態に限られず、様々な同一あるいは異なる分析項目を測定可能な分析モジュールや前処理を行う前処理モジュールを搬送装置で2つ以上接続する構成とすることができる。
【0047】
上述のような自動分析装置100による検査試料の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0048】
まず、試料搬送機構8によって反応ディスク1近くに搬送されたラック7の上に載置された試料容器6内の試料を、試料分注機構9の試料ノズル10により反応ディスク1上の反応容器2へと分注する。次に、分析に使用する試薬を、試薬ディスク3上の試薬容器4から試薬分注機構11,13により先に試料を分注した反応容器2に対して分注する。続いて、撹拌機構17,18で反応容器2内の試料と試薬との混合液の撹拌を行う。
【0049】
その後、光源から発生させた光を撹拌後の混合液の入った反応容器2を透過させ、透過光の光度を分光光度計16により測定する。分光光度計16により測定された光度を、A/Dコンバータおよびインターフェイスを介して制御コンピュータ24に送信する。そして制御コンピュータ24によって演算を行い、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示部(図示省略)等にて表示させるとともに、記憶部(図示省略)に記憶させる。
【0050】
次いで、本実施例の特徴的な構成について図5以降を用いて説明する。
【0051】
まず、本発明で解決すべき試薬の固着のメカニズムについて図5を用いて説明する。図5は試薬固着による異常値発生メカニズムの概要図である。
【0052】
図3に示すような吸引口4aのように開口面積が狭い形状の試薬容器4に限らず、図5の(a)に示すように、試薬分注動作の際に試薬ノズル12,14が試薬液面40に接するが、その際に試薬ノズル12,14の下端部の外周側にも試薬が付着する。なお吸引口4aを例示しているが、吸引口4b,4cの場合も同様である。
【0053】
この状態で反応容器2へ試薬を吐出するために試薬吸引後の試薬ノズル12,14が上昇するが、その際に試薬ノズル12,14の下端部の外周側に付着した試薬が図5の(b)に示すように吸引口4a周りに付着する。
【0054】
その後、所定の時間が経過すると、吸引口4a周りに付着した試薬41が時間経過により濃縮する。濃縮した試薬は、含有成分の濃度上昇により粘度が上昇する、または成分が析出する(結晶化)などにより、図5の(c)に示すように、吸引口4a周りに固着し、固化試薬42として吸引口4a周りに残留する。
【0055】
その状態で、次回の試薬吸引を行うと、図5の(d)に示すように、固化試薬42が試薬ノズル12,14の先端に付着することがあり、図5の(e)に示すように試薬の吸引時に固化試薬42を一部、あるいは全量吸引する可能性がある。
【0056】
この状態で、次回の試薬吸引や反応容器2への吐出を行うと、規定量の試薬の分注ができないため、試料と試薬が想定と異なる速度で反応する、あるいは固化試薬42が反応液内で溶解して、同様に試料と試薬が想定と異なる速度で反応することが考えられる。その結果、装置が本来得られるべき吸光度とは乖離した値を取得するため、測定値を正しく算出することができなくなり、想定外の異常値を出力する可能性がある。このように、試薬分注精度が悪化して、異常値発生リスクが高まる。
【0057】
次いで、上記現象を回避するために、固着した試薬の影響を除去するための構成、および制御の詳細について図6以降を用いて説明する。
【0058】
まず、図6乃至図10を用いて試薬容器吸引口に固着した試薬を除去もしくは、容器内試薬濃度と均一状態にして連続測定時と同等の状態にするための動作について説明する。図6はコンディショニング動作の基本概要図、図7は高効果コンディショニング動作の第1サイクルの概要図、図8は高効果コンディショニング動作の第2サイクルの概要図、図9および図10は高効果コンディショニング動作の第1サイクルの他の概要図である。
【0059】
本発明では、試薬容器4の吸引口4a,4b,4cに固着した試薬を除去、もしくは容器内試薬濃度と均一状態にして連続測定時と同等の状態にするための動作を、試薬ノズル12,14を用いて行う。除去動作を、以下の本明細書ではコンディショニング動作と定義する。
【0060】
まず、基本のコンディショニング動作を図6を用いて説明する。図6に示す基本となるコンディショニング動作は、第一の動作として、図6の(a)に示すように試薬ノズル12,14の洗浄を行う。この洗浄は、試薬ノズル洗浄槽20,21により行われる。
【0061】
その後、第二の動作として、図6の(b)に示すように試薬容器4の吸引口4a,4b,4cに対して試薬ノズル12,14の挿入を行う。このとき試薬ノズル12,14先端は試薬液面40に触れることが望ましいが、コンディショニング効果が得られれば、必ずしも触れる必要は無い。
【0062】
次いで、第三の動作として、図6の(c)に示すように、挿入した試薬ノズル12,14を試薬容器4から引き抜く。
【0063】
最後に、第四の動作として、図6の(d)に示すように、試薬ノズル12,14を洗浄する。この洗浄も、試薬ノズル洗浄槽20,21により行う。
【0064】
これら図6の(a)乃至(d)の一連の工程を、装置の通常の分注サイクルの1つのサイクル内で実施する。例えば、1時間あたり1000テストの処理能力をもつ装置では、1サイクル3.6秒となるため、この3.6秒以内に実行する。
【0065】
ここで、上述のように、吸引口4a,4b,4cに付着した試薬は、濃縮が進み乾燥しきると粉末や結晶などの固体になる。固体化した試薬は、液体時に比べて試薬ノズル12,14で均一に除去することが難しくなる。そこで、基本となるコンディショニングの効果をさらに高めた高効果コンディショニングを行うことが望まれる。その1例について図7および図8を用いて概要を以下説明する。
【0066】
図7および図8に示す高効果コンディショニングは、図7の工程で装置の分注サイクルの1サイクル、図8の工程で1サイクル、計2サイクルを使用して行うことが望ましい。
【0067】
1サイクル目は、図7の(a)乃至(e)の動作であり、図7中、(a)、(b)、(e)は、図6中(a)、(b)、(d)とそれぞれ同じである。
【0068】
違いは、図7中(c)および(d)であり、試薬ノズル12,14に試薬容器4内の試薬を付着させて、吸引口4a,4b,4cを濡らすための動作を行う点である。
【0069】
例えば、図7の(c)に示すように、試薬液面40から上昇する際は高速で試薬ノズル12,14を引き抜くことで、試薬ノズル12,14周りに試薬を付着しやすくする。その後、図7の(d)に示すように、吸引口4a,4b,4cを通過する際には、低速で上昇させることによって試薬ノズル12,14に積極的に付着させた試薬を吸引口4a,4b,4c側に付着させる動作を行う。これにより、吸引口4a,4b,4cに固着した固化試薬42を再度試薬で溶解させることができる。
【0070】
2サイクル目は、図8の(f)乃至(k)の動作であり、図8中、(f)、(g)、(k)は、図6中(a)、(b)、(d)とそれぞれ同じである。
【0071】
違いは、図8に示すように、溶解した試薬を除去もしくは濃度を均一化するための動作を行う点である。
【0072】
例えば、図8の(g)に示すように、試薬ノズル12,14を一度試薬容器内の試薬に浸漬させた後の図8の(h)の引き抜き動作では、引き抜き動作を吸引口4a,4b,4c上で一度止め、図8の(i)に示すように再度挿入動作を吸引口4a,4b,4c下まで行い、図8の(j)に示すように再上昇する。
【0073】
このように吸引口4a,4b,4cに対する試薬ノズル12,14の通過を繰り返すことで、上述の溶解した試薬を除去もしくは濃度の均一化をすることができる。上述のように試薬ノズル12,14を試薬容器4内の試薬に一度浸漬させてから、吸引口4a,4b,4cを通過させるため、吸引口4a,4b,4cで溶解した試薬に対して、共洗いと同等の効果が得られる。
【0074】
上述の効果を大きく得るためには、図7に示す1サイクル目で吸引口4a,4b,4cを十分に濡らすこと、図8に示す2サイクル目で積極的に試薬ノズル12,14の抜き差しを行うことが重要である。
【0075】
また、図7の1サイクル目の(b)を図9に示す(b1)のような、試薬容器4への試薬ノズル12,14の下降時に、試薬ノズル12,14の試薬への突っ込み量を「分析動作<コンディショニング」とした動作に置き換え、浸漬量を確保することが考えられる。
【0076】
または、図7の1サイクル目の(d)の後に、図10に示す(d1)のような、少量の試薬を吸引し、吸引口4a,4b,4c上で吐出するなど、積極的に吸引口4a,4b,4cを濡らす動作を追加で実行することが考えられる。
【0077】
なお、図6乃至図10はコンディショニング動作の一例であり、吸引口4a,4b,4cに対する試薬ノズル12,14の通過動作があれば、動作内容、および必要サイクル数は限定されない。
【0078】
但し、図6等のコンディショニング動作は、分注サイクルを2サイクル分以上を使用するものとすることが望ましく、例えば、図6の動作を2サイクル以上とすること、あるいは図7および図8の2サイクル1セットのコンディショニング動作を1セット以上行うことができる。
【0079】
なお、2サイクル以上実行する場合に、コンディショニング動作を、すべてのサイクルで同じ(図6のサイクルを3回以上、あるいは図7および図8のセットを2セット以上)とするか、1つ以上のサイクルで異なる(図6のサイクルを1回以上、および図7および図8のセットを1セット以上)ものとするかは特に限定されない。
【0080】
ここで、コンディショニング動作を1つ以上のサイクルで異なるものとする場合、試薬項目ごとに使い分けることができる。
【0081】
次に、コンディショニングを実施するためのシステム制御について図11乃至図14を用いて説明する。図11および図12はコンディショニング情報の設定の一例を示す図、図13および図14はコンディショニング動作タイミング情報の選択の一例を示す図である。
【0082】
前述のように、吸引口4a,4b,4cに付着した試薬は、その試薬容器4が使用されない時間が長いほど濃縮が進み、異常値発生のリスクとなる試薬の固着が発生する。
【0083】
そこで、本明細書におけるコンディショニングは、試薬が固着する前、もしくは固着してしまっても次回使用前に実施するように制御される。コンディショニングに必要な情報および実施タイミングの制御方法については、その一例を以下に示す。
【0084】
図11および図12に示すコンディショニングの情報設定としては、試薬容器識別コード、インターバル時間、コンディショニングタイミングがある。
【0085】
試薬容器識別コードは、対象試薬容器を識別するためのコードであり、分析パラメータと紐づいて、対象項目を測定する際に使用する試薬容器として定義される。
【0086】
インターバル時間は、対象試薬を分注後から、吸引口4a,4b,4cに付着した試薬が異常値発生リスクを含むような濃縮状態になるまでの時間を設定する。インターバル時間の設定は、濃縮、乾燥時間を考慮した時間とし、例えば「10-1440分」などの範囲の間の所定時間が設定される。
【0087】
コンディショニングタイミングは、対象試薬のコンディショニングを実施するタイミングを規定しており、一試薬系試薬容器4Aであれば図11のように収容されている試薬(第1試薬:R1)の分注タイミングであり、二試薬系試薬容器4Bや三試薬系試薬容器4Cであれば図12のようにそれぞれの試薬ごとに設定される。例えばポジション1の試薬については第1試薬の分注タイミングとなり、ポジション2の試薬であれば第3試薬:R3の分注タイミングとなる。
【0088】
コンディショニング動作を実行する対象の対象試薬は、第1試薬および第2試薬両方でコンディショニングを実施するなど複数設定することもできるし、第1試薬や第2試薬のうち、吸引口4a,4b,4cでの結晶化による分析精度に影響が及ぶ特定の試薬のみとすることができる。
【0089】
コンディショニングに必要な情報設定は、図11のように1つの容器に1つの試薬が充填されている一試薬系試薬容器4Aでも、図12のように複数の容器がセットとなり、それぞれに試薬が充填されている二試薬系試薬容器4Bや三試薬系試薬容器4Cでもよい。図12のような場合、上述の情報に加えて、図12のポジション1やポジション2のようなセットになった容器を識別する情報も加える。
【0090】
図11図12のような情報は、制御コンピュータ24内の記憶部などに予め保存しておくことが望ましいが、試薬容器に取り付けられるRFIDタグなどに記録されている形態、あるいは制御コンピュータ24により試薬メーカなどからオンラインで情報を取得する形態などとしてもよい。
【0091】
制御コンピュータ24は、図11図12に示すような情報をもとにコンディショニング動作を実施するための動作シーケンスを確定するために、スケジューリング選択情報を決定する。
【0092】
図13および図14にスケジューリング選択情報決定のイメージを示す。コンディショニング動作は、装置は通常の分析項目のように10分間の測定シーケンスとしてスケジューリングされる。装置は図13あるいは図14に示すようなスケジューリング選択情報をもとに、10分間の測定シーケンスにおいて、どのR動作タイミング(R1/R2/R3)でコンディショニングを実施するかを決定する。
【0093】
次に上述の設定を使用したコンディショニングタイミング制御方法について、図15乃至図23を用いて説明する。
【0094】
まず、1つ目のパターンとなる制御パターンAについて図15乃至図17を用いて説明する。図15はコンディショニング制御の制御パターンAの概要を示す図、図16はインターバル時間カウントのイメージ図、図17は制御パターンAでのコンディショニング動作のフローチャートである。
【0095】
制御パターンAは、対象の試薬容器4の吸引口4a,4b,4cに対して試薬ノズル12,14を下降して通過させ、上昇するコンディショニング動作を実行するトリガーとなる所定条件を、特定の試薬容器4に対して設定される時間情報として、対象の試薬に対するコンディショニング動作の実施完了からの経過時間、またはコンディショニング動作の計画完了からの経過時間、および対象の試薬を分析に使用する依頼情報とするものである。
【0096】
図15では、装置ステータスが、スタンバイ状態からオペレーション準備動作、オペレーションに遷移するまでを示している。また、合わせて対象試薬のステータスについても記載している。図15中のタイムアウトとはインターバル時間として設定した時間を超過した状態を指す。
【0097】
制御パターンAでは、制御コンピュータ24は、自動分析装置100の立ち上げ時に、経過時間が経過したと強制的にみなすものとしており、図15に示すように、装置がスタンバイ状態からオペレーション準備動作に遷移した際、対象試薬は既にタイムアウト状態となる。
【0098】
これはスタンバイ中に対象試薬のインターバル時間のカウントをしないシステムにおいて搭載が強く望まれる制御である。スタンバイ中にも対象試薬のインターバル時間をカウントする場合、当該制御は不要である。
【0099】
また、上述のように、制御パターンAでは、インターバル時間がタイムアウトになっても、対象項目のオーダーがあるまではコンディショニング動作はスケジューリングされない。すなわち、タイムアウト状態でもスケジューリングには対象項目のオーダーも必要とする。
【0100】
そして、対象試薬がタイムアウト状態において、対象項目のオーダーが実施された場合、制御コンピュータ24は新規の分析スケジューリングを一時的に停止して、対象試薬に対するコンディショニング動作のスケジューリングを行う。
【0101】
コンディショニング動作のスケジューリングが実施されると、対象試薬のタイムアウトを解除して対象試薬のインターバル時間カウントがリセットされ、新たなインターバル時間のカウントが開始する。
【0102】
図16にはインターバル時間のカウントの例を示している。例えば、1時間あたり1000テストの処理能力装置であり、60分のインターバル時間設定を設けた場合、3600秒に対して装置サイクル3.6秒を1サイクルごとに減算していくことでカウントを刻むものとする。
【0103】
次いで、制御パターンAでのタイムアウト処理の流れについて図17を用いて説明する。制御コンピュータ24は、オペレーションが継続している間は下記のコンディショニング制御を繰り返し実行する。
【0104】
図17に示すように、まず、制御コンピュータ24は、対象項目分析依頼があると判定した(ステップS101)ときは、対象項目測定に使用する有効な試薬容器4のうち、少なくとも一つがタイムアウト状態であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0105】
タイムアウト状態であると判定されたときは処理をステップS103に進める。これに対してタイムアウト状態でないと判定されたときは処理をステップS106に進めて対象項目の分析をスケジューリングする(ステップS106)。この際、本制御パターンAでは、インターバル時間のカウントはそのまま継続する。
【0106】
次いで、制御コンピュータ24は、全項目のスケジューリングを一時停止(ステップS103)して、試薬容器4に対するコンディショニング動作をスケジューリングする(ステップS104)。
【0107】
その後、制御コンピュータ24は、対象の試薬容器4のインターバル時間をリセットして(ステップS105)、対象測定項目のスケジューリングを実行する(ステップS106)。
【0108】
次に、コンディショニングタイミング制御における制御パターンA1について図18を用いて説明する。図18はコンディショニング制御の制御パターンA1の概要を示す図である。
【0109】
制御パターンA1は、基本的に制御パターンAと同じであるが、相違点は、図18に示すように、経過時間を超過していないタイミングで、対象の試薬を使用する分析項目の分注が行われることになった場合、インターバル時間のカウントをリセットして、新たな経過時間のカウントを開始する点である。リセットのタイミングは対象試薬の分注動作スケジューリング時でもよい。
【0110】
フローについても図17に示した制御パターンAのものと基本的に同じであるが、違いはステップS102のNoの場合に、処理がステップS106に進むのではなく、ステップS105に進めることが違う点である。
【0111】
次いで、制御パターンBについて図19および図20を用いて説明する。図19はコンディショニング制御の制御パターンBの概要を示す図、図20は制御パターンBでのコンディショニング動作のフローチャートである。
【0112】
制御パターンBは、対象の試薬容器4の吸引口4a,4b,4cに対して試薬ノズル12,14を下降して通過させ、上昇するコンディショニング動作を実行するトリガーとなる所定条件を、特定の試薬容器4に対して設定される時間情報として、対象の試薬に対するコンディショニング動作の実施完了からの経過時間、またはコンディショニング動作の計画完了からの経過時間とするものである。
【0113】
制御パターンBの制御パターンAとの相違点は、対象の試薬の分析の依頼の有無に関係なく、対象試薬がタイムアウト状態になったタイミングで、対象試薬に対するコンディショニング動作をスケジューリングする点である。そして、コンディショニング動作がスケジューリングされたときにタイムアウト状態を解除して新たなインターバル時間カウントを開始する。
【0114】
また、制御パターンBでは、オペレーション準備時に対象試薬のコンディショニングを行う。試薬ディスク3内に複数の対象試薬がある場合には、そのすべての試薬に対してコンディショニング動作を行う。そして、コンディショニング動作を行い、装置ステータスがオペレーションに遷移した際、対象試薬のインターバル時間のカウントを開始する。これにより、分析が実行できないサイクルを生じさせるコンディショニング動作を準備中に終わらせてしまうことができ、分析を速やかに開始することができる。
【0115】
次いで、制御パターンBでのタイムアウト処理の流れについて図20を用いて説明する。制御コンピュータ24は、オペレーションが継続している間は下記のコンディショニング制御を繰り返し実行する。
【0116】
図20に示すように、まず、制御コンピュータ24は、試薬容器のうち、少なくとも一つがタイムアウト状態であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0117】
タイムアウト状態であると判定されたときは処理をステップS202に進める。これに対してタイムアウト状態でないと判定されたときは処理を完了させる。
【0118】
次いで、制御コンピュータ24は、全項目のスケジューリングを一時停止するとともに、試薬容器4に対するコンディショニング動作をスケジューリングする(ステップS202)。その後、制御コンピュータ24は、対象の試薬容器4のインターバル時間リセットして(ステップS203)、処理を完了させる。
【0119】
次いで、制御パターンB1について図21を用いて説明する。図21はコンディショニング制御の制御パターンB1の概要を示す図である。
【0120】
制御パターンB1は、基本的に制御パターンBと同じで対象試薬がタイムアウト状態になったタイミングで対象試薬に対するコンディショニング動作をスケジューリングするが、相違点は、図21に示すように、経過時間を超過する前に対象の試薬を使用する分析項目の分注が行われることになった場合にはインターバル時間のカウントをリセットして、新たな経過時間のカウントを開始する点である。リセットのタイミングは対象試薬の分注動作スケジューリング時でもよい。
【0121】
フローについても図20に示した制御パターンBのものと基本的に同じであるが、違いはステップS201のNoの場合に、処理を完了させるのではなく、ステップS203に進めることが違う点である。
【0122】
最後に、制御パターンCについて図22および図23を用いて説明する。図22はコンディショニング制御の制御パターンCの概要を示す図、図23は制御パターンCでのコンディショニング動作のフローチャートである。
【0123】
制御パターンCは、対象の試薬容器4の吸引口4a,4b,4cに対して試薬ノズル12,14を下降して通過させ、上昇するコンディショニング動作を実行するトリガーとなる所定条件を、対象の試薬を分析に使用する依頼情報とするものである。
【0124】
図22に示すように、制御パターンCでは、対象項目のオーダーが入るたびに、対象試薬分注前にコンディショニング動作をスケジューリングする。この制御パターンCでは、基本的に分注前にコンディショニング動作が実行されるため、制御パターンAなどで設定しているインターバル時間の設定は不要である。
【0125】
次いで、制御パターンCでの処理の流れについて図23を用いて説明する。制御コンピュータ24は、オペレーションが継続している間は下記のコンディショニング制御を繰り返し実行する。
【0126】
図23に示すように、まず、制御コンピュータ24は、対象項目分析依頼があると判定した(ステップS301)ときは、対象の試薬容器4に対するコンディショニング動作をスケジューリングし(ステップS302)、処理を完了させる。
【0127】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0128】
上述した本実施例の自動分析装置100は、試料と試薬を反応させ、この反応させた反応液の物性を測定するための装置であって、試薬を吸引、吐出する試薬ノズル12,14を有する試薬分注機構11,13と、試薬が充填した試薬容器4を保管する試薬ディスク3と、試薬分注機構11,13の動作を制御する制御コンピュータ24と、を備え、制御コンピュータ24は、分析項目に応じて使用する試薬を切り替えながら分析を行い、分析オペレーション中に所定条件を満たしたときに、対象の試薬容器4の吸引口に対して試薬ノズル12,14を下降して通過させ、上昇するコンディショニング動作を実行するよう試薬分注機構11,13を制御する。
【0129】
よって、吸引口4a,4b,4cに試薬が付着してしまう容器形状において、最後の分注からある一定間隔が空いた場合にも、分注前に吸引口4a,4b,4cに付着した試薬濃度のコンディションを連続測定時と同等にする効果を得ることができる。そのため、試料測定時に固着または濃縮した試薬による分注精度不良を従来に比べて低減することができ、固着した試薬起因のデータ異常を防止することができる。従って、サイクルロスが装置処理能力へ与える影響を大きく軽減することができ、従ってデータ信頼性と検査速度の両立を測ることができる。更に、分析に必須の試薬ノズル12,14で当該コンディショニング動作を実施するため、専用の機構を備える必要はなく、装置の大型化や構成の複雑化なども防ぐことができる。
【0130】
また、所定条件を、特定の試薬容器4に対して設定される時間情報とするため、試薬成分の除去動作の動作タイミングをコントロールすることができ、より適切なタイミングでのコンディショニング動作の実行が可能となる。
【0131】
更に、所定条件を、対象の試薬に対するコンディショニング動作の実施完了からの経過時間、またはコンディショニング動作の計画完了からの経過時間、および対象の試薬を分析に使用する依頼情報とすることで、頻繁にコンディショニングが実行されることを抑制し、分析結果が得られるまでの時間が長くなることを抑制することができる。
【0132】
また、経過時間を超過し、かつ対象の試薬を使用する分析項目の分注が行われることになった場合、新たな経過時間のカウントを開始することにより、頻繁にコンディショニングが実行されることを抑制しつつ、コンディショニングの起点となるタイミングを確保し、確実なコンディショニングの実施を図ることが可能となる。
【0133】
更に、経過時間を超過していない場合に対象の試薬を使用する分析項目の分注が行われることになった場合は、経過時間のカウントをリセットせずに継続することで、コンディショニング動作の実行制御が複雑になることを抑制することができる。
【0134】
また、経過時間を超過する前に対象の試薬を使用する分析項目の分注が行われることになった場合、新たな経過時間のカウントを開始することにより、インターバル時間カウント中に対象試薬の分注が行われている間は、対象試薬がタイムアウト状態にならないため、コンディショニング動作の頻度を下げることができる。
【0135】
更に、所定条件を、対象の試薬に対するコンディショニング動作の実施完了からの経過時間、またはコンディショニング動作の計画完了からの経過時間とすることで、必要なタイミングでコンディショニングが確実に実行される設定とすることができる。
【0136】
また、制御コンピュータ24は、自動分析装置100の立ち上げ時に、経過時間が経過したと強制的にみなすことにより、電源がオフの際にカウントを継続する必要がなくなり、装置構成や制御を簡易なものとすることができる。
【0137】
更に、所定条件を、対象の試薬を分析に使用する依頼情報とすることで、分析前に確実にコンディショニング動作が実行され、分析精度を担保し、装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0138】
また、コンディショニング動作を実行する対象の試薬を、吸引口での結晶化による分析精度に影響が及ぶ特定の試薬とすることにより、すべての試薬でコンディショニング動作が実行されることを抑制することができ、装置の動作の多くを分析に当て、分析を速やかに実行することができるとともに、コンディショニングによる試薬の消費も低減することができる。
【0139】
更に、コンディショニング動作は、分注サイクルを2サイクル以上分を使用するものとすることで、固化試薬42の除去を確実に図り、コンディショニングの効果を確実とすることができる。
【0140】
また、コンディショニング動作を、すべてのサイクルで同じとすることにより、制御パターンを増やす必要が無く、コンディショニング制御が複雑になることを避けることができる。
【0141】
更に、コンディショニング動作を、1つ以上のサイクルで異なるものとすることで、効果を上げるための動作を適宜織り交ぜた条件とすることができ、より効果的なコンディショニングが可能となる。
【0142】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0143】
1…反応ディスク
2…反応容器
3…試薬ディスク(保管庫)
4…試薬容器
4A…一試薬系試薬容器
4B…二試薬系試薬容器
4C…三試薬系試薬容器
4a,4b,4c…吸引口
5…反応槽
6…試料容器
7…ラック
8…試料搬送機構
9…試料分注機構
10…試料ノズル
11,13…試薬分注機構
12,14…試薬ノズル
15…洗浄機構
16…分光光度計
17,18…撹拌機構
19…試料ノズル洗浄槽
20,21…試薬ノズル洗浄槽
22,23…撹拌機構洗浄槽
24…制御コンピュータ(制御部)
25…給水ポンプ
26…ギアポンプ
27…流路
28…シリンジポンプ
29…電磁弁
40…試薬液面
41…試薬
42…固化試薬
100…自動分析装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23